JP4146568B2 - 小生物捕獲用粘着組成物およびこれを用いた小生物捕獲具 - Google Patents
小生物捕獲用粘着組成物およびこれを用いた小生物捕獲具 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、小生物、詳しくは、ゴキブリ、ハエ等の有害昆虫およびネズミ等の有害小動物を捕獲するのに好適な粘着組成物およびこれを用いた小生物捕獲具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴキブリ、ハエ等の有害昆虫やネズミ等の有害小動物などの小生物を捕獲する手段としては、例えば、紙、プラスチックフィルム、板等の支持体に粘着性を有する組成物を塗工した捕獲具を、小生物の通路等に設置して、粘着捕獲する方法が一般的である。
【0003】
小生物の捕獲具に用いる粘着組成物としては、例えばネズミのように大型で脚力の強い小生物においても、粘着組成物を塗工した粘着層に自重で踏み込んだ脚を嵌ませ、その脚を引き抜かれないだけの粘着性と、捕提された脚の動きにある程度追随する伸び、すなわち足曳き性とを有していることが重要である。また、粘着組成物を支持体に塗工する際には、一定の加熱安定性を有していることが必要であるとともに、塗工作業性や粘着層面を垂直に立てて捕獲具を使用する場合、捕獲具の保管・運搬時に垂直に立てた状態に置かれた場合等を考慮すると、粘着組成物が支持体からはみ出したり、流れ出したりすることのない十分な耐フロー性を備えた粘着組成物であることが要求される。また、捕獲具の運搬および保管等の点からは、粘着性を有する塗工面は使用直前まで離形紙で覆われていることが好ましく、離形紙を容易に除去しうるだけの剥離性を有する粘着組成物が望まれる。さらに、離形紙を剥がしたのち捕獲具として長期間使用して粘着層面を暴露していても前記粘着性等の捕獲性能を維持しうる耐侯性を備えていることも必要である。
【0004】
これまでに、各種小生物の捕獲に用いる粘着組成物としては、例えば、ポリブテンとポリイソブチレンとからなる組成物が特開昭55−45366号公報に報告されている。しかし、この組成物は、凝集力が低く、耐フロー性に欠けるものであり、しかもポリイソブチレンの割合を増やすと凝集力を上げることはできるものの、同時に溶融粘度も上がり、塗工作業性に問題が生じるものであった。さらに、離形紙の剥離性については全く期待できないものであった。そこで、耐フロー性を改良したものとして、例えば、ポリブテンとポリイソブチレンとからなる組成物に非結晶性ポリプロピレンを混合したものが特開昭57−183701号公報に報告されている。しかし、この組成物は、ネズミ等を捕獲しうるだけの粘着力は有しているものの、離形紙の剥離性には劣るという問題があった。また、この組成物において非結晶性ポリプロピレン等の割合を増やすと、離形紙の剥離性は向上するが、それに伴って粘着性が著しく低下するという問題を生じていた。
【0005】
このように、小生物の捕獲用として求められる前記全ての性能を兼ね備えた粘着組成物は未だ報告されていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、良好な粘着性および足曳き性を有して、小生物の捕獲性能に優れ、かつ、耐フロー性および加熱安定性に優れて、塗工作業性も良好であり、さらに離形紙の剥離性にも優れ、しかも長期間の使用に耐えうる良好な耐侯性を有する、小生物捕獲用粘着組成物およびこれを用いた小生物捕獲具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、(A)成分としてポリブテンを含有させることによって、小生物の捕獲に適した粘着性を付与し、(B)成分としてポリイソブチレンおよび/またはブチルゴムを含有させることによって、一旦粘着層に捕提された小生物が逃げださないように足曳き性を付与し、(C)成分として結晶性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−極性モノマー共重合体、非晶性ポリα−オレフィン、からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有させることによって、優れた耐フロー性を付与し、さらに(D)成分として水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを含有させることによって、粘着性および足曳き性を著しく低下させることなく優れた離形紙の剥離性を付与させることができ、しかも加熱安定性および耐侯性に優れる粘着組成物を得ることができることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる小生物捕獲用粘着組成物は、
