JP4145051B2 - ケミカルヒートポンプ装置およびその運転方法 - Google Patents

ケミカルヒートポンプ装置およびその運転方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応による発熱によって、化学反応に必要な気体を発生させるケミカルヒートポンプ装置およびその運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来のケミカルヒートポンプ装置の構造の一例を示す図である。図5において、従来のケミカルヒートポンプ装置は、気体との化学反応により発熱する化学反応物質10が、密閉された反応容器12内に収容される。化学反応物質10の一例としては、酸化マグネシウムであり、紛状体が上方が開口された容器に充填されて反応容器12内に収容される。そして、反応容器12内には、化学反応物質10を加熱する第1の熱供給手段14と化学反応物質10の熱を外部に取り出す第1の熱回収手段16が設けられる。また、気体を発生する液体18が貯蔵容器20内に貯蔵され、この貯蔵容器20内に液体18を加熱する第2の熱供給手段22と液体18の熱を外部に取り出す第2の熱回収手段24が設けられる。液体18の一例としては、水であり、気体は水蒸気である。そして、反応容器12と貯蔵容器20のそれぞれの上端部が、開閉弁26を介装した連通管28で連通される。
【0003】
かかる構成において、第2の熱供給手段22により液体18を加熱して気体を発生させ、開閉弁26を開成して連通させることで、気体が反応容器12内に導かれて化学反応物質10と化学反応して発熱する。この化学反応物質10の発熱を第1の熱回収手段16で外部に取りだして適宜に利用する。また、第1の熱供給手段14で化学反応物質10を加熱すると、化学反応物質10から気体が発生し、この気体が貯蔵容器20に導かれて液体18に液化する凝縮熱で貯蔵容器20内の液体18が加熱される。この液体18の熱を第2の熱回収手段24で外部に取り出して適宜に利用する。そこで、従来のケミカルヒートポンプ装置にあっては、化学反応物質10と気体を化学反応させて発熱させた熱を利用する反応熱運転工程と、化学反応物質10から気体を発生させてその気体が液体18に液化する凝縮熱を利用する蓄熱運転工程が交互に繰り返される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示す従来のケミカルヒートポンプ装置にあっては、反応熱運転工程では反応容器12の第1の熱回収手段16から熱が取り出され、また蓄熱運転工程では貯蔵容器20の第2の熱回収手段24から熱が取り出され、しかも第1と第2の熱回収手段16,24で得られる熱量が相違する。そこで、熱を利用する側へ所望の温度条件の範囲の熱を出力するように運転制御することが難しい。また、蓄熱運転工程および反応熱運転工程のいずれにあっても、熱供給手段を必要としていた。
【0005】
本発明は、運転制御が容易であり、また化学反応物質の化学反応による発熱で、化学反応に必要な気体を発生させて反応熱運転工程では熱供給手段を必要としないケミカルヒートポンプ装置を提供することを目的とする。また、その運転方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明のケミカルヒートポンプ装置は、気体との化学反応により発熱する化学反応物質を密閉した反応容器に収容し、前記反応容器に前記化学反応物質を加熱する熱供給手段と前記化学反応物質の熱で加熱される加熱管を設け、前記気体およびその液体を貯蔵容器に貯蔵し、前記貯蔵容器に前記液体の熱を外部に取り出す熱回収手段と前記液体に放熱する放熱管を設け、前記反応容器と前記貯蔵容器を第1の開閉弁を介して連通し、前記加熱管と前記放熱管を第2の開閉弁を介して循環ループを形成するように連通し、前記循環ループを形成する連通管内に熱輸送媒体を封入して構成されている。
【0007】
そして、前記貯蔵容器を第3の開閉弁を介して真空発生手段に連通して構成しても良い。
【0008】
さらに、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記循環ループで、前記加熱管から前記放熱管に流れる前記熱輸送媒体の温度を検出する第2の温度検出手段を設け、前記第1と第2の温度検出手段の検出温度に応じて前記第1と第2の開閉弁を制御手段で開閉制御するように構成しても良い。
【0009】
