JP5485287B2 - 情報記録媒体の製造方法及び情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された硬化性樹脂層を含む再生又は記録再生用の情報記録媒体及びその製造方法に関する。より詳しくは、3層以上の情報層を有する情報記録媒体の製造方法及び当該製造方法から製造された情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光学的な情報記録技術の研究の進展の結果、産業用及び民生用の情報記録媒体が広く用いられている。特に、CDやDVDといった高密度に情報を記録することができる光情報記録媒体は、普及している。このような光情報記録媒体は、情報信号を表すピットや記録再生光をトラッキングするための案内溝といった凹凸形状からなる情報面が形成された透明基板と、透明基板上に形成された情報層(例えば、積層された金属薄膜や積層された熱記録可能な薄膜材料)と、情報層を、例えば、大気中の水分から保護するための保護層(例えば、樹脂層や透明基板)とを含む。情報層に照射されたレーザ光の反射光の光量変化の検出により、情報の再生がなされる。
【0003】
例えば、CDの場合、厚さ約1.1mmの樹脂基板が用意される。樹脂基板の一方の面には、凹凸形状を含む情報面が形成されている。樹脂基板上に金属薄膜又は薄膜材料が積層され、情報層が形成される。その後、紫外線硬化性樹脂といった放射線硬化性樹脂が保護層の形成のためにコーティングされ、CDが作製される。情報信号の再生は、保護層側ではなく、基板側から入射されたレーザ光によりなされる。
【0004】
DVDの場合、厚さ約0.6mmの樹脂基板が用意される。樹脂基板には、凹凸形状を含む情報面が形成されている。樹脂基板上に金属薄膜又は薄膜材料が積層され、情報層が形成される。その後、別途用意された厚さ0.6mmの樹脂基板が、紫外線硬化性樹脂といった樹脂を用いて張り合わされ、DVDが作成される。
【0005】
上述の光情報記録媒体に対して、大容量化に対する要望が高まっている。このような要望に応えるべく、多層化された情報層を有するDVDが提案されている。このようなDVDは、2層の情報層と、情報層との間に形成された厚さ約数十μmの中間層と、を備える。
【0006】
更に、近年のデジタルハイビジョン放送の普及に伴って、DVDよりも更に高密度で且つ大容量の次世代光情報記録媒体に対するニーズも高まっている。次世代光情報記録媒体として、Blu−rayディスクといった大容量媒体が提案されている。このような大容量媒体は、凹凸形状を含む情報面を有する厚さ1.1mmの基板と、基板の情報面に、例えば、金属薄膜を積層して形成された情報層と、情報層上に形成された厚さ約0.1mmの保護層と、を含む。Blu−rayディスクは、DVDと較べて、狭い情報層のトラックピッチと、小さなピットとを有する。このため、情報の記録再生を行うためのレーザのスポットは、情報層上で小さく絞られる必要がある。Blu−rayディスクの再生には、短波長の青紫レーザ(波長:405nm)が使用される。また、開口数(NA)が0.85の対物レンズを備える光学ヘッドを用いて、レーザ光のスポットが情報層上で小さく絞り込まれる。しかしながら、スポットが小さくなると、ディスクの傾きによる影響は大きくなる。ディスクの小さな傾きは、ビームスポットの収差を発生させる。ビームスポットの収差に起因して、絞り込まれたビームに歪みが生じ、結果として、記録再生できなくなるといった課題を生ずる。そのため、Blu−rayディスクでは、ディスクのレーザ入射側の保護層の厚さは、非常に薄く(0.1mm程度に)設定され、上述の欠点が補われる。
【0007】
Blu−rayディスクといった大容量の次世代光情報記録媒体においても、DVDと同様に、情報層の多層化による記憶容量の大容量化が提案されている。
【0008】
図13は、2つの情報層を含む2層Blu−rayディスクの概略的な断面図である。図13を用いて、2層Blu−rayディスクが説明される。
【0009】
成形樹脂基板201が用意される。成形樹脂基板201の一方の面には、凹凸形状により第1の情報面202が形成される。第1の情報面202上に金属薄膜又は熱記録可能な薄膜材料が積層され、第1の情報層203が形成される。第1の情報層203上に記録再生光に対して略透明な樹脂層204が形成される。樹脂層204上には、凹凸形状によって第2の情報面205が形成される。第2の情報面205上に、記録再生光に対して半透明な金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料が積層され、第2の情報層206が形成される。そして、第2の情報層206を覆うように記録再生光に対して略透明な樹脂がコーティングされ、保護層207が形成される。尚、ここでいう「略透明」との用語は、層が記録再生光に対して約90%以上の透過率を有することを意味する。また、「半透明」との用語は、層が記録再生光に対して10%以上90%の透過率を有することを意味する。この2層Blu−rayディスクの保護層207の側からレーザ光が入射される。第1の情報層203及び第2の情報層206のうち、記録再生を行うための情報層にレーザ光の焦点が合わせられ、信号の記録及び再生といった動作がなされる。尚、成形樹脂基板201の厚さは、約1.1mmである。また、樹脂中間層(樹脂層204)の厚さは、約25μmに設定される。保護層207の厚さは、約75μmに設定される。
【0010】
図14は、情報記録媒体の成形樹脂基板201を作成するための金属金型として用いられるスタンパの作成工程を概略的に示す。図13及び図14を用いて、上述の2層Blu−rayディスクの一般的な製造方法が説明される。尚、以下に説明される2層Blu−rayディスクの製造方法の原理は、3層以上の情報層を備える多層のBlu−rayディスクにも適用される。
【0011】
図14(a)に示される如く、ガラス盤或いはシリコンウェハといった材料から形成された原盤301上にフォトレジストといった感光材料が塗布され、感光膜302が形成される。その後、感光膜302にレーザ光や電子線といった露光ビーム303が照射され、ピットや案内溝といったパターンの露光が行われる。また、原盤301の識別のために、内周部に文字情報がピット或いは溝の集合体で露光される。
【0012】
図14(b)において、感光膜302中のハッチング領域は、露光ビーム303によって露光された露光部304である。図14(a)に関連して説明された感光膜302への露光ビーム303の照射によって、露光部304からなる潜像が形成される。
【0013】
図14(c)に示される如く、その後、アルカリ現像液といった現像剤を用いて、露光部304が除去される。この結果、原盤301と、原盤301上で感光材によって形成された凹凸状のパターン305とを含む記録原盤306が形成される。また、露光された文字情報は、目視で確認できる文字として原盤301上に形成される。
【0014】
図14(d)に示される如く、その後、スパッタリング法や蒸着法といった薄膜形成技術を用いて、記録原盤306の表面に導電性薄膜307が形成される。
【0015】
図14(e)に示される如く、その後、導電性薄膜307を電極として、金属メッキといった手法を用いて、金属板308が形成される。
【0016】
図14(f)に示される如く、パターン305(感光膜302)と導電性薄膜307との界面で、導電性薄膜307と金属板308とを含む積層体が剥離される。導電性薄膜307の表面に残留する感光材は、例えば、除去材を用いて除去される。その後、積層体に対して、成形機に適合するような内外径を有するディスクに打ち抜き成形が行われ、金属スタンパ309が作成される。金属スタンパ309は、樹脂基板を成形するための金属金型として、その後、用いられる。
【0017】
次に、金属スタンパを用いて、射出成形法といった樹脂成形方法により、樹脂基板が成形される。樹脂基板には、金属スタンパ309の内周部に形成された文字情報も転写される。典型的には、樹脂基板を成形するための成形機に対する金属スタンパ309の位置は、略一定にされる。例えば、金属スタンパ309に形成された文字情報が天の位置となるように、金属スタンパ309は成形機に取り付けられる。この結果、文字情報の記録位置は、常に、成形機の天の方向を指し示すこととなる。以下の実施形態において、基板の文字情報の開始位置は、基板の第1基準点として例示される。
【0018】
樹脂基板の材料として、典型的には、ポリカーボネートといった成形性に優れた材料が用いられる。その後、特許文献1に示されるようなスピンコート法といった樹脂層の形成工程を用いて、樹脂層の積層が行われる。
【0019】
図15は、スピンコート法に従う樹脂中間層(樹脂層204)の作成工程と、保護層207の作成工程とからなる2層Blu−rayディスクの作成工程を示す。図13乃至図15を用いて、2層Blu−rayディスクの作成工程が説明される。
【0020】
図14に関連して説明された工程を経て得られた金属スタンパ309を用いて、射出成形法といった樹脂成形法によって、厚さ約1.1mmの成形樹脂基板201が形成される。上述の如く、成形樹脂基板201の一方の面には、凹凸形状からなるピットや案内溝を用いて形成された第1の情報面202が形成される。第1の情報面202上に金属薄膜や熱記録が可能な薄膜材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法によって、第1の情報層203が形成される。図15(a)に示される如く、第1の情報層203が形成された成形樹脂基板201は、真空吸着といった方法により、回転ステージ403上に固定される。
【0021】
図15(b)に示される如く、回転ステージ403に固定された成形樹脂基板201上の第1の情報層203の所望の半径上に、ディスペンサによって放射線硬化性樹脂A404が同心円状に塗布される。
【0022】
図15(c)に示される如く、回転ステージ403がスピン回転される。この結果、第1の情報層203上の放射線硬化性樹脂A404は、延伸され、樹脂層406となる。樹脂層406の厚さは、放射線硬化性樹脂A404の粘度、スピン回転の回転数、スピン回転の回転時間やスピン回転させている間の放射線硬化性樹脂A404の周囲の雰囲気(例えば、温度や湿度)といった様々なパラメータを用いて、所望の値となるように制御される。スピン回転の停止の後、樹脂層406に放射線照射器405から放射線が照射される。この結果、樹脂層406は硬化する。
【0023】
第2の情報面205を形成するための転写スタンパ407が用意される。転写スタンパ407は、例えば、図14(f)に関連して説明された成形樹脂基板201を成形するための金属スタンパ309を作成するための一連の工程と同様の工程を経て得られた金属スタンパを用いて、射出成形法により成形されてもよい。成形樹脂基板201と同様に、転写スタンパ407の内周部にも文字情報が記録される。以下に説明される実施形態において、転写スタンパ407の文字情報の記録開始位置は、転写スタンパの第2基準点として例示される。
【0024】
図15(d)に示される如く、転写スタンパ407は、真空吸着といった方法を用いて、回転ステージ408上に固定される。回転ステージ408上の転写スタンパ407の所望の半径上に、ディスペンサによって、放射線硬化性樹脂B409が同心円状に塗布される。
【0025】
図15(e)に示される如く、回転ステージ408がスピン回転される。この結果、転写スタンパ407上の放射線硬化性樹脂B409が延伸され、樹脂層411が形成される。樹脂層411の厚さは、上述の樹脂層406の厚さに対する制御と同様に、様々なパラメータの制御を通じて、所望の寸法となるように制御される。回転ステージ408のスピン回転の停止後、樹脂層411に放射線照射器410から放射線が照射される。この結果、樹脂層411は、硬化する。
【0026】
図15(f)に示される如く、樹脂層406が形成された成形樹脂基板201は、回転ステージ413上に固定される。また、回転ステージ413上の成形樹脂基板201上に、放射線硬化性樹脂C412を介して、樹脂層411が形成された転写スタンパ407が重ねられる。尚、樹脂層411が樹脂層406に対向するように、転写スタンパ407は成形樹脂基板201に一体化される。
【0027】
図15(g)に示される如く、一体化された成形樹脂基板201と転写スタンパ407とを支持する回転ステージ413がスピン回転される。この結果、放射線硬化性樹脂C412は延伸され、所望の厚さに制御された樹脂層414が形成される。その後、放射線照射器415は、放射線を照射し、樹脂層414を硬化される。この結果、成形樹脂基板201と転写スタンパ407とが結合される。
【0028】
図15(h)に示される如く、放射線硬化性樹脂C412の層の硬化による成形樹脂基板201と転写スタンパ407との一体化の後、転写スタンパ407と樹脂層411との界面で、転写スタンパ407が剥離される。この結果、成形樹脂基板201上に第2の情報面205が形成される。樹脂層411,414,406の積層部は、図13に関連して説明された樹脂層204に相当する。
【0029】
図15(i)に示される如く、この第2の情報面205上に、金属薄膜や熱記録可能な薄膜材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法といった薄膜形成技術に従って、第2の情報層206が形成される。その後、樹脂層406,411,415の形成手法と同様に、第2の情報層206上に放射線硬化性樹脂Dがスピンコート法に従って塗布される。放射線硬化性樹脂Dが延伸された後、放射線が照射され、硬化した保護層207が形成される。必要に応じて、保護層207上に、傷や指紋の付着といった保護層207の表面の欠陥を予防するためのハードコート層が形成されてもよい。このようにして、2層Blu−rayディスクが完成する。尚、図15に関連して説明された放射線硬化性樹脂A404は、好ましくは、第1の情報層203及び/又は樹脂層414との良好な接着性を有する。また、放射線硬化性樹脂B409は、好ましくは、転写スタンパ407に対して良好な剥離性を有するとともに樹脂層414に対して良好な接着性を有する。更に、放射線硬化性樹脂A404,放射線硬化性樹脂B409、放射線硬化性樹脂C412及び放射線硬化性樹脂Dは、記録再生光の波長に対して略透明である。図15に関連して説明された工程において、3種類の放射線硬化性樹脂を用いて樹脂中間層(樹脂層204)が形成されている。しかしながら、例えば、転写スタンパ407の材料を適切に選定することによって、より少ない種類の放射線硬化性樹脂を用いて、樹脂層204からの転写スタンパ407の剥離が適切に制御されてもよい。このような簡素化された手法も以下に説明される実施形態に好適に適用される。
【0030】
特許文献2は、4つの情報層を有する4層構造の情報記録媒体を提案する。4層構造の情報記録媒体の樹脂中間層それぞれは、他の層との干渉を軽減するために、異なる厚さを有する。スピンコート法によって形成された樹脂中間層の厚さは、上述の如く、放射線硬化性樹脂の粘度、スピン回転の回転数、スピン回転の回転時間やスピン回転させている間の周囲の雰囲気(例えば、温度や湿度)が任意に設定されることにより、所望の寸法となるように制御される。従来技術において、4層構造の情報記録媒体のように異なる厚さを有する樹脂層の形成には、一般的にスピンコート法が適用される。
【0031】
Blu−rayディスクに対しても、更なる大容量化が求められている。例えば、100GBの容量を達成する3層の情報層を有するメディアや128GBの容量を達成する4層の情報層を有するメディアが提案されている。
【0032】
2層以上の多層化は、図15に関連して説明された中間層(樹脂層411)の形成から第2の情報層206の形成までの工程が、複数回繰り返されることにより達成される。これらの一連の工程が繰り返されることにより、複数の情報層が順次積層される。
【0033】
図16は、図15に関連して説明された中間層(樹脂層411)の形成から第2の情報層206の形成までの工程を複数回繰り返して得られた多層構造のBlu−rayディスクメディアの概略的な断面図である。図16を用いて、多層構造のメディアが有する課題が説明される。
【0034】
図16に示されるメディア500は、約1.1mmの厚さの基板501と、基板501に積層された複数の情報層502,503,504,505とを含む。図16において、符号「502」は、基板501に最も近くに形成された第1の情報層を表す。符号「503」は、第1の情報層502に樹脂層を介して積層された第2の情報層を表す。符号「504」は、第2の情報層503に樹脂層を介して積層された第3の情報層を表す。符号「505」は、基板501から第N番目の第Nの情報層を表す。第1の情報層502、第2の情報層503、第3の情報層504及び第Nの情報層505は、記録再生光506の入射面に向けて順次積層される。メディア500は、第Nの情報層を覆う保護層507を更に備える。保護層507の表面は、記録再生光506の入射面となる。
【0035】
多層構造のメディア500中の全ての情報層502,503,504,505は、先に述べられた如く、ディスクの傾きによる影響を低減するため、保護層507の表面から約0.1mmの厚さ寸法中に形成される。このことは、図16に示される如く、保護層507の表面から、保護層507から最も離れた第1の情報層502までの距離が約0.1mmに制限されることを意味する。
【0036】
3層メディアや4層メディアに求められる記憶容量を達成するために、情報層当たりの記憶容量を、従来の2層メディアと比して、高めることが提案されている。従来の2層メディアは、情報層当たり25GBの容量を有する(即ち、2層合計で、50GB)。例えば、3層メディアで100GBの容量を達成するためには、情報層当たり33.4GBの容量が要求される。また、4層メディアで128GBの容量を達成するためには、情報層当たり、32GBの容量が要求される。
【0037】
従来のBDメディアに用いられたピックアップやシステムとの互換性の観点から、案内溝のピッチ(トラックピッチ)を変更することは好ましくない。したがって、情報層当たりの容量を高めるために線密度の向上が要求される。
【0038】
線密度の向上は、信号マークそれぞれの長さの短縮に帰結する。この結果、従来の2層メディア中の情報層当たりの25GBの密度と較べて、保護層や中間層の厚さの変化に対する記録再生に係る品質の劣化の程度は非常に大きくなる。したがって、多層構造のメディアにおいて、保護層の表面から情報層それぞれまでの厚さに対して、25GBの密度を有する従来のメディアと比して、非常に高い精度が求められる。
【0039】
しかしながら、従来の2層構造から、3層、4層或いはそれ以上の数の層への積層される樹脂層の数が増加していくにつれて、図15に関連して説明された工程に従えば、保護層の表面から情報層それぞれまでの厚さのばらつきが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2002−092969号公報
【特許文献2】特開2004−213720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、多層メディアにおいて樹脂層の積層に起因して悪化しがちな保護層の表面から情報層それぞれまでの厚さ寸法のばらつきを低減し、記録再生に係る品質低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明の一局面に係る第1基準点が形成された基板上にN個の情報層(Nは、3以上の整数)、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、第Nの前記情報層上に積層された保護層と、を含む情報記録媒体を製造する方法は、前記基板上に前記情報層を形成する工程と、前記情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、前記放射線硬化性樹脂を介して、第2基準点が形成された転写スタンパを貼り合わせる工程と、前記放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、前記転写スタンパを前記放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、前記中間層を形成する工程と、を(N−1)回繰り返し、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の前記中間層と、を順次形成した後、第Nの前記情報層を形成する工程と、第Nの前記情報層上に前記保護層を形成する工程と、を含み、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように前記転写スタンパが貼り合わせられることを特徴とする。
【0043】
本発明の他の局面に係る情報記録媒体は、基板と、該基板上に形成されたN個の情報層(Nは、3以上の整数)と、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、保護層と、を備え、前記基板には第1基準点が形成され、前記中間層それぞれには第2基準点が形成され、前記第1基準点に対する第2基準点の位置が、前記中間層それぞれごとに異なることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施形態に係る情報記録媒体として例示される3層Blu−rayディスクの概略的な断面図である。
【図2】図1に示される3層Blu−rayディスクを製造するための中間層形成工程を概略的に示す。
【図3】基板と転写スタンパのチルト差に起因する中間層の厚さ分布を説明する概略的な断面図である。
【図4】転写スタンパのタンジェンシャルチルトを概略的に説明する図である。
【図5】基板と転写スタンパとの貼り合わせ工程を概略的に示す。
【図6】基板の向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図7】転写スタンパの向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図8】基板の向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図9】転写スタンパの向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図10】基板に対する転写スタンパの貼り合わせを概略的に説明する図である。
【図11】転写スタンパのタンジェンシャルチルトを説明するグラフである。
【図12】厚さばらつきの分布を示すグラフである。
【図13】2層Blu−rayディスクの概略的な断面図である。
【図14】スタンパの作製工程を説明する図である。
【図15】スピンコート法に従う樹脂中間層の作成工程と、保護層の作成工程とからなる2層Blu−rayディスクの作成工程を説明する図である。
【図16】多層情報記録媒体の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態に係る情報記録媒体の製造方法及び情報記録媒体が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、単に、以下の実施形態の原理を容易に理解させることを目的とするものであり、以下の実施形態を通じて説明される原理は、これらに何ら限定されるものではない。
【0046】
(情報記録媒体)
図1は、情報記録媒体の概略的な断面図である。本実施形態において、3層の情報層を備える3層Blu−rayディスクが、3層情報記録媒体として例示される。代替的に、情報記録媒体は、3層より多い数の情報層を備える多層情報記録媒体であってもよい。以下に説明される3層情報記録媒体の原理は、多層情報記録媒体にも好適に適用可能である。
【0047】
3層Blu−rayディスク600は、基板601を備える。基板601は、凹凸形状により形成された第1の情報面602を含む。3層Blu−rayディスク600は、第1の情報面602上に積層された金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料を含む第1の情報層603を更に備える。本実施形態において、第1の情報面602は、第1面として例示される。
【0048】
3層Blu−rayディスク600は、第1の情報層603上に形成された第1の中間層604を更に備える。記録再生光に対して略透明な第1の中間層604は、凹凸形状からなる第2の情報面605を含む。3層Blu−rayディスク600は、第2の情報面605上に積層された金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料を含む第2の情報層606を更に備える。
【0049】