(A)ポリブテンを50〜98重量%と、
(B)数平均分子量が10,000〜2,500,000である、ポリイソブチレンおよび/またはブチルゴムを0.5〜30重量%と、
(C)結晶性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−極性モノマー共重合体、非晶性ポリα−オレフィン、からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.5〜30重量%と、
(D)水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを1〜45重量%と、
を必須成分として含有してなり、
前記結晶性ポリプロピレンはメルトフローレート(ASTM D−1238,230℃)が0.3〜400である結晶性ポリプロピレンであり、前記ポリエチレンはメルトフローレート(ASTM D−1238,190℃)が0.4〜400であるポリエチレンであり、前記エチレン−極性モノマー共重合体は共重合体の極性モノマー含有量が30重量%以下であるエチレン−極性モノマー共重合体であり、前記非晶性ポリα−オレフィンはC 3 〜C 6 の炭素数を有するエチレン炭化水素を単独あるいは2つ以上よりなる共重合体あるいはこれらとエチレンとの共重合体である非晶性ポリα−オレフィンである、ものである。
【0009】
本発明の小生物捕獲具は、前記本発明の小生物捕獲用粘着組成物を支持体の一部または全部に塗工し、塗工表面に離形紙を貼り合わせてなるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の一形態について詳しく説明する。
本発明において、前記(A)成分となるポリブテンとは、イソブチレンを重合したもの、あるいはイソブチレンと少量の他の炭素数4のオレフィンとを共重合したものであって、例えばナフサ分解により生成するいわゆるC4 留分のうちブタジエンを除いたブタン−ブテン留分の一部を重合することによって得られるものである。(A)成分としてポリブテンを含有することによって、本発明の粘着組成物は、小生物の捕獲に適した粘着性を付与することができるのである。なお、ポリブテンは水素添加されたものであってもよい。
【0011】
前記ポリブテンの数平均分子量は、200〜4000であることが好ましい。ポリブテンの数平均分子量が200未満であると、組成物の粘度が低くなりすぎて耐フロー性が下がるとともに、粘着力が不十分となる傾向があり、さらに、紙などの吸収性のある支持体に塗工した場合に支持体へのブリードが発生し易くなる。一方、ポリブテンの数平均分子量が4000を越えると、組成物の粘度が高くなりすぎて塗工作業が困難になる傾向がある。
【0012】
本発明において、(A)成分の配合割合は、組成物全体に対して50〜98重量%とすることが重要である。(A)成分が50重量%未満であると、粘着性が不足することとなり、一方、(A)成分が98重量%を越えると、凝集力が低下して、足曳き性および耐フロー性が不足し、離形紙に対する剥離性が低下することとなる。
【0013】
本発明において、前記(B)成分となるポリイソブチレンあるいはブチルゴムは、数平均分子量が10,000〜2,500,000のものでなければならず、また、本発明の粘着組成物において主成分となる前記(A)ポリブテンに溶解し易いものが好ましい。数平均分子量が10,000未満であると、粘着力および足曳き性が低下し、一方、数平均分子量が、2,500,000を越えると、粘度が高くなりすぎて塗工作業が困難となり、さらには粘着力も低下することとなる。このように、極めて高分子量のポリイソブチレンあるいはブチルゴムを用いることによって、小生物の捕獲に必要な足曳き性を備えた粘着組成物となるのである。なお、(B)成分としては、ポリイソブチレンおよびブチルゴムをそれぞれ単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明において、(B)成分の配合割合は、組成物全体に対して0.5〜30重量%とすることが重要である。(B)成分が0.5重量%未満であると、十分な足曳き性を発現することができず、一方、(B)成分が30重量%を越えると、粘度が高くなりすぎて流動性が低下し塗工作業性が困難になる。
