JP4059272B2 - スピーカシステムおよびスピーカエンクロージャー - Google Patents

スピーカシステムおよびスピーカエンクロージャー Download PDF

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本発明は、スピーカシステムおよびスピーカエンクロージャーの技術に関する。
スピーカシステムには、種々のタイプのものが開発されており、例えば、バスレフやドローンコーンを用いたものがその代表である。
バスレフは、ヘルムホルツ共鳴を利用して低音を増強するものであり、ドローンコーンは駆動回路のないスピーカユニットを取り付け、エンクロージャーの容積内の空気との共振を利用して低音を増強するものである。
バスレフにおいては、エンクロージャーの容積が小さい場合、共振周波数を低くするには、共鳴管を小型で細長くしなければならず、空気抵抗が大きくなって低音増強機能が著しく低下し、また、共鳴管を通過する空気の速度が非常に速くなるために笛のような風切り音が発生するという問題がある。
また、ドローンコーンの場合は、共振周波数を低くするには、その質量を大きくしなければならない。そして、共振周波数を下げるためには、振動板を支持するエッジのコンプライアンスが大きくなければならないが、質量の大きな振動板を支持するためにはエッジのバネ性や強度は大きくなければならず、コンプライアンスと相反することになる。また、重い振動板が完全に平行に振動することは難しく、ローリングやロッキングと呼ばれる異常振動を伴い易い。この異常振動は、歪みを増加させ無駄なエネルギーを消費して、効率を低下させる。
上述したドローンコーンの欠点を補うために、例えば、特許文献1などが提案されている。この方式によれば、ローリングやロッキングは防止することができるが、振動板(フラップ)の重量をその周囲に設けられたエッジで支える構造であるため、エッジに強度が必要になり、その制動効果により振動のQが小さくなるという問題がある。
特表2002−531036号公報
上記課題を解決するため、本発明は、小型であっても充分な低音成分を出力することができ、ローリングやロッキングを防止するとともに振動板の振動のQも大きくすることができるスピーカシステムおよびスピーカエンクロージャーを提供することを目的とする。
本願発明によるスピーカシステムは、内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、前記スピーカエンクロージャーに取り付けられたスピーカと、前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備し、前記振動板の前記自由端が前記固定端に対し前記スピーカ側に位置していることを特徴とする。
また、本願発明によるスピーカシステムは、内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、前記スピーカエンクロージャーに取り付けられたスピーカと、前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備し、前記振動板の前記自由端が前記スピーカシステムの重心付近に配置されていることを特徴とする。
また、好ましい態様として、前記振動板の固定端は、前記スピーカエンクロージャーの底板または天板に固定されているようにしてもよい。
また、さらに好ましい態様として、前記開口部は、前記一面において、線で囲まれる平面図形の輪郭の一部を残して切り欠くように形成され、前記平面図形に対応する部分が前記振動板として機能するようにしてもよい。
また、さらに好ましい態様として、前記振動板および前記開口部が設けられる一面は、前記スピーカが取り付けられた面と同一の面であるようにしてもよい。
また、本願発明によるスピーカエンクロージャーは、スピーカが取り付けられるスピーカ取り付け穴を有した密閉型のスピーカエンクロージャーにおいて、前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備し、前記振動板の前記自由端が前記固定端に対し前記スピーカ側に位置していることを特徴とする。
また、本願発明によるスピーカエンクロージャーは、スピーカが取り付けられるスピーカ取り付け穴を有した密閉型のスピーカエンクロージャーにおいて、前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備し、前記スピーカエンクロージャーに前記スピーカが取り付けられた場合の重心位置に近い位置に前記振動板の前記自由端が配置されていることを特徴とする。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
<A:第1実施形態>
図1は、この発明の第1の実施形態であるスピーカシステム1の外観を示す斜視図である。また、図2(a)はスピーカシステム1の正面図であり、図2(b)は図2(a)に示すB−B線断面図である。図において、10は、ボイスコイル、マグネット等を備えたスピーカであり、スピーカエンクロージャー20の前面に取り付けられている。スピーカエンクロージャー20は、内部が密閉される直方体状のエンクロージャーであり、6面とも板状の部材(例えば、木材、合成樹脂、金属もしくはそれらを張り合わせた合成材等)により形成されている。図1に示すように、スピーカエンクロージャー20の前面のバッフル板20aを貫通してスピーカ取付穴が設けられ、このスピーカ取付穴に前述したスピーカ10が挿入されている。この場合、スピーカ10の前面のフレームがネジによりバッフル板20aに固定されている。
スピーカエンクロージャー20のバッフル板20aの中央部から下部にかけて、U字状に細長く切り欠かれた開口部21が設けられている。この開口部21のU字状の内側の部分は振動可能な振動板22として機能する。すなわち、振動板22の下部はバッフル板20aと一体であり、それ以外の部分はU字形状の開口部21によってバッフル板20aから切り離されているから、振動板22は、スピーカエンクロージャー20の底面20bに固定された一端が固定端22bとなり、他端が自由端22cとなって弾性により振動可能である。なお、以下においては、振動板22の上部を振動部位22aという。