そしてさらに、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記熱回収手段に封入された第2の熱輸送媒体の温度を検出する第3の温度検出手段を設け、前記第1と第3の温度検出手段の検出温度に応じて前記第1と第2の開閉弁を制御手段で開閉制御するように構成しても良い。
【0010】
また、本発明のケミカルヒートポンプ装置の運転方法は、気体との化学反応により発熱する化学反応物質を密閉した反応容器に収容し、前記反応容器に前記化学反応物質を加熱する熱供給手段と前記化学反応物質の熱で加熱される加熱管を設け、前記気体およびその液体を貯蔵容器に貯蔵し、前記貯蔵容器に前記液体の熱を外部に取り出す熱回収手段と前記液体に放熱する放熱管を設け、前記反応容器と前記貯蔵容器を第1の開閉弁を介して連通し、前記加熱管と前記放熱管を第2の開閉弁を介して循環ループを形成するように連通し、前記循環ループを形成する連通管内に熱輸送媒体を封入したケミカルヒートポンプ装 置において、前記第1の開閉弁を開成し前記第2の開閉弁を閉成し前記化学反応物質を前記熱供給手段で加熱して、発生する前記気体を前記貯蔵容器内に導いて前記気体が液化する凝縮熱で前記貯蔵容器内に貯蔵される前記液体を加熱し、前記液体から前記熱回収手段で熱を取り出す蓄熱運転工程と、前記第1の開閉弁を閉成し前記第2の開閉弁を開成し前記熱供給手段による加熱を停止して、前記化学反応物質の熱で加熱された前記循環ループに封入された熱輸送媒体が前記液体に放熱して前記化学反応物質の熱で前記液体を加熱し、前記液体から前記熱回収手段で熱を取り出す放熱運転工程と、前記第1の開閉弁を開成し前記第2の開閉弁を開成したままとして、前記貯蔵容器内で発生する前記気体を前記反応容器内に導いて前記化学反応物質を化学反応させて発熱させ、前記熱輸送媒体によって前記化学反応物質の熱で前記液体を加熱し、前記液体から前記熱回収手段で熱を取り出す反応熱運転工程と、に制御する。
【0011】
そして、前記貯蔵容器に真空発生手段を連通し、前記蓄熱運転工程に先立ち、前記真空発生手段を運転して前記貯蔵容器内の圧力を大気圧以下としても良い。
【0012】
さらに、前記蓄熱運転工程の後に、前記放熱運転工程と前記反応熱運転工程とを交互に繰り返して制御しても良い。
【0013】
そしてさらに、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記循環ループに封入された前記熱輸送媒体の温度を検出する第2の温度検出手段を設け、前記蓄熱運転工程において、前記第1の温度検出手段による前記化学反応物質の検出温度が第1の設定値に上昇すると、前記熱供給手段による加熱を停止し、前記反応容器と前記貯蔵容器との連通を遮断するとともに前記加熱管と前記放熱管の前記循環ループを連通させて前記蓄熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換え、前記放熱運転工程において、前記第2の温度検出手段による前記循環ループに封入された前記熱輸送媒体の検出温度が下限設定値まで低下すると、前記反応容器と前記貯蔵容器を連通させて前記放熱運転工程から前記反応熱運転に切り換え、前記反応熱運転工程において、前記第2の温度検出手段による検出温度が上限設定値まで上昇すると、前記反応熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換えるように制御しても良い。
【0014】
そしてまた、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記熱回収手段に封入された前記第2の熱輸送媒体の温度を検出する第3の温度検出手段を設け、前記蓄熱運転工程において、前記第1の温度検出手段による前記化学反応物質の検出温度が第1の設定値に上昇すると、前記熱供給手段による加熱を停止し、前記反応容器と前記貯蔵容器との連通を遮断するとともに前記加熱管と前記放熱管の前記循環ループを連通させて前記蓄熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換え、前記放熱運転工程において、前記第3の温度検出手段による前記熱回収手段に封入された前記第2の熱輸送媒体の検出温度が第2の下限設定値まで低下すると、前記反応容器と前記貯蔵容器を連通させて前記放熱運転工程から前記反応熱運転に切り換え、前記反応熱運転工程において、前記第3の温度検出手段による検出温度が第2の上限設定値まで上昇すると前記反応熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換えるように制御しても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のケミカルヒートポンプ装置の第1実施例で蓄熱運転工程を示す構造図である。図2は、放熱運転工程を示す構造図である。図3は、反応熱運転工程を示す構造図である。図1ないし図3において、図5に示す部材と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0016】