本発明における(C)成分は、結晶性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−極性モノマー共重合体、非晶性ポリα−オレフィン、からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、さらに詳しくは、メルトフローレート(ASTM D−1238,230℃)が0.3〜400である結晶性ポリプロピレン、メルトフローレート(ASTM D−1238,190℃)が0.4〜400であるポリエチレン、共重合体の極性モノマー含有量が30重量%以下であるエチレン−極性モノマー共重合体、C3 〜C6 の炭素数を有するエチレン炭化水素を単独あるいは2つ以上よりなる共重合体あるいはこれらとエチレンとの共重合体である非晶性ポリα−オレフィン、からなる群より選ばれる少なくとも1つを必須とするものである。本発明の粘着組成物は、このような(C)成分を含有することによって、優れた耐フロー性を発現することができるのである。
【0015】
本発明において、(C)成分の配合割合は、組成物全体に対して0.5〜30重量%とすることが重要である。(C)成分が0.5重量%未満であると、十分な耐フロー性を発現することができず、一方、(C)成分が30重量%を越えると、組成物自体が硬くなり粘着性が不足することとなる。
(C)成分として用いられる前記結晶性ポリプロピレンは、主にアイソタクチック構造からなるもので、具体的にはプロピレンを重合し、副生する非結晶性ポリプロピレンを溶媒分別して除去したものを用いることができる。結晶性ポリプロピレンのメルトフローレート(ASTM D−1238,230℃)は0.3〜400であることが好ましい。結晶性ポリプロピレンのメルトフローレートが0.3未満であると、ポリブテンへの溶解が困難となり、一方、400を越えると、十分な耐フロー性が得られにくい。
【0016】
(C)成分として用いられる前記ポリエチレンは、エチレンを中・低圧法および高圧法において重合したものであり、メルトフローレート(ASTM D−1238,190℃)は0.4〜400であるものが好適に用いられる。メルトフローレートが0.4未満であるポリエチレンでは、ポリブテンへの溶解が困難となり、一方、400を越えるポリエチレンでは、十分な耐フロー性が得られにくい。
【0017】
(C)成分として用いられる前記エチレン−極性モノマー共重合体は、極性モノマーの含有量が30重量%以下であることが好ましい。極性モノマーの含有量が30重量%を越えるエチレン−極性モノマー共重合体では、ポリブテンとの相溶性が悪くなり、溶解が困難になると同時に、十分な耐フロー性が得られにくいこととなる。前記極性モノマーとしては、エチレンと共重合可能なものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸、一酸化炭素等を、単独あるいは2種類以上を併用して用いることができる。エチレンとこれらの極性モノマーとの共重合体のなかでも特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−酢酸ビニル共重合体が好ましく、さらに好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体がよい。
【0018】
(C)成分として用いられる前記非晶性ポリα−オレフィンは、主としてC3 〜C6 の炭素数を有するエチレン炭化水素を単独あるいは2つ以上よりなる共重合体あるいはこれらとエチレンとの共重合体である。具体的には、例えば、非晶性ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、またはこれらにヘキセン等を共重合させたもの等を挙げることができる。前記非晶性ポリα−オレフィンは、主に、一定のコントロールされた品質を持つものとして重合により製造されたものである。また、結晶性ポリプロピレン製造の際に副生する非晶性ポリプロピレン(APP)を用いることができる。このとき、非晶性ポリプロピレンには、数%の結晶性ポリプロピレンや結晶性ポリプロピレン製造成時の他の副生物が含まれていてもよい。また、共重合の形式は、ランダム型、ブロック型、クラフト型のいずれであってもよい。
【0019】
本発明においては、(D)成分となる水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを必須成分として含有していなければならない。スチレン系熱可塑性エラストマーを含有させることによって、粘着組成物の相溶性が良好で、比較的低粘度で凝集力を付与することができ、良好な粘着性および足曳き性を著しく低下させることなく、優れた離形紙の剥離性を発現させることができ、さらに、このエラストマーが水素添加されていることによって、良好な加熱安定性および耐侯性を有する粘着組成物となるのである。
【0020】
水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を水素添加して得られるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を水素添加して得られるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0021】
