JP4141806B2 - 枚葉塗工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板材の表面に、枚葉式に塗膜を形成するための枚葉塗工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子部品工業や光学部品工業では、各種板材の表面に塗膜を形成する工程が多く設けられている。たとえば、液晶表示装置でカラー表示を行うために用いられるカラーフィルタでは、フォトレジストなどの各種薬液をガラス基板上に繰り返し塗布することで生産されており、この意味では、精密塗布技術は最重要な要素技術であるといえる。
【0003】
生産技術や材料の進歩、さらには需要の開拓によって液晶表示装置は年々大画面化しており、これに使用されるカラーフィルタも大型化している。
【0004】
また、液晶表示素子などの平面素子の製造は、大型基板上に多数の画面を一括形成することが可能であることから、生産性向上、コストダウンの観点からも、生産時に使用する基板の大面積化傾向は今後も継続することが予想されている。
【0005】
液晶ディスプレイは、レジストや着色材、保護膜といった多数の薬液の塗布やパターン形成を繰り返すことで生産される。従来は、これらの塗膜の形成はスピンコータを要素とする塗布装置が使用されてきた。スピンコータは、板材を表面に垂直な軸線まわりに高速回転させ、塗布すべき薬液を回転中心付近に滴下し、遠心力と薬液の表面張力とを利用して、薬液の薄膜を精度良く形成できる利点があるが、スピンコータをこのような大型化した基板への薬液塗布に用いた場合、高価な薬液の90%以上を飛散する結果となり、コスト的なロスが大きい問題がある。また、塗布する薬液は、通常樹脂や顔料などの固型分を溶剤で溶解・分散しているもので、飛散した薬液に由来する乾燥物が塗膜上に再付着して製品上に欠陥を発生する問題もある。さらに、ガラス基板が大型化した場合、スピンコータのような高速回転を必要とする装置の製造が困難である点も問題となる。このように、スピンコータは、大面積化が著しい液晶表示装置用部材製造に用いる塗布装置としては、限界にあるといえる。
【0006】
これに対して、スリット状のノズルから塗布すべき薬液を精密に押し出し、これを被塗布面上に置くことで、薄膜を直接塗布するダイコータを用いる方法も提案されている。さらに、被塗布面を下方に向けておき、スリット状のノズルを上向きにして、スリット間から表面張力により薬液を流出させて精密な塗布を行なうキャピラリコータを用いる方法も提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【特許文献1】
特開2001−62370号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
キャピラリコータでは、ノズルに、毛管作用を生じるような狭いスリットが塗布すべき板材の幅方向に長く延びるように形成されており。塗布液となる各種薬液は、スリット状の隙間を毛管作用と静圧とによって、重力に抗して上昇しスリット状ノズルの上方に位置する基板下面の塗布面に精密に塗布される。
【0008】
液晶表示素子などのガラス基板を用いた生産は、枚葉方式で(1枚ずつ)行う必要があり、塗布すべき板材の装置への装着や、装置からの板材の装置からの脱着工程がある。一方、工場での生産では、ロット切り替えや各種トラブルに伴う数分から数十分の待機時間が発生することは不可避である。コータは断続的に運転されることを前提としなければならない。
【0009】
一方、ガラス基板に塗布される薬液は、一般に有機溶媒を多量に含んでいる。このため静止状態で、長時間空気に曝された場合、薬液表面から溶剤が揮発することで、粘度増加や、固化し、塗布不良を誘発することがある。また、狭いスリット状ノズルの内部では固形物や気泡の移動が難しく、いったん気泡や固形物などが巻き込むと除去することが困難となり、塗膜面の気泡や、塗布むらなどの大型欠陥を連続して発生する結果となりカラーフィルタなどの製造にとっては致命的な問題といえる。
【0010】
本発明の目的は、キャピラリコータを用いた塗膜形成工程において、ノズルの清浄度を維持し、かつ気泡発生も防止することができる枚葉塗工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明は、水平な姿勢の板材の下面側に、上向きのスリット状ノズルを配置して、スリット状ノズルから静圧によって塗布液を流出させ、板材とスリット状ノズルとを相対的に移動させて、該下面に塗膜を形成する枚葉塗工方法であって、
スリット状ノズルから板材への塗布を行わない待機期間に、塗布液を貯留するタンクを鉛直方向に移動させて、タンク内の液面レベルを変化させることによって、スリット内での塗布液の液面レベルを、スリット間隔の0.5倍以上で2倍以下となる範囲で、スリット先端の開口部から低下させる状態に維持することを特徴とする枚葉塗工方法である。
【0011】
