JP4145621B2 - 不飽和カルボン酸エステル合成反応の反応開始方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素の存在下で不飽和アルデヒドとアルコールを反応させて不飽和カルボン酸エステルを製造する方法に関し、高い不飽和アルデヒド転化率と高い不飽和カルボン酸エステル選択率を示す定常状態に速やかに到達せしめ、かつ、反応初期の触媒の品質劣化を防ぎ、長期にわたり安定して連続的に不飽和カルボン酸エステルの製造を行うことのできる反応開始方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
工業的に有用なメタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルを製造する方法として、メタクロレイン又はアクロレインをメタノールと反応させて直接、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルを製造する酸化エステル化法が提案されている。この製法ではメタクロレイン又はアクロレインをメタノール中で分子状酸素と反応させることによって行われ、パラジウムと鉛、ビスマス、タリウム、水銀を含む触媒を用いた例が、特公昭57−35856〜35861号各公報に、また、パラジウムとこれら金属との金属間化合物を触媒とする例が、特公昭62−7902号公報に開示されている。
【0003】
また、特開平9−216850号公報他には、パラジウムとビスマスを用いた触媒が、特開2001−220367にはルテニウムと鉛を用いた触媒が例示されている。これらの開示例に示される触媒は全て、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナなどの担体に担持された固体触媒であり、反応は、これらの固体触媒をアルコールと不飽和アルデヒドの溶液中に分散させて(以下、場合により触媒スラリーと略記する)酸素を含むガスを吹き込んで行われている。
【0004】
反応には、攪拌槽反応器、気泡塔反応器などが用いられるが、本発明者らは気泡塔反応器を用いてメタクロレインとメタノールからメタクリル酸メチルを製造する実験を行った。同一の触媒を用いて反応を何度か実施したところ、定常になった際の活性やメタクリル酸メチルの選択率にバラツキが生じることが判った。そして、活性が低くメタクリル酸メチルの選択率が低い反応液中には、反応器の構成成分である鉄等の金属成分の溶出が認められた。これは工業的実施に際して反応器の腐食という大きな問題が生じる危険性がある。
【0005】
さらに、反応停止後の反応器内にポリマーがあり、そのポリマー中に触媒が含まれていることが判った。長期間運転を実施する際には、ポリマーが成長し触媒が取り込まれて活性が低下したり、反応器を閉塞させてしまうことが判明し、致命的な問題であることが判った。これらの問題の原因は明らかではないが、反応開始時に水濃度が高いとカルボン酸類が多量に生成し、触媒構成成分が溶出することによって触媒性能が低下すること。また生成するカルボン酸類によって反応器材質からの鉄等の金属成分が溶出し、溶出した金属成分が触媒に吸着して触媒性能を低下させていることを推定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、高い不飽和アルデヒド転化率と高い不飽和カルボン酸エステル選択率を示す定常状態に速やかに到達せしめ、かつ、触媒構成成分の溶出を防ぎ、反応器材質の腐食を防ぎ、反応器内のポリマーの副生を抑制して反応器の長期にわたり安定して連続的に不飽和カルボン酸エステルの製造を行うことのできる反応開始方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
これらの課題を解決するために、筆者らは反応を開始する際に、触媒を含む水溶液を置換する際の溶媒や、反応液の水濃度等に関する条件について鋭意検討した結果、反応開始前の反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールで触媒を含む水溶液を置換して水濃度を10重量%以下に低下させてから酸素の供給を開始することで触媒成分の溶出を抑制し、触媒品質の低下の防止とポリマー生成の抑制を見いだし本件発明の端緒を得た。さらに、この方法で反応を開始した場合には、定常状態に到達した際の不飽和アルデヒド転化率と不飽和カルボン酸選択率が高いことも判明し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本件発明は、
1.酸素の存在下で不飽和アルデヒドとアルコールを触媒と反応させて不飽和カルボン酸エステルを製造する方法において、反応開始前に触媒を含んだ水溶液を反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールで置換して水濃度を10重量%以下に低下させてから酸素の供給を開始することを特徴とする不飽和カルボン酸エステルの反応開始方法に係る。
2.該触媒がパラジウムおよび/またはルテニウムとX(Xは鉛、ビスマス、水銀、タリウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を示す)を含む触媒であることを特徴とする上記1.記載の不飽和カルボン酸エステルの反応開始方法に係る。