3層Blu−rayディスク600は、第2の情報層606上に形成された第2の中間層607を更に備える。記録再生光に対して略透明な第2の中間層607は、凹凸形状からなる第3の情報面608を含む。3層Blu−rayディスク600は、第3の情報面608上に積層された金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料を含む第3の情報層609を更に備える。
【0050】
3層Blu−rayディスク600は、第3情報層609を覆う保護層610を含む。保護層610は、第3の情報層609をコーティングする記録再生光に対して略透明な樹脂を含む。上述の如く、本実施形態において、基板601上には、3個の情報層(第1の情報層603、第2の情報層606、第3の情報層609)が形成される。代替的に、N個の情報層(Nは、3以上の整数)が、基板601上に形成されてもよい。また、本実施形態において、基板601上には、3個の情報層(第1の情報層603、第2の情報層606、第3の情報層609)を隔てる2つの中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)が形成される。代替的に、N個の情報層(Nは、3以上の整数)が基板601上に形成されるならば、(N−1)個の中間層が形成される。
【0051】
上述の「略透明」との用語は、層が記録再生光に対して約90%以上の透過率を有することを意味する。また、上述の「半透明」との用語は、層が記録再生光に対して10%以上90%以下の透過率を有することを意味する。
【0052】
記録再生光として用いられるレーザ光は、保護層610を通じて、3層Blu−rayディスク600内に入射する。3層Blu−rayディスク600内に入射されたレーザ光の焦点は、第1の情報層603、第2の情報層606、第3の情報層609のうちいずれか1つ(記録再生の対象となる情報層)に合わせられる。この結果、焦点を合わせられた情報層(第1の情報層603、第2の情報層606又は第3の情報層609)に対して、信号の記録及び/又は再生がなされる。本実施形態において、基板601は、約1.1mmの厚さに設定される。第1の中間層604及び第2の中間層607は、それぞれ約25μm及び約18μmの厚さに設定される。保護層610は、約57μmの厚さに設定される。代替的に、第1の中間層604、第2の中間層607及び保護層610の厚さは、他の値に設定されてもよい。
【0053】
基板601は、CDやDVDといった光ディスクと形状的な互換性を有するように形成される。基板601は、例えば、外径φ120mm、中心孔径φ15mm、厚さ1.0mm〜1.1mmであってもよい。基板601は、典型的には、ポリカーボネートやアクリル系樹脂からなる円板であってもよい。
【0054】
基板601は、図14に関連して説明された金属スタンパ309を用いて、射出成形法といった適切な樹脂成形技術によって、形成されてもよい。この結果、金属スタンパ309の製造過程で規定されたパターン305に従う凹凸で形成された案内溝などを含む第1の情報面602が形成される。また、基板601の内周部には、視認可能な文字情報が記録される。したがって、基板601の固体番号が目視で確認される。本実施形態において、文字情報の開始位置は、基板601の第1基準点として例示される。また、本実施形態において、基板601は、ポリカーボネートを用いて作成される。
【0055】
情報記録媒体が、再生専用媒体であるならば、第1の情報層603は、少なくとも再生光を反射する特性を有すればよい。第1の情報層603は、例えば、Al、Ag、Au、Si、SiO2、TiO2といった反射材料を用いて、スパッタリングや蒸着といった方法を用いて形成される。
【0056】
情報記録媒体が、記録可能媒体であるならば、記録光の照射によって情報が第1の情報層603に書き込まれる。したがって、第1の情報層603は、少なくとも、記録材料(例えば、GeSbTeといった相変化材料やフタロシアニンといった有機色素)からなる層を含む。必要に応じて、第1の情報層603は、反射層や界面層といった記録再生特性を向上させるための層を含んでもよい。
【0057】
第2の情報層606及び第3の情報層609は、第1の情報層603と同様に形成される。上述の如く、3層Blu−rayディスク600に対する記録再生は、保護層610から情報層(第1の情報層603、第2の情報層606又は第3の情報層609)に入射されたレーザ光によりなされる。したがって、第2の情報層606及び第3の情報層609は、第1の情報層603に対して記録再生を行うための記録再生光の波長に対して高い透過率を有する。同様に、第3の情報層609は、第2の情報層606に対して記録再生を行うための記録再生光の波長に対しても高い透過率を有する。
【0058】
第1の中間層604及び第2の中間層607は、記録再生光に対して略透明に形成される。例えば、アクリルを主成分とした紫外線硬化性樹脂やエポキシ系の紫外線硬化性樹脂といった放射線硬化性樹脂が第1の中間層604及び第2の中間層607の形成に好適に用いられる。上述の「略透明」との用語は、層が記録再生光の波長に対して90%以上の透過率を有することを意味する。第1の中間層604及び第2の中間層607は、好ましくは、95%以上の透過率を有する材料から形成される。
【0059】
(情報記録媒体の製造方法)
基板601は、上述の如く、図14に関連して説明された金属スタンパ309を用いて、射出成形法といった適切な成形技術に従って成形される。また、第1の情報層603は、スパッタリングや蒸着といった適切な層形成技術を用いて形成される。
【0060】
第1の中間層604の作成方法は、スピンコート法といった適切な塗布手法に従って、液状の放射線硬化性樹脂を第1の情報層603上に塗布する工程を備える。第1の情報層603の厚さは、放射線硬化性樹脂の粘度、スピン回転の回転数、スピン回転の回転時間やスピン回転させている間の放射線硬化性樹脂の周囲の雰囲気(例えば、温度や湿度)といった様々なパラメータを用いて適切に制御される。
【0061】
第1の中間層604の作成方法は、ピットや案内溝などを含む情報面を有する転写スタンパを用いて、第1情報層603を形成する放射線硬化性樹脂に情報面を転写する工程を更に含む。転写スタンパの情報面の転写の結果、第2の情報面605が形成される。尚、転写スタンパは、図14に関連して説明された金属スタンパ309と同様の工程を経て形成されたスタンパを用いて、射出成形法といった適切な成形技術に従って成形される。第2の中間層607は、第1の中間層604と略同様の工程を経て形成される。
【0062】
図2は、第1の中間層604への転写スタンパの情報面の転写工程を例示する。尚、図2に関連して説明される原理は、第2の中間層607への転写スタンパの情報面の転写工程にも同様に適用可能である。図1及び図2を用いて、第1の中間層604への転写スタンパの情報面の転写工程が説明される。
【0063】
上述の如く、基板601の第1の情報面602上に形成された第1の情報層603上に放射線硬化性樹脂703が塗布される。図2(a)に示される如く、放射線硬化性樹脂703の塗布完了後、基板601は、真空チャンバ707中に搬送される。また、転写スタンパ704も真空チャンバ707内に配設される。
【0064】
転写スタンパ704は、放射性硬化樹脂に対する良好な剥離性を有する材料(例えば、ポリオレフィンやポリカーボネート)から形成される。転写スタンパ704は、基板601よりも薄く形成される。例えば、転写スタンパ704は、厚さ0.6mmである。基板601との厚さの相違は、転写スタンパ704と基板601との間の剛性の差に帰結する。厚さ1.1mmの基板601から転写スタンパ704が剥離されるとき、剛性の差異に起因して、転写スタンパ704が反り、剥離が促されることとなる。
【0065】
転写スタンパ704の形成に用いられるポリオレフィンやポリカーボネートといった樹脂材料は、基板601と同様に、ピットや案内溝などを含む情報面745を形成するのに好適である。金属スタンパを用いて、射出成形法といった方法にしたがって、転写スタンパ704の一方の面には、情報面が容易に形成される。
【0066】
加えて、ポリオレフィンやポリカーボネートといった樹脂材料は、紫外線といった放射線に対する高い透過率を有する。したがって、転写スタンパ704を通じて、放射線が照射されると、放射線硬化性樹脂703は効率よく硬化する。
【0067】
転写スタンパ704の中心には、中心穴741が形成される。基板601を支持する支持台742は、センターボス705を備える。支持台742から立設されたセンターボス705は、基板601の中心孔に挿通され、転写スタンパ704に向けて突出する。図2(a)及び図2(b)に示される如く、センターボス705の先端は、転写スタンパ704の中心穴741に挿入される。この結果、転写スタンパ704は、基板601に対して同心となる。
【0068】
転写スタンパ704の内周部にも、基板601と同様に、文字情報が記録される。本実施形態において、転写スタンパ704の内周部に記録された文字情報の開始位置は、転写スタンパの第2の基準点として例示される。
【0069】
ロータリーポンプやターボ分子ポンプといった真空ポンプ708は、真空チャンバ707内の空気を排気する。この結果、真空チャンバ707内は、短時間で真空雰囲気となる。本実施形態において、真空チャンバ707内の圧力が100Pa以下の真空度に達したとき、転写スタンパ704は、基板601に重ね合わせられる(図2(b)参照)。転写スタンパ704の上方に設置された加圧プレート706は、転写スタンパ704を基板601に向けて加圧する。この結果、転写スタンパ704の情報面745が放射線硬化性樹脂703に転写される。真空チャンバ707内が高い真空雰囲気であるので、放射線硬化性樹脂703と転写スタンパ704との間に気泡が混入することなく、放射線硬化性樹脂703を介した転写スタンパ704の貼り合わせがなされることとなる。
【0070】
図2(c)に示される如く、転写スタンパ704が貼り合わせられた基板601は、真空チャンバ707から取り出される。その後、放射線照射装置709によって、転写スタンパ704を通じて、放射線が照射される。この結果、放射線硬化性樹脂703が硬化する。
【0071】
図2(d)に示される如く、その後、転写スタンパ704は、放射線硬化性樹脂703との界面で剥離される。転写スタンパ704の剥離は、転写スタンパ704と放射線硬化性樹脂703との界面に楔を打ち込むことによってなされる。代替的に、転写スタンパ704と放射線硬化性樹脂703との界面に、圧縮空気が吹き込まれることにより、転写スタンパ704が放射線硬化性樹脂703から剥離されてもよい。転写スタンパ704の剥離の結果、第1の情報層603上に積層された第1の中間層604が形成される。また、第1の中間層604の上面には、第2の情報面605が形成される。
【0072】
上述の如く、第2の情報面605上には、スパッタリングや蒸着といった適切な層形成技術に従って、第2の情報層606が形成される。第2の情報層606上に放射線硬化性樹脂が塗布された後、再度、真空チャンバ内に基板601が搬送される。真空チャンバ内が真空雰囲気にされた後、放射線硬化性樹脂に転写スタンパが貼り合わされる。その後、転写スタンパを介して、放射線照射がなされ、第2の情報層606上の放射線硬化性樹脂が硬化する。放射線硬化性樹脂の硬化の後、転写スタンパが硬化した放射線硬化性樹脂の層から剥離され、第2の中間層607が形成される。第2の中間層607の上面には、第3の情報面608が形成される。第3の情報面608上には、スパッタリングや蒸着といった適切な層形成技術に従って、第3の情報層609が形成される。
【0073】
第2の中間層607を形成するのに用いられた転写スタンパの内周部にも、基板601や第1の中間層604を形成するのに用いられた転写スタンパ704と同様に、文字情報が記録される。本実施形態において、第2の中間層607を形成するのに用いられた転写スタンパの内周部に記録された文字情報の開始位置も、転写スタンパの第2基準点として例示される。また、第1の中間層604及び第2の中間層607に転写された文字情報の開始位置も第2基準点として例示される。
【0074】
上述の如く、3層Blu−rayディスク600の作成において、情報層を形成する工程と、情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程と、放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、転写スタンパを放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、中間層を形成する工程とが2回繰り返され、2個の情報層(第1の情報層603、第2の情報層606)と、2個の中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)とが順次形成される。その後、第3の情報層609が形成される。
【0075】
N個の情報層を備えるN層Blu−rayディスクの作成においては、上述の一連の工程が(N−1)回繰り返され、(N−1)個の情報層と、(N−1)個の中間層とが、順次形成されることとなる。その後、第Nの情報層が形成される。(N−1)個の中間層を形成するのに用いられる転写スタンパそれぞれの内周部には、文字情報が記録される。したがって、(N−1)個の中間層それぞれには、転写スタンパそれぞれの文字情報が記録される。
【0076】
図1を再度用いて、保護層610並びに保護層610の作成方法が説明される。
【0077】
保護層610は、記録再生光に対して略透明な材料(例えば、アクリルを主成分とする紫外線硬化性樹脂やエポキシ系の紫外線硬化性樹脂といった放射線硬化性樹脂)から形成される。上述の「略透明」との用語は、層が記録再生光の波長に対して90%の透過率を有することを意味する。好ましくは、95%以上の透過率を有する材料が保護層610の形成に用いられる。
【0078】
第3の情報層609の形成の後、保護層610が形成される。保護層610の形成方法として、スピンコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法やインクジェット法といった様々な工法が例示される。代替的に、放射線硬化性樹脂の塗布に代えて、シート状材料が接着剤を介して、第3の情報層609に貼り合わされてもよい。シート状材料は、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂から形成されてもよい。
【0079】
本実施形態に係る3層Blu−rayディスク600に対する記録再生には、波長405nmの青紫レーザが用いられる。保護層610から入射する青紫レーザは、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用いて、第1の情報層603、第2の情報層606及び第3の情報層609から選択された1つの情報層に絞り込まれる。3層Blu−rayディスク600の傾きの影響の軽減のため、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さは、約0.1mmに設定される。代替的に、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さは、他の寸法値に設定されてもよい。保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さに拘わらず、本実施形態の原理は、好適に適用される。
【0080】
上述の説明は、多層情報記録媒体として例示される3層Blu−rayディスク600の構成並びに3層Blu−rayディスク600の製造方法の全体的な概要である。本実施形態は、中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)の形成に特徴づけられる。したがって、以下に詳細に説明される中間層の形成を除く、多層情報記録媒体の構成及び多層情報記録媒体の製造方法に関連する説明は、本実施形態の原理を何ら限定するものではない。
【0081】
(中間層の作製方法)
以下に、多層情報記録媒体の製造方法に関連して、中間層の作製方法が主に説明される。
【0082】
図3は、基板及び基板に貼り合わされた転写スタンパの概略的な断面図である。図2及び図3を用いて、図2に関連して説明された基板と転写スタンパとの貼り合わせ工程が内包する課題が説明される。
【0083】
図3に示される如く、基板801上に放射線硬化性樹脂802が塗布されている。転写スタンパ803は、図2に関連して説明された如く、真空チャンバ707内で貼り合わされる。図3は、真空チャンバ707から取り出された基板801、放射線硬化性樹脂802及び転写スタンパ803の概略的な断面を例示する。
【0084】
説明の明瞭化のために、図3は、略反りのない基板801(基板801の反り(チルト)は、略0度である)と、反りを有する転写スタンパ803とを示す。図3に示される転写スタンパ803の外周は、基板801から遠ざかるように沿っている。
【0085】
図2に関連して説明された加圧プレート706は、真空チャンバ707内で、放射線硬化性樹脂802を介して基板801に貼り合わされた転写スタンパ803を加圧する。この結果、真空チャンバ707内において、転写スタンパ803は、ある程度、基板801に対して平行になる。しかしながら、加圧プレート706の加圧が解除されると、基板801及び転写スタンパ803の剛性に起因して、基板801及び転写スタンパ803に復元力が作用する。
【0086】
図3に示される如く、基板801と転写スタンパ803との間で反りに差異が存するならば、基板801及び転写スタンパ803に作用する復元力に起因して、基板801と転写スタンパ803との間の放射線硬化性樹脂802の層の厚さが変化する。転写スタンパ803の外周に近づくにつれて、転写スタンパ803は基板801から遠ざかるように反っている。したがって、放射線硬化性樹脂802の層は、転写スタンパ803の外周に近づくにつれて厚くなる。
【0087】
図3は、半径方向のチルト(ラジアルチルト)の差に起因する放射線硬化性樹脂802の厚さに対する影響を示している。図3に関連して説明された放射線硬化性樹脂802の厚さに対する影響は、基板801と転写スタンパ803との間で周方向のチルト(タンジェンシャルチルト)に差が存するときも同様に現れる。
【0088】
図3に示される如く、基板801と転写スタンパ803との間のチルトの関係によって、基板801と転写スタンパ803との貼り合わせによって形成される中間層(放射線硬化性樹脂802の層)の厚さ分布が変動する。
【0089】
図1に関連して説明された3層Blu−rayディスク600は、第1の中間層604と、第1の中間層604上で積層された第2の中間層607とを備える。第1の中間層604の厚さ分布と第2の中間層607の厚さ分布の重なり方によって、保護層610の表面から、第1の情報層603、第2の情報層606及び第3の情報層609それぞれまでの厚さが大きく変化する。理想的には、基板801と転写スタンパ803とを貼り合わせる工程において、基板801と転写スタンパ803とが貼り合わされるときの基板801の貼り合わせ面と転写スタンパ803の貼り合わせ面とができる限り平行であることが好ましい。
【0090】
しかしながら、射出成形によって成形された基板801及び/又は転写スタンパ803の形状特性は、これらを製造する成形機に依存する。したがって、成形機によって定められる条件(例えば、金型の冷却水路の構造)や成形条件(金型の温度設定や成形タクト)によって、基板801及び/又は転写スタンパ803のチルトが発生する。かくして、基板801及び転写スタンパ803それぞれの貼り合わせ面が平行となるように、これらの形状を制御することは、非常に困難である。一方で、同一の成形機を用いて、同一成形条件の下、基板801及び/又は転写スタンパ803が製造されるならば、これらは、成形機及び成形条件に依存する特定のチルトパターンを有することとなる。
【0091】
上述の如く、基板801及び/又は転写スタンパ803のチルトのパターンは、これらの内周から外周に向かって半径方向に反るラジアルチルトと、これらの周方向に反るタンジェントチルトとを含む。ラジアルチルトは、成形機の金型温度の調整により、ある程度、コントロール可能である。したがって、転写スタンパ803が貼り合わされる基板801のラジアルチルトに合わせて、転写スタンパ803を製造する成形機の金型温度が調整されてもよい。転写スタンパ803を製造する成型機の金型温度の調整を通じて、基板801の貼り合わせ面と転写スタンパ803の貼り合わせ面とが略平行となるように、転写スタンパ803のラジアルチルトが調整される。かくして、ラジアルチルトに起因する中間層の厚さの変動は、成形機の金型温度の調整によって改善される。
【0092】
しかしながら、金型温度の調整のみによって、タンジェンシャルチルトを制御することは困難である。したがって、基板801の形状に適合するように転写スタンパ803の形状を制御することは、現実的ではない。加えて、転写スタンパ803は、中間層との剥離を促すため、基板801と較べて薄く形成される(例えば、基板801の厚さが1.1mmであるのに対して、転写スタンパ803の厚さは0.6mmに設定される)。薄い転写スタンパ803ほどタンジェンシャルチルトは生じやすくなる。かくして、基板801に対して平行となるように形状制御された転写スタンパ803を成形することは困難である。
【0093】
したがって、転写スタンパ803の反り形状は、金型温度の調整を通じてコントロールされたラジアルチルトに重畳された特定のタンジェンシャルチルトのパターン(成形機の構造に依存する条件や転写スタンパ803の成形パラメータによって定まる特定のタンジェンシャルチルトのパターン)を有する。
【0094】
図4は、タンジェントチルトのパターンを例示する。図4(a)は、タンジェントチルトのパターンに従って反った円板の概略的な斜視図である。図4(b)は、図4(a)に示される円板のタンジェントチルトを表すグラフである。図4を用いて、タンジェントチルトのパターンが説明される。
【0095】
図4(a)の円板Eには、基準点が設けられている。円板E中の基準点の位置は、「0時の方向」として定義される。円板Eの基準点から90°だけ角変位された位置は、「3時の方向」として定義される。円板Eの基準点から180°だけ角変位された位置は、「6時の方向」として定義される。円板Eの基準点から270°だけ角変位された位置は、「9時の方向」として定義される。
【0096】
図4(a)の円板E上には、時計周りに周回する矢印Aが示されている。矢印Aの進行方向に進むにつれて、円板Eの上面が下方に傾斜しているならば、円板Eのタンジェントチルトは「マイナス方向のタンジェントチルト」として定義される。矢印Aの進行方向に進むにつれて、円板Eの上面が上方に傾斜しているならば、円板Eのタンジェントチルトは「プラス方向のタンジェントチルト」として定義される。尚、円板Eは、図1に関連して説明された3層Blu−rayディスク600を作製するために用いられる転写スタンパと同様に60mmの半径を有する。
【0097】
図4(b)は、上述の定義に従って描かれた円板Eのタンジェントチルトのグラフである。図4(b)のグラフは、円板Eの外縁に沿って測定された円板Eのチルトの変動を示している。
【0098】
「0時の方向」から「3時の方向」の間の円板Eの上面は、下方に傾斜している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「0時の方向」から「3時の方向」の間で「マイナス方向のタンジェントチルト」を示している。円板Eの「3時の方向」において、円板Eの上面の傾斜は、矢印Aの方向に進むに従って、「下方」から「上方」へと変化している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「3時の方向」において、「0」の値を示している。
【0099】
「3時の方向」から「6時の方向」の間の円板Eの上面は、上方に傾斜している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「3時の方向」から「6時の方向」の間で「プラス方向のタンジェントチルト」を示している。円板Eの「6時の方向」において、円板Eの上面の傾斜は、矢印Aの方向に進むに従って、「上方」から「下方」へと変化している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「6時の方向」において、「0」の値を示している。
【0100】
「6時の方向」から「9時の方向」の間の円板Eは、「0時の方向」から「3時の方向」の間の円板Eのタンジェントチルトと同様のタンジェントチルトを有する。また、「9時の方向」から「0時の方向」の間の円板Eは、「3時の方向」から「6時の方向」の間の円板Eのタンジェントチルトと同様のタンジェントチルトを有する。
