JP4998971B2 - 電気化学素子用外装材および電気化学素子 - Google Patents

電気化学素子用外装材および電気化学素子 Download PDF

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Description

本発明は、ステンレス鋼を用いた電気化学素子用の外装材と、上記外装材を素子ケースとする電気化学素子に関するものである。
近年、AV機器やパーソナルコンピューターなどのコードレス・ポータブル化、さらに、各種機器のモバイル化に伴い、その駆動用電源である電池に対し、小型・軽量・高エネルギー密度化の要望が高まっている。
このような要求を満たす電池としては、ボタン(コイン)形電池(以下、「ボタン形電池」で統一する)が主流である。ボタン形電池は、内側容器と外側容器とをガスケットを介してかしめ封口するため、気密性が高く、かつ、機械的強度に優れている。しかしながら、内側容器と外側容器との嵌合部の占める体積が大きいことや、容器の厚みが厚いために、電池重量が重くなったり、電池内容積の拡大、すなわち高容量には大きな制約があった。また、金属缶が成形品であるため形状の自由度が乏しく、電池搭載機器に合わせたサイズや薄さなどに自由に変更することが容易でない。最近の小型電子機器には多種にわたるデザインがあり、その電池装着部の形状にも種々のバリエーションがあるため、これらに柔軟に対応し得るような形状自由度を有していることが好ましい。
そこで、最近では、素子ケースを構成する外装材として、アルミラミネートフィルム、すなわち、アルミニウム箔の外面側に保護層としての樹脂層を設け、かつ内面側に熱融着可能な樹脂層を設けたフィルムを使用することも行われている(以下、アルミラミネートフィルムを外装材として有する電池を、「アルミラミネートフィルム電池」という)。アルミラミネートフィルム電池は、内面側の熱融着可能な樹脂層による熱融着を利用して、アルミラミネートフィルムの所定部分同士を貼り合わせて封止することによって素子ケースを形成できるため、機器の形状に合わせた電池を比較的容易に製造できる。また、アルミニウムは比重が小さいため、アルミニウム箔を外装材に用いた電池は軽量であるというメリットもある。しかしながら、アルミニウムは強度が弱いというデメリットがあるため、外装材として用いるためには箔の厚みを薄くにも限界があり、一般には150μm以上のアルミニウム箔が用いられている。
また、形状自由度が高く、体積効率にも優れた電池として、正極外装材にアルミニウム板、負極外装材に鉄板を用い、これら外装材周縁部同士を樹脂封止した電池も提案されている(特許文献1)。
特開2003−249198号公報
今後、ますます電池の小型・軽量・高エネルギー密度化が望まれると予想されるが、小型電池の更なる高容量化を達成させるには、電池外装材の薄肉化(体積効率の向上)が効果的であり、薄くて強度の強い外装材の開発が期待される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、形状自由度が高く、且つ優れた機械的強度を有する電気化学素子用外装材と、上記外装材を用いた高容量の電気化学素子を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の電気化学素子用外装材は、全体が金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層の少なくとも三層で構成された外装材であって、上記金属(A)はステンレス鋼であり、上記金属(B)はAlたはAl合金であり、上記金属(A)層が上記金属(B)層よりも厚いことを特徴とするものである。
また、本発明の電気化学素子は、少なくとも電極と非水電解液とを素子ケース内に有する電気化学素子であって、上記素子ケースは、全体が金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層の少なくとも三層で構成され、上記金属(A)はステンレス鋼であり、上記金属(B)はAlたはAl合金であり、上記金属(A)層が上記金属(B)層よりも厚く、上記熱融着性樹脂層を利用して上記素子ケースが封止されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の電気化学素子では、上記の特定構造を有する外装材を用いてなる素子ケースを備えており、この外装材の有するステンレス鋼の層によって、大きな機械的強度を確保しつつ、その形状を、比較的容易に各種機器の形状に合わせ得る形状自由度を獲得している。更に、上記外装材を、ステンレス鋼の層[金属(A)の層]と、熱融着性樹脂層との間に、ステンレス鋼よりも熱融着性樹脂との接着強度が大きな金属(B)で構成される層[金属(B)の層]を有する構造とすることで、外装材の主体をなす金属層部分[金属(A)層および金属(B)層]と熱融着性樹脂層との接着強度を高めており、長期間保存しても高い信頼性を有する電気化学素子としている。
