JP3670193B2 - 多層膜フィルタ及び多層膜フィルタ付ハロゲンランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用のテールランプやストップランプその他装飾用ランプの光源等として用いられるランプのガラスバルブ表面に成膜され、600nm以下の可視光波長域の光を選択的にカットし、所望の色の光を選択的に透過させる多層膜フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の多層膜フィルタ91は、例えば図13に示すように構成されており、ガラスバルブ90の外側表面に、Ta2O5、TiO2、ZrO2、ZnO等の金属酸化膜による高屈折率膜91aと、SiO2、MgF2、AlF6等の金属酸化膜による低屈折率膜91bとがそれぞれ目的とする反射波長(以下設計波長という)λの1/4を光学膜厚として交互に複数層積層されて構成され、ガラスバルブ90の内面には図示しないフィラメントが配設されている。こうして積層された膜によって、フィラメントから発せれた光のうち設計波長λを中心とする波長領域の光は、光の干渉によって反射されるようになり、この波長領域以外の光が透過されるようになるものである。なお、光学膜厚とはその層の物理的膜厚×屈折率の値である。
【0003】
上記の成膜に当たっては、真空蒸着法、スパッタ法、ディップ法、イオンプレーティング法など適宜な成膜法によって形成されるものである。
【0004】
表1は従来の多層膜フィルタ91の具体的構成例を示すもので、例えば反射する可視光線の設計波長λを400〜600nmの範囲とし、高屈折率膜91aとして屈折率nH=2.3の金属酸化膜TiO2を光学膜厚λ/4=100〜150nmの範囲内で設定し、同様に低屈折率膜91bとして屈折率nL=1.46のSiO2を光学膜厚λ/4=100〜150nmの範囲内で設定したものである。また、層番号はバルブ90の表面に近い側から順番にふられている。
【0005】
本従来例において、まず、層番号2〜17層は高屈折率膜91aと低屈折率膜91bが交互に光学膜厚をそれぞれ100nmに設定されて積層されている。次に、層番号18〜35層は低屈折率膜91bと高屈折率膜91aとが交互に光学膜厚をそれぞれ112.5nmに設定され、さらにその上の層番号36〜48層は低屈折率膜91bと高屈折率膜91aとが交互に光学膜厚をそれぞれ137.5nmに設定されて積層されている。なお、バルブ90表面に最も近い層番号1の高屈折率膜91aの光学膜厚はλ/8=50nmとして形成され、最上層である層番号49の高屈折率膜91aの光学膜厚はλ/8=68.8nmとして形成されている。この構成は一般的にLW(long wave pass)型と呼ばれ、これにより膜全体の透過率特性の長波長側(赤色光)の波長部分をフラットで且つ高い透過率特性とすることができる。なお、表中の図の符号は図13の符号に対応している。
【表1】
【0006】
こうして形成された多層膜フィルタ91は、まず層番号1〜17層の部分によって設計波長λ=100×4=400nmを中心とする波長域の光を反射し、次に層番号18〜35層の部分によって設計波長λ=112.5×4=450nmを中心とする波長域の光を反射し、層番号36層〜49層の部分によって設計波長λ=137.5×4=550nmを中心とする波長域の光を反射することで、膜全体(1〜49層)として可視光線の波長範囲である400nm〜600nmの範囲の光を反射するものである。
【0007】
ここで、400nm〜600nmの可視光線の色の範囲について説明すると、455nm〜492nmの範囲が青色光、492nm〜577nmの範囲が緑色光、577nm〜600nmの範囲が黄色光に相当し、600nm以上の可視光線は赤色光に相当するものである。
【0008】
図14は、こうして実際に形成された多層膜フィルタ91の透過率特性を示すものであり、400〜600nmの範囲の可視光即ち青色、緑色、黄色の光がカットされ、600nm以上の赤色光のみが選択的に透過される。
