JP3995154B2 - フレキシブル光ディスク及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、フレキシブル光ディスク、特に高記録密度のフレキシブル光ディスクおよびその製造方法に関するものであり、フレキシブル光ディスクの可撓性を損なうことなしに、ガイドによる空気軸受による面振れ量を低減し、記録再生信号の高精度化を図ることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
リムバブルで記録容量が大であることなど、その特性が優れているためCDやDVDなどの光ディスクが急激に普及している。通常の光ディスクは厚さ1.2または0.6mmのポリカーボネート基板にプリグルーブ、ピットを転写し、その上に記録膜を成膜して、情報を記録再生するものである。そして、光を記録面上に高精度で集光するために、光学ヘッドと光ディスク表面間の相対的な位置関係を高精度で制御することが必要であるので、基板を平坦にし、剛性を持たせ、かつ光ピックアップにサーボをかけて高い位置精度を出している。
他方、記録容量をさらに高めるために、対物レンズの開口数(NA)を上げたり、レーザーを短波長化することで、光スポットを更に小径化するための研究開発が行われている。また、NAを上げるためには基板のチルト(面振れ)を小さくしなければならないので、製造基板の形状精度を向上させ、ピックアップへチルト(面振れ)サーボを搭載し、記録膜上に0.1mm程度の極めて薄いカバー層を設けて当該カバー層側から記録再生することでチルト(面振れ)マージンを拡大するなどの方策が採用されている。
【0003】
従来の光ディスクのチルト(面振れ)を小さくすることは、その材料や製法を工夫することによって達成できないではないが、さらにチルト(面振れ)を小さくするとすれば、そのコスト増が極めて著しい。反対に、光ディスクのチルト (面振れ)を現状のままにして、これに対する光ピックアップのチルト(面振れ)サーボ精度を高くして対応するについても同様である。また、光ディスクの基板側からではなく、記録膜側から再生する方式もあるが、この場合は、記録膜面と対物レンズの距離が0.1mm程度しか確保されないので、ハードな光ディスクと対物レンズとの衝突を防ぐために面振れを極めて小さくして安定させなければならず、そのためにはチャッキング(光ディスクのチャッキング)精度を向上させればよい。しかし、これについてもコストアップが著しい。
【0004】
他方、光ディスクを上記のようにハードにして形状精度を高度にするのではなくて、ディスクを可撓性にしたフレキシブル光ディスクがあり、このフレキシブル光ディスクに対する記録再生装置の概要は、図1に示すようなものである。
すなわち、フレキシブル光ディスク1の記録再生面と反対側にガイド2を設け、対物レンズ3とガイド2とを光ディスク1を挟んで対向させ、光ディスク1の回転によって生じる動的空気軸受で、ガイドに対する部分を空力的に浮上させ(ベルヌーイ浮上:空気軸受による非接触支持)、この空力浮上を安定化させることによって、光ディスク1のチルトを限りなく0に近づけるようにするものである。
【0005】
上記フレキシブル光ディスクの基板を作製する方法の一つとして、PET樹脂シートなどのフレキシブルシートをロールトゥーロール方式で搬送させながら、スタンパに紫外線硬化型樹脂を塗布した後、フレキシブルシートを載置して紫外線硬化させ、スタンパから剥離させることにより、樹脂塗布層にスタンパの微細パターンが転写された転写基板が得られ、パターンの転写面に記録膜12を成膜する2P法(Photo Polymerization)がある。一般的にPET樹脂シートは、ロールトゥーロールでシートの供給、巻き取りをスムーズに行うため(滑性確保のため)に滑剤を含有しており、PET樹脂シートの表面が滑剤の介在によって粗面になっている(図3参照)。
表面記録型の光ディスクの場合は、ディスク基材が透明であることは必ずしも必須ではないが、ガイドと光ディスク面との間に空気軸受を形成して回転方向の面振れを安定化させる(チルト低減)には、ガイドに対向する面が極めて平滑でなければならない。
【0006】
他方、フレキシブル光ディスクがガイドから離れる方向に反っていると、それが自重による微小なものであっても、回転方向の面振れの安定化は図られない。このために、特許第2942430号公報に、フレキシブルディスクの外周部に高剛性の部位を設けて光ディスクの上記反りを小さくする方法が記載されているが、この方法はディスクの上記反りを小さくすることはできるが、しかし、回転時の高剛性部位のわずかな重量アンバランスによってかえって面振れが助長され、
