JP4143992B2 - アルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主としてアルコール発酵を伴う酒類醸造に使用する仕込方法及び装置に関するものである。
【002】
【従来の技術】
アルコール発酵を伴う仕込みでは、1回の仕込みから複数回の仕込みを行う場合がある。仕込みでは、発酵タンクに麹、蒸煮原料、水等を別々に投入し、混合後、発酵させていた。麹、蒸煮原料等の固形物は、ベルトコンベア又は空気輸送をs評して搬送していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
アルコール発酵を伴う酒類の仕込に使用する汲水は、発酵のバランスを維持するためには、高い比率で使用することができない。このため、固形原料が液化していない仕込初期の麹は粘性が高く、少ない汲水の中で固形原料を均一に混合することが困難であった。
【0004】
麹、蒸煮原料等の固形原料をベルトコンベアで搬送する場合には、落下する異物の混入と固形原料の床への飛散が問題となる。また、ベルトの搬送面に対する受けローラ等の接触により、サ二タリ性の維持が難しくなる。
【0005】
空気輸送を使用して固形原料を搬送する場合には、動力の極めて大きな送風装置を使用する必要がある。また、吸込み空気からの異物の混入や、空気輸送の排出口から発生する排気と微粉末は、発酵タンクの周辺に飛散し、サニタリ性を悪化させている。さらに、口径の大きな空気輸送配管を用いると、内部を充分に洗浄することが困難であり、原料自体への汚染の問題がある。
【0006】
この発明の課題は、固形原料と水を均一に攪拌することができ、異物の混入や原料及び原料微粉末と排気の飛散を防止し、搬送中のサニタリ性を維持することのできる、アルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1では、仕込みの汲水の一部又は全部を使用して固形原料と混合しながら輸送する混合輸送工程を設け、この混合輸送工程による発酵タンクへの固形原料と汲水を投入後に発酵を行うと共に、前記発酵タンクまで固形原料と混合されて搬送される汲水を前記固形原料から分離する。分離したこの汲水を混合輸送工程へ返水することにより、前記混合輸送工程において輸送用の汲水として再使用する。
この発明の請求項2では、前記請求項1に記載の方法において、一次仕込みに使用する固形原料が麹だけである。
この発明の請求項3では、汲水と仕込原料を混合する混合装置に輸送ポンプを接続し、この輸送ポンプから発酵タンクまでを、輸送配管で接続するに当たって、前記発酵タンクまで搬送された前記汲水を固形原料と分離する分離装置を設け、分離装置と分離した汲水を前記混合装置へ返水する返水ポンプを、返水配管で接続し、この返水ポンプと前記混合装置を接続する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に図面と表1によりこの発明の方法と装置の実施例を説明する。
図1は、固定式の返水装置を使用するこの発明によるアルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置のフローシートである。図2は、移動式の返水装置を使用するこの発明によるアルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置のフローシートである。表1は、アルコール発酵を伴う酒類の仕込配合例を示す。
【0009】
【表1】
【0010】
米焼酎の標準的な仕込配合を、表1に示す仕込配合に沿って説明する。一次仕込みでは、白米600kgで製麹下した麹と720リットルの汲水を使用する。白米量に対して120%の汲水を使用することが、一般的である。一次仕込みの汲水は、多くすると麹の酸量が薄められ雑菌汚染の危険性があり、少なくすると麹の粘性が増加し酵母の生育が遅れる。一次仕込み移行の仕込では、白米1200kgを蒸煮した蒸米と2160リットルの汲水を使用し、180%の汲水歩合となる。なおここで言う汲水とは仕込みに使用する水であって、水道水や地下水をも総称する。
