JP4146616B2 - 心筋層横断の血管再構築のための加圧液体噴射の外科器具 - Google Patents
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Description
本発明は、とりわけ、ハンドピースを有する加圧液体噴射の外科器具に関するものである。この外科器具は、とくに、心筋層横断の血管再構築の名のもとに知られている手術のために用いられる。
【0002】
心筋層は、連続して収縮したりゆるんだりすることによって血液のポンピングおよび脈管システムを通しての体全体へ血液を送り出すことを引き起こす、心臓の筋肉である。これらの根源的な作業を適切に実現するためには、心筋層は、適切に酸素を得て、栄養素を供給されなければならない。筋肉の寄与は、心筋層に供給する冠状動脈網内を循環する血液の集中移動によって保証される。
【0003】
年齢、および、脂肪に富む食物によって、脂質の層が少しずつこれらの冠状動脈の内壁に堆積する。この堆積は、ついには、これらの動脈の1つまたは複数を部分的に閉塞し、心筋層の一部分の灌流を限定する。限定が強すぎるとき、または閉塞の際には、この現象はしばしば致命的な梗塞、もしくは非常に深刻な健康上の問題および生活の質の大きな劣化を招く。心臓−脈管の疾患は、工業国においては、死亡のもっとも大きな原因であり、医療研究では、この問題が強く関心をもたれている。
【0004】
薬品ベースの治療のほかに、2つのタイプの外科手術が、心筋層において血液循環を再構築するためによく実践されている。それは、冠動脈バイパス移植および冠動脈血管形成術である。
【0005】
冠状動脈バイパス移植は、例えば、患者の脚から静脈の一部分を抽出し、それを大動脈と閉塞の下流で詰まっている冠状動脈の一点との間に埋めこむことから成る。閉塞を飛び越して閉塞の下流の心筋層の虚血エリアの灌流を再構築し、詰まっている動脈の誘導を実現する。この外科手術を実行するためには、患者の心臓を停止させ、機械によって一時的に置きかえることが必要である。とりわけこの理由により、この手術は、合併症のリスクを多く有する。
【0006】
冠動脈血管形成術は、詰まっている冠状動脈に小さな球とともにゾンデを送ることから成る。ゾンデが脂質の詰まりを横断した際、脂質の堆積物を分離させ、血液の循環を再構築するために動脈の壁に堆積物をはりつけるように、球を膨らませる。この作業は、しばしば、動脈の中で通路を開いた状態に保持し、手術の後の再閉塞のリスクを減少させるのに役立つ恒久的な金属インプラントである、ステントと呼ばれる伸筋をおくことによって補足される。この手術は、バイパス移植よりもはるかに外傷が少なく、時には局部麻酔において行われることができる。しかしながら、この手術は、脂質の板が硬すぎる場合、動脈が小さすぎる場合、堆積が拡散している場合、実現可能でなくなることがある。さらに、軽視できない数のケースにおいて、動脈は手術のすぐ後に再び詰まる。
【0007】
薬品の摂取と適切な食餌法と組み合わされた、先の2つの技術は、心臓脈管疾患にかかった数多くの患者を救うことを可能にする。しかしながら、患者の中の3から5%にとっては、これらの技術は不十分である。関与する人は、例えば、すでに1度または複数のバイパス移植および/または血管形成術を受け、それが無効または不十分であることがわかった患者である。また、過度に深刻な、拡散した、または先の手術においてアクセス不可能であった虚血をもつ、または、バイパス移植されるには、あるいは血管形成術を実現するには小さすぎる動脈に閉塞を有する人でもありえる。これらの人々が心臓移植という究極の手だてに頼ることを避けるために、新しい技術、心筋層横断の血管再構築が、最近実験された。
【0008】
この手術は、左心室を取り囲む心筋層の虚血ゾーンに向き合う壁を通って、複数の小さな管を突き刺すことから成る。これらの穿孔は、虚血ゾーンの灌流を直ちに改良するが、血管形成を刺激することをとくに目的とする。実際、手術後、新しい脈管が、閉塞された動脈にとってかわる穿孔の周囲に発展する。
【0009】
この技術は、冠動脈システムを所有しない爬虫類の心臓の酸素添加システムから想起されたものである。これらの動物においては、血液は、内皮管を介して、左心室から心筋層へ直接送られる。胎児は、冠動脈の発展の前に、同一のシステムを用いる。
【0010】
心筋層横断の血管再構築の穿孔は、一般的に、高出力の二酸化炭素でのレーザー器具によって発生されたレーザー束によって実践される。このタイプの手術を実現するためには、技術の現状において、数多くのレーザー器具が提案された。例えば、出願WO98/49963、WO98/38916、WO98/31281、EP0515867、EP0876795、EP0196519、EP0856290、EP0876796、EP0858779、EP0815798、EP0836834、EP0792624、EP0797958、EP0799604、EP0801928などにおいて公開された、レーザー装置およびそれを用いる方法が知られている。
