JP4137311B2 - 防滑性能を有するポリエチレン成形品 - Google Patents
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Description
【産業上の技術分野】
本発明は滑り止め性能を有するポリエチレン成形品に関する。詳しくは、各種物品を運搬、貯蔵するに際して使用される樹脂製パレットなどのポリエチレン成形品であって、接着強度に優れた防滑材を有するポリエチレン成形品に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
食品、水産などの分野で商品の運搬、貯蔵などに使用されるパレットなどの製品は、従来木製が主であったが、近年ポリエチレン製のものが多用されてきている。
ポリエチレン製品は、寸法安定性、耐腐食性、衛生性などに優れるが、一般に表面は木に比べて滑りやすく、例えばポリエチレン製パレットは運搬、貯蔵時などに荷崩れが起こりやすいという問題を有している。
【0003】
このため、パレットなど、防滑性能を必要とする用途にポリエチレン成形品を用いる場合には、表面に滑り止めを取り付けることが行われている。このような表面に滑り止め材を取り付けた成形品としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる単層の防滑材を溶着したポリエチレン成形品、80重量%以上のエチレンを含み、0.5より大きいメルトインデックスを有する熱可塑性材料に、10〜60重量%のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを配合した組成物から形成される滑止め材を表面に溶着して設けたポリエチレン成形品(特公昭60−55307号公報参照)、エチレンプロピレンゴム20〜80重量%と線状低密度ポリエチレン80〜20重量%の配合物であり、前記エチレンプロピレンゴムが、エチレン成分を60〜80重量%、プロピレン成分を40〜20重量%含有する滑り止め材をポリエチレン成形品表面に熱融着してなる防滑性ポリエチレン成形品(特公昭61−27181号公報)などが提案されている。
【0004】
このような滑り止め材は、防滑性能に優れている場合もあるが、ポリエチレン成形品との接着性が不充分になりやすく、剥離を起こすなど、防滑性能や機械物性が不充分な場合があった。
また、プラスチックパレットの滑り止めとして、スチレン-ブタジエンゴムなどの架橋型のゴム類が使用されている。このような滑り止めは、使用中に荷物との摩擦等により外れないように強固に接着される。この架橋ゴムや変性ポリオレフィンからなる滑り止めは、パレット全体を形成するプラスチックが溶融する程度の温度では溶融しないため、再生利用する際には取り除く必要があり、滑り止めを取り外す作業に多くの手間と工程を要するという問題があった。
【0005】
このため、ポリエチレン成形品としても、充分な防滑性能を有し、使用時にポリエチレン成形体全体と防滑材部分とが剥離しにくく、かつ、防滑材部分を取り外すことなく再生利用できるような、防食性能を有するポリエチレン成形品の出現が強く望まれていた。
また、パレットは運搬、貯蔵時などに荷崩れが起こり難いことが求められると同時に、パレットに荷物などを乗せる際に、パレット表面である程度荷物が滑ることも求められるため、防滑性能と滑り性のバランスに優れることも求められる。
【0006】
なお防滑材部分を取り外すことなく再生利用できるようなポリエチレン成形品としては、滑り止め材の成形品に融着される面が硬度84〜99のエチレン-酢酸ビニル共重合体またはポリエチレン樹脂であり、他面が硬度85〜92の熱可塑性エラストマーとポリプロピレン樹脂との混合物から構成される多層構造の滑り止め材をポリエチレン成形品に熱融着してなる回収可能型防滑性ポリエチレン成形品(特開平7−246655号公報参照)などが提案されている。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、防滑性能に優れ、かつ、防滑材とポリエチレン成形品とが強固に接着され、さらに、防滑材部分とポリエチレン成形品とを分離することなく一括して溶融再生できる、防滑性能を有するポリエチレン成形品を提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る防滑性能を有するポリエチレン成形品は、
(A)ポリエチレン成形体に
(B)(i)非架橋オレフィン系共重合体ゴム10〜90重量%と、ポリエチレン樹脂90〜10重量%との配合物からなるポリエチレン成形体への融着層と、
(ii)非架橋オレフィン系共重合体ゴム10〜90重量%と、エチレン- 酢酸ビニル共重合体90〜10重量%との配合物からなる滑り止め層との積層構造を有する防滑材
が融着されてなることを特徴としている。
【0009】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る防滑性能を有するポリエチレン成形品について具体的に説明する。
本発明の防滑性能を有するポリエチレン成形品は、(A)ポリエチレン成形体と、(B)防滑材とを融着することにより得られる。
【0010】
(A)ポリエチレン成形体
本発明の防滑性能を有するポリエチレン成形品を形成するポリエチレン素材としては、エチレンの単独重合体またはエチレンと他のモノマーとのブロック共重合体が望ましい。このポリエチレン素材には、用途に応じて、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維などの充填剤や、発泡剤、難燃剤、着色剤などを配合してもよく、さらに必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0011】
本発明で用いるポリエチレン成形体は、このようなポリエチレン素材を射出成形法、押出し成形法などの通常の方法により成形することにより得ることができる。
(B)防滑材
本発明で用いる防滑材は、ポリエチレン成形体への融着層(i)と、滑り止め層(ii)とからなる積層構造を有している。