図1において、反応容器12内に収容された化学反応物質10を加熱する、図5の第1の熱供給手段14と同様な、熱供給手段30が設けられ、また図5の第1の熱回収手段16に代えて、化学反応物質10の熱で加熱される加熱管32が設けられる。また、貯蔵容器20内に貯蔵された液体18に放熱してこれを加熱する、図5の第2の熱供給手段22に代えて、放熱管34が設けられ、また図5の第2の熱回収手段24と同様な、熱回収手段36が設けられる。
【0017】
そして、反応容器12と貯蔵容器20のそれぞれの上端部が、図5と同様に、第1の開閉弁38を介装した連通管40で連通される。さらに、加熱管32の上端と放熱管34の上端が第2の開閉弁42を介装した連通管44で連通されるとともに、加熱管32の下端と放熱管34の下端が連通管46で連通され、加熱管32と放熱管34を含んで連通管44、46で循環ループが形成される。しかも、加熱管32と放熱管36と連通管44,46内には、水と水蒸気などの第1の熱輸送媒体が封入される。
【0018】
また、熱回収手段36には、熱利用設備48と循環ポンプ50が連通管で連通されて適宜に熱利用循環ループが形成される。この熱利用循環ループを形成する熱回収手段36と熱利用設備48およびこれらを連通する連通管内には、水や水蒸気などの第2の熱輸送媒体が封入される。
【0019】
そして、反応容器12に収容される化学反応物質10の温度を検出する第1の温度検出手段52が設けられる。また、加熱管32から放熱管34に対流により流入しようとする第1の熱輸送媒体の温度を検出する第2の温度検出手段54が設けられる。さらに、熱回収手段36内に封入される第2の熱輸送媒体の温度を検出する第3の温度検出手段56が設けられる。そして、第1〜第3の温度検出手段52,54,56の検出温度がそれぞれ制御手段58に与えられる。この制御手段58により、第1と第2の開閉弁38,42の開閉制御がなされるとともに、熱供給手段30の制御がなされる。
【0020】
かかる構成の第1実施例において、第1の運転方法を説明する。まず、反応容器12内の化学反応物質10が気体と完全に化学反応した状態にあるものとする。化学反応物質10が酸化マグネシウムMg0であるならば、気体としての水蒸気HOと化学反応がなされた水酸化マグネシウムMg(0H)に転化した状態である。制御手段58は、図1のごとく、第1の開閉弁38を開成して反応容器12と貯蔵容器20を連通させ、第2の開閉弁42を閉成して循環ループを遮断させ、さらに熱供給手段30により化学反応物質10を加熱する。すると、化学反応物質10から気体が発生し、この気体が圧力の低い貯蔵容器20内に導かれ、さらに凝縮して液体18に液化されるが、この際の凝縮熱により液体18が加熱される。そして、温度上昇した液体18により熱回収手段36に封入された第2の熱輸送媒体が加熱され、この加熱された第2の熱輸送媒体が循環ポンプ50で循環されて外部に熱が取り出されて熱利用設備48に与えられ、蓄熱運転工程が行われる。そして、化学反応物質10が酸化マグネシウムの場合であれば、その温度が第1の設定値、例えば約400°C、となったことを第1の温度検出手段52で検出すると、化学反応物質10からほぼ気体が発生しつくした状態の酸化マグネシウムに転化されており、熱供給手段30による加熱を停止し、蓄熱運転工程を終了する。
【0021】
続いて、制御手段58は、図2のごとく、第1の開閉弁38を閉成して遮断するとともに、第2の開閉弁42を開成して循環ループを連通させる。すると、蓄熱運転工程で高温とされた化学反応物質10の熱により、加熱管32内に封入される第1の熱輸送媒体が加熱され、これが対流により放熱管34に循環されて貯蔵容器20内の液体18を加熱する。そこで、この液体18の熱を熱回収手段36により外部に取り出して熱利用設備48で利用する放熱運転工程が行われる。そして、第1の熱輸送媒体の温度が、一例として120°Cの、下限設定値まで低下すると、放熱運転工程を終了する。
【0022】