本発明によれば、形状自由度が高く、且つ機械的強度に優れた電気化学素子を提供できる。また、本発明の電気化学素子は、長期間の保存に対しても高い信頼性を有するものである。
本発明の電気化学素子に係る素子ケースを構成する外装材は、全体が金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層、の少なくとも三層で構成されている。
本発明の電気化学素子は、電タブを素子外部に取り出した構成することできる。子ケースは単に電極、非水電解液(以下、単に「電解液」という)などを収容する容器としてのみ機能するものであ、素子ケースを構成する上記外装材全体が、「金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層」の三層構造であってもよい。
本発明の素子に係る素子ケースは、単一の外装材から構成してもよい。この場合、例えば、外装材を折り曲げるなどして、内部に収容する各部材を収容可能な形状とし、周縁部を封止する方法が採用できる。また、素子ケースを、一対の上記外装材を、その周縁部において接合する(貼り合せる)ようにして構成しても構わない。
外装材周縁部の封止は、熱融着性樹脂層を利用して行う。具体的には、例えば、外装材を構成する熱融着性樹脂層における熱融着性樹脂を用いて熱融着させることが好ましいが、別途熱融着性樹脂を用意し、これを封止予定部にある熱融着性樹脂層と熱融着性樹脂層との間に入れて熱融着させてもよく、また、熱融着性樹脂層と熱融着性樹脂層との間に公知の接着剤などの封止手段を導入して封止しても構わない。
上述の通り、近年、電池の小型・薄型・高容量化が望まれており、そのためには電池全体における素子ケースの占める体積割合を小さくすることが有効である。すなわち、電池総高外寸を同じとした場合、高エネルギー密度化を達成するためには、素子ケースを薄くする必要がある。
従来から形状自由度の高い電池として知られているアルミラミネートフィルム電池では、素子ケースとして使用されているアルミラミネートフィルムにおけるアルミニウムが非常に柔らかく、各種機器に合わせた形状に成形し易いが、一方では、機械的強度が小さいことが短所として挙げられ、素子ケースとしての実用性を確保するために要求される厚みは、150μm以上であると考えられる。
そこで、本発明では、素子ケースを構成する上記外装材の構成層である金属(A)層を、ステンレス鋼で構成することとした。ステンレス鋼はアルミニウムに比べて機械的強度が大きいために、アルミニウムよりも薄い板(箔)として使用することができる。すなわち、ステンレス鋼を上記外装材の構成層に用いることで、機械的強度を確保しつつ外装材を薄くすることができるため、電池の高エネルギー密度化を達成できるのである。更に、ステンレス鋼は耐食性にも優れているため、長期間安定して使用できる電池とすることもできる。上記外装材に使用し得るステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS316、SUS405、SUS430などの一般的なステンレス鋼が挙げられる。
ステンレス鋼で構成される金属(A)層の厚みは、例えば、20〜100μmであることが好ましい。金属(A)層が薄すぎると、電池の機械的強度が小さくなることがあり、厚すぎると、電池のエネルギー密度向上効果が小さくなることがある。
本発明の素子は、熱融着性樹脂層を利用して封止して素子ケースを構成するため、外装材を構成する金属層と熱融着性樹脂層との接着強度が大きいことが重要である。更に、電池内には電解液が存在するために、外装材を構成する金属層と熱融着性樹脂層との界面に電解液が浸透したり、電解液注入時に熱融着性樹脂層表面に電解液が付着する場合がある。従って、電解液が付着した状態でも、金属層と熱融着性樹脂層との接着強度が大きいことが要求される。