【0011】
また、例えば、出願EP0829239、EP0792624、EP0801928、EP0807412に記載されている装置、または、高周波(WO98/38925、EP0808607、WO97/187968、WO98/25533)、無線周波(WO98/27877)、機械的振動(WO98/16154)から由来するような様々なエネルギーを用いる、機械的穿孔装置も知られている。
【0012】
心筋層横断の血管再構築手術は、一般的に、次のように進行する。患者は、まず、全身麻酔にかけられる。外科医は、左心室のレベルで心筋層をさらすためにその胸郭のレベルで切開を行う。冠状動脈のバイパス移植手術とは違って、患者の心臓は、停止されず、手術の間、脈動を続ける。外科医は、ついで、コンピュータによって制御されるレーザーによって、心室の内部まで心筋層を通しての穿孔を実現する。約1cmの間隔で、直径約1mmの10個から45個の穿孔を行う。それぞれの穿孔は、30から60ジュールの間に含まれる平均エネルギーで実現される。穿孔の数および用いられるエネルギーは、心臓のサイズおよび心臓の周囲の脂肪の量に応じて、それぞれの患者によって変動する。
【0013】
レーザー光線の適用と心臓のリズムとの同期化は、患者の生命にとって危険な不整脈を避けるために、非常に重要である。光線は、心室が最大に血液で満たされていて、電気的に不活性(心電図のR波)であるとき、心臓の2回の鼓動の間にコマンドされなければならない。この期間の間に筋肉内に管を形成するとき、存在する血液は、心室の内部をレーザーが痛めることを阻害し、過度のエネルギーを吸収して、後方止め装置の役割をする。
【0014】
心室は収縮するとき、穿孔の内部の血液を吸収してスポンジのように振舞う。血液は、このように、虚血の組織の中に浸入することができる。
【0015】
心臓の外では、管の先端は、外科医の指または外科器具の先端の圧力によって出血を停止する場合、非常に迅速に、1分未満で再び詰まる。管は、しかしながら、筋肉の内部では開いた状態でいる。瘢痕組織が、およそ2日で形成される。
【0016】
筋肉内での血液の流れが、心室に出てくる管によって直ちに改良されるにも関わらず、最適な結果は、心筋層を灌流する新規の脈管網を実現する穿孔からの小さな脈管の形成の後にはじめて獲得される。この血管形成は、患者によって、手術後3ヶ月から1年かかる。
【0017】
心室の内部の心筋層の壁を穿孔することによって、レーザーで心筋層横断血管再構築を実現することも可能である。この場合、穿孔が筋肉の壁を完全に通過しないように、レーザーの出力を調節しなければならない。レーザー器具は、大腿部の動脈にそって通されるカテーテルによって、その作業位置までもってこられる。心臓は露出されないので、手術は、外傷がはるかに少ないものである。
【0018】
心筋層横断血管再構築は、従来の冠状動脈バイパス移植に対して数多くの利点を有する。心臓は手術の間脈動し続けるので、バイパス移植の後に遭遇することになる可能性がある、心臓の停止および再起動に関する多数の合併症(低血圧症、浮腫、体重増加、出血など)を避ける。さらに、手術のコストは、バイパス移植のコストに対して大幅に減少する。
【0019】
作業道具としてのレーザー束の使用は、もっとも広まっているものである。しかしながら、些細なことではない。というのは、レーザー光線による切断は、衝撃の過程において組織を焼きながら行われるからである。このことから、光線がきわめて細くても、切断はあまり明確でなく、隣接する組織に大幅に外傷を与え、隣接する組織は壊死し、死ぬ。このように穿孔された管の壁の周囲の組織の壊死のために、レーザーによって作成された血管再構築の管の大部分が多少の差はあれが長期で再び詰まる傾向を呈し、手術の恩恵的効果をなくしていることが観察された。
【0020】
さらに、心筋層に不本意な損害を起こさないように光線の強さおよび効果をコントロールすることはかなり難しい。最近の研究報告によると、レーザーによる血管再構築の手術の際、穿孔の実現のときに心筋層の神経の破壊が起こることがあり得る。この除神経は、たとえそれが痛みを減少させても、患者にとって非常に危険になることがあり得る。実際、虚血を知らせる警告となる痛みをもはや感じなくなり、そのことは、致命的な梗塞または不整脈にさらすことになる。
【0021】
本発明の目的は、先に挙げられたすべての欠点を避けるために、穿孔を実現するのにレーザー束を使用せずに、心筋層横断血管再構築を実行することを可能にする器具を提案することである。