3.不飽和アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレインで、アルコールがメタノールである上記1および2記載の不飽和カルボン酸エステルの反応開始方法に係る。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、反応の開始とは、温度、圧力、酸素濃度が所定の値になった時点を指し、これらの条件を合わせ込む順番、組合わせは任意所定に定めれば良い。一例を挙げるならば、反応器に反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールで置換して、反応溶液中の水濃度を10wt%にした触媒を含む反応溶液を仕込み、反応に不活性なガスを主として含むガスを吹き込みながら触媒を流動させ、次いで圧力を所定の値まで上げる。
【0010】
引き続き温度を所定の値まで上げた後、吹き込むガスを酸素を含むガスに切り替えて、反応器出口酸素濃度が所定の値になるように調整し、出口酸素濃度が所定の値に到達した時点を反応の開始とする。また、触媒を流動化させる際には本発明の目的を損なわない範囲で不活性ガス中に酸素を含んでも良い。
本発明における触媒のみならず、一般に金属状態まで還元された金属触媒では、空気中で有機物の蒸気と共存すると発火する危険性があり、水溶液中で保存することが好ましい。
【0011】
従って、反応器に触媒を投入する際には水溶液と一緒に触媒を反応器に投入することが一般的である。本発明における触媒を含む水溶液とは、主に安全上の理由から水を含む溶液中に触媒が存在している混合物を指し、混合状態は任意所定に定めれば良い。一般的な状態を例示すれば、触媒が沈殿し静置している状態、ガスや溶液を吹き込んだり攪拌することにより触媒が水溶液中に分散している状態などが挙げられる。水溶液を用いる主たる理由は安全の確保であり、触媒やプラントが安全な状態に置かれている範囲で水溶液の組成は任意所定に定めれば良い。安全な状態とは、燃焼の3要素である可燃物、酸素、着火源のすくなくとも一つが避けられている状態である。
【0012】
たとえば、可燃物を避ける手段としては水のみ、あるいは低濃度の可燃物しか含まない水溶液が例示され、酸素を避ける手段としては、低濃度の可燃物しか含まない水溶液中や、仮に高濃度の可燃物を含む場合あるいは可燃物のみを含む場合であっても触媒が溶液中に分散あるいは沈殿静置されていて実質的に空気に触れていない状態が例示され、着火源を避ける手段としては、触媒が水溶液や反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールなどの液体で濡れていて、万が一触媒が何らかのエネルギーを含んだとしても、液体の良好な熱伝導により速やかに最小着火エネルギーより低い状態に置かれることが例示される。これらの組み合わせも好ましく例示される。
【0013】
本発明における水溶液の置換の方法については任意所定に定めれば良く、触媒スラリーに反応に用いるアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールを供給しながら連続的に置換する方法、触媒と水溶液を一般的な分離方法、たとえば、ろ過、デカンテーション、フィルター分離などで一旦おおよそ分離し、次に反応に使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコール中に分散させることを繰り返す方法、不活性雰囲気下で水溶液を蒸発させて後反応に使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコール中に分散させる方法などが例示される。
【0014】
実際のプラント運転での簡便性を考慮するならば、触媒スラリーに反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールを供給しながら連続的に置換する方法が好ましく例示される。置換操作を行う条件は任意所定に定めれば良い。
また、置換操作にも拠るため一義的には決められないが、触媒スラリーに反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールを供給しながら連続的に置換する方法で例示するならば、完全混合槽の一般的な性質として、滞留時間の3から4倍時間を目安に流す液量を決めればよい。温度と圧力についても、所定の値にする前でも後でも、また、それらの操作の途中でもよい。ここで述べている滞留時間(θ)は、F/V=θ(F=供給液量、V=反応器中の実溶液保有量)を示している。
【0015】
本発明における水濃度とは、触媒を含む反応溶液のうち、触媒を除いた反応溶液中の水濃度を示す。
本発明における置換操作と反応の開始操作の順番は任意所定に定めれば良く、まずアルコールまたは不飽和アルデヒドとアルコールの置換操作を済ませて反応の開始操作に入る方法でも、反応条件を整えてから置換操作に入る方法でも構わない。アルコールまたは不飽和アルデヒドとアルコールで置換する操作と反応条件を整える操作を同時並行で進める方法も好ましく例示される。
【0016】