本発明において、(D)成分の配合割合は、組成物全体に対して1〜45重量%とすることが重要である。(D)成分が1重量%未満であると、離形紙を剥離する際に良好な剥離性を発現することができず、一方、(D)成分が45重量%を越えると、粘着性が不足することとなる。
本発明においては、必須成分となる前記(A)〜(D)のほかに、さらに、天然または合成の粘着付与樹脂を含有するものであることが好ましい。この粘着付与樹脂とは、主として固形状の粘着物質であり、ポリマーとブレンドすることによって、流動性、タックを付与し、粘着力および支持体に対する密着性を向上させるものである。前記合成粘着付与樹脂としては、石油系粘着付与樹脂あるいは水素添加された石油系粘着付与樹脂等があり、例えば、脂肪族系、芳香族系、共重合系、脂環族水添系、水添脂肪族系等が挙げられる。天然粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂等があり、例えば、ロジン・ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂の軟化点は70〜140℃であることが好ましい。軟化点が70℃未満であると、粘着力が不足することとなり、一方、軟化点が140℃を越えると、粘着性が不足することとなるため好ましくない。
【0022】
本発明において、前記粘着付与樹脂の配合割合は、組成物全体に対して1〜30重量%とすることが好ましい。粘着付与樹脂が1重量%未満であると、十分な粘着性を付与することができず、一方、粘着付与樹脂が30重量%を越えると、温度依存性が大きくなり、粘着性が低下し、さらに、粘着組成物が硬くなるため十分な足曳き性を示さなくなるので好ましくない。
【0023】
本発明の小生物捕獲用粘着組成物は、捕獲しようとする小生物を効率よく捕獲具へ誘引するために、誘引剤を含有していることが好ましい。誘引剤としては、例えば、ナタネ油、大豆油、落花生油等の植物油;鯨油、鱈油等の動物油;魚、肉等の動物性粉末;穀物、野菜等の植物性粉末;チーズ、バター等の加工食品;糖蜜、砂糖等の糖類;フェロモン、香料等の誘引性物質;等が挙げられる。なお、前記(A)成分〜(D)成分で構成される本発明の粘着組成物は特異な臭気を有しないので、捕獲しようとする小生物が臭気によって忌避することもなく、誘引剤の効果を有効に発揮することができる。
【0024】
本発明の粘着組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜添加することができる。
本発明の小生物捕獲具は、前記の本発明の小生物捕獲用粘着組成物を支持体の一部または全部に塗工し、その塗工表面に離形紙を貼り合わせてなるものであり、捕獲具を小生物の通路等の設置する際に離形紙を剥離して使用するものである。粘着組成物の塗工表面に離形紙を貼り合わせることによって、捕獲具の運搬や保管の際の利便性を確保することができ、しかも、本発明の粘着組成物は離形紙の剥離性に優れたものであるので、捕獲具を使用する際にも、捕獲性能を低下させることなく容易に離形紙を除去することができる。
【0025】
前記支持体としては、例えば、シート状、筒状、器体状等の適宜の形状のものを採用することができる。また、その材質は、粘着組成物を塗布しうるものであれば特に制限されることはなく、例えば、紙あるいはプラスチック等の素材のものを用いることができる。本発明の捕獲具はこのような支持体の一部あるいは全面に粘着組成物が塗工されたものである。
【0026】
前記離形紙としては、特に制限はなく、具体的には、例えば紙や、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に、シリコーン樹脂等の離形剤を塗工したものを使用すればよい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明にかかる実施例および比較例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
実施例および比較例において得られた粘着性組成物およびそれを用いた捕獲具の各種特性については、以下の方法にて評価した。
【0028】
〔相溶性〕試料の粘着組成物をアルミカップに約100g秤量し、140℃にて加熱溶融させた。その際、溶融した粘着組成物の透明性を目視にて判断し、これによって相溶性を評価した。すなわち、○:透明性あり、△:白濁し透明性が低い、×:濁りにより透明性が全くない、とした。
〔流動性〕試料の粘着組成物をアルミカップに約100g秤量し、140℃にて加熱溶融させた。その際、溶融した粘着組成物をかき混ぜたときの状態を目視にて判断し、これによって流動性を評価した。すなわち、○:流動性良好、△:少しモロモロがある、×:モロモロしており、流動性が非常に悪い、とした。