【0022】
このため、本発明による装置は、心筋層の壁に血管再構築通路を、注射のようなやり方で形成するために、加圧液体噴射を用いる。心筋層横断血管再構築は、レーザーと同じように、行われることができる。心筋層横断血管再構築は、先に述べられたすべての利点を有する。心筋層横断血管再構築は、開放された管の形で心臓の外で、または、盲穴の形でのカテーテルによって心室の内部で、実現されることができる。
【0023】
しかし、加圧液体噴射による血管再構築が、レーザーによる血管再構築のすべての利点をもたらすのであるが、それは、非常に重要なさらなる利点を有する。
【0024】
外科的ハンドピースまたは加圧液体カテーテルの先端によって形成される管の実現作業は、完全に明白で正確である。いかなる火傷または壊死も、管の壁および隣接する組織に作用しない。このことから、穿孔が再び詰まる傾向ははるかに少ない。
【0025】
穿孔の正確さのほかに、破壊されてはならない組織の保護も、レーザーの場合においてよりもかなりより良く保証されている。実際、盲穴を形成するときに、くぼみの中にすでに存在している液体は、隣接する組織における加圧噴射の行為を緩衝するマットレスの効果を生み出す。不本意な除神経のリスクは、このことから、大きく減少され、さらには、存在しなくなる。この利点は、本発明による器具で獲得することができる解剖効果によってさらに強化される。
【0026】
穿孔を実践するために液体を使用することは、血管再構築の周知の方法に対して非常に大きな改良をもたらすさらなる利点を有する。本発明による装置によって、治癒的液体を、心筋層における管のレベルに直接、その実現と同時に射出することが可能になる。このために、本発明による加圧液体噴射装置の作業液として、治療剤を用いることで十分である。治療液の塗布は、穿孔の実現の前または後に実現されることも可能である。治療剤は、例えば、しかし、非限定的に、新規の脈管の発展を助長する、穿孔の再閉塞を制限する、手術後の合併症を避ける、筋肉を管の形成に準備する剤、または、外科手術の場合、または、心臓脈管疾患の治療において有用なその他一切の剤であることができる。
【0027】
本発明のこの特徴は、大きな利点を有する、なぜなら、心筋層横断の血管再構築に、心筋層の虚血ゾーンの血管構築を発展させることをねらいとした遺伝子治療による別の実験的治療の利点を組み合わせることを可能にするからである。この治療の際、心筋の虚血エリアに直接、内皮血管増加因子(VEGF)と呼ばれる、新規の脈管の形成を助長する遺伝子の何百万ものコピーを射出する。この遺伝子は、また、直接にではなく、搬送の媒介として、衰弱したウィルスを用いることによって射出されることができる。
【0028】
本発明による装置では、この遺伝子のコピーを含む液体、ウィルスまたはウィルスのその他一切の媒介物質は、穿孔用に作業液として直接使用されるか、あるいは穿孔の実現作業のすぐ後に本発明による器具によって、塗布されることができる。この塗布によって、心筋層横断の血管再構築の手術によって発生させようとしている血管形成を始動させ、加速させ、または、増加させることができる。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、心筋層横断の血管再構築のための加圧液体噴射の外科器具の、以下に続く詳細な説明、付属の図面を参照に作成された説明を読むことによって明らかになるであろう。
・図1は、本発明による、心筋層横断の血管再構築手術の際の加圧液体の外科器具の簡略化された説明図であり、心筋層の壁の穿孔は、開腹により心臓の外から実現される。
・図2は、本発明による、心筋層横断の血管再構築手術を実現する加圧液体の外科器具の簡略化された説明図であり、心筋層の壁の穿孔は、腹膜鏡検査により心臓の外から実現される。
・図3は、本発明による、経皮の心筋層横断の血管再構築手術を実現する加圧液体噴射の外科器具の簡略化された説明図であり、心筋層の壁の穿孔は、心室に侵入するカテーテルによって、心臓の内部から形成される。
・図4は、本発明による器具によって心臓の外から実現される心筋層の血管再構築の穿孔を有する心筋層の壁の一部分の概略的断面図である。
・図5は、本発明による器具によって心臓の内部から実現される心筋層の血管再構築の穿孔を有する心筋層の壁の一部分の概略的断面図である。
・図6は、心筋層横断の血管再構築の手術の際の本発明による外科器具の作業液の行為の説明図である。
・図7は、本発明による器具によって実現される心筋層横断の血管再構築手術によって引き起こされる血管形成が起こる心筋層の壁の一部分の概略的断面図である。
【0030】
