JP4134455B2 - カルバメート化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリウレタン用モノマーとして有用なイソシアネートに容易に誘導できるカルバメート化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イソシアネートはポリウレタンの原料として有用な物質である。イソシアネートは、従来、主としてアミンとホスゲンとの反応により製造されていた。しかしながら、ホスゲンは毒性が強く、また、この反応は塩化水素の多量の副生を伴うため、近年は、対応するカルバメートを熱および/または触媒の作用によって分解する方法(特願平5−255227号、特開昭57−158747号)が賞用されている。
カルバメートの製造方法としてはニトロ化合物または第一級アミンと一酸化炭素およびアルコールを触媒の存在下、高温高圧で反応させる方法が知られている(特公昭52−43822号、特開昭54−145601号、特開昭51−98240号)。しかしながら、これらの方法は、概して、触媒活性が低く、尿素化合物やアミン類などの副生量が大きい、高温高圧反応設備を要するなどの問題がある。
【0003】
カルバメートを製造する別法として、炭酸ジエステルとアミンとを触媒の存在下に比較的温和な条件下で反応させる方法が知られている。触媒としては、硝酸ウラニル、三塩化アンチモンなどのルイス酸(特開昭51−33095号)、鉛、チタンまたはジルコニウムの中性または塩基性化合物(特開昭57−82361号)、ジルコニウムとケイ素とを含む酸化物(特願平7−328435号)、酸化鉛、炭酸鉛、酢酸鉛などの鉛化合物(Journal of Molecular Catalysis,p399,1994,Elsevier Sci.社発行)などが提案されている。しかしながら、これらの方法は、N−アルキルアミンが多量に副生する、触媒の取扱性に劣る、反応に高温・長時間を要するなどの問題があり、工業的に満足できる方法とは言い難い。特に、ジルコニウムとケイ素とを含む酸化物触媒は固体触媒であるため、生成物と触媒の分離がよい反面、大きな触媒活性を得るには大量に使用しなければならないという問題がある。また、酸化鉛、炭酸鉛、酢酸鉛などを触媒として用いる反応については、上記の文献には芳香族アミンの反応が記載されるのみで、脂肪族アミンを含む一般のアミンを用いる反応への適用については記載されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、炭酸ジエステルと脂肪族アミンを含む一般的なアミンを原料とし、少量の触媒により高い活性が得られ、高収率で対応するカルバメート化合物を製造できる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、アミンと炭酸ジエステルとを反応させてカルバメート化合物を製造するに際し、触媒として硝酸塩を用いることにより、脂肪族アミン、芳香族アミンの何れの原料についても優れた反応速度および反応選択性が得られること、反応中は均一系となるため少量の触媒によっても反応速度が速いこと、さらに、反応終了後には触媒が析出するため、固体触媒と同様にろ過のみにより触媒の分離ができることを見出し、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば、アミンと炭酸ジエステルを反応させてカルバメート化合物を製造する方法において、触媒として硝酸鉛を用いることを特徴とするカルバメート化合物の製造方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いられるアミンは式 R−NH−R´(式中のRおよびR´は炭素数30以下のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または水素を表している。)で表わされる脂肪族および芳香族の第一級および第二級アミンであり、好ましくは第一級アミンである。また、2つ以上のアミノ基を有するジアミン類、トリアミン類も使用可能である。また、アミン中には本反応条件下にて反応しない官能基が存在してもよい。本反応条件下で反応する置換基としてはヒドロキシ基、カルボン酸、スルホン酸、オキシム、炭酸エステルなどがあげられる。
【0008】
本発明で用いられるアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−トリデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−アイコサニルアミン、n−ペンタコサニルアミン、トリアコンタニルアミン、イソプロピルアミン(=2−アミノプロパン)、2−アミノブタン、3−アミノペンタン、2−アミノオクタン、5−アミノドデカン、3−アミノヘプタデカン、2−アミノトリコサン、6−アミノオクタコサンなどの飽和脂肪族第一級アミン;アリルアミン、2−ブテニルアミン、2−ブチニルアミン、2−ペンテニルアミン、3−ヘキシニルアミンなどの不飽和脂肪族第一級アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アダマンチルアミンなどの脂環式第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、N−メチルシクロペンチルアミンなどの脂肪族第二級アミン;アニリン、p−メチルアニリン、m−アニシジン、o−フェネチジン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、2−ベンゾフラナミンなどの芳香族第一級アミン;ジフェニルアミン、N−エチルアニリン、N−メチル−p−フェネチジンなどの芳香族第二級アミン;2−クロロエチルアミン、m−クロロアニリン、o−ニトロアニリンなどの不活性置換基をもつ脂肪族および芳香族第一級アミン;ならびに、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ベンゼンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、ベンジジン(ベンジディン)などの脂肪族および芳香族のジアミンが挙げられる。
【0009】
本発明に用いられる炭酸ジエステルは、次式
Figure 0004134455
(式中のR1およびR2は、同一であっても相違してもよく、炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基の中から選ばれ、これらの基は、本反応条件下で反応しない官能基を置換基として有していてもよい。)で表わされる化合物である。かかる炭酸ジエステルの具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジ−n−プロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸エチルブチル、炭酸ジ−n−ペンチル、炭酸ジ−n−ヘキシル、炭酸ジ−n−オクチル、炭酸ジ−n−デシル、炭酸ジアリル、炭酸ジフェニル、炭酸ジナフチルなどが挙げられる。
炭酸ジエステルの使用量は比較的広い範囲内で適宜選択できる。通常は、生成するカルバメートの良好な収量を確保する見地から、炭酸ジエステルのアミンに対する使用量は0.1〜10当量であり、好ましくは0.3〜3当量である。
【0010】
本発明の方法は、触媒として硝酸鉛を用いることを特徴としている。硝酸鉛の使用形態としては、硝酸鉛を反応系に直接加える方法ばかりでなく、反応系内でその前駆体同士、例えば、水酸化鉛と硝酸を反応させるか、反応系内で発生させて最終的に硝酸イオンと鉛イオンが共存する環境とする方法を採ることができる。硝酸鉛の使用量は鉛原子を基準にして、アミンに対し、通常0.1〜20モル%であり、好ましくは0.1〜5モル%である。
【0011】
反応は溶剤の存在下または非存在下のいずれでも行うことができる。溶剤としては、アミンおよび炭酸ジエステルと本反応条件下に反応せず、かつ、本反応を阻害しないものの中から選択される。かかる溶剤の具体例としては、ブタン、ペンタン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ニトロエタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;およびクロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの塩素含有化合物;およびフッ素含有化合物などが挙げられる。
【0012】
反応温度は、通常50℃〜250℃、好ましくは80℃〜200℃である。反応温度が低いと反応に時間がかかり、高すぎると副反応が増大する。
反応圧力は原料や溶剤の沸点以上の反応温度を実現するために大気圧またはそれ以上が選択される。圧力は反応温度と反応容器の内容物の蒸気圧で一義的に決まるが、通常は1気圧〜50気圧の範囲で選ばれる。
反応時間は温度および圧力に依存して変化するが、反応の効率の点から通常は0.1時間〜10時間の範囲で選ばれる。
【0013】
反応の形態としては、バッチ反応、流通反応の何れも採用することができる。バッチ反応の場合は、反応終了後に内温を下げ、生成物から触媒を濾別して除去することができる。触媒は再度使用できるので、例えば濾過器を備えた反応器を用い、触媒を残して生成物を取り出した後、反応器中に次の原料を仕込んで反応を繰り返し行うことができる。流通反応の場合も同様に反応器から生成物とともに反応系外に出る触媒を冷却し、析出させて除去し、回収した触媒を再度原料に混合して使用することができる。バッチ反応および流通反応において、反応終了後の冷却温度は低いほど好ましいが、生成物の融点や液粘度、冷却までの時間やエネルギー効率などを考慮すると、通常は−60〜30℃、好ましくは−20〜20℃である。
【0014】
本発明の反応によれば、炭酸ジエステルの1つのエステル基がアミンとエステル交換したカルバミン酸エステル(カルバメートまたはカーバメートともいう)が生成する。