面振れは必ずしも低減されない。
【0007】
ところで、特開平9−54985号公報に、従来の光ディスク(ハードな光ディスク)について、紫外線硬化樹脂の硬化収縮による基板変形の反りを低減させるについて、反り方向が異なる2枚の基板を貼り合わせ、それぞれの反りを打ち消させて、全体の反りを小さくすることが記載されている。これに倣って、フレキシブル光ディスクのディスク基板を、2枚のシートを貼り合わせて構成することが想定されるが、しかし、2枚のシートを貼り合わせた複合構造のディスク基板は剛性が高くなるので、空気軸受で面振れを安定させるのに必要な可撓性を確保することは難しい。
【0008】
さらに、特許第2543230号公報に薄い基板の反りを小さくする方法が記載されている。このものは、比較的ハードな板を挟んで貼ることで、薄い基板の反りを小さくするものであるが、これも上記の従来技術と同様に剛性が高くなることが避けられず、そのため、空気軸受で面振れを安定させることは困難である。
また、光ディスクの面振れを空気軸受で安定させる場合、空気軸受の空気圧による押圧力とそれに対抗するディスクの反力との釣り合いで空気軸受による安定化が図られるのであるから、ディスクの反りが、ガイドに対して突き出る方向 (ガイドに対して凹状)に反っていることが望ましい。
【0009】
【特許文献1】
特許第2942430号公報
【特許文献2】
特開平9−54985号公報
【特許文献3】
特許第2543230号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、回転駆動時における回転軸方向の面振れが空気流の圧力差によって安定化されるフレキシブル光ディスクについて、従来技術の上記問題を解消すべく、ガイドによる上記空気軸受で面振れを安定させ、面振れが微小に抑制され、安定化されるフレキシブル光ディスク及びその製造方法を提供することをその目的とするものであり、その課題は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製のディスク基板によるフレキシブル光ディスクについて、ディスク基材の表面をガイドによる空気軸受面とし、回転軸方向の面振れを微小にし、安定させるとともに、記録膜の形成及びパターン転写を高精度にして、記録再生精度を可及的に高められるように、フレキシブル光ディスクの構造及び製造方法を工夫することである。
【0011】
【課題解決のために講じた手段】
【解決手段1】
(請求項1に対応)
解決手段はフレキシブル光ディスクの製造方法についての手段であり、PET樹脂シート製のディスク基板によるフレキシブル光ディスクの製造方法を前提として、次の(イ)〜(ヘ)によるものである。
(イ)上記PET樹脂シートの一方の面の表面粗さが、他方の面の表面粗さよりも小さくてかつ微小であり、
(ロ)上記PET樹脂シートの上記一方の面にマスキングシートを剥離可能に積層してあり、
(ハ)上記マスキングシートの熱収縮率を上記PET樹脂シートよりも大きくし、
(ニ)マスキングシートを積層したPET樹脂シートの他方の面を易接着処理し、当該面に転写層を積層し、
(ホ)上記転写層を硬化させた後、上記転写層のパターン転写面に記録膜を成膜し、
(ヘ)上記マスキングシートを剥離させること。
【0012】
【作用】
上記PET樹脂シートの一方の面の表面粗さが、他方の面の表面粗さよりも小さくてかつ微小であると、そのままでは上記一方の面の滑りが悪く、当該シートの取扱いに支障を生じるが、上記一方の面にマスキングシートを剥離可能に積層してあるので、それで滑性が確保され、また他方の面は所要の表面粗さがある。したがって、ディスク基材の滑性不足により取扱いに支障を生じることはない。それゆえ、マスキングシートを積層したPET樹脂シートは、それ自身の一方の面の表面粗さが極めて微小であるにも関わらず、その取扱いに格別の支障を生じることはない。
上記一方の面にマスキングシートを積層したPET樹脂シートの他方の面に転写層を積層してあるので、記録膜成膜時のマスキングシートとPET樹脂シートの熱収縮量の差によって、PET樹脂シートが、マスキングシートを上にして凹状に反って変形する。
【0013】