【0011】
一次仕込では、汲水と麹を、連続的に混合装置1に投入する。汲水と麹は、定量的に供給するほうが安定した混合と搬送を行うことができる。混合装置1で混合された汲水と麹は、輸送ポンプ2により、輸送配管3を通り発酵タンク4に仕込まれる。麹を全量搬送後、残した仕込水を使用して輸送配管3中の残存物を発酵タンク4に押出してもよい。発酵タンク4の一次仕込が終了した後、一次発酵を行う。
【0012】
表1では一次仕込み以降の仕込があるが、仕込み原料として汲水と麹(固形原料)だけを使用する場合には、一次仕込みだけで仕込みを完了する場合もある。混合装置1には、混合スクリュウを使用する場合や、各種の固液混合装置を使用することができる。
【0013】
白米の糸状菌が繁殖した麹は撥水性があり、麹同士が固着して塊となる場合もあるため、均一な吸水が行われるためには、水との充分な接触が必要となる。混合装置1に投入された汲水と麹は、少量づつ連続的に混合装置1の攪拌操作により混合される。さらに、輸送ポンプ2による攪拌操作を受けながら、輸送配管3中で麹への吸水が進行し発酵タンク4に搬送される。発酵タンク4には、充分に汲水と混合された麹が供給されることになる。混合装置1で混合された汲水と麹は輸送配管3中を移動するため、外部からの異物が混入することがなく、麹が外部に飛散することもない。上述のようにして混合輸送工程Pが構成される。
【0014】
従来法では、発酵タンクに汲水を入れた後、麹を投入して攪拌することで混合する。この方法では、全量の麹を一度に混合することになるため、均一な混合を行うことが困難であった。また、麹をベルトコンベアで搬送すると、落下する異物の混入や麹の床への飛散が問題となる。また、ベルトの搬送面に対する受ローラ等の接触により、サニタリ性の維持が難しくなる。
【0015】
空気輸送を使用して麹を搬送すると、動力が極めて大きな送風装置を使用する必要がある。また、空気輸送の排出口から発生する排気と微粉末は発酵タンク周辺に飛散し、サニタリ性を悪化させている。さらに、口径の大きな空気輸送配管は、内部を充分に洗浄することが困難であり、原料自体への汚染の問題がある。
【0016】
一次仕込み以降の仕込では、汲水と蒸米を、連続的に混合装置1に投入する。汲水と蒸米は、定量的に供給する方が安定した混合と搬送を行なうことができる。混合装置1で混合された汲水と蒸米は、輸送配管3を通り発酵タンク4に仕込まれる。蒸米を全量搬送後、残した仕込水を使用して搬送配管3中の残存物を発酵タンク4に押し出してもよい。発酵タンク4の一次仕込み以降の仕込が終了後に、発酵を行なう。
【0017】
一次仕込み、または一次仕込み以降の仕込みにおいて、原料の吸水が早い場合等には、麹又は蒸米と混合する汲水が仕込み中に不足することがある。このような場合には、発酵タンク4に分離装置5を設け、輸送配管3から供給される汲水だけを、返水配管6を通して返水ポンプ7により混合装置1に返水する。
【0018】
図1には、固定式の返水装置5aを使用するフロー図を示す。混合装置1に連続的に供給される麹又は蒸米は、汲水と充分撹拌された後に、輸送ポンプ2により輸送配管3を通って発酵タンク4に仕込まれる。汲水の混合装置1への供給方法は、麹又は蒸米と同様に連続的とし、配管から直接混合装置1へ供給してもよいが、シャワ状に分散させてもよい。
【0019】
発酵タンク4の内部には、麹又は蒸米の通過を阻止し(通水性がある)金属、多孔板、油脂製ネット等で構成した通水性の筒状の返水装置5aを設ける。発酵タンク4に仕込まれた汲水は、返水装置5aを透過し返水配管6を通して返水ポンプ7により返水され、切替バルブ8からノズル12、撹拌羽根13を経て混合装置1に供給される。
【0020】
