JP4135653B2 - エンジントルク制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、このような問題に着目してなされたもので、車速が上昇してもエンジン回転が停滞することによるドライバーへの違和感を防止することを目的とする。
図1は、車両の構成図である。
エンジン1には、エンジン1からの動力をダンパ2及び発進クラッチ3(湿式多板クラッチ)を介して無段変速機5に伝達するエンジン動力伝達軸4が接続されている。
無段変速機5は、プライマリプーリー6とセカンダリプーリー7と、これらのプーリー6,7に回巻されプライマリプーリー6の回転力をセカンダリプーリー7に伝達するベルト8と、プーリー6,7にそれぞれ設けられた油圧ピストン14とを含んで構成されている。
無段変速機5のセカンダリプーリー7には、エンジン1側からの動力を出力する出力軸9が接続されている。出力軸9からの動力は、ファイナルギア10、ディファレンシャル11及び駆動軸12を介してタイヤ13を駆動する。
これらの出力信号がトランスミッション制御装置30(図には、「TCU」と示す)に入力される。
例えば、エンジン1の回転数Neに応じた信号を出力するエンジン回転数センサ15、車速Vspに応じた信号を出力する車速センサ18、アクセル開度に応じた信号を出力するアクセル開度センサ19などが設けられ、これらの信号がエンジン制御装置40に入力される。
次に、図2の制御ブロック図を用いて説明する。
ここで、クラッチ締結トルクTcは、エンジン回転数Neの2乗と、発進クラッチ3の容量係数(定数)との乗算により算出する(Tc=τNe2)。
そして、この値に、セカンダリプーリー回転数Nsからプライマリプーリー回転数Ntを除した値であるトランスミッションギア比(TMギア比=セカンダリプーリー回転数Ns/プライマリプーリー回転数Nt)を除算する。このようにして算出された値がドライバー目標エンジントルクに相当する。このドライバー目標エンジントルクは、トルク補正量算出手段42と補正後目標エンジントルク算出手段43とにそれぞれ入力される。
トルク補正量算出手段42は、クラッチ締結トルクTc及びドライバー目標エンジントルクに基づいて、ドライバー目標エンジントルクに対する補正量を算出する。
なお、このトルク補正率算出テーブルの補正パターンを変更することでトルク補正率を変更可能である。
なお、所定時間におけるエンジン1の回転上昇の傾きであるdNe/dtを補正量としてもよい。
補正後目標エンジントルク算出手段43は、ドライバー目標エンジントルクとトルク補正量とに基づいて補正後の目標エンジントルクを算出する。具体的には、ドライバー目標エンジントルクとトルク補正量とを加算することにより補正後の目標エンジントルクを算出する。
また、リミッタトルク算出手段44は、クラッチ締結トルクTcに基づいて、リミッタトルク算出テーブルを用いてリミッタトルクを算出する。このリミッタトルク算出テーブルは、クラッチ締結トルクTcに応じて算出され、クラッチ締結トルクTcが所定値以下まではリミッタトルクが低下する傾向にある一方、所定値を越えたらトルクリミットが上昇する傾向にある。
出力目標エンジントルク選択手段45は、リミッタトルクと補正後の目標エンジントルクとを比較して小さい方のトルクを出力目標エンジントルクとして選択する。そして、出力目標エンジントルクに基づいてスロットルアクチュエータに出力信号を送り、スロットル弁の開度を調整することでエンジントルクを制御する。
dNe/dt=1/I×(Te−Tc) ・・・(1)
この式は、クラッチ締結トルクTcが増加すると、dNe/dtは減少し、エンジン回転はアクセルペダルの踏み込みに対して停滞する現象が発生することを意味する。
ここで、従来においては、(ロ),(ハ),(ホ)に示す通り、アクセル開度が一定である場合の発進において、クラッチ締結トルクTcの上昇に比べ、エンジントルクの増加量は少ない((ロ)の補正前のエンジントルク)。この結果、(1)式より、エンジン回転の停滞が発生し((ニ)の補正前のエンジン回転数Ne)、ドライバーに違和感を与える場合がある。