このスピーカシステム1においては、図示のように、振動板22の自由端22cが固定端22bに対しスピーカ10側に位置している。すなわち、振動板22の自由端22cがスピーカ10に近い位置に配置され、逆に、固定端22bがスピーカ10から遠い位置に配置されている。
振動板22(すなわちバッフル板20a)は、音響的に十分な強度と弾性とを併せ持つ部材で形成されている。ここで、「音響的に十分な強度」とは、空気を通さず、空気よりも十分大きな密度をもち、振動したときに音波を発生する強度と弾性を持つことを意味する。また、振動板22は、それ自体で音波をある程度遮断できる性質を有する。
また、「弾性」の度合いは、この振動板22の一辺を固定して水平に置いたときに自重を支えてほぼ水平に保つことができる程度である。このような特性を満足させるために、振動板22には、例えば薄い木の板、薄い合成樹脂、金属の板もしくはそれらを張り合わせた合成材等を用いることもできる。
図2において、30は、ゴム等の柔軟な材料で構成されたエッジである。図2(b)に示すように、振動板22と開口部21の縁部との間に形成される空隙は、断面がアーチ状のエッジ30によって、振動板22の振動を可能にした状態でスピーカエンクロージャー20の内側から覆われ、これによりスピーカエンクロージャー20の気密性が保持されている。なお、スピーカエンクロージャー20の背面にはスピーカ10のボイスコイルに接続されたスピーカ端子が設けられているが、図2(b)では省略してある。
振動板22は、その一端がバッフル板20aと連通して固定端となっているから、振動板22はそれ自体が支持機能を有している。そのため、エッジ30は振動板22の重量を支える必要がなく、気密性を保つ機能のみを持てばよい。したがって、柔らかい材料を使うことができ、振動板22の振動を抑制しない動き易い状況を作ることができる。
上述した構成において、スピーカ10が駆動されると、スピーカ10のコーン紙の振動がスピーカエンクロージャー20内の空気に伝搬され、この空気の振動によって振動板22の振動部位22aが振動する。このとき、エッジ30で気密性を保持された状態で振動する振動板22は、振動したときにスピーカエンクロージャー20内の空気容積を圧縮または伸張させる。したがって、振動板22の弾性に加えてスピーカエンクロージャー20の空気バネも加わったコンプライアンス(機械的可とう性)と振動板22の等価質量との間で新たな共振周波数を持つようになる。この結果、振動板22の共振周波数を中心に再生される音が生じる。
ここで空気バネと振動板22の弾性(バネ性)は、等価的に2つのバネが並列に接続されているように機能するが、空気バネの方が振動板22のバネよりもコンプライアンスが小さいので、スピーカシステムとしての振動板22の共振周波数はほぼ空気のコンプライアンスと振動板22の等価質量で決まる。
以上のようにして決定される共振周波数は、容易に低音領域の所望値にすることができる。例えば、スピーカ10に有効直径8cm、最低共振周波数70z、Q=0.35のスピーカを用い、スピーカエンクロージャー20の内容量を3.5リッターとした場合に、振動板22の質量を135グラムとすると振動板の共振周波数を50Hzとすることができる。
ここで、図3(a)は上述した具体例の場合のスピーカ10の周波数特性であり、図3(b)は振動板22の周波数特性である。この図で明らかなように、本実施形態において上述の数値を設定した場合は、50Hz付近が強調された低音を強く出力することができる。このように、本実施形態においては、振動板22の曲げ振動を利用することによって、ドローンコーンのようなパッシブラジエターとしての作用が得られる。
また、振動部位22aは、「うちわ」のように全体がしなりながら振動する1次振動モードで低音再生を行う。なぜなら、振動板22には2次や3次またはそれ以上の振動モードも存在しているが、空気で振動板22全体が駆動されるため1次振動モードが最も強く発生し、それ以外の振動モードの発生レベルは小さくなるからである。また、高次モードをさらに抑えたい場合は、振動板22の材質や厚さまたは複数の材料の張り合わせなどで調整が可能である。
なお、本実施形態においては、振動板22は、自重を十分支えられる程度の弾性を持っているので、振動板22を水平に置いてもそれ自身で水平を保持できる。また、振動板22自身の弾性が自由共振のコンプライアンスになるが、弾性を持った振動板22の内部損失は同じ弾性を持たせたエッジ30の内部損失より遥かに小さいため振動時の損失は十分小さい。
また、本実施形態におけるエッジ30は、従来のドローンコーン等に用いられるエッジに較べ柔らかな材質とすることができ、また、機械的な強度も必要ない。従来のドローンコーン等のパッシブラジエターにおいては、剛体の振動板をエッジで支えるという構造が必要であるため、エッジは振動板の支持と気密性の確保という2つの機能を持っていた。しかし、本実施形態においては、振動板22の支持機能を振動板22自体に持たせているので、エッジ30に支持機能は必要でない。そのため、エッジ30は、スピーカエンクロージャー20内の気密性を保持できれば足りるから、従来にない柔らかな材料を用いることができ、振動板22の振動を阻害しない状況を作ることができ、振動のQを大きくすることができる。
また、振動板22の共振周波数は、振動板22の質量を大きくすることで下げることができる。すなわち、振動板22の大きさや材質などによっても調整が可能であり、振動板22に何らかの部材を貼り付けることによっても容易に調整が可能である。
ここで、等価回路を用いて本件発明と従来技術との差異について説明する。図4はスピーカの電気等価回路である。ボイスコイルインピーダンスを介してCmes、Res、Lcesで構成される低域共振回路(共振周波数=F0)が電圧駆動される構成を持っている。
ここで、
Re=ボイスコイル直流抵抗
Le,L2,R2=高域インピーダンス上昇要素
Cmes=スピーカ振動系の等価質量容量
Lces=スピーカ振動系の等価コンプライアンスインダクタンス
Res=スピーカ振動系のメカニカル制動抵抗