そして、制御手段58は、図3のごとく、第2の開閉弁42は開成したままで第1の開閉弁38も開成させる。第1の開閉弁38が開成されて貯蔵容器20と反応容器12が連通されると、貯蔵容器20内で発生した気体が反応容器12に導かれ、化学反応物質10と化学反応して発熱する。この化学反応による熱で、化学反応物質10は再び温度が上昇し、循環ループ内の第1の熱輸送媒体が加熱されて、これにより貯蔵容器20内の液体18が加熱され、熱回収手段36により熱が外部に取り出される反応熱運転工程が行われる。そして、第1の熱輸送媒体の温度が、一例として150°Cの、上限設定値まで上昇すると、制御手段58は、再び第1の開閉弁38を遮断して、反応熱運転工程を終了して、再び図2の放熱運転工程に切り換える。
【0023】
この放熱運転工程と反応熱運転工程が交互に繰り返され、反応熱運転工程で第1の熱輸送媒体の温度が所定の上限設定値にまで上昇しなくなると、一連の工程を終了する。この反応熱運転工程で、第1の熱輸送媒体の温度が上限設定値まで上昇しなくなる状態では、化学反応物質10は気体とほぼ完全に化学反応を行った状態であり、例えば水酸化マグネシウムに転化されている。
【0024】
上記構成の第1実施例では、蓄熱運転工程と放熱運転工程および反応熱運転工程のいずれの場合でも貯蔵容器20に設けた熱回収手段36から外部に熱が取り出される。しかも、放熱運転工程と反応熱運転工程を交互に切り換えることで、外部に取り出す熱を容易に制御することができる。そして、反応熱運転工程において、気体を発生させるための液体18の加熱を化学反応物質10の化学反応による発熱を利用しており、液体18を加熱するための熱供給手段を必要としない。なお、この反応熱運転工程で、例えば40°Cの1モルの水HOを蒸発させて水蒸気とする熱エネルギーよりも、1モルの酸化マグネシウムMgOが1モルの水蒸気HOと化学反応して発熱する熱エネルギーが大きい。そこで、この熱エネルギーの差により液体18が温度上昇されて外部に熱の取り出しがなし得る。
【0025】
次に、第1実施例の構造において、第2の運転方法を説明する。まず、蓄熱運転工程は、前記第1の運転方法と同様である。そして、放熱運転工程と反応熱運転工程の切り換え制御が異なる。すなわち、化学反応物質10が所定の第1の設定値まで上昇して蓄熱運転工程から放熱運転工程に切り換えられた後に、熱回収手段36内に封入された第2の熱輸送媒体の温度が、一例として50°Cの、第2の下限設定値まで低下すると、放熱運転工程から反応熱運転工程に切り換えられる。そして、再び第2の熱輸送媒体の温度が、一例として60°Cの、第2上限設定値まで上昇すると再び放熱運転工程に切り換えられる。もって、第2の熱輸送媒体が第2の上限設定値まで上昇しなくなるまで、放熱運転工程と反応熱運転工程が交互に繰り返される。
【0026】
この第2の運転方法にあっては、熱利用設備48に熱を取り出す第2の熱輸送媒体の温度によって、放熱運転工程と反応熱運転工程を交互に切り換えるので、熱利用設備48で所望する温度範囲で容易に熱の取り出しが可能である。
【0027】
上記第1および第2の運転方法において、蓄熱運転工程後直後に、熱利用設備48で熱を必要としないならば、第1と第2の開閉弁38,42をともに遮断するとともに、反応容器12と貯蔵容器20の熱が放射されないように適宜に構成すれば良い。そして、熱利用設備48で熱需要が生じた時点で、第1と第2の開閉弁38,42を適宜に制御して放熱運転工程と反応熱運転工程を繰り返して行わせれば良い。そこで、深夜電力を利用して蓄熱運転工程をなし、熱需要のある日中に放熱運転工程と反応熱運転工程を繰り返して熱を取り出すようにすることもできる。
【0028】
さらに、本発明の第2実施例を図4を参照して説明する。図4は、本発明のケミカルヒートポンプ装置の第2実施例の構造図である。図4において、図1と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0029】
図4に示す第2実施例の構造で、図1に示す第1実施例の構造と相違するところは、貯蔵容器20が第3の開閉弁60を介して真空発生手段62に連通され、この第3の開閉弁60と真空発生手段62が制御手段58によって制御されることにある。この第2実施例の構造における運転方法は、蓄熱運転工程に先だち、第3の開閉弁60を開成するとともに真空発生手段62を駆動させて、貯蔵容器20内を大気圧以下に減圧する。その後、第3の開閉弁60を遮断するとともに真空発生手段62を停止させて、第1実施例の運転方法と同様に蓄熱運転工程を開始して一連の工程を行わせれば良い。
