JP4144872B2 - フレキシブル光ディスク及びその製造方法 - Google Patents
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Description
光ディスクの記録容量を高めるために対物レンズの開口数(NA)を上げたりレーザー光を短波長化して、光スポットを更に小径化する研究開発が進められている。他方、対物レンズの開口数(NA)を上げるためには、基板のチルト(面振れ)を小さくする必要があるので、製造基板の平面精度を高めること、ピックアップにチルト(面振れ)サーボを搭載すること、又は転写層上に0.1mm程度の薄いカバー層を設けて、このカバー層側から記録再生すること等により、チルト(面振れ)マージンを拡大することが行われている。
光ディスク基板のチルト(面振れ)を小さくすることは、材料や製法の工夫により達成可能であるが、しかし、光ディスクの製造コストが高くなる。また、光ピックアップにチルト(面振れ)サーボを搭載することも同様に、光ピックアップのコストを高くする。
また、基板を通さずに転写層側から再生するものにおいても、転写層面と対物レンズの距離が0.1mm程度しか確保できないため、回転する通常の剛体光ディスクと対物レンズとの衝突を防ぐために、面振れを小さくし、且つ光ディスクのチャッキング装置のチャッキング精度を高くする必要がある。しかし、これらも光ディスクや記録、再生装置のコストを高くするものである。
上記可撓性ディスクの面振れを低減できる原理は、次の(1)〜(4)の総和により決定される。
(1) ガイドがディスクを空気力学的に押し下げる力
(2) ディスクが弾力的に反発する力
(3) ガイドとディスク間の圧力場
(4) ディスクの遠心力
上記(4)はディスク回転数により決まり、上記(3)はガイドとディスク間のギャップ量により決まる。また、上記(1)と(2)は釣り合う関係にあり、上記(2)は、ディスクの剛性と上記(1)を吸収する内部損失がパラメーターとして寄与してくる。よって、これらのパラメーターを管理する必要がある。
2P法の場合、フレキシブル光ディスクの厚みは、基板、転写するフィルム、転写層等の厚みの総和である。フィルム自身は工業的に量産されているものであるから、その厚み分布は±1μm程度である。しかし、一般的なフィルムは図15に見られるように、厚み振幅こそ±1μm程度であるが、円周方向における厚み変化が激しく、スパイク状に変化している。
他方、フォーカスサーボの追従性は面振れの高周波領域において限界があり、フォーカスサーボの追従性がフォーカスエラーを増大させて、記録再生精度を低下させる。これは、フレキシブル光ディスクの記録容量、記録再生速度を高めるときの大きな問題である。
そして、フレキシブル光ディスクの面振れの周波数成分を解析したところ、面振れの高周波数域は基板であるフィルムの厚みのばらつきに大きく依存することが判明した。
フレキシブル光ディスクのうねり(ディスクの3次元的な歪み)は空気軸受で大方矯正され、またうねりによる面振れ分は振動振幅が低周波数域なのでフォーカスサーボ機構が追従できる帯域であることから、そのフォーカスエラー発生への影響は小さい。しかし、フレキシブル光ディスクでは、その裏面とガイドとの間に一定の隙間を保持しつつ高速回転するので、基板の板厚のばらつきが、回転による当該表面の面振れをもたらし、特にガイドに近接する裏面の凹凸による厚みのばらつきにより生じる影響が殊に著しく、フィルムの厚みの不均一による面振れが、フォーカスサーボ機構が追従可能な高周波数域での許容振動振幅を大きく超えるため、残留フォーカスエラーが大きくなるものと考えられる。
すなわち、Blu−rayディスクで要求されているカバーフィルムは光学透過層としての機能が必要なので、複屈折を限りなく小さくする必要があるが、該光ディスクシステムでは表面記録であるので光学特性はフリーで良い。しかし、表面性状に絡む特性は限りなく小さく抑える必要がある。
〔解決手段1〕(請求項1に対応)
上記課題を解決するために講じた解決手段1は、硬化時に架橋構造をとらないフォトポリマー材料を含んで構成され、任意の半径位置における円周方向の任意の1/100周区間の厚みばらつきが0.1μm以下である転写層が形成されたディスク基板を有するフレキシブル光ディスクであって、ヤング率×(厚み/半径)3で定義したディスクの剛性を5〜5000Paの範囲に特定したことである。
〔作 用〕
転写層の平滑性は、厚みばらつき、表面粗さばらつきを包含するものであり、これらに影響をおよぼす要因として、マイクロゲルの影響が大である。