本発明による、心筋層横断の血管再構築のための高圧での液体噴射の外科器具は、ここから、図1から7を参照して詳細に記載される。異なる図に示される、対応する要素は、同じ参照番号を有する。
【0031】
本発明による外科器具は、図1、2および3に概略的に示されている。それは、血管再構築の管を生じさせるために心筋層の壁に対して加圧液体噴射を1つまたは複数送り出すことのできる器具1に関するものである。
【0032】
この器具は、作業液の貯蔵容器3に接続された加圧液体の発生器2を含む。この貯蔵容器は、例えば、ポケットを圧縮するためおよび液体を圧力下におくために中性ガスによって満たされる室の中に封じ込められる、作業液を含むプラスチック材料のポケットであることが可能である。発生する液体の噴射の圧力は、ニーズに適合させるために、調節可能である。
【0033】
作業液は、手術を実現する外科医が作業液の噴射の始動をコマンドし、そして、指揮することを可能にするハンドピース4にもたらされる。ハンドピース4は、容易な把握および操作を可能にし、例えばプッシュボタン6などのコマンド装置、並びに、例えば加圧液体の噴射を与えるチューブの能動的先端7を有することのできる、人間工学的な本体5を有する。例えば円筒形である先端7のチューブは、管8を含み、その内部を作業液が先端孔9まで通過し、そこから、切断の、そしてここではとくに、針による注射のような、心筋への侵入の外科作業を実現するために、加圧液体噴射10が噴出する。
【0034】
よりよい効率性のために、本発明による外科器具は、好ましくは、加圧液体の基礎的な噴射を構成するインパルスの断続的な状態における掃射による加圧液体を送る押出される噴射の器具である。掃射は、唯一のインパルスによってのみ構成されることもできる。この実施態様においては、外科器具は、さらに、押出される噴射の形成を可能にしてそのパラメータをコマンドするシーケンサ11を有する。
【0035】
外科器具1は、好ましくは、例えば、病院の真空の全体回路である真空源13に結合した吸引システム12を有する。図1に表された実施態様においては、吸引システムは、例えば全体的な形が円筒形であり、先端7の高さに位置し、管8に同心である、吸引管14で終わる。手術のゾーンの近くに開口する吸引管14は、作業液および血管再構築の管の穿孔の作業での小破片を吸引することを可能にし、このように、穿孔の効率性および外科医にとっての手術ゾーンの視界を改良する。
【0036】
推奨変型によると、加圧液体の通過管は、ある瞬間には、押出される噴射の特徴に応じて、加圧液体のインパルスの状態において改良するために、そして、その一方で特許性のある独創性によって、吸引システムとの連絡状態におかれる。
【0037】
本発明による外科器具は、心筋層横断の血管再構築手術の周知の3つのタイプ、つまり、開腹による手術、腹膜鏡検査による手術、または、経皮の手術を実現するために用いられることができる。これらの手術のそれぞれに適した、本発明による装置の3つの変型が、それぞれ、図1、2および3に表されている。
【0038】
本発明による器具によって、開腹で血管再構築手術を実現するために、外科医は、最初に、全身麻酔のもと患者の胸郭に切開を行い、心筋層17の虚血ゾーンにアクセスできるように、患者の心臓15を左心室16のレベルでさらす。一般的に、このゾーンは、左心室16を取り囲む心筋層の下の部分に位置する。
【0039】
血管再構築を行うゾーンの正確な位置を割り出した後、外科医は、能動的先端7が心筋17の外壁18と接触するように、ハンドピースを位置付ける。外科医は、その時、血管再構築の第1の管19を生じさせるために、加圧液体の掃射を始動させる。加圧液体は、組織に衝突し、管を形成するために組織に侵入する。
【0040】
血管再構築手術が、心臓の外側から出発して行われるとき、外科医は、心筋層の虚血組織を、心室の内部に存在する酸素添加された血液と連絡させるために、心筋層17を完全に横断して左心室16に出てくる管19を実現しなければならない。
【0041】
穿孔は、加圧液体の単一インパルスの一回のみの掃射によって、または、一回の掃射の連続した複数のインパルスによって、実現されることができる。それは、加圧液体噴射器具の掃射のパラメータの調整を変更するだけで十分である。
【0042】
本発明による器具は、ハンドピースの位置付けおよび不動化手段を有し、穿孔作業の間ハンドピースを固定する。実際、液体の連続する2つのインパルスの間で能動的先端7が動かないことが重要である。この固定は、何らかの不動化手段によって実現されることができる。心筋層の壁18に対する能動的先端7の力学的な、例えば、つめによる固定手段、および/または、ハンドピースの本体の不動化の適切な力学的手段であることができる。
【0043】