【0030】
貯蔵容器20内が減圧されることにより、液体18が気化するのに必要な熱エネルギーを小さくでき、反応熱運転工程において、少ない熱エネルギーで気体を発生させることができ、それだけ化学反応による発熱で液体18の温度を効率的に上昇させることができる。
【0031】
ところで、上記実施例において、酸化マグネシウムを化学反応物質10の一例とし、水蒸気をこれと反応する気体として説明したが、化学反応物質10およびこれに対する気体は上記実施例に限られず、別の物質の組み合わせであっても良い。例えば、アルカリ土類金属酸化物に対して水蒸気または低級アルコールの蒸気、アルカリ土類金属塩化物に対して水蒸気またはアンモニアまたは有機系蒸気、金属アンモニア錯塩に対してアンモニア、ゼオライトまたは活性炭に対して水蒸気またはアンモニアなどの組み合わせも可能である。
【0032】
なお、上記第1および第2実施例では、いずれも第2と第3の温度検出手段54,56が設けられているが、上述の第1の運転方法では第3の温度検出手段56の検出温度が運転制御に用いられておらず、第3の温度検出手段56が設けられなくても良いことは勿論である。また、第2の運転方法では第2の温度検出手段54の検出温度が運転制御に用いられておらず、第2の温度検出手段58が設けられなくても良いことは勿論である。
【0033】
そして、蓄熱運転工程で化学反応物質10の加熱を停止させる第1の設定値は、化学反応物質10に応じて適宜に設定することは勿論である。また、第1の熱輸送媒体の上限設定値と下限設定値、および第2の熱輸送媒体の第2の上限設定値と第2の下限設定値は媒体や熱利用設備48に応じて適宜に設定することは勿論である。
【0034】
また、上記実施例では、加熱管32と放熱管34を含む循環ループ内に封入された第1の熱輸送媒体は対流により循環するように構成したが、ポンプによって強制的に循環させても良い。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のケミカルヒートポンプ装置は構成され、またその運転方法が制御されるので、以下のごとき格別な作用効果を奏する。
【0036】
請求項1記載のケミカルヒートポンプ装置にあっては、化学反応物質が化学反応した発熱により液体を加熱して、化学反応に必要な気体を発生させることができる。そして、1つの熱回収手段によって熱を外部に取り出すことができる。
【0037】
請求項2記載のケミカルヒートポンプ装置にあっては、貯蔵容器内を真空発生手段で減圧させることができ、より少ない熱エネルギーで液体から気体を発生させることができ、効率的な熱の取り出しがなし得る。
【0038】
請求項3記載のケミカルヒートポンプ装置にあっては、化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、加熱管と放熱管を含む循環ループ内に封入された第1の熱輸送媒体の温度を検出する第2の温度検出手段を設けたので、化学反応物質の温度に応じて熱供給手段による加熱を停止でき、また第1の熱輸送媒体の温度に応じて放熱運転工程と反応熱運転工程を適宜に切り換えることができる。
【0039】
請求項4記載のケミカルヒートポンプ装置にあっては、化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、熱回収手段に封入された第2の熱輸送媒体の温度を検出する第3の温度検出手段を設けたので、化学反応物質の温度に応じて熱供給手段による加熱を停止でき、また熱利用設備の所望する温度範囲となるように放熱運転工程と反応熱運転工程を切り換えることができる。
【0040】
請求項5記載のケミカルヒートポンプ装置にあっては、酸化マグネシウムと水蒸気を化学反応させるので、安全かつ安価な化学反応物質でケミカルヒートポンプ装置を構成できる。
【0041】
請求項6記載のケミカルヒートポンプ装置の運転方法にあっては、蓄熱運転工程と放熱運転工程および反応熱運転工程とからなり、従来例では用いられない放熱運転工程を設けることで、化学反応物質の熱で液体を加熱して次の反応熱運転工程に必要な気体の発生とその気体を反応容器に確実に導くことができる。もって、安定した熱の外部への取り出しがなし得る。
【0042】
請求項7記載のケミカルヒートポンプ装置の運転方法にあっては、貯蔵容器内を蓄熱運転工程に先だって減圧するので、反応熱運転工程での気体の発生が効率的である。
【0043】
