JP4148253B2 - スピーカシステムおよびスピーカエンクロージャー - Google Patents

スピーカシステムおよびスピーカエンクロージャー Download PDF

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Description

本発明は、スピーカシステムおよびスピーカエンクロージャーの技術に関する。
低音を増強するスピーカシステムとしてバスレフ式のスピーカシステムが知られている。バスレフ式スピーカシステムは、スピーカユニットを設けたエンクロージャーにエンクロージャーの内部空間と外部空間を結合する共鳴管を設け、ヘルムホルツ共鳴を利用して低音を増強するものである。
この共鳴管を用いたスピーカシステムの低音特性をさらに向上させたものとして、例えば特許文献1にて開示された技術が知られている。図19は、特許文献1で提案されているスピーカシステムの断面図である。エンクロージャー91は矩形断面を有しており、隔壁92によって2つのサブチャンバ91aおよび91bに分割されている。隔壁92にはスピーカユニット93を取り付けるための開口部92aが設けられており、スピーカユニット93のコーン前面がサブチャンバ91aに面するようにスピーカユニット93が隔壁92に取り付けられている。さらに、サブチャンバ91a、91bにはそれぞれ共鳴管94a、94bが設けられており、サブチャンバ91a、91bの内部空間がエンクロージャー91の外部空間と結合されている。
特開昭60−98793号公報
さて、上記のような共鳴管を用いたスピーカシステムにおいては、エンクロージャーの容積が小さい場合、共振周波数を低くするためには、共鳴管を小型で細長くしなければならず、空気抵抗が大きくなって低音増強機能が著しく低下し、また、共鳴管を通過する空気の速度が非常に速くなるために笛のような風切り音が発生するという問題がある。
上記の問題点を解決するために、共鳴管の代わりにドローンコーンを用いることも考えられる。しかし、ドローンコーンを用いた場合、共振周波数を低くするためには、その質量を大きくしなければならない。そして、共振周波数を低くするためには、振動板を支持するエッジのコンプライアンスが大きくなければならないが、質量の大きな振動板を支持するためにはエッジのバネ性や強度は大きくなければならず、コンプライアンスと相反することになる。また、重い振動板が完全に平行に振動することは難しく、ローリングやロッキングと呼ばれる異常振動を伴い易い。この異常振動は、歪みを増加させ無駄なエネルギーを消費して、効率を低下させてしまう。
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、小型であっても充分な低音成分を出力することができるスピーカシステムおよびスピーカエンクロージャーを提供することを目的とする。
本発明に係るスピーカシステムは、内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、前記スピーカエンクロージャーの内部を第1のサブチャンバと第2のサブチャンバとに分割する隔壁部材と、一面が前記第1のサブチャンバに向くように、他面が前記第2のサブチャンバに向くようにして前記隔壁部材に取り付けられ、供給される信号に応じて前記一面と他面が前記第1のサブチャンバと前記第2のサブチャンバにおいて互いに逆相で振動するスピーカ手段と、前記スピーカエンクロージャーの一面において、前記第1のサブチャンバに対応する位置に設けられた第1の開口部、および、前記第2のサブチャンバに対応する位置に設けられた第2の開口部と、前記第1の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第1の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第1の振動板と、前記第2の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第2の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第2の振動板と、前記第1の振動板と前記第1の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第1の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第1のサブチャンバの気密性を保持する第1の密閉部材と、前記第2の振動板と前記第2の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第2の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第2のサブチャンバの気密性を保持する第2の密閉部材とを具備することを特徴とする。
好ましい態様として、前記スピーカ手段は一または複数のスピーカであって、その振動面の前面を前記一面とし、その振動面の背面を前記他面としてもよい。