しかしながら、本発明者らの検討によると、外装材の構成金属として好適なステンレス鋼と熱融着性樹脂との接着強度は、熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した場合には、該表面に電解液が付着していない場合に比べて、かなり低下することが判明した。そこで、本発明では、ステンレス鋼で構成される金属(A)層と熱融着性樹脂層との間に、ステンレス鋼よりも熱融着性樹脂との接着強度が大きな金属(B)で構成される層[金属(B)層]を設けて、外装材の全体を、金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層の少なくとも三層構造とすることとした。本発明では、この構成の採用によって、熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態においても、金属層[金属(A)層/金属(B)層]と熱融着性樹脂層との接着強度を高めている。
金属(B)層を構成するための金属としては、例えば、後記の実施例における<引張試験>に示す試験方法によって測定される熱融着性樹脂との接着強度が70〜200Nである金属が好ましい。
熱融着性樹脂との間で、上記の接着強度を確保できる金属としては、ルミニウム(Al)この合金挙げられる。例えば、Al合金の場合の合金元素としては、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、V、Ti、Zr、Nb、Moなどが挙げられる。
金属(B)層は、金属(A)層であるステンレス鋼層とクラッドを構成するものであってもよく、ステンレス鋼層の表面に蒸着などの方法で設けられた膜(蒸着膜など)であってもよい。
例えば、本発明の素子において、集電タブを素子外部に取り出した場合の金属(B)層の厚みは、0.1〜2μmであることが好ましい。これは、熱融着性樹脂層と強固な接着強度を確保できる程度の厚みを、金属(B)層が有していればよいからである。
上記外装材において用い得る熱融着性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニリデンなどのポリビニリデン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂;エチレンビニルアセテート樹脂;アイオノマー樹脂;などが挙げられる。熱融着性樹脂の層の厚みとしては、両外装材同士が融着できばよい。具体的には、例えば、素子ケースを構成する前の外装材が、20〜80μmの厚みの熱融着性樹脂層を有していることが好ましい。熱融着性樹脂層が厚すぎると、素子の総高自体が増大してしまうため、薄型素子としては好ましくないからである。外装材の周縁部における熱融着性樹脂層に係る熱融着性樹脂を熱融着により接合封止させて素子ケースとした後の封止部(熱融着部)の厚みは、封止部にあたる箇所に存在していた2つの熱融着性樹脂層の合計の約半分となるため、外装材が上記の好適厚みの熱融着性樹脂層を有している場合には、熱融着による接合(封止)後の素子ケースにおける封止部での熱融着性樹脂層の厚みは、20〜80μmとなる。
なお、上記外装材では、金属(B)層と熱融着性樹脂層との接着強度を高めるための処理を施すことが好ましい。このような処理を施すことにより、素子とした際の耐漏液性の向上や、外部からの水分の浸入抑制による素子特性の向上を図ることができる。金属(B)層と熱融着性樹脂層との接着強度を高めるための処理としては、金属(B)層における熱融着性樹脂層側表面の処理[以下、「金属(B)層の表面処理」という]と、熱融着性樹脂の変性処理が挙げられる。
金属(B)層の表面処理方法としては、例えば、酸化処理、プラズマ処理、各種めっき[電気めっきや、無電解めっき(化学めっき)など]などにより、金属(B)層の熱融着性樹脂層側表面に、熱融着性樹脂との接着性を向上させ得る皮膜などを形成する処理方法;粗面化などにより、熱融着性樹脂との接着性を物理的に高める処理方法;などが挙げられる。また、金属表面や、熱融着性樹脂の有する官能基(水酸基など)と反応して、その表面の親和性を改良するような処理でもよく、例えば、チタネート系カップリング剤やシラン系カップリング剤によって、金属(B)層の表面を処理する方法も挙げられる。このような表面処理の場合には、上記例示のカップリング剤を含有する処理液中に、金属(B)で構成される板(箔)や、金属(A)層と金属(B)層との積層体を浸漬するか、または、これらの板(箔)や積層体表面に、処理液を塗布した後、乾燥する方法が採用できる。これらの表面処理は、素子内面側となる面にのみ施してもよく、素子外面側となる面にも施しても構わない。