【0009】
また、こうした赤色光透過型の多層膜フィルタ91以外にも反射する可視光線の設計波長λを300〜500nmとして、高屈折率膜91aと低屈折率膜91bの光学膜厚をλ/4=75〜125nmの範囲内で設定したものによれば、300〜500nmの範囲の紫色、青色の光をカットし、500nm以上の緑色、黄色、赤色を選択的に透過してこれらの混色である橙黄色透過型の多層膜フィルタが得られ、これら高屈折率膜91aと低屈折率膜91bの光学膜厚をカット(反射)する可視光線の波長範囲で設定すれば、これらの色の光を選択的に透過する多層膜フィルタが得られるものである。
【0010】
また、こうした多層膜フィルタ以外にも、単に赤色や橙黄色の着色顔料をスプレー法やディップ法等によって成膜したものもある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来の多層膜フィルタ91の場合、例えば400〜600nmの波長範囲の可視光を確実にカットするのには、高屈折率膜91aと低屈折率膜91bとを全部で49層積層する必要があり、莫大な成膜時間を要し作業性が悪いといった問題を生じている。また、膜の層数も50層近くになると、ガラスバルブ90表面上に直接成膜しているため、ランプ点灯時に熱ストレスが加わって、膜剥がれやクラックが発生してランプに色むらが生じてしまうといった問題もある。また、着色顔料を成膜したものでは、点灯時にガラスバルブ表面が高温になるため顔料が劣化して透過率が低下するといった問題があり、こうした問題の解決が課題とされるものとなっている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した従来の課題を解決するための具体的手段として、透光性基板上に高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に複数層積層して成る多層膜フィルタにおいて、前記高屈折率膜と低屈折率膜とは光学膜厚が30〜150nmの範囲に各々設定され交互に複数層積層された層を含んでいると共に、前記高屈折率膜のうち複数層は、Si膜によって形成された、600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する光吸収膜よって構成されていることを特徴とする多層膜フィルタを提供することで課題を解決するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明に係る多層膜フィルタ2の第一実施形態の要部を示す断面図であり、従来例と同様にガラスバルブ1上に高屈折率膜2a(光吸収膜3)と低屈折率膜2bとが交互に積層されて構成されている。
【0015】
ここで本発明においては、高屈折率膜2a(光吸収膜3)と低屈折率膜2bとは、反射する光の中心波長λが400nm〜600nmの範囲となるように光学膜厚がλ/4=100nm〜150nmの範囲に設定されていると共に、高屈折率膜2aのうち少なくとも一層、本実施例においては高屈折率膜2aの全てが600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する光吸収膜3によって構成されている。
【0016】
表2は本発明多層膜フィルタ2の第一実施形態における具体的な膜の構成例を示すものであり、高屈折率膜として屈折率nH=3.3のSiを、低屈折率膜として屈折率nL=1.46のSiO2を用いている。なお、層番号とは、ガラスバルブ1の表面に近い側から順番にふられており、図の符号は図1および上記説明に対応している。
【表2】
【0017】
Si膜は一般的に600nm以下の短波長光を吸収する光吸収膜としての特性を有している。従って、上記表2の構成例のように、このSi膜3を高屈折率膜として低屈折率膜2bと交互に、設計波長λを400nm〜600nmの範囲内の例えば470nmの値に設定するように光学膜厚をそれぞれλ/4=117.5nmとして1層目〜9層目まで積層すれば、600nm以下の光はSi膜3による吸収と共に、高屈折率膜としてのSi膜3と低屈折率膜2bとの多層膜による光の反射によってカットされ、600nm以上の赤色光のみが選択的に透過される赤色光透過型の多層膜フィルタ2が形成される。