また、上記他方の面は所要の滑性を確保できる粗さの粗面であり、当該面に易接着処理して転写層を接着しているので、転写層が所要の接着強度で接着され、したがって、高品質のパターン形成が確実になされる。
さらに、マスキングシートが除去されて製作された光ディスクの一方の面はもともと極めて平滑であり、上記製作過程においてマスキングシートでカバーされているから摩傷などの損傷を受けることがない。したがって、上記一方の面は、極めて平滑なままに保護される。
また、ガイドに対向する面の外周がガイドに向かって反った状態になるから、光ディスクの面振れ量は微小で、かつ安定する。
したがって、記録再生精度が高い光ディスク基板が製作される。
【0014】
なお、フレキシブル光ディスク基板の樹脂シートはPET樹脂シートであるが、ポリイミド樹脂シート、ポリプロピレン樹脂シート、ポリスチレン樹脂シート等のように、表面粗さ、ヤング率等の物性が類似しているものであれば、PET樹脂シートとは異なる樹脂シートであっても、上記作用を奏する。
したがって、これらのシートは上記PET樹脂シートと同等なものであるから、これらによるものは、この発明の範囲内に含まれる。
【0015】
【実施態様1】
(請求項2に対応)
実施態様1は、解決手段1について、PET樹脂シートが滑剤を含有していないシートであり、上記他方の面の上記易接着処理層が滑剤を含有していて当該面を粗面にしていることである。
【0016】
【実施態様2】
(請求項3に対応)
実施態様2は、上記解決手段1における一方の面の表面粗さRmaxが、0.05μm以下であることである。
【作用】
上記一方の面の表面粗さRmaxが、0.05μm以下であることによって、光ディスクの面振れ量は極めて微小に抑制される。
【0017】
【実施態様3】
(請求項4に対応)
実施態様3は、上記解決手段1における他方の面の易接着処理層内の滑剤による表面粗さRmaxが0.1μm〜0.5μmであることである。
【作用】
上記他方の面の表面に滑剤が介在して当該面を粗面にしたものであるから、表面粗さが滑剤の混入量によって容易・正確に調整され、その品質のバラツキが小さい。そして、表面粗さRmaxが0.1μm〜0.5μmであることによって、当該面についてシート取扱い上必要な滑性が十分確保される。
【0018】
【実施態様4】
(請求項5に対応)
実施態様4は、解決手段1におけるマスキングシートが、PET樹脂シートよりも熱収縮率が大きい合成樹脂シートであることである。
【作用】
記録膜成膜時の加熱によって、マスキングシートがPET樹脂シートよりも大きく熱収縮するので、PET樹脂シートがマスキングシート側に向かって凹状に反って変形する。
したがって、光ディスクの面振れ量は小さく、かつ安定する。
【0019】
【実施態様5】
(請求項6に対応)
実施態様5は、上記解決手段1のマスキングシートについて、当該マスキングシートとPET樹脂シートとの熱収縮率の差が、光ディスクの中心部と周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が0.1以下になる値であることである。
【作用】
光ディスクの中心部と周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が0.1以下であることによって、面振れ量が小さく、かつ安定したフレキシブル光ディスクが作製される。
【0020】
【実施態様6】
(請求項7に対応)
実施態様6は、上記実施態様4又は実施態様5におけるマスキングシートがポリエチレンシートであることである。
【作用】
ポリエチレンシートはその熱収縮率がPET樹脂シートの熱収縮率のほぼ10倍であるから、実施態様5の光ディスク基板が確実に作製される。
【0021】
【解決手段2】
(請求項8に対応)
解決手段2は、フレキシブル光ディスクの構造に関する手段であり、PET樹脂シート製のディスク基板によるフレキシブル光ディスクを前提として、次の (イ)〜(ハ)によるものである。
(イ)上記PET樹脂シートの一方の面の表面粗さが、他方の面の表面粗さよりも小さく、かつ微小であり、
(ロ)PET樹脂シートの他方の面の滑剤を含有する易接着処理層に、パターン転写層を積層してあり、
(ハ)上記転写層の転写面に記録膜を成膜していること。
【0022】
【作用】
PET樹脂シートの一方の面の表面粗さが、他方の面の表面粗さよりも小さくてかつ微小であるから、当該PET樹脂シートの一方の面にガイドを直接対向させて当該ガイドによる空気軸受を形成することができる。そして、ガイドに対向する面が極めて平滑であるから、光ディスクの面振れが微小に抑制され、かつ安定する。
