JP4136122B2 - 水質分析計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水、用水、環境水などに含まれる炭素成分を測定する水質分析計に関し、特に水溶液試料を熱分解して気化するとともに、試料中の炭素成分を二酸化炭素(CO2)に変換する酸化反応部と、水溶液試料の一定量を採取して酸化反応部に注入する試料注入機構と、酸化反応部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部、酸化反応部からキャリアガスとともに送られてきた試料気化ガス中のCO2を検出するCO2検出部とを備えた水質分析計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃焼式の全有機体炭素(TOC)計では、水溶液試料を熱分解して気化するとともに、試料中の炭素成分を燃焼してCO2に変換し、CO2を含まないキャリアガスとともにその試料気化ガスをCO2検出部に送って試料気化ガス中のCO2を検出している。キャリアガスとしては、ボンベガスを用いることが好ましいが、ランニングコストがかかるので、コンプレッサエアーや計装エアーを用いるのが一般的である。
【0003】
このようなTOC計では、一般的に、試料を注入したときにCO2検出部においてCO2検出器が示すピーク波形(CO2検出器指示値)の面積又はピーク高さを測定して濃度値に変換しているので、ピーク波形前後の指示値(ベースライン)の変動は測定値に大きな影響を与える。そこで、測定直前のベースラインの変動を見ることで測定可能か否かを判定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、酸化反応部に供給するキャリアガスに例えば炭化水素などの炭素成分が含まれている場合、キャリアガス中の炭素成分も酸化されてCO2に変換されてしまうのでベースラインが高く指示されてしまう。そのため、特に高感度測定の際に大きな測定誤差要因となっている。また、キャリアガス中の炭素成分を検出することはできず、キャリアガス中の炭素成分がベースラインに影響を及ぼしているか否かを検査することができなかった。
そこで本発明は、測定を行なう前にキャリアガス中の炭素成分を検出し、そのキャリアガスを用いて測定可能か否かを判定することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水溶液試料を熱分解して気化するとともに、試料中の全炭素をCO2に変換する酸化反応部と、水溶液試料の一定量を採取して酸化反応部に注入する試料注入機構と、酸化反応部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部、酸化反応部からキャリアガスとともに送られてきた試料気化ガス中のCO2を検出するCO2検出部とを備えた水質分析計であって、キャリアガス供給部からのキャリアガスを酸化反応部を通さずに酸化反応部の出口側の流路に供給するバイパス流路と、バルブを切り替えて酸化反応部又はバイパス流路にキャリアガスを供給するバルブ機構を備えたものである。
【0006】
測定を行なう前に、まずバルブ機構により、キャリアガス供給部からのキャリアガスを酸化反応部に供給し、キャリアガスを酸化反応部に通してからCO2検出部に送ってCO2を検出し、ベースラインを記録する。このとき、キャリアガスに含まれる炭素成分はCO2に変換される。
次に、バルブ機構により、キャリアガスをバイパス流路に供給し、キャリアガスを酸化反応部に通さずにCO2検出部に送ってCO2を検出し、検査用指示値として記録する。キャリアガス中の炭化水素が含まれていても、酸化反応部を通さなければCO2に変換されないので、CO2検出部で検出されることはない。
【0007】
キャリアガスを酸化反応部に通した場合のベースラインと通さない場合の検査用指示値とを比較し、キャリアガス中の炭素成分によるベースラインへの影響量を求める。このとき、キャリアガス中に炭素成分が含まれる場合、ベースラインの指示値は検査用指示値よりも大きくなる。キャリアガス中に炭素成分が含まれない場合、ベースラインの指示値は検査用指示値と同じになる。
【0008】
【実施例】
図1は、一実施例を表す概略構成図である。
環境水などの試料が連続して流れる採水管1に、その試料の一部をTOC計本体内の分岐部3を経てドレン出口12に排出する流路が接続されている。分岐部3には、試料を採取して分析部に導くために、試料注入機構18の8ポートバルブ14の1つのポートが接続されている。