不動化および固定手段は、また、外科器具の吸引システムを用いることもできる。実際、真空回路に接続された鉤式の定着化装置、または、先端7の外部吸引管14を延長する、やや口の広がったスカート20を想像することができる。能動的先端7が、心筋層17の壁に接触して、またはその近くで、位置についているとき、外科医は、吸引を始動させ、チューブの先端を壁18にはりつけ、このようにして、穿孔の精度に必要な不動化を実現する。他の変型が、本発明の枠を出ることなく、想像されることができる。
【0044】
外科医が、心臓の外から心筋層横断の血管再構築手術を行う際、外科器具の吸引システムを使用することができる。作業液は、心筋層に衝突した後、吸引管14によって、外科器具の内部に吸引される。吸引は、穿孔を実現するための器具の効率性を高める。というのは、作業液が形成中の管にたまると、続く1つまたは複数の掃射は管の底に位置する心筋層の組織ではなく、ショックを緩衝する液体の厚い層に衝突し、噴射の圧力、従って穿孔作業の効率性を減少させるからである。それでも管は実現されるが、速度が減少するのである。
【0045】
吸引の使用は、外科医にとって非常に便利な別の利点を有する。つまり、外科医は、吸引のおかげで、血管再構築の管19の穿孔作業の終了を警告される。というのは、管19が完成し、心室16へと出るとき、心室に存在する血液は、管の中に浸透し、吸引管14によって吸引されるからである。吸引された液体は、そのとき、血液の赤色となり、外科医への警告となる。レーザーによる血管再構築と違って、管が心室へ出てくることを確認するために別の用具を用いることは必要ない。
【0046】
血管再構築の第1の管19が終了したとき、外科医は外科器具を外し、血液の過度の損失を避けるために、この管の外側先端を塞ぐ。このため、孔のレベルで凝固を起こす管の外側の端において、指または外科器具の頭の圧力で通路を塞ぐ。外科医は、当然、非常に迅速に起こるこの凝固を起こすために、別の用具を用いることができる。
【0047】
外科医は、ついで、液体噴射器具を外し、次の血管再構築管の実現の位置の正面にそれを位置づけ、前もって定められた動機にしたがって、先と同じように、穿孔を実現する。このように、例えば約1cmの間隔があけられた穿孔を5から30個、筋肉の虚血ゾーンに行う。穿孔の数は、それぞれの患者について、心臓のサイズ、虚血ゾーンの範囲および心臓の周囲の脂質の量に応じて変動する。
【0048】
有利なことには、行う血管再構築の管の数は、手術がレーザーで実現される際よりも少なく、管は壊死せず、このために、のちに再び詰まる傾向がはるかに少ない。
【0049】
心室は収縮する際、スポンジのように振舞い、穿孔の内部に血液が浸透することを強制し、虚血の組織へしみこむことを強制する。
【0050】
図4は、本発明による器具で、心筋層17の外壁18から作られる3本の血管再構築の管を表している。これらの3本の管は、その進化の3つの異なる段階にある。管21は、穿孔されたばかりである。それは、心筋層を完全に横断し、その内表面および外表面に同時に出てくる。
【0051】
管22については、閉塞の外からの圧力の効果のもと、心筋層の外側18から、凝固現象が始まったところである。凝固した血液の血塊23が管22の外側の孔を塞いでいる。
【0052】
管24については、凝固現象は終了している。組織が再形成され、管の外側の先端が最終的に塞がれている。
【0053】
経路の形成のための加圧液体の噴射の掃射と心臓のリズムとの同期化は、レーザーによる手術の場合よりも重要でないように思われる。しかしながら、慎重さの理由から、心室が血液によって最大に満たされて電気的に不活性であるとき、心臓の2回の脈動の間に掃射するように、噴射と心臓のリズムとの同期化を続けることが妥当である。このように、細動あるいは他の不整脈のリスクを最大限に制限する。しかしながら、本発明による外科器具を、加圧液体の掃射と心臓のリズムとの同期化なしでのこのような血管再構築手術を実現するために使用することを検討することができる。
【0054】
本発明による外科器具1は、従って、加圧液体噴射の掃射と患者の心臓のリズムとの同期化の構成要素(図示されていない)をさらに有することができる。
【0055】
心筋層横断血管再構築手術は、図2に示されているような、本発明による器具による腹膜鏡検査で実現されることもできる。血管再構築は、常に、心臓の外側から出発して行われる。しかしながら、手術は、患者にとって、はるかに外傷が少ない、なぜなら、その心臓はむき出しにされず、外科医によって小さな切開が2つまたは3つのみ行われるだけだからである。
【0056】