他方、上記PET樹脂シートの一方の面は、滑剤を含有する易接着処理層を備えており、当該易接着処理面は所要の粗面に調整されるから、転写層の接着に支障はなく、パターンが高精度で転写されている。
したがって、記録再生精度が高いフレキシブル光ディスクが構成される。
【0023】
【実施態様1】
(請求項9に対応)
実施態様1は、解決手段2について、上記PET樹脂シートが滑剤を含有しないシートであり、上記他方の面に易接着処理層があり、当該易接着処理層が滑剤を含有していて当該面が粗面になっているものである。
【作用】
滑剤を含有していないPET樹脂シートであって、上記他方の面に易接着処理層があり、当該易接着処理層が滑剤を含有していて所要の粗面になっているから、上記解決手段2のフレキシブル光ディスクが容易に実現される。また、易接着処理層に含有されている滑剤の粒径、含有割合を加減することによって、上記他方の面の表面粗さは容易、確実に調整される。
【0024】
【実施態様2】
(請求項10に対応)
実施態様2は、上記解決手段2におけるPET樹脂シートの一方の面の表面粗さRmaxが、0.05μm以下であり、他方の面の易接着処理層内の滑剤による表面粗さRmaxが0.1μm〜0.5μmであることである。
【作用】
PET樹脂シートの一方の面の表面粗さRmaxが、0.05μm以下であるから、当該面は極めて平滑であり、ガイドによる空気軸受の空気層の厚さが極めて安定する。したがって、光ディスクの面振れ量が微小に抑制され、かつ安定する。
また、他方の面の易接着処理層内の滑剤による表面粗さRmaxが0.1μm〜0.5μmであるから、転写層が高い密着性をもって強固に接着される。したがって、パターン転写精度が高く、光ディスクの変形によって部分的に剥離することもない。
それゆえ、高精度の記録再生信号が得られる。
【0025】
【実施態様3】
(請求項11に対応)
実施態様3は、上記解決手段2における滑剤が、シリカであることである。
【作用】
易接着処理層に滑剤を含有させて他方の面を粗面にするについて、その滑剤がシリカであることで、滑剤の粒径分布が小さく、易接着処理層への分散が均等になされるので、表面粗さのばらつきが低減される。
したがって、可及的に微小な表面粗さによって、均等な接着力で転写層が積層されている。
それゆえ、転写層の接着強度のバラツキが小さくて安定し、信頼性の高い高品質のフレキシブル光ディスクが構成される。
【0026】
【実施態様4】
(請求項12に対応)
実施態様4は、解決手段2の光ディスクについて、ディスクの空気軸受側面が凹状面であることである。
【作用】
フレキシブル光ディスクが空気軸受側に凹状の面であることによって、光ディスクの面振れ量が微小に抑制され、かつ安定し、高精度の記録再生信号が得られる。
【0027】
【実施態様5】
(請求項13に対応)
実施態様5は、実施態様4について、光ディスクの中心部と周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が0.1以下であることである。
【作用】
光ディスクの中心部と周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が0.1以下であることによって、光ディスクの面振れ量が微小に抑制され、かつ安定し、高精度の記録再生信号が得られる。
【0028】
【実施の形態】
次いで、図面を参照しながら実施の形態を説明する。
本発明は、面振れを安定化させる空気軸受の形成、転写層との高い密着性、接着性を有し、記録再生信号特性の高品質なフレキシブル光ディスクを提供するものであるが、その実施例は次のとおりである。
【0029】
【実施例1】
通常のPET樹脂シートは滑剤を含有させたものであって、この滑剤の存在によって表面を粗面にしてその滑性を高めて、当該シートの取扱いに支障を生じないようにしている(図3参照)。これに対して、この発明の実施例1のディスク基材10は、厚さ0.075mm、直径120mmの、両面平滑なPET樹脂シートであり、その一方の面10x(図4参照)に厚さ0.060mmのポリエチレン製のマスキングシート10aが積層されている。また、PET樹脂シートの他方の面10yは、転写層との接着に備えて易接着処理(厚さ0.1μmのポリエステル系樹脂のコーティングによる)している。
