JP4148071B2 - ステータのレーシング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ステータコアの両端面から突出するコイルエンドの糸縛りを行うステータのレーシング方法に関する。さらに詳細には、径の異なるステータのコイルエンドに対するレーシングを可能とするステータのレーシング方法に関するものである。
モータの構成部品であるステータは、ステータコアに形成された各スロットにコイルが装着され形成されている。そして、ステータには、ステータコアの両端面からコイルが突出した部分であるコイルエンドが形成されている。このコイルエンドは、モータを構成した際にロータやケースに接触するおそれがある。このため、コイルエンドを糸で縛り付けて(いわゆるレーシングにより)結束させてコイルエンドを固定している。このレーシングは、糸を編むようにしてコイルエンドを網目状に縫っていくことにより行われる。
そして、このようなレーシングを自動的に行うものとして、例えば、特開平11−164531号公報に開示された技術がある。これは、フレームに一端を枢支された上下一対の揺動板と、各揺動板を上下に揺動させる第1駆動装置と、各揺動板に軸方向に進退可能でかつ回動可能に支持されたレーシングニードル支軸と、前記レーシングニードル支軸とほぼ平行に各揺動板に回動可能に支持された給糸ノズル支持棒と、前記レーシングニードル支軸を回動させる第2駆動装置と、前記レーシングニードル支軸を前後に進退動作させると共に、前記給糸ノズル支持棒を回動させる第3駆動装置と、前記レーシングニードル支軸の先端に取付けられたレーシングニードルと、前記給糸ノズル支持棒の先端から前記レーシングニードル方向に向けて延出された給糸ノズルと、ステータコアを保持して所定角度ずつ回動させるインデックス手段を有するステータコア設置台とを備え、前記第1駆動装置、第2駆動装置及び第3駆動装置の駆動源が、それぞれ別々の、回転角制御可能なモータであることを特徴とするものである。
これにより、コイルエンドの高さ等の部分的な変化に対応してレーシングニードルや給糸ノズルの動作を変化させてステータのコイルエンドに対するレーシングを行うことができるようになっている。
特開平11−164531号公報(第4〜5頁、第3図)
しかしながら、特開平11−164531号公報に開示されたものを含めて従来のレーシング技術では、図17(a)に示すように、ステータ1の中心軸(ステータ1の回動軸)Z1と給糸ノズル支持棒(ノズル支持部)6の中心軸(給糸ノズルの移動軸)Z2とが一致している(固定されている)。このため、図17(b)に示すような予め設定された径以外のステータ1aのコイルエンド2aに対してはレーシングを行うことができない。つまり、径の異なるステータ1aのコイルエンド2aに対してはレーシングを行うことができないという問題があった。
このため、径の異なるステータ1aのコイルエンド2aに対するレーシングを行う場合には、各ステータ毎に、各ステータに対応するノズル長の給糸ノズル、例えば図17(b)に示す場合であれば給糸ノズル5aに組み替える必要があった。また、フック4の移動軌跡を各ステータ毎に変更する必要もあった。さらに、レーシング装置に付帯するユニット(カッターユニットやノッチングユニット等)の配置位置も各ステータ毎に変更する必要があった。
このようなことから、従来のレーシング技術では、生産ラインに径の異なるステータを混流させて、各ステータのコイルエンドに対するレーシングを自動的に行うことは非常に困難であった。
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、径の異なるステータのコイルエンドに対するレーシングを自動的に行うことができるステータのレーシング方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明に係るステータのレーシング方法は、ステータを所定角度ずつ回動させつつ、前記ステータの軸方向に移動可能であって糸を供給する給糸ノズルと、前記ステータの軸方向および半径方法に移動可能であって前記給糸ノズルから供給される糸を引っかけるフックとの相互動作によって、ステータコアの両端面から突出するコイルエンドの糸縛りを行うステータのレーシング方法において、前記ステータの回動軸を前記給糸ノズルの移動軸から所定量だけ偏心させ、その状態で前記ステータを所定角度ずつ回動させつつ、前記給糸ノズルと前記フックとの相互動作によって前記コイルエンドに対するレーシングを行うことを特徴とする。
このレーシング方法では、従来と同様、ステータを所定角度ずつ回動させつつ、給糸ノズルとフックとの相互動作によってステータのコイルエンドに対するレーシングを行う。しかしながら、このレーシングを行う前に、ステータの回動軸を給糸ノズルの移動軸から所定量だけ偏心させる。その後、ステータの回動軸と給糸ノズルの移動軸とを偏心させた状態で、ステータを回動させながらコイルエンドに対するレーシングを行う。
ここで、前記ステータの回動軸と前記給糸ノズルの移動軸との偏心量は、前記ステータコアの内径と前記給糸ノズルの長さに基づいて決定される。なお、偏心量がゼロになる場合もある。つまり、径が異なるステータの場合に、ステータの回動軸と給糸ノズルの移動軸とが偏心させられる。