【0101】
図4(b)のグラフは、2つの山と2つの谷とを有する略サインカーブを描く。本実施形態の原理は、他の形状の曲線で表現されるタンジェントチルトのパターンを有する転写スタンパにも適用される。したがって、本実施形態の原理が適用可能なタンジェントチルトのパターンは、「0時の方向」、「3時の方向」、「6時の方向」及び/又は「9時の方向」において、「0度」とならなくともよい。転写スタンパを製造するための成形機及び成形機に適用される成形条件によっては、タンジェントチルトのパターンを表すカーブの山と谷の位置がずれることもある。しかしながら、同一の成形機を用いて、同一の成形条件下で、転写スタンパが製造されるならば、基準点に対するタンジェントチルトのパターンの山の位置並びに谷の位置は、略一定である。同一の成形機を用いて、同一の成形条件下で成形された転写スタンパに記録された文字情報の開始位置が「0時の方向」として定義されるとき、「0時の方向」、「3時の方向」(「0時の方向」から90度だけ角変位された位置)、「9時の方向」(「0時の方向」から180度だけ角変位された位置)、「6時の方向」(「0時の方向」から180度だけ角変位された位置)、「9時の方向」(「0時の方向」から180度だけ角変位された位置)におけるタンジェントチルトは、転写スタンパ間で略一定である。
【0102】
図3に関連して説明された如く、基板801(厚さ1.1mm)は、転写スタンパ803と較べて厚い。したがって、転写スタンパ803のタンジェンシャルチルトの変動と較べて、基板801のタンジェントチルトの変動は小さい。基板801と転写スタンパ803とが貼り合わされたとき、基板801と転写スタンパ803との間の放射線硬化性樹脂802から形成される中間層には、基板801と転写スタンパ803との間のタンジェントチルトの差に応じた厚さ分布が現れることとなる。
【0103】
図1に関連して説明された3層Blu−rayディスク600は、基板601上に積層された第1の中間層604、第2の中間層607及び保護層610を備える。基板601と転写スタンパ704との間のタンジェントチルトの差に起因する厚さ分布は、第1の中間層604及び第2の中間層607に現れる。第1の中間層604の比較的厚い部位が第2の中間層607の比較的厚い部位に重ねられるとともに第1の中間層604の比較的薄い部位が第2の中間層607の比較的薄い部位に重ねられるならば、第1の中間層604と第2の中間層607とを含む中間層には、より強調された厚さ分布が現れることとなる。この結果、3層Blu−rayディスク600の保護層610の表面から第1の情報層603及び第2の情報層606それぞれまでの厚さは大きく変動することとなる。特に、保護層610の表面から最も離れた第1の情報層603までの厚さの変動が大きくなる。
【0104】
本実施形態において、第1の中間層604の比較的厚い部位が第2の中間層607の比較的厚い部位に重ならないように、且つ、第1の中間層604の比較的薄い部位が第2の中間層607の比較的薄い部位に重ならないように、基板601に貼り合わされるときの転写スタンパ704の向きが制御される。
【0105】
図5は、基板601と転写スタンパ704との貼り合わせ工程を概略的に示す。図1、図2及び図5を用いて、基板601と転写スタンパ704との貼り合わせ工程が説明される。
【0106】
上述の如く、基板601は、成形機(図示せず)を用いて、射出成形される。成形機は、基板601の内周部に文字情報を記録する。したがって、基板601に形成された文字情報の開始位置は、成形機によって規定される。本実施形態において、基板601を成形する成形機は、基板製造装置として例示される。また、文字情報は、第1基準位置情報として例示される。
【0107】
基板601が転写スタンパ704と貼り合わされる前に、基板601は、成膜装置(図示せず)に投入され、第1の情報層603が形成される。図5には、第1の情報層603が形成された後の基板601が示されている。
【0108】
図5には、図2に関連して説明された真空チャンバ707に加えて、真空チャンバ707に向けて基板601を搬送する第1搬送装置720と、真空チャンバ707に向けて移動する基板601の向きを調整する基板601用の方向調整装置725とが示されている。上述の如く、第1の情報層603が形成された後、基板601は第1搬送装置720によって、真空チャンバ707へ搬送される。上述の如く、第1の情報層603は、スパッタ装置を用いて、成膜される。また第1の情報層603上に放射線硬化性樹脂704がスピンコート法などを用いて塗布される。したがって、基板601は、第1の情報層603が形成される間、および、放射線硬化性樹脂704が塗布される間、回転される。この結果、方向調整装置725を通過する前において、基板601の向き(基板601の中心点から基板601に記録された文字情報の開始位置に向かう方向)は、一定ではない。
【0109】
図6は、基板601用の方向調整装置725を概略的に示す。図1、図2、図5及び図6を用いて、基板601の方向調整が説明される。
【0110】
方向調整装置725は、第1搬送装置720によって搬送された基板601を支持する支持部材726と、支持部材726を回転させる回転シャフト727とを備える。図6に示される如く、基板601の内縁621の近傍の内周部に文字情報C1が記録されている。回転シャフト727の回転方向において先頭に位置する文字情報C1の端部は、文字情報C1の開始位置R1となる。支持部材726は、文字情報C1よりも基板601の中心領域を支持する。回転シャフト727は、基板601と略同心回転する。本実施形態において、文字情報C1の開始位置R1は、第1基準点として例示される。
【0111】
方向調整装置725は、文字情報C1の回転軌跡の下方に配設される光学顕微鏡728を更に備える。基板601は、第1の情報層603が積層された面と反対側の面622を含む。光学顕微鏡728は、面622を介して、文字情報C1を読み取る。本実施形態において、面622は、第1の情報面602と反対側の第2面として例示される。
【0112】
第1の情報層603には、面622から入射された光を反射する反射膜が形成される。したがって、光学顕微鏡728は、面622に照射された光に対する反射膜からの反射光を通じて、文字情報C1を容易に読み取ることができる。文字情報C1の読取によって、文字情報C1の開始位置R1が識別される。回転シャフト727は、識別された文字情報C1の開始位置R1が所定の位置に移動するように回転する。この結果、方向調整装置725から排出された基板601の文字情報C1の位置は、略一定に位置決めされる。文字情報C1の位置が一定となるように位置調整された基板601は、その後、真空チャンバ707内で転写スタンパ704と貼り合わせられる。本実施形態において、真空チャンバ707は、貼り合わせ位置として例示される。
【0113】
図5には、真空チャンバ707、第1搬送装置720及び方向調整装置725に加えて、第1の中間層604を形成するための転写スタンパ704を搬送する第2搬送装置730及び転写スタンパ704用の方向調整装置735が示されている。
【0114】
転写スタンパ704は、成形機(図示せず)を用いて、射出成形される。成形機は、転写スタンパ704の内周部に文字情報を記録する。したがって、転写スタンパ704に形成された文字情報の開始位置は、成形機によって規定される。本実施形態において、転写スタンパ704を成形する成形機は、転写スタンパ製造装置として例示される。また、転写スタンパ704に記録された文字情報は、第2基準位置情報として例示される。
【0115】
成形機によって成形された転写スタンパ704は第2搬送装置730によって、真空チャンバ707へ搬送される。方向調整装置735は、第2搬送装置730によって搬送される転写スタンパ704の向き(転写スタンパ704の中心点から転写スタンパ704に記録された文字情報の開始位置に向かう方向)を調整する。
【0116】
図7は、転写スタンパ704用の方向調整装置735を概略的に示す。図1、図2、図5乃至図7を用いて、転写スタンパ704の方向調整が説明される。
【0117】
方向調整装置735は、第2搬送装置730によって搬送された転写スタンパ704を支持する支持部材736と、支持部材736を回転させる回転シャフト737とを備える。図7に示される如く、転写スタンパ704の内縁721の近傍の内周部に文字情報C2が記録されている。回転シャフト737の回転方向において先頭に位置する文字情報C2の端部は、文字情報C2の開始位置R2となる。支持部材736は、文字情報C2よりも転写スタンパ704の中心領域を支持する。回転シャフト737は、転写スタンパ704と略同心回転する。本実施形態において、文字情報C2の開始位置R2は、第2基準点として例示される。
【0118】
方向調整装置735は、光学顕微鏡738を更に備える。転写スタンパ704は、基板601と異なり、反射膜を備えない。したがって、文字情報C2を読み取るために、転写スタンパ704の面に対して、斜めから単色光を照射する光源739と、転写スタンパ704の直上から文字情報C2を読み取る光学顕微鏡738とが用意される。光源739から照射された単色光によって、光学顕微鏡738は、比較的高い精度で文字情報C2を読み取ることができる。本実施形態において、光学顕微鏡738は、転写スタンパ704の表面に対する凹凸形状で表現された文字情報に斜めから照射された単色光を利用して、文字情報L2を読み取る。代替的に、転写スタンパ704に記録された文字情報L2を読取可能な他の手法が用いられてもよい。
【0119】
文字情報C2の読取によって、文字情報C2の開始位置R2が識別される。回転シャフト737は、識別された文字情報C2の開始位置R2が所定の位置に移動するように回転する。この結果、方向調整装置735から排出された転写スタンパ704の文字情報C2の位置は、略一定に位置決めされる。文字情報C2の位置が一定となるように位置調整された転写スタンパ704は、その後、真空チャンバ707内で基板601と貼り合わせられる。
【0120】
基板601と転写スタンパ704との貼り合わせは、図2に関連して説明された工程に従う。基板601と転写スタンパ704との貼り合わせの後、第1搬送装置720は、真空チャンバ707から基板601を排出する。図2に関連して説明された如く、その後、転写スタンパ704は、基板601から剥離され、第1の中間層604が形成される。第1の中間層604が形成された後、基板601は、成膜装置(図示せず)に投入され、第2の情報層606が形成される。
【0121】
図8は、第2の情報層606が形成された後の基板601に対して方向調整を行う方向調整装置755を概略的に示す。図1、図2、図5、図6及び図8を用いて、基板601に対する方向調整が説明される。
【0122】
第1搬送装置720は、第2の情報層606の形成の後、放射線硬化性樹脂が塗布された後、基板601を方向調整装置755へ搬送する。方向調整装置755は、図6に関連して説明された方向調整装置725と略同様の構造を有する。
【0123】
方向調整装置755は、第1搬送装置720によって搬送された基板601を支持する支持部材756と、支持部材756を回転させる回転シャフト757と、文字情報C1を読み取るための光学顕微鏡758とを備える。光学顕微鏡758は、図6に関連して説明された光学顕微鏡728と同様に、文字情報C1の回転軌跡の下方に配設される。
【0124】
上述の如く、第1の情報層603には、面622から入射された光を反射する反射膜が形成される。したがって、光学顕微鏡758は、面622に照射された光に対する反射膜からの反射光を通じて、文字情報C1を容易に読み取ることができる。即ち、第1の情報層603は、第2の情報層606や第3の情報層609に比べ高い反射率を有しているため、面622側から文字情報を読み取ることによって文字情報C1だけが光学顕微鏡758で観測される。第1の中間層604及び第2の情報層606よりも光学顕微鏡758の近くに位置する第1の情報層603からの反射光に基づき、文字情報C1が読み取られるので、第1の情報層603上に積層された第1の中間層604及び第2の情報層606は、文字情報C1の読取にはほとんど影響しない。
【0125】
図9は、第1の中間層604を形成するために用いられる転写スタンパ704の方向調整と、第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパの方向調整との差異を示す。図9(a)は、図7に関連して説明された方向調整装置735を示す。図9(b)は、第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパの方向調整を行う方向調整装置を示す。図1、図2、図5、図7及び図9を用いて、第1の中間層604を形成するために用いられる転写スタンパ704の方向調整と、第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパの方向調整との差異が説明される。
【0126】
第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパ774は、上述の如く、第2の情報層606上に塗布された放射線硬化性樹脂の層を介して、基板601に貼り合わされる。図9(b)に示される方向調整装置775は、基板601に貼り合わされる前の転写スタンパ774の向き(転写スタンパ774の中心点から転写スタンパ774に記録された文字情報C3の開始位置R3に向かう方向)を調整する。
【0127】
方向調整装置775は、図7に関連して説明された方向調整装置735と略同様の構造を備える。方向調整装置775は、転写スタンパ774を支持する支持部材776と、支持部材776を回転させる回転シャフト777と、転写スタンパ774の内縁771の近傍の内周部に記録された文字情報C3を読み取る光学顕微鏡778と、転写スタンパ774に形成された文字情報C3の読み取りを補助するように単色光を転写スタンパ774の面に対して斜めから照射する光源779とを備える。回転シャフト777の回転方向において先頭に位置する文字情報C3の端部は、文字情報C3の開始位置R3となる。支持部材776は、文字情報C3よりも転写スタンパ774の中心領域を支持する。回転シャフト777は、転写スタンパ774と略同心回転する。本実施形態において、文字情報C3の開始位置R3は、第2基準点として例示される。
【0128】
光学顕微鏡778は、図7に関連して説明された方向調整装置735の光学顕微鏡738と同様に、転写スタンパ774の表面に対する凹凸形状で表現された文字情報に斜めから照射された単色光を利用して、文字情報C3を読み取る。
【0129】
図9に示される如く、方向調整装置775の回転シャフト777に対する光学顕微鏡778の位置関係(図9(b)参照)は、方向調整装置735の回転シャフト737に対する光学顕微鏡738の位置関係(図9(a)参照)と略等しい。図9(a)に示される如く、方向調整装置735の回転シャフト737は、転写スタンパ704上の文字情報C2の開始位置R2を識別した後、角度αだけ回転し、その後、停止する。図9(b)に示される如く、方向調整装置775の回転シャフト777は、転写スタンパ774上の文字情報C3の開始位置R3を識別した後、角度βだけ回転し、その後、停止する。
【0130】
図10は、中間層作製工程における基板601と、転写スタンパ704,774との貼り合わせを概略的に示す。図10(a)は、第1の中間層604の作製時における基板601と転写スタンパ704との貼り合わせを示す。図10(b)は、第2の中間層607の作製時における基板601と転写スタンパ774との貼り合わせを示す。図1、図6、図8乃至図10を用いて、基板601と転写スタンパ704,774との貼り合わせが説明される。
【0131】
図6及び図8に関連して説明された方向調整装置725,755それぞれは、文字情報C1の開始位置R1が「0時の方向」に配設されるように基板601の向きを調整する。図9(a)に示された転写スタンパ704上に記録された文字情報C2の開始位置R2が検出されてから、角度αだけ、回転したとき、文字情報C2の開始位置R2は、「0時の方向」に配設される。したがって、転写スタンパ704上の文字情報C2の開始位置R2は、基板601上の文字情報C1の開始位置R1に重なり合う。
【0132】
本実施形態において、図9に関連して説明された方向調整装置775の回転シャフト777の回転の角度βは、方向調整装置735の回転シャフト737の回転の角度αより90度だけ大きい。したがって、転写スタンパ774が基板601に貼り付けられるとき、転写スタンパ774上の文字情報C3の開始位置R3は、基板601の文字情報C1の開始位置R1に対して、90度だけ角変位した位置(3時の方向)となる。この結果、第1の中間層604の比較的厚い部位が第2の中間層607の比較的厚い部位に重ねられることが好適に抑制される。また、第1の中間層604の比較的薄い部位が第2の中間層607の比較的薄い部位に重ねられることも好適に抑制される。かくして、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さのばらつきが大きくなることが抑制される。
【0133】
上述の如く、3層の情報層(第1の情報層603,第2の情報層606,第3の情報層609)を有する3層Blu−rayディスク600中において、基板601に記録された文字情報C1の開始位置R1に対する第1の中間層604の文字情報C2の開始位置R2の向きは、基板601に記録された文字情報C1の開始位置R1に対する第2の中間層607の文字情報C3の開始位置R3の向きと異なる。N層の情報層を有する多層情報記録媒体の製造においては、中間層を形成する転写スタンパの方向調整工程を通じて、転写スタンパが中間層の形成ごとに異なる向きに設定される。
【0134】
以下に示される表1は、第2の中間層607が作製されるときの基板601に対する転写スタンパ774の貼り合わせ方向の影響を示す。図10に示される如く、第1の中間層604が作製されるときの基板601に対する転写スタンパ704の貼り合わせ方向は、転写スタンパ704上の文字情報C2の開始位置R2が、基板601上の文字情報C1の開始位置R1に重なり合うように定められた。以下の説明において、第1の中間層604の作製に用いられる転写スタンパ704は、第1の転写スタンパ704と称される。また、第2の中間層607の作製に用いられる転写スタンパ774は、第2の転写スタンパ774と称される。
【0135】
3層Blu−rayディスク600中の第1の中間層604の厚さは、約25μmとなるように設計された。3層Blu−rayディスク600中の第2の中間層607の厚さは、約18μmとなるように設計された。3層Blu−rayディスク600中の保護層610の厚さは、約57μmとなるように設計された。
【0136】
半径23mmから半径24mmの範囲における保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さの平均値は、「厚さ基準」として定義された。半径24mmから3層Blu−rayディスク600の外周縁に相当する半径58.2mmまでの範囲において、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さが測定された。測定された厚さ寸法のうち、厚さ基準に対して最もずれている数値が表1にしめされる「厚さばらつき」として記録された。
【0137】
図11は、中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)の作製に用いられた転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)のタンジェントチルトの分布を示す。図11に示されるタンジェントチルトの分布は、半径58mmの位置において測定されたタンジェントチルトの値に基づき作製された。
【0138】
転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)の文字情報C1,C2の開始位置R1,R2がタンジェントチルトの測定の基準点とされた。転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)の文字情報C1,C2の開始位置R1,R2は、図11に示されるグラフ中、「0時の方向」として示されている。
【0139】
図11に示されるように、タンジェントチルトの分布は、1周の測定において、2つの山と2つの谷とを示す。「−0.18度」から「0.19度」のタンジェントチルトの分布範囲を示す転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)が、表1に示されるデータをサンプリングするために用いられた。また、表1に示されるデータをサンプリングするために用いられた転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)のラジアルチルトは、転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)が基板601に対してできるだけ平行となるように調整された。
【0140】
3層Blu−rayディスク600といった100GB容量の3層構造の媒体の場合、情報層当たりの記憶容量は、2層構造の媒体と較べて、増加される。したがって、厚さの変動に起因する球面収差の影響は、記録再生に係る品質に大きな影響を与える。記録再生システムとして問題とならない厚さ変動は、厚さ基準に対して2.5μm以下であることが予め確認された。したがって、2.5μmの厚さ変動が、表1に示される判定の基準とされた。尚、表1中の「厚さばらつき」の欄は、10枚の3層Blu−rayディスク600から得られた厚さばらつきの値の範囲を示している。表1中の「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差を示している。
【0141】
【表1】
【0142】
表1の結果の通り、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3が基板601の文字情報C1の開始位置R1に略一致しているとき(「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄において、「0度」)、或いは、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが180度ずれているとき、第1の中間層604の比較的厚い部位と、第2の中間層607の比較的厚い部位とが重なり合うとともに第1の中間層604の比較的薄い部位と、第2の中間層607の比較的薄い部位とが重なり合った。したがって、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さばらつきは大きくなった。この結果、厚さばらつきは、2.6μm以上となり、目標とする厚さばらつき「2.5μm」は達成されなかった。
【0143】
基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが45度ずれているとき、厚さばらつきは改善された。しかしながら、測定された厚さばらつきは、判定の基準値(2.5μm)近くに分布した。一部の3層Blu−rayディスク600からのデータは、基準値(2.5μm)を越える厚さばらつきを示したが、略判定基準を達成できる水準のデータが確認された。
【0144】
基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが90度ずれているとき、厚さばらつきは大幅改善された。測定に用いられた3層Blu−rayディスク600全てが判定基準(2.5μm)を下回る厚さばらつきを示した。
【0145】
上述の如く、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが90度ずれているとき、厚さばらつきは大幅改善された。本試験において、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、90度ずらされた第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3を更に細かく変更し、「厚さばらつき」が測定された。
【0146】
表2は、「厚さばらつき」の測定結果を示す。表2中の「厚さばらつき」の欄は、10枚の3層Blu−rayディスク600から得られた厚さばらつきの値の範囲を示している。表2中の「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差を示している。表2中で示される判定に対する基準値は、表1に関連して説明された試験と同様に「2.5μm」である。表2中の「90度からの変更割合」の欄は、基板601に対して90度ずらされた第2の転写スタンパ774の位置から変更された角度の割合をパーセンテージで示している。