【0009】
試料注入機構18は8ポートバルブ14とそれに接続されたマイクロシリンジ16で構成されており、マイクロシリンジ16は8ポートバルブ14のいずれのポートとも接続されるようになっている。8ポートバルブ14のそれぞれのポートには、試料用流路の分岐部3のほか、ICを測定するときに試料を酸性にするために添加する酸20につながる流路、校正用の標準液22につながる流路、希釈や洗浄に使用する希釈水24につながる流路、オフライン試料26につながる流路、試料中の炭素成分の全てをCO2に変換する触媒を備えた酸化反応部32の試料注入部34につながる流路、不要な気体を排出するためのドレン出口28につながる流路、不要な液体を排出するためのドレン出口12につながる流路がそれぞれ接続されている。
【0010】
空気入り口42から取り込んだ空気から炭素成分を除去して精製ガスを生成し、流量を調節して送り出すためにキャリアガス供給部40が設けられており、キャリアガス供給部40のガス出口には、キャリアガス供給部40で生成された精製ガスをスパージガス又はキャリアガスとしてマイクロシリンジ16に供給する流路41と、キャリアガスとして、電磁弁SV1を介して、酸化反応部32に供給する流路43が接続されている。キャリアガス供給部40は主としてCO2を除去するものであり、取り込んだ空気に炭化水素が含まれている場合にはキャリアガス中に残存する。
【0011】
酸化反応部32は、試料中の炭素成分をCO2に変換する酸化触媒が充填された燃焼管36、その燃焼管36に試料とキャリアガスを導入する試料注入部34、及び燃焼管36を加熱する加熱炉38から構成されており、燃焼管36の下流部は、電磁弁SV2を介して、水分を除去する電子クーラーやハロゲン成分を除去するハロゲンスクラバーなどを備えた除湿・ガス処理部44を経て、CO2を検出するCO2検出部46に接続されている。CO2検出部46の下流部は、ドレン出口54に接続されている。
【0012】
電磁弁SV1,SV2間にバイパス流路45が設けられている。電磁弁SV1及びSV2を切り替えることにより、キャリアガス供給部40から供給されるキャリアガスを酸化反応部32に通さずに、除湿・ガス処理部44を介して、CO2検出部に送ることができる。
CO2検出部46の出力は演算部56に入力される。制御部58は演算部56の制御のほか、8ポートバルブ14、マイクロシリンジ16及び電磁弁SV1,SV2の動作、ならびにCO2検出部46の検出器感度を制御する。演算部56には、キーボード60、レコーダ62が接続されている。
本発明のバルブ機構は、電磁弁SV1,SV2及び制御部58により構成される。
【0013】
次に、動作を説明する。
制御部58により、電磁弁SV1及びSV2を酸化反応部32側に接続して、キャリアガス供給部40から流路43及び電磁弁SV1を介して酸化反応部32にキャリアガスを供給する。キャリアガスに炭素成分が含まれる場合、その炭素成分は、燃焼管36でCO2に変換される。燃焼管36で燃焼されたキャリアガスは、電磁弁SV2及び除湿・ガス処理部44を介して、CO2検出部46に送られ、CO2が検出される。CO2検出部からのガスはドレン出口54から排出される。CO2検出部46の検出出力は、演算部56を介して、ベースラインとしてレコーダ62に記録される。
【0014】
ベースラインが安定した後、制御部58により、電磁弁SV1及びSV2をバイパス流路45側に切り替える。キャリアガス40から供給されるキャリアガスは、流路43、電磁弁SV1、バイパス流路45、電磁弁SV2及び除湿・ガス処理部44を介して、CO2検出部46に送られ、CO2が検出される。CO2検出部からのガスはドレン出口54から排出される。CO2検出部46の検出出力は、演算部56を介して、検査用指示値としてレコーダ62に記録される。
【0015】
ベースラインと検査用指示値とを比較し、ベースラインと検査用指示値との差を求め、キャリアガス中の炭素成分によるベースラインへの影響量を求める。その影響量が、測定感度などの測定条件に対するキャリアガスの条件を満たしているか否かを判定し、そのキャリアガスを用いて測定可能であるか否かを判定する。測定可能であると判定した場合は、そのまま測定を開始し、測定不可能であると判定した場合は、表示などによりその旨を警告する。
【0016】