次に、トルク補正量による車両加速度(G(ゲイン)プロフィール)の変化について図4を用いて説明する。図4は、時間に対する各パラメータを示しており、(イ)はアクセル開度、(ロ)はトルク比(=クラッチ締結トルクTc/目標エンジントルク)、(ハ)はトルク補正量、(ニ)はエンジン回転数Ne、(ホ)は車両加速度(ゲイン)である。
トルク補正パターンaによりトルク補正を行った場合βには、トルク比(クラッチ締結トルクTc/エンジン目標トルク)が小さい領域にてエンジントルク補正量を大きく設定することにより、(1)式より、発進初期のエンジン回転数の上昇が大きくなる。その結果、Gプロフィールは(ホ)のβに示す通り、トルクの立ち上がりも早くなる。そして、トルク補正前の場合αに比べ、Gプロフィールのピーク及びGプロフィールの立ち上がりまでの時間が短くなる。
次に、リミッタトルク算出手段44について説明する。
リミッタトルク算出手段44は、エンジン回転数Neの停滞感をなくすために目標エンジントルクの補正を行った場合、過剰にトルク増加補正を行ってしまうと、クラッチ締結トルクTcに対して補正後の目標エンジントルクが過大となり、エンジン1の空吹き感が発生することが考えられ、この空吹き感を、リミッタトルクを算出して設定することにより抑制する。
ここで、リミッタトルクの算出について以下に説明する。
前述の(1)式において、C1を定数とすると、次式のように表せる。
駆動力F[kgf]は、次式に示す通り、クラッチ締結トルクTc、ギア比ix及びファイナルギア比ifを乗算した値をタイヤ半径rで除算して算出する。
F=Tc・ix・if/r ・・・(3)
走行抵抗D[kgf]は、タイヤ13の転がり摩擦μ、車重M、路面傾斜角θ、定数C2及び車速Vspとして、次式にて算出する。
また駆動力Fから走行抵抗Dを差し引いた値である加速抵抗F−D[kgf]は、パワートレインの慣性抵抗ΔM(重量変換後)、加速度α(=dVsp/dt)及び重力加速度gとして、次式にて算出する。
F−D=(M+ΔM)・α/g ・・・(5)
無段変速機5のプライマリ回転数Ntは、次式に示す通り、1000、車速Vsp及びギア比ixを乗算して、この値を1000回転毎における車速であるV1000にて除算することで算出する。
ここで、(6)式を時間で微分した値は次式にて表せる。
dNt/dt=1000・ix/V1000・dVsp/dt=1000・ix/V1000・α ・・・(7)
(2)及び(7)式より、エンジン回転数Neと無段変速機5のプライマリ回転数Ntとの差を時間微分すると次式により表せる。
そして、(2)、(3)及び(4)式を(8)式に代入すると次式にて表せる。
d(Ne−Nt)/dt=1/(C1・I)・Te−(1/(C1・I)+1000/V1000・g/(M+ΔM)・if/r)・Tc+1000/V1000・ix・g/(M+ΔM)・(μM+Msinθ+C2・Vsp^2) ・・・(9)
ここで、車速Vspをプライマリ回転数Nt(タービン回転数)に変形すると、次式にて表せる。
従って、(9)式は、次式にて表せる。
d(Ne−Nt)/dt=1/(C1・I)・Te−(1/(C1・I)+1000/V1000・g/(M+ΔM)・if/r/60)・Tc+V1000/1000・ix・g/(M+ΔM)・C2・Nt^2/60+1000/V1000・ix・g/(M+ΔM)・(μM+Msinθ)/60 ・・・(11)
(11)式において、車両発進時の路面傾斜角θ及びギア比ixを一定として、係数K1〜K4にすると次式にて表せる。
ここで、差回転を所定値C0とすると、d(Ne−Nt)/dt<C0となることから次の条件が成立する。
K1・Te−K2・Tc<C0−K3・Nt^2+K4 ・・・(13)
ここで、制御範囲を発進時の低車速に限ることを前提とし、空気抵抗K3・Nt^2は無視できるものとすると、(13)式は以下のように表せる。