しかし、スタンパの凹凸微細パターンが転写された転写層の素材が、硬化時に架橋構造をとらないフォトポリマー材料であるから、マイクロゲル等が形成されず、平滑性の良好な転写層が形成される。
また、ディスク基板(フィルム基板)の表面の凹凸の大きさはフィルムの厚みばらつきにほぼ比例する。したがって、フィルム基板の厚みばらつきを0.1μm以下にしたことにより、フィルムの厚みばらつきによるフィルム表面の凹凸が0.1μm以下に抑制される。他方、フレキシブル光ディスクの面振れの高周波振動の大きさは、フィルムの厚みばらつきとフィルム表面の凹凸の大きさに比例する。
したがって、フィルム基板の厚みばらつきを0.1μm以下にしたことによって、上記面振れの高周波振動は著しく低減される。
なお、フィルム基板の厚みばらつきを0.1μm以下にしたことに、厳格な意味での臨界的意義があるわけではないが、0.1μmを越えると、面振れ振動が0.1μmを超え、フォーカスサーボに負荷をかけ、残留フォーカスエラーも悪化することになる。
そして、ヤング率×(厚み/半径)3 で定義したディスクの剛性が5〜5000Paの範囲であることにより、ガイドがディスクを空気力学的に押し下げる力、ディスクが弾力的に反発する力、ディスクの遠心力等の関係から、ディスクの面振れが安定化する。この場合、フレキシブル光ディスクは、殆どの半径位置において空気力学的に浮上するが、一部の半径位置においてはガイドに摺動する。
なお、上記剛性の範囲の上限値、下限値は厳格な意味での臨界的意義を有するものではないが、5Pa未満では、ディスクが弾力的に反発する力が不足するという傾向が著しく、他方、5000Paを超えると、ガイドによりディスクが空気力学的に押し下げられなくなるという傾向が著しくなる。
実施態様1は、上記解決手段1のフレキシブル光ディスクにおいて、ディスクの剛性を5〜550Paの範囲に特定したことである。
〔作 用〕
ディスクの剛性が5〜550Paの範囲であることにより、上記解決手段1のものよりディスクの面振れがより一層安定化する。この場合、フレキシブル光ディスクは、全ての半径位置において空気力学的に浮上するので、ガイドに摺動することはない。
実施態様2は、上記解決手段1又は実施態様1において、ディスクの剛性がディスク基板の厚みにより制御されることである。
〔作 用〕
ディスクの剛性をディスク基板の厚みにより制御することによって、ディスクの剛性を5〜5000Paの範囲、又は5〜550Paの範囲の任意の値に設定することができ、ディスクの面振れを安定化することができる。
実施態様3は、上記解決手段1、実施態様1、又は実施態様2において、ディスクの剛性がディスク基板のヤング率により制御されることである。
〔作 用〕
ディスクの剛性をディスク基板のヤング率により制御することによって、ディスクの剛性を5〜5000Paの範囲、又は5〜550Paの範囲の任意の値に設定することができ、ディスクの面振れを安定化することができる。
実施態様4は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様3のいずれかにおいて、ディスクの剛性がディスク基板の材料により制御されることである。
〔作 用〕
ディスクの剛性をディスク基板の材料により制御することによって、前記ディスクの剛性を5〜5000Paの範囲、又は5〜550Paの範囲の任意の値に設定することができ、ディスクの面振れを安定化することができる。
実施態様5は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様4のいずれかにおいて、ディスクのヤング率、および内部損失(内部摩擦)を、動的測定法である固有振動法で、片持ち共振法により規定し、内部損失は、固有振動数の分布を振動数と半価幅の比(中心周波数に対する振動周波数の広がりの比)によって規定し、固有振動数をf、半価幅の高域側をfU、低域側をfLとしたとき、内部損失Q−1=(fU−fL)/(√3×f)が0.001〜0.3の範囲で規定されることである。
〔作 用〕
ディスクの内部損失(内部摩擦)を、0.001〜0.3の範囲に規定することにより、ディスクの振動応答に時間遅れを発生するから、ディスクの共振周波数が低域化され、かつ、ディスクの振動による運動エネルギーが熱エネルギーに変換されるから、その振幅が低減される。
実施態様6は、上記実施態様5において、ディスクの内部損失が、0.001〜0.3の範囲となるように、ディスク基板の厚みにより制御されることである。
〔作 用〕
