JP4141521B2 - 滑り部材付き圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気等を圧縮する圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、空気等を効率的に圧縮する手段として、圧縮機が用いられる。この圧縮機は、不要となった気体エネルギや電気エネルギ等を利用してコンプレッサインペラを回転させ、この回転力により新気を圧縮しつつ送出するものである。
【0003】
具体的には、圧縮機は、コンプレッサハウジングと、このコンプレッサハウジング内に回転自在に支持されるコンプレッサインペラと、このコンプレッサインペラを回転させる駆動源とから構成される。
【0004】
そして、前記コンプレッサインペラは、その縁部が前記コンプレッサハウジングの壁面に沿うよう形成されたブレードを複数有し、コンプレッサインペラが回転した際に、前記ブレードが新気を吸引及び圧送する。
【0005】
このような圧縮機では、コンプレッサハウジングとコンプレッサインペラのブレードとの接触による破損を防止するため、コンプレッサハウジングとブレードとの間にある程度のクリアランスが必要であるが、両者のクリアランスが大きくなると、そのクリアランスから新気が漏れ、圧縮効率が低下する。
【0006】
上記したような圧縮効率の低下は、コンプレッサインペラの低速回転時に顕著となるので、所望の圧縮空気を得るには、コンプレッサインペラを高速回転させる必要があり、大きな駆動力を必要とする。
【0007】
このような要求に対し、コンプレッサハウジングとコンプレッサインペラとの接触を許容することで、コンプレッサハウジングとコンプレッサインペラとのクリアランスを極限まで減少させ、新気の圧縮効率を向上させる技術も開発されており、その一つに、アブレーダブルターボチャージャがある。
【0008】
前記アブレーダブルターボチャージャは、コンプレッサインペラのブレード縁部に対向するコンプレッサハウンジング壁面(シュラウド部)に、アルミやポリエステル樹脂等を混合させた粉末を溶射し、削られ易い皮膜を形成する、いわゆるアブレーダブル溶射を施し、これにより形成された皮膜でコンプレッサハウンジングとコンプレッサインペラとの隙間を減少させたものである。
【0009】
このようなアブレーダブルターボチャージャによれば、コンプレッサハウジングとコンプレッサインペラの耐久性を犠牲にすることなく、圧縮効率を向上させることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したようなアブレーダブルターボチャージャでは、皮膜の原料となるアルミやポリエステル樹脂を混合させた粉末が高価であるとともに、溶射の加工管理が難しいため加工費用が高価になるという問題がある。
【0011】
本発明は、前記した問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性を犠牲にすることなく高い圧縮効率を得られる圧縮機を安価に提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を採用した。すなわち、本発明にかかる滑り部材付き圧縮機は、コンプレッサハウジング内に回転自在に支持されるコンプレッサインペラと、前記コンプレッサハウジング内に取り込まれた新気を圧縮すべく前記コンプレッサインペラを回転駆動させる回転手段とを備えた圧縮機において、
前記コンプレッサインペラの新気の流入口から流出口にかけての外縁長さ L に対して1/2・ L 以内の範囲で、前記コンプレッサインペラの外縁に対向する前記コンプレッサハウジング壁面に溝を形成し、この溝に、前記コンプレッサインペラと接触する寸前まで突出させた滑り部材を装着したことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、コンプレッサインペラとコンプレッサハウジング壁面とのクリアランスが限りなく小さくなり、コンプレッサインペラの低速回転時に新気の漏れが防止される。
【0014】