本発明においては、反応開始前に触媒を含んだ水溶液を、反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールで置換して水濃度を10重量%以下とし、好ましくは5重量%以下とし、さらに好ましくは3重量%以下とする。該水濃度が10重量%を越えると、不飽和カルボン酸(メタクリル酸)の副生が多くなり、触媒を構成する元素の溶出が起こる。さらに反応速度の低下や副生物の選択率が増加し、メタクリル酸メチル選択率の低下を招き、ポリマーの発生が起こり好ましくない。また反応に用いるアルコールまたは不飽和アルデヒドとアルコール以外の有機物を用いると目的成分以外の副生成物が増加し好ましくない。
【0017】
本発明において使用する不飽和アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒドなどの脂肪族不飽和アルデヒド並びにこれらアルデヒドの誘導体;ベンズアルデヒド、トルイルアルデヒド、ベンジルアルデヒド、フタルアルデヒドなどのC6−C20芳香族アルデヒド並びにこれらのアルデヒドの誘導体などがあげられる。本発明では、アクロレインとメタクロレインが好ましく用いられる。これらの不飽和アルデヒドは単独もしくは任意の二種以上の混合物として用いることができる。特に、イソブチレン、プロピレンから触媒存在下酸素で部分酸化されて製造されるアクロレインとメタクロレインはさらに好ましく用いられる。
【0018】
本発明において使用するアルコールとしては、炭素数1〜12脂肪族飽和アルコール、ジオール、脂肪族不飽和アルコール、芳香族アルコールなどがあげられる。例えば、脂肪族飽和アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノールなどがあげられる。ジオールとしてはエチレングリコール、ブタンジオールなどがあげられる。脂肪族不飽和アルコールとしてはアリルアルコール、メタリルアルコールなどがあげられる。芳香族アルコールとしてはベンジルアルコールなどがあげられる。特にメチルアルコール、エチルアルコールなどの低級アルコールの反応が速やかで好ましい。これらのアルコールは単独もしくは任意の二種以上の混合物として用いることができる。
【0019】
本発明反応における不飽和アルデヒドとアルコールとの使用量比は任意所定に定めれば良く、例えば不飽和アルデヒド/アルコールのモル比で10〜1/1000のような広い範囲で実施できるが、一般には不飽和アルデヒドの量が少ない方が好ましく、1/2〜1/50の範囲にするのが好ましい。
本発明で使用する酸素は分子状酸素、すなわち酸素ガス自体又は酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば窒素、炭酸ガスなどで希釈した混合ガスの形とすることができ、空気を用いることもできる。反応系に存在させる酸素の量は、反応に必要な化学量論量以上、好ましくは化学量論量の1.2倍以上あれば充分である。反応の全圧は減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲で実施することができるが、通常は1〜20kg/cm2の圧力で実施される。反応系に供給する酸素の分圧は、反応器出口側の酸素分圧が0.8kg/cm2以下となるように管理するのが好ましく、より好ましくは0.4kg/cm2以下である。一方、反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(8vol%)を越えないように全圧を設定するとよい。
【0020】
本発明反応は、気相反応、液相反応、潅液反応などの任意の従来公知の方法で実施できる。反応器形式も固定床式、流動床式、撹拌槽式などの従来公知の任意の形式によることができる。例えば液相で実施する際には気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、撹拌槽反応器などの任意の反応器形式によることができる。反応は、無溶媒でも実施できるが、反応成分に対して不活性かつ触媒と殆ど反応しない溶媒、例えば、ヘキサン、デカン、ベンゼン、ジオキサンなどを用いて実施することができる。
【0021】
本発明に用いる触媒はパラジウムおよび/またはルテニウムと、X(Xは鉛、ビスマス、水銀、タリウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属)を含むことが必須である。パラジウムおよび/またはルテニウムとXが合金、金属間化合物を形成しても良い。また、異種元素として3B族元素で好ましくはYであり、ランタノイド元素で好ましくはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Ybであり、4B族元素で好ましくはTi、Zrであり、5B族元素では好ましくはNb、Taであり、6B族元素では好ましくはWであり、7B属元素では好ましくはMn、Reであり、8属元素では好ましくはCo、Rh、Ir、Ptであり、1B属元素では好ましくはAg、Auであり、2B属元素であり、3A属元素では好ましくはAl、Ga、Inであり、4A属元素では好ましくはSi、Ge、Snであり、5A属元素では好ましくはSbであり、6A属元素では好ましくはSe、Teであり、これらの元素等を含んでもよい。