本発明に従えば、枚葉塗工方法では、水平な姿勢の板材の下面側に、上向きのスリット状ノズルを配置して、スリット状ノズルから静圧によって塗布液を流出させ、板材とスリット状ノズルとを相対的に移動させて、下面に塗膜を形成するキャピラリコータを用いる。板材は、1枚ずつ塗布するので、板材の装着や除去を行っている間は、塗布を行うことができない。塗布を行わない間、塗布液はノズルのスリット内に滞留し、時間の経過とともに固まりやすくなる。また、塗布液の液面が浅く、スリットの開口部に近い場合には、溶剤の揮発が早まりノズル開口部周辺に凝固物が固まりやすくなる問題があり、逆に、塗布液の液面が深くなった(開口部から遠くなった)場合、スリット内に侵入した空気が完全に排除されず気泡として残留しやすくなる。塗布液を貯留するタンクを鉛直方向に移動させることによってスリット内での塗布液の液面レベルを調整することができる。そして、待機状態でのスリット内での塗布液の液面レベルを、スリット間隔の0.5倍以上で2倍以下の範囲に維持することで、ノズルの清浄度を維持することができ、かつ塗膜中の気泡発生や、気泡起因の塗布むら発生を防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明の実施の一形態としての枚葉塗工方法に使用するキャピラリコータ2の概略的な構成を示す。図1は正面視、図2は左側面視してそれぞれ示す。キャピラリコータ2は、ガラス基板4にレジストなどの薬液の塗膜を形成するために使用する。ガラス基板4は、たとえば1100mm×1250mm程度の大きさを有し、カラーフィルタ製造工程には、その一表面に0.5〜2μmの厚みに塗膜を形成する工程を含んでいる。ノズル6は、一定の幅を有するスリット6aが上方に開口するようにベースフレーム8内に配置され、ガラス基板4の下面にスリット6aから上昇して流出する薬液を塗布することができる。
【0013】
薬液を塗布するガラス基板4は、吸着テーブル10の表面に真空吸着などで保持される。吸着テーブル10は、軸線が水平な回転軸12を中心として回転可能であり、吸着面を上向きにする状態でガラス基板4を吸着し、ガラス基板4が下側となるように180°回転する。回転軸12の軸線方向の両端には、移動フレーム14,16が設けられ、回転軸12を支持している。移動フレーム14,16は、ベースフレーム8の正面側および背面側にそれぞれ設けられる走行ガイド18,20に沿って、図1の左右方向に移動可能である。移動フレーム14,16内には、移動のためのリニアモータがそれぞれ設けられており、円滑かつ正確な移動を行うことができる。移動フレーム14,16が移動すると、吸着テーブル10の下面に吸着されているガラス基板4も移動する。ノズル6は、移動するガラス基板4の下面に臨む位置に配置されている。スリット6aは、正面側から背面側に延びるように設けられている一定幅の隙間である。ノズル6の全幅は、たとえば前述のガラス基板4を使用することを前提として、1300mm程度である。
【0014】
ノズル6は、昇降機構22によって昇降変位可能である。ノズル6が上昇すると、移動するガラス基板4の下面に薬液を塗布することができる。ノズル6を下降させると、塗布している薬液を切ることができる。ノズル6に対する薬液の供給は、タンク24からホース26を介して行われる。タンク24は、昇降機構28によって昇降変位可能である。タンク24の上方には、タンク24内の薬液の液面の高さを検知する液面センサ30が設けられている。タンク24には、別に設けた薬液タンクから薬液が所定のタイミングで補給される。
【0015】
ノズル6には、一定幅のスリット32が、正面側から背面側に延びるように形成されており、ノズル6内に挿入されるスペーサ40によって確保される。スリット32の延びる方向は、ガラス基板4の移動方向と垂直である。スリット32内の薬液の液面レベルは、ホース26によって連通しているタンク24内の液面レベルを変えることで調節可能である。すなわち、昇降機構28でタンク24を上下に移動させれば、タンク24内の液面レベルが変化し、ノズル6のスリット32内の液面レベルを調整することができる。
【0016】
塗布の概要を説明する。まず、塗布基板装着工程では、吸着テーブル10の吸着面を上向きにして、薬膜形成面を上向きにしたガラス基板4を吸着テーブル10に装着する。ノズル6は、下方で待機している。ノズル6には、前述のスリット32が形成され、スリット32には塗布液である薬液34が充填されている。吸着テーブル反転工程では、ガラス基板4が装着された吸着テーブル10を回転軸12周りに180°回転して反転させる。ガラス基板4は、吸着テーブル10の下側となり、塗膜形成面が下面側となる。
【0017】
塗布開始位置への移動工程では、ガラス基板4を下方に吸着した吸着テーブル10を含めて、図1および図2に示す移動フレーム14,16が移動し、ガラス基板4で塗布を開始すべき一端がノズル6の直上の位置に達するまで移動する。接液工程では、ノズル6を上昇させ、ガラス基板4の表面とノズル6の先端との間の間隔を、20〜40μmとする。タンク24は、図2に示す昇降機構28で上下し、薬液34の液面の高さをガラス基板4の下面の高さに合わせる。この結果、ノズル6の開口部から、静圧で薬液34が流れ出し、ガラス基板4の下面に接触し、接液がなされる。
【0018】
塗布工程では、接液に続いて、150〜300μm程度の距離がガラス基板4とノズル6との間に生じるように、ノズル6とタンク24が下降する。この際、タンク24内の液面はノズル6の先端の高さとなるように調節される。
【0019】
次に、吸着テーブル10の移動が再開される。定常的な塗布速度としては、2〜3m/min前後が選択されるが、場合によってはこれ以上とすることも可能である。
【0020】
吸着テーブル10の移動によって、ノズル6の先端に対してガラス基板4の表面が相対的に移動する。
【0021】
薬液34の塗布は、ノズル6に設けられているスリット32を通じて行われる。スリット32は、ノズル6の先端に開口し、ノズル6の正面側から背面側まで一定の間隔dに形成される。この間隔dは200〜300μm程度であり、毛管作用も生じうる間隔であり、定常状態では、極めて安定な薬液供給がなされ、均一な塗膜が得られる。