別の好ましい態様として、前記スピーカ手段は2つのスピーカの振動面の前面を対向配置した一対または複数対のスピーカ対であって、各スピーカ対の一方のスピーカの振動面の背面を前記一面とし、各スピーカ対の他方のスピーカの振動面の背面を前記他面としてもよい。
また、本発明に係るスピーカエンクロージャーは、内部が密閉されるスピーカエンクロージャーにおいて、前記スピーカエンクロージャーの内部を第1のサブチャンバと第2のサブチャンバとに分割する隔壁部材と、前記隔壁部材に設けられたスピーカ取付穴と、前記スピーカエンクロージャーの一面において、前記第1のサブチャンバに対応する位置に設けられた第1の開口部、および、前記第2のサブチャンバに対応する位置に設けられた第2の開口部と、前記第1の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第1の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第1の振動板と、前記第2の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第2の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第2の振動板と、前記第1の振動板と前記第1の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第1の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第1のサブチャンバの気密性を保持する第1の密閉部材と、前記第2の振動板と前記第2の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第2の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第2のサブチャンバの気密性を保持する第2の密閉部材とを具備することを特徴とする。
上記の構成によれば、スピーカ手段が駆動されると、スピーカ手段のコーン紙の振動がスピーカエンクロージャー内の空気に伝搬され、この空気の振動によって第1および第2の振動板が振動する。第1および第2の振動板の共振周波数は、スピーカ手段の周波数特性、第1および第2のサブチャンバの容積、第1および第2の振動板の面積および質量を調整することによって、低音域が増強され、かつ、高音域がカットされた所望値に設定される。さらに、第1および第2のサブチャンバの容積比、第1および第2の振動板の面積比および質量比を異ならせることによって、第1および第2の振動板の共振周波数を異ならせることができるから、第1および第2の振動板から出力される音波の周波数特性が重ね合わされることにより、ある幅を持ったバンドパス特性を有することになる。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態のスピーカシステムの外観を示す斜視図である。図2は、スピーカシステムを図1におけるz方向から見た平面図である。図3は、図1におけるA−A断面図である。
スピーカエンクロージャー20は、直方体状の筐体であり、6面とも板状の部材(例えば、木材、合成樹脂、金属もしくはそれらを張り合わせた合成材等)により形成されている。図3に示されるように、スピーカエンクロージャー20の内部空間は、隔壁部材25によって分割されており、サブチャンバ23、24が形成されている。隔壁部材25にはスピーカ取付穴が設けられている。スピーカ10は、コーン形状の振動紙11を有し、この振動紙11が設けられた面(以下、「スピーカ10の前面」という)がサブチャンバ24に面するようにスピーカ取付穴に挿入され、隔壁部材25に取り付けられている。
図4は、スピーカエンクロージャー20をy方向から見た正面図である。図3、図4に示されているように、スピーカエンクロージャー20の前面には、サブチャンバ23に対応する位置に開口部21が、サブチャンバ24に対応する位置に開口部22が設けられている。開口部21と22の間には連結部材20aが設けられている。そして、図3に示されるように、薄い板状の振動板30が連結部材20aに取り付けられている。振動板30は、スピーカエンクロージャー20の前面(y方向から見た面)と同じ大きさに形成され、スピーカエンクロージャー20の前面全体を覆っている。
図2、図3に示すように、スピーカエンクロージャー20の側面20d、20eのy方向の長さは、連結部材20aの振動板30との接合面から底面20iまでの距離よりもやや短く形成され、連結部材20aから側端部20d、20eにかけて傾斜し、傾斜部20g、20hを形成している。このようにして、傾斜部20g、20hと振動板30との間には空隙が形成されている。振動板30は、連結部材20aによって固定されているが、振動板30の両端部は片持ち梁のように自由端になっており、振動板30の弾性によって自由に振動できるようになっている。なお、以下においては、振動板30の連結部材20aとの接合部の両側を振動部位31、32という。