手術の第1のステップは、外科医が、患者の胸郭において、心筋層の虚血ゾーンに達することを可能にする場所において、肋骨26の間に位置する、小さいサイズの切開25を行うことにある。外科医は、ついで、これらの切開の中に、切開の縁を開いた状態に保ち、用具のためのガイドとなるように、中間トロカール27を挿入する。この処置を実現するために、標準の直径、つまり、例えば5mmまたは10mmのトロカール27を用いることができる。
【0057】
切開は、本発明による外科用具の能動的先端の、および、患者の胸郭を開く必要性なしに手術を進行させるための視覚、探知および照明手段28の、心臓までの侵入を可能にするために少なくとも2回である。これらの切開は、心筋層の虚血ゾーンへの角度およびアクセス点を増加させるために、より数多く、好ましくは3回であることができる。必要な切開数を制限するために、外科用具の能動的先端および探知手段は、手術の間に交換されることができる。
【0058】
トロカール27は、また、血管再構築の経路の形成の前であろうと後であろうと、手術に必要な他の多数の外科および医療用具の通過および誘導を可能にする。
【0059】
この手術を実現することを可能にする本発明による外科器具は、先に記載された器具に類似の加圧液体噴射器具1である。先端7のみが変わっている。実際、この外科器具は、トロカール27の内部を通過するように、および、心筋層の外壁18に接触するようになるように適合されなければならない。先端7のチューブは、従って、より長い長さでなければならない。さらに、それは、心筋層の適切な場所に、そして、適切な傾斜によって位置づけられることが可能であるように、連結されることができ、方向づけられることができ、このシステムは外部からコマンドされる。
【0060】
能動的先端7は、また、血管再構築の経路の穿孔の際にその不動化を実現するための固定化システムも有する。例えば、先のように、何らかの力学的固定手段、または、例えば、スカート20のような用具の吸引システムを用いる手段であることができる。
【0061】
視覚、探知および照明手段28は、例えば、トロカール27のうちの1つに滑り込まされることのできる長い先端ロッド29を有する胸腔鏡から構成される。胸腔鏡は、照明システムを含み、それは、ロッド29に沿う光ファイバー束によって、光源30の光をロッド29の先端31まで送り、このように、穿孔するべき心筋層のゾーン32を照らす。胸腔鏡は、ロッド29に配置された光画像システムによって、照明されたゾーン32に対応する画像を形成し、画像回路34を介してスクリーン35に送るカメラ33も含む。
【0062】
外科医は、心筋層の穿孔するべきエリアおよび用具の先端をスクリーン35に視覚化することによって、手術を続け、それを指揮し、手術は、心臓のリズムと同期化される、および/または、コンピュータ支援されることができる。
【0063】
手術は、次のように進行する。外科医は、まず、血管再構築をするべきゾーンをスクリーン上で探知し、標識をたてる。外科医は、それを胸腔鏡で照らす。次に、外科器具の先端をこのゾーンに、心筋層の外壁18の近くに、位置付ける。外科医は固定化システムによって外科器具の能動的先端を不動化し、加圧液体の1回または複数の掃射によって、最初の血管再構築の管を実現する。管が心室の内部に出てくるときに、外科医は、外科用具の頭で圧力を与え、血管再構築の管の外側の先端の凝固を起こすことによって、出血を停止させる。外科医は、このために、別の用具を、例えば、トロカール27に外科器具の代わりに挿入されたペンチによって保持された吸収性物質を使用することもできる。次の穿孔は、外科器具の能動的先端を適切に移動させた後、同様に実現される。
【0064】
腹膜鏡検査によって獲得される血管再構築の管は、開腹によって獲得される管に類似しており、図4に表されている。
【0065】
心筋層の血管再構築の最後のタイプの手術は、図3に表されている。手術は、今回は、本発明による器具によって、心室の内部から出発して実現され、以下のように進行する。
【0066】
外科医は、大腿部の動脈に、誘導カテーテル36を導入する。別の動脈、例えば、腕の動脈もまた、用いられることができる。外科医は、カテーテル36を、大動脈弧37の下の先端まで進行させる。ハンドピース4の先端7は、今回は、作業液を運搬する管8を含むフレキシブル管38から構成される。フレキシブル管38は、大動脈の基まで、カテーテルに導入そして誘導され、そして、その先端が心室に侵入するまで、大動脈の弁システムを通して、慎重に押し込まれる。
【0067】
フレキシブル管は、その自由端に、掃射の開始の前に血管再構築するべきゾーンを3次元で見ることを可能にするセンサを含む探知装置(図示されていない)を含む。掃射ゾーンの探知並びに外科医による手術の監視は、本発明の枠を出ることなく、別の手段によって実現されることができる。
【0068】