ディスクの振動における共振周波数により、ヤング率や内部損失が決定されることから、ディスクの内部損失をディスク基板の厚みにより制御することによって、ディスクの内部損失を0.001〜0.3の範囲に設定することができ、ディスクの共振周波数を低域化でき、且つその振幅を低減することができる。
実施態様7は、上記実施態様5又は実施態様6において、ディスクの内部損失が、0.001〜0.3の範囲となるように、ディスク基板のヤング率により制御されることである。
〔作 用〕
ディスクの振動における共振周波数により、ヤング率や内部損失が決定されることから、ディスクの内部損失をディスク基板のヤング率により制御することによって、ディスクの内部損失を0.001〜0.3の範囲に設定することができ、ディスクの共振周波数を低域化でき、且つその振幅を低減することができる。
実施態様8は、上記実施態様5〜実施態様7のいずれかにおいて、ディスクの内部損失が、0.001〜0.3の範囲となるように、ディスク基板の材料により制御されることである。
〔作 用〕
ディスクの振動における共振周波数により、ヤング率や内部損失が決定されることから、ディスクの内部損失をディスク基板の材料により制御することによって、ディスクの内部損失を0.001〜0.3の範囲に設定することができ、ディスクの共振周波数を低域化でき、且つその振幅を低減することができる。
実施態様9は、上記解決手段1又は実施態様1〜実施態様8のいずれかにおいて、片面ないし両面の表面エネルギーが大きいフィルム基板を用いることである。
〔作 用〕
フィルム基板に対する転写層の密着性は、フィルム基板の表面エネルギーの大きさに比例する。フィルム基板の片面ないし両面の表面エネルギーが大きいことにより、転写層と十分な密着性が確保される。
ちなみに、表面エネルギーの大きさが45以上のとき、転写層との密着性は十分であり、表面エネルギーの大きさが45未満のとき、転写層との密着性は不十分である。
実施態様10は、上記実施態様9において、片面ないし両面の表面エネルギーが大きくなるように、表面がポリエステル処理等の易接着処理されているフィルム基板を用いることである。
〔作 用〕
フィルム基板が、例えばPETフィルム基板である場合、ポリエステル処理することにより、表面エネルギーが約10%高くなり、転写層との密着性は良好となる。
なお、片面について易接着処理してその表面エネルギーを高くすると、フィルム基板と転写層との密着性が良好であり、両面について易接着処理してその表面エネルギーを高くすると、フィルム基板と転写層との密着性に加えて、フィルム基板背面、即ち、ガイド側保護膜との密着性が良好である。
実施態様11は、上記解決手段1又は実施態様1〜実施態様10のいずれかにおいて、フォトポリマー材料が単官能アクリレートモノマー材料であることである。
〔作 用〕
フォトポリマー材料が単官能アクリレートモノマー材料であるから、マイクロゲル等が形成されず、平滑性の良好な転写層が形成される。
実施態様12は、上記実施態様11において、単官能アクリレートモノマー材料として、硬化収縮率が10%以下のものを用いることである。
〔作 用〕
単官能アクリレートモノマー材料として、硬化収縮率が10%以下のものを用いるから、転写時のフィルム基板の反りを低減することが可能である。
実施態様13は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様12のいずれかにおいて、フレキシブル光ディスクが、ピックアップ側にディスクのプリフォーマットパターン面を備え、その面で記録再生する表面記録型のものであることである。
上記課題を解決するために講じた解決手段2は、上記解決手段1、又は実施態様1〜実施態様13のいずれかに記載のフレキシブル光ディスクを製造する方法であって、
スピンディスクに装着したスタンパを高速回転させて、紫外線硬化型樹脂を延展することにより転写層を形成し、前記転写層上に所定の特性を持つフィルム基板を重ねて積層し、前記転写層に紫外線を照射してこれを硬化させて、前記スタンパを剥離させた後、前記転写層の転写面に記録層及び保護層を積層することである。
実施態様14は、上記解決手段2において、スピンディスクを1000〜5000rpmで回転させて、転写層を1〜10μmの膜厚に形成することである。
〔作 用〕
転写層の膜厚は、1〜10μmが適正である(面触れの大きさと膜厚の関係は図3参照)。転写層の膜厚が1μm未満では面振れ安定化は図れるが、プリフォーマットパターンを精度よく転写層に形成することが困難となり、その膜厚が10μmを超えると、転写層の硬化収縮による反りが大きくなり、空気浮上時の面振れの安定性が悪く、フォーカスサーボが入らないので、記録再生ができない。