【0018】
ここで、バルブ1表面に最も近い層番号1の高屈折率膜(Si膜3)の光学膜厚はλ/8=58.8nmとして形成され、最上層である層番号9の高屈折率膜(Si膜3)の光学膜厚もλ/8=58.8nmとしてLW型に形成されている。これにより膜全体の透過率特性の赤色光の波長部分をフラットなものとし、なお且つ高い透過率特性とすることができる。
【0019】
以上のような多層膜フィルタ2を形成するには、まず洗浄したガラスバルブ1を真空蒸着装置やプラズマCVD装置、スパッタ装置等の装置内に載置し、高屈折率膜としてSi、低屈折率膜としてSiO2を蒸着源として用いて、これらの装置によって各々周知の真空蒸着法、プラズマCVD法、スパッタ法によって膜厚を制御しながら交互に成膜する方法で得ることができる。
【0020】
以下、本発明多層膜フィルタ2の具体的な成膜方法を真空蒸着法を用いた例で説明する。
【0021】
まず、洗浄したガラスバルブ1を真空蒸着装置内の基板上に固定し、蒸着材料としてSiをるつぼに載せ、装置内を真空に引いて、ガラスバルブ1上にSi膜3を成膜する。ここで、ガラスバルブ1を固定している基板は、ガラスバルブ1の中心(フィラメント位置)を軸として回転するようになっており、ガラスバルブ1の表面全体にむらなく成膜できるようになっている。
【0022】
このときのSi膜3の成膜条件は、基板温度(バルブ1の表面温度)を350℃、成膜速度3Å/s、無酸素中、到達真空度1×10−4Paとして、Si膜3をガラスバルブ1上に成膜する。その後、このSi膜3が形成されたガラスバルブ1に対し、同じく真空蒸着装置内のるつぼに載せられた低屈折率膜2bとしてのSiO2を蒸着させて成膜する。このときのSiO2の成膜条件は基板温度350℃、成膜速度10Å/s、無酸素中、到達真空度5×10−4Paとする。以後同じ条件でSi膜3と低屈折率膜2bとを交互に順番に蒸着させて積層していく。
【0023】
こうして実際に形成された多層膜フィルタ2の透過率特性を示すものが図2であり、600nm以下の可視光領域の光は確実にカットされ、600nm〜800nmの範囲の赤色光領域の光に対する透過率が60%以上の赤色光透過型多層膜フィルタとして良好な特性が得られた。
【0024】
なお、Si膜3の成膜条件としては、基板温度が常温〜500℃、成膜速度が1〜10Å/sの範囲内であればほぼ同様の特性が得られることが確認されている。また、SiO2膜の成膜条件としては、基板温度が常温〜500℃、成膜速度が1〜15Å/s、酸素分圧5×10−3Pa以下であればほぼ同様の特性が得られることが実験の結果確認された。
【0025】
図3は本発明に係る多層膜フィルタ2の第二実施形態の要部を示す断面図であり、表3はその具体的な膜構成を示すものである。膜材料としては第一実施形態と同様に高屈折率膜2aとして光吸収膜3である屈折率nH=3.3のSiを用い、低屈折率膜2bとして屈折率nL=1.46のSiO2を用いている。
【表3】
【0026】
ここで、本実施形態においてはバルブ1表面から最も遠い外側の9層目を前記高屈折率膜2a(光吸収膜3)と低屈折率膜2bの間の屈折率を有する中間屈折率膜4としている。この中間屈折率膜4として本実施形態では、屈折率NO=2.1のTa2O5を用いている。これは、第一実施形態のバルブ1表面が300℃以上の高温となった場合にSiの酸化が起こり劣化が始まってしまうため、その酸化を防止するために最も外側の9層目に酸化のない金属酸化膜Ta2O5を中間屈折率膜4として成膜したものである。
【0027】