これにより、クラッチ締結トルクTcに対して許容差回転を決定することにより、リミッタトルクの値が算出可能となる。
なお、次式に示すように、(13)式のNtに実Ntを入力することによりクラッチ締結トルクリミットTe_Limitを関数からリアルタイムに求めてもよい。
本実施形態によれば、無段変速機5の入力側にクラッチ3を備えるエンジントルク制御装置において、車両の運転状態(車速Vsp、アクセル開度)に基づいて目標エンジントルクを算出する目標エンジントルク算出手段41と、エンジン回転数Neに基づいてクラッチ3の締結トルクTcを算出するクラッチ締結トルク算出手段(トランスミッション制御装置30)と、クラッチ締結トルクTcに基づいて目標エンジントルクに対する補正量を算出するトルク補正量算出手段42と、目標エンジントルク及びトルク補正量に基づいて補正後の目標エンジントルクを算出する補正後目標エンジントルク算出手段43と、補正後の目標エンジントルクに基づいてエンジントルクを制御するエンジントルク制御手段(エンジン制御装置40)と、を備える。このため、クラッチ締結トルクTcに基づいて目標エンジントルクの制御を行うことにより、エンジン回転数Neの停滞を防止できる。
また本実施形態によれば、トルク補正量算出手段42は、目標エンジントルクとクラッチ締結トルクTcとの比(クラッチ締結トルクTc/ドライバー目標トルク)に基づいてトルク補正量を算出する。このため、トルク比に応じた補正を行うことで、エンジン1の停滞感抑制及び車両加速度(Gの時間プロフィール)を自由にチューニングすることができる。
3 発進クラッチ
4 エンジン動力伝達軸
5 無段変速機
6 プライマリプーリー
7 セカンダリプーリー
8 ベルト
14 油圧ピストン
15 エンジン回転数センサ
16 プライマリプーリー回転数センサ
17 セカンダリプーリー回転数センサ
18 車速センサ
19 アクセル開度センサ
30 トランスミッション制御装置
40 エンジン制御装置
41 ドライバー目標エンジントルク算出手段
42 トルク補正量算出手段
43 補正後目標エンジントルク算出手段
44 リミッタトルク算出手段
45 出力目標エンジントルク選択手段
Claims (4)
- 変速機の入力側にクラッチを備えるエンジントルク制御装置において、
車両の運転状態に基づいて目標エンジントルクを算出する目標エンジントルク算出手段と、
エンジン回転数に基づいてクラッチの締結トルクを算出するクラッチ締結トルク算出手段と、
前記クラッチ締結トルクに基づいて前記目標エンジントルクに対する補正量を算出し、前記クラッチ締結トルクの増加に応じて、前記トルク補正量を大きくするトルク補正量算出手段と、
前記目標エンジントルクに前記トルク補正量を加算して補正後の目標エンジントルクを算出する補正後目標エンジントルク算出手段と、
前記クラッチ締結トルクに基づいてリミッタトルクを算出するリミッタトルク算出手段と、
前記リミッタトルクと前記補正後目標エンジントルクとの小さい方のトルクを出力目標エンジントルクとして選択する出力目標エンジントルク選択手段と、
前記出力目標エンジントルクに基づいてエンジントルクを制御するエンジントルク制御手段と、を備えることを特徴とするエンジントルク制御装置。 - 前記トルク補正量算出手段は、前記クラッチ締結トルク及び前記目標エンジントルクに基づいてトルク補正量を算出することを特徴とする請求項1記載のエンジントルク制御装置。
- 前記トルク補正量算出手段は、前記目標エンジントルクと前記クラッチ締結トルクとの比に基づいて前記トルク補正量を算出することを特徴とする請求項2記載のエンジントルク制御装置。
- 前記リミッタトルク算出手段は、変速機の入力側回転数及び前記クラッチ締結トルクに基づいてリミッタトルクを算出することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のエンジントルク制御装置。
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