【0147】
【表2】
【0148】
表2に示される如く、基板601に対して90度ずらされた第2の転写スタンパ774の位置から変更された角度が大きくなるにつれて、厚さばらつきは増大した。基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「81度」(即ち、変更割合が「−10%」)であるときは、試験された3層Blu−rayディスク600全ての厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを下回った。しかしながら、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「81度」を下回ると、一部の3層Blu−rayディスク600の厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを上回った。
【0149】
基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「99度」(即ち、変更割合が「10%」)であるときは、試験された3層Blu−rayディスク600全ての厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを下回った。しかしながら、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「99度」を上回ると、一部の3層Blu−rayディスク600の厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを上回った。
【0150】
したがって、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が90度±10%であるとき、記録再生にほとんど影響を与えない厚みばらつきが得られる。
【0151】
4つの情報層を備える4層情報記録媒体に対して、上述の試験と同様の試験がなされた。
【0152】
4層情報記録媒体中の第1の中間層の厚さは、約15.5μmとなるように設計された。4層情報記録媒体中の第2の中間層の厚さは、約19.5μmとなるように設計された。4層情報記録媒体中の第3の中間層の厚さは、約11.5μmとなるように設計された。4層情報記録媒体中の保護層の厚さは、約53.5μmとなるように設計された。
【0153】
半径23mmから半径24mmの範囲における保護層の表面から第1の情報層までの厚さの平均値は、「厚さ基準」として定義された。半径24mmから4層情報記録媒体の外周縁に相当する半径58.2mmまでの範囲において、保護層の表面から第1の情報層までの厚さが測定された。測定された厚さ寸法のうち、厚さ基準に対して最もずれている数値が表3に示される「厚さばらつき」として記録された。
【0154】
第1の中間層が作製されるときの転写スタンパ(以下、第1の転写スタンパと称される)上の文字情報の開始位置が、基板上の文字情報の開始位置に重なり合うように、第1の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定されるとき、第2の中間層が作製されるときの転写スタンパ(以下、第2の転写スタンパと称される)上の文字情報の開始位置が、基板上の文字情報の開始位置に重なり合うように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の中間層が作製されるときの転写スタンパ(以下、第3の転写スタンパと称される)上の文字情報の開始位置が、基板上の文字情報の開始位置に重なり合うように第3転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0155】
他の4層情報記憶媒体のサンプルにおいて、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第1転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「30度」ずらされるように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「30度」ずらされるように第3の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0156】
更に他の4層情報記憶媒体のサンプルにおいて、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第1転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「60度」ずらされるように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「60度」ずらされるように第3の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0157】
更に他の4層情報記憶媒体のサンプルにおいて、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第1転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「90度」ずらされるように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「90度」ずらされるように第3の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0158】
4層情報記録媒体中の第1の中間層、第2の中間層及び第3の中間層は、図11に関連して説明されたタンジェントチルトの分布を有する第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパを用いてそれぞれ作製された。第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれのタンジェントチルトの分布範囲は、上述の試験と同様に、「−0.18度」から「0.19度」であった。上述の試験と同様に、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれのラジアルチルトは、基板に対してできるだけ平行となるように調整された。
【0159】
以下に示される表3中の「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、第1の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きに対する第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きの角度差を示す。表3中の「第3の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きに対する第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きの角度差を示す。
【0160】
2.5μmの厚さ変動が、同様に、判定の基準とされた。表3中の「厚さばらつき」の欄は、10枚の4層情報記録媒体から得られた厚さばらつきの値の範囲を示している。
【0161】
【表3】
【0162】
表3に示される如く、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が重なり合うとき、保護層表面から第1の情報層までの厚み変動は非常に大きくなった。同様に、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が30度ピッチでずれているときも、保護層表面から第1の情報層までの厚み変動は非常に大きくなった。これらの条件下では、測定された厚さばらつきは、目標とされた「2.5μm」を大幅に上回った。
【0163】
第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が90度ピッチでずれているときは、厚さばらつきは改善されたが、一部の4層情報記録媒体の厚さばらつきは、目標とされた「2.5μm」を上回った。
【0164】
第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が60度ピッチでずれているときは、厚さばらつきは大幅に改善された。全ての4層情報記録媒体の厚さばらつきは、目標とされた「2.5μm」を下回った。かくして、基板、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が60度ピッチでずれているとき、目標が達成された。
【0165】
上述の一連の試験から、転写スタンパ間の文字情報の最適なずれ角θは、以下の数式1で示される。尚、以下の数式中の変数「N」は、情報層の数である。
【0166】
【数1】
θ=180/(N−1)
【0167】
上記の数式に従うと、情報層の数が「3」であるとき、上述の試験に関連して説明された最適なずれ角である「90度」が算出される。情報層の数が「4」であるとき、上述の試験に関連して説明された最適なずれ角である「60度」が算出される。
【0168】
4層情報記憶媒体において、最適なずれ角θである「60度」を中心にずれ角θが細かく変更され、上記の試験と同様に厚さばらつきが調査される。
【0169】
図12は、厚さばらつきの分布を示すグラフである。図12の左側の縦軸は、4層情報記憶媒体の保護層の表面から第1の情報層までの厚さのばらつきを示す。図12の横軸は、基板の文字情報の開始位置に対して、第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差を示す。本試験において、基板の文字情報の開始位置に対する第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が、108度、114度、120度、126度、132度に設定されたときの保護層の表面から第1の情報層までの厚さのばらつきが測定された。これらの角度は、4層情報記憶媒体の最適なずれ角θとなる60度に対して、0%、±10%、±20%だけ変更した角度に相当する。図12の右側の縦軸には、プロットされた点と対応する角度が示されている。本試験において、基板の文字情報の開始位置に対する第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が、48度、54度、60度、66度、72度に設定されたときの保護層の表面から第1の情報層までの厚さのばらつきが測定された。これらの角度は、4層情報記憶媒体の最適なずれ角θとなる60度に対して、0%、±10%、±20%だけ変更した角度に相当する。尚、本試験において、第1の転写スタンパの文字情報の開始位置は、基板の文字情報の開始位置に重ね合わせられた。
【0170】
図12中のプロット点は、各条件において、最も悪い(厚さばらつきが最も大きい)データを表す。図12中の水平線Hは、上述の一連の試験において判断基準として用いられた「2.5μm」の厚さばらつきを表す。
【0171】
図12のグラフから、基板の文字情報の開始位置に対する第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が60度±10%であり、且つ、基板の文字情報の開始位置に対する第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が120度を中心に60度の±10%範囲内であるとき、目標とする「2.5μm」未満の厚さばらつきが達成される。
【0172】
上記の一連の試験から、上記の数式1に基づいて算出されたずれ角を用いて、転写スタンパの向きが設定されることにより、好適な厚さばらつきが得られる。また、転写スタンパの向きに対する設定値に対する±10%のずれ範囲内において、好適な厚さばらつきが維持される。
【0173】
上述の如く、中間層の積層回数に応じて、転写スタンパの向きを基板に対して変更することによって、厚さばらつきが低減される。3層情報記憶媒体の場合、中間層の積層回数は2回である。したがって、上記の数式によって算出される最適なずれ角θは「90度」である。かくして、中間層の積層のたびに転写スタンパの向きが90度ずつ変更されると、良好な厚さばらつきが達成される。4層情報記憶媒体の場合、中間層の積層回数は3回である。したがって、上記の数式によって算出される最適なずれ角θは「60度」である。かくして、中間層の積層のたびに転写スタンパの向きが60度ずつ変更されると、良好な厚さばらつきが達成される。4層を越える数の情報層を備える多層情報記憶媒体においても、上述の原理は好適に適用される。N層情報記憶媒体では、中間層の積層のたびに転写スタンパの向きが180/(N−1)度ずつ変更されると良好な厚さばらつきが達成される。
【0174】
上述された実施形態は、以下の構成を主に備える。
【0175】
上述の実施形態の一局面に係る第1基準点が形成された基板上にN個の情報層(Nは、3以上の整数)、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、第Nの前記情報層上に積層された保護層と、を含む情報記録媒体を製造する方法は、前記基板上に前記情報層を形成する工程と、前記情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、前記放射線硬化性樹脂を介して、第2基準点が形成された転写スタンパを貼り合わせる工程と、前記放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、前記転写スタンパを前記放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、前記中間層を形成する工程と、を(N−1)回繰り返し、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の前記中間層と、を順次形成した後、第Nの前記情報層を形成する工程と、第Nの前記情報層上に前記保護層を形成する工程と、を含み、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように前記転写スタンパが貼り合わせられることを特徴とする。
【0176】
上記構成によれば、第1基準点が形成された基板上に情報層を形成する工程と、情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程と、放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、転写スタンパを放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、中間層を形成する工程とが(N−1)回繰り返される。この結果、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の中間層とが順次形成される。その後、第Nの前記情報層が形成される。第Nの情報層上には、保護層が形成される。放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられる。したがって、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。この結果、1層当たりの記録容量が高くなった多層メディアにおいても記録再生に係る品質低下が抑制された高精度なメディアが提供される。
【0177】
上記構成において、(N−1)個の前記転写スタンパのチルトのパターンは、前記転写スタンパの前記第2基準点が0時の方向として規定されるとき、3時、6時、9時の各方向における相対的なチルト方向が、略同じチルト方向であることが好ましい。
【0178】
上記構成によれば、(N−1)個の転写スタンパのチルトのパターンは、転写スタンパの第2基準点を0時の方向として規定されるとき、3時、6時、9時の各方向における相対的なチルト方向が、略同じチルト方向である。放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられる結果、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0179】
上記構成において、前記転写スタンパのチルトのパターンは、前記転写スタンパの前記第2基準点に対するタンジェンシャルチルトの変動パターンで表されることが好ましい。
【0180】
上記構成によれば、タンジェンシャルチルトの変動パターンで、転写スタンパのチルトのパターンが変動しても、放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられる結果、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0181】
上記構成において、前記転写スタンパの前記第2基準点は、前記転写スタンパを製造する転写スタンパ製造装置によって形成されることが好ましい。
【0182】
上記構成によれば、転写スタンパの第2基準点は、転写スタンパを製造する転写スタンパ製造装置によって規定される。したがって、転写スタンパ製造装置によって規定される転写スタンパのチルトのパターンに対して、略一定の位置に転写スタンパの第2基準点が設けられる。この結果、放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられると、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0183】
上記構成において、前記基板の前記第1基準点は、前記基板を製造する基板製造装置によって形成され、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程は、前記基板の前記第1基準点を読み取る工程と、前記基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、前記基板の前記第1基準点を所定位置に合わせるように前記基板を回転させる工程とを含むことが好ましい。
【0184】
上記構成によれば、基板の第1基準点は、基板を製造する基板製造装置によって形成される。放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程は、基板の第1基準点を読み取る工程と、基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、基板の第1基準点を所定位置に合わせるように、基板を回転させる工程とを含む。基板の第1基準点は、基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、略一定となるので、製造される情報記録媒体の品質が安定することとなる。
【0185】
上記構成において、前記基板は、前記情報層が積層される第1面と、該第1面と反対側の第2面と、を含み、前記基板の前記第1基準点を読み取る工程は、前記第2面側から光を照射し、前記基板を通して前記第1面からの反射光を読み取る工程を含むことが好ましい。
【0186】
上記構成によれば、基板は、情報層が積層される第1面と、第1面と反対側の第2面と、を含む。基板の第1基準点を読み取る工程において、第2面側から光が照射される。基板を通して第1面からの反射光を用いて、第1基準点が適切に読み取られる。
【0187】
上記構成において、前記放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程は、前記転写スタンパの前記第2基準点を読み取る工程と、前記基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、前記基板の第1基準点に対する前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように、前記転写スタンパを回転させる工程と、を含むことが好ましい。
【0188】
上記構成によれば、放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程において、転写スタンパの第2基準点が読み取られる。その後、基板と転写スタンパとの貼り合わせ位置において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる向きとなるように、転写スタンパが回転される。この結果、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0189】
上記構成において、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が、180/(N−1)±10%の範囲でそれぞれずらされるように、前記転写スタンパが前記基板に貼り合わせられることが好ましい。
【0190】
上記構成によれば、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が、180/(N−1)±10%の範囲でそれぞれずらされて、転写スタンパが基板に貼り合わせられる。したがって、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0191】
上述の実施形態の他の局面に係る情報記録媒体は、基板と、該基板上に形成されたN個の情報層(Nは、3以上の整数)と、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、保護層と、を備え、前記基板には第1基準点が形成され、前記中間層それぞれには第2基準点が形成され、前記第1基準点に対する第2基準点の位置が、前記中間層それぞれごとに異なることを特徴とする。
【0192】
上記構成によれば、基板上には、N個の情報層と、情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、保護層とが形成される。基板には第1基準点が形成される。中間層それぞれには、第2基準点が形成される。第1基準点に対する第2基準点の位置が、中間層それぞれごとに異なるので、情報記録媒体内における中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される中間層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。この結果、1層当たりの記録容量が高くなった多層メディアにおいても記録再生に係る品質低下が抑制された高精度なメディアが提供される。
【産業上の利用可能性】
【0193】
上述された実施形態の原理は、多層情報記憶媒体の中間層の厚さを高い精度で制御するために好適に用いられる。上述された実施形態の原理は、特に、100GBの容量を有する3層情報記憶媒体といった多層大容量媒体並びにその製造方法に好適に適用される。
【0001】
本発明は、積層された硬化性樹脂層を含む再生又は記録再生用の情報記録媒体及びその製造方法に関する。より詳しくは、3層以上の情報層を有する情報記録媒体の製造方法及び当該製造方法から製造された情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光学的な情報記録技術の研究の進展の結果、産業用及び民生用の情報記録媒体が広く用いられている。特に、CDやDVDといった高密度に情報を記録することができる光情報記録媒体は、普及している。このような光情報記録媒体は、情報信号を表すピットや記録再生光をトラッキングするための案内溝といった凹凸形状からなる情報面が形成された透明基板と、透明基板上に形成された情報層(例えば、積層された金属薄膜や積層された熱記録可能な薄膜材料)と、情報層を、例えば、大気中の水分から保護するための保護層(例えば、樹脂層や透明基板)とを含む。情報層に照射されたレーザ光の反射光の光量変化の検出により、情報の再生がなされる。
【0003】
例えば、CDの場合、厚さ約1.1mmの樹脂基板が用意される。樹脂基板の一方の面には、凹凸形状を含む情報面が形成されている。樹脂基板上に金属薄膜又は薄膜材料が積層され、情報層が形成される。その後、紫外線硬化性樹脂といった放射線硬化性樹脂が保護層の形成のためにコーティングされ、CDが作製される。情報信号の再生は、保護層側ではなく、基板側から入射されたレーザ光によりなされる。
【0004】
DVDの場合、厚さ約0.6mmの樹脂基板が用意される。樹脂基板には、凹凸形状を含む情報面が形成されている。樹脂基板上に金属薄膜又は薄膜材料が積層され、情報層が形成される。その後、別途用意された厚さ0.6mmの樹脂基板が、紫外線硬化性樹脂といった樹脂を用いて張り合わされ、DVDが作成される。
【0005】