また、コンプレッサインペラの回転に伴いブレードが滑り部材と接触した場合でも、滑り部材の摩擦抵抗が小さいので、両者の接触による摩擦熱が発生し難く、滑り部材やコンプレッサインペラ等を破損させることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる滑り部材付き圧縮機の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明にかかる滑り部材付き圧縮機の一実施態様を示す概略構成図である。
滑り部材付き圧縮機1は、新気を圧縮するコンプレッサ2と、このコンプレッサ2をギヤボックス6を介して駆動する電動モータ5と、前記コンプレッサ2で圧縮されるべき新気中の塵や埃等を収集するエアクリーナボックス8と、前記コンプレッサ2で圧縮された新気の温度を低下させるインタークーラ10とを備える。
【0017】
前記コンプレッサ2は、新気取入口2a及び圧縮空気排出口2bが形成されたコンプレッサハウジング2cと、このコンプレッサハウジング2c内に回転自在に指示されるコンプレッサインペラ3とから構成される。
【0018】
そして、前記コンプレッサハウジング2cの新気取入口2aには、吸気管7が接続され、この吸気管7は、エアクリーナボックス8に接続される。また、前記コンプレッサハウジング2cの圧縮空気排出口2bには、排気管9が接続され、この排気管9は、インタークーラ10の空気取入口に接続される。
【0019】
前記インタークーラ10の空気排出口には、所定の装置等に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給管11が接続される。
続いて、前記コンプレッサインペラ3は、コンプレッサホイール3aと、このコンプレッサホイール3aの表面に形成された複数のブレード3bとから形成され、前記ブレード3bは、通常、コンプレッサホイール3a表面に、流線の長さが異なるブレードを交互に配置するよう形成される。
【0020】
尚、ブレード3bの流線の長さとは、コンプレッサインペラ3の新気の流入口から流出口にかけた外縁の長さをいう。
また、前記コンプレッサホイール3aの軸心部には、コンプレッサハウジング2c及びギヤボックス6に回転自在に軸支されるロータシャフト4が貫通し、これらコンプレッサホイール3aとロータシャフト4とは、ロータシャフト4先端に取り付けられたナット21により固定され、一体で回転するようになっている。 ここで、コンプレッサハウジング2cとコンプレッサインペラ3の流線部とが対向する部分の拡大断面図を図2に示す。
【0021】
前記コンプレッサハウジング2cの内壁面において、コンプレッサインペラ3の流線部と対向する部位、いわゆるシュラウド部20には、コンプレッサインペラ3のブレード3bとのクリアランスを可能な限り減少させることを目的として、溝12を形成するとともに、この溝12には、前記ブレード3bと接触する寸前まで突出するよう形成された滑り部材13が装着されている。
【0022】
前記滑り部材13は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)を約50%(重量)と合成雲母を約50%(重量)を化学的に結合した樹脂、いわゆるフルオロシント500で形成される。
【0023】
上記したフルオロシント500は、高温においての荷重変形がフッ素樹脂に比べて非常に少ないうえ、熱を受けた際の寸法安定性がアルミニウムに近く、水蒸気の非透過性等の耐薬品性においてはテフロンに匹敵する。そして、フルオロシント500の電気的性能は、未充填PTFEと略同等の性能を有する。
【0024】
さらに、フルオロシント500は、その線形膨張係数がPTFEの5分の1であることから填め合いやクリアランスを考慮に入れなくても良いという利点を有する。
【0025】
また、フルオロシント500は、極低温から260℃までの温度範囲で使用可能であり、温度サイクル中や熱衝撃を与えた後でも、約343℃で形状安定性を維持する。
【0026】
そして、フルオロシント500は、PTFEの摩擦特性を維持しつつ、その硬度が摩擦特性の改良されたPTFEの3分の1であり、非ざらつき摩擦特性により、摩擦係数及び摩擦速度が低いので金属材料を磨耗させないという特性を有する。