転写層の膜厚を均一にするための高速スピン回転速度は、1000〜5000rpmにすることが望ましい。5000rpmを超えると、スタンパを固定のためのマグネットの磁力不足、又は真空吸着力が不十分となって、スタンパがチャッキングテーブルから離れ飛ぶ危険性がある。
(1) 請求項1〜請求項2に係る発明の効果
請求項1〜請求項2に係る発明は、スタンパの凹凸微細パターンをフィルム基板に転写する素材として、硬化時に架橋構造をとらないフォトポリマー材料を用いることにより、硬化した膜表面にマイクロゲルが発生することなく、平滑な転写面を得ることができる。
また、厚みが極めて均一なフィルム基板を用いたものであるから、平坦性の良好なフレキシブル光ディスクを得ることができ、空気軸受けの作用により該フレキシブル光ディスクの面振れを安定させることができる。残留フォーカスエラーを極めて小さくできて、高品質な記録再生特性を得ることができる。
そして、ディスクの剛性をヤング率×(厚み/半径)3 で定義し、その剛性を5〜5000Paの範囲に特定することにより、ディスクの面振れを安定させることができ、高品質な記録再生特性が得られる。また、ディスクの剛性を5〜550Paの範囲に特定することにより、ディスクの面振れをより一層安定させることができる。
(2) 請求項3〜請求項5に係る発明の効果
請求項3〜請求項5に係る発明は、ディスクの剛性をディスク基板の厚み、ヤング率、ディスク基板の材料により制御することによって、容易に所期のディスク剛性を得ることができる。
請求項6に係る発明は、ディスクの内部損失(内部摩擦)を0.001〜0.3の範囲に規定することにより、ディスクの共振周波数を低域化することができ、またその振幅を低減することができる。したがって、残留フォーカスエラーを低域化することができ、また低振幅化することができるので、ピックアップのサーボ機構の追従すべき範囲が極めて小さくなり、ピックアップアクチュエーターの負荷を軽減することができる。
(4) 請求項7〜請求項9に係る発明の効果
請求項7〜請求項9に係る発明は、ディスクの内部損失をディスク基板の厚み、ヤング率、ディスク基板の材料により制御することによって、ディスク内部損失を容易に所期の範囲に抑制することができる。
請求項10及び請求項11に係る発明は、フィルム基板の片面ないし両面の表面エネルギーが大きいので、転写層と十分な密着性を有することができる。表面エネルギーの比較的小さいPETフィルムでも、易接着処理すること(請求項11)により、転写層と十分な密着性を有することができる。
請求項12に係る発明は、スタンパの凹凸微細パターンをフィルム基板に転写する素材として、硬化時に架橋構造をとらないフォトポリマー材料である単官能アクリレートモノマー材料を用いることにより、硬化した膜表面にマイクロゲルが発生することなく、平滑な転写面を得ることができる。
(7) 請求項13に係る発明の効果
単官能アクリレートモノマー材料として、硬化収縮率が10%以下のものを用いることにより、硬化収縮を小さくすることができるので、反りの小さい転写基板を得ることができる。
(8) 請求項15及び請求項16に係る発明の効果
請求項15及び請求項16に係る発明により、所期のディスク剛性、内部損失(内部摩擦)を備え、良好な平坦性、フィルム基板と転写層との良好な密着性、平滑な転写面を有し、且つ反りが極めて小さいフレキシブル光ディスクを作製することができる。
また、実施例1におけるフィルム基板12は、任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきが、どの区間でも最大で0.05μm以下である。
この製造方法に関するプロセスの流れの概略を図11に示し、特に、フィルム基板に対する転写層の形成は図12(a)〜(e)に示すとおりである。スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に紫外線硬化型樹脂11(ノニルフェノキシエチルアクリレート、硬化収縮率は5%)を5000rpmで塗布し(図12(a)参照)、これを厚み8μmに延展させて転写層13形成する。その上にPCフィルム基板12を重ねて積層し(図12(b)参照)、転写層13に紫外線を照射してこれを硬化させる(図12(c)参照)。PCフィルムは元々表面エネルギーが大きく、転写層13と容易に接着可能である。スタンパ10を剥離して(図12(d)参照)、得られた転写層表面外観はファインな表面を呈しており(図4参照)、厚み分布も均一である(図6参照)。転写面に、記録層17及び保護層18を積層することによって、フレキシブル光ディスクが得られる(図12(e))。