また。熱融着性樹脂の変性処理としては、例えば、熱融着性樹脂に、無水マレイン酸などの不飽和基を有する酸などをグラフトさせる公知の酸変性処理などが挙げられる。このような酸変性処理は、比較的極性の小さな樹脂(例えば、上記例示のポリオレフィン樹脂)を熱融着性樹脂として使用する場合に特に有効であるが、比較的極性の大きな熱融着性樹脂に、こうした酸変性処理を施しても構わない。
本発明の電気化学素子には、リチウムイオン電池などの電池や、キャパシタなどが含まれるが、本発明の素子は、上記の構成を有する素子ケースを備えていればよく、他の構成(正負極、セパレータ、電解液など)については、特に制限は無く、従来公知のリチウムイオン電池などの電池やキャパシタなどに採用されているものと同様のものが適用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
実施例1の電気化学素子(樹脂封止リチウムイオン電池)を、図を示して説明する。図1は、実施例1の樹脂封止リチウムイオン電池の平面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。なお、図1および図2における各要素・各部分のサイズは、現実の電池とは必ずしも一致していない。実施例1の電池は、図1に示すように平面視で正方形の素子ケース1を有しており、素子ケース1は、図2に示すように、凹部を有する蓋状(浅絞り)の外装材2と、外装材2の凹部の開口端を密閉する凹部を有する皿状(深絞り)の外装材3で構成されている。
外装材2は、図2に示すように、ステンレス鋼の層[金属(A)層]5aと、その電池内面側に、蒸着により形成されたアルミニウム層[金属(B)層]6aを有している。外装材2の開口端の周縁部には、その全周にわたって平坦なフランジ部12aが形成されている。そして、外装材2のアルミニウム層6aの電池内面側の面には、熱融着樹脂との接着性を向上させるための表面処理が施されており、更に該面全面(凹部およびフランジ部)に、無延伸ポリプロピレン(熱融着性樹脂)フィルム4aが熱融着されている。
外装材3は、図2に示すように、ステンレス鋼の層[金属(A)層]5bと、その電池内面側に、蒸着により形成されたアルミニウム層[金属(B)層]6bを有している。外装材3の開口端の周縁部には、その全周にわたって平坦なフランジ部12bが形成されている。そして、外装材3のアルミニウム層6bの電池内面側の面には、熱融着樹脂との接着性を向上させるための表面処理が施されており、更に該面全面(凹部およびフランジ部)に、無延伸ポリプロピレン(熱融着性樹脂)フィルム4bが熱融着されている。
外装材2と外装材3は、上記フランジ部12a、12bの無延伸ポリプロピレンフィルム4a、4bによって熱融着接合されることにより一体化されて素子ケース1を構成している。この素子ケース1では、外装材2および外装材3の開口端が密閉されることにより、その凹部内が気密および液密の状態に保たれると共に、熱融着接合部に存在するポリプロピレン4によって外装材2を構成しているステンレス鋼層5aおよびアルミニウム層6aと、外装材3を構成しているステンレス鋼層5bおよびアルミニウム層6bとが、電気的に絶縁されるようになっている。
素子ケース1内には、発電体および後述する電解液などが収容されている。発電体は、正極7と負極8とをポリエチレン微多孔膜からなるセパレータ9を間にして渦巻状に巻回して巻回体としている。この電池では、この発電体を外装材3の凹部に収容し、その後外装材2を外装材3に重ね合わせ、外装材2および外装材3のフランジ部12a、12bにおける無延伸ポリプロピレンフィルム4a、4bを熱融着させて接合している。
正極7は、アルミニウム箔からなる正極集電体の両面にLiCoOを活物質として含有する正極合剤層を形成したシート状のものであり、アルミニウム箔の一部に集電端子としてAlタブ10(図1参照)が溶接されている。なお、本発明の電池では、正極が、正極集電体の片面にのみ正極合剤層を有する構成であっても構わない。
負極8は、銅箔からなる負極集電体の両面に黒鉛を活物質として含有する負極合剤層を形成したシート状のものであり、銅箔の一部に集電端子としてNiタブ11が溶接されている。なお、本発明の電池では、負極が、負極集電体の片面にのみ負極合剤層を有する構成であっても構わない。