である。
図5はスピーカエンクロージャーの等価回路であり、Lve=等価容積インダクタンスである。
図6は、従来のドローンコーンやヒンジ固定フラップなどのパッシブラジエターの等価回路である。図示のように、スピーカからボイスコイルのファクターを無くした回路構成を持つ。質量Cmepは、エッジの持つコンプライアンスLcepと制動抵抗Repで支えられている。
ここで、
Cmep=パッシブラジエターの等価質量容量
Lcep=パッシブラジエターの等価コンプライアンスインダクタンス
Rep=パッシブラジエターのメカニカル制動抵抗
である。図7は従来のパッシブラジエターシステムの等価回路である。信号電圧がスピーカを駆動し、スピーカの音響出力がスピーカエンクロージャー容積を介してパッシブラジエターを駆動する。
システムとしての低域共振周波数は、ほぼCmepとLveの共振周波数になる。少ない容積で共振周波数を下げるには、Cmepを大きくする必要があり、これはパッシブラジエターが重くなることを意味する。重いパッシブラジエターを支えるには、丈夫で強度のあるエッジが必要になる。一方、エッジには柔軟性が要求されるため、ゴムやウレタンなどの柔らかい材料が使われるが、強度を上げるには厚くする必要がある。しかし、エッジを厚くするということは、等価コンプライアンスLcepを下げると同時に制動力も大きくするということになる(電気等価回路において表現すれば抵抗値Repが下がるということになる)。このため、パッシブラジエターのロスが大きくなり、低音の再生能力が下がってしまう。
図8は本願発明にかかる振動板の等価回路である。振動板は一辺が完全に固定されているため振動板自身がコンプライアンスLcebを持ち自重を支えている。振動板は弾性体で作られているので、エッジ材料のような抵抗成分は無視できる。エッジは振動板の自重を支える必要がないため薄い材料で良く、コンプライアンスLcexを非常に大きくすることができ、これにより必然的にロスも非常に小さくなる(電気等価回路において表現すれば制動抵抗Rexが大きくなる)。
図8において、
Cmeb=振動板の等価質量容量
Lceb=振動板の等価コンプライアンスインダクタンス
Lcex=振動板エッジの等価コンプライアンスインダクタンス
Rex=振動板エッジのメカニカル制動抵抗
である。図9は本件発明におけるスピーカシステムの等価回路である。図7と比較した場合、スピーカとスピーカエンクロージャー容積を同じとすると、
Cmep=Cmeb
とすれば、低域の共振周波数も同じになる。この重量を支えるコンプライアンスも同等のものが必要になるが、図7ではLcepであり、図9ではLcex>>Lcebであるから、ほとんどLcebとなり、適切な設計をすればほぼ
Lcep=Lceb
となる。ここまでのファクターに大きな差異はない。しかし、ここまでの説明で明らかなように、
Rex>>Rep
となることが、本願発明の重要な特徴であり、これにより従来方式に較べてロスが大幅に少なくなり、低音再生が有利になることが分かる。
以上が、ドローンコーンやヒンジ固定フラップなどのパッシブラジエターを用いたスピーカシステムと、本実施形態であるスピーカシステム1との差異についての説明である。
次に、本実施形態であるスピーカシステム1について、図26に示すスピーカシステムと比較しつつ以下に説明する。
図26に示すスピーカシステム2は、スピーカエンクロージャー220のバッフル板220aの中央部から下部にかけて、U字状に細長く切り欠かれた開口部221が設けられており、開口部221の内側の部分が振動板222として機能するようになっている。このスピーカシステム2においては、図示のように、振動板222の固定端222bが自由端222cに対しスピーカ10側に位置している。すなわち、振動板222の固定端222bがスピーカ10に近い位置に配置され、逆に、自由端222cがスピーカ10から遠い位置に配置されている。
このようなスピーカシステムにおいても、上述した実施形態と同様に、振動板222の振動によって低音を増強することができる。すなわち、中・高音域の音がスピーカ10から再生されるとともに、中・低音域の音が振動板222から再生される。
ところで、図26に示すようなスピーカシステムにおいては、振動板222がその上端で固定されているので、振動板222の曲げ振動によって放射される音波は、振幅が大きくなる下部ほど音圧が高くなる。すなわち、低音域の音源が振動板の下部(自由端付近)に位置していることと等価となる。この場合、スピーカ10から離れた振動板222の自由端222cを中心に再生される低音と、スピーカ10から再生される中・高音との各々の音源位置が離れてしまうため、再生される音の帯域によって音像が移動してしまうことがあった。実際の音楽信号においては楽器の音色は様々な帯域の音の重なりで発音されるため、音域によって音源位置が離れてしまうと、音像の焦点が拡がってぼやけた音に感じることがある。
また、図26に示すようなスピーカシステムにおいては、スピーカ10と振動板222の自由端222cとの双方から同時に再生される中低音については、双方からの音波の位相の違いにより視聴位置において干渉が生じて周波数特性に山谷を生じてしまうとことがあった。
これに対し本実施形態においては、振動板22の自由端22cとスピーカ10とが近接配置されているので、中高音の音源位置(スピーカ10の位置)と中低音の音源位置(自由端22c)とが近づき、これにより、音域による音像の移動を抑えることができる。
また、振動板22の自由端22cとスピーカ10とが近接配置されているので、スピーカ10から視聴位置までの距離と振動板22の自由端22cから視聴位置までの距離との距離差が少なくなる。そのため、干渉を起こす可能性のある周波数帯は距離差が小さい場合においても生じる帯域に限られる。すなわち、干渉を起こすおそれがある周波数は、高域の帯域に限られる。しかし、実際には振動板22からはその共振周波数から離れた高音域はほとんど再生されないため、干渉による周波数特性の乱れは極めて小さいものとなる。すなわち、本実施形態においては、視聴位置におけるスピーカ10から放出される音波と振動板22の自由端22cから放出される音波との位相差を少なくし、周波数特性の山谷を抑制して音像を明確にすることができる。