なお、図4は単官能アクリレートモノマーの転写層の表面写真(倍率200倍)であり、これは転写層表面が平滑であることを示している。これに対して、図5は多官能アクリレートモノマーの転写層の表面写真(倍率200倍)であり、これは転写層表面にマイクロゲルが見られ、それを核として大きな凹凸となっていることを示している。
実施例1において作製されたフィルム厚みが70,100,140,200,300μmのディスクは面振れが安定化し、しかも残留フォーカスエラーも小さくなり(図8参照)、高品質な記録再生特性が得られた。ただし、フィルム厚みが200,300μmの場合は、初期は面振れが安定するが、常にディスクがガイドと摺動している状態であり、ディスクの削れや変形などが発生し、次第に面振れが安定しなくなる。したがって、ガイドとディスクが摺動せずに面振れが安定したもの(面振れは10μm以下)は、フィルム厚みが70,100,140μmの場合である。
また、各フィルムを動的測定法である固有振動法で、片持ち共振法により測定した内部損失は、0.01〜0.05の範囲であり、フィルム厚み依存性はない。
なお、図14に示すように、ガイド4と補助ガイド6,6等から成る3個のガイドを用いたドライブにおいても、同様にディスク面振れが安定し、残留フォーカスエラーも小さなものとなる。
まず、転写層13の膜厚については1〜10μmが適正である(面振れの大きさと膜厚の関係については図3参照)。転写層13の膜厚が1μm未満では面振れ安定化は図れるが、プリフォーマットパターンを精度よく転写層に形成することが困難である。他方、転写層13の膜厚が10μmを超えると、転写層の硬化収縮による反りが大きく、そのために空気浮上時の面振れの安定性が悪く、フォーカスサーボが入らないので、記録再生ができない。転写層13の膜厚を均一にするための高速スピン回転速度の上限を5000rpm以下にすることが望ましい。そうでなければ、固定のためのマグネットの磁力不足、又は真空吸着力が不十分となって、高速スピンのためにスタンパ10がチャッキングテーブルから離れ飛ぶ危険性がある。
1000〜5000rpmのスピンにより、膜厚1〜10μmの転写層が形成されるが(5000rpmでの転写層樹脂の粘度と転写層膜厚との関係については、図2参照)、この膜厚は回転数、時間、又は粘度等によってコントロールされる。また、転写層樹脂の硬化収縮率は10%以下であることが望ましい。10%を超えると収縮による逆反り量が大きくなりすぎて、ディスクの面振れ安定性が大きく低下する。
また、実施例2におけるPETフィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間における厚みばらつきは、どの区間でも0.09μm以下である。
スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に、紫外線硬化型樹脂11であるトリシクロデカニルオキシアクリレート(粘度12mPa・s、硬化収縮率は7%)を1000rpmで塗布し(図12(a)参照)、これを厚み2μmに延展させる。その上にPETフィルム基板を重ねて積層し(図12(b)参照)、転写層13に紫外線を照射してこれを硬化させる(図12(c)参照)。PETフィルム基板表面は易接着処理されているので表面エネルギーが大きく、転写層13と容易に接着される。スタンパ10を剥離して(図12(d)参照)、得られた転写層表面外観はファインな表面を呈しており(図4と同等の結果)、厚み分布も均一である(図6と同等の結果)。転写面に、記録層17及び保護層18を積層することにより、フレキシブル光ディスクが得られる(図12(e)参照)。
実施例2において作製されたフィルム厚みが60,100,110,170,250μmのディスクは面振れが安定化し、しかも残留フォーカスエラーも小さくなり(図8と同等の効果)、高品質な記録再生特性が得られた。ただし、フィルム厚みが170,250μmの場合は、初期は面振れが安定するが、常にディスクがガイドと摺動している状態であり、ディスクの削れや変形などが発生し、次第に面振れが安定しなくなる。したがって、ガイドとディスクが摺動せずに(空気力学的に浮上して)面振れが安定する(面振れは10μm以下)のは、上記実施例1とは若干異なり、フィルム厚みが60,100,110μmの場合である。
また、各フィルムを動的測定法である固有振動法で、片持ち共振法により測定した内部損失は、0.01〜0.05の範囲であった。
