JP4145455B2 - 半導体ウエハ加工用粘着シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンやガリウムヒ素などの半導体ウエハを加工する際に使用するウエハ加工用の粘着シートに関するものであって、加工時に塩素イオン等の不純物の発生がない半導体ウエハ加工用粘着シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体ウエハに貼着し、ダイシング、エキスパンティング等を行い、次いで該半導体ウエハをピックアップすると同時にマウンティングする際に用いる半導体ウエハ加工用シートとして、紫外線及び/又は電子線に対し透過性を有する基材上に紫外線及び/又は電子線により重合硬化反応をする粘着剤層が塗布された粘着シートを用い、ダイシング後に紫外線及び/又は電子線を粘着剤層に照射し、粘着剤層を重合硬化反応をさせ、粘着力を低下せしめて半導体ウエハ(チップ)をピックアップする方法が知られている。
この問題を解決するために、すでに軟質ポリ塩化ビニル(PVC)を基材フィルムとして使用するものが実用化されているが、最近の環境問題で焼却が難しいことやポリ塩化ビニル樹脂は塩素系樹脂であり、しかも鉛をはじめとする金属化合物からなる安定剤や可塑剤などが接着層に移行して半導体ウエハの表面を汚染とする原因となることがあった。
このような課題を解決するためにポリオレフィンを主体とした基材の使用が検討されている。(例えば、特開昭62−69640号公報、特開昭62−121781号公報、特開平1−249877号公報、特開平1−252684号公報)
【0003】
しかしながら、前記の特許ではエキスパンド時に必要とされる応力・伸び特性などの検討については不十分のままである。
【0004】
特開平5−235150号公報には、基材としてエチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体を用い、エキスパンドの際の応力・伸び特性について評価を行っているが、ピックアップ時の際のウエハの欠け等のチッピング特性については検討がされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、半導体ウエハ加工に際して、不純物の少ない優れたエキパンド性を示し、かつ耐チッピング特性に優れた半導体ウエハ加工用粘着シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、紫外線及び/又は電子線に対し透過性を有するフィルム基材面上にベースポリマーと放射線重合性化合物と放射線重合性重合開始剤からなる粘着剤層を塗布してなる半導体ウエハ加工用粘着シートにおいて、該フィルム基材がポリプロピレン20〜80重量部と、少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする末端重合体からなるブロックAと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする中間重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体80〜20重量部との混合物からなる半導体ウエハ加工用粘着シートである。
好ましくは、フィルム基材の10%伸長時の引っ張り強度が10〜125kg/cm2であり、且つ20%伸長後180秒保持した後応力を解放した際の基材長の復元率が75%以上である前記半導体ウエハ加工用粘着シートである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる基材としては、20〜80重量部、好ましくは40〜60重量部部のポリプロピレン樹脂(PP)と、80〜20重量部、好ましくは60〜40重量部の少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする末端重合体からなるブロックAと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする中間重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体との混合物である。
本発明に使用するフィルム基材の10%伸長時の引っ張り強度が10〜125kg/cm2であり、且つ20%伸長後180秒保持した後応力を解放した際の基材長の復元率が75%以上であることが好ましい。10%引っ張り強度が10kg/cm2未満であると、柔らかすぎてハンドリングが難しくなり、またチッピング性が悪く、チップをピックアップした後のシート上にウエハの欠けが存在する。また、125kg/cm2を超えると硬すぎて延びず、エキスパンドが難しくなる。弾性回復率が75%未満であると、エキスパンド後のタルミが多くなり、次の工程に移送する際にウエハボックスに収納する際に収納できなかったり、あるいは収納されたウエハ同士が接したりし、汚染の原因になるという問題点がある。
【0008】
本発明において、基材上に設けられる粘着剤層は、紫外線及び/又は電子線により重合硬化反応を起こせばよく、粘着剤層には、ベースポリマー、放射線重合性化合物、放射線重合性重合開始剤等を含有している。
【0009】
また本発明の粘着剤には、凝集力を高めるためにロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂等の粘着付与剤等を添加しても構わない。ただし、これらは塩化ビニル樹脂に加えられるような可塑剤を含まないのが望ましい。
【0010】
前記放射線重合性化合物混合物は、紫外線及び/又は電子線による硬化反応前には半導体ウエハに対して十分な粘着力を有し、硬化反応後には粘着力が低下し半導体ウエハ(チップ)のピックアップを容易に行うことができ、しかも高い凝集力を保つために5000以上と1000以下の分子量を持つ多官能アクリレートモノマーまたは2種類以上のアクリレートモノマーとを混合することが好ましい。
【0011】
5000以上の分子量を持つ多官能ウレタンアクリレートを用いることで、硬化反応前の粘着剤層に十分な凝集力を付与することができ、エキスパンディング時にアルミリング等の専用治具から粘着シートが剥離、脱落する恐れがなくなる。しかも蛍光灯下に長時間暴露しても粘着力を安定することができ、更に硬化反応後の粘着剤層にも十分な凝集力を付与することができ、ダイシング時にチッピングやチップの飛散を抑えることができる
【0012】
一方5000以上の分子量を持つ多官能のウレタンアクリレートのみでは粘度が高く取扱が困難で、硬化後の粘着力の低下が十分でなくチップのピックアップが困難になる。これを調整するために1000以下の分子量を持つ多官能のアクリレートモノマーを併用すると粘着物性のバランスが好適になる。
【0013】
本発明において用いる放射線重合性化合物中の多官能ウレタンアクリレートとしては、ジイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシ(メタ)アクリレートとにより合成される化合物であり、好ましくは2個のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートである。