次に、振動板の振動がスピーカシステム全体に与える影響の差異について、図10(a)および図27(a)を参照しつつ以下に説明する。
図10(a)は、図1に示したスピーカシステム1において振動板22の振動がスピーカシステム1に与える力を模式的に示した図であり、図27(a)は、図26に示したスピーカシステム2において振動板222の振動がスピーカシステム2に与える力を模式的に示した図である。
図10(a)および図27(a)に示す点Gは、それぞれスピーカシステム1,2の重心である。スピーカシステム1,2の重量がそれぞれ240g,スピーカ10の重量が140gであるとすると、図示のように、重心はかなりスピーカシステム1,2の上方に偏っている。また、図10(a)および図27(a)に示す矢印Pは、振動板22,222の振動の様子を模式的に表したものである。
図27(a)において、振動板222が振動すると、スピーカエンクロージャー220内部に密閉された空気がバネとして働き、振動板222に押し引きされる。振動板222の振動時における振幅は自由端222cほど大きくなるため、空気バネを押す力は自由端222cに近づくほど大きくなる。このように、スピーカシステム2の底面近くにおいて相当な質量を持った振動板222が振動することによって、スピーカシステム2全体には重心を中心に揺動する力が働き、この揺動力がスピーカシステム2全体を振動させ、ひいてはスピーカシステム2が振動によって床面を移動してしまう。また、スピーカシステム2全体が振動することによってスピーカ10や振動板222全体が振動してしまうため、スピーカ10や振動板222の振動中心がブレしてしまい、音像が不明確になったり低域の音圧が低下したりするなど状態が生じることもある。この場合、スピーカエンクロージャーの容積が小さいほど空気バネは硬くなるため、特に小型のスピーカシステムほど振動が顕著になりやすい。また、振動板の振幅が大きくなる低音を多く含む音楽を再生した場合にも、顕著となる。
これに対し、本実施形態であるスピーカシステム1は、振動板22の自由端22cとスピーカシステム1の重心Gとの距離が小さくなっている。図10(a)と図27(a)とを比較すると明らかなように、図10(a)に示す振動板22の自由端22cとスピーカシステム1の重心との距離は、図27(a)に示すそれの約1/3となっている。
振動板がスピーカシステム全体を揺り動かす回転モーメントは、スピーカシステムの重心から回転を及ぼす力の作用点までの距離に比例するから、図10(a)に示すスピーカシステム1全体の振動は、図27(a)に示すスピーカシステム2の約1/3となる。
このように本実施形態においては、振動板22の自由端22cをスピーカシステム1の重心付近に配置するので、振動板22の振動により発生するスピーカシステム1全体を振動させる回転モーメントを低減することができ、スピーカシステム全体が移動してしまうことを抑制することができる。
具体的には、例えば、図1および図26に示すスピーカシステムが、80mm×140mm×30mm(W、H、D)、内容積が約200cc、重量が240gである場合、最大許容入力20Wのフルレンジユニットと振動板とによって90Hzからの再生がそれぞれ可能である。しかし、図26に示すスピーカシステムにおいては、例えばゴム足等の滑り止めを底面に設けただけでは、実用的な音量を出力しただけでスピーカシステムが振動し、この振動によって自走状態で移動してしまう。これに対し、本実施形態におけるスピーカシステムにおいては、同一のサイズであっても、ゴム足を設けるだけで実用的な音量においてスピーカシステムの移動はほとんど発生しない。
ところで、図26に示すスピーカシステム2においては、振動板222の固定端222bをスピーカエンクロージャー220の中央よりに配置している。そのため、スピーカ10の取付穴と開口部221とに挟まれた部分のバッフル板220aは、スピーカエンクロージャー220の天板220cおよび底板220bからの距離が遠くなり、主に両側板によって支えられるため、中央部が振動しやすい構造となる。そのため、振動板222に高次共振を誘起しやすくなり、低域の再生音圧が低下したり、音像が不明確となる状態が生じることがある。
これに対し本実施形態においては、振動板22の固定端22bを、構造材として強固な底面20bに固定するので、振動板22の不要振動や低音の音圧の低下を抑制することができ、音像を明確にすることができる。
また、振動板222の振動による力の方向をベクトルに分解すると、図26に示すスピーカシステムの場合は、図27(b)に示すように、振動板222を前後に振り出すと同時に浮き上がる力が働き、戻るときに底面に押し付ける力が働く。
これに対して、本実施形態におけるスピーカシステム1においては、図10(b)に示すように、前後に振り出すときに底面に押し付ける力が働き、振り戻す時に浮き上がる力が働く。つまり、図26に示すスピーカシステム2においては、振動による力が足元をすくうような向きに働いており、スピーカシステム2の移動を助長してしまっていた。これに対し本実施形態のスピーカシステム1においては、振動に対して重力の方向に踏ん張る力を発生させることができる。
このように本実施形態においては、振動板22の固定端22bをスピーカシステム1の底面20b側として重力の方向に配置することで、足元をすくうような力がスピーカシステム1に加わることを防止することが可能となり、スピーカシステム1全体の振動を抑制し、スピーカシステム1全体の移動を抑制することが可能となる。
<B:第2実施形態>
次に、この発明の第2の実施形態を説明する。
図11は、この発明の実施形態であるスピーカシステム1Aの外観を示す斜視図である。また、図12は図11に示すスピーカシステム1Aの側断面図である。また、図13(a)は図12に示すA−A線断面図であり、図13(b)は図12に示すB−B線断面図である。なお、図11に示すスピーカシステム1Aおいて、図1に示したスピーカシステム1と同様の構成要素については、同じ符号を付与して適宜その説明を省略する。