スタンパ13に紫外線硬化型樹脂(転写層を形成するもの)を塗布してあり、その上に、上記PET樹脂シート(ディスク基材10)を載置し、スタンパ13をスピン回転(3000rpm)させて上記紫外線硬化型樹脂を厚さ0.005mmに延展させ、その後、これに紫外線を照射して硬化させる。このとき、紫外線硬化型樹脂層にスタンパ13のプリフォーマットが転写されるとともに、紫外線硬化型樹脂層が易接着処理された上記他方の面10yに高密着性をもって強固に接着固定される。
紫外線硬化型樹脂層をスタンパ13から剥離させることで、ディスク基材10の他方の面に転写層11が積層される。転写層11のプリフォーマットの転写面に記録膜12を成膜し、最後に、マスキングシート10aを剥離して除去することで、フレキシブル光ディスクが完成される。なお、記録膜12をアクリル樹脂の保護層(厚さ10μm)で被覆して当該記録膜12が損傷することを防止する。
【0030】
上記PET樹脂シート(ディスク基材10)は、そのガイド2(図1参照)に対向する上記一方の面10x(光ディスクの空気軸受で支承される面)の表面粗さRmaxは0.02μmであり、また、その他方の面10y(転写面側の面)が易接着処理されていて、その易接着処理材に含有させた滑剤の存在によって、上記他方の面10yすなわち易接着処理面は、粗面化されている。この実施例1における易接着処理材は、平均粒径をナノオーダーサイズに制御してあり、これによって処理面の表面粗さRmaxが0.1〜0.5μmの範囲内になっている(図4参照)。
【0031】
また、上記の光ディスクは、上記マスキングシートが塩化ビニールシートであり、その熱収縮率がPET樹脂シート(ディスク基材)10の熱収縮率よりも大きいので、記録膜成膜工程の加熱で凹状に反って変形することなどにより、最終的に凹状に反った形状になる。なお、この製造加工工程におけるディスク基板10の変形の過程は図5に模式的に示すとおりである。すなわち、マスキングシート10aを積層したPET樹脂シート(ディスク基材)10は、押出成形時の樹脂の溶融温度のために凹状に若干反っており(図5(a))、転写層形成工程での転写層の熱収縮によって上記反りが若干戻り(同図(b))、その後の記録膜成膜工程での加熱によるマスキングシートの熱収縮のために上記反りが増大し (同図(c)、さらに、マスキングシートの剥離除去によって、マスキングシートの内部張力から解放されてディスク基板10の反りが低減され(同図(d))、
最終的に、光ディスクは凹形状のものになる。
【0032】
上記のように凹状に変形したフレキシブル光ディスクは、記録再生装置に搭載されたとき、静止状態で、そのガイドと対向する面、すなわち、空気軸受形成面が凹状面であり、その中心部とディスク周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が、0.05であった。また、PET樹脂シート(ディスク基材)10と転写層11の密着性は良好で、面振れ安定化時にガイドによる空気軸受の空気圧で押されて光ディスクが変形しても、シートから転写層が剥離することはなかった。また、このものは、光ディスクの面振れ量が10μm以下で安定することが確認された。さらに、上記光ディスクに実際に情報を記録して再生した結果、アイパターンのアイの開きが鮮明で、低ジッタの高品質な信号特性が得られた。
【0033】
【実施例2】
実施例2として、ディスクのガイドと対向する面(上記一方の面)の表面粗さRmaxを0.05μmとし、転写面側面(上記他方の面)を易接着処理してその処理層に滑剤を分散付与したPET樹脂シート(表面粗さRmaxは0.1〜0.5μmの範囲内のもので、実施例1と同じ)を用いて、実施例1と同様にフレキシブル光ディスクを製造する。
この実施例2の光ディスクは、静止状態において上記のH/Rが、0.07であり、また、PET樹脂シート(ディスク基材)と転写層の密着性は良好で、面振れ安定化時に光ディスクが変形しても、転写層が剥離することはなかった。
【0034】
【比較例1】
比較例1として、ディスクの空気軸受形成面(上記一方の面)の表面粗さRmaxが0.1μmのもの、0.2μmのもの、0.5μmのものの3つのPET樹脂シートを用いて、実施例1と同様にしてフレキシブル光ディスクを製造した。この光ディスクの面振れは30μmであって安定せず、ガイドとディスクが干渉(接触)し易く、実際に情報を記録再生したところ、その再生信号はアイパターンのアイの開きが不鮮明で、ジッタも大きかった。