【0014】
また放射線重合性化合物中の多官能アクリレートモノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることができる。
【0015】
本発明において、前記粘着剤層の厚さは特に限定されるものではないが、5〜35μm程度であるのが好ましい。
本発明において、前記粘着剤層を前記基材上に形成し、半導体ウエハ加工用粘着紙とを製造するには、粘着剤層を構成する成分をそのまま、または適当な有機溶剤により溶液化し、塗布又は散布等により基材上に塗工し、例えば80〜100℃、30秒〜10分程度加熱処理等により乾燥させることにより得ることができる。
【0016】
本発明の半導体ウエハ加工用粘着シートを使用するには公知の方法を用いることができ、例えば半導体ウエハ加工用粘着シートを半導体ウエハに貼り付けて固定した後、回転丸刃で半導体ウエハを素子小片(以下チップという)に切断する。その後、前記加工用粘着シートの基材側から紫外線及び/又は電子線を照射し、次いで専用治具を用いて前記ウエハ加工用粘着シート放射状に拡大しチップ間を一定間隔に広げた後、チップをニードル等で突き上げるとともに、真空コレット、エアピンセット等で吸着する方法等によりピックアップすると同時にマウンティングすればよい。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
《実施例1》
ポリプロピレンXF7700(チッソ(株)社製R-PP)75重量部とタフテックH1052(旭化成工業(株)製SEBS)25重量部の配合のものを十分にドライブレンドした後、二軸混練機を用いて樹脂温180〜270℃になるような条件で溶融混練し、押出し後ペレット化した。その後、押出し機で厚み90μmのシートにした。
アクリル酸2−エチルヘキシル50重量部とアクリル酸ブチル10重量部、酢酸ビニル37重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合して得られた重量平均分子量500000の共重合体100重量部に対し、放射線重合化合物として分子量が11000の2官能ウレタンアクリレートと分子量が500の5官能アクリレートモノマーが、それぞれ35重量部、65重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを放射性重合化合物100重量部に対して8.3重量部、ポリイソシアネート系架橋剤をアクリル共重合体100重量部に対して、6重量部を配合した粘着剤層となる樹脂溶液を、剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルムに乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、80℃で5分間乾燥した。その後、基材のシートをラミネートし、半導体加工用粘着シートを作製した。
得られた半導体加工用粘着シートを室温で7日以上成熟後、 各項目の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0018】
《実施例2》
実施例1で用いたシートの基材がポリプロピレンXF7700、50重量部とタフテックH1052、50重量部の配合であること以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、実施例1と同様の項目について試験した。その結果を表1に示す。
《実施例3》
実施例1で用いたシートの基材がポリプロピレンXF7700、25重量部とタフテックH1052、75重量部の配合であること以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、実施例1と同様の項目について試験した。その結果を表1に示す。
《比較例1》
実施例1で用いたシートの基材がポリプロピレンXF7700、0重量部とタフテックH1052、100重量部の配合であること以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、実施例1と同様の項目について試験した。その結果を表1に示す。
《比較例2》
実施例1で用いたシートの基材がポリプロピレンXF7700、100重量部とタフテックH1052、0重量部の配合であること以外は、実施例1と同様の方法で試料を作製し、実施例1と同様の項目について試験した。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
実施例及び比較例の評価は、以下の評価方法を用いた。
(1)引っ張り試験
JIS C 2813準拠。
(2)弾性回復率
20%延伸、3分保持の後、評価した。
(3)エキスパンド性
エキスパンダー(ヒューグル製)を使用し、20mmのストロークで10分間エキスパンドを行い評価した。
評価基準
○:エキスパンド時にシートに裂けがないもの
×:エキスパンド時にシートに裂けが認められるもの
(4)エキスパンド後のタルミ
エキスパンダー(ヒューグル製)を使用し、20mmのストロークで10分間エキスパンドを行い、1時間後のタルミ量を測定することで評価した。
評価基準
○:10mm以下
△:10〜15mm
×:15mm以上
(5)チッピング特性
半導体ウエハを、粘着シートに保持固定し、ダイシングソー(DISCO製 DAD-2H6M)を用いてスピンドル回転数30,000rpm、カッティングスピード120mm/min.でチップサイズにカット後、チップを粘着シートより剥離しその裏面の欠けの状態を実体顕微鏡で観察することにより評価した。
評価基準
○:チップの欠けの幅が最大で30mm以下のもの
△:チップの欠けの幅が最大で30〜50mmのもの
×:チップの欠けの幅が最大で50mm以上のもの
(6)硬度
JIS K 6253準拠。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体ウエハ加工に際して優れたエキパンド性を示し、かつ耐チッピング特性に優れた半導体ウエハ加工用粘着シートが得られる。
Claims (2)
- 紫外線及び/又は電子線に対し透過性を有するフィルム基材面上にベースポリマーと放射線重合性化合物と放射線重合性重合開始剤からなる粘着剤層を塗布してなる半導体ウエハ加工用粘着シートにおいて、該フィルム基材がポリプロピレン20〜80重量部と、少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする末端重合体からなるブロックAと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする中間重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体80〜20重量部との混合物からなることを特徴とする半導体ウエハ加工用粘着シート。
- 該フィルム基材の10%伸長時の引っ張り強度が10〜125kg/cm2であり、且つ20%伸長後180秒保持した後応力を解放した際の基材長の復元率が75%以上である請求項1記載の半導体ウエハ加工用粘着シート。
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