【0027】
このような特性を有する滑り部材13をコンプレッサハウジング2cに装着する方法としては、溝12または滑り部材13に接着剤を塗布するとともに、この滑り部材13を溝12に圧入する方法を例示することができる。
【0028】
そして、滑り部材13を装着する範囲、すなわち溝12を設ける範囲は、ブレード3bの流線の長さLに対して1/2・L以内とし、さらに、流出口から1/2・Lまでの範囲とすることが好ましい。
【0029】
これは、新気の圧力が流出口から1/2・Lまでの範囲で上昇し、この範囲のクリアランスを十分小さくすれば、圧縮効率を高めることができ、逆に、流出口から1/2・Lの範囲においてシュラウド部20とブレード3bとのクリアランスが大きいと、このクリアランスから新気が漏れ、旋回流が生じて圧縮効率の大幅な低下を招くという発明者の知見に基づく。
【0030】
さらに、一般の圧縮機では、コンプレッサハウジングのシュラウド部とコンプレッサインペラのブレードとの見かけ上のクリアランスは、流入口側より流出口側の方が大きい。このことからコンプレッサインペラが十分な回転速度を得るまでの間、前記ブレードと前記滑り部材との接触する確率は、流出口側より流入口側の方が高く、コンプレッサインペラの回転速度の減衰や破損を招く虞がある。
【0031】
従って、前述したように、流出口から1/2・Lまでの範囲内に溝12を設けることにより、コンプレッサインペラ3の回転速度の減衰や破損を招くことなく、圧縮効率を向上させることができる。
【0032】
ここで図1に戻り、前記ギヤボックス6内に位置するロータシャフト4には、ピニオンギヤ4aが取り付けられる。このピニオンギヤ4aは、電動モータ5の回転軸5aに取り付けられた平歯車5bと噛み合っている。
【0033】
このように構成された圧縮機1では、電動モータ5が回転駆動されると、その回転力が平歯車5b及びピニオンギヤ4aを介してロータシャフト4に伝達され、次いでコンプレッサハウジング2c内のコンプレッサインペラ3に伝達される。
【0034】
そして、コンプレッサインペラ3が回転すると、コンプレッサハウジング2cの新気取入口2a付近に吸気負圧が発生し、この吸気負圧が吸気管7を介してエアクリーナボックス8に達する。このとき、エアクリーナボックス8内に新気が取り込まれ、その新気は、エアクリーナボックス8内で除塵及び除埃された後、吸気管7を介してコンプレッサハウジング2c内に吸引され、回転するコンプレッサインペラ3によって圧縮され、圧縮空気排出口2bへ送出される。
【0035】
その際、滑り部材13を備えたコンプレッサ2では、コンプレッサハウジング2cのシュラウド部20とコンプレッサインペラ3のブレード3bとの隙間から新気が漏れることが無く、新気を効率良く圧縮することができる。
【0036】
そして、前記コンプレッサハウジング2cの圧縮空気排出口2bから送出された圧縮空気は、排気管9を経てインタークーラ10に送られ、インタークーラ10にて冷却された後、圧縮空気供給管11を介して所定の装置へ供給される。
【0037】
尚、前述の実施の形態では、コンプレッサハウジング2cのシュラウド部20において、コンプレッサインペラ3のブレード3bと対向する部位の一部に滑り部材を装着する例について説明したが、図3に示すように、ブレード3bの流線部と対向するシュラウド部20の全範囲に溝14を設け、この溝14に滑り部材15を装着するようにしても良い。
【0038】
この場合、コンプレッサインペラ3のブレード3bは、動作初期において、滑り部材15に接触した状態で回転することが予想されるが、コンプレッサインペラが十分な回転速度に達すると、ローターシャフト4の軸心が軸受けの中心と略一致するようになるため、コンプレッサインペラの偏心位置での回転が抑制され、ブレード3bと滑り部材15との接触が無くなるものと考えられる。
【0039】
また、前述した実施の形態では、滑り部材の装着方法として、コンプレッサハウジングのシュラウド部に溝を設け、滑り部材もしくは溝に接着剤を塗布して、滑り部材を溝に圧入する方法を例示したが、例えば、図4〜6に示すように、筒状の滑り部材16の外壁にC型リング19を嵌着するとともに、コンプレッサハウンジング2cのシュラウド部20に、前記C型リング19が嵌合する環状の凹部18を有する溝17を形成して、前記滑り部材16を前記溝17に挿入するようにしてもよい。
