JP4136525B2 - インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関し、特に、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドを記録媒体上で双方向に走査して記録を行うインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ等に於ける情報出力装置として、所望される文字や画像等の情報を用紙やフィルム等シート状の記録媒体に記録を行うプリンタが広く使用されている。
【0003】
プリンタの記録方式としては様々な方式が知られているが、ワイヤードット方式、感熱方式、熱転写方式、インクジェット方式によるものなどがあり、特に、インクジェット方式は、記録用紙に直接インクを吐出するものであるので、ランニングコストが安く、静粛性に優れた記録動作が可能な方式として注目されている。
【0004】
また、その構成としては、記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体の搬送方向と交差する方向へ移動させながら記録(走査)を行なう、シリアル型が安価で小型化が容易などの点から一般的に広く用いられている。このようなシリアル型のインクジェットプリンタにおいては、キャリッジの走査の間に記録ヘッドに具備された多数のノズルが記録情報に基づき駆動されることにより、1回の走査による記録領域の記録を行った後、記録媒体をキャリッジの走査方向と交差する方向に記録領域の幅だけ搬送するように構成されており、この走査と記録媒体の搬送とを交互に行うことによって所望の画像が記録される。
【0005】
記録ヘッドにはインク滴を吐出するための多数のノズル(吐出口)が設けられており、このノズル内には記録媒体に記録を行うのに使用するインクが充填されている。画像等を記録する場合には、画像データに対応して駆動するノズルが適時選択され、選択されたノズルからインク滴を吐出することにより、記録が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
記録動作が実行されている間に、一定時間記録に使用されず吐出動作を行なっていないノズル内のインクは、水分が蒸発して濃縮されるため、経時的にインク濃度が高くなってしまう。その結果、頻繁に記録に使用されるノズルでは、吐出を繰り返していたため水分の蒸発が抑えられるためインクは濃縮されず、一方、一定時間記録に使用されていないノズルでは、水分の蒸発によってインクが濃縮されることとなる。
【0007】
従って、このように記録に使用される頻度の大きく異なるノズルで記録を行うと、全く同じ記録を行ったとしても画像に濃度差が生じてしまう。これは特に、濃縮された複数のノズル群と濃縮されていない複数のノズル群とが隣り合っている場合に、ベタパッチのような画像を記録すると、パッチ端部に発生する濃度ムラとなる。濃度ムラが端部に生じる理由としては、ノズルからインク滴の吐出を繰り返していく過程で、ノズル内に存在していた濃縮インクも吐出されるため、ある程度記録が進むと、インクの濃度差がなくなり、本来の濃度のインクで記録が行われるためである。
【0008】
高画質記録を行なうと、このようなインク中の水分の蒸発に伴うインク濃縮に起因する濃度ムラは、特に目立ちやすくなり、記録品位を低下させる原因となってしまう。
【0009】
本発明は以上のような状況を鑑みてなされたものであり、インクの濃度変化により記録画像に生じる濃度ムラを低減することのできるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体上で往復走査させて前記記録媒体の記録領域に対して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドを往方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記往方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う手段と、
前記記録ヘッドを復方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記復方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う手段と、
を備えている。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明のインクジェット記録方法は、インクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体上で往復走査させて前記記録媒体の記録領域に対して記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドを往方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記往方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う工程と、
前記記録ヘッドを復方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記復方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う工程と、