上述の光情報記録媒体に対して、大容量化に対する要望が高まっている。このような要望に応えるべく、多層化された情報層を有するDVDが提案されている。このようなDVDは、2層の情報層と、情報層との間に形成された厚さ約数十μmの中間層と、を備える。
【0006】
更に、近年のデジタルハイビジョン放送の普及に伴って、DVDよりも更に高密度で且つ大容量の次世代光情報記録媒体に対するニーズも高まっている。次世代光情報記録媒体として、Blu−rayディスクといった大容量媒体が提案されている。このような大容量媒体は、凹凸形状を含む情報面を有する厚さ1.1mmの基板と、基板の情報面に、例えば、金属薄膜を積層して形成された情報層と、情報層上に形成された厚さ約0.1mmの保護層と、を含む。Blu−rayディスクは、DVDと較べて、狭い情報層のトラックピッチと、小さなピットとを有する。このため、情報の記録再生を行うためのレーザのスポットは、情報層上で小さく絞られる必要がある。Blu−rayディスクの再生には、短波長の青紫レーザ(波長:405nm)が使用される。また、開口数(NA)が0.85の対物レンズを備える光学ヘッドを用いて、レーザ光のスポットが情報層上で小さく絞り込まれる。しかしながら、スポットが小さくなると、ディスクの傾きによる影響は大きくなる。ディスクの小さな傾きは、ビームスポットの収差を発生させる。ビームスポットの収差に起因して、絞り込まれたビームに歪みが生じ、結果として、記録再生できなくなるといった課題を生ずる。そのため、Blu−rayディスクでは、ディスクのレーザ入射側の保護層の厚さは、非常に薄く(0.1mm程度に)設定され、上述の欠点が補われる。
【0007】
Blu−rayディスクといった大容量の次世代光情報記録媒体においても、DVDと同様に、情報層の多層化による記憶容量の大容量化が提案されている。
【0008】
図13は、2つの情報層を含む2層Blu−rayディスクの概略的な断面図である。図13を用いて、2層Blu−rayディスクが説明される。
【0009】
成形樹脂基板201が用意される。成形樹脂基板201の一方の面には、凹凸形状により第1の情報面202が形成される。第1の情報面202上に金属薄膜又は熱記録可能な薄膜材料が積層され、第1の情報層203が形成される。第1の情報層203上に記録再生光に対して略透明な樹脂層204が形成される。樹脂層204上には、凹凸形状によって第2の情報面205が形成される。第2の情報面205上に、記録再生光に対して半透明な金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料が積層され、第2の情報層206が形成される。そして、第2の情報層206を覆うように記録再生光に対して略透明な樹脂がコーティングされ、保護層207が形成される。尚、ここでいう「略透明」との用語は、層が記録再生光に対して約90%以上の透過率を有することを意味する。また、「半透明」との用語は、層が記録再生光に対して10%以上90%の透過率を有することを意味する。この2層Blu−rayディスクの保護層207の側からレーザ光が入射される。第1の情報層203及び第2の情報層206のうち、記録再生を行うための情報層にレーザ光の焦点が合わせられ、信号の記録及び再生といった動作がなされる。尚、成形樹脂基板201の厚さは、約1.1mmである。また、樹脂中間層(樹脂層204)の厚さは、約25μmに設定される。保護層207の厚さは、約75μmに設定される。
【0010】
図14は、情報記録媒体の成形樹脂基板201を作成するための金属金型として用いられるスタンパの作成工程を概略的に示す。図13及び図14を用いて、上述の2層Blu−rayディスクの一般的な製造方法が説明される。尚、以下に説明される2層Blu−rayディスクの製造方法の原理は、3層以上の情報層を備える多層のBlu−rayディスクにも適用される。
【0011】
図14(a)に示される如く、ガラス盤或いはシリコンウェハといった材料から形成された原盤301上にフォトレジストといった感光材料が塗布され、感光膜302が形成される。その後、感光膜302にレーザ光や電子線といった露光ビーム303が照射され、ピットや案内溝といったパターンの露光が行われる。また、原盤301の識別のために、内周部に文字情報がピット或いは溝の集合体で露光される。
【0012】
図14(b)において、感光膜302中のハッチング領域は、露光ビーム303によって露光された露光部304である。図14(a)に関連して説明された感光膜302への露光ビーム303の照射によって、露光部304からなる潜像が形成される。
【0013】
図14(c)に示される如く、その後、アルカリ現像液といった現像剤を用いて、露光部304が除去される。この結果、原盤301と、原盤301上で感光材によって形成された凹凸状のパターン305とを含む記録原盤306が形成される。また、露光された文字情報は、目視で確認できる文字として原盤301上に形成される。
【0014】
図14(d)に示される如く、その後、スパッタリング法や蒸着法といった薄膜形成技術を用いて、記録原盤306の表面に導電性薄膜307が形成される。
【0015】
図14(e)に示される如く、その後、導電性薄膜307を電極として、金属メッキといった手法を用いて、金属板308が形成される。
【0016】
図14(f)に示される如く、パターン305(感光膜302)と導電性薄膜307との界面で、導電性薄膜307と金属板308とを含む積層体が剥離される。導電性薄膜307の表面に残留する感光材は、例えば、除去材を用いて除去される。その後、積層体に対して、成形機に適合するような内外径を有するディスクに打ち抜き成形が行われ、金属スタンパ309が作成される。金属スタンパ309は、樹脂基板を成形するための金属金型として、その後、用いられる。
【0017】
次に、金属スタンパを用いて、射出成形法といった樹脂成形方法により、樹脂基板が成形される。樹脂基板には、金属スタンパ309の内周部に形成された文字情報も転写される。典型的には、樹脂基板を成形するための成形機に対する金属スタンパ309の位置は、略一定にされる。例えば、金属スタンパ309に形成された文字情報が天の位置となるように、金属スタンパ309は成形機に取り付けられる。この結果、文字情報の記録位置は、常に、成形機の天の方向を指し示すこととなる。以下の実施形態において、基板の文字情報の開始位置は、基板の第1基準点として例示される。
【0018】
樹脂基板の材料として、典型的には、ポリカーボネートといった成形性に優れた材料が用いられる。その後、特許文献1に示されるようなスピンコート法といった樹脂層の形成工程を用いて、樹脂層の積層が行われる。
【0019】
図15は、スピンコート法に従う樹脂中間層(樹脂層204)の作成工程と、保護層207の作成工程とからなる2層Blu−rayディスクの作成工程を示す。図13乃至図15を用いて、2層Blu−rayディスクの作成工程が説明される。
【0020】
図14に関連して説明された工程を経て得られた金属スタンパ309を用いて、射出成形法といった樹脂成形法によって、厚さ約1.1mmの成形樹脂基板201が形成される。上述の如く、成形樹脂基板201の一方の面には、凹凸形状からなるピットや案内溝を用いて形成された第1の情報面202が形成される。第1の情報面202上に金属薄膜や熱記録が可能な薄膜材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法によって、第1の情報層203が形成される。図15(a)に示される如く、第1の情報層203が形成された成形樹脂基板201は、真空吸着といった方法により、回転ステージ403上に固定される。
【0021】
図15(b)に示される如く、回転ステージ403に固定された成形樹脂基板201上の第1の情報層203の所望の半径上に、ディスペンサによって放射線硬化性樹脂A404が同心円状に塗布される。
【0022】
図15(c)に示される如く、回転ステージ403がスピン回転される。この結果、第1の情報層203上の放射線硬化性樹脂A404は、延伸され、樹脂層406となる。樹脂層406の厚さは、放射線硬化性樹脂A404の粘度、スピン回転の回転数、スピン回転の回転時間やスピン回転させている間の放射線硬化性樹脂A404の周囲の雰囲気(例えば、温度や湿度)といった様々なパラメータを用いて、所望の値となるように制御される。スピン回転の停止の後、樹脂層406に放射線照射器405から放射線が照射される。この結果、樹脂層406は硬化する。
【0023】
第2の情報面205を形成するための転写スタンパ407が用意される。転写スタンパ407は、例えば、図14(f)に関連して説明された成形樹脂基板201を成形するための金属スタンパ309を作成するための一連の工程と同様の工程を経て得られた金属スタンパを用いて、射出成形法により成形されてもよい。成形樹脂基板201と同様に、転写スタンパ407の内周部にも文字情報が記録される。以下に説明される実施形態において、転写スタンパ407の文字情報の記録開始位置は、転写スタンパの第2基準点として例示される。
【0024】
図15(d)に示される如く、転写スタンパ407は、真空吸着といった方法を用いて、回転ステージ408上に固定される。回転ステージ408上の転写スタンパ407の所望の半径上に、ディスペンサによって、放射線硬化性樹脂B409が同心円状に塗布される。
【0025】
図15(e)に示される如く、回転ステージ408がスピン回転される。この結果、転写スタンパ407上の放射線硬化性樹脂B409が延伸され、樹脂層411が形成される。樹脂層411の厚さは、上述の樹脂層406の厚さに対する制御と同様に、様々なパラメータの制御を通じて、所望の寸法となるように制御される。回転ステージ408のスピン回転の停止後、樹脂層411に放射線照射器410から放射線が照射される。この結果、樹脂層411は、硬化する。
【0026】
図15(f)に示される如く、樹脂層406が形成された成形樹脂基板201は、回転ステージ413上に固定される。また、回転ステージ413上の成形樹脂基板201上に、放射線硬化性樹脂C412を介して、樹脂層411が形成された転写スタンパ407が重ねられる。尚、樹脂層411が樹脂層406に対向するように、転写スタンパ407は成形樹脂基板201に一体化される。
【0027】
図15(g)に示される如く、一体化された成形樹脂基板201と転写スタンパ407とを支持する回転ステージ413がスピン回転される。この結果、放射線硬化性樹脂C412は延伸され、所望の厚さに制御された樹脂層414が形成される。その後、放射線照射器415は、放射線を照射し、樹脂層414を硬化される。この結果、成形樹脂基板201と転写スタンパ407とが結合される。
【0028】
図15(h)に示される如く、放射線硬化性樹脂C412の層の硬化による成形樹脂基板201と転写スタンパ407との一体化の後、転写スタンパ407と樹脂層411との界面で、転写スタンパ407が剥離される。この結果、成形樹脂基板201上に第2の情報面205が形成される。樹脂層411,414,406の積層部は、図13に関連して説明された樹脂層204に相当する。
【0029】
図15(i)に示される如く、この第2の情報面205上に、金属薄膜や熱記録可能な薄膜材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法といった薄膜形成技術に従って、第2の情報層206が形成される。その後、樹脂層406,411,415の形成手法と同様に、第2の情報層206上に放射線硬化性樹脂Dがスピンコート法に従って塗布される。放射線硬化性樹脂Dが延伸された後、放射線が照射され、硬化した保護層207が形成される。必要に応じて、保護層207上に、傷や指紋の付着といった保護層207の表面の欠陥を予防するためのハードコート層が形成されてもよい。このようにして、2層Blu−rayディスクが完成する。尚、図15に関連して説明された放射線硬化性樹脂A404は、好ましくは、第1の情報層203及び/又は樹脂層414との良好な接着性を有する。また、放射線硬化性樹脂B409は、好ましくは、転写スタンパ407に対して良好な剥離性を有するとともに樹脂層414に対して良好な接着性を有する。更に、放射線硬化性樹脂A404,放射線硬化性樹脂B409、放射線硬化性樹脂C412及び放射線硬化性樹脂Dは、記録再生光の波長に対して略透明である。図15に関連して説明された工程において、3種類の放射線硬化性樹脂を用いて樹脂中間層(樹脂層204)が形成されている。しかしながら、例えば、転写スタンパ407の材料を適切に選定することによって、より少ない種類の放射線硬化性樹脂を用いて、樹脂層204からの転写スタンパ407の剥離が適切に制御されてもよい。このような簡素化された手法も以下に説明される実施形態に好適に適用される。
【0030】
特許文献2は、4つの情報層を有する4層構造の情報記録媒体を提案する。4層構造の情報記録媒体の樹脂中間層それぞれは、他の層との干渉を軽減するために、異なる厚さを有する。スピンコート法によって形成された樹脂中間層の厚さは、上述の如く、放射線硬化性樹脂の粘度、スピン回転の回転数、スピン回転の回転時間やスピン回転させている間の周囲の雰囲気(例えば、温度や湿度)が任意に設定されることにより、所望の寸法となるように制御される。従来技術において、4層構造の情報記録媒体のように異なる厚さを有する樹脂層の形成には、一般的にスピンコート法が適用される。
【0031】
Blu−rayディスクに対しても、更なる大容量化が求められている。例えば、100GBの容量を達成する3層の情報層を有するメディアや128GBの容量を達成する4層の情報層を有するメディアが提案されている。
【0032】
2層以上の多層化は、図15に関連して説明された中間層(樹脂層411)の形成から第2の情報層206の形成までの工程が、複数回繰り返されることにより達成される。これらの一連の工程が繰り返されることにより、複数の情報層が順次積層される。
【0033】
図16は、図15に関連して説明された中間層(樹脂層411)の形成から第2の情報層206の形成までの工程を複数回繰り返して得られた多層構造のBlu−rayディスクメディアの概略的な断面図である。図16を用いて、多層構造のメディアが有する課題が説明される。
【0034】
図16に示されるメディア500は、約1.1mmの厚さの基板501と、基板501に積層された複数の情報層502,503,504,505とを含む。図16において、符号「502」は、基板501に最も近くに形成された第1の情報層を表す。符号「503」は、第1の情報層502に樹脂層を介して積層された第2の情報層を表す。符号「504」は、第2の情報層503に樹脂層を介して積層された第3の情報層を表す。符号「505」は、基板501から第N番目の第Nの情報層を表す。第1の情報層502、第2の情報層503、第3の情報層504及び第Nの情報層505は、記録再生光506の入射面に向けて順次積層される。メディア500は、第Nの情報層を覆う保護層507を更に備える。保護層507の表面は、記録再生光506の入射面となる。
【0035】
多層構造のメディア500中の全ての情報層502,503,504,505は、先に述べられた如く、ディスクの傾きによる影響を低減するため、保護層507の表面から約0.1mmの厚さ寸法中に形成される。このことは、図16に示される如く、保護層507の表面から、保護層507から最も離れた第1の情報層502までの距離が約0.1mmに制限されることを意味する。
【0036】
3層メディアや4層メディアに求められる記憶容量を達成するために、情報層当たりの記憶容量を、従来の2層メディアと比して、高めることが提案されている。従来の2層メディアは、情報層当たり25GBの容量を有する(即ち、2層合計で、50GB)。例えば、3層メディアで100GBの容量を達成するためには、情報層当たり33.4GBの容量が要求される。また、4層メディアで128GBの容量を達成するためには、情報層当たり、32GBの容量が要求される。
【0037】
従来のBDメディアに用いられたピックアップやシステムとの互換性の観点から、案内溝のピッチ(トラックピッチ)を変更することは好ましくない。したがって、情報層当たりの容量を高めるために線密度の向上が要求される。
【0038】
線密度の向上は、信号マークそれぞれの長さの短縮に帰結する。この結果、従来の2層メディア中の情報層当たりの25GBの密度と較べて、保護層や中間層の厚さの変化に対する記録再生に係る品質の劣化の程度は非常に大きくなる。したがって、多層構造のメディアにおいて、保護層の表面から情報層それぞれまでの厚さに対して、25GBの密度を有する従来のメディアと比して、非常に高い精度が求められる。
【0039】
しかしながら、従来の2層構造から、3層、4層或いはそれ以上の数の層への積層される樹脂層の数が増加していくにつれて、図15に関連して説明された工程に従えば、保護層の表面から情報層それぞれまでの厚さのばらつきが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2002−092969号公報
【特許文献2】特開2004−213720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、多層メディアにおいて樹脂層の積層に起因して悪化しがちな保護層の表面から情報層それぞれまでの厚さ寸法のばらつきを低減し、記録再生に係る品質低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明の一局面に係る第1基準点が形成された基板上にN個の情報層(Nは、3以上の整数)、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、第Nの前記情報層上に積層された保護層と、を含む情報記録媒体を製造する方法は、前記基板上に前記情報層を形成する工程と、前記情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、前記放射線硬化性樹脂を介して、第2基準点が形成された転写スタンパを貼り合わせる工程と、前記放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、前記転写スタンパを前記放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、前記中間層を形成する工程と、を(N−1)回繰り返し、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の前記中間層と、を順次形成した後、第Nの前記情報層を形成する工程と、第Nの前記情報層上に前記保護層を形成する工程と、を含み、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように前記転写スタンパが貼り合わせられることを特徴とする。
【0043】
本発明の他の局面に係る情報記録媒体は、基板と、該基板上に形成されたN個の情報層(Nは、3以上の整数)と、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、保護層と、を備え、前記基板には第1基準点が形成され、前記中間層それぞれには第2基準点が形成され、前記第1基準点に対する第2基準点の位置が、前記中間層それぞれごとに異なることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施形態に係る情報記録媒体として例示される3層Blu−rayディスクの概略的な断面図である。
【図2】図1に示される3層Blu−rayディスクを製造するための中間層形成工程を概略的に示す。
【図3】基板と転写スタンパのチルト差に起因する中間層の厚さ分布を説明する概略的な断面図である。
【図4】転写スタンパのタンジェンシャルチルトを概略的に説明する図である。
【図5】基板と転写スタンパとの貼り合わせ工程を概略的に示す。
【図6】基板の向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図7】転写スタンパの向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図8】基板の向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図9】転写スタンパの向きを調整するための方向調整装置の概略的な斜視図である。
【図10】基板に対する転写スタンパの貼り合わせを概略的に説明する図である。
【図11】転写スタンパのタンジェンシャルチルトを説明するグラフである。
【図12】厚さばらつきの分布を示すグラフである。
【図13】2層Blu−rayディスクの概略的な断面図である。
【図14】スタンパの作製工程を説明する図である。
【図15】スピンコート法に従う樹脂中間層の作成工程と、保護層の作成工程とからなる2層Blu−rayディスクの作成工程を説明する図である。
【図16】多層情報記録媒体の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態に係る情報記録媒体の製造方法及び情報記録媒体が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、単に、以下の実施形態の原理を容易に理解させることを目的とするものであり、以下の実施形態を通じて説明される原理は、これらに何ら限定されるものではない。
【0046】
(情報記録媒体)
図1は、情報記録媒体の概略的な断面図である。本実施形態において、3層の情報層を備える3層Blu−rayディスクが、3層情報記録媒体として例示される。代替的に、情報記録媒体は、3層より多い数の情報層を備える多層情報記録媒体であってもよい。以下に説明される3層情報記録媒体の原理は、多層情報記録媒体にも好適に適用可能である。
【0047】
3層Blu−rayディスク600は、基板601を備える。基板601は、凹凸形状により形成された第1の情報面602を含む。3層Blu−rayディスク600は、第1の情報面602上に積層された金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料を含む第1の情報層603を更に備える。本実施形態において、第1の情報面602は、第1面として例示される。
【0048】
3層Blu−rayディスク600は、第1の情報層603上に形成された第1の中間層604を更に備える。記録再生光に対して略透明な第1の中間層604は、凹凸形状からなる第2の情報面605を含む。3層Blu−rayディスク600は、第2の情報面605上に積層された金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料を含む第2の情報層606を更に備える。
【0049】
3層Blu−rayディスク600は、第2の情報層606上に形成された第2の中間層607を更に備える。記録再生光に対して略透明な第2の中間層607は、凹凸形状からなる第3の情報面608を含む。3層Blu−rayディスク600は、第3の情報面608上に積層された金属薄膜又は熱記録が可能な薄膜材料を含む第3の情報層609を更に備える。
【0050】
3層Blu−rayディスク600は、第3情報層609を覆う保護層610を含む。保護層610は、第3の情報層609をコーティングする記録再生光に対して略透明な樹脂を含む。上述の如く、本実施形態において、基板601上には、3個の情報層(第1の情報層603、第2の情報層606、第3の情報層609)が形成される。代替的に、N個の情報層(Nは、3以上の整数)が、基板601上に形成されてもよい。また、本実施形態において、基板601上には、3個の情報層(第1の情報層603、第2の情報層606、第3の情報層609)を隔てる2つの中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)が形成される。代替的に、N個の情報層(Nは、3以上の整数)が基板601上に形成されるならば、(N−1)個の中間層が形成される。
【0051】
上述の「略透明」との用語は、層が記録再生光に対して約90%以上の透過率を有することを意味する。また、上述の「半透明」との用語は、層が記録再生光に対して10%以上90%以下の透過率を有することを意味する。
【0052】
記録再生光として用いられるレーザ光は、保護層610を通じて、3層Blu−rayディスク600内に入射する。3層Blu−rayディスク600内に入射されたレーザ光の焦点は、第1の情報層603、第2の情報層606、第3の情報層609のうちいずれか1つ(記録再生の対象となる情報層)に合わせられる。この結果、焦点を合わせられた情報層(第1の情報層603、第2の情報層606又は第3の情報層609)に対して、信号の記録及び/又は再生がなされる。本実施形態において、基板601は、約1.1mmの厚さに設定される。第1の中間層604及び第2の中間層607は、それぞれ約25μm及び約18μmの厚さに設定される。保護層610は、約57μmの厚さに設定される。代替的に、第1の中間層604、第2の中間層607及び保護層610の厚さは、他の値に設定されてもよい。