外科医は、フレキシブル管の先端を、心臓の、より正確には、左心室16の内壁39に、第1の穿孔が実現されなければならない場所に近づける。フレキシブル管の能動的先端は、その時、内壁39に対して押しつけられ、例えば、先に記載されたものに類似した固定化装置によって、その位置に保持される。外科医は、ついで、最初の穿孔40を行う。次に、フレキシブル管の能動的先端を移動させ、同様に、次の穿孔を実現する。
【0069】
血管再構築が、心臓の内部から実現されるとき、本発明による液体噴射器具は、盲管40を形成するように、つまり、心筋層の厚み全体を横断しないで、調節されなければならない。心筋層の壁の厚みは、平均で10から20mmの間に含まれるので、外科医は、好ましくは3から5mmの長さの管を実現する。この安全幅で、良好な血管再構築を保証しながら、筋肉の壁を突き抜けないことが確信される。心室の内部から形成される管は、左心室16に存在する酸素添加された血液を、虚血組織に直接供給する。心外膜41は、手つかずのまま残され、そのことによって、危険でありえる出血の問題が避けられる。
【0070】
本発明による器具によって、心臓の内部から実現された血管再構築の管40の例が、図5に表されている。このように、開腹または腹膜鏡検査によって心筋層の外壁から形成された、図4の管と比較することができる。
【0071】
本発明による加圧液体噴射の外科器具によって、有利なことには、外科医によって選択されたパラメータによって規定される一定の穿孔深さを保証することができる。液体噴射の出口の孔9の直径、作業液の圧力および掃射のインパルスの時間的長さが、穿孔の深さに影響する3つのパラメータである。
【0072】
出口の孔の直径は、例えば、0.1から0.5mmの間で選択される。それは、好ましくは、0.3mmに等しい。
【0073】
作業液の圧力は、好ましくは、10から50バールに含まれる。それは、好ましくは、20バールに等しい。
【0074】
掃射のパルスの時間的長さは、好ましくは、100から1000ミリ秒の間である。それは、好ましくは、200ミリ秒に等しい。
【0075】
危険な不整脈を起こさないように、作業液の圧力は、過度に大きくてはならない。比較的大きな直径の孔9、および、より弱い圧力を用いることが、その逆よりも好ましい。
【0076】
外科医がこれらの3つのパラメータの値を選択して調節したとき、手術の全体の長さの間、ほぼ同一の直径および深さの穿孔を獲得することは確実である。穿孔は、患者同士を比較してみても似たようなものになる。
【0077】
加圧液体噴射の外科器具は、外科医にとって非常に興味深い、そして、レーザーでは獲得できない別の利点を有する。本発明による器具の機能の3つのパラメータを変更することによって、外科医は、多少、選択的な解剖作業を実現することができる。外科医は、例えば、もっとも軟質な組織のみが噴射によって横断されるために、作業液の圧力を下げることができる。血管再構築の管を横断する動脈または神経は、心筋層の壁よりも硬いために、このように、手つかずのままにされることができる。外科医は、従って、非常に単純に、パラメータとして選択される値によって、完全に明確な浸透による穿孔、または、多少選択的な解剖効果を獲得することができるのである。
【0078】
用いられる作業液は、好ましくは、生体血清である。このため、切断は、完全に無菌で、組織にとって非攻撃的である。このように、血管再構築の従来の針および器具の殺菌の問題を制限し、合併症のリスクを減少させる。
【0079】
別の液体、例えば、食塩溶液、グルコース、リンゲル−ラクテート、ヒドロキシ−エチル−アミドン溶液、または、これらの溶液の混合物もまた、作業流体として、用いられることができる。
【0080】
また、治癒的作用をもつ液体を使用することもでき、該液体は、それぞれの穿孔に、その形成後すぐ、直接、射出される。このように塗布される液体の作用は、単に血液によってもたらされるときよりもはるかに効果的である。
【0081】
例えば、経路の形成のために筋肉が調整される薬剤、新規の血管の発展を助長する薬剤、穿孔が再びふさがることを制限する薬剤、手術後の合併症を防ぐ薬剤、その他一切の有用な薬剤の使用を想像することができる。ベースの液体における、これらの混合物、溶液、分散、懸濁液またはエマルジョンもまた、その粘性が、外科器具の作業流体としてのその使用と適合できる限り、用いられることができる。
【0082】
本発明のこの特徴は、有利なことには、心筋層横断の血管再構築に、血管形成を発展させることをねらいとした遺伝子治療による処置を組み合わせるために、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を、単独でまたは何らかの媒介物質とともに、穿孔の中に、射出することを可能にする。