なお、上記実施例1と同様に、図14に示すようなガイド4と補助ガイド6,6等から成る3個のガイドを用いたドライブにおいても、同様にディスク面振れが安定し、残留フォーカスエラーも小さなものとなる。
PIフィルム表面は元々表面エネルギーが大きいので、転写層13との接着力は十分である。PIフィルム基板12の厚みは、50,75,100,170,200μmであればよいが、実施例3におけるPIフィルム基板の厚みは100μmが最適である。前記各PIフィルムの厚みにおけるフィルム剛性は次の表3に示すとおりであり、このフィルム基板は可撓性を有している。この表3は、厚み0.03,0.05,0.075,0.1,0.17,0.20mmのPIフィルムにおいて、半径25,35,45,55mmの位置でのフィルム剛性(単位:Pa)を示したものである。
また、実施例3におけるPIフィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきは、どの区間でも、フィルム厚み測定器(アンリツ製フィルムシックネステスタKG601B)で評価して、0.04μm以下である。
スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に、紫外線硬化型樹脂11であるテトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート(20〜200mPa・s、硬化収縮率は10%)を5000rpmで塗布し(図12(a)参照)、これを厚み5μmに延展させて転写層13を形成する。その上にPIフィルム基板12を重ねて積層し(図12(b)参照)、転写層13に紫外線を照射してこれを硬化させる(図12(c)参照)。PIフィルムは元々表面エネルギーが大きいので、転写層13と容易に接着される。スタンパ10を剥離して(図12(d)参照)、得られた転写層表面外観はファインな表面を呈しており(図4と同等の結果)、厚み分布も均一である(図6と同等の結果)。転写面に記録層17及び保護層18を積層することによりフレキシブル光ディスクが得られる。
実施例3において作製されたPIフィルム厚みが50,75,100,170,200μmのディスクは面振れが安定化し、しかも残留フォーカスエラーも小さくなり(図8と同等の効果)、高品質な記録再生特性が得られた。ただし、PIフィルム厚みが170,200μmの場合は、初期は面振れが安定するが、常にディスクがガイドと摺動している状態であり、ディスクの削れや変形などが発生し、次第に面振れが安定しなくなる。したがって、ガイドとディスクが摺動せずに(空気力学的に浮上して)面振れが安定する(面振れは10μm以下)のは、上記実施例1又は実施例2とは若干異なり、フィルム厚みが50,75,100μmの場合である。
なお、上記実施例1又は実施例2と同様に、図14に示すようなガイド4と補助ガイド6,6等から成る3個のガイドを用いたドライブにおいても、同様にディスク面振れが安定し、残留フォーカスエラーも小さなものとなる。
上記実施例1〜実施例3においては、フィルム剛性とフレキシブル光ディスクの面振れ安定化との関係について解析しているが、剛性は厚みの3乗に比例し、転写層や記録層に対してフィルム厚みが最も大きいので、「ディスク剛性≒フィルム剛性」で規格化できる。
したがって、ディスク面振れ安定化について論じる場合、フィルム剛性をディスク剛性として代用しても何ら不都合はない。
比較例1は、スタンパ10上に、紫外線硬化型樹脂11、即ち、硬化時に架橋構造をとらない単官能アクリレートモノマー材料であるトリシクロデカニルオキシアクリレート(粘度12mPa・s、硬化収縮率は7%)を、スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に1000rpmで塗布して延展させ、その上にPCフィルムを貼り合わせるものである。PCフィルム表面は元々表面エネルギーが大きいので、転写層13との接着力は十分である。PCフィルム基板の厚みは、70,120,200μmであればよいが、比較例1における代表的なフィルム厚みは120μmであり、このフィルム基板は可撓性を有する。また、比較例1におけるPCフィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきは、最大で0.5μmである。
なお、この比較例1は、実施例1〜実施例3に対して、フィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきが、最大で0.5μmの点で相違する。
スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に、トリシクロデカニルオキシアクリレート(粘度12mPa・s、硬化収縮率は7%)を1000rpmで塗布し、これを厚み2μmに延展させる。その上にPCフィルム基板12を重ねて積層し、転写層13に紫外線を照射してこれを硬化させる。PCフィルムは元々表面エネルギーが大きいので、転写層13と容易に接着される。スタンパ10を剥離して、得られた転写層表面外観はファインな表面を呈しており(図4と同等の結果)、厚み分布も均一である(図6と同等の結果)。剥離させてから、転写面に、記録層17及び保護層18を積層することにより、フレキシブル光ディスクが得られる。
しかし、PCフィルム基板の厚みばらつきが、最大0.5μmであって大きいため、残留フォーカスエラーが大きく(図9参照)、記録再生特性は低レベルであった。
比較例2は、スタンパ10上に、紫外線硬化型樹脂11、即ち、硬化時に架橋構造をとらない単官能アクリレートモノマー材料であるノニルフェノキシエチルアクリレート(粘度80mPa・s、硬化収縮率は5%)を、スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に3000rpmで塗布し、これを厚み8μmに延展させ、その上にPETフィルムを貼り合わせるものである。比較例2におけるPETフィルムの厚みは100μmである。フィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきは、最大で2μmである。
なお、この比較例2は、実施例1〜実施例3に対して、比較例1と同様に、PETフィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきが、最大で2μmの点で相違する。
スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に、単官能アクリレートモノマー材料であるノニルフェノキシエチルアクリレート(粘度80mPa・s、硬化収縮率は5%)を3000rpmで塗布し、これを延展させる。そして、その上にPETフィルムを重ねて積層し、転写層13に紫外線を照射してこれを硬化させる。スタンパ10を剥離して、得られた転写層表面外観はファインな表面を呈しており(図4と同等の結果)、厚み分布も均一である(図6と同等の結果)。剥離させてから、転写面に、記録層17及び保護層18を積層することにより、フレキシブル光ディスクが得られる。しかし、PETフィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきが、最大で2μmであって、比較例1よりも大きく、残留フォーカスエラー大きく(図10参照)、記録再生特性がさらに悪化した。
比較例3は、スタンパ10上に、紫外線硬化型樹脂11、即ち、硬化時に架橋構造をとる多官能アクリレートモノマー材料(硬化収縮率3%)を、スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に塗布し、延展させ、その上にポリエステルで易接着処理されたPETフィルム基板12を貼り合わせるものである。
前記フィルム基板表面が易接着処理されているので表面エネルギーが大きく、転写層13との接着力は十分である。PETフィルム基板の厚みは、60,100,170,250μmであればよいが、比較例3における代表的なフィルム基板の厚みは60μmである。また、比較例3におけるPETフィルム基板の任意の半径位置における円周方向の1/100周の区間の厚みばらつきは、最大で2μmであった。
スピンディスク15に固定されたスタンパ10上に、多官能アクリレートモノマー材料(粘度10000mPa・s、硬化収縮率3%)を5000rpmで塗布し、これを延展させる。その上にPETフィルム基板12を重ねて積層し、転写層13に紫外線を照射してこれを硬化させる。フィルム基板表面が易接着処理されているので表面エネルギーが大きく、転写層13と容易に接着される。スタンパ10を剥離して、得られた転写層表面外観は無数のマイクロゲルが見られ、転写層表面に高さが約1μmの凹凸が生じ、これが厚みばらつきとなり(図7参照)、厚みばらつきが最大で2μmと大きく、表面が平滑な転写層が得られない。
したがって、比較例3は、フィルム基板および転写層の厚みばらつきが重畳することで、フォーカスサーボ自身をロックすることすら不可能となり、使用可能な光ディスクとして機能しなくなった。また、フィルム剛性が不足することで、面振れも安定化できなかった。