なお、Ta2O5膜の成膜条件としては、バルブ1の表面温度を350℃(常温〜500℃でも良い)、成膜速度10Å/s(1〜10Å/sでも良い)、O2分圧0.03Pa雰囲気中(0.01〜0.06Paでも良い)、到達真空度5×10−4Paとしてガラスバルブ1上に成膜する。その他の膜の成膜条件については、上記第一実施形態と同様であるのでここでは省略する。
【0028】
なお、この中間屈折率膜4としては、屈折率がSiとSiO2の間の金属酸化膜であれば良く、TiO2、ZrO2、ZnO、Nb2O5、CeO2、Al2O3等でもあっても良い。
【0029】
図4はこうして形成された第二実施形態の多層膜フィルタ2の透過率特性を示すものであり、第一実施形態に比べて600nm以上の赤色光に対する透過率特性のより良いものが得られた。
【0030】
図5は本発明に係る多層膜フィルタ2の第三実施形態の要部を示す断面図であり、表4はその具体的な膜構成を示すものである。膜材料としては第一実施形態と同様に高屈折率膜2aとして光吸収膜3である屈折率nH=3.3のSiを用い、低屈折率膜2bとして屈折率nL=1.46のSiO2を用いている。
【表4】
【0031】
ここで、本実施形態においてはバルブ1表面に最も近い1層目と最も遠い外側の9層目とを前記高屈折率膜2a(光吸収膜3)と低屈折率膜2bの間の屈折率を有する中間屈折率膜4としている。この中間屈折率膜4としては、第二実施形態と同様に屈折率NO=2.1のTa2O5を用いている。これにより、図6に示すように第二実施形態よりもさらに600nm以上の赤色光に対する透過率特性の良好な多層膜フィルタ2が得られた。
【0032】
図7は本発明に係る多層膜フィルタ2の第四実施形態の要部を示す断面図であり、表5はその具体的な膜構成を示すものである。膜材料としては第一実施形態と同様に高屈折率膜2aとして光吸収膜3である屈折率nH=3.3のSiを用い、低屈折率膜2bとして屈折率nL=1.46のSiO2を用いている。
【表5】
【0033】
ここで、本実施形態においてはバルブ1表面に最も近い1層目と最も遠い外側の9層目とを低屈折率膜2bとしたものであり、第二実施形態及び第三実施形態のように中間屈折率膜4を特別設けずに低屈折率膜2bによってSi膜の酸化防止を図っている。これにより、図8に示すような透過率特性の多層膜フィルタ2が得られ、600nm以上の赤色光に対する透過率特性としては第一実施形態〜第三実施形態の多層膜フィルタ2に比べては劣るものの、赤色光透過型の多層膜フィルタの透過率特性としては充分なものであり、Si膜の酸化による劣化も防ぐことができる。なお、本実施形態でバルブ1表面に最も近い1層目の低屈折率膜2bは省いてもほぼ同等の透過率特性は得られる。
【0034】
表6は本発明に係る多層膜フィルタ2の第五実施形態の具体的な膜構成を示すものであり、膜材料としては、第一実施形態〜第四実施形態の高屈折率膜2a(光吸収膜3)であるSiに代えて屈折率nH=2.5のSixOyを用い、低屈折率膜2bは同様に屈折率nL=1.46のSiO2を用いている。また、バルブ1表面に最も近い1層目と最も遠い外側の9層目とを第三実施形態と同様に中間屈折率膜4としている。なお、本第五実施形態の要部を示す断面図としては図5と同じものであるため図示は省略する。また、表6中の図の符号については図5の符号に対応している。
【表6】
【0035】
このとき、SixOy膜3の成膜条件は、バルブ1の表面温度を350℃(常温〜500℃でも良い)、成膜速度3Å/s(1〜10Å/sでも良い)、O2分圧2×10−3Pa雰囲気中(3×10−4〜5×10−2Paでも良い)、到達真空度1×10−4Paとして、SixOy膜3をガラスバルブ1上に成膜する。なおSiとOの組成比率は、x=0〜1、y=1〜0であり、酸素分圧を上げるとOの比率yは増え、O2分圧が約1×10−2PaでSiOが成膜される。その他の膜の成膜条件については、上記他の実施形態と同様であるのでここでは省略する。
【0036】
こうして形成された第五実施形態の多層膜フィルタ2の透過率特性を示すものが図9であり、第一実施形態〜第四実施形態に比べて600nm以上の赤色光に対する透過率特性が良く、600nm以下の光の遮断特性に優れた多層膜フィルタが得られた。これは、SixOy膜がSi膜に比べて600nm以下の波長の光に対する吸収特性に優れているためである。これにより、透過率特性は600nm付近で急激に立ち上がり、赤色光のみを透過させるフィルタとしては、より特性の優れたものが得られた。
【0037】
なお、上記各実施形態における光吸収膜3としてアモルファスシリコン(以下a−Siという)膜やポリシリコン(以下poly−Siという)膜を用いても良く、このときa−Si膜の成膜条件は、バルブ1の表面温度を350℃(常温〜500℃でも良い)、成膜速度3Å/s(1〜10Å/sでも良い)、水素雰囲気中3×10−4〜1×10−2Pa、到達真空度1×10−4Paとして、a−Si膜をガラスバルブ1上に成膜する。また、poly−Si膜は同じ条件で成膜したa−Si膜を、基板温度を700℃に上げた状態で、大気中に4時間以上置くことによって得られる。
【0038】
a−Si膜やpoly−Si膜は、Si膜やSixOyに比べ600nm以下の波長の光の吸収特性がさらに優れているため、透過率特性の600nm付近における立ち上がりはより急激なものとなり、赤色光のみを透過させるフィルタとしてはさらに優れたものが得られる。
【0039】
なお、前記実施形態ではいずれも光吸収膜3を複数層設けるものとして説明してきたが、光吸収膜3は少なくとも一層形成されていれば良く、光吸収膜3の数が増えるほど600nm以下の波長の光に対する吸収性は高くなって、多層膜フィルタ2全体としての赤色光に対する透過率特性は向上する。
【0040】
また、前記各実施形態ではいずれも光吸収膜3として、Si膜、SixOy膜、a−Si膜、poly−Si膜を用いたが、本発明はこれに限定されず、他の光吸収膜として、600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する膜であれば良く、ITO膜やZnO膜、In2O3、Fe2O3等の金属酸化膜であっても良く、これらの膜は、それぞれ以下の条件で成膜することで上記特性を有する光吸収膜となるものである。
【0041】
上記光吸収膜としてのITO膜は、基板温度200℃(常温〜500℃の範囲内)、成膜速度5Å/s(1〜10Å/sの範囲内)、無酸素中、到達真空度1×10−3Paの条件で成膜することによって得られ、ZnO膜、In2O3膜も同じ条件によって得ることができる。また、Fe2O3膜については、基板温度200℃(常温〜500℃の範囲内)、成膜速度5Å/s(1〜10Å/sの範囲内)、無酸素〜0.02Pa雰囲気中、到達真空度1×10−3Paの条件で成膜することによってそれぞれ得られる。
【0042】
なお、上記いずれの実施形態も赤色光透過型の多層膜フィルタ2の例で説明してきたが、反射する可視光線の設計波長λを500nm以下として、高屈折率膜2aと低屈折率膜2bの光学膜厚をλ/4=30〜125nmの範囲内で設定したものによれば、300〜500nmの範囲の紫色、青色の光をカットし、500nm以上の緑色、黄色、赤色を選択的に透過してこれらの混色である橙黄色透過型の多層膜フィルタが得られ、これら高屈折率膜2aと低屈折率膜2bの光学膜厚をカット(反射)する可視光線の波長範囲で設定すれば、これらの色の光を選択的に透過する多層膜フィルタが得られるものである。
【0043】
こうした橙黄色透過型の多層膜フィルタは、第一実施形態と同じ膜構成のものに対し、光学膜厚のみを変更することによって得られる。例えば、設計波長λが350nmとなるように光学膜厚λ/4=87.5nmに設定すれば、図10に示す透過率特性のように、約480nm(緑色光)から徐々に透過し始め、黄色光、橙色光、赤色光の波長領域になるに従って透過率が増加していき、全体として橙黄色に透過する多層膜フィルタが得られるものである。なお、第二実施形態〜第五実施形態の膜構成のものについても同じように光学膜厚λ/4=87.5に設定すれば、図10と同様に約480nm(緑色光)から徐々に透過し始め、黄色光、橙色光、赤色光の波長領域になるに従って透過率が増加していき、全体として橙黄色に透過する特性のものが得られる。