スピーカエンクロージャー20Aのバッフル板20aの中央部から下部にかけて、U字状に細長く切り欠かれた開口部21Aが設けられている。この開口部21AのU字状の内側の部分は振動可能な振動板22Aとして機能する。すなわち、振動板22Aの上部はバッフル板20aと一体であり、それ以外の部分はU字形状の開口部21Aによってバッフル板20aから切り離されているから、振動板22Aはその上端が固定された状態で自由に振動可能である。なお、以下においては、振動板22Aの上部を振動部位22aという。また、振動板22Aの固定された上端を固定端22bという。
図14はバッフル板20aの背面を示す図であり、エッジ30は図示のように、U字状の開口部21Aをその形状に沿って覆っている。振動板22Aは、その一端がバッフル板20aと連通して固定端となっているから、振動板22Aはそれ自体が支持機能を有している。そのため、エッジ30は振動板22Aの重量を支える必要がなく、気密性を保つ機能のみを持てばよい。したがって、柔らかい材料を使うことができ、振動板22Aの振動を抑制しない動き易い状況を作ることができる。本実施形態の動作は、前述した第1実施形態と同様であり、振動板22Aの共振周波数付近の帯域(低音帯域)が増強される。
図12において、40は、振動板22Aの固定端22b付近に設けられ、振動板22Aの固定端22bを補強するための補強壁である。補強壁40は、図13(b)に示すように、振動板22Aが固定された固定端22b付近とこの固定端22bに対向する背面20eの内面にわたってスピーカエンクロージャー20Aの内部空間を空気の流通を可能にした状態で仕切っている。また、補強壁40は、図13(b)に示すように、スピーカエンクロージャー20Aの両側板20d,20dから相応の距離をもって設置されている。これは、スピーカ10の背面の音圧を振動板22Aの背面に導く必要があるので、補強壁40とスピーカエンクロージャー20Aの側板20dとの間に、振動板22Aの共振周波数においてほとんど空気抵抗の必要を持たない程度の隙間が必要であるためである。
また、この補強壁40は、振動板22Aの固定端22bを補強する機能に加えて、スピーカ10の背面とスピーカシステム1Aの底板20bとの間を音波が往復して定在波が発生するのを抑制する機能をも兼ね備えている。
ところで、スピーカシステム1Aにおいては、スピーカ10の取付穴と開口部21Aとに囲まれた部分のバッフル板20aは、天板20cおよび底板20bからの距離が遠くなり、主に両側板20d,20dによって支えられるため、中央部が振動しやすい構造となる。そのため、振動板22Aに高次共振を誘起し易くなり、低域の再生音圧が低下したり音像が不明確となり易い。
これに対し本実施形態においては、振動板22Aの固定端22b付近に、バッフル板20aとスピーカシステム1Aの背板20eにわたる補強壁40を設けているので、振動板22Aの不要振動や低音の音圧の低下を抑制することができ、音像を明確にすることができる。
さらに、スピーカ10背面とスピーカシステム1Aの底板20bとの間を音波が往復して定在波が発生するのを抑制することができる。
<C:第3実施形態>
以下、図面を参照し、この発明の第3の実施形態を説明する。
図15は、この発明の実施形態であるスピーカシステム1Bの正面図である。また、図16は図15に示すスピーカシステム1BのA−A線断面図であり、図17は図15に示すB−B線断面図である。なお、図15に示すスピーカシステム1Bおいて、図1に示したスピーカシステム1と同様の構成要素については、同じ符号を付与して適宜その説明を省略する。
図において、10A,10Bは、ボイスコイル、マグネット等を備えたスピーカであり、スピーカエンクロージャー20Bの前面に取り付けられている。スピーカ10Aは高音を再生するためのスピーカであり、スピーカ10Bは中低音を再生するためのスピーカである。
このスピーカシステム1Bは、縦置き・横置きのいずれでも使用可能となっている。具体的には、図15の設置方向でスピーカシステムを設置(床面や棚に載置)することも可能であり、または、図18に示す設置方向でスピーカシステムを設置することも可能である。なお、以下の説明においては、図15に示す設置方向を「縦置き」とし、図18に示す設置方向を「横置き」とする。
スピーカシステム1Bは、図15に示すように、2枚のバッフル板20a,20fを備えている。バッフル板20a,20fは各々正方形の板状の部材により形成されており、スピーカエンクロージャー20Bの前板20cに複数のネジ50により固定されている。また、バッフル板20a,20fは、ネジ50によりスピーカエンクロージャー20Bに着脱可能であり、装着した状態ではスピーカエンクロージャー20Bの気密性を保持する。また、バッフル板20a,20fはそれぞれ、スピーカエンクロージャー20Bに対して縦横の取り付けのネジ位置が共通となっており、また、バッフル板20a,20fは正方形状であるから、それぞれの向きを変えて装着することが可能となっている。
図16に示すように、スピーカエンクロージャー20Bの前面の上部に設けられたバッフル板20aを貫通してスピーカ取付穴が設けられ、このスピーカ取付穴に前述したスピーカ10A,10Bが挿入されている。この場合、スピーカ10A,10Bの前面のフレームがネジ(図示略)によりバッフル板20aに固定されている。
スピーカエンクロージャー20Bの下部に設けられたバッフル板20fには、U字状に細長く切り欠かれた開口部21Bが設けられている。この開口部21BのU字状の内側の部分は振動可能な振動板22Bとして機能する。すなわち、振動板22Bの下部はバッフル板20fと一体であり、それ以外の部分はU字形状の開口部21Bによってバッフル板20fから切り離されているから、振動板22Bはその下端が固定された状態で自由に振動可能である。なお、以下においては、振動板22Bの下部を振動部位22aという。また、振動板22Bの固定された下端を固定端22bという。
本実施形態の動作は、前述した第1実施形態と同様であり、振動板22Bの共振周波数付近の帯域(低音帯域)が増強される。