図2には、移動式の返水装置5bを使用するフロー図を示す。混合装置1に連続的に供給される麹又は蒸米は、汲水と充分撹拌された後に、輸送ポンプ2により輸送配管3を十手返送装置5bに供給される。汲水の混合装落1への供給方法は、麹又は蒸米と同様に連続的とし、配管から直接、混合装置1へ供給してもよいが、シャワ上に分散させてもよい。
【0021】
発酵タンク4としての2基の発酵タンク4a、4bの上方には移動レール9を設け、車輪を備えた返水装置5bを移動可能に設ける。移動可能な返水装置5bには、麹又は蒸米の通過を阻止し通水性のある金網、多孔板、樹脂製ネット等で構成した分離板10を傾斜させて設ける。分離板10上に供給される麹又は蒸米は、分離板10表面に沿って落下し各発酵タンク4a、4bに投入される。汲水は分離板10を透過して返水装置6を通して返水ポンプ7により返水される。混合装置1への供給は、切替バルブ8を使用することなく、返水タンク11を設けて行なってもよい。移動可能な返水装置5bを使用することにより、発酵タンク4として複数のタンク4a、4b、4cに容易に仕込みを行なうことができる。移動可能な返水装置5bでは、輸送装置3と返水配管6を柔軟性のある配管として、返水装置5bの移動を容易にする。
【0022】
返水装置5は穀類程度の粒状固形物と液体を分離する機能があればよく丸網回転式の分離機や、ネットコンベア式の分離機等も使用することができる。実施例では米焼酎について説明したが、麦等の他の原料を使用したアルコール発酵を伴う酒類の仕込みにおいても同様の効果を示す。
【0023】
【発明の効果】
少量の汲水と原料を連続的に混合しながら仕込むことにより、少ない汲水の中で固形原料を均一に混合することができる。また、輸送用として汲水が不足する場合においても、返水装置を設けることで混合装置に仕込水を返水することにより、固形原料を均一に混合しながら安定した仕込みを行なうことができる。
【0024】
配管を利用した搬送であるため、ベルトコンベアや空気輸送と比較して、外部からの異物の混入と原料の飛散がない。また、配管の洗浄が容易なため、サニタリ性の維持が容易となる。
【0025】
以上の効果により、原料と汲水を均一に安定して混合輸送することができ、異物の混入や原料及び原料粉末を排気の飛散を防止し、搬送中のサニタリ性を維持することのできるアルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固定式の返水装置を使用するこの発明によるアルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置のフローシートである。
【図2】 この発明によるアルコール発酵を伴う酒類の仕込方法及び装置のフローシートである。
【符号の説明】
1 混合装置
2 輸送ポンプ
3 輸送配管
4a,4b 発酵タンク
5 分離装置
6 返水配管
7 返水ポンプ
8 切替バルブ
9 移動レール
10 分離板
11 返水タンク
12 ノズル
13 撹拌装置
P 混合輸送工程
Claims (3)
- 仕込み用の汲水の一部又は全部を使用して固形原料と混合しながら輸送する混合輸送工程を構成し、この混合輸送工程による発酵タンクへの固形原料と汲水との投入後に発酵を行うに当たって、前記発酵タンクまで固形原料と混合されて輸送される汲水を固形原料から分離し、分離した汲水を前記混合輸送工程へ返水することにより、この混合輸送工程において輸送用の汲水として再使用する、アルコール発酵を伴う酒類の仕込方法。
- 一次仕込みに使用する前記固形原料が麹だけである、請求項 1 に記載のアルコール発酵を伴う酒類の仕込方法。
- 汲水と仕込原料を混合する混合装置に輸送ポンプを接続し、この輸送ポンプから発酵タンクまでを輸送配管で接続すると共に、発酵タンクまで搬送された汲水を固形原料と分離する分離装置を設け、分離装置と分離した汲水を前記混合装置へ返水する返水ポンプを返水配管で接続し、この返水ポンプと前記混合装置を接続するアルコール発酵を伴う酒類の仕込み装置。
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