JP4138186B2 - 電球用アンバーコーティング膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンバー色光透過フィルタとして自動車用電球及び灯具、あるいは装飾用電球などに使用される電球用アンバーコーティング膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図14はアンバー色の光のみを透過させる従来のアンバーコーティングフィルタの構成を示す断面図である。同図の(a)に示す従来例1は、基板1上にオレンジ色(アンバー色)の顔料Pを成膜した単層膜のフィルタであり、(b)に示す従来例2は、基板1上に高屈折率層Hと低屈折率層Lを交互に積層した多層膜のフィルタである。
【0003】
上記の膜は、ディップ式、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などで成膜され、また多層膜の高屈折率層HはTiO2 ,Ta25 などが用いられ、低屈折率層LはSiO2 ,MgF2 などが用いられ、それらが交互に40層程度積層される。
【0004】
表1に従来例2の膜構成を示す。基板1側から1番目として外側の35番目までの各層H,Lの材料、屈折率及び光学膜厚(nm)を示す。
【0005】
【表1】
Figure 0004138186
【0006】
図15は従来例2の多層膜の透過率特性を示す図である。図示のように、波長580nmから透過率(%)が立ち上がり、黄色と赤色の光が混ざったアンバー色の光として出ていく。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来のアンバーコーティング膜にあっては、次のような問題点があった。
【0008】
単層膜のものは、顔料によるものなので、透過率が低く、また耐熱性が劣っており、例えば管球の点灯温度によって特性劣化が生じる。
【0009】
多層膜のものは、積層数が多いために、成膜時間が長くなり、コスト高となるとともに、積層膜総数が多い結果としてクラックが発生し易く、また材料費からもコスト高となる。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、透過率が高く積層数を減らすことができ、コスト低減を図ることができるとともに、耐熱性にも優れ、光学特性の劣化を生じることのない電球用アンバーコーティング膜を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電球用アンバーコーティング膜は、次のように構成したものである。
【0012】
(1)電球表面にコーティングした光学特性の異なる複数の層を有したアンバーコーティング膜であって、最外層をTaからなる金属酸化膜層とし、かつ、可視光域に吸収性のあるSi、a−Si、poly−Siのいずれかによって形成された可視光吸収層と、前記金属酸化膜層より低屈折率の前記SiO層を交互に積層し、前記金属酸化膜層、前記可視光吸収層及びSiO 層の合計が9層であることを特徴とする電球用アンバーコーティング膜。
【0013】
(2)前記内側の第1層をTa からなる金属酸化膜層としたことを特徴とする前記(1)記載の電球用アンバーコーティング膜。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を実験結果に基づき、図面を用いて説明する。
【0022】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の構成を示す断面図である。同図中、1はガラス基板で、これはハロゲンランプのバルブやAl23 などの材質であっても良い。2はこの基板1上に前述の成膜法により成膜された多層膜で、光学特性の異なる複数の層からなり、少なくとも一層は可視光域に吸収性のある可視光吸収層Absとなっている。本実施例では、可視光吸収層Absと低屈折率層Lが交互に積層されている。
【0023】
表2に実施例1の多層膜2の構成を示す。可視光吸収層AbsにSiを使用しているが、他にa−Si,poly−Si,SixOy(x,yは正数)を用いても良く、可視光域に吸収性があればFe23 ,Cr23 なども使用可能である。
【0024】
【表2】
Figure 0004138186
【0025】
図2は実施例1の透過率特性を示す図である。アンバー色の光を透過する波長580nmからアンバー色光を透過し始め、50%以上の透過率が得られている。また、可視光吸収層Absとして、Siに酸素を添加したSixOyを用いると、吸収が減ってアンバー色の透過率が高くなる。
【0026】
(実施例2)
図3は本発明の実施例2の構成を示す断面図である。本実施例の多層膜3は、実施例1の多層膜で最外層を金属酸化膜層Mとしたものである。金属酸化膜層MとしてはTa25 を用いているが、他にTiO2 ,ZrO2 ,ZnO,Nb25 ,Al23 ,CeO2 ,La23 ,SiO2 ,MgF2 等で形成することができる。表3に実施例2の多層膜3の構成を示す。
【0027】
【表3】
Figure 0004138186
【0028】
ハロゲンランプは通電すると300〜600℃の高温になり、この温度でSiは酸化されるため、上述の実施例1では高温のハロゲンランプのようなサンプルには使用できない。そこで本実施例では、Siの酸化を防ぐために金属酸化膜層Mを最外層に用いている。これにより、劣化のないアンバーコーティングランプやアンバーコーティングフィルタが実現できる。