【0044】
このとき、橙黄色透過型多層膜フィルタの透過率特性としては、上記各実施例のように480nm付近から徐々に透過し始めるものが望ましいが、薄い橙黄色光、赤色がかった橙黄色を透過する特性のものを得たい場合等には、400〜550nmの範囲内で透過し始めても良く、その場合には高屈折率膜2a及び低屈折率膜2bの光学膜厚を30〜137.5nmの範囲内で適宜設定すれば良いものである。
【0045】
表7は、本発明に係る第六実施形態の具体的膜構成を示すものであり、膜材料としては第一実施形態と同様に高屈折率膜2aとして光吸収膜である屈折率nH=3.3のSiを用い、低屈折率膜2bとして屈折率nL=1.46のSiO2を用いている。ここで、本実施形態においては、光吸収膜3は真ん中の5層目のみとし、残りの高屈折率膜2aは全て中間屈折率膜4として、nH=2.1の金属酸化膜Ta2O5を用いている。また、本実施例においては、層毎に光学膜厚を変化させており、1層目、2層目、8層目、9層目は、光学膜厚を135nmとし、設計波長λ=135×4=540nmを中心とする波長域の光を反射し、3層目、4層目、6層目、7層目は、光学膜厚を60nmとし、設計波長λ=60×4=240nmを中心とする波長域の光を反射するように設定されている。
【表7】
【0046】
図11はこうして実際に形成された多層膜フィルタ2の透過率特性を示すものであり、他の実施形態よりも全体としての透過率は低くなり光量は若干落ちるが、上記のように光学膜厚を層毎に設定したことで、橙黄色光の波長領域以外の光の透過率を抑え橙黄色の波長領域の透過率が際立って高い特性の膜が得られた。
【0047】
なお、これまで本発明多層膜フィルタ2は透光性基板1上に設けるとして説明してきたが、透光性基板1をハロゲンランプのバルブ表面とすれば、ハロゲンランプの発光スペクトルは図12に示すような特性となっており、即ち橙、赤色成分の発光スペクトルがほとんどを占めているため、赤色透過型の多層膜フィルタを設ければ、赤色に発光するランプとして、例えば自動車用のテールランプ、ストップランプ等の信号灯に用いることができ、橙黄色透過型の多層膜フィルタを設ければ、橙黄色に発光するランプとして、自動車用の補助前照灯や装飾用のランプとして用いることができる。
【0048】
以上のように、多層膜フィルタ2の高屈折率膜2aと低屈折率膜2bの光学膜厚を30〜150nmの範囲内で各々設定すれば、上記赤色、橙黄色、赤色かかった橙黄色、薄い橙黄色等の所望の光を選択的に透過させる多層膜フィルタ2を得ることができ、こうした多層膜フィルタ2をハロゲンランプの表面に設ければ、これらの色に発光するランプを得ることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、透光性基板上に高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に複数層積層して成る多層膜フィルタにおいて、前記高屈折率膜と低屈折率膜とは光学膜厚が30〜150nmの範囲に各々設定され交互に複数層積層された層を含んでいると共に、前記高屈折率膜のうち複数層は、Si膜によって形成された、600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する光吸収膜よって構成されていることを特徴とする多層膜フィルタとしたことで、600nm以下の可視光即ち青色、緑色、黄色を選択的にカットし、赤色、橙黄色、赤色かかった橙黄色、薄い橙黄色等の所望の光を選択的に透過させることができる多層膜フィルタを少ない膜構成で実現できるため、従来に比べ成膜時間を大幅に短縮することができ、作業性が大幅に改善される。また、膜構成が少ない上、Si、SiO2等の材料を使用しているため、従来に比べ耐熱性も格段に向上し、ランプ点灯時にバルブ表面に熱ストレスが加わっても膜剥がれやクラックが発生しにくくなり、ランプ点灯時の色ムラが防止でき、この種の多層膜フィルタのコスト低減と性能の向上に極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層膜フィルタの第一実施形態を示す断面図である。