【0083】
血管再構築の経路の形成の前または後に、治癒剤を塗布するために、本発明による液体噴射器具を使用することを検討することもできる。
【0084】
図6は、概略的に、作業流体の作用の態様を表す。太い矢印42によって表されている流体のもっとも大きな部分は、加圧のもと、血管再構築の経路40の方向へ噴出されている。こうして、該部分は、心筋層17の組織に衝突し、そこに管40を生じる。
【0085】
細い矢印43によって表されている流体の小さな部分は、管40の横断壁を通して拡散し、心筋層の隣接する、スポンジのように振舞う組織に浸透する。これらの組織は、損害を受けない、なぜなら、流体の圧力は、管の長手方向に対して垂直には、非常に弱いからである。作業液は、このように、血管再構築の管を横断するすべての細静脈および細動脈に浸透し、それらに流れ出て、場合によっては、該作業液が含む治癒剤をそこに付着させる。
【0086】
図7に、本発明による外科器具による心筋層横断の血管再構築の手術の後に起こる血管形成現象を示した。ごく小さい脈管44は、穿孔40から形成され、心室16に含まれる血液45で、心筋層を灌流する新規の脈管網を実現する。
【0087】
血管再構築の3つのタイプの手術が、本発明による加圧液体噴射の器具によって実現可能であれば、該手術が有する手術の間およびその後のリスクの度合いは同じではない。リスクのレベル、並びに、手術のコストは、開腹から腹膜鏡検査、そして、経皮での血管再構築へと、減少する。これらの手術は、実際のところ、だんだん外傷が少なくなってゆく。該手術は、だんだん長さが短くなり、患者はより早く退院することができる。従って、本発明による器具での、経皮での、心筋層横断の血管再構築の手術は、好適である。
Claims (10)
- 心筋層横断の血管再構築手術を実現することを可能にする、作業液の貯蔵容器(3)に接続された加圧液体の発生器(2)を有する、加圧液体噴射の外科器具であって、シーケンサ(11)を通して発生器(2)に接続された作業液の通路の管(8)および孔(9)を含む能動的先端(7)、吸引システム(12)を通して真空源(13)に接続されている吸引入り口を有すること、および、単一または複数のインパルスの状態において、連続的作業液噴射の掃射を毎回与えることを特徴とし、さらに加圧液体噴射の掃射を心臓のリズムと同期化する手段を備えていることを特徴とする器具。
- 液体の貯蔵容器(3)が、加圧の室内に封じ込められた軟質のポケットの中に含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
- 能動的部分(7)が、血管再構築の管が実現されなければならない場所に固定されるために心筋における定着化装置を有することを特徴とする、請求項1に記載の器具。
- 能動的部分(7)が、血管再構築の管が実現されなければならない場所において、圧力低下によって心臓の外壁に対して固定されるためにスカート(20)によって取り囲まれていることを特徴とする、請求項1に記載の器具。
- 能動的先端(7)が、血管再構築の管が実現されなければならない、心臓の内部まで誘導カテーテル(36)の中を滑る、カテーテルの先端であることを特徴とする、請求項1に記載の外科器具。
- 能動的先端(7)が、手術のゾーンまで胸を横断するトロカール(27)に導入されること、および、この手術のゾーンまで胸を横断する他のトロカールが、このトロカールに導入される照明手段によってこのゾーンを照らし、このトロカールまたは隣接したトロカールに導入された視覚手段によって画像回路を通してスクリーンにこのゾーンを視覚化するために配置されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の外科器具。
- 作業液の通過管(8)が、一時的に、インパルスの終わりに、吸引システム(12)と連絡状態におかれることを特徴とする、請求項1に記載の外科器具。
- 作業液の圧力が、10から50バールの間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の加圧液体噴射の外科器具。
- 作業液の出口の孔(9)の直径が、0.1から0.5mmの間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の外科器具。
- 作業液の一回のみのインパルスでの掃射のインパルスの時間的長さが、100から1000ミリ秒の間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の外科器具。
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