【0040】
その際、前記滑り部材16は、軸方向の長さが前記溝17の軸方向の長さと略同一になるよう形成するとともに、その内周面16bがコンプレッサインペラ3のブレード3bの流線部と略同一形状で、且つ前記シュラウド部20よりも突出するよう形成されるものとする。
【0041】
さらに、前記滑り部材16の外周面には、前記溝17の凹部18と対応する位置に、前記C型リング19を嵌着するための溝16aが形成される。
このような構成によれば、滑り部材16は、前記C型リング19を介して前記溝17の段部に係止されるので、接着剤を塗布しなくとも滑り部材16が前記溝17から抜け落ちることがなく、さらに接着剤を併用すればより一層抜け落ち難くなる。
【0042】
また、上記した滑り部材16を形成する方法としては、図7に示すように、C型リング19が外嵌された筒体を、シュラウド部20の溝17に挿入した後に、前記シュラウド部20より突出した部位を切削加工して、コンプレッサインペラ3のブレード3bの流線と略同一形状をなすように形成する方法を例示することができる。
【0043】
その際、前記滑り部材16の内壁面は、前記シュラウド部20よりも若干突出するように形成し、滑り部材16とブレード3bとのクリアランスが、前記シュラウド部20とブレード3bとのクリアランスよりも狭くなるようにする。
【0044】
【発明の効果】
本発明では、コンプレッサハウジングに滑り部材を設けることにより、コンプレッサハウジングとコンプレッサインペラとのクリアランスを可能な限り小さくすることができ、新気の漏れによる圧縮効率の低下が抑制される。
【0045】
さらに、滑り部材とコンプレッサインペラが接触した場合でも、滑り部材の摩擦抵抗が小さいので摩擦熱の発生を抑制することができ、コンプレッサインペラの磨耗や破損が防止され、耐久性の低下が防止される。
【0046】
また、滑り部材とコンプレッサインペラとが接触した場合に、滑り部材の摩擦抵抗が小さいので、コンプレッサインペラの回転速度が減衰することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る滑り部材付き圧縮機の概略構成を示す断面図
【図2】コンプレッサハウジングのシュラウド部の拡大図
【図3】他の実施の形態に係るコンプレッサハウジングのシュラウド部の拡大図
【図4】他の実施の形態に係るコンプレッサハウンジングのシュラウド部の拡大図
【図5】 (a)は滑り部材の側面図、(b)は滑り部材の平面図
【図6】C型リングの斜視図
【図7】滑り部材の製造方法を説明する図
【符号の説明】
1 ・・・滑り部材付き圧縮機
2 ・・・コンプレッサ
2a・・・新気取入口
2b・・・圧縮空気排出口
2c・・・コンプレッサハウジング
3 ・・・コンプレッサインペラ
3a・・・コンプレッサホイール
3b・・・ブレード
4 ・・・ロータシャフト
4a・・・ピニオンギヤ
5 ・・・電動モータ
5a・・・回転軸
5b・・・平歯車
6 ・・・ギヤボックス
12・・・溝
13・・・滑り部材
14・・・溝
15・・・滑り部材
16・・・滑り部材
17・・・溝
18・・・凹部
19・・・C型リング
20・・・シュラウド部
21・・・ナット

Claims (1)

  1. コンプレッサハウジング内に回転自在に支持されるコンプレッサインペラと、前記コンプレッサハウジング内に取り込まれた新気を圧縮すべく前記コンプレッサインペラを回転駆動させる回転手段とを備えた圧縮機において、
    前記コンプレッサインペラの新気の流入口から流出口にかけての外縁長さ L に対して1/2・ L 以内の範囲で、前記コンプレッサインペラの外縁に対向する前記コンプレッサハウジング壁面に溝を形成し、この溝に、前記コンプレッサインペラと接触する寸前まで突出させた滑り部材を装着したことを特徴とする滑り部材付き圧縮機。
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