を備えている。
【0012】
すなわち、本発明では、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドを記録媒体上で双方向に走査して記録を行う際において、各方向への走査の際に、走査開始位置から走査終了位置へ向かって記録を行う比率が低下するように記録比率を設定する。
【0013】
このようにすると、走査開始位置から走査終了位置へ向かって記録を行う比率が低下するように記録比率が設定されているので、インク濃度が所定の値に近い状態で記録されるデータ量が増え、濃縮されたインクで記録されるデータ量が減少する。
【0014】
従って、インクの濃度変化により記録画像に生じる濃度ムラを低減することができ、記録画像の品位を向上させることが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット記録方式を用いた記録装置としてプリンタを例に挙げ説明する。
【0017】
本明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0018】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0019】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0020】
(基本原理)
始めに、本発明の基本的原理について図5を参照して説明する。
【0021】
図5は本発明の基本原理を説明するための図であり、(a)は記録領域と予備吐口並びに走査方向を示しており、(b)は往路及び復路それぞれの記録で用いるマスクパターン(以下、単にマスクとも称する)を示している。
【0022】
(a)に示すように、本発明の記録装置は往復両方向の走査で記録を行なう、いわゆる双方好記録を行なうように構成されており、記録領域の両側に、予備吐出で吐出されたインクを受容するインク予備吐口が設けられている。このように構成することにより、往方向と復方向のどちらの方向で記録を行う場合においても、記録走査の前に予備吐出を行わせることができる。
【0023】
濃度ムラの原因は、ノズル内のインクの水分の蒸発に伴い、インクの濃度が経時的に高くなることにある。そのため、濃度ムラを解消するためには、予備吐出等によってノズル内の濃縮したインクを排出し、本来のインク濃度に回復するのが効果的である。
【0024】
しかしながら、記録走査の開始前に予備吐出を行なってノズル内のインク濃度を正常な値に回復た場合においても、記録走査中のわずかな時間の間でもインクの濃縮が起こるため、記録に使用しないノズル内のインク濃度は、走査の開始付近と終了付近では異なった値となる。このような場合、(a)では往方向ではB領域、復方向ではA領域において濃度ムラが発生してしまう。この現象は記録領域の幅が広い程、また記録走査にかかる時間が長くなる程より顕著に表れる。
【0025】
本発明ではこのような場合にも濃度ムラの発生を抑制すべく、インク濃縮が起こる前に、すなわち、予備吐出終了後の記録走査の開始直後に記録する比率を高くし、記録走査の終了の直前で記録する比率を低くする。(b)はこのような記録比率を得るために用いられるマスクの例を示している。図中、濃度の濃い部分は記録される比率が高いことを示し、濃度の低い部分は記録される比率が低いことを示している。図示されたように、往方向では、A領域からB領域に向かって記録する比率が減少し、復方向では、反対にB領域からA領域に向かって記録する比率が減少する。
【0026】
このように予備吐出を行なって記録走査の開始直後に記録される比率を高くすることにより、濃縮したインクが記録に使用される可能性を低減し、濃度ムラの発生を抑制することができる。また、往方向のマスクと復方向のマスクとは互いに補完的な構成とし、往復両方向で記録すべきデータがいずれかの方向の走査で記録されるような構成とする。
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明するが、始めに、以下の実施形態に共通な記録装置の構成について説明する。
【0028】
<記録装置概要>
この記録装置は、インクジェット方式を採るカラー記録装置であって、その要部は、図1に示すような構造の記録手段200aを有している。図1において、1は紙またはプラスチックシート等からなる記録媒体としての記録シートであって、カセット等に複数枚積層された状態で収納されており,その積層されたシート束の最上位または最下位記録シート1の一面に接する給紙ローラ(不図示)が回転することによってカセットから記録シートが一枚ずつ供給され、一定間隔を隔ててプラテンに配置される。そして、プラテンに配置された記録シート1は、それぞれ個々のステッピングモータ(図示せず)によって駆動する一対の第1搬送ローラ3、及び一対の第2搬送ローラ4によって矢印A方向(副走査方向)に搬送されるようになっている。
【0029】