【図2】第一実施形態の透過率特性を示すグラフである。
【図3】本発明に係る多層膜フィルタの第二実施形態を示す断面図である。
【図4】第二実施形態の透過率特性を示すグラフである。
【図5】本発明に係る多層膜フィルタの第三実施形態を示す断面図である。
【図6】第三実施形態の透過率特性を示すグラフである。
【図7】本発明に係る多層膜フィルタの第四実施形態を示す断面図である。
【図8】第四実施形態の透過率特性を示すグラフである。
【図9】第五実施形態の透過率特性を示すグラフである。
【図10】橙黄色透過型の多層膜フィルタの透過率特性を示すグラフである。
【図11】第六実施形態の透過率特性を示すグラフである。
【図12】ハロゲンランプの発光スペクトルを示すグラフである。
【図13】従来例における多層膜フィルタを示す断面図である。
【図14】従来例の多層膜フィルタの透過率特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1……基板
2……多層膜フィルタ
2a……高屈折率膜
2b……低屈折率膜
3……光吸収膜
4……中間屈折率膜
Claims (6)
- 透光性基板上に高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に複数層積層して成る多層膜フィルタにおいて、前記高屈折率膜と低屈折率膜とは光学膜厚が30〜150nmの範囲に各々設定され交互に複数層積層された層を含んでいると共に、前記高屈折率膜のうち複数層は、Si膜によって形成された、600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する光吸収膜よって構成されていることを特徴とする多層膜フィルタ。
- 前記透光性基板に最も遠い外側の層が前記高屈折率膜と低屈折率膜の間の屈折率を有する金属酸化膜によって形成された中間屈折率膜であることを特徴とする請求項1記載の多層膜フィルタ。
- 前記透光性基板に最も近い層と最も遠い外側の層とが前記高屈折率膜と低屈折率膜の間の屈折率を有する金属酸化膜によって形成された中間屈折率膜であることを特徴とする請求項1記載の多層膜フィルタ。
- 透光性基板上に高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に複数層積層して成る多層膜フィルタにおいて、前記高屈折率膜と低屈折率膜とは光学膜厚が30〜150nmの範囲に各々設定され交互に複数層積層された層を含んでいると共に、前記高屈折率膜のうち複数層は、SixOy(0<x<1、0<y<1)膜によって形成された、600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する光吸収膜よって構成されていることを特徴とする多層膜フィルタ。
- 透光性基板上に高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に複数層積層して成る多層膜フィルタにおいて、前記高屈折率膜と低屈折率膜とは光学膜厚が30〜150nmの範囲に各々設定され交互に複数層積層された層を含んでいると共に、前記高屈折率膜のうち複数層は、アモルファスシリコン膜もしくはポリシリコン膜によって形成された、600nm以下の波長の光を吸収する特性を有する光吸収膜よって構成されていることを特徴とする多層膜フィルタ。
- 前記請求項1乃至請求項5記載の多層膜フィルタをハロゲンランプのガラスバルブ表面に形成したことを特徴とする多層膜フィルタ付ハロゲンランプ。
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