【0029】
図4は実施例2の透過率特性を示す図である。本実施例ではさらにSi層を1層減らしているため、吸収が減り、アンバー光の透過率も向上する。
【0030】
(実施例3)
図5は本発明の実施例3の構成を示す断面図である。本実施例の多層膜4は、実施例2の多層膜で内側(バルブ表面側)の第1層のSi層も金属酸化膜層Mとしたものである。表4に実施例3の多層膜4の構成を示す。
【0031】
【表4】
Figure 0004138186
【0032】
図6は実施例3の透過率特性を示す図である。内側のSi層も金属酸化膜層Mに替えたことにより、実施例2よりもアンバー光の透過率はさらに良くなっている。
【0033】
(実施例4)
図7は本発明の実施例4の構成を示す断面図である。本実施例の多層膜5は、最外層をSiO2 、MgF2 等の低屈折率層Lとし、この低屈折率層Lと可視光吸収層Absを交互に積層させている。また、内側(バルブ側)の第1層も低屈折率層Lとしているが、これは省略しても透過率特性に影響しない。但し、これらの低屈折率層Lの光学膜厚はλ/2としている。表5に実施例4の多層膜5の構成を示す。
【0034】
【表5】
Figure 0004138186
【0035】
図8は実施例4の透過率特性を示す図である。透過率特性は多少劣るが、高価な金属酸化膜を用いていないので、その分コスト低減が図れる。
【0036】
(実施例5)
ハロゲンランプの光量相対強度は、図9の発光スペクトル図に示すように、黄色光よりも赤色光の方が強くなる。そこで、本発明の実施例5では、最外層を赤色光カット用の低屈折率層Lとしている。図10は実施例5の構成を示す断面図である。また、表6に実施例5の多層膜6の構成を示す。内側(バルブ側)の第1層も赤色光カット用の低屈折率層Lとしているが、この層は省略しても良い。
【0037】
【表6】
Figure 0004138186
【0038】
図11は実施例5の透過率特性を示す図である。最外層及び内側の第1層を低屈折率層(nd=λ/4)Lとすることで、波長630mm以上の赤色光がカットされ、アンバー色を強く出すことができる。
【0039】
(実施例6)
図12は本発明の実施例6の構成を示す断面図である。本実施例は純水なアンバー色を出すためにDHW(ダブルハーフウェイブ)型を応用して作製したものであり、表7に多層膜7の構成を示す。
【0040】
【表7】
Figure 0004138186
【0041】
図13は実施例6の透過率特性を示す図である。光量は若干減るが、Si層の吸収によって400nm以降の光がカットされ、600nm付近のアンバー光のみ透過されているのがわかる。
【0042】
以上、本発明の実施例について説明したが、各実施例とも可視光吸収層Absを含む多層膜2〜7とすることで、透過率が高くなり、層数も9層前後と減らすことができ、コスト低減を図ることができる。
【0043】
従来では、顔料を使用した単層膜は透過率が低く、透明金属酸化膜を用いた多層膜は35層〜40層と層数が多くなってコスト高となっていたが、上記のように本発明の実施例ではそれを解決している。
【0044】
また、従来の顔料品と比較すると、本発明の多層膜は耐熱性に優れており、点灯時の温度で光学特性の劣化を生じることはない。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、透過率が高く、積層数を減らすことができ、コスト低減を図ることができるとともに、耐熱性にも優れ、光学特性の劣化も生じることはないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の構成を示す断面図
【図2】 実施例1の透過率特性を示す図
【図3】 本発明の実施例2の構成を示す断面図
【図4】 実施例2の透過率特性を示す図
【図5】 本発明の実施例3の構成を示す断面図
【図6】 実施例3の透過率特性を示す図
【図7】 本発明の実施例4の構成を示す断面図
【図8】 実施例4の透過率特性を示す図
【図9】 裸ランプの発光スペクトルを示す特性図
【図10】 本発明の実施例5の構成を示す断面図
【図11】 実施例5の透過率特性を示す図
【図12】 本発明の実施例6の構成を示す断面図
【図13】 実施例6の透過率特性を示す図
【図14】 従来例の構成を示す断面図
【図15】 従来例2の透過率特性を示す図
【符号の説明】
1 基板
2 多層膜
3 多層膜
4 多層膜
5 多層膜
6 多層膜
7 多層膜
Abs 可視光吸収層
L 低屈折率層
M 金属酸化膜層

Claims (2)

  1. 電球表面にコーティングした光学特性の異なる複数の層を有したアンバーコーティング膜であって、最外層をTaからなる金属酸化膜層とし、かつ、可視光域に吸収性のあるSi、a−Si、poly−Siのいずれかによって形成された可視光吸収層と、前記金属酸化膜層より低屈折率のSiO層を交互に積層し、前記金属酸化膜層、前記可視光吸収層及び前記SiO 層の合計が9層であることを特徴とする電球用アンバーコーティング膜。
  2. 前記内側の第1層をTaからなる金属酸化膜層としたことを特徴とする請求項1記載の電球用アンバーコーティング膜。
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