【0022】
これらの異種元素は通常、5重量%、好ましくは1重量%を超えない範囲で含むことができる。さらにはアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一員を含むものは反応活性が高くなるなどの利点がある。アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素は通常0.0 1〜30重量%、好ましくは0.01〜5重量%の範囲から選ばれる。これらの異種元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素などは結晶格子間に少量、侵入したり、結晶格子金属の一部と置換していてもよい。
【0023】
また、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素は、触媒調製時にパラジウム化合物、ルテニウム化合物、あるいはXの化合物を含む溶液に加えておき担体に吸着あるいは付着させてもよいし、あらかじめこれらを担持した担体を利用して触媒を調製することもできる。また、反応条件下に反応系に添加することも可能である。これらの触媒構成要素は単独にあるいはシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタン、炭酸塩、水酸化物、活性炭、ジルコニアなどの担体に担持されたものがよい。
【0024】
本発明におけるパラジウムおよび/またはルテニウム担持触媒の担持量は、特に限定はないが、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり、アルカリ金属元素もしくはアルカリ土類金属元素を使用する場合、担持量は、通常、0.01〜30重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
本発明の触媒は公知の調製方法で準備することができる。代表的な触媒調製方法について説明すれば、たとえば、可溶性の鉛化合物および塩化パラジウムなどの可溶性のパラジウム塩を含む水溶液に担体を加えて加温含浸させ、パラジウム、鉛を含浸する。ついでホルマリン、ギ酸、ヒドラジンあるいは水素ガスなどで還元する。この例で示すならば、パラジウムを担持する前に鉛を担持してもよいし、パラジウムと鉛を同時に担持してもよい。
【0025】
触媒調製のために用いられるパラジウム化合物及びルテニウム化合物は、例えば蟻酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩のごとき無機酸塩、アンミン錯体、ベンゾニトリル錯体、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体などの有機金属錯体、酸化物、水酸化物などのなかから適宜選ばれるが、パラジウム化合物としては塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどが、ルテニウム化合物としては塩化ルテニウムなどが好ましい。Xの化合物としては硝酸塩、酢酸塩などの無機塩、ホスフィン錯体など有機金属錯体を用いることができ、硝酸塩、酢酸塩などが好適である。またアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物についても有機酸塩、無機酸塩、水酸化物などから選ばれる。
【0026】
触媒の使用量は、反応原料の種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式などによって大巾に変更することができ、触媒をスラリー状態で反応させる場合には反応液1リットル中に0.04〜0.5kg使用するのが好ましい。
本発明の反応は、反応系にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩など)を添加して反応系のpHを6〜9に保持することが好ましい。特にpHを6以上にすることで触媒中のX成分の溶解を防ぐ効果がある。これらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物は単独もしくは二種以上組み合わせて使用することができる。
本発明反応は、100℃以上の高温でも実施できるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃である。反応時間は、設定した条件により異なるが 通常1〜20時間である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、実施例をもって本発明の実施の形態を具体的に説明する。