この場合、振動板30は、音響的に十分な強度と弾性とを併せ持つ部材で形成されている。ここで、「音響的に十分な強度」とは、空気を通さず、空気よりも十分大きな密度をもち、振動したときに音波を発生する強度と弾性を持つことを意味する。また、振動板30は、それ自体で音波をある程度遮断できる性質を有する。
また、「弾性」の度合いは、この振動板30の一辺を固定して水平に置いたときに自重を支えてほぼ水平に保つことができる程度である。このような特性を満足させるために、振動板30は、例えば薄い木の板、薄い合成樹脂、金属の板もしくはそれらを張り合わせた合成材等からなる。
図5は、スピーカエンクロージャー20をx方向から見た側面図、図6はスピーカエンクロージャー20のB−B断面図である。
図3、図6に示されるように、エッジ(密閉部材)41、42は、振動板30の振動部位31、32の外周縁と開口部21、22の縁部との間に設けられ、スピーカエンクロージャー20の気密性を保持する。ここで、エッジ41、42は、振動部位31、32の外周縁と傾斜部20g、20hの外周縁との間では、スピーカエンクロージャー20の内部空間側に突出して折れ曲がる部分が図2において横方向に延びている(以下、折れ部41a、42aという)。また、エッジ41、42は、振動部位31、32の外周縁と側端部20b、20cの外周縁との間では、スピーカエンクロージャー20の内部空間側に突出して折れ曲がる部分が図5において縦方向に延びている(以下、折れ部41b、42bという)。図4においてハッチングを示した部分がエッジ41、42であり、このエッジ41、42においてスピーカエンクロージャー20の内部空間側に突出している部分が折れ部41a、42a、41bおよび42bである。
図4に示すエッジ41、42の外周縁部は、振動板30の振動部位31、32の外周縁部に接着され、これにより、スピーカエンクロージャー20の気密性が保持される。また、エッジ41、42の折れ部41a、41b、42a、42bが自由に折れ曲がることにより、振動部位31、32の振動は妨げられることなく、自由振動となる。なお、スピーカエンクロージャー20の背面にはスピーカ10のボイスコイルに接続されたスピーカ端子が設けられているが、図示は省略してある。
上述した構成において、スピーカ10が駆動されると、スピーカ10のコーン紙の振動がスピーカエンクロージャー20内の空気に伝搬され、この空気の振動によって振動板30の振動部位31、32が振動する。このとき、エッジ41、42で気密性を保持された状態で振動する振動板30は、振動したときにスピーカエンクロージャー20内の空気容積を圧縮または膨張させる。したがって、振動板30の弾性に加えてスピーカエンクロージャー20の空気バネも加わったコンプライアンス(機械的可とう性)と振動板30の等価質量との間で新たな共振周波数を持つようになる。この結果、振動板30の共振周波数を中心に再生される音が生じる。
ここで空気バネと振動板30の弾性(バネ性)は、等価的に2つのバネが並列に接続されているように機能するが、空気バネの方が振動板30のバネよりもコンプライアンスが小さいので、スピーカシステムとしての振動板30の共振周波数はほぼ空気のコンプライアンスと振動板30の等価質量で決まる。
以上のようにして決定される共振周波数は、スピーカ10の周波数特性、スピーカエンクロージャー20の容積、振動板30の質量および面積を調整することによって、低音域が増強され、かつ、高音域がカットされた所望値に設定することができる。図7(a)は、スピーカ10の周波数特性、図7(b)は振動板30の共振周波数特性の一例を示す図である。
さらに本発明においては、サブチャンバ23と24の容積比、振動部位31と32の面積比を異ならせることによって、振動部位31、32の共振周波数を異ならせることができる。サブチャンバ23、24においてスピーカ10は互いに逆相で駆動されるから、振動部位31、32から出力される音波の周波数特性が重ね合わされることにより、スピーカシステムの周波数特性はある幅を持ったバンドパス特性を有することになる。図8は、このバンドパス特性の概念を示した図である。同図において、f23、f24は各々、サブチャンバ23、24の周波数特性を表している。この例においては、サブチャンバ23の容積をサブチャンバ24の容積よりも大きく、かつ、振動部位31の面積を振動部位32の面積よりも大きくすることによって、振動部位31の共振周波数が振動部位32の共振周波数よりも低くされている。この2つの振動部位の周波数特性が重ね合わされることによって、スピーカシステムの周波数特性はp23とp24の2つのピークを併せ持ち、一定の幅のバンドパス特性を有した低音域の増強が可能となる。サブチャンバ23と24の容積比、振動部位31と32の面積比を変更することによって、2つのピークの間隔を所望の値に調整することができる。
なお、サブチャンバ23、24の好適な容積比はおよそ4:1、振動部位31、32の好適な面積比はおよそ2:1である。
また、振動部位31、32は、「うちわ」のように全体がしなりながら振動する1次振動モードで低音再生を行う。なぜなら、振動板30には2次や3次またはそれ以上の振動モードも存在しているが、空気で振動板30全体が駆動されるため1次振動モードが最も強く発生し、それ以外の振動モードの発生レベルは小さくなるからである。また、高次モードをさらに抑えたい場合は、振動板30の材質や厚さまたは複数の材料の張り合わせなどで調整が可能である。