6は副走査方向Aと交差する主走査方向に保持された水平なガイドシャフト9に沿って直線往復動可能に設けられたキャリッジであり、このキャリッジ6はべルト7及びプーリ8a,8bを介してキャリッジモータ23に連動しており、このキャリッジモータ23を駆動することにより、ガイドシャフト9に沿って往復移動を行なうようになっている。また、このキャリッジ6には、記録シート1に記録を行うためのインクジェット方式の記録ヘッド5とこのヘッドにインクを供給する不図示のインクカートリッジが設けられている。ここでは、記録ヘッドとして、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の4色のインクの吐出を行なう4種類の記録ヘッド及びこれらにインクを供給するインクカートリッジが搭載されており、C、M、Yの各記録ヘッドには、1280本のノズルが、Kには640本のノズルが設けられている。
【0030】
上記構成を有する記録手段200aにおいて、記録ヘッド5は、主走査方向(矢印B方向)に移動しながら記録信号に応じてインクを記録シート1に吐出し、副走査方向において記録ヘッドのノズル数に対応する幅の記録領域に記録を行う。そして、必要に応じて記録ヘッド5はホームポジショシに戻り、インク回復装置によってノズルの目詰まりを解消すると共に、一対の搬送ローラ3,4の駆動によって記録シート1を矢印A方向へ記録領域の幅だけ搬送する。また、主走査方向において、記録シート1を挟んで両側には、予備吐出を行なうための不図示の予備吐口が設置され、各走査スキャンにおいて、往復どちらの方向から記録を行う場合でも予備吐出を行うことができる。この動作を繰リ返すことによって記録シート1には、所定数のラスタからなるインク画像が形成される。
【0031】
また、記録ヘッド5の吐出性能回復のため、記録ヘッドがホームポジションに戻った差異に吐出口面をカバーしてインクの蒸発を防止すると共に、不図示の吸引ポンプにて回復動作を行なうためのキャップと、吐出口表面に付着したゴミや固着したインク等を清掃するためのブレードとを有する回復機構10が設けられている。
【0032】
次に前記記録手段200aを有する記録装置200の制御系について、図2を参照して説明する。
【0033】
この制御系は図2に示すように、例えばマイクロプロセッサ等のCPU20aによって実行される制御プログラムや各種データを格納しているROM20c、及びCPU20aのワークエリアとして使用されると共に記録画像データなどの各種データの一時記憶等を行うRAM20b等を有する演算制御部20が設けられ、この演算制御部20にはインターフェイス21、操作パネル22、各モータ(キャリッジモータ23、給紙モータ24、第1搬送ローラ駆動モータ25、第2搬送ローラ駆動モータ26)を駆動するためのドライバー27、及び記録ヘッド駆動用のドライバー28が接続されている。
【0034】
上記演算制御部20はインターフェイス21を介して後述のホスト201からの各種情報(例えば文字ピッチ、文字種類等)や、外部装置との画信号などの入出力(情報の入出力)を行う。また前記制御部20はインターフェイス21を介して各モータ23〜26を駆動させるためのON,OFF信号、及び画信号を出力し、その画信号によって各部の駆動を行なう。
【0035】
<画像処理装置概要>
次に、記録装置200にて記録動作を実行させるための記録信号データを生成する記録情報処理装置について説明する。
【0036】
図3は本発明の各実施形態における情報処理装置としてのホストコンピュータ(以下、単にホストと称す)の概略構成を示す図である。図において、ホスト201はCPU202と、メモリ204(記録情報発生手段)と、外部記憶装置203と、入力部205と、記録装置202とのインターフェイス206とを備える。CPU202は、メモリ204に格納されたプログラムを実行することで種々の演算、判別、制御などの動作を行い、後述の色処理、量子化処理及び補正処理などを実現するものとなっており、トータル算出手段、記録信号補正手段(第1,第2の補正手段)等として機能する。このプログラム及び記録情報は外部記憶装置203に記憶されており、ここから読み出されてCPU202に供給され、一旦メモリ204に格納される。ホスト201はインターフェイス206を介して前記記録装置202と接続されており、色処理を施した画像データを記録装置202に送信して記録動作を実行させるようになっている。
【0037】
また、図4はホスト201によって実現される画像処理部230の機能を説明する機能ブロック図である。この画像処理部230は、入力されるR,G,B各色8ビット(256階調)の画像データをC,M,Y,K各色1ビットのデータとして出力するものとなっており、色処理部210と量子化部220とからなる。色処理部210は、色空間変換処理部211と、色変換処理部212と,出力γ処理部213とからなる。このうち、色空間変換処理部211及び色変換処理部212は、3次元LUT(ルックアップテーブル)によって構成され、出力γ処理部213は1次元LUT(ルックアップテーブル)によって構成されている。なお、各LUTは、ホストコンピュータ201におけるメモリ204に格納されている。
【0038】
以上の構成を有する画像処理部230において、外部記憶装置203から読み出されるR,G,B各色ビットデータは、まず3次元のルックアップテーブルによりR',G',B'各色8ビットデータに変換される。この処理は色空間変換処理(前段色処理)と称し、入力画像の色空聞(カラースペース)と出力装置の再現色空間の差を補正するための変換処理となっている。この色空間変換処理を施されたR',G',B'各色8ビットデータは次の3次元LUTによりC,M,Y,K各色8ビットデータに変換される。この色変換処理は後段色処理と称し、入力画像の色空間(カラースペース)と出力装置の再現色空間の差を補正するための変換処理となっている。