生成するカルバミン酸エステルの具体例としては、N−メチルカルバミン酸メチル、N−エチルカルバミン酸メチル、N−プロピルカルバミン酸メチル、N−メチルカルバミン酸エチル、N−メチルカルバミン酸n−プロピル、N−ヘキシルカルバミン酸メチル、N−デシルカルバミン酸メチル、N−ヘキサデシルカルバミン酸メチル、N−アイコサニルカルバミン酸メチル、N−ペンタコサニルカルバミン酸メチル、N−トリアコンタニルカルバミン酸メチル、N−イソプロピルカルバミン酸メチル、N−2−ブチルカルバミン酸メチル、N−3−ペンチルカルバミン酸メチル、N−2−オクチルカルバミン酸メチル、N−5−ドデシルカルバミン酸メチル、N−3−ヘプタデカニルカルバミン酸メチル、N−2−トリコサニルカルバミン酸メチルなどの飽和脂肪族第一級アミノ基含有カルバミン酸エステル;N−アリルカルバミン酸メチル、N−2−ブテニルカルバミン酸エチル、N−2−ブチニルカルバミン酸メチル、N−3−ヘキシニルカルバミン酸メチルなどの不飽和脂肪族第一級アミノ基含有カルバミン酸エステル;N−シクロペンチルカルバミン酸メチル、N−シクロヘキシルカルバミン酸メチル、N−アダマンチルカルバミン酸エチルなどの脂環式第一級アミノ基含有カルバミン酸エステル;N,N−ジメチルカルバミン酸メチル、N,N−ジエチルカルバミン酸エチル、N−メチル−N−エチルカルバミン酸メチル、N,N−ジ−n−オクチルカルバミン酸メチル、N−メチル−N−シクロペンチルカルバミン酸エチルなどの脂肪族第二級アミノ基含有カルバミン酸エステル;N−フェニルカルバミン酸メチル、N−(p−トルイル)カルバミン酸メチル、N−(m−メトキシフェニル)カルバミン酸メチル、N−(o−エトキシフェニル)カルバミン酸エチル、N−(1−ナフチル)カルバミン酸メチル、N−(2−ナフチル)カルバミン酸メチル、N−(2−ベンゾフラニル)カルバミン酸メチルなどの芳香族第一級アミノ基含有カルバミン酸エステル;N,N−ジフェニルカルバミン酸メチル、N−エチル−N−フェニルカルバミン酸プロピルなどの芳香族第二級アミノ基含有カルバミン酸エステル;ならびに(2−メトキシカルボニルアミノエチル)カルバミン酸メチル、(3−エトキシカルボニルアミノプロピル)カルバミン酸エチル、(2−メトキシカルボニルアミノプロピル)カルバミン酸メチル、(4−メトキシカルボニルアミノブチル)カルバミン酸メチル、(5−メトキシカルボニルアミノペンチル)カルバミン酸メチル、(6−エトキシカルボニルアミノヘキシル)カルバミン酸エチル、(8−プロポキシカルボニルアミノオクチル)カルバミン酸プロピル、(3−メトキシカルボニルアミノシクロペンチル)カルバミン酸メチル、(4−メトキシカルボニルアミノシクロヘキシル)カルバミン酸メチル、(4−メトキシカルボニルアミノフェニル)カルバミン酸メチルおよび(4−メトキシカルボニルアミノナフチル)カルバミン酸メチルなどの脂肪族および芳香族のジアミンから導かれるカルバミン酸エステルが挙げられる。
【0015】
上記カルバミン酸エステルは熱または触媒的分解反応によりイソシアネートに変換して、医農薬、各種工業薬品、ポリウレタンなどの製造原料として用いることができる。中でも、ジアミンから導かれるカルバミン酸エステルはポリウレタンの製造に用いられるジイソシアネート化合物の製造原料として有用度が高い。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の方法を実施例について具体的に説明する。なお、反応生成物の同定は、1H−NMRにより行い、また、分析には、ガスクロマトグラフィーを用い、内部標準物質としてn−プロピルベンゼンを用いて生成物の定量をおこなった。
【0017】
実施例1〜5
30mlのオートクレーブに、表1に示すアミン20mmol、ジメチルカーボネート(DMC)40mmol、硝酸鉛0.5mmolを仕込み、表1に示す所定温度で2時間反応させた。生成物を分析し、原料および生成物を定量した。結果を表1に示す。
【0018】
Figure 0004134455
【0019】
実施例6、7
反応温度を100℃、160℃とした他は実施例2と同様に反応させたところ、生成物(N−ブチルカルバミン酸メチル)の収率(アミン基準の収率をいう。以下同じ。)はそれぞれ81%、92%であった。
【0020】
実施例8、9
反応温度を100℃、160℃とした他は実施例3と同様に反応させたところ、生成物(N−ヘキシルカルバミン酸メチル)の収率はそれぞれ77%、92%であった。
【0021】
実施例10〜14
ジメチルカーボネート(DMC)の使用量を10mmol、20mmol、22mmol、24mmol、30mmolとした他は実施例3と同様に反応を行った結果、N−ヘキシルカルバミン酸メチルの収率はそれぞれ50%、79%、85%、87%、97%であった。
【0022】
実施例15〜17
触媒の使用量を0.1mmol、0.2mmol、0.4mmolとする他は実施例3と同様に反応を行った結果、N−ヘキシルカルバミン酸メチルの収率はそれぞれ65%、88%、96%であった。
【0023】
比較例1
触媒を用いずに実施例3と同様に反応を行った結果、N−ヘキシルカルバミン酸メチルの収率は38%であった。
【0024】
比較例2〜3
触媒として硝酸鉛に代えて酸化鉛を用いた他は実施例1および4と同様に反応させたところ、N−プロピルカルバミン酸メチルおよび(2−メトキシカルボニルアミノエチル)カルバミン酸メチルがそれぞれ収率76%および81%で得られた。
【0025】
【発明の効果】
触媒として硝酸鉛を用いる本発明の方法によれば、炭酸ジエステルと脂肪族アミンを含む一般的なアミンを原料とし、高収率で対応するカルバメート化合物が得られる。また、硝酸鉛は概して、反応液中に均一に溶けるため反応効率が高く保持され、反応終了後は反応液を冷却することによって触媒を析出させ回収することができる。

Claims (1)

  1. アミンと炭酸ジエステルを反応させてカルバメート化合物を製造する方法において、触媒として硝酸鉛を用いることを特徴とするカルバメート化合物の製造方法。
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