なお、本実施形態においては、振動板30は、自重を十分支えられる程度の弾性を持っているので、振動板30を水平に置いてもそれ自身で水平を保持できる。また、振動板30自身の弾性が自由共振のコンプライアンスになるが、弾性を持った振動板30の内部損失は同じ弾性を持たせたエッジ41、42の内部損失より遥かに小さいため振動時の損失は十分小さい。
また、本実施形態におけるエッジ41、42は、従来のドローンコーン等に用いられるエッジに較べ柔らかな材質とすることができ、また、機械的な強度も必要ない。従来のドローンコーン等のパッシブラジエターにおいては、剛体の振動板をエッジで支えるという構造が必要であるため、エッジは振動板の支持と気密性の確保という2つの機能を持っていた。しかし、本実施形態においては、振動板30の支持機能を振動板30自体に持たせているので、エッジ41、42に支持機能は必要でない。そのため、エッジ41、42は、スピーカエンクロージャー20内の気密性を保持できれば足りるから、従来にない柔らかな材料を用いることができ、振動板30の振動を阻害しない状況を作ることができ、振動のQを大きくすることができる。
また、振動板30の共振周波数は、振動板30の質量を大きくすることで下げることができる。すなわち、振動板30の大きさや材質などによっても調整が可能であり、振動板30に何らかの部材を貼り付けることによっても容易に調整が可能である。
ここで、等価回路を用いて本件発明と従来技術との差異について説明する。図9はスピーカの電気等価回路である。ボイスコイルインピーダンスを介してCmes、Res、Lcesで構成される低域共振回路(共振周波数=F0)が電圧駆動される構成を持っている。
ここで、
Re=ボイスコイル直流抵抗
Le,L2,R2=高域インピーダンス上昇要素
Cmes=スピーカ振動系の等価質量容量
Lces=スピーカ振動系の等価コンプライアンスインダクタンス
Res=スピーカ振動系のメカニカル制動抵抗
である。
図10はスピーカエンクロージャーの等価回路であり、Lve=等価容積インダクタンスである。
図11は、従来のドローンコーンやヒンジ固定フラップなどのパッシブラジエターの等価回路である。図示のように、スピーカからボイスコイルのファクターを無くした回路構成を持つ。質量Cmepは、エッジの持つコンプライアンスLcepと制動抵抗Repで支えられている。
ここで、
Cmep=パッシブラジエターの等価質量容量
Lcep=パッシブラジエターの等価コンプライアンスインダクタンス
Rep=パッシブラジエターのメカニカル制動抵抗
である。図12は従来のパッシブラジエターシステムの等価回路である。信号電圧がスピーカを駆動し、スピーカの音響出力がスピーカエンクロージャー容積を介してパッシブラジエターを駆動する。
システムとしての低域共振周波数は、ほぼCmepとLveの共振周波数になる。少ない容積で共振周波数を下げるには、Cmepを大きくする必要があり、これはパッシブラジエターが重くなることを意味する。重いパッシブラジエターを支えるには、丈夫で強度のあるエッジが必要になる。一方、エッジには柔軟性が要求されるため、ゴムやウレタンなどの柔らかい材料が使われるが、強度を上げるには厚くする必要がある。しかし、エッジを厚くするということは、等価コンプライアンスLcepを下げると同時に制動力も大きくするということになる(電気等価回路において表現すれば抵抗値Repが下がるということになる)。このため、パッシブラジエターのロスが大きくなり、低音の再生能力が下がってしまう。
図13は本発明に係る振動板の等価回路である。振動板は一辺が完全に固定されているため振動板自身がコンプライアンスLcebを持ち自重を支えている。振動板は弾性体で作られているので、エッジ材料のような抵抗成分は無視できる。エッジは振動板の自重を支える必要がないため薄い材料で良く、コンプライアンスLcexを非常に大きくすることができ、これにより必然的にロスも非常に小さくなる(電気等価回路において表現すれば制動抵抗Rexが大きくなる)。
図13において、
Cmeb=振動板の等価質量容量
Lceb=振動板の等価コンプライアンスインダクタンス
Lcex=振動板エッジの等価コンプライアンスインダクタンス
Rex=振動板エッジのメカニカル制動抵抗
である。図14は本発明に係るスピーカシステムの等価回路である。図12と比較した場合、スピーカとスピーカエンクロージャー容積を同じとすると、
Cmep=Cmeb
とすれば、低域の共振周波数も同じになる。この重量を支えるコンプライアンスも同等のものが必要になるが、図12ではLcepであり、図14ではLcex>>Lcebであるから、ほとんどLcebとなり、適切な設計をすればほぼ
Lcep=Lceb
となる。ここまでのファクターに大きな差異はない。しかし、ここまでの説明で明らかなように、
Rex>>Rep
となることが、本願発明の重要な特徴であり、これにより従来方式に較べてロスが大幅に少なくなり、低音再生が有利になることが分かる。