【0039】
また、前段色処理を施されたR',G',B'各色8ビットデータは、次の色変換処理部212を構成する3次元LUTによりC,M,Y,K各色8ビットデータに変換される。この色変換処理は後段色処理と称し、入力系のRGB系カラーから出力系のC,M,Y,K系カラーに変換する処理となっている。なお、入力される画像データは、ディスプレイなど発光体の加法混色の3原色(R,G,B)であることが多いが、プリンタなど光の反射で色を表現する場合は減法混色の3原色系(C,M,Y)の色材が用いられるのでこのような色変換処理が必要となる。
【0040】
前段色処理に用いられる3次元LUTや後段色処理に用いられる3次元LUTは離散的にデータを保持しており、保持しているデータ間は補間処理で求めるが、その補間処理は公知の技術であるので、ここでは補間処理に関する詳細な説明は省略する。
【0041】
この後、後段色処理が施されたC,M,Y,K各色8ビットデータは、出力γ処理部213を構成する1次元LUTによって出力γ補正が施される。単位面積当たりの記録ドット数と出力特性(反射濃度など)の関係は多くの場合に線形関係とはならないので、出力γ補正を施すことでC,M,Y,K8ビットの入力レベルと、その時の出力特性との線形関係とを保証する。以上が画像処理部201の概略説明である。
【0042】
(第1の実施形態)
以下、このような構成の記録装置における本発明の記録方法の第1の実施形態について説明する。
【0043】
図6は第1の実施形態を説明するための図であり、(a)は記録領域と予備吐口並びに記録方向との関係を示しており、(b)は記録に使用するマスクを概略的に示している。
【0044】
図6(a)において、100は予備吐出で吐出されたインクを受容する予備吐口、101は1回の往復走査で記録される記録領域である。本実施形態では、往復2回の走査で1つの記録領域の記録を完成するが、記録領域の両側に予備吐口が設けられているので、往復いずれの方向に記録走査を開始する前にも予備吐出を行うことができる。
【0045】
このように本実施形態では、各記録走査の開始前に予備吐出を行うようすることで、記録開始前にノズルからの水分の蒸発により濃縮されたインクを吐出して、記録に使用するインク濃度を本来の設計値に回復することができる。
【0046】
また上述のように、記録走査開始前に予備吐出を行ってノズル内のインク濃度を一定にした場合においても、記録走査の実行中にも蒸発が起こり、インク濃縮は進行していく。このため、例えば、往方向の記録走査の場合において、記録開始位置から離れた位置で初めて記録に使用されるノズルから吐出されたインク滴の濃度は本来の設計値より高くなってしまう。これは、記録領域101の幅が広ければ広い程、記録走査にかかる時間が長くなるため、記録開始位置及び記録終了位置の両端での濃度差が広がってしまい、画像に濃度ムラが発生してしまう。
【0047】
本実施形態では、以上のような記録走査中に進行するインクの濃度変化を抑制するため、インクの濃度が本来の値に近い状態である予備吐出の直後、ずなわち記録開始の直後に多くの記録を行う記録方法を行う。そのために図6(b)に示したようなマスクを使用する。本実施形態では、往路記録の際に使用する往路マスクと復路記録の際に使用する復路マスクの2つのマスクを用いる。画像データが送られてきた場合、このマスク上のドット(データ)の位置と一致する画像データのみが実際に各記録走査で記録される。
【0048】
図示されたように、往路、復路の両マスク共、記録方向に対してグラデーションがかかっており、予備吐出を行った直後である記録走査開始直後に高い割合で記録を行い、記録走査終了位置に向かうに従って記録を行う割合が低くなるように設定されている。
【0049】
また、図6(b)に示したマスクは、実際には、記録領域内の各記録画素に対して、1対1に対応している。例えば、(b)に拡大部分で示したように、往路のマスクに存在するドットは復路マスクには存在せず、復路マスクに存在しないドットは往路マスクに存在するというように、往路マスクと復路マスクとは互いに補完関係にある。
【0050】
以上説明したように本実施形態によれば、各方向の記録走査の前に予備吐出を行い、かつ記録走査の開始直後に高い割合で記録が行われるようなマスクをそれぞれの記録方向に対して使用することで、記録開始時にはインクの濃度を設定値に近い値とでき、なおかつ記録開始からの時間経過によるインク濃縮が起こる前に記録される部分が多くなるため、インクの濃縮により画像に表れる濃度ムラを抑制し、記録品位を向上させることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上記第1の実施形態と同様な部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0052】
図7は本発明の第2の実施形態で使用するマスクを示す図である。本実施形態の記録領域と予備吐口並びに記録方向との関係は、上記第1の実施形態に関して説明した図6(a)と同じである。上記第1の実施形態では、マスクの具体的な構成については説明していないが、本実施形態では使用するマスクの具体的な例について説明する。
【0053】