スピーカシステム1Bの振動板22Bが振動すると、スピーカエンクロージャー20B内部に密閉された空気がバネとして働き、振動板22Bに押し引きされる。振動板22Bの振動時における振幅は自由端22cほど大きくなるため、空気バネを押す力は自由端22cに近づくほど大きくなる。振動板22Bが振動することによって、スピーカシステム1B全体には重心を中心に回転する力が働く。このとき、上述した第1実施形態で説明したように、振動板22Bがスピーカシステム1B全体を揺り動かす回転モーメントは、スピーカシステム1Bの重心から回転を及ぼす力の作用点までの距離に比例するから、スピーカシステム1Bの重心から振動板22Bの自由端22cまでの距離が大きいほど、スピーカシステム1B全体の振動が大きくなる。
一般的にスピーカシステムにおいてはスピーカの重量が大きいことが多く、このため、図15に示すように、振動板22Bの自由端22cがスピーカ10A,10Bに近い位置になるようにバッフル板20fを装着することによって、スピーカシステム1Bの重心と振動板22Bの自由端22cとの距離を小さくすることができ、これにより、スピーカシステム1B全体の振動を抑制することができる。
次に、スピーカシステム1Bを横向きに設置した場合について説明する。図15に示す振動板22Bの向きは、上述した第1実施形態で述べたように、振動板22Bが振り出すときに底面が床面に押し付けられるように力が働く向きである。これに対し、図15に示すスピーカシステム1Bをそのまま横向きに設置して使用すると、振動板22Bの振動時にスピーカシステム1Bの底板を床面に押し付ける力が働かなくなるため、スピーカシステム全体が回転するように移動し易くなる。
そのため、スピーカシステム1Bを横向きに設置する場合は、振動板22Bの自由端22cが左右ではなく上下のどちらかになる向きにバッフル板20fの向きを変更することが好ましい。振動板22Bの自由端22cが上下のどちらであっても、スピーカシステム1Bの重心と振動板22Bの自由端22cとの距離はほぼ等しくなる。つまり、どちらの向きでバッフル板20fを装着しても、振動板22Bの振動により発生する回転モーメントの大きさは同じとなる。そのため、スピーカシステム1Bを横向きに設置する場合は、音域による音像の移動を抑制して音像を明確にするため、中低音を再生するスピーカ10Aと、同じく中低音を再生する振動板22Bの自由端22cとが近づく方向が最適であるといえる。すなわち、図18に示す振動板の向きでバッフル板20fをスピーカエンクロージャー20Bに装着するのが最適である。
なお、図18に示す例においては、中低音を再生するスピーカ10Aと高音を再生する10Bとは音像が左右に拡大するのを防ぐため縦位置となるようにバッフル板20aを装着している。また、床面からの高音の反射の影響を軽減するためスピーカ10Aが上部となる向きにバッフル板20aを装着している。
このように、スピーカシステム1B全体の振動を最も抑制することのできる振動板22Bの向きは、縦向きまたは横向きの設置方向に応じて異なるが、本実施形態においては、振動板22Bが形成されたバッフル板20fを着脱可能とし、かつその向きを変更して装着することができるので、スピーカシステム1Bの使用者は、スピーカシステム1Bの設置方向(縦置き・横置き)に応じて、振動板22Bの向きを適宜変更することが可能となる。すなわち、縦・横のいずれの設置方向でスピーカシステムを設置する場合であっても、その設置方向に適した向きに振動板の向きを変更することができ、これにより、振動によりスピーカシステム全体が移動してしまうことを抑制することができる。
<D:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。
(1)上述した第1実施形態においては、スピーカ10と振動板22とをスピーカエンクロージャー20の同一面上に設け、かつスピーカ10の下部に振動板22を設けるようにした。スピーカシステムにおけるスピーカと振動板との位置関係は、上述した第1実施形態において示したものに限定されるものではない。例えば、図19に示すように、スピーカ10をスピーカシステムの下部に取り付け、スピーカ10の上部に振動板22を設けるようにしてもよい。この場合も、振動板22の自由端をスピーカ10の近傍に配置するようにすればよい。または、図20に示すような横向きのスピーカシステムにおいても、スピーカ10に近い側に振動板22の自由端を配置することで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、スピーカを取り付ける面と異なる面に振動板を形成するようにしてもよい。例えば、図21に示すように、スピーカ10と振動板22とを、スピーカエンクロージャー20Dの異なる面にそれぞれ取り付けるようにしてもよい。要するに、振動板の自由端が固定端に対しスピーカ側に位置しているようにすればよい。また、振動板の自由端をスピーカシステムの重心付近に配置することが好ましい。
なお、図22に示すような、再生音域の異なる複数のスピーカ10A,10Bが取り付けられる場合においては、中・低音域を再生するスピーカに近い側に、振動板の自由端を配置することが好ましい。
(2)上述した第1の実施形態においては、振動板の固定端を底板に固定する構造としたが、これに代えて、図19に示すように、振動板の固定端をスピーカエンクロージャーの天板に固定するようにしてもよい。
(3)上述した第2実施形態に係る補強壁の形状は、上述したものに限定されるものではなく、例えば、図23に示すような形状の補強壁40Aを用いてもよい。または、図24に示すような、穴の開いた形状の補強壁40Bを用いてもよい。なお、図23および図24は、図13(b)に示したスピーカシステム1Aの横断面図と対応する横断面図である。図24に示す形状の補強壁40Bを用いれば、強度を更に上げることができる。要するに、振動板が固定された固定端付近とこの固定端に対向する内面にわたってスピーカエンクロージャーの内部空間を空気の流通を可能にした状態で仕切る補強壁であればどのようなものであってもよい。
なお、この補強壁は、スピーカとスピーカシステムの底板との間を音波が往復して定在波が発生するのを抑制する機能を兼ね備えるため、補強壁の中央位置には穴や切り欠きを設けないようにすることが好ましい。また、補強壁の追加による新たな定在波の発生を抑えるため、スピーカエンクロージャーの長手の軸に対して垂直から多少の角度を持って設置されるのが好ましい。