請求項8記載のケミカルヒートポンプ装置の運転方法にあっては、放熱運転工程と反応熱運転工程を交互に繰り返すことで、小さな変動範囲の温度で熱を取り出すことが可能である。
【0044】
請求項9記載のケミカルヒートポンプ装置の運転方法にあっては、化学反応を過度に熱しすぎずに蓄熱運転工程を終了でき、また化学反応物質の熱で加熱される循環ループ内の熱輸送媒体の温度に応じて放熱運転工程と反応熱運転工程を交互に切り換えるので、化学反応物質の化学反応による熱に応じて制御がなされる。
【0045】
請求項10記載のケミカルヒートポンプ装置の運転方法にあっては、熱回収手段で外部に取り出される熱の温度により放熱運転工程と反応熱運転工程を交互に切り換えるので、熱利用設備の所望範囲内で安定した温度で熱を取り出すことができる。
【0046】
請求項11記載のケミカルヒートポンプ装置の運転方法にあっては、化学反応物質を酸化マグネシウムとして、第1の設定値を略400℃に設定したので、第1の設定値まで温度上昇した状態では、水酸化マグネシウムがほぼ完全に酸化マグネシウムに転化される。そして、略400℃まで加熱して酸化マグネシウムに転化させることで、水蒸気との発熱反応活性が高く、それだけ効率的に熱を外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のケミカルヒートポンプ装置の第1実施例で蓄熱運転工程を示す構造図である。
【図2】 放熱運転工程を示す構造図である。
【図3】 反応熱運転工程を示す構造図である。
【図4】 本発明のケミカルヒートポンプ装置の第2実施例の構造図である。
【図5】 従来のケミカルヒートポンプ装置の構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 化学反応物質
12 反応容器
18 液体
20 貯蔵容器
30 熱供給手段
32 加熱管
34 放熱管
36 熱回収手段
38 第1の開閉弁
40、44、46 連通管
42 第2の開閉弁
48 熱利用設備
50 循環ポンプ
52 第1の温度検出手段
54 第2の温度検出手段
56 第3の温度検出手段
58 制御手段
60 第3の開閉弁
62 真空発生手段

Claims (11)

  1. 気体との化学反応により発熱する化学反応物質を密閉した反応容器に収容し、前記反応容器に前記化学反応物質を加熱する熱供給手段と前記化学反応物質の熱で加熱される加熱管を設け、前記気体およびその液体を貯蔵容器に貯蔵し、前記貯蔵容器に前記液体の熱を外部に取り出す熱回収手段と前記液体に放熱する放熱管を設け、前記反応容器と前記貯蔵容器を第1の開閉弁を介して連通し、前記加熱管と前記放熱管を第2の開閉弁を介して循環ループを形成するように連通し、前記循環ループを形成する連通管内に熱輸送媒体を封入して構成したことを特徴とするケミカルヒートポンプ装置。
  2. 請求項1記載のケミカルヒートポンプにおいて、前記貯蔵容器を第3の開閉弁を介して真空発生手段に連通して構成したことを特徴とするケミカルヒートポンプ装置。
  3. 請求項1または2記載のケミカルヒートポンプ装置において、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記循環ループで前記加熱管から前記放熱管に流れる前記熱輸送媒体の温度を検出する第2の温度検出手段を設け、前記第1と第2の温度検出手段の検出温度に応じて前記第1と第2の開閉弁を制御手段で開閉制御するように構成したことを特徴とするケミカルヒートポンプ装置。
  4. 請求項1または2記載のケミカルヒートポンプ装置において、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記熱回収手段に封入された第2の熱輸送媒体の温度を検出する第3の温度検出手段を設け、前記第1と第3の温度検出手段の検出温度に応じて前記第1と第2の開閉弁を制御手段で開閉制御するように構成したことを特徴とするケミカルヒートポンプ装置。
  5. 請求項1記載のケミカルヒートポンプ装置において、前記化学反応物質が酸化マグネシウムであり、前記気体が水蒸気であることを特徴とするケミカルヒートポンプ装置。