図7(a)に示した往路マスクは、記録開始位置から記録終了位置に向かって90%、70%、50%、30%、10%の5段階に段階的に記録比率が低下していく用に設定されており、復路マスクは往路マスクとは逆に記録比率が高くなる用に設定されている。そして、両方のマスクの記録比率を合計した値は、あらゆる位置で100%となるように、互いのマスクは補完的となっている。
【0054】
このようなマスクによる効果は、第1実施形態と同様である。なお、(a)に示した例では90%から10%まで、20%刻みで5段階に分割して割合を変化させているが、それぞれの割合や、変化させる値、段階数などを任意に設定してもよいのはもちろんである。
【0055】
また、図7(b)は別のマスクの例を示しており、往路マスクは記録開始位置の記録比率が80%で記録終了位置の記録比率が20%のグラデーションで割合が変化するマスクであり、復路のマスクは、往路との合計の記録比率が100%となるように補完的な記録比率を有する、往路とは逆のグラデーションを有している。なお、この場合も開始の割合と最後の割合とは、任意に設定することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
以下、本発明に係る第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上記第1及び第2の実施形態と同様な部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0057】
図8は本発明の第3の実施形態における、記録領域と予備吐口並びに記録方向との関係を示す図である。上記第1及び第2の実施形態では、記録領域の両側に予備吐口を設けた構成であったが、本実施形態では予備吐口100は、記録領域101のホームポジション側にのみ設置されている。
【0058】
すなわち、本実施形態では、往方向に記録開始前にのみ予備吐出を行い、復方向の記録開始前には予備吐出を行わない。本実施形態で使用するマスクは、上記第1及び第2の実施形態で示したマスクのいずれでも良い。
【0059】
以上のような構成により本実施形態によれば、復方向に対する濃度ムラの低減効果としては第1及び第2と比較して減少するが、往方向に関しては濃度ムラを低減することができる。
【0060】
(変形例)
なお、上記実施形態では往復の2パスで各記録領域の記録を完成する2パス記録を行う場合を例に挙げて説明したが、記録を完成させるパス数については特に制限はなく、4パス、8パス等のマルチパス記録を行う場合にも同様に、各記録走査において予備吐出直後に高い割合で記録を行うマスクを使用することで、同様の効果が得られる。
【0061】
また、各記録走査毎に行う予備吐出での吐出数については、記録領域の幅、1回の記録走査に要する時間、パス数、インクの特性、ノズルの吐出口面積及び吐出するインク滴の容積等の様々なパラメータに応じて設定されるのが好ましく、記録走査の間に濃縮されたインクを取り除くのに十分な数であればよい。そのため、例えば、ホスト機器上でプリンタドライバの設定などにより記録パラメータを変更する場合には、変更されたパラメータに応じて予備吐出の数を設定するようにしても良い。
【0062】
同様に、例えば、ROM等のメモリに複数のマスクを記憶しておき、記録パラメータに応じて使用するマスクを選択するようにしてもよい。
【0063】
また、マスクの幅、高さ等は、記録領域の大きさに応じて任意の大きさに設定できることはもちろんである。
【0064】
(他の実施形態)
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成でき、本発明の効果を十分に発揮する。
【0065】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状にすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0066】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0067】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0068】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0069】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0070】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【0071】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0072】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0073】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも一方の方向の記録開始の前に予備吐出によって吐出口近傍の濃度が高くなったインクが吐出され、インク濃度は所定の値に近い値となる。更に、走査開始位置から走査終了位置へ向かって記録を行う比率が低下するように記録比率が設定されているので、少なくとも一方の方向の記録において、インク濃度が所定の値に近い状態で記録されるデータ量が増え、濃縮されたインクで記録されるデータが減少する。
【0075】