このように、径の異なるステータの場合には、ステータの回動軸が給糸ノズルの移動軸から偏心させられるので、給糸ノズルを組み替えたり、フックの移動軌跡を変更することなくレーシングを行うことができる。また、給糸ノズルを組み替えたり、フックの移動軌跡を変更する必要がないので、レーシング装置に付帯するユニットの配置位置も変更する必要がない。したがって、このレーシング方法を適用することにより、生産ラインで径の異なるステータを混流させて、各ステータのコイルエンドに対するレーシングを自動的に行うことができる。
本発明に係るステータのレーシング方法によれば、ステータの回動軸を給糸ノズルの移動軸から所定量だけ偏心させるので、径の異なるステータのコイルエンドに対するレーシングを自動的に行うことができる。
以下、本発明のレーシング方法を具体化した最も好適な実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。そこで、実施の形態に係るレーシング方法の概要を図1に示す。図1において、(a)は基準となる径のステータのコイルエンドに対してレーシングを行う場合を示し、(b)は基準とは異なる径のステータのコイルエンドに対してレーシングを行う場合を示している。
本実施の形態に係るレーシング方法は、図1に示すように、ステータ1を所定角度ずつ回動させつつ、ステータ1の軸方向に移動可能であって糸を供給する給糸ノズル5と、ステータ1の軸方向および半径方法に移動可能であって給糸ノズル5から供給される糸を引っかけるフック4との相互動作によって、ステータコア3の両端面から突出するコイルエンド2に対してレーシングを行うようになっている。
本実施の形態に係るレーシング方法では、まず、ステータ1の回動軸Z1を給糸ノズル5の移動軸Z2からどれだけ偏心させるかが決定される。ここで、偏心量Aは、給糸ノズル5のノズル長とステータ1(ステータコア3)の内径とに基づいて決定される。レーシングを行うステータ1の内径および給糸ノズル5のノズル長は既知であるので、偏心量Aを簡単に算出することができる。
そして、基準となる径のステータ1の場合には、偏心量AはA=0と算出されて、給糸ノズル5の移動軸Z2とステータ1の回動軸Z1とは偏心されることなく一致した状態(図1(a)に示す状態)のままとなる。その後、コイルエンド2に対するレーシングが次のようにして行われる。
そこで、このステータ1のコイルエンド2に対するレーシングの手順を、図2〜図16を参照しながら説明する。なお、コイルエンド2は、ステータコア3の両端面から突出しているため、レーシングも両方のコイルエンドに対して行われるが、いずれのコイルエンドに対しても同じ手順によりレーシングが行われるので、ここでは片方のコイルエンドに対するレーシングの手順についてのみ説明する。
まず、図2に示すように、給糸ノズル5は、コイルエンド2の上方に位置した状態で、給糸ノズル5から糸9を供給する。給糸ノズル5から供給された糸9の先端が、ニードル7に保持され、給糸ノズル5から供給された糸9が引っ張られて張設される。
この状態で、図3に示すように、給糸ノズル5は、コイルエンド2の下方、つまりステータコア3の内部へ移動する。なお、給糸ノズル5は、給糸ノズル5を保持しているノズル保持部6を軸方向に移動させることにより行われる。そして、フック4がステータコア3の半径方向内側に向けて延出される。このフック4は、コイルエンド2の下部(コイルエンド2とステータコア3との間)を通り抜け、糸9に係合する位置まで移動させられる。
その後、フック4は、図4に示すように、その先端に糸9を引っかけてステータコア3の半径方向外側へ後退し、コイルエンド2の下部から糸9を引っ張り出す。
続いて、図5に示すように、フック4は、先端に糸9を引きかけた状態のままコイルエンド2の外側を通って上方へ移動する。これにより、糸9にループR1が形成される。このとき、給糸ノズル5も上方へ移動する。
そして、図6に示すように、フック4は、再びステータコア3の半径方向内側に向けて延出される。このとき、フック4は、コイルエンド2の上部を通過して、その先端がステータコア3の内側に入り込み、給糸ノズル5から供給される糸9を引っかける。
その後、図7に示すように、フック4は、その先端に糸9を引っかけて、ステータコア3の半径方向外側へループR1を通って後退する。これにより、糸9にループR2が形成される。
続いて、図8に示すように、フック4は、先端に糸9を引きかけた状態のままコイルエンド2の外側を通って下方へ移動する。これにより、ループR2が下方に引き寄せられる。このとき、給糸ノズル5も下方へ移動する。
この状態で図9に示すように、フック4は、再びステータコア3の半径方向内側に向けて延出される。このとき、フック4は、図10に示すように、コイルエンド2の下部を通過して、その先端がステータコア3の内側に入り込み、給糸ノズル5から供給される糸9を引っかける。
続いて、図11に示すように、フック4は、その先端に糸9を引っかけて、ステータコア3の半径方向外側へループR2を通って後退する。これにより、糸9にループR3が形成される。
その後、フック4は、図12に示すように、先端に糸9を引きかけた状態のままコイルエンド2の外側を通って上方へ移動する。これにより、ループR3が上方に引き寄せられる。このとき、給糸ノズル5も上方へ移動する。
また、このとき、ステータコア3(ステータ1)が所定角度だけ回動させられる。このステータコア3の回動は、図13に示すインデックス機構により行われる。このインデックス機構では、ステータコア3を保持するパレットPと、モータMとにより構成されている。そして、パレットPの外周にはギアGが形成されており、このギアGとモータM側のギヤMGとが噛み合っている。これにより、インデックス機構は、モータMを回転させると、ステータコア3をパレットPごと回動させることができるようになっている。