【0029】
〔足曳き性〕試料の粘着組成物をボール紙上に塗布厚1mmとなるように塗工し、冷却後、捕獲具検体を得た。この検体の粘着層面に高速あるいは中速で指を接触させ、直ちに指を粘着層面から剥がしたときの足曳き具合を、指触感および目視にて判断し、これによって足曳き性を評価した。すなわち、◎:高速でも指に引っ付き、足曳きを生じ、剥がすのに強度を感じる、○:中速で指に引っ付き、足曳きを生じ、剥がすのに強度を感じる、△:中速で足曳きが弱く、剥がすのに強度を感じない、×:中速でほとんど指に引っ付かず、足曳きもほとんどない、とした。
【0030】
〔粘着力〕試料の粘着組成物をボール紙上に塗布厚100μmとなるように塗工し、冷却後、捕獲具検体を得た。この検体について、ピグマタックテスターを用いて、圧着1秒、Up-Speed30mm/分の条件で23℃での粘着力を測定した。
〔ゴキブリ捕獲性能〕試料の粘着組成物をボール紙上に塗布厚1mmとなるように塗工し、冷却後、捕獲具検体を得た。この検体の上に、予め捕獲しておいたゴキブリを走らせ、その捕獲性能を確認した。すなわち、◎:捕獲性が非常に良好、○:捕獲性が良好、△:捕獲できる場合と逃げる場合とがある、×:全く捕獲できない、とした。
【0031】
〔離形紙の剥離性〕試料の粘着組成物をボール紙上に塗布厚100μmとなるように塗工し、離形紙を貼り合わせた。1日放置後、離形紙を手で剥がして、その剥離性を確認した。すなわち、◎:軽い力で容易に剥がせ、糊写りもない、○:強い力をかけると手で剥がせ、糊写りもない、△:手で剥がせるが、途中で止まると剥がれにくい、×:手では剥がれにくく、無理に剥がすと凝集破談を示す、とした。
【0032】
〔耐フロー性〕2本のスクリュー管に試料の粘着組成物を各々5g秤量し、スクリュー管を横向きに倒した状態でそれぞれ23℃および80℃に保持した中で1時間おいて、各々粘着組成物の流れ具合を確認した。すなわち、◎:流れが認められない、○:少し流れている、△:表面が45°前後まで流れている、×:完全に流れている、とした。
【0033】
〔加熱安定性〕試料の粘着組成物をガラス容器に一定量入れて、140℃に保持した雰囲気下に放置し、24時間までの状態変化を目視にて確認した。
〔実施例1〜8〕および〔比較例1〜6〕
表1および表2に示す各種粘着組成物を調製し、各種特性について評価した。評価結果を表1および表2に併せて示す。
【0034】
なお、粘着組成物を構成する各成分については、表中、以下の略号で示した。
(A)成分;
ポリブテン(1):商品名「出光ポリブテン300R」出光石油化学(株)製(数平均分子量1,330)
(B)成分;
ポリイソブチレン(1):商品名「ビスタネックスMML−120」エッソ化学(株)製(フロリィー法による粘度平均分子量1,600,000)
(C)成分;
ポリエチレン(1):商品名「ミラソン60」三井ポリケミカル(株)製(高圧法ポリエチレン樹脂、ASTM D−1238に準拠して測定した190℃メルトフローレートが70〔g/10分〕、軟化点76℃)
APAO(1):商品名「ウベタックUT−2280」宇部興産(株)製(溶融粘度8000 CP/190℃、軟化点146℃)
(D)成分;
SEBS(1):スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、商品名「クレイトンG−1657」シェルジャパン(株)製(スチレン含量13%)
SEPS(1):スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー、商品名「セプトン2063」(株)クラレ製(スチレン含量13%、JIS K−7210に準拠して測定したメルトフローレートが200℃・10kg22〔g/10分〕)
SEPS(2):スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー、商品名「セプトン2002」(株)クラレ製(スチレン含量30%、JIS K−7210に準拠して測定したメルトフローレートが200℃・10kg100〔g/10分〕)
SIS(1):スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、商品名「クレイトンD−1112」シェルジャパン(株)製(スチレン含量15%)
SBS(1):スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、商品名「クレイトンD−1118」シェルジャパン(株)製(スチレン含量31%)
粘着性樹脂(1);脂肪族飽和炭化水素樹脂、商品名「アルコンP−100」荒川化学工業(株)製(脂肪族飽和炭化水素樹脂、軟化点100℃)