従って、インクの濃度変化により記録画像に生じる濃度ムラを低減することができ、記録画像の品位を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記録装置の要部機構を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の記録装置に対する情報処理装置としてのホストコンピュータの概略構成を示す図である。
【図4】図3のホストコンピュータによって実現される画像処理部の機能を説明する機能ブロック図である。
【図5】本発明の基本原理を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態で使用されるマスクの例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の記録領域と予備吐口及び記録方向との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 用紙
6 キャリッジ
5 記録ヘッド
100 予備吐出口
101 記録領域
200 記録装置
200a 記録手段
201 ホスト
202 CPU
204 メモリ
230 記録情報処理
213 出力γ処理部
Claims (4)
- インクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体上で往復走査させて前記記録媒体の記録領域に対して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドを往方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記往方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う手段と、
前記記録ヘッドを復方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記復方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - インクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体上で往復走査させて前記記録媒体の記録領域に対して記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドを往方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記往方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う工程と、
前記記録ヘッドを復方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記復方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録方法。 - インクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体上で往復走査させて前記記録媒体の記録領域に対して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドにより予備吐出されるインクを受容するための予備吐口と
前記予備吐口に対する予備吐出を前記記録ヘッドに行わせる予備吐出手段と、
前記予備吐出手段による予備吐出が実行された記録ヘッドを往方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記往方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う手段と、
前記予備吐出手段による予備吐出が実行された記録ヘッドを復方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記復方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - インクを吐出するための記録ヘッドを記録媒体上で往復走査させて前記記録媒体の記録領域に対して記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドにより予備吐出されるインクを受容するための予備吐口に対して、前記記録ヘッドより予備吐出を行う予備吐出工程と、
前記予備吐出工程において予備吐出が実行された記録ヘッドを往方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記往方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う工程と、
前記予備吐出工程において予備吐出が実行された記録ヘッドを復方向へ走査させながら前記記録媒体に記録を行うにあたり、前記復方向への走査の開始位置から終了位置へ向かうに従って記録比率が段階的に低下するように設定されたマスクパターンと前記記録領域に対応した画像データとに基づいて記録を行う工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
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