【0035】
【比較例2】
比較例2として、光ディスクのガイドが対向する面の表面粗さRmaxを0.05μmとし、転写面側は易接着処理されていないPET樹脂シート(表面粗さRmaxが0.05μm以下)を用いて、実施例1と同様にフレキシブル光ディスクを製造した。このものではシートと転写層の密着性が悪く、面振れ安定化時のディスク変形によって転写層に部分的な剥離を生じた。
【0036】
【比較例3】
比較例3として、光ディスクの空気軸受形成面の表面粗さRmaxを0.05μmとし、転写側面が易接着処理されてその処理面に滑剤が分散付与されたPET樹脂シート(表面粗さRmaxは0.1〜0.5μmの範囲のもの)を用いて、実施例1と同様にしてフレキシブル光ディスクを製造した。そして、この比較例3において、ガイドと対向する面が静止状態で凸状になるように反らせ、その反りの高さの比H/Rが0.5になるようにして、光ディスクの面振れ量を測定した。その結果、その面振れ量は45μmで、面振れは安定しなかった。また、この比較例3において、静止状態で、ガイドに対向する面が凹状で、その反りの高さの比H/Rが0.2になるようにして、面振れ量を測定した。その結果、ガイドがディスクの空気軸受形成面に接触しやすく、面振れが安定せず、ガイドに対向した面に擦り傷で損傷していた。
【0037】
【比較例4】
さらに、比較例4として、マスキングシートが積層されていないPET樹脂シートを用いて、実施例1と同様にして転写層、記録膜を形成して、フレキシブル光ディスクを製作した。その結果、ガイドに対向する面は静止状態ですべて凸状に反り、その反りの高さの比H/Rが0.4となり、ディスクの面振れが安定しなかった。
【0038】
【発明の効果】
この発明の効果を主な請求項毎に整理すれば次のとおりである。
1.請求項1に係る発明の効果
ディスク基材がPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂で構成されており、ディスク基材の一方の面の表面粗さが他方の面の表面粗さよりも小さくかつ微小であるが、上記一方の面をマスキングシートでカバーしているので、当該面の滑性が確保される。また、他方の面の所要の滑性はその面粗さによって確保される。したがって、ディスク基材の表裏両面の滑性が確保されるので、取扱上に支障を生じることはない。
また、上記一方の面はマスキングシートでカバーされているので、製造工程などで擦り傷などで損傷されることはなく、マスキングシートを除去することで、ガイドに対向する面の高い平滑性が確保される。したがって、当該面にガイドを対向させて空気軸受が形成されたとき、光ディスクに対する上記空気軸受による案内が安定するから、面振れ量が小さく、かつ安定する。
さらに、上記他方の面には易接着処理層を介して転写層が高い密着性をもって均等にかつ強固に接着固定されるので、パターンの転写精度が高く、変形によって転写層が部分的に剥離することもない。
したがって、記録再生精度が高いフレキシブル光ディスクが安定的にかつ容易に製造される。
【0039】
2.請求項2に係る発明の効果
滑剤を含有していないPET樹脂シートの上記他方の面を、滑剤を含有している易接着処理材で粗面にしたものをディスク基材に利用することで、請求項1に係る発明のフレキシブル光ディスクが安定的にかつ容易に製造される。
【0040】
3.請求項4、請求項5にかかる発明の効果
マスキングシートの熱収縮率がPET樹脂シートの熱収縮率よりも大きいので、記録膜成膜時の熱収縮によってPET樹脂シートがマスキングシート側に向かって凹状に反って変形する。したがって、光ディスクの面振れ量が小さく、かつ安定する。
また、マスキングシートの熱収縮率とPET樹脂シートの熱収縮率の差を、光ディスク基板の中心部と外周部の高さの比が0.1以下になる値にすることによって、光ディスクの面振れ量が大きく抑制され、かつ安定し、そのバラツキが小さくなる。
【0041】
4.請求項8に係る発明の効果
ガイドと対向する一方の面が極めて平滑な面であり、他方の面が所要の粗面であるから、光ディスクの面振れ量が極めて小さい。また、他方の面は易接着層に含まれた滑剤による粗面であって、当該易接着層を介して転写層が高い密着性をもって接着されているので、当該面への転写層の接着が強固で、かつ安定している。
したがって、ガイドによる空気軸受の面振れ量が小さくて安定しており、転写層に転写されたパターンの精度が高く、光ディスクの変形によって転写層に局部的な剥離を生じることもない。