担体として富士シリシア社製のシリカゲル(キャリアクト10 商品名 平均粒子径 50μm)にパラジウム5重量%、鉛5重量%、マグネシウム4重量%を担持した触媒150gを、触媒分離器を備え液相部が1.2リットルのステンレス製外部循環型気泡塔反応器に仕込んだ。この時、反応器内は水で満たされている。反応器内を不活性ガスを含むガスで触媒を循環させながらメタノールを0.10リットル/hrで供給し置換操作を行った。水濃度の分析は、水溶液を適宜一部抜き出し通常のガスクロマトグラム法にて、島津製作所製GC−14BT型機にガラスカラムにGLサイエンス社製の商品名ガスクロパック56充填材を充填し、恒温槽をプログラム昇温させて、熱伝導度検出器(TCD)を用いて行った。次いで所望の水濃度に置換が行われたことを確認した。水濃度を確認後、34重量%のメタクロレイン/メタノールを0.54リットル/hr、NaOH/メタノールを0.06リットル/hrで供給し、温度80℃、圧力5.0kg/cm2で空気を供給しながら反応開始した。反応液のpHが7.1となるようにNaOH濃度調製し、また、供給原料液中の鉛濃度が20ppmとなるように酢酸鉛をメタクロレイン/メタノールに溶かして連続的に供給した。一方、反応器出口酸素濃度は、4vol%(酸素分圧0.20kg/cm2)となるように空気量を調整しながら反応器に空気を供給した。
【0028】
反応成績は以下のように評価した。
(1)アルデヒド転化率、カルボン酸エステル選択率
反応液ならびに反応器出口ガスの分析は、通常のガスクロマトグラム法にて、島津製作所製GC−8A型機に化学品検査協会製G−100カラム(ほぼ沸点順に溶出する)を装着し、恒温槽をプログラム昇温させて、水素炎検出器(FID)を用いて行った。また、実施例及び比較例において反応成績を表すために用いた転化率と収率は次式で定義される。
【0029】
(2)高沸生成物の分析
高沸点化合物、低重合度化合物などのいわゆる高沸成分は、ガスクロマトグラフ法でカルボン酸より高沸点の化合物をもってし、FID検出ピークのうち、不飽和カルボン酸(メタクリル酸)が溶出する保持時間よりも後ろで溶出する成分のピーク面積を合計し、カルボン酸エステルの面積で割った割合として標記することとする。
反応液中の金属成分は以下のように分析した。
測定は島津製作所製AA−6400F型原子吸光光度計およびリガク製JY−138誘導結合高周波プラズマ発光分光分析計を併用して行った。分析は、触媒成分のPbと、反応器材質であるFe、Ni、Cr、Moについて行い、原料との差を以って溶出量と見なし、分析下限は0.1ppmであった。ステンレス由来のFe、Ni、Cr、Moの濃度の合計も反応器腐食の目安として示した。
【0030】
【実施例1】
スタート前の反応器の水濃度は5重量%で反応を開始した。その後、上記反応条件にて、反応を50時間まで継続した。反応器出口での分析結果を、表1に経時的に示す。また、原料液および反応開始10時間後の反応出口液中の金属成分を分析した結果を表4に示す。
【0031】
【実施例2】
スタート前の反応器の水濃度は10重量%で反応を開始した。その後、上記反応条件にて、反応を50時間まで継続した。反応器出口での分析結果を、表2に経時的に示す。また、原料液および反応開始10時間後の反応出口液中の金属成分を分析した結果を表4に示す。
【0032】
【比較例1】
スタート前の反応器の水濃度は20重量%で反応を開始した。その後、実施例1と同様の反応操作を行った。結果を表3に経時的に示す。
また、原料液および反応開始10時間後の反応出口液中の金属成分を分析した結果を表4に示す。10時間後の溶出元素(ppm)、メタクロレイン転化率、メタクリル酸メチル選択率ともに、実施例1,2に比べて低く、触媒が劣化していることがわかった。
さらに、反応開始10時間後の高沸成分の顕著な悪化が見られ、さらに反応時間が経過しても高沸成分の悪化は改善されていないことから、重合が進んでしまったことを示唆している。定常状態に到達する時間も長い。50時間反応後、反応器を開放点検したところ、白色固形物があり、白色固形物中に触媒が含まれていることが認められた。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、反応開始してから定常になるまでの時間が短くでき、かつ、定常時のメタクロレイン転化率、MMA選択率が高く維持できる。さらに、反応開始直後のカルボン酸類の生成を抑制し、触媒から触媒構成元素が溶出して触媒品質の低下を防止でき、かつ、カルボン酸類によって反応器材質の腐食をおこることを防止できる。また、反応開始してから定常になるまでのポリマー生成を抑制して長期運転を可能とできる。
Claims (3)
- 酸素の存在下で不飽和アルデヒドとアルコールを触媒と反応させて不飽和カルボン酸エステルを製造する方法において、反応開始前に触媒を含んだ水溶液を反応で使用するアルコールまたは反応で使用する不飽和アルデヒドとアルコールで置換して水濃度を10重量%以下に低下させてから酸素の供給を開始することを特徴とする不飽和カルボン酸エステル合成反応の反応開始方法。
- 該触媒がパラジウムおよび/またはルテニウムとX(Xは鉛、ビスマス、水銀、タリウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を示す)を含む触媒であることを特徴とする請求項1記載の不飽和カルボン酸エステル合成反応の反応開始方法。
- 不飽和アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレインで、アルコールがメタノールである請求項1または2記載の不飽和カルボン酸エステル合成反応の反応開始方法。
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