そして、発電体が素子ケース1内に収容された状態において、正極の集電タブであるAlタブ10と、負極の集電タブであるNiタブ11が、素子ケース1外に取り出された構成となっている(図1参照)。このように、実施例1の電池は、外装材の全体がステンレス鋼層/アルミニウム層/ポリプロピレン層の三層構造で構成されており、ポリプロピレン層が電池内面側に配置されており、電池外部に集電タブを取り出した構成となっている。
実施例1の電池は、以下のようにして作製した。
<正極の作製>
活物質であるLiCoO:96質量部と、導電助剤であるケッチェンブラック(KB):1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF):2質量部を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に均一に分散させて正極合剤含有ペーストを調製した。この正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのAl集電体の両面に塗工し、カレンダーロールにより厚みを調整した後スリットして、幅が17mm、長さが101mm、厚みが160μmのシート状正極を得た。この正極に、ポリプロピレン(PP)付きAl集電タブを超音波溶接により溶接した。
<負極の作製>
活物質である黒鉛:94質量部と、導電助剤であるカーボンブラック(CB):1質量部と、結着剤であるPVDF:5質量部を混合し、これをNMPに均一に分散させて負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmのCu集電体の両面に塗工し、カレンダーロールにより厚みを調整した後スリットして、幅が18mm、長さが143mm、厚みが160μmのシート状負極を得た。この負極に、PP付きNi集電タブを超音波溶接により溶接した。
<発電体の作製>
上記の正極および負極を、厚みが20μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して巻回して、縦19mm×横19mm×厚み2.8mmの発電体を作製した。その際、発電体巻き終わり方向からAl集電タブおよびNi集電タブが露出するようにした。
<外装材の作製>
外装材2は次のようにして作製した。厚みが50μmのステンレス鋼箔の片面に蒸着により厚みが5000Åのアルミニウム層を形成し、表面処理(Cr、F、N、C、Pを含有するアミン系の処理剤により処理)を行った。その後、アルミニウム層全面に厚みが50μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを熱融着した。このようにして得られた積層体を、押し金型を用いて、縦20mm×横20mm×深さ0.55mmの凹部を有し、3辺が幅4mm、1辺が幅2mmのフランジ部を有する蓋状に成形して、外装材2を得た。
また、外装材3は次のようにして作製した。厚みが50μmのステンレス鋼箔の片面に蒸着により厚みが5000Åのアルミニウム層を形成し、外装材2と同様の表面処理を行った。その後、アルミニウム層全面に厚みが50μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを熱融着した。このようにして得られた積層体を、押し金型を用いて、縦20mm×横20mm×深さ2.3mmの凹部を有し、3辺が幅4mm、1辺が幅2mmのフランジ部を有する皿状に成形して、外装材3を得た。
<電池組み立て>
外装材3の2mm幅のフランジ部に発電体の集電タブが来るように、上記の発電体を外装材3の凹部に収容し、外装材2と外装材3を重ね合わせて、両外装材の周縁部、すなわち、2mm幅の辺の部分と、4mm幅の3辺のうち2辺の部分とを、ヒートブロックを用いて、190℃、0.5MPaの条件で4秒間加圧融着した。その後、フランジ部の熱融着していない辺部分から、減圧注液法によって電解液を0.3cc注入した。なお、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを、EC:MEC=1:2(体積比)で混合した溶媒に、電解質としてLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解し、更にプロパンスルトンを2質量%添加したものを用いた。電解液の注入後、熱融着していない辺部分を上記と同様の条件で加圧融着させた後、フランジ部の4mm幅の辺部分を幅2mmに切断して、樹脂封止リチウムイオン電池を得た。
参考例2