以上のスピーカシステムの構成をまとめると、以下のようになる。
内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、前記スピーカエンクロージャーに取り付けられたスピーカと、前記スピーカエンクロージャーの一面において一端が固定された状態で弾性により振動可能な振動板と、前記スピーカエンクロージャーの内面において、前記振動板が固定された付近とこの部分に対向する内面にわたって前記スピーカエンクロージャーの内部空間を空気の流通を可能にした状態で仕切る補強壁と、前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備することを特徴とする。
なお、この態様において、前記開口部は、前記一面において、線で囲まれる平面図形の輪郭の一部を残して切り欠くように形成され、前記平面図形に対応する部分が前記振動板として機能することが好ましい。
また、スピーカエンクロージャーの構成としては、以下のようになる。
スピーカが取り付けられるスピーカ取り付け穴を有した密閉型のスピーカエンクロージャーにおいて、前記スピーカエンクロージャーの一面において一端が固定された状態で弾性により振動可能な振動板と、前記スピーカエンクロージャーの内面において、前記振動板が固定された付近とこの部分に対向する内面にわたって前記スピーカエンクロージャーの内部空間を空気の流通を可能にした状態で仕切る補強壁と、前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備することを特徴とする。
(4)上述した第3の実施形態においては、スピーカ10A,10Bが設けられたバッフル板20aと、振動板22Bが形成されたバッフル板20fとの両方が着脱可能であったが、スピーカが設けられたバッフル板をスピーカエンクロージャーに固定して着脱不可能としてもよい。
また、スピーカシステムの形状は上述した実施形態で示したものに限定されるものではなく、例えば、スピーカと振動板とがスピーカエンクロージャーの異なる面に形成されていてもよい。要するに、振動板が形成された板(上述した実施形態ではバッフル板)が、着脱可能であり、装着した状態ではスピーカエンクロージャーの気密性を保持するものであればよい。上述した実施形態で示したスピーカシステムと異なる形状のスピーカシステムを用いる場合でも、振動板の自由端とスピーカシステムの重心との距離によって回転モーメントの力の大きさが異なる場合があるので、振動板が形成された板を着脱可能とすることによって、そのスピーカシステムの形状と設置方向とに応じて、適宜板(振動板)の向きを最適な向きに調節することができる。
(5)上述した第3の実施形態においては、正方形状のバッフル板20fの装着方向を変更することによって、バッフル板20fに形成された振動板22Bの向きを変更するようにした。振動板の向きを変更可能とする機構はこれに限定されるものではなく、例えば、図25に示すような、スピーカエンクロージャーの気密を保ちながら振動板を回転させる機構を設けるようにしてもよい。図25は、本変形例に係るスピーカエンクロージャー20Cの正面図である。図において、スピーカエンクロージャー20Cの前面には、スピーカ10と板23とが設けられている。板23には開口部21Cにより振動板22Cが形成されている。また、板23はスピーカエンクロージャー20Cの気密性を保ったまま図中の矢印P方向に回転するようになっている。板23を回転させることにより、振動板22Cの向きを変更することができる。
以上のスピーカシステムの構成をまとめると、以下のようになる。
内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、前記スピーカエンクロージャーに取り付けられたスピーカと、前記スピーカエンクロージャーの一面に対して着脱可能であり、装着した状態では前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する板と、前記板に設けられ、一端が前記板に固定された状態で弾性により振動可能な振動板と、前記板に設けられ、かつ前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備することを特徴とする。
なお、この態様において、前記開口部は、前記板において、線で囲まれる平面図形の輪郭の一部を残して切り欠くように形成され、前記平面図形に対応する部分が前記振動板として機能することが好ましい。
また、スピーカエンクロージャーの構成としてまとめると、以下のようになる。
スピーカが取り付けられるスピーカ取り付け穴を有した密閉型のスピーカエンクロージャーにおいて、前記スピーカエンクロージャーの一面の一部または全部に着脱可能であり、装着した状態では前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する板と、前記板に設けられ、一端が前記板に固定された状態で弾性により振動可能な振動板と、前記板に設けられ、かつ前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材とを具備することを特徴とする。
(6)なお、上述した各実施形態における開口部は、U字状に限らず、要するにスピーカエンクロージャーの任意の面において、線で囲まれる平面図形を想定し、その輪郭の一部を残して切り欠くように形成すればよい。このように形成することで、前記平面図形に対応する部分が振動板として機能する。また、開口部の位置と形状はこれに限らず、振動板の振動部位に対応する位置に設けられるようにすればよい。すなわち、振動板の背後や周囲などに設けられ、振動を可能にするように形成すればよい。