それゆえ、高精度の記録再生信号が得られる。
【0042】
5.請求項12、請求項13に係る発明の効果
ディスク基材のマスキングシート側の面が凹面状になっていることにより、回転駆動時における光ディスクの面振れを空気軸受で高度に安定化させることができ、面振れ量を極めて微小に抑制することができる。
さらに、光ディスクの中心部と周辺部との高さの差と半径Rの比(H/R)が0.1以下であるとき、面振れ量の抑制効果が特に顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、フレキシブル光ディスクの記録再生状態を模式的に示す断面図である。
【図2】は、実施例の光ディスクの製造工程を模式的に示す斜視図である。
【図3】は、滑剤を含む通常のPET樹脂シートの拡大断面図である。
【図4】は、実施例におけるPET樹脂シートの拡大断面図である。
【図5】は、実施例の光ディスクの製造工程における光ディスクの反りの発生を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1:フレキシブル光ディスク
2:ガイド
3:対物レンズ
10:ディスク基材(PET樹脂シート)
10a:マスキングシート
10x:一方の面(ガイドと対向する面)
10y:他方の面(易接着処理面)
11:転写層
12:記録膜
13:スタンパ
14:滑剤
Claims (13)
- PET樹脂シート製のディスク基板によるフレキシブル光ディスクの製造方法において、
上記PET樹脂シートの一方の面の表面粗さが、他方の面の表面粗さよりも小さく、かつ微小であり、
上記PET樹脂シートの上記一方の面にマスキングシートを剥離可能に積層してあり、
上記マスキングシートの熱収縮率を上記PET樹脂シートよりも大きくし、
マスキングシートを積層したPET樹脂シートの他方の面を易接着処理し、当該面に転写層を積層し、
上記転写層を硬化させた後、上記転写層のパターン転写面に記録膜を成膜し、
上記マスキングシートを剥離させるフレキシブル光ディスクの製造方法。 - 上記PET樹脂シートが滑剤を含有していないシートであり、上記他方の面の上記易接着処理層が滑剤を含有していて、当該面を粗面にしている請求項1のフレキシブル光ディスクの製造方法。
- 上記一方の面の表面粗さRmaxが、0.05μm以下である請求項1のフレキシブル光ディスクの製造方法。
- 上記他方の面の易接着処理層内の滑剤による表面粗さRmaxが0.1μm〜0.5μmである請求項1のフレキシブル光ディスクの製造方法。
- 上記マスキングシートが、PET樹脂シートよりも熱収縮率が大きい合成樹脂シートである請求項1のフレキシブル光ディスクの製造方法。
- 上記マスキングシートとPET樹脂シートとの熱収縮率の差が、光ディスク基板の中心部と周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が0.1以下になる値である請求項1のフレキシブル光ディスクの製造方法。
- 上記マスキングシートがポリエチレンシートである請求項5又は請求項6のフレキシブル光ディスクの製造方法。
- PET樹脂シート製のディスク基板によるフレキシブル光ディスクにおいて、
上記PET樹脂シートの一方の面の表面粗さが、他方の面の表面粗さよりも小さく、かつ微小であり、
PET樹脂シートの他方の面の滑剤を含有している易接着処理層に、パターン転写層を積層してあり、
上記転写層の転写面に記録膜を成膜しているフレキシブル光ディスク。 - 上記PET樹脂シートが滑剤を含有しないシートであり、上記他方の面に易接着処理層があり、当該易接着処理層が滑剤を含有していて当該面が粗面になっている請求項8のフレキシブル光ディスク。
- 上記PET樹脂シートの一方の面の表面粗さRmaxが、0.05μm以下であり、他方の面の易接着処理層内の滑剤による表面粗さRmaxが0.1μm〜0.5μmである請求項8のフレキシブル光ディスク。
- 上記滑剤がシリカである請求項8のフレキシブル光ディスク。
- 上記光ディスクの空気軸受側面が凹状面である請求項8のフレキシブル光ディスク。
- 上記光ディスクの中心部と周辺部との高さの差Hと半径Rとの比(H/R)が0.1以下である請求項12のフレキシブル光ディスク。
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