参考例2の樹脂封止リチウムイオン電池の断面図を図3に示す。参考例2の電池は、フランジ部12aにのみ無延伸ポリプロピレンフィルムを有し、他の部分は、ステンレス鋼の層5aおよびアルミニウム層6aで構成されている外装材2と、フランジ部12bにのみ無延伸ポリプロピレンフィルムを有し、他の部分は、ステンレス鋼の層5bおよびアルミニウム層6bで構成されている外装材3とを用いて素子ケースを構成した例である。なお、図3では図示しないが、参考例2の電池では、外装材2のアルミニウム層6a表面には更にアルミニウム箔を、外装材3のアルミニウム層6b表面には更に銅箔を、それぞれ超音波溶接により溶接してある。参考例2の電池では、正極7および負極8には集電タブを取り付けず、正極7の集電体と外装材2のアルミニウム層6a表面のアルミニウム箔、および負極8の集電体と外装材3のアルミニウム層6b表面の銅箔とを直接接触させることによって集電する構成としている。そして、外装材2と外装材3とは、それぞれのフランジ部12a、12bに設けられている無延伸ポリプロピレンフィルムによって熱融着されることで、フランジ部12a、12bにおいて、ポリプロピレン4が介在した状態で接合されている。
参考例2の電池は、以下のようにして作製した。
<正極の作製>
活物質であるLiCoO:96質量部と、導電助剤であるKB:1質量部と、結着剤であるPVDF:2質量部を混合し、これをNMPに均一に分散させて正極合剤含有ペーストを調製した。この正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのAl集電体の両面に塗工し、カレンダーロールにより厚みを調整した後スリットして、幅が17mm、長さが118mm、厚みが160μmのシート状正極を得た。
<負極の作製>
活物質である黒鉛:94質量部と、導電助剤であるCB:1質量部と、結着剤であるPVDF:5質量部を混合し、これをNMPに均一に分散させて負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、厚みが10μmのCu集電体の両面に塗工し、カレンダーロールにより厚みを調整した後スリットして、幅が18mm、長さが144mm、厚みが160μmのシート状負極を得た。
<発電体の作製>
上記の正極および負極を、厚みが20μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して巻回して、縦19mm×横19mm×厚み2.8mmの発電体を作製した。その際、発電体巻き終わり部の片面に、Al箔集電体およびCu箔集電体が露出するようにした。
<外装材の作製>
外装材2は次のようにして作製した。厚みが50μmのステンレス鋼箔の片面に蒸着により厚みが10μmのアルミニウム層を形成し、表面処理を行った。このようにして得られた積層体を、押し金型を用いて、縦20mm×横20mm×深さ0.55mmの凹部を有し、幅が4mmのフランジ部を有する蓋状に成形した。その後、素子ケースの熱融着接合部となるべき周縁部、すなわち、フランジ部の表面に、厚みが50μmで幅が4mmの無延伸ポリプロピレンフィルムを熱融着して、外装材2を得た。
また、外装材3は次のようにして作製した。厚みが50μmのステンレス鋼箔の片面に蒸着により厚みが10μmのアルミニウム層を形成し、表面処理を行った。このようにして得られた積層体を、押し金型を用いて、縦20mm×横20mm×深さ2.3mmの凹部を有し、幅が4mmのフランジ部を有する皿状に成形した。その後、素子ケースの熱融着接合部となるべき周縁部、すなわち、フランジ部の表面に、厚みが50μmで幅が4mmの無延伸ポリプロピレンフィルムを熱融着して、外装材3を得た。
<電池組み立て>
外装材2のアルミニウム層表面に厚みが15μmのアルミニウム箔を、外装材3のアルミニウム層表面に厚みが10μmの銅箔を、それぞれ超音波溶接により溶接した。上記の発電体を外装材3の凹部に収容し、外装材2と外装材3を重ね合わせて、両外装材の周縁部、すなわち、フランジ部のうち3辺の部分を、ヒートブロックを用いて、190℃、0.5MPaの条件で4秒間加圧融着した。その後、フランジ部の熱融着していない辺部分から、減圧注液法によって電解液を0.3cc注入した。なお、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを、EC:MEC=1:2(体積比)で混合した溶媒に、電解質としてLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解し、更にプロパンスルトンを2質量%添加したものを用いた。電解液の注入後、熱融着していない辺部分を上記と同様の条件で加圧融着させた後、フランジ部を幅2mmに切断して、樹脂封止リチウムイオン電池を得た。