5:ピックアップの対物レンズ
6:補助ガイド
10:スタンパ
11:紫外線硬化型樹脂
12:フィルム基板
13:転写層
15:スピンディスク
17:記録層
18:保護層
Claims (16)
- 硬化時に架橋構造をとらないフォトポリマー材料を含んで構成され、任意の半径位置における円周方向の任意の1/100周区間の厚みばらつきが0.1μm以下である転写層が形成されたディスク基板を有するフレキシブル光ディスクであって、ヤング率×(厚み/半径)3で定義したディスクの剛性が5〜5000Paの範囲であることを特徴とするフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの剛性が5〜550Paの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの剛性が、ディスク基板の厚みにより制御されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの剛性が、ディスク基板のヤング率により制御されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの剛性が、ディスク基板の材料により制御されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクのヤング率、および内部損失(内部摩擦)を、動的測定法である固有振動法で、片持ち共振法により規定し、内部損失は、固有振動数の分布を振動数と半価幅の比によって規定し、固有振動数をf、半価幅の高域側をfU、低域側をfLとしたとき、内部損失Q−1=(fU−fL)/(√3×f)が0.001〜0.3の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの内部損失が、0.001〜0.3の範囲となるように、ディスク基板の厚みにより制御されることを特徴とする請求項6に記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの内部損失が、0.001〜0.3の範囲となるように、ディスク基板のヤング率により制御されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記ディスクの内部損失が、0.001〜0.3の範囲となるように、ディスク基板の材料により制御されることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 片面ないし両面の表面エネルギーが大きいフィルム基板を用いることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 片面ないし両面の表面エネルギーが大きくなるように、表面がポリエステル処理等の易接着処理されているフィルム基板を用いることを特徴とする請求項10に記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記フォトポリマー材料が単官能アクリレートモノマー材料であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記単官能アクリレートモノマー材料として、硬化収縮率が10%以下のものを用いることを特徴とする請求項12に記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記フレキシブル光ディスクが、ピックアップ側にディスクのプリフォーマットパターン面を備え、その面で記録再生する表面記録型のものであることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載のフレキシブル光ディスク。
- 上記請求項1〜請求項14のいずれかに記載のフレキシブル光ディスクを製造する方法であって、
スピンディスクに装着したスタンパを高速回転させて、紫外線硬化型樹脂を延展することにより転写層を形成し、
前記転写層上に所定の特性を持つフィルム基板を重ねて積層し、
前記転写層に紫外線を照射してこれを硬化させて、前記スタンパを剥離させた後、
前記転写層の転写面に記録層及び保護層を積層することを特徴とするフレキシブル光ディスクの製造方法。 - 上記スピンディスクを1000〜5000rpmで回転させて、上記転写層を1〜10μmの膜厚に形成することを特徴とする請求項15に記載のフレキシブル光ディスクの製造方法。
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