  6. 気体との化学反応により発熱する化学反応物質を密閉した反応容器に収容し、前記反応容器に前記化学反応物質を加熱する熱供給手段と前記化学反応物質の熱で加熱される加熱管を設け、前記気体およびその液体を貯蔵容器に貯蔵し、前記貯蔵容器に前記液体の熱を外部に取り出す熱回収手段と前記液体に放熱する放熱管を設け、前記反応容器と前記貯蔵容器を第1の開閉弁を介して連通し、前記加熱管と前記放熱管を第2の開閉弁を介して循環ループを形成するように連通し、前記循環ループを形成する連通管内に熱輸送媒体を封入したケミカルヒートポンプ装置において、前記第1の開閉弁を開成し前記第2の開閉弁を閉成し前記化学反応物質を前記熱供給手段で加熱して、発生する前記気体を前記貯蔵容器内に導いて前記気体が液化する凝縮熱で前記貯蔵容器内に貯蔵される前記液体を加熱し、前記液体から前記熱回収手段で熱を取り出す蓄熱運転工程と、前記第1の開閉弁を閉成し前記第2の開閉弁を開成し前記熱供給手段による加熱を停止して、前記化学反応物質の熱で加熱された前記循環ループに封入された熱輸送媒体が前記液体に放熱して前記化学反応物質の熱で前記液体を加熱し、前記液体から前記熱回収手段で熱を取り出す放熱運転工程と、前記第1の開閉弁を開成し前記第2の開閉弁を開成したままとして、前記貯蔵容器内で発生する前記気体を前記反応容器内に導いて前記化学反応物質を化学反応させて発熱させ、前記熱輸送媒体によって前記化学反応物質の熱で前記液体を加熱し、前記液体から前記熱回収手段で熱を取り出す反応熱運転工程と、に制御することを特徴としたケミカルヒートポンプの運転方法。
  7. 請求項6記載のケミカルヒートポンプの運転方法において、前記貯蔵容器に真空発生手段を連通し、前記蓄熱運転工程に先立ち、前記真空発生手段を運転して前記貯蔵容器内の圧力を大気圧以下にすることを特徴としたケミカルヒートポンプの運転方法。
  8. 請求項6または7記載のケミカルヒートポンプの運転方法において、前記蓄熱運転工程の後に、前記放熱運転工程と前記反応熱運転工程とを交互に繰り返して制御することを特徴としたケミカルヒートポンプの運転方法。
  9. 請求項6または7記載のケミカルヒートポンプの運転方法において、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記循環ループに封入された前記熱輸送媒体の温度を検出する第2の温度検出手段を設け、前記蓄熱運転工程において、前記第1の温度検出手段による前記化学反応物質の検出温度が第1の設定値に上昇すると、前記熱供給手段による加熱を停止し、前記反応容器と前記貯蔵容器との連通を遮断するとともに前記加熱管と前記放熱管の前記循環ループを連通させて前記蓄熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換え、前記放熱運転工程において、前記第2の温度検出手段による前記循環ループに封入された前記熱輸送媒体の検出温度が下限設定値まで低下すると、前記反応容器と前記貯蔵容器を連通させて前記放熱運転工程から前記反応熱運転に切り換え、前記反応熱運転工程において、前記第2の温度検出手段による検出温度が上限設定値まで上昇すると、前記反応熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換えて制御すること特徴としたケミカルヒートポンプの運転方法。
  10. 請求項6または7記載のケミカルヒートポンプの運転方法において、前記化学反応物質の温度を検出する第1の温度検出手段と、前記熱回収手段に封入された前記第2の熱輸送媒体の温度を検出する第3の温度検出手段を設け、前記蓄熱運転工程において、前記第1の温度検出手段による前記化学反応物質の検出温度が第1の設定値に上昇すると、前記熱供給手段による加熱を停止し、前記反応容器と前記貯蔵容器との連通を遮断するとともに前記加熱管と前記放熱管の前記循環ループを連通させて前記蓄熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換え、前記放熱運転工程において、前記第3の温度検出手段による前記熱回収手段に封入された前記第2の熱輸送媒体の検出温度が第2の下限設定値まで低下すると、前記反応容器と前記貯蔵容器を連通させて前記放熱運転工程から前記反応熱運転に切り換え、前記反応熱運転工程において、前記第3の温度検出手段による検出温度が第2の上限設定値まで上昇すると前記反応熱運転工程から前記放熱運転工程に切り換えて制御することを特徴としたケミカルヒートポンプの運転方法。
  11. 請求項9または10記載のケミカルヒートポンプの運転方法において、前記化学反応物質が酸化マグネシウムであり、前記気体が水蒸気であり、前記第1の設定値を略400℃に設定することを特徴としたケミカルヒートポンプの運転方法。
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