【0053】
基板601は、CDやDVDといった光ディスクと形状的な互換性を有するように形成される。基板601は、例えば、外径φ120mm、中心孔径φ15mm、厚さ1.0mm〜1.1mmであってもよい。基板601は、典型的には、ポリカーボネートやアクリル系樹脂からなる円板であってもよい。
【0054】
基板601は、図14に関連して説明された金属スタンパ309を用いて、射出成形法といった適切な樹脂成形技術によって、形成されてもよい。この結果、金属スタンパ309の製造過程で規定されたパターン305に従う凹凸で形成された案内溝などを含む第1の情報面602が形成される。また、基板601の内周部には、視認可能な文字情報が記録される。したがって、基板601の固体番号が目視で確認される。本実施形態において、文字情報の開始位置は、基板601の第1基準点として例示される。また、本実施形態において、基板601は、ポリカーボネートを用いて作成される。
【0055】
情報記録媒体が、再生専用媒体であるならば、第1の情報層603は、少なくとも再生光を反射する特性を有すればよい。第1の情報層603は、例えば、Al、Ag、Au、Si、SiO2、TiO2といった反射材料を用いて、スパッタリングや蒸着といった方法を用いて形成される。
【0056】
情報記録媒体が、記録可能媒体であるならば、記録光の照射によって情報が第1の情報層603に書き込まれる。したがって、第1の情報層603は、少なくとも、記録材料(例えば、GeSbTeといった相変化材料やフタロシアニンといった有機色素)からなる層を含む。必要に応じて、第1の情報層603は、反射層や界面層といった記録再生特性を向上させるための層を含んでもよい。
【0057】
第2の情報層606及び第3の情報層609は、第1の情報層603と同様に形成される。上述の如く、3層Blu−rayディスク600に対する記録再生は、保護層610から情報層(第1の情報層603、第2の情報層606又は第3の情報層609)に入射されたレーザ光によりなされる。したがって、第2の情報層606及び第3の情報層609は、第1の情報層603に対して記録再生を行うための記録再生光の波長に対して高い透過率を有する。同様に、第3の情報層609は、第2の情報層606に対して記録再生を行うための記録再生光の波長に対しても高い透過率を有する。
【0058】
第1の中間層604及び第2の中間層607は、記録再生光に対して略透明に形成される。例えば、アクリルを主成分とした紫外線硬化性樹脂やエポキシ系の紫外線硬化性樹脂といった放射線硬化性樹脂が第1の中間層604及び第2の中間層607の形成に好適に用いられる。上述の「略透明」との用語は、層が記録再生光の波長に対して90%以上の透過率を有することを意味する。第1の中間層604及び第2の中間層607は、好ましくは、95%以上の透過率を有する材料から形成される。
【0059】
(情報記録媒体の製造方法)
基板601は、上述の如く、図14に関連して説明された金属スタンパ309を用いて、射出成形法といった適切な成形技術に従って成形される。また、第1の情報層603は、スパッタリングや蒸着といった適切な層形成技術を用いて形成される。
【0060】
第1の中間層604の作成方法は、スピンコート法といった適切な塗布手法に従って、液状の放射線硬化性樹脂を第1の情報層603上に塗布する工程を備える。第1の情報層603の厚さは、放射線硬化性樹脂の粘度、スピン回転の回転数、スピン回転の回転時間やスピン回転させている間の放射線硬化性樹脂の周囲の雰囲気(例えば、温度や湿度)といった様々なパラメータを用いて適切に制御される。
【0061】
第1の中間層604の作成方法は、ピットや案内溝などを含む情報面を有する転写スタンパを用いて、第1情報層603を形成する放射線硬化性樹脂に情報面を転写する工程を更に含む。転写スタンパの情報面の転写の結果、第2の情報面605が形成される。尚、転写スタンパは、図14に関連して説明された金属スタンパ309と同様の工程を経て形成されたスタンパを用いて、射出成形法といった適切な成形技術に従って成形される。第2の中間層607は、第1の中間層604と略同様の工程を経て形成される。
【0062】
図2は、第1の中間層604への転写スタンパの情報面の転写工程を例示する。尚、図2に関連して説明される原理は、第2の中間層607への転写スタンパの情報面の転写工程にも同様に適用可能である。図1及び図2を用いて、第1の中間層604への転写スタンパの情報面の転写工程が説明される。
【0063】
上述の如く、基板601の第1の情報面602上に形成された第1の情報層603上に放射線硬化性樹脂703が塗布される。図2(a)に示される如く、放射線硬化性樹脂703の塗布完了後、基板601は、真空チャンバ707中に搬送される。また、転写スタンパ704も真空チャンバ707内に配設される。
【0064】
転写スタンパ704は、放射性硬化樹脂に対する良好な剥離性を有する材料(例えば、ポリオレフィンやポリカーボネート)から形成される。転写スタンパ704は、基板601よりも薄く形成される。例えば、転写スタンパ704は、厚さ0.6mmである。基板601との厚さの相違は、転写スタンパ704と基板601との間の剛性の差に帰結する。厚さ1.1mmの基板601から転写スタンパ704が剥離されるとき、剛性の差異に起因して、転写スタンパ704が反り、剥離が促されることとなる。
【0065】
転写スタンパ704の形成に用いられるポリオレフィンやポリカーボネートといった樹脂材料は、基板601と同様に、ピットや案内溝などを含む情報面745を形成するのに好適である。金属スタンパを用いて、射出成形法といった方法にしたがって、転写スタンパ704の一方の面には、情報面が容易に形成される。
【0066】
加えて、ポリオレフィンやポリカーボネートといった樹脂材料は、紫外線といった放射線に対する高い透過率を有する。したがって、転写スタンパ704を通じて、放射線が照射されると、放射線硬化性樹脂703は効率よく硬化する。
【0067】
転写スタンパ704の中心には、中心穴741が形成される。基板601を支持する支持台742は、センターボス705を備える。支持台742から立設されたセンターボス705は、基板601の中心孔に挿通され、転写スタンパ704に向けて突出する。図2(a)及び図2(b)に示される如く、センターボス705の先端は、転写スタンパ704の中心穴741に挿入される。この結果、転写スタンパ704は、基板601に対して同心となる。
【0068】
転写スタンパ704の内周部にも、基板601と同様に、文字情報が記録される。本実施形態において、転写スタンパ704の内周部に記録された文字情報の開始位置は、転写スタンパの第2の基準点として例示される。
【0069】
ロータリーポンプやターボ分子ポンプといった真空ポンプ708は、真空チャンバ707内の空気を排気する。この結果、真空チャンバ707内は、短時間で真空雰囲気となる。本実施形態において、真空チャンバ707内の圧力が100Pa以下の真空度に達したとき、転写スタンパ704は、基板601に重ね合わせられる(図2(b)参照)。転写スタンパ704の上方に設置された加圧プレート706は、転写スタンパ704を基板601に向けて加圧する。この結果、転写スタンパ704の情報面745が放射線硬化性樹脂703に転写される。真空チャンバ707内が高い真空雰囲気であるので、放射線硬化性樹脂703と転写スタンパ704との間に気泡が混入することなく、放射線硬化性樹脂703を介した転写スタンパ704の貼り合わせがなされることとなる。
【0070】
図2(c)に示される如く、転写スタンパ704が貼り合わせられた基板601は、真空チャンバ707から取り出される。その後、放射線照射装置709によって、転写スタンパ704を通じて、放射線が照射される。この結果、放射線硬化性樹脂703が硬化する。
【0071】
図2(d)に示される如く、その後、転写スタンパ704は、放射線硬化性樹脂703との界面で剥離される。転写スタンパ704の剥離は、転写スタンパ704と放射線硬化性樹脂703との界面に楔を打ち込むことによってなされる。代替的に、転写スタンパ704と放射線硬化性樹脂703との界面に、圧縮空気が吹き込まれることにより、転写スタンパ704が放射線硬化性樹脂703から剥離されてもよい。転写スタンパ704の剥離の結果、第1の情報層603上に積層された第1の中間層604が形成される。また、第1の中間層604の上面には、第2の情報面605が形成される。
【0072】
上述の如く、第2の情報面605上には、スパッタリングや蒸着といった適切な層形成技術に従って、第2の情報層606が形成される。第2の情報層606上に放射線硬化性樹脂が塗布された後、再度、真空チャンバ内に基板601が搬送される。真空チャンバ内が真空雰囲気にされた後、放射線硬化性樹脂に転写スタンパが貼り合わされる。その後、転写スタンパを介して、放射線照射がなされ、第2の情報層606上の放射線硬化性樹脂が硬化する。放射線硬化性樹脂の硬化の後、転写スタンパが硬化した放射線硬化性樹脂の層から剥離され、第2の中間層607が形成される。第2の中間層607の上面には、第3の情報面608が形成される。第3の情報面608上には、スパッタリングや蒸着といった適切な層形成技術に従って、第3の情報層609が形成される。
【0073】
第2の中間層607を形成するのに用いられた転写スタンパの内周部にも、基板601や第1の中間層604を形成するのに用いられた転写スタンパ704と同様に、文字情報が記録される。本実施形態において、第2の中間層607を形成するのに用いられた転写スタンパの内周部に記録された文字情報の開始位置も、転写スタンパの第2基準点として例示される。また、第1の中間層604及び第2の中間層607に転写された文字情報の開始位置も第2基準点として例示される。
【0074】
上述の如く、3層Blu−rayディスク600の作成において、情報層を形成する工程と、情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程と、放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、転写スタンパを放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、中間層を形成する工程とが2回繰り返され、2個の情報層(第1の情報層603、第2の情報層606)と、2個の中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)とが順次形成される。その後、第3の情報層609が形成される。
【0075】
N個の情報層を備えるN層Blu−rayディスクの作成においては、上述の一連の工程が(N−1)回繰り返され、(N−1)個の情報層と、(N−1)個の中間層とが、順次形成されることとなる。その後、第Nの情報層が形成される。(N−1)個の中間層を形成するのに用いられる転写スタンパそれぞれの内周部には、文字情報が記録される。したがって、(N−1)個の中間層それぞれには、転写スタンパそれぞれの文字情報が記録される。
【0076】
図1を再度用いて、保護層610並びに保護層610の作成方法が説明される。
【0077】
保護層610は、記録再生光に対して略透明な材料(例えば、アクリルを主成分とする紫外線硬化性樹脂やエポキシ系の紫外線硬化性樹脂といった放射線硬化性樹脂)から形成される。上述の「略透明」との用語は、層が記録再生光の波長に対して90%の透過率を有することを意味する。好ましくは、95%以上の透過率を有する材料が保護層610の形成に用いられる。
【0078】
第3の情報層609の形成の後、保護層610が形成される。保護層610の形成方法として、スピンコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法やインクジェット法といった様々な工法が例示される。代替的に、放射線硬化性樹脂の塗布に代えて、シート状材料が接着剤を介して、第3の情報層609に貼り合わされてもよい。シート状材料は、例えば、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂から形成されてもよい。
【0079】
本実施形態に係る3層Blu−rayディスク600に対する記録再生には、波長405nmの青紫レーザが用いられる。保護層610から入射する青紫レーザは、開口数(NA)が0.85の対物レンズを用いて、第1の情報層603、第2の情報層606及び第3の情報層609から選択された1つの情報層に絞り込まれる。3層Blu−rayディスク600の傾きの影響の軽減のため、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さは、約0.1mmに設定される。代替的に、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さは、他の寸法値に設定されてもよい。保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さに拘わらず、本実施形態の原理は、好適に適用される。
【0080】
上述の説明は、多層情報記録媒体として例示される3層Blu−rayディスク600の構成並びに3層Blu−rayディスク600の製造方法の全体的な概要である。本実施形態は、中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)の形成に特徴づけられる。したがって、以下に詳細に説明される中間層の形成を除く、多層情報記録媒体の構成及び多層情報記録媒体の製造方法に関連する説明は、本実施形態の原理を何ら限定するものではない。
【0081】
(中間層の作製方法)
以下に、多層情報記録媒体の製造方法に関連して、中間層の作製方法が主に説明される。
【0082】
図3は、基板及び基板に貼り合わされた転写スタンパの概略的な断面図である。図2及び図3を用いて、図2に関連して説明された基板と転写スタンパとの貼り合わせ工程が内包する課題が説明される。
【0083】
図3に示される如く、基板801上に放射線硬化性樹脂802が塗布されている。転写スタンパ803は、図2に関連して説明された如く、真空チャンバ707内で貼り合わされる。図3は、真空チャンバ707から取り出された基板801、放射線硬化性樹脂802及び転写スタンパ803の概略的な断面を例示する。
【0084】
説明の明瞭化のために、図3は、略反りのない基板801(基板801の反り(チルト)は、略0度である)と、反りを有する転写スタンパ803とを示す。図3に示される転写スタンパ803の外周は、基板801から遠ざかるように沿っている。
【0085】
図2に関連して説明された加圧プレート706は、真空チャンバ707内で、放射線硬化性樹脂802を介して基板801に貼り合わされた転写スタンパ803を加圧する。この結果、真空チャンバ707内において、転写スタンパ803は、ある程度、基板801に対して平行になる。しかしながら、加圧プレート706の加圧が解除されると、基板801及び転写スタンパ803の剛性に起因して、基板801及び転写スタンパ803に復元力が作用する。
【0086】
図3に示される如く、基板801と転写スタンパ803との間で反りに差異が存するならば、基板801及び転写スタンパ803に作用する復元力に起因して、基板801と転写スタンパ803との間の放射線硬化性樹脂802の層の厚さが変化する。転写スタンパ803の外周に近づくにつれて、転写スタンパ803は基板801から遠ざかるように反っている。したがって、放射線硬化性樹脂802の層は、転写スタンパ803の外周に近づくにつれて厚くなる。
【0087】
図3は、半径方向のチルト(ラジアルチルト)の差に起因する放射線硬化性樹脂802の厚さに対する影響を示している。図3に関連して説明された放射線硬化性樹脂802の厚さに対する影響は、基板801と転写スタンパ803との間で周方向のチルト(タンジェンシャルチルト)に差が存するときも同様に現れる。
【0088】
図3に示される如く、基板801と転写スタンパ803との間のチルトの関係によって、基板801と転写スタンパ803との貼り合わせによって形成される中間層(放射線硬化性樹脂802の層)の厚さ分布が変動する。
【0089】
図1に関連して説明された3層Blu−rayディスク600は、第1の中間層604と、第1の中間層604上で積層された第2の中間層607とを備える。第1の中間層604の厚さ分布と第2の中間層607の厚さ分布の重なり方によって、保護層610の表面から、第1の情報層603、第2の情報層606及び第3の情報層609それぞれまでの厚さが大きく変化する。理想的には、基板801と転写スタンパ803とを貼り合わせる工程において、基板801と転写スタンパ803とが貼り合わされるときの基板801の貼り合わせ面と転写スタンパ803の貼り合わせ面とができる限り平行であることが好ましい。
【0090】
しかしながら、射出成形によって成形された基板801及び/又は転写スタンパ803の形状特性は、これらを製造する成形機に依存する。したがって、成形機によって定められる条件(例えば、金型の冷却水路の構造)や成形条件(金型の温度設定や成形タクト)によって、基板801及び/又は転写スタンパ803のチルトが発生する。かくして、基板801及び転写スタンパ803それぞれの貼り合わせ面が平行となるように、これらの形状を制御することは、非常に困難である。一方で、同一の成形機を用いて、同一成形条件の下、基板801及び/又は転写スタンパ803が製造されるならば、これらは、成形機及び成形条件に依存する特定のチルトパターンを有することとなる。
【0091】
上述の如く、基板801及び/又は転写スタンパ803のチルトのパターンは、これらの内周から外周に向かって半径方向に反るラジアルチルトと、これらの周方向に反るタンジェントチルトとを含む。ラジアルチルトは、成形機の金型温度の調整により、ある程度、コントロール可能である。したがって、転写スタンパ803が貼り合わされる基板801のラジアルチルトに合わせて、転写スタンパ803を製造する成形機の金型温度が調整されてもよい。転写スタンパ803を製造する成型機の金型温度の調整を通じて、基板801の貼り合わせ面と転写スタンパ803の貼り合わせ面とが略平行となるように、転写スタンパ803のラジアルチルトが調整される。かくして、ラジアルチルトに起因する中間層の厚さの変動は、成形機の金型温度の調整によって改善される。
【0092】
しかしながら、金型温度の調整のみによって、タンジェンシャルチルトを制御することは困難である。したがって、基板801の形状に適合するように転写スタンパ803の形状を制御することは、現実的ではない。加えて、転写スタンパ803は、中間層との剥離を促すため、基板801と較べて薄く形成される(例えば、基板801の厚さが1.1mmであるのに対して、転写スタンパ803の厚さは0.6mmに設定される)。薄い転写スタンパ803ほどタンジェンシャルチルトは生じやすくなる。かくして、基板801に対して平行となるように形状制御された転写スタンパ803を成形することは困難である。
【0093】
したがって、転写スタンパ803の反り形状は、金型温度の調整を通じてコントロールされたラジアルチルトに重畳された特定のタンジェンシャルチルトのパターン(成形機の構造に依存する条件や転写スタンパ803の成形パラメータによって定まる特定のタンジェンシャルチルトのパターン)を有する。
【0094】
図4は、タンジェントチルトのパターンを例示する。図4(a)は、タンジェントチルトのパターンに従って反った円板の概略的な斜視図である。図4(b)は、図4(a)に示される円板のタンジェントチルトを表すグラフである。図4を用いて、タンジェントチルトのパターンが説明される。
【0095】
図4(a)の円板Eには、基準点が設けられている。円板E中の基準点の位置は、「0時の方向」として定義される。円板Eの基準点から90°だけ角変位された位置は、「3時の方向」として定義される。円板Eの基準点から180°だけ角変位された位置は、「6時の方向」として定義される。円板Eの基準点から270°だけ角変位された位置は、「9時の方向」として定義される。
【0096】
図4(a)の円板E上には、時計周りに周回する矢印Aが示されている。矢印Aの進行方向に進むにつれて、円板Eの上面が下方に傾斜しているならば、円板Eのタンジェントチルトは「マイナス方向のタンジェントチルト」として定義される。矢印Aの進行方向に進むにつれて、円板Eの上面が上方に傾斜しているならば、円板Eのタンジェントチルトは「プラス方向のタンジェントチルト」として定義される。尚、円板Eは、図1に関連して説明された3層Blu−rayディスク600を作製するために用いられる転写スタンパと同様に60mmの半径を有する。
【0097】
図4(b)は、上述の定義に従って描かれた円板Eのタンジェントチルトのグラフである。図4(b)のグラフは、円板Eの外縁に沿って測定された円板Eのチルトの変動を示している。
【0098】
「0時の方向」から「3時の方向」の間の円板Eの上面は、下方に傾斜している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「0時の方向」から「3時の方向」の間で「マイナス方向のタンジェントチルト」を示している。円板Eの「3時の方向」において、円板Eの上面の傾斜は、矢印Aの方向に進むに従って、「下方」から「上方」へと変化している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「3時の方向」において、「0」の値を示している。
【0099】
「3時の方向」から「6時の方向」の間の円板Eの上面は、上方に傾斜している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「3時の方向」から「6時の方向」の間で「プラス方向のタンジェントチルト」を示している。円板Eの「6時の方向」において、円板Eの上面の傾斜は、矢印Aの方向に進むに従って、「上方」から「下方」へと変化している。したがって、図4(b)に示されるグラフは、「6時の方向」において、「0」の値を示している。
【0100】
「6時の方向」から「9時の方向」の間の円板Eは、「0時の方向」から「3時の方向」の間の円板Eのタンジェントチルトと同様のタンジェントチルトを有する。また、「9時の方向」から「0時の方向」の間の円板Eは、「3時の方向」から「6時の方向」の間の円板Eのタンジェントチルトと同様のタンジェントチルトを有する。
【0101】
図4(b)のグラフは、2つの山と2つの谷とを有する略サインカーブを描く。本実施形態の原理は、他の形状の曲線で表現されるタンジェントチルトのパターンを有する転写スタンパにも適用される。したがって、本実施形態の原理が適用可能なタンジェントチルトのパターンは、「0時の方向」、「3時の方向」、「6時の方向」及び/又は「9時の方向」において、「0度」とならなくともよい。転写スタンパを製造するための成形機及び成形機に適用される成形条件によっては、タンジェントチルトのパターンを表すカーブの山と谷の位置がずれることもある。しかしながら、同一の成形機を用いて、同一の成形条件下で、転写スタンパが製造されるならば、基準点に対するタンジェントチルトのパターンの山の位置並びに谷の位置は、略一定である。同一の成形機を用いて、同一の成形条件下で成形された転写スタンパに記録された文字情報の開始位置が「0時の方向」として定義されるとき、「0時の方向」、「3時の方向」(「0時の方向」から90度だけ角変位された位置)、「9時の方向」(「0時の方向」から180度だけ角変位された位置)、「6時の方向」(「0時の方向」から180度だけ角変位された位置)、「9時の方向」(「0時の方向」から180度だけ角変位された位置)におけるタンジェントチルトは、転写スタンパ間で略一定である。
【0102】
図3に関連して説明された如く、基板801(厚さ1.1mm)は、転写スタンパ803と較べて厚い。したがって、転写スタンパ803のタンジェンシャルチルトの変動と較べて、基板801のタンジェントチルトの変動は小さい。基板801と転写スタンパ803とが貼り合わされたとき、基板801と転写スタンパ803との間の放射線硬化性樹脂802から形成される中間層には、基板801と転写スタンパ803との間のタンジェントチルトの差に応じた厚さ分布が現れることとなる。
【0103】
図1に関連して説明された3層Blu−rayディスク600は、基板601上に積層された第1の中間層604、第2の中間層607及び保護層610を備える。基板601と転写スタンパ704との間のタンジェントチルトの差に起因する厚さ分布は、第1の中間層604及び第2の中間層607に現れる。第1の中間層604の比較的厚い部位が第2の中間層607の比較的厚い部位に重ねられるとともに第1の中間層604の比較的薄い部位が第2の中間層607の比較的薄い部位に重ねられるならば、第1の中間層604と第2の中間層607とを含む中間層には、より強調された厚さ分布が現れることとなる。この結果、3層Blu−rayディスク600の保護層610の表面から第1の情報層603及び第2の情報層606それぞれまでの厚さは大きく変動することとなる。特に、保護層610の表面から最も離れた第1の情報層603までの厚さの変動が大きくなる。