本発明の第1実施形態であるスピーカシステムの外観を示す図である。 同実施形態の内部構成を示す図である。 同実施形態の周波数特性を示すグラフである。 スピーカの電気等価回路である。 スピーカエンクロージャーの電気等価回路である。 従来のパッシブラジエターの等価回路である。 従来のパッシブラジエターシステムの等価回路である。 本願発明にかかる振動板の等価回路である。 本願発明にかかるスピーカシステムの等価回路である。 本実施形態における振動板の振動がスピーカシステムに与える力を模式的に示した図である。 本発明の第2実施形態であるスピーカシステムの外観を示す図である。 同実施形態の側断面図である。 同実施形態の横断面図である。 同実施形態のバッフル板の背面を示す図である。 本発明の第3の実施形態であるスピーカシステムの正面図である。 同実施形態の側断面図である。 同実施形態の横断面図である。 同実施形態のバッフル板の向きを変更した状態を示す正面図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの外観を示す図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの外観を示す図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの外観を示す図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの外観を示す図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの横断面図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの横断面図である。 本発明の変形例に係るスピーカシステムの正面図である。 振動板を用いたスピーカシステムの外観を示す図である。 振動板の振動がスピーカシステムに与える力を模式的に示した図である。
符号の説明
1,1A,1B,2…スピーカシステム、10…スピーカ、20,20A,20B,20C,220…スピーカエンクロージャー、20a,20f…バッフル板、20b…底面、20c…天板、20d…両側板、20e…背板、21,21A,21B,21C,221…開口部、22,22A,22B,22C,222…振動板、22a…振動部位、22b…固定端、22c…自由端、23…板、30…エッジ、40…補強壁、50…ネジ。

Claims (7)

  1. 内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、
    前記スピーカエンクロージャーに取り付けられたスピーカと、
    前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、
    前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、
    前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材と
    を具備し、前記振動板の前記自由端が前記固定端に対し前記スピーカ側に位置していることを特徴とするスピーカシステム。
  2. スピーカシステムにおいて、
    内部が密閉されるスピーカエンクロージャーと、
    前記スピーカエンクロージャーに取り付けられたスピーカと、
    前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、
    前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、
    前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材と
    を具備し、前記振動板の前記自由端が前記スピーカシステムの重心付近に配置されていることを特徴とするスピーカシステム。
  3. 前記振動板の固定端は、前記スピーカエンクロージャーの底板または天板に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカシステム。
  4. 前記開口部は、前記一面において、線で囲まれる平面図形の輪郭の一部を残して切り欠くように形成され、前記平面図形に対応する部分が前記振動板として機能することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピーカシステム。
  5. 前記振動板および前記開口部が設けられる一面は、前記スピーカが取り付けられた面と同一の面であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のスピーカシステム。
  6. スピーカが取り付けられるスピーカ取り付け穴を有した密閉型のスピーカエンクロージャーにおいて、
    前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、
    前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、
    前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材と
    を具備し、前記振動板の前記自由端が前記固定端に対し前記スピーカ側に位置していることを特徴とするスピーカエンクロージャー。
  7. スピーカが取り付けられるスピーカ取り付け穴を有した密閉型のスピーカエンクロージャーにおいて、
    前記スピーカエンクロージャーの一面に設けられ、一端が固定端となり、他端が自由端となって弾性により振動可能な振動板と、
    前記振動板が設けられた一面において、前記振動板の振動部位に対応する位置に設けられた開口部と、
    前記振動板と前記開口部の縁部との間に形成される空隙を、前記振動板の振動を可能にした状態で塞ぎ、前記スピーカエンクロージャーの気密性を保持する密閉部材と
    を具備し、前記スピーカエンクロージャーに前記スピーカが取り付けられた場合の重心位置に近い位置に前記振動板の前記自由端が配置されていることを特徴とするスピーカエンクロージャー。
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