実施例3
以下の点を変更した他は、実施例1と同様にして樹脂封止リチウムイオン電池を作製した。正極のサイズを、幅170mm、長さ1010mm、厚み1600μm、負極のサイズを、幅180mm、長さ1430mm、厚み1600μmとした。また、外装材2および外装材3において、ステンレス鋼箔の厚みを500μmとし、蒸着によって形成するアルミニウム層の厚みを2μmとし、無延伸ポリプロピレンフィルムの厚みを100μmとした。そして、外装材2のサイズを、縦200mm×横200mm×深さ5.5mmとし、外装材3のサイズを、縦200mm×横200mm×深さ23mmとした。そして、電解液の注入量を3ccとした。
参考例4
外装材2および外装材3において、ステンレス鋼箔に蒸着によりアルミニウム層を形成するのではなく、ステンレス鋼層が50μmで、アルミニウム層が10μmのクラッド材を用いた他は、参考例2と同様にして樹脂封止リチウムイオン電池を作製した。
比較例1
ステンレス鋼箔にアルミニウム層を蒸着せずに作製した外装材2および外装材3を用いた他は、実施例1と同様にして樹脂封止リチウムイオン電池を作製した。
比較例2
ステンレス鋼箔にアルミニウム層を蒸着せずに作製した外装材2および外装材3を用いた他は、参考例2と同様にして樹脂封止リチウムイオン電池を作製した。
比較例3
ステンレス鋼箔にアルミニウム層を蒸着せずに作製した外装材2および外装材3を用いた他は、実施例3と同様にして樹脂封止リチウムイオン電池を作製した。
比較例4
外装材2および外装材3に、厚みが200μmのアルミニウム板を用いた他は、実施例1と同様にして樹脂封止リチウムイオン電池を作製した。
実施例1、3、参考例2、4および比較例1〜4の各電池で使用した外装材について、下記の引張試験および釘刺し試験による強度評価を行った。結果を表1に示す。
<引張試験>
外装材封止部(接合部)の接着強度を評価するため、図4に示すような試験片を作製し、引張圧縮試験機(今田製作所製「SVF−500N」)を用いて、以下の方法で引張試験を行った。図4(a)に示すように、成形する前の外装材を24mm四方に切断したものを2枚用意した。これら2枚の外装材の端から2mm、長さ24mmの部分[図4(a)中、21a]の熱融着性樹脂同士を、190℃、4秒、0.45MPaの条件で熱融着した。次に、融着した2枚の外装材それぞれを、図4(b)に示すように、融着端から12mmの位置で、試験片22の側面形状がT字状となるように折り曲げた[なお、図4(b)では、理解を容易にするために、融着部21bに厚みを持たせて示した]。このようにして得られた試験片の、図4(b)の23の位置(端から6mmの位置)を引張試験機のチャックでつかみ、50mm/minの速度で引っ張った時の最大荷重を、試験点数n=10として測定し、これらの平均値を引張強度とした。次に、別の上記試験片を10個準備し、実施例1で使用したものと同じ電解液に浸漬し、80℃で10日間貯蔵した。貯蔵後、上記と同様にして引張試験を行い、最大荷重を測定した。電解液浸漬後の試験片の最大荷重を、電解液に浸漬していない試験片の最大荷重で除した値を百分率で表し、電解液浸漬時における引張強度として評価した。
<釘刺し試験>
成形加工前の外装材を45mm×45mmに切断して試験片とした。この試験片を、周囲幅で10mmを固定して、図5に示す形状のφ2.5mmの釘を、速度50mm/minで試験片の中央に下降させ、試験片を貫通したときの最大荷重(圧力)を測定した。なお、図5中の数値の単位は「mm」である。
また、実施例1、3、参考例2、4および比較例1〜4の各電池における単位体積当たりの電気容量、質量当たりの電気容量、および電池化成後のエージング後電圧を表1に併記する。
Figure 0004998971
表1から以下のことが分かる。電解液浸漬後の外装材試験片の引張強度は、電解液浸漬前に比べると低下するものの、実施例1、3の電池で用いた外装材では、比較例1〜3のものに比べ、ステンレス鋼の層の表面に設けられたアルミニウム層の存在によって、強度の低下が抑制されている。