ステータコア3が回動させられた後、図14に示すように、フック4は、再びステータコア3の半径方向内側に向けて延出される。その後、図6〜図14に示す操作が繰り返して行われる。これにより、コイルエンド2の全体を糸9で網目状に縫うことができる。
その後、最終レーシング時には、図6〜図8に示す操作をした後に、図15に示すように、給糸ノズル5から供給される糸9を切断する。このとき、フック4により、糸9には最後のループRnが形成されている。そして、切断された端末糸9eは、図16に示すように、糸9の最後のループRnに通され引っ張られて結びつけられる。かくして、コイルエンド2に対するレーシングが終了する。
ここで、基準となる径とは異なる径のステータ1aに対するレーシングについて説明する。本実施の形態に係るレーシング方法では、径の異なるステータ1aのコイルエンド2aに対するレーシングを行う場合には、図1(b)に示すように、ステータ1aの回動軸Z1aを偏心させる。つまり、給糸ノズル5の移動軸Z2から偏心量Aだけ、ステータ1aの回動軸Z1aを偏心させるのである。
そして、給糸ノズル5の移動軸Z2からの偏心量Aは、給糸ノズル5のノズル長とステータ1a(ステータコア3a)の内径とに基づいて決定される。ここで、レーシングを行うステータの内径および給糸ノズル5のノズル長は既知であるので、偏心量Aを簡単に算出することができる。
このように、ステータ1aの回動軸Z1aを給糸ノズル5の移動軸Z2から偏心させることにより、給糸ノズル5の先端とステータ1aの内周面とが近接する。つまり、給糸ノズル5とステータ1aの内周面との配置位置関係を、図1(a)に示す給糸ノズル5とステータ1の内周面との配置位置関係と等しくすることができる。これにより、径の異なるステータ1aのコイルエンド2aに対するレーシングを、ノズル長を変更することなく給糸ノズル5を使用して、フック4の移動軌跡を変更することなく行うことができる。したがって、本実施の形態に係るレーシング方法を適用した生産ラインによれば、径の異なるステータを混流させて、各ステータのコイルエンドに対するレーシングを自動的に行うことが可能となる。
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係るレーシング方法では、ステータのコイルエンドに対するレーシングを行う前に、そのステータの内径と給糸ノズル5のノズル長とに基づいて、給糸ノズル5の移動軸Z2とステータの回動軸Z1a(Z1)との偏心量Aを算出する。これにより、基準となる径とは異なる径のステータ1aのコイルエンド2aに対してレーシングを行う場合には、ステータの回動軸Z1aを、給糸ノズル5の移動軸Z2から偏心量Aだけ偏心するように、ステータ1aを移動させるので、フック4の移動軌跡を変更することなく給糸ノズル5を使用したまま、ステータ1aのコイルエンド2aに対するレーシングを行うことができる。つまり、本実施の形態に係るレーシング方法によれば、径の異なるステータのコイルエンドに対するレーシングを自動的に行うことができる。
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
本実施の形態に係るレーシング方法の概要を説明するための説明図であり、(a)は基準となる径のステータのコイルエンドに対してレーシングを行う場合を示すものであり、(b)は基準とは異なる径のステータのコイルエンドに対してレーシングを行う場合を示すものである。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータを回動させるためのインデックス機構の概略構成を示す図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 ステータのコイルエンドに対するレーシングの手順を説明するための説明図である。 従来のレーシング技術における問題点を説明するための説明図である。
符号の説明
1,1a ステータ
2,2a コイルエンド
3,3a ステータコア
4 フック
5 給糸ノズル
9 糸
Z1,Z1a ステータの回動軸
Z2 給糸ノズルの移動軸

Claims (2)

  1. ステータを所定角度ずつ回動させつつ、前記ステータの軸方向に移動可能であって糸を供給する給糸ノズルと、前記ステータの軸方向および半径方法に移動可能であって前記給糸ノズルから供給される糸を引っかけるフックとの相互動作によって、ステータコアの両端面から突出するコイルエンドの糸縛りを行うステータのレーシング方法において、
    前記ステータの回動軸を前記給糸ノズルの移動軸から所定量だけ偏心させ、その状態で前記ステータを所定角度ずつ回動させつつ、前記給糸ノズルと前記フックとの相互動作によって前記コイルエンドに対するレーシングを行うことを特徴とするレーシング方法。
  2. 請求項1に記載するステータのレーシング方法において、
    前記ステータの回動軸と前記給糸ノズルの移動軸との偏心量は、前記ステータコアの内径と前記給糸ノズルの長さに基づいて決定されることを特徴とするステータのレーシング方法。

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