以上説明したように、本発明によれば、小型であっても充分な低音成分を出力することができる。スピーカ10が駆動されると、スピーカ10のコーン紙の振動がスピーカエンクロージャー20内の空気に伝搬され、この空気の振動によって振動板30の振動部位31、32が振動する。振動部位31、32の共振周波数は、スピーカ10の周波数特性、サブチャンバ23、24の容積、振動部位31、32の面積および質量を調整することによって、低音域が増強され、かつ、高音域がカットされた所望値に設定することができる。さらに、サブチャンバ23と24の容積比、振動部位31と32の面積比および質量比を異ならせることによって、振動部位31、32の共振周波数を異ならせることができる。サブチャンバ23、24においてスピーカ10は互いに逆相で駆動されるから、振動部位31、32から出力される音波の周波数特性が重ね合わされることにより、ある幅を持ったバンドパス特性を有することになる。従って、スピーカシステムの周波数特性は2つのピークを併せ持ち、一定の幅のバンドパス特性を有した低音域の増強が可能となる。サブチャンバ23と24の容積比、振動部位31と32の面積比を変更することによって、2つのピークの間隔を所望の値に調整することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。
(1)図15は、隔壁部材25にスピーカ10を複数設けたスピーカシステムの例を示す図である。同図は、スピーカシステムを図1におけるy方向から見た断面図である。このように複数のスピーカ10をその前面を同一方向に向けてz方向に並べて設けることによってスピーカシステムの出力を増大させることができる。このようにすれば、スピーカシステムの出力を増大させるためにスピーカ10の口径を大きくする必要がなくなるから、スピーカエンクロージャー20のy方向の厚さを厚くすることなく出力を増大させることができる。
また、複数の小口径のスピーカ10をその前面を同一方向に向けてz方向に並べて設けるようにしてもよい。このようにすれば、出力を減少させることなくスピーカエンクロージャー20のy方向の厚さを薄くすることができる。
(2)図16は、2つのスピーカ10の前面を対向させたスピーカ対を隔壁部材25に設けたスピーカシステムの例を示す図である。スピーカ対は、一対でもよいしz方向に複数対を並べて設けてもよい。そして、サブチャンバ23側に設けられたスピーカ10とサブチャンバ24側に設けられたスピーカ10とを互いに逆相で駆動する。このようにすれば、サブチャンバ23側のスピーカ10の背面とサブチャンバ24側のスピーカ10の背面は互いに逆相で振動させられ、スピーカ10を対にしない場合に対しておよそ2倍の出力が得られる。このようにすれば、スピーカシステムの出力を増大させるためにスピーカ10の口径を大きくする必要がなくなるから、スピーカエンクロージャー20のy方向の厚さを厚くすることなく出力を増大させることができる。
(3)図17は、スピーカエンクロージャー50の外観を表す斜視図である。スピーカエンクロージャー50は直方体状の筐体であり、前面板50aの中央部から下部にかけてU字状に細長く切り欠かれた開口部61が、中央部から上部にかけてU字状に細長く切り欠かれた開口部62が設けられている。スピーカエンクロージャー50内部には隔壁部材55が設けられており、スピーカエンクロージャー50の内部空間をサブチャンバ53、54が形成されている。
この場合、U字状の内側の部分が振動板51、52として機能する。すなわち、振動板51の上部は前面板50aと一体であり、それ以外の部分はU字形状の開口部61によって前面板50aから切り離されているから、振動板51はその上端が固定された状態で自由に振動可能である。同様に、振動板52の下部は前面板50aと一体であり、それ以外の部分はU字形状の開口部62によって前面板50aから切り離されているから、振動板52はその下端が固定された状態で自由に振動可能である。
図18は、スピーカエンクロージャー50の側断面図である。同図に示すように、開口部61、62は断面がアーチ状のエッジ70によって、スピーカエンクロージャー50の内側から覆われ、これによりスピーカエンクロージャーの気密性が保持されている。本変形例の動作は、前述した実施形態と同様であり、振動板51、52の共振周波数付近の帯域(低音帯域)が増強される。
本発明の実施形態のスピーカシステムの外観を示す斜視図である。 スピーカシステムをz方向から見た平面図である。 スピーカシステムのA−A断面図である。 スピーカエンクロージャー20をy方向から見た正面図である。 スピーカエンクロージャー20をx方向から見た側面図である。 スピーカエンクロージャー20のB−B断面図である。 スピーカ10および振動板30の周波数特性を示す図である。 スピーカシステムのバンドパス特性の概念を示した図である。 スピーカの電気等価回路である。 スピーカエンクロージャーの等価回路である。 従来のパッシブラジエターの等価回路である。 従来のパッシブラジエターシステムの等価回路である。 本発明に係る振動板の等価回路である。 本発明に係るスピーカシステムの等価回路である。 スピーカ10を複数設けたスピーカシステムの例を示す図である。 スピーカ対を設けたスピーカシステムの例を示す図である。 スピーカエンクロージャー50の外観を表す斜視図である。 スピーカエンクロージャー50の側断面図である。 特許文献1で提案されているスピーカシステムの断面図である。