【0104】
本実施形態において、第1の中間層604の比較的厚い部位が第2の中間層607の比較的厚い部位に重ならないように、且つ、第1の中間層604の比較的薄い部位が第2の中間層607の比較的薄い部位に重ならないように、基板601に貼り合わされるときの転写スタンパ704の向きが制御される。
【0105】
図5は、基板601と転写スタンパ704との貼り合わせ工程を概略的に示す。図1、図2及び図5を用いて、基板601と転写スタンパ704との貼り合わせ工程が説明される。
【0106】
上述の如く、基板601は、成形機(図示せず)を用いて、射出成形される。成形機は、基板601の内周部に文字情報を記録する。したがって、基板601に形成された文字情報の開始位置は、成形機によって規定される。本実施形態において、基板601を成形する成形機は、基板製造装置として例示される。また、文字情報は、第1基準位置情報として例示される。
【0107】
基板601が転写スタンパ704と貼り合わされる前に、基板601は、成膜装置(図示せず)に投入され、第1の情報層603が形成される。図5には、第1の情報層603が形成された後の基板601が示されている。
【0108】
図5には、図2に関連して説明された真空チャンバ707に加えて、真空チャンバ707に向けて基板601を搬送する第1搬送装置720と、真空チャンバ707に向けて移動する基板601の向きを調整する基板601用の方向調整装置725とが示されている。上述の如く、第1の情報層603が形成された後、基板601は第1搬送装置720によって、真空チャンバ707へ搬送される。上述の如く、第1の情報層603は、スパッタ装置を用いて、成膜される。また第1の情報層603上に放射線硬化性樹脂704がスピンコート法などを用いて塗布される。したがって、基板601は、第1の情報層603が形成される間、および、放射線硬化性樹脂704が塗布される間、回転される。この結果、方向調整装置725を通過する前において、基板601の向き(基板601の中心点から基板601に記録された文字情報の開始位置に向かう方向)は、一定ではない。
【0109】
図6は、基板601用の方向調整装置725を概略的に示す。図1、図2、図5及び図6を用いて、基板601の方向調整が説明される。
【0110】
方向調整装置725は、第1搬送装置720によって搬送された基板601を支持する支持部材726と、支持部材726を回転させる回転シャフト727とを備える。図6に示される如く、基板601の内縁621の近傍の内周部に文字情報C1が記録されている。回転シャフト727の回転方向において先頭に位置する文字情報C1の端部は、文字情報C1の開始位置R1となる。支持部材726は、文字情報C1よりも基板601の中心領域を支持する。回転シャフト727は、基板601と略同心回転する。本実施形態において、文字情報C1の開始位置R1は、第1基準点として例示される。
【0111】
方向調整装置725は、文字情報C1の回転軌跡の下方に配設される光学顕微鏡728を更に備える。基板601は、第1の情報層603が積層された面と反対側の面622を含む。光学顕微鏡728は、面622を介して、文字情報C1を読み取る。本実施形態において、面622は、第1の情報面602と反対側の第2面として例示される。
【0112】
第1の情報層603には、面622から入射された光を反射する反射膜が形成される。したがって、光学顕微鏡728は、面622に照射された光に対する反射膜からの反射光を通じて、文字情報C1を容易に読み取ることができる。文字情報C1の読取によって、文字情報C1の開始位置R1が識別される。回転シャフト727は、識別された文字情報C1の開始位置R1が所定の位置に移動するように回転する。この結果、方向調整装置725から排出された基板601の文字情報C1の位置は、略一定に位置決めされる。文字情報C1の位置が一定となるように位置調整された基板601は、その後、真空チャンバ707内で転写スタンパ704と貼り合わせられる。本実施形態において、真空チャンバ707は、貼り合わせ位置として例示される。
【0113】
図5には、真空チャンバ707、第1搬送装置720及び方向調整装置725に加えて、第1の中間層604を形成するための転写スタンパ704を搬送する第2搬送装置730及び転写スタンパ704用の方向調整装置735が示されている。
【0114】
転写スタンパ704は、成形機(図示せず)を用いて、射出成形される。成形機は、転写スタンパ704の内周部に文字情報を記録する。したがって、転写スタンパ704に形成された文字情報の開始位置は、成形機によって規定される。本実施形態において、転写スタンパ704を成形する成形機は、転写スタンパ製造装置として例示される。また、転写スタンパ704に記録された文字情報は、第2基準位置情報として例示される。
【0115】
成形機によって成形された転写スタンパ704は第2搬送装置730によって、真空チャンバ707へ搬送される。方向調整装置735は、第2搬送装置730によって搬送される転写スタンパ704の向き(転写スタンパ704の中心点から転写スタンパ704に記録された文字情報の開始位置に向かう方向)を調整する。
【0116】
図7は、転写スタンパ704用の方向調整装置735を概略的に示す。図1、図2、図5乃至図7を用いて、転写スタンパ704の方向調整が説明される。
【0117】
方向調整装置735は、第2搬送装置730によって搬送された転写スタンパ704を支持する支持部材736と、支持部材736を回転させる回転シャフト737とを備える。図7に示される如く、転写スタンパ704の内縁721の近傍の内周部に文字情報C2が記録されている。回転シャフト737の回転方向において先頭に位置する文字情報C2の端部は、文字情報C2の開始位置R2となる。支持部材736は、文字情報C2よりも転写スタンパ704の中心領域を支持する。回転シャフト737は、転写スタンパ704と略同心回転する。本実施形態において、文字情報C2の開始位置R2は、第2基準点として例示される。
【0118】
方向調整装置735は、光学顕微鏡738を更に備える。転写スタンパ704は、基板601と異なり、反射膜を備えない。したがって、文字情報C2を読み取るために、転写スタンパ704の面に対して、斜めから単色光を照射する光源739と、転写スタンパ704の直上から文字情報C2を読み取る光学顕微鏡738とが用意される。光源739から照射された単色光によって、光学顕微鏡738は、比較的高い精度で文字情報C2を読み取ることができる。本実施形態において、光学顕微鏡738は、転写スタンパ704の表面に対する凹凸形状で表現された文字情報に斜めから照射された単色光を利用して、文字情報L2を読み取る。代替的に、転写スタンパ704に記録された文字情報L2を読取可能な他の手法が用いられてもよい。
【0119】
文字情報C2の読取によって、文字情報C2の開始位置R2が識別される。回転シャフト737は、識別された文字情報C2の開始位置R2が所定の位置に移動するように回転する。この結果、方向調整装置735から排出された転写スタンパ704の文字情報C2の位置は、略一定に位置決めされる。文字情報C2の位置が一定となるように位置調整された転写スタンパ704は、その後、真空チャンバ707内で基板601と貼り合わせられる。
【0120】
基板601と転写スタンパ704との貼り合わせは、図2に関連して説明された工程に従う。基板601と転写スタンパ704との貼り合わせの後、第1搬送装置720は、真空チャンバ707から基板601を排出する。図2に関連して説明された如く、その後、転写スタンパ704は、基板601から剥離され、第1の中間層604が形成される。第1の中間層604が形成された後、基板601は、成膜装置(図示せず)に投入され、第2の情報層606が形成される。
【0121】
図8は、第2の情報層606が形成された後の基板601に対して方向調整を行う方向調整装置755を概略的に示す。図1、図2、図5、図6及び図8を用いて、基板601に対する方向調整が説明される。
【0122】
第1搬送装置720は、第2の情報層606の形成の後、放射線硬化性樹脂が塗布された後、基板601を方向調整装置755へ搬送する。方向調整装置755は、図6に関連して説明された方向調整装置725と略同様の構造を有する。
【0123】
方向調整装置755は、第1搬送装置720によって搬送された基板601を支持する支持部材756と、支持部材756を回転させる回転シャフト757と、文字情報C1を読み取るための光学顕微鏡758とを備える。光学顕微鏡758は、図6に関連して説明された光学顕微鏡728と同様に、文字情報C1の回転軌跡の下方に配設される。
【0124】
上述の如く、第1の情報層603には、面622から入射された光を反射する反射膜が形成される。したがって、光学顕微鏡758は、面622に照射された光に対する反射膜からの反射光を通じて、文字情報C1を容易に読み取ることができる。即ち、第1の情報層603は、第2の情報層606や第3の情報層609に比べ高い反射率を有しているため、面622側から文字情報を読み取ることによって文字情報C1だけが光学顕微鏡758で観測される。第1の中間層604及び第2の情報層606よりも光学顕微鏡758の近くに位置する第1の情報層603からの反射光に基づき、文字情報C1が読み取られるので、第1の情報層603上に積層された第1の中間層604及び第2の情報層606は、文字情報C1の読取にはほとんど影響しない。
【0125】
図9は、第1の中間層604を形成するために用いられる転写スタンパ704の方向調整と、第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパの方向調整との差異を示す。図9(a)は、図7に関連して説明された方向調整装置735を示す。図9(b)は、第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパの方向調整を行う方向調整装置を示す。図1、図2、図5、図7及び図9を用いて、第1の中間層604を形成するために用いられる転写スタンパ704の方向調整と、第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパの方向調整との差異が説明される。
【0126】
第2の中間層607を形成するために用いられる転写スタンパ774は、上述の如く、第2の情報層606上に塗布された放射線硬化性樹脂の層を介して、基板601に貼り合わされる。図9(b)に示される方向調整装置775は、基板601に貼り合わされる前の転写スタンパ774の向き(転写スタンパ774の中心点から転写スタンパ774に記録された文字情報C3の開始位置R3に向かう方向)を調整する。
【0127】
方向調整装置775は、図7に関連して説明された方向調整装置735と略同様の構造を備える。方向調整装置775は、転写スタンパ774を支持する支持部材776と、支持部材776を回転させる回転シャフト777と、転写スタンパ774の内縁771の近傍の内周部に記録された文字情報C3を読み取る光学顕微鏡778と、転写スタンパ774に形成された文字情報C3の読み取りを補助するように単色光を転写スタンパ774の面に対して斜めから照射する光源779とを備える。回転シャフト777の回転方向において先頭に位置する文字情報C3の端部は、文字情報C3の開始位置R3となる。支持部材776は、文字情報C3よりも転写スタンパ774の中心領域を支持する。回転シャフト777は、転写スタンパ774と略同心回転する。本実施形態において、文字情報C3の開始位置R3は、第2基準点として例示される。
【0128】
光学顕微鏡778は、図7に関連して説明された方向調整装置735の光学顕微鏡738と同様に、転写スタンパ774の表面に対する凹凸形状で表現された文字情報に斜めから照射された単色光を利用して、文字情報C3を読み取る。
【0129】
図9に示される如く、方向調整装置775の回転シャフト777に対する光学顕微鏡778の位置関係(図9(b)参照)は、方向調整装置735の回転シャフト737に対する光学顕微鏡738の位置関係(図9(a)参照)と略等しい。図9(a)に示される如く、方向調整装置735の回転シャフト737は、転写スタンパ704上の文字情報C2の開始位置R2を識別した後、角度αだけ回転し、その後、停止する。図9(b)に示される如く、方向調整装置775の回転シャフト777は、転写スタンパ774上の文字情報C3の開始位置R3を識別した後、角度βだけ回転し、その後、停止する。
【0130】
図10は、中間層作製工程における基板601と、転写スタンパ704,774との貼り合わせを概略的に示す。図10(a)は、第1の中間層604の作製時における基板601と転写スタンパ704との貼り合わせを示す。図10(b)は、第2の中間層607の作製時における基板601と転写スタンパ774との貼り合わせを示す。図1、図6、図8乃至図10を用いて、基板601と転写スタンパ704,774との貼り合わせが説明される。
【0131】
図6及び図8に関連して説明された方向調整装置725,755それぞれは、文字情報C1の開始位置R1が「0時の方向」に配設されるように基板601の向きを調整する。図9(a)に示された転写スタンパ704上に記録された文字情報C2の開始位置R2が検出されてから、角度αだけ、回転したとき、文字情報C2の開始位置R2は、「0時の方向」に配設される。したがって、転写スタンパ704上の文字情報C2の開始位置R2は、基板601上の文字情報C1の開始位置R1に重なり合う。
【0132】
本実施形態において、図9に関連して説明された方向調整装置775の回転シャフト777の回転の角度βは、方向調整装置735の回転シャフト737の回転の角度αより90度だけ大きい。したがって、転写スタンパ774が基板601に貼り付けられるとき、転写スタンパ774上の文字情報C3の開始位置R3は、基板601の文字情報C1の開始位置R1に対して、90度だけ角変位した位置(3時の方向)となる。この結果、第1の中間層604の比較的厚い部位が第2の中間層607の比較的厚い部位に重ねられることが好適に抑制される。また、第1の中間層604の比較的薄い部位が第2の中間層607の比較的薄い部位に重ねられることも好適に抑制される。かくして、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さのばらつきが大きくなることが抑制される。
【0133】
上述の如く、3層の情報層(第1の情報層603,第2の情報層606,第3の情報層609)を有する3層Blu−rayディスク600中において、基板601に記録された文字情報C1の開始位置R1に対する第1の中間層604の文字情報C2の開始位置R2の向きは、基板601に記録された文字情報C1の開始位置R1に対する第2の中間層607の文字情報C3の開始位置R3の向きと異なる。N層の情報層を有する多層情報記録媒体の製造においては、中間層を形成する転写スタンパの方向調整工程を通じて、転写スタンパが中間層の形成ごとに異なる向きに設定される。
【0134】
以下に示される表1は、第2の中間層607が作製されるときの基板601に対する転写スタンパ774の貼り合わせ方向の影響を示す。図10に示される如く、第1の中間層604が作製されるときの基板601に対する転写スタンパ704の貼り合わせ方向は、転写スタンパ704上の文字情報C2の開始位置R2が、基板601上の文字情報C1の開始位置R1に重なり合うように定められた。以下の説明において、第1の中間層604の作製に用いられる転写スタンパ704は、第1の転写スタンパ704と称される。また、第2の中間層607の作製に用いられる転写スタンパ774は、第2の転写スタンパ774と称される。
【0135】
3層Blu−rayディスク600中の第1の中間層604の厚さは、約25μmとなるように設計された。3層Blu−rayディスク600中の第2の中間層607の厚さは、約18μmとなるように設計された。3層Blu−rayディスク600中の保護層610の厚さは、約57μmとなるように設計された。
【0136】
半径23mmから半径24mmの範囲における保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さの平均値は、「厚さ基準」として定義された。半径24mmから3層Blu−rayディスク600の外周縁に相当する半径58.2mmまでの範囲において、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さが測定された。測定された厚さ寸法のうち、厚さ基準に対して最もずれている数値が表1にしめされる「厚さばらつき」として記録された。
【0137】
図11は、中間層(第1の中間層604、第2の中間層607)の作製に用いられた転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)のタンジェントチルトの分布を示す。図11に示されるタンジェントチルトの分布は、半径58mmの位置において測定されたタンジェントチルトの値に基づき作製された。
【0138】
転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)の文字情報C1,C2の開始位置R1,R2がタンジェントチルトの測定の基準点とされた。転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)の文字情報C1,C2の開始位置R1,R2は、図11に示されるグラフ中、「0時の方向」として示されている。
【0139】
図11に示されるように、タンジェントチルトの分布は、1周の測定において、2つの山と2つの谷とを示す。「−0.18度」から「0.19度」のタンジェントチルトの分布範囲を示す転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)が、表1に示されるデータをサンプリングするために用いられた。また、表1に示されるデータをサンプリングするために用いられた転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)のラジアルチルトは、転写スタンパ(第1の転写スタンパ704、第2の転写スタンパ774)が基板601に対してできるだけ平行となるように調整された。
【0140】
3層Blu−rayディスク600といった100GB容量の3層構造の媒体の場合、情報層当たりの記憶容量は、2層構造の媒体と較べて、増加される。したがって、厚さの変動に起因する球面収差の影響は、記録再生に係る品質に大きな影響を与える。記録再生システムとして問題とならない厚さ変動は、厚さ基準に対して2.5μm以下であることが予め確認された。したがって、2.5μmの厚さ変動が、表1に示される判定の基準とされた。尚、表1中の「厚さばらつき」の欄は、10枚の3層Blu−rayディスク600から得られた厚さばらつきの値の範囲を示している。表1中の「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差を示している。
【0141】
【表1】
【0142】
表1の結果の通り、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3が基板601の文字情報C1の開始位置R1に略一致しているとき(「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄において、「0度」)、或いは、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが180度ずれているとき、第1の中間層604の比較的厚い部位と、第2の中間層607の比較的厚い部位とが重なり合うとともに第1の中間層604の比較的薄い部位と、第2の中間層607の比較的薄い部位とが重なり合った。したがって、保護層610の表面から第1の情報層603までの厚さばらつきは大きくなった。この結果、厚さばらつきは、2.6μm以上となり、目標とする厚さばらつき「2.5μm」は達成されなかった。
【0143】
基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが45度ずれているとき、厚さばらつきは改善された。しかしながら、測定された厚さばらつきは、判定の基準値(2.5μm)近くに分布した。一部の3層Blu−rayディスク600からのデータは、基準値(2.5μm)を越える厚さばらつきを示したが、略判定基準を達成できる水準のデータが確認された。
【0144】
基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが90度ずれているとき、厚さばらつきは大幅改善された。測定に用いられた3層Blu−rayディスク600全てが判定基準(2.5μm)を下回る厚さばらつきを示した。
【0145】
上述の如く、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きが90度ずれているとき、厚さばらつきは大幅改善された。本試験において、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対して、90度ずらされた第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3を更に細かく変更し、「厚さばらつき」が測定された。
【0146】
表2は、「厚さばらつき」の測定結果を示す。表2中の「厚さばらつき」の欄は、10枚の3層Blu−rayディスク600から得られた厚さばらつきの値の範囲を示している。表2中の「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差を示している。表2中で示される判定に対する基準値は、表1に関連して説明された試験と同様に「2.5μm」である。表2中の「90度からの変更割合」の欄は、基板601に対して90度ずらされた第2の転写スタンパ774の位置から変更された角度の割合をパーセンテージで示している。
【0147】
【表2】
【0148】
表2に示される如く、基板601に対して90度ずらされた第2の転写スタンパ774の位置から変更された角度が大きくなるにつれて、厚さばらつきは増大した。基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「81度」(即ち、変更割合が「−10%」)であるときは、試験された3層Blu−rayディスク600全ての厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを下回った。しかしながら、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「81度」を下回ると、一部の3層Blu−rayディスク600の厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを上回った。
【0149】
基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「99度」(即ち、変更割合が「10%」)であるときは、試験された3層Blu−rayディスク600全ての厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを下回った。しかしながら、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が「99度」を上回ると、一部の3層Blu−rayディスク600の厚さばらつきは、判定基準とされた2.5μmを上回った。
【0150】
したがって、基板601の文字情報C1の開始位置R1の向き(0時の方向)に対する第2の転写スタンパ774の文字情報C3の開始位置R3の向きの角度差が90度±10%であるとき、記録再生にほとんど影響を与えない厚みばらつきが得られる。
【0151】
4つの情報層を備える4層情報記録媒体に対して、上述の試験と同様の試験がなされた。
【0152】
4層情報記録媒体中の第1の中間層の厚さは、約15.5μmとなるように設計された。4層情報記録媒体中の第2の中間層の厚さは、約19.5μmとなるように設計された。4層情報記録媒体中の第3の中間層の厚さは、約11.5μmとなるように設計された。4層情報記録媒体中の保護層の厚さは、約53.5μmとなるように設計された。
【0153】