また、厚みが50μmのステンレス鋼箔を用いた実施例1電池の外装材では、厚みが200μmのアルミニウム板を用いた比較例4の外装材よりも、釘刺し試験での貫通時の圧力が2倍以上大きく、機械的強度が優れている。更に、実施例1の電池では、外装材を、縦24mm×横24mm×深さ2.3mmの深絞り加工したにも関わらず、外装材が破れるといったことは無かった。これら、外装材における引張試験および釘刺し試験の結果から、実施例1、3の電池は優れた機械的強度を有するものであることが分かる。
また、厚みが50μmのステンレス鋼箔を用いた実施例1の電池では、単位体積当たりの容量のみならず、単位質量当たりの容量も大きく、高容量化が達成できている。さらに、実施例1、3の電池では、その形状を容易に変形させることができ、良好な形状自由度を有していた。
なお、素子ケース(外装材)から直接集電する構成の参考例2、4および比較例2の電池では、比較例2のように外装材の電池内面側の面にアルミニウム層を設けていないと、ステンレス鋼の層が腐食してエージング後の電圧が0Vまで低下するが、アルミニウム層を設けた参考例2や参考例4の電池では、高い電圧が維持されている。
また、実施例3の電池のように大きなサイズとしても良好な機械的強度と電池特性が確保できており、例えば自動車用途のような大型電池にも適用できる。
このように、本発明の電気化学素子は、良好な機械的強度を有する高容量の薄型電池であり、また、形状の自由度にも優れており、更には素子ケースの主体をなす金属層と、封止に利用される熱融着性樹脂との接着強度も優れた素子である。
本発明の電気化学素子(樹脂封止リチウムイオン電池)の一例(実施例1)を示す平面図である。 図1のA−A線断面図である。 気化学素子(樹脂封止リチウムイオン電池)の他の例(参考例2)を示す断面図である。 実施例の引張試験の試験片の説明図である。 実施例の釘刺し試験に用いた釘の説明図である。
符号の説明
1 素子ケース
2 外装材
3 外装材
4 熱融着性樹脂
5a、5b 金属(A)層
6a、6b 金属(B)層
7 正極
8 負極
9 セパレータ
10 正極集電タブ
11 負極集電タブ
12a、12b フランジ部

Claims (11)

  1. 全体が金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層の少なくとも三層で構成された電気化学素子用外装材であって、
    上記金属(A)はステンレス鋼であり、上記金属(B)はAlたはAl合金であり、
    上記金属(A)層が上記金属(B)層よりも厚いことを特徴とする電気化学素子用外装材。
  2. 上記金属(A)層の厚みが、20〜100μmである請求項1に記載の電気化学素子用外装材。
  3. 上記金属(B)層の厚みが、0.1〜2μmである請求項1または2に記載の電気化学素子用外装材。
  4. 上記金属(B)層に、上記熱融着性樹脂層との間の接着強度を高めるための表面処理が施されている請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学素子用外装材。
  5. 上記金属(B)層と上記熱融着性樹脂との接着強度が、70〜200Nである請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学素子用外装材。
  6. 少なくとも電極と非水電解液とを素子ケース内に有する電気化学素子であって、
    上記素子ケースは、全体が金属(A)層/金属(B)層/熱融着性樹脂層の少なくとも三層で構成され、
    上記金属(A)はステンレス鋼であり、上記金属(B)はAlたはAl合金であり、
    上記金属(A)層が上記金属(B)層よりも厚く、
    上記熱融着性樹脂層を利用して上記素子ケースが封止されていることを特徴とする電気化学素子。
  7. 上記金属(A)層の厚みが、20〜100μmである請求項6に記載の電気化学素子。
  8. 上記金属(B)層の厚みが、0.1〜2μmである請求項6または7に記載の電気化学素子。
  9. 上記金属(B)層に、上記熱融着性樹脂層との間の接着強度を高めるための表面処理が施されている請求項6〜8のいずれかに記載の電気化学素子用外装材。
  10. 上記金属(B)層と上記熱融着性樹脂との接着強度が、70〜200Nである請求項6〜9のいずれかに記載の電気化学素子。
  11. 正極および負極に集電タブが取り付けられており、前記集電タブが電気化学素子の外部に引き出されている請求項6〜10のいずれかに記載の電気化学素子。
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