以下に、この実施例におけるTOC測定時の動作の一例を示す。ここでは、試料中の全炭素(TC)濃度から無機体炭素(IC)濃度を差し引いてTOC濃度を求める方法を記載するが、この実施例におけるTOC測定方法はこれに限定されるものではなく、例えば酸性化・通気処理法によりIC除去した後の試料のTCを測定することによりTOC濃度を求めることができる。
【0017】
(TC測定)
制御部58からの制御信号により、8ポートバルブ14の切換えとマイクロシリンジ16が駆動される。まず、マイクロシリンジ16が分岐部3に接続され、マイクロシリンジ16に一定量の試料が採取される。所定の希釈率が設定されている場合は、マイクロシリンジ16が希釈水24に接続されて、マイクロシリンジ16中の試料に所定量の希釈水が加えられる。
【0018】
次に、マイクロシリンジ16の試料が酸化反応部32の試料注入部34を経て燃焼管36に注入され、試料中の炭素成分がCO2に変換される。燃焼管36で発生したCO2はキャリアガス供給部40から流路43及び電磁弁SV1を経て供給されたキャリアガスとともに除湿・ガス処理部44に送られ、冷却、除湿、ハロゲン除去された後、CO2検出部46でCO2が検出される。その検出信号は演算部56に送られ、その信号からTC濃度が求められる。
【0019】
(IC測定)TC測定の時と同様にして、マイクロシリンジ16に一定量の試料が採取される。所定の希釈率が設定されている場合は、マイクロシリンジ16が希釈水24に接続されてマイクロシリンジ16中の試料に所定量の希釈水が加えられる。次に、マイクロシリンジ16が酸20に接続されてマイクロシリンジ16中の試料に少量の酸が加えられる。次に、マイクロシリンジ16が試料注入部34に接続され、キャリアガス供給部40から流路41を経てスパージガスがマイクロシリンジ16に供給される。試料中のICから発生したCO2はスパージガスとともに除湿・ガス処理部44に送られ、冷却、除湿、ハロゲン除去された後、CO2検出部46でCO2が検出される。その検出信号は演算部56に送られ、その信号からIC濃度が求められる。演算部56により、TC濃度とIC濃度の差からTOC濃度が求められる。
【0020】
図1の実施例ではTOC計全体を詳しく示したが、本発明はキャリアガスを酸化反応部を経由してCO2検出部に導くか、又は酸化反応部を経由しないでCO2検出部に導くかを選択できるようにした点に特徴を持つものであるので、TOC計の他の部分の構成は実施例のものに限らないことは言うまでもない。
【0021】
【発明の効果】
本発明の水質分析計では、バルブ機構のバルブを切り替えて、キャリアガス供給部からのキャリアガスを酸化反応部を通さずにバイパス流路を介してCO2検出部に送れるようにしたので、測定前に、キャリアガスの品質を検査することができ、測定のやり直しなどの手間を省くことができる。さらに、キャリアガスに品質を検査しておくことにより、測定値に対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施例を表す概略構成図である。
【符号の説明】
14 8ポートバルブ
16 マイクロシリンジ
18 試料注入機構
32 酸化反応部
34 試料注入部
36 燃焼管
38 加熱炉
40 キャリアガス供給部
45 バイパス流路
46 CO2検出部
62 レコーダ
SV1,SV2 電磁弁

Claims (1)

  1. 水溶液試料を熱分解して気化するとともに、試料中の全炭素をCO2に変換する酸化反応部と、水溶液試料の一定量を採取して酸化反応部に注入する試料注入機構と、酸化反応部にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部、酸化反応部からキャリアガスとともに送られてきた試料気化ガス中のCO2を検出するCO2検出部とを備えた水質分析計において、
    前記キャリアガス供給部からのキャリアガスを前記酸化反応部を通さずに前記酸化反応部の出口側の流路に供給するバイパス流路と、
    バルブを切り替えて前記酸化反応部又は前記バイパス流路にキャリアガスを供給するバルブ機構と、
    前記バルブ機構によりキャリアガス供給部からのキャリアガスのみを酸化反応部に通したときのCO 2 検出部でのCO 2 検出値と、前記バルブ機構によりキャリアガスをバイパス流路に供給してキャリアガスを酸化反応部に通さずにCO 2 検出部に送ったときのCO 2 検出値との差からキャリアガス中の炭素成分によるベースラインへの影響量を求める制御部とを備えたことを特徴とする水質分析計。
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