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1から明らかなように、実施例1〜実施例3で得られた本発明の粘着性組成物は、良好な粘着性および足曳き性を有しており、ゴキブリの捕獲性能に優れ、かつ、耐フロー性および加熱安定性の良好で、さらに離形紙の剥離性にも優れるものであった。実施例4で得られた本発明の粘着組成物は、本発明の粘着付与樹脂を含有するので、実施例1よりもさらに粘着力に優れたものであった。実施例5で得られた本発明の粘着組成物は、(D)成分の割合が実施例1よりも多いので、足曳き性、ゴキブリの捕獲性能には若干劣るものの、耐熱フロー性が良好であり、粘着力も極めて高いものであった。実施例6で得られた本発明の粘着組成物は、(A)成分の割合が実施例1よりも多いので、実施例1よりも粘着力は低下するもののゴキブリの捕獲に十分な粘着性を有し、さらに足曳き性および耐フロー性、加熱安定性は良好で、離形紙の剥離性にも優れるものであった。実施例7で得られた本発明の粘着組成物は、(C)成分としてポリエチレンを用いたものであり、実施例1よりも粘着力は若干劣るものの、80℃での耐熱フロー性に特に優れるものであった。実施例8で得られた本発明の粘着組成物は、(B)成分の割合が実施例1よりも多いので、実施例1よりも粘着力は低下するもののゴキブリの捕獲に十分な粘着性を有し、さらに足曳き性および耐フロー性、加熱安定性は良好で、離形紙の剥離性にも優れるものであった。
【0038】
一方、表2から明らかなように、比較例1で得られた粘着組成物は、(D)成分が含有されていないので、粘着力、足曳き性等は良好であるが、離形紙の剥離性には全く欠けるものであった。比較例2で得られた粘着組成物は、(D)成分が含有されておらず、しかも(C)成分の割合が多いので、粘着力および足曳き性も低くゴキブリの捕獲は困難であり、しかも離形紙の剥離性も悪いものであった。比較例3で得られた粘着組成物は、(A)成分および(B)成分とからのみなるものであるので、耐フロー性に欠け、しかも離形紙の剥離性も悪いものであった。比較例4および比較例5で得られた粘着組成物は、(D)成分の代わりに水素添加されていない熱可塑性エラストマーを用いたので、粘着組成物の相溶性および流動性が悪く、捕獲具として使用できるものではなかった。比較例6で得られた粘着組成物は、(D)成分の含有量が本発明の範囲を越えているので、離形紙の剥離性には優れるものの、粘着力および足曳き性が低くゴキブリの捕獲は困難なものであった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な粘着性および足曳き性を有して、小生物の捕獲性能に優れ、かつ、耐フロー性および加熱安定性に優れて、塗工作業性も良好であり、さらに離形紙の剥離性にも優れ、しかも長期間の使用に耐えうる良好な耐侯性を有する、小生物捕獲用粘着組成物およびこれを用いた小生物捕獲具を提供することができる。
Claims (4)
- (A)ポリブテンを50〜98重量%と、
(B)数平均分子量が10,000〜2,500,000である、ポリイソブチレンおよび/またはブチルゴムを0.5〜30重量%と、
(C)結晶性ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−極性モノマー共重合体、非晶性ポリα−オレフィン、からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.5〜30重量%と、
(D)水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマーを1〜45重量%と、
を必須成分として含有してなり、
前記結晶性ポリプロピレンはメルトフローレート(ASTM D−1238,230℃)が0.3〜400である結晶性ポリプロピレンであり、前記ポリエチレンはメルトフローレート(ASTM D−1238,190℃)が0.4〜400であるポリエチレンであり、前記エチレン−極性モノマー共重合体は共重合体の極性モノマー含有量が30重量%以下であるエチレン−極性モノマー共重合体であり、前記非晶性ポリα−オレフィンはC 3 〜C 6 の炭素数を有するエチレン炭化水素を単独あるいは2つ以上よりなる共重合体あるいはこれらとエチレンとの共重合体である非晶性ポリα−オレフィンである、
小生物捕獲用粘着組成物。 - 天然または合成の粘着付与樹脂を1〜30重量%含有してなる、請求項1に記載の小生物捕獲用粘着組成物。
- 誘因剤を含有してなる、請求項1または2に記載の小生物捕獲用粘着組成物。
- 請求項1から3までのいずれかに記載の小生物捕獲用粘着組成物を支持体の一部または全部に塗工し、塗工表面に離形紙を貼り合わせてなる小生物捕獲具。
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