【0012】
防滑材を形成する各層のうち、ポリエチレン成形体への融着層(i)は、非架橋オレフィン系共重合体ゴムとポリエチレン樹脂との配合物から形成されるものであって、その配合割合は、非架橋オレフィン系重合体ゴム10〜90重量%と、ポリエチレン樹脂90〜10重量%であるのがよく、好ましくは、非架橋オレフィン系共重合体ゴム15〜40重量%と、ポリエチレン樹脂85〜60重量%であるのが望ましい。非架橋オレフィン系重合体ゴムとポリエチレン樹脂との配合割合が、この範囲内であれば、融着層(i)自体が充分な強度を持ち、また、ポリエチレン成形品との接着性がよいため好ましい。
【0013】
融着層(i)を形成する非架橋オレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1共重合体ゴム、エチレン-ペンテン-1共重合体ゴムなどの2元共重合体や、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体ゴムなどの3元共重合体ゴムなどのα-オレフィン共重合体を特に好適に用いることができる。
【0014】
また、融着層(i)を形成するポリエチレン樹脂は特に限定はされないが、メルトインデックス(MI)は、1g/10分以下、特に0.3〜1g/10分(190℃)程度であることが好ましい。融着層(i)を形成するポリエチレン樹脂としては、エチレン-プロピレンランダム共重合体のような、低結晶型のポリエチレン樹脂が好ましい。
【0015】
一方、滑り止め層(ii)は、非架橋オレフィン系共重合ゴムと、エチレン-酢酸ビニル共重合体との配合物から形成されるものであって、その配合割合は、非架橋オレフィン系共重合体ゴムが10〜90重量%であって、エチレン-酢酸ビニル共重合体が90〜10重量%であるのがよく、好ましくは非架橋オレフィン系共重合ゴムが10〜30重量%であって、エチレン-酢酸ビニル共重合体が90〜70重量%であるのが望ましい。
【0016】
滑り止め層(ii)を形成する非架橋オレフィン系共重合ゴムは、ポリエチレン成形体への融着層(i)を形成するものとして使用できる上述の非架橋オレフィン系共重合体ゴムをいずれも好適に使用することができる。また、この層(ii)を形成するエチレン-酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、酢酸ビニル含有率が、5〜35重量%、好ましくは10〜25重量%であるのが望ましく、共重合体のメルトフローインデックス(190℃)が1〜30g/10分、好ましくは2〜10g/10分であるのが望ましい。
【0017】
このような滑り止め層(ii)は、ポリエチレン成形体への融着層(i)との接着性、滑り止め性能および耐磨耗性のバランスがよいため好ましい。
なお、このようなポリエチレン成形体(A)への融着層(i)および滑り止め層(ii)は、それぞれ性能を損なわない範囲で、適宜少量の他成分を含んでいてもよい。
【0018】
本発明で用いる防滑材(B)は、上記ポリエチレン成形体への融着層(i)と、滑り止め層(ii)との二層構造であることが好ましいが、(i)層と(ii)層との間に他の樹脂成分からなる層が設けられていてもよい。
防滑材(B)を形成するこれらの各層は配合方法および成形方法に特に制限はなく、それぞれ単軸押出成形機、2軸押出成形機などを用いた通常の方法で適宜配合および成形をすることができ、このような成形機を用いて一括して成形するのが特に好ましい。このようにして得られた防滑材(B)は、厚さが1〜3mm程度であり、融着層(i)の厚さが0.1〜1mm程度であることが好ましい。
【0019】
このような防滑材(B)は、ポリエチレン樹脂と一括して溶融することができるものであり、ポリエチレン成形体(A)に融着した場合にも、一括して溶融再生することができる。
融着
ポリエチレン成形体(A)と防滑材(B)との融着は、それぞれ成形された後に、融着面を融着して接着する。融着は、ポリエチレン成形体(A)の融着面、防滑材(B)の融着面の少なくともいずれか一方を加熱融着して行うが、双方の面を加熱溶融して圧着することが特に好ましい。
【0020】
ポリエチレン成形体(A)に融着される防滑材(B)の形態は、得られたポリエチレン成形品が防滑性能を有する形態であれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン成形品が、パレットである場合には、防滑材はパレットの上面または下面の少なくとも一方に融着すればよく、また上面または下面の全面または一部に融着することができる。防滑材を一部に融着する場合は、防滑材の形状は特に限定されず、線状、帯状(幅10〜40mm程度)などであってもよく、これらは単数でもよく、それぞれ平行にまたは格子状になるように複数融着していてもよい。また、円形、矩形などの形状をした防滑材の小片を、千鳥状のような規則的または不規則に配置して融着してもよい。
【0021】
【発明の効果】
本発明の防滑性能を有するポリエチレン成形品は、高い滑り止め性能を持ち、かつ、ポリエチレン成形体と防滑材との接着強度に優れ、剥離を生じにくいという効果がある。また、防滑材層とポリエチレン成形体とが一括して溶融可能であるため、溶融して再生利用する際にも、ポリエチレン成形体部と防滑材層とを剥離させる必要がなく、再生時の工程を簡略化することができる。
【0022】
また本発明の防滑性能を有するポリエチレン成形品は、防滑性能と滑り性とのバランスにも優れている。
【0023】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
【実施例1】
ポリエチレンを射出成形法により低発泡成形し、デッキ面積寸法110cm×90cmの発泡ポリエチレン製パレット(A)を得た。