【0022】
離液工程では、定常状態での塗布の後、吸着テーブル10を停止させ、ガラス基板4の他端側まで薬液34を塗布して塗膜36を形成した位置で停止させる。ノズル6を下降させ、タンク24も液面が併せて下降するようにすると、ガラス基板4の下面とノズル6との間の薬液34は引きのばされて切れ、離液が行われる。
【0023】
塗布終了工程では、吸着テーブル10が逆方向に移動し、吸着テーブル反転ならびに基板アンロード工程では、吸着テーブル10が回転軸12まわりに反転して、上側となるガラス基板4の吸着を停止し、薬液の塗布を完了したガラス基板4が取出され、次のガラス基板4の装着を待つ。
【0024】
離液から次のガラス基板4に対する接液までの期間は、ノズル6からは薬液34がガラス基板4に塗布されず、待機する期間となる。待機期間に、塗布液はノズル6のスリット32内に滞留し、時間の経過とともに固まりやすくなる。特に、塗布液の液面が浅く、スリットの開口部に近い場合には、溶剤の揮発が早まりノズル開口部周辺に凝固物が付着しやすくなる問題がある。また、逆に、塗布液の液面が深くなった(開口部から遠くなった)場合、スリット内に侵入した空気が完全に排除されず気泡として残留しやすくなる。
【0025】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
実施例
ポジ型感光性レジスト(クラリアント社製:AZTFP−310K)を用い、ヒラノテクシード社製キャピラリコータによる塗膜形成を表1の条件で行なった。この際、待機状態でのスリット内の塗布液のレベルを種々変更した状態で、ガラス基板(1100×1200mm)に表1の条件で、5分間隔で連続して塗膜を形成した。塗膜を形成したガラス基板は、90〜120度でプリベークし、溶媒を除去したのち、ナトリウムランプの反射照明、ならびに透過光を用いた目視観察を行ない、スリット状ノズルの清浄度低下に起因する塗布むらの有無を観察した。観察結果を表2に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
スリット間隔の0.5倍以上で2倍以下の範囲に維持することで、ノズルの清浄度を維持することができ、かつ塗膜中の気泡発生や、気泡起因の塗布むら発生を防止することができる。
【0030】
本発明は、前述のようなポジレジスト液をガラス基板4に塗布する工程ばかりではなく、他の被膜を、液状の状態で塗布して形成する工程に同様に適用することができる。また、移動フレーム14,16によってガラス基板4が静止しているノズル6に対して移動するけれども、ガラス基板4が静止して、ノズル6の方が移動するようにすることもできる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、枚葉塗工方法で板材を1枚ずつ塗布するための待機期間に、スリット状ノズルのスリット内での塗布液の液面レベルを、塗布液を貯留するタンクを鉛直方向に移動させて、タンク内の液面レベルを変化させることによって、スリット間隔の0.5倍以上で2倍以下となる範囲で、スリット先端の開口部から低下させる。液面をスリットの開口部から低下させるので、塗布液が外気に触れて固まるのを防いで、ノズルの清浄度を維持することができるとともに、液面の低下があまり大きくならないようにして、気泡発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による塗布に使用するキャピラリコータ2の一部を切り欠いて示す正面図である。
【図2】図1のキャピラリコータ2の左側面図である。
【図3】図1のノズル6の待機期間のスリット32内での薬液34の液面レベルの模式図である。
【符号の説明】
2 キャピラリコータ
4 ガラス基板
6 ノズル
10 吸着テーブル
14,16 移動フレーム
22,28 昇降機構
24 タンク
30 液面センサ
32 スリット
34 薬液
40 スペーサ
60,62 ノズル部材
Claims (1)
- 水平な姿勢の板材の下面側に、上向きのスリット状ノズルを配置して、スリット状ノズルから静圧によって塗布液を流出させ、板材とスリット状ノズルとを相対的に移動させて、該下面に塗膜を形成する枚葉塗工方法であって、
スリット状ノズルから板材への塗布を行わない待機期間に、塗布液を貯留するタンクを鉛直方向に移動させて、タンク内の液面レベルを変化させることによって、スリット内での塗布液の液面レベルを、スリット間隔の0.5倍以上で2倍以下となる範囲で、スリット先端の開口部から低下させる状態に維持することを特徴とする枚葉塗工方法。
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JP2002324305A JP4141806B2 (ja) | 2002-11-07 | 2002-11-07 | 枚葉塗工方法 |
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JP2004154716A JP2004154716A (ja) | 2004-06-03 |
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-
2002
- 2002-11-07 JP JP2002324305A patent/JP4141806B2/ja not_active Expired - Lifetime
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