半径23mmから半径24mmの範囲における保護層の表面から第1の情報層までの厚さの平均値は、「厚さ基準」として定義された。半径24mmから4層情報記録媒体の外周縁に相当する半径58.2mmまでの範囲において、保護層の表面から第1の情報層までの厚さが測定された。測定された厚さ寸法のうち、厚さ基準に対して最もずれている数値が表3に示される「厚さばらつき」として記録された。
【0154】
第1の中間層が作製されるときの転写スタンパ(以下、第1の転写スタンパと称される)上の文字情報の開始位置が、基板上の文字情報の開始位置に重なり合うように、第1の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定されるとき、第2の中間層が作製されるときの転写スタンパ(以下、第2の転写スタンパと称される)上の文字情報の開始位置が、基板上の文字情報の開始位置に重なり合うように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の中間層が作製されるときの転写スタンパ(以下、第3の転写スタンパと称される)上の文字情報の開始位置が、基板上の文字情報の開始位置に重なり合うように第3転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0155】
他の4層情報記憶媒体のサンプルにおいて、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第1転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「30度」ずらされるように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「30度」ずらされるように第3の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0156】
更に他の4層情報記憶媒体のサンプルにおいて、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第1転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「60度」ずらされるように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「60度」ずらされるように第3の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0157】
更に他の4層情報記憶媒体のサンプルにおいて、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第1転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「90度」ずらされるように、第2の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定され、且つ、第3の転写スタンパ上の文字情報の開始位置が、第2の転写スタンパ上の文字情報の開始位置に対して、「90度」ずらされるように第3の転写スタンパの貼り合わせ方向が設定された。
【0158】
4層情報記録媒体中の第1の中間層、第2の中間層及び第3の中間層は、図11に関連して説明されたタンジェントチルトの分布を有する第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパを用いてそれぞれ作製された。第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれのタンジェントチルトの分布範囲は、上述の試験と同様に、「−0.18度」から「0.19度」であった。上述の試験と同様に、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれのラジアルチルトは、基板に対してできるだけ平行となるように調整された。
【0159】
以下に示される表3中の「第2の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、第1の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きに対する第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きの角度差を示す。表3中の「第3の転写スタンパの貼り合わせ方向」の欄は、第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きに対する第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の向きの角度差を示す。
【0160】
2.5μmの厚さ変動が、同様に、判定の基準とされた。表3中の「厚さばらつき」の欄は、10枚の4層情報記録媒体から得られた厚さばらつきの値の範囲を示している。
【0161】
【表3】
【0162】
表3に示される如く、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が重なり合うとき、保護層表面から第1の情報層までの厚み変動は非常に大きくなった。同様に、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が30度ピッチでずれているときも、保護層表面から第1の情報層までの厚み変動は非常に大きくなった。これらの条件下では、測定された厚さばらつきは、目標とされた「2.5μm」を大幅に上回った。
【0163】
第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が90度ピッチでずれているときは、厚さばらつきは改善されたが、一部の4層情報記録媒体の厚さばらつきは、目標とされた「2.5μm」を上回った。
【0164】
第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が60度ピッチでずれているときは、厚さばらつきは大幅に改善された。全ての4層情報記録媒体の厚さばらつきは、目標とされた「2.5μm」を下回った。かくして、基板、第1の転写スタンパ、第2の転写スタンパ及び第3の転写スタンパそれぞれの文字情報の開始位置が60度ピッチでずれているとき、目標が達成された。
【0165】
上述の一連の試験から、転写スタンパ間の文字情報の最適なずれ角θは、以下の数式1で示される。尚、以下の数式中の変数「N」は、情報層の数である。
【0166】
【数1】
θ=180/(N−1)
【0167】
上記の数式に従うと、情報層の数が「3」であるとき、上述の試験に関連して説明された最適なずれ角である「90度」が算出される。情報層の数が「4」であるとき、上述の試験に関連して説明された最適なずれ角である「60度」が算出される。
【0168】
4層情報記憶媒体において、最適なずれ角θである「60度」を中心にずれ角θが細かく変更され、上記の試験と同様に厚さばらつきが調査される。
【0169】
図12は、厚さばらつきの分布を示すグラフである。図12の左側の縦軸は、4層情報記憶媒体の保護層の表面から第1の情報層までの厚さのばらつきを示す。図12の横軸は、基板の文字情報の開始位置に対して、第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差を示す。本試験において、基板の文字情報の開始位置に対する第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が、108度、114度、120度、126度、132度に設定されたときの保護層の表面から第1の情報層までの厚さのばらつきが測定された。これらの角度は、4層情報記憶媒体の最適なずれ角θとなる60度に対して、0%、±10%、±20%だけ変更した角度に相当する。図12の右側の縦軸には、プロットされた点と対応する角度が示されている。本試験において、基板の文字情報の開始位置に対する第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が、48度、54度、60度、66度、72度に設定されたときの保護層の表面から第1の情報層までの厚さのばらつきが測定された。これらの角度は、4層情報記憶媒体の最適なずれ角θとなる60度に対して、0%、±10%、±20%だけ変更した角度に相当する。尚、本試験において、第1の転写スタンパの文字情報の開始位置は、基板の文字情報の開始位置に重ね合わせられた。
【0170】
図12中のプロット点は、各条件において、最も悪い(厚さばらつきが最も大きい)データを表す。図12中の水平線Hは、上述の一連の試験において判断基準として用いられた「2.5μm」の厚さばらつきを表す。
【0171】
図12のグラフから、基板の文字情報の開始位置に対する第2の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が60度±10%であり、且つ、基板の文字情報の開始位置に対する第3の転写スタンパの文字情報の開始位置の角度差が120度を中心に60度の±10%範囲内であるとき、目標とする「2.5μm」未満の厚さばらつきが達成される。
【0172】
上記の一連の試験から、上記の数式1に基づいて算出されたずれ角を用いて、転写スタンパの向きが設定されることにより、好適な厚さばらつきが得られる。また、転写スタンパの向きに対する設定値に対する±10%のずれ範囲内において、好適な厚さばらつきが維持される。
【0173】
上述の如く、中間層の積層回数に応じて、転写スタンパの向きを基板に対して変更することによって、厚さばらつきが低減される。3層情報記憶媒体の場合、中間層の積層回数は2回である。したがって、上記の数式によって算出される最適なずれ角θは「90度」である。かくして、中間層の積層のたびに転写スタンパの向きが90度ずつ変更されると、良好な厚さばらつきが達成される。4層情報記憶媒体の場合、中間層の積層回数は3回である。したがって、上記の数式によって算出される最適なずれ角θは「60度」である。かくして、中間層の積層のたびに転写スタンパの向きが60度ずつ変更されると、良好な厚さばらつきが達成される。4層を越える数の情報層を備える多層情報記憶媒体においても、上述の原理は好適に適用される。N層情報記憶媒体では、中間層の積層のたびに転写スタンパの向きが180/(N−1)度ずつ変更されると良好な厚さばらつきが達成される。
【0174】
上述された実施形態は、以下の構成を主に備える。
【0175】
上述の実施形態の一局面に係る第1基準点が形成された基板上にN個の情報層(Nは、3以上の整数)、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、第Nの前記情報層上に積層された保護層と、を含む情報記録媒体を製造する方法は、前記基板上に前記情報層を形成する工程と、前記情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、前記放射線硬化性樹脂を介して、第2基準点が形成された転写スタンパを貼り合わせる工程と、前記放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、前記転写スタンパを前記放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、前記中間層を形成する工程と、を(N−1)回繰り返し、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の前記中間層と、を順次形成した後、第Nの前記情報層を形成する工程と、第Nの前記情報層上に前記保護層を形成する工程と、を含み、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように前記転写スタンパが貼り合わせられることを特徴とする。
【0176】
上記構成によれば、第1基準点が形成された基板上に情報層を形成する工程と、情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程と、放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、転写スタンパを放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、中間層を形成する工程とが(N−1)回繰り返される。この結果、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の中間層とが順次形成される。その後、第Nの前記情報層が形成される。第Nの情報層上には、保護層が形成される。放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられる。したがって、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。この結果、1層当たりの記録容量が高くなった多層メディアにおいても記録再生に係る品質低下が抑制された高精度なメディアが提供される。
【0177】
上記構成において、(N−1)個の前記転写スタンパのチルトのパターンは、前記転写スタンパの前記第2基準点が0時の方向として規定されるとき、3時、6時、9時の各方向における相対的なチルト方向が、略同じチルト方向であることが好ましい。
【0178】
上記構成によれば、(N−1)個の転写スタンパのチルトのパターンは、転写スタンパの第2基準点を0時の方向として規定されるとき、3時、6時、9時の各方向における相対的なチルト方向が、略同じチルト方向である。放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられる結果、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0179】
上記構成において、前記転写スタンパのチルトのパターンは、前記転写スタンパの前記第2基準点に対するタンジェンシャルチルトの変動パターンで表されることが好ましい。
【0180】
上記構成によれば、タンジェンシャルチルトの変動パターンで、転写スタンパのチルトのパターンが変動しても、放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられる結果、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0181】
上記構成において、前記転写スタンパの前記第2基準点は、前記転写スタンパを製造する転写スタンパ製造装置によって形成されることが好ましい。
【0182】
上記構成によれば、転写スタンパの第2基準点は、転写スタンパを製造する転写スタンパ製造装置によって規定される。したがって、転写スタンパ製造装置によって規定される転写スタンパのチルトのパターンに対して、略一定の位置に転写スタンパの第2基準点が設けられる。この結果、放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる位置となるように、転写スタンパが貼り合わせられると、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0183】
上記構成において、前記基板の前記第1基準点は、前記基板を製造する基板製造装置によって形成され、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程は、前記基板の前記第1基準点を読み取る工程と、前記基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、前記基板の前記第1基準点を所定位置に合わせるように前記基板を回転させる工程とを含むことが好ましい。
【0184】
上記構成によれば、基板の第1基準点は、基板を製造する基板製造装置によって形成される。放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程は、基板の第1基準点を読み取る工程と、基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、基板の第1基準点を所定位置に合わせるように、基板を回転させる工程とを含む。基板の第1基準点は、基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、略一定となるので、製造される情報記録媒体の品質が安定することとなる。
【0185】
上記構成において、前記基板は、前記情報層が積層される第1面と、該第1面と反対側の第2面と、を含み、前記基板の前記第1基準点を読み取る工程は、前記第2面側から光を照射し、前記基板を通して前記第1面からの反射光を読み取る工程を含むことが好ましい。
【0186】
上記構成によれば、基板は、情報層が積層される第1面と、第1面と反対側の第2面と、を含む。基板の第1基準点を読み取る工程において、第2面側から光が照射される。基板を通して第1面からの反射光を用いて、第1基準点が適切に読み取られる。
【0187】
上記構成において、前記放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程は、前記転写スタンパの前記第2基準点を読み取る工程と、前記基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、前記基板の第1基準点に対する前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように、前記転写スタンパを回転させる工程と、を含むことが好ましい。
【0188】
上記構成によれば、放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程において、転写スタンパの第2基準点が読み取られる。その後、基板と転写スタンパとの貼り合わせ位置において、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が毎回異なる向きとなるように、転写スタンパが回転される。この結果、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0189】
上記構成において、前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が、180/(N−1)±10%の範囲でそれぞれずらされるように、前記転写スタンパが前記基板に貼り合わせられることが好ましい。
【0190】
上記構成によれば、基板の第1基準点に対して、転写スタンパの第2基準点が、180/(N−1)±10%の範囲でそれぞれずらされて、転写スタンパが基板に貼り合わせられる。したがって、転写スタンパのチルトに起因する中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される複数の樹脂層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。
【0191】
上述の実施形態の他の局面に係る情報記録媒体は、基板と、該基板上に形成されたN個の情報層(Nは、3以上の整数)と、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、保護層と、を備え、前記基板には第1基準点が形成され、前記中間層それぞれには第2基準点が形成され、前記第1基準点に対する第2基準点の位置が、前記中間層それぞれごとに異なることを特徴とする。
【0192】
上記構成によれば、基板上には、N個の情報層と、情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、保護層とが形成される。基板には第1基準点が形成される。中間層それぞれには、第2基準点が形成される。第1基準点に対する第2基準点の位置が、中間層それぞれごとに異なるので、情報記録媒体内における中間層の厚さ分布の広がりが抑制される。加えて、積層される中間層の厚み変動の悪化点の重畳が抑制される。かくして、保護層の表面から各情報層までの厚さの変動が低減され、記録再生に係る品質低下が抑制される。この結果、1層当たりの記録容量が高くなった多層メディアにおいても記録再生に係る品質低下が抑制された高精度なメディアが提供される。
【産業上の利用可能性】
【0193】
上述された実施形態の原理は、多層情報記憶媒体の中間層の厚さを高い精度で制御するために好適に用いられる。上述された実施形態の原理は、特に、100GBの容量を有する3層情報記憶媒体といった多層大容量媒体並びにその製造方法に好適に適用される。
Claims (9)
- 第1基準点が形成された基板上にN個の情報層(Nは、3以上の整数)、前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、第Nの前記情報層上に積層された保護層と、を含む情報記録媒体を製造する方法であって、
前記基板上に前記情報層を形成する工程と、
前記情報層上に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、前記放射線硬化性樹脂を介して、第2基準点が形成された転写スタンパを貼り合わせる工程と、前記放射線硬化性樹脂を放射線照射によって硬化する工程と、前記転写スタンパを前記放射線硬化性樹脂との界面で剥離し、前記中間層を形成する工程と、を(N−1)回繰り返し、(N−1)個の前記情報層と、(N−1)個の前記中間層と、を順次形成した後、第Nの前記情報層を形成する工程と、
第Nの前記情報層上に前記保護層を形成する工程と、を含み、
前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように前記転写スタンパが貼り合わせられることを特徴とする情報記録媒体の製造方法。 - (N−1)個の前記転写スタンパのチルトのパターンは、前記転写スタンパの前記第2基準点が0時の方向として規定されるとき、3時、6時、9時の各方向における相対的なチルト方向が、略同じチルト方向であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体の製造方法。
- 前記転写スタンパのチルトのパターンは、前記転写スタンパの前記第2基準点に対するタンジェンシャルチルトの変動パターンで表されることを特徴とする請求項2記載の情報記録媒体の製造方法。
- 前記転写スタンパの前記第2基準点は、前記転写スタンパを製造する転写スタンパ製造装置によって形成されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の情報記録媒体の製造方法。
- 前記基板の前記第1基準点は、前記基板を製造する基板製造装置によって形成され、
前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程は、
前記基板の前記第1基準点を読み取る工程と、
前記基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、前記基板の前記第1基準点を所定位置に合わせるように前記基板を回転させる工程とを含むことを特徴とする請求項4記載の情報記録媒体の製造方法。 - 前記基板は、前記情報層が積層される第1面と、該第1面と反対側の第2面と、を含み、
前記基板の前記第1基準点を読み取る工程は、前記第2面側から光を照射し、前記基板を通して前記第1面からの反射光を読み取る工程を含むことを特徴とする請求項5記載の情報記録媒体の製造方法。 - 前記放射線硬化性樹脂を介して転写スタンパを貼り合わせる工程は、
前記転写スタンパの前記第2基準点を読み取る工程と、
前記基板と前記転写スタンパとの貼り合わせ位置において、前記基板の第1基準点に対する前記転写スタンパの前記第2基準点が毎回異なる位置となるように、前記転写スタンパを回転させる工程と、を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の情報記録媒体の製造方法。 - 前記放射線硬化性樹脂を介して前記転写スタンパを貼り合わせる工程において、
前記基板の前記第1基準点に対して、前記転写スタンパの前記第2基準点が、180/(N−1)±10%の範囲でそれぞれずらされるように、前記転写スタンパが前記基板に貼り合わせられることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の情報記録媒体の製造方法。 - 基板と、
該基板上に形成されたN個の情報層(Nは、3以上の整数)と、
前記情報層を隔てる(N−1)個の中間層と、
保護層と、を備え、
前記基板には第1基準点が形成され、
前記中間層それぞれには第2基準点が形成され、
前記第1基準点に対する第2基準点の位置が、前記中間層それぞれごとに異なることを特徴とする情報記録媒体。
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