次に、ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン、MI=4g/10分(ASTM D1238))70重量部と、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム(MI=0.4g/10分(ASTM D1238)、密度=0.88g/cm3(ASTM D1505))を30重量部配合してなるポリエチレン成形体への融着層(i)と、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム(MI=2.5g/10分(JIS K6730)、酢酸ビニル含有率=19重量%)90重量部にエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム(MI=0.4g/10分(ASTM D1238)、密度=0.88g/cm3(ASTM D1505))を10重量部配合してなる滑り止め層(ii)とからなる帯状積層構造防滑材を押出成形により成形し、防滑材(B)を得た。
【0025】
得られた防滑材(B)は、幅が20mmであり、ポリエチレン成形体への融着層(i)の厚さが0.5mm、滑り止め層(ii)の厚さが2mmであった。
続いて、発泡ポリエチレン製パレット(A)と、防滑材(B)の融着層(i)とを図1に示す形態で融着した。融着は、両者の融着面に600〜800℃の熱風をそれぞれ吹き付けて表面を融着し、ローラーで押圧して行った。このようにして両者が融着された防滑性能を有するポリエチレンパレットを得た。
【0026】
得られたパレットについて、滑り試験および剥離強度の測定を行った。
滑り試験は、図1に示す防滑性能を有する発泡パレットの(X)部分を、45度/分の速度で持ち上げ、発泡パレットの端に置かれたポリエチレン製の箱(42cm×33cm×高さ26cm、重量25kg)が滑り出す角度を求めた。
剥離強度の測定は、防滑性能を有する発泡パレットに融着された防滑材(B)の端部を剥がし、剥離荷重試験機を用いて100mm/分の速度で剥離して求めた。
【0027】
滑り試験および剥離強度測定の結果を表1に示す。
【0028】
【実施例2】
防滑材(B)の、ポリエチレン成形体への融着層(i)として、高密度ポリエチレン(MI=0.5g/10分(ASTM D1238))70重量部と、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム(MI=0.4g/10分(ASTM D1238)、密度=0.88g/cm3(ASTM D1505))を30重量部配合してなる配合物を用いたことのほかは、実施例1と同様にして防滑性能を有する発泡パレットを得た。
【0029】
得られたパレットについて、実施例1と同様にして滑り試験および剥離強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0030】
【比較例1】
実施例1において、防滑材(B)を用いる代わりに、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム(MI=2.5dg/10分(JIS K6730)、酢酸ビニル含量=19重量%)を押出し成形して得た帯状防滑材を用いたことの他は、実施例1と同様にして、防滑性能を有する発泡パレットを得た。
【0031】
得られたパレットについて、実施例1と同様にして滑り試験および剥離強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
以上の実施例および比較例に示されるように、ポリエチレン成形体と、特定の積層構造を有する防滑材とを融着して得られる本願発明の防滑性能を有するポリエチレン成形品は、充分な防滑性能を有しており、しかも防滑材が剥離しにくいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で得られた、防滑性能を有する発泡パレットの防滑材融着面を示す概略図である。
Claims (2)
- (A)ポリエチレン成形体に
(B)(i)非架橋オレフィン系共重合体ゴム10〜90重量%と、ポリエチレン樹脂90〜10重量%との配合物からなるポリエチレン成形体への融着層と、
(ii)非架橋オレフィン系共重合ゴム10〜90重量%と、エチレン-酢酸ビニル共重合体90〜10重量%との配合物からなる滑り止め層との積層構造を有する防滑材
が融着されてなることを特徴とする防滑性能を有するポリエチレン成形品。 - 防滑材(B)のポリエチレン成形体への融着層(i)を形成するポリエチレン樹脂が、メルトインデックスが1g/10分以下のポリエチレン樹脂である請求項1に記載の防滑性能を有するポリエチレン成形品。
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JP25415599A JP4137311B2 (ja) | 1999-09-08 | 1999-09-08 | 防滑性能を有するポリエチレン成形品 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2001071433A JP2001071433A (ja) | 2001-03-21 |
JP4137311B2 true JP4137311B2 (ja) | 2008-08-20 |
Family
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---|---|---|---|
JP25415599A Expired - Lifetime JP4137311B2 (ja) | 1999-09-08 | 1999-09-08 | 防滑性能を有するポリエチレン成形品 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP4137311B2 (ja) |
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1999
- 1999-09-08 JP JP25415599A patent/JP4137311B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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