符号の説明
20…スピーカエンクロージャー、10…スピーカ、11…振動紙、21、22…開口部、23、24…サブチャンバ、25…隔壁部材、20a…連結部材、30…振動板、31、32…振動部位、41、42…エッジ。

Claims (4)

  1. 内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、
    前記スピーカエンクロージャーの内部を第1のサブチャンバと第2のサブチャンバとに分割する隔壁部材と、
    一面が前記第1のサブチャンバに向くように、他面が前記第2のサブチャンバに向くようにして前記隔壁部材に取り付けられ、供給される信号に応じて前記一面と他面が前記第1のサブチャンバと前記第2のサブチャンバにおいて互いに逆相で振動するスピーカ手段と、
    前記スピーカエンクロージャーの一面において、前記第1のサブチャンバに対応する位置に設けられた第1の開口部、および、前記第2のサブチャンバに対応する位置に設けられた第2の開口部と、
    前記第1の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第1の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第1の振動板と、
    前記第2の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第2の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第2の振動板と、
    前記第1の振動板と前記第1の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第1の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第1のサブチャンバの気密性を保持する第1の密閉部材と、
    前記第2の振動板と前記第2の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第2の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第2のサブチャンバの気密性を保持する第2の密閉部材と
    を具備することを特徴とするスピーカシステム。
  2. 前記スピーカ手段は一または複数のスピーカであって、その振動面の前面を前記一面とし、その振動面の背面を前記他面とすることを特徴とする請求項1に記載のスピーカシステム。
  3. 前記スピーカ手段は2つのスピーカの振動面の前面を対向配置した一対または複数対のスピーカ対であって、各スピーカ対の一方のスピーカの振動面の背面を前記一面とし、各スピーカ対の他方のスピーカの振動面の背面を前記他面とすることを特徴とする請求項1に記載のスピーカシステム。
  4. 内部が密閉されるスピーカエンクロージャーにおいて、
    前記スピーカエンクロージャーの内部を第1のサブチャンバと第2のサブチャンバとに分割する隔壁部材と、
    前記隔壁部材に設けられたスピーカ取付穴と、
    前記スピーカエンクロージャーの一面において、前記第1のサブチャンバに対応する位置に設けられた第1の開口部、および、前記第2のサブチャンバに対応する位置に設けられた第2の開口部と、
    前記第1の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第1の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第1の振動板と、
    前記第2の開口部が設けられた一面において片持ち梁のようにして一端が固定されるとともに他端が該第2の開口部との間に空隙を形成するように設けられて自由端となり、弾性により振動可能な第2の振動板と、
    前記第1の振動板と前記第1の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第1の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第1のサブチャンバの気密性を保持する第1の密閉部材と、
    前記第2の振動板と前記第2の開口部の縁部との間に形成された空隙を、該第2の振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記第2のサブチャンバの気密性を保持する第2の密閉部材とを具備することを特徴とするスピーカエンクロージャー。
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