JP4107845B2 - アルキルカルバメートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキルカルバメートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルキルカルバメートは、医薬、農薬および各種ファインケミカルズの合成原料あるいは中間原料、さらには、アルコール類の分析試剤など、広範な用途を有する工業原料として有用な有機化合物である。また、アルキルカルバメートは、毒性のあるホスゲンを使用しないイソシアネートの製造原料としても有用であり、安価で簡便な製造方法が望まれている。
【0003】
このようなアルキルカルバメートを製造する方法としては、(1)イソシアネートとアルコールとを反応させる方法、(2)クロロギ酸エステルとアミンとを塩基存在下で反応させる方法、(3)尿素とアルコールとを反応させる方法、(4)炭酸ジメチルとホルムアミドとを反応させる方法、(5)炭酸ジエステルとアミンとを反応させる方法など、各種の方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したアルキルカルバメートの製造方法において、上記(1)の方法では、イソシアネートが、アミンと毒性のあるホスゲンとの反応で製造されるので、大量の塩化水素が副生すること、さらには、イソシアネートそのものにも刺激性があり、取り扱いが煩雑であるという不具合がある。
【0005】
また、上記(2)の方法では、クロロギ酸エステルが高価であること、腐食性のある塩酸などが副生すること、さらには、等モル以上の塩基を必要とすることなどの不具合がある。
【0006】
また、上記(3)および上記(4)の方法では、高温高圧下で反応を行なう必要があるなどの不具合がある。
【0007】
また、上記(5)の方法は、各種の方法が知られており、例えば、特開昭51−33095号公報では、硝酸ウラニル、三塩化アンチモンなどのルイス酸触媒を用いる方法が提案されている。しかし、この方法では、反応速度が遅く、しかも、目的生成物であるアルキルカルバメート以外に、副生成物としてN−アルキル化アミンが多量に副生するという不具合がある。なお、ウラン化合物は、比較的良好な結果を示すが、ウランが放射性元素であることから実用的でない。
【0008】
また、特開昭57−82361号公報では、鉛、チタンおよびジルコニウムなどの中性または塩基性の化合物を触媒として用いる方法が提案されている。しかし、この方法においても、反応速度が遅く、しかも、反応に高温かつ長時間を必要とするため、工業的には不向きであるという不具合がある。
【0009】
一方、塩基性触媒として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物またはアルコラートを用いる方法が、特開昭52−14745号公報、特開昭54−163528号公報、特開昭64−85956号公報、特開平2−311452号公報および特開平3−200756号公報などにおいて提案されている。しかし、これらの方法で得られるアルキルカルバメートには、塩基性触媒が残留するため、例えば、この方法で得られるアルキルカルバメートを熱分解してイソシアネートを製造しようとすると、熱分解において、重合や着色を引き起こしやすくなるため、塩基性触媒を酸によって中和除去する必要を生じ、さらには、過剰の酸あるいは中和された塩も熱分解に悪影響を及ぼすため、さらなる水抽出または水洗浄が必要となり、精製工程に大きな負荷がかかるという不具合がある。
【0010】
また、炭酸ジエステルを用いる他の方法として、特開平6−128215号公報では、炭酸アルキルアリールエステルと芳香族アミンとからアルキルカルバメートを製造する方法が提案されている。しかし、この方法では、含窒素複素環式化合物を触媒として用いているが、収率の向上が図れないという不具合がある。
【0011】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたもので、その目的とするところは、簡易な方法により、温和な条件で、高選択的かつ高収率でアルキルカルバメートを得ることができる、アルキルカルバメートの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のアルキルカルバメートの製造方法は、脂肪族アミン、脂環族アミンおよび芳香脂肪族アミンからなる群より選ばれる非芳香族アミンと、炭酸ジアルキルとを、チオシアン酸化合物の存在下で反応させることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のアルキルカルバメートの製造方法では、非芳香族アミンが、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のアルキルカルバメートの製造方法では、炭酸ジアルキルが、下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
【0015】
(R1O)2CO (1)
(式中、R1は、互いに同一または相異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
また、本発明のアルキルカルバメートの製造方法では、チオシアン酸化合物が、チオシアン酸の第II族元素の塩および/またはチオシアン酸の第III族元素の塩であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のアルキルカルバメートの製造方法では、チオシアン酸化合物の含水量が3重量%以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のアルキルカルバメートの製造方法では、40〜160℃の反応温度で反応させることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のアルキルカルバメートの製造方法は、脂肪族アミン、脂環族アミンおよび芳香脂肪族アミンからなる群より選ばれる非芳香族アミンと、炭酸ジアルキルとを、チオシアン酸化合物の存在下で反応させる。
【0019】
本発明で用いられる非芳香族アミンは、1級または2級のアミノ基を1つ以上有し、かつ、芳香環に直接結合したアミノ基を有さないアミノ基含有有機化合物であって、脂肪族アミン、脂環族アミンおよび芳香脂肪族アミンから選択される。なお、このようなアミノ基含有有機化合物は、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン基、カルボニル基、ハロゲン原子などの安定な結合または官能基を、その分子骨格中に含んでいてもよい。
【0020】
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、iso−プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンなどの直鎖状または分岐状の脂肪族1級モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、N−メチルシクロペンチルアミンなどの脂肪族2級モノアミン、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6一ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ビス(アミノエチルチオ)エタンなどの脂肪族ジアミン、例えば、1,2,3−トリアミノプロパン、トリアミノヘキサン、トリアミノノナン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン、2,6−ジアミノカプロン酸2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、トリアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−1,6−アミノヘキサンなどの脂肪族トリアミンなどが挙げられる。なお、脂肪族アミンには、例えば、ポリオキシプロピレンジアミンなどのアミノ基含有ポリオキシアルキレン化合物やアミノ基含有ポリシロキサン化合物なども含まれる。
【0021】
脂環族アミンとしては、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、水添トルイジンなどの脂環族1級モノアミン、例えば、N−メチルシクロペンチルアミンなどの脂環族2級モノアミン、例えば、ジアミノシクロブタン、イソホロンジアミン、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、水添2,4−トルエンジアミン、水添2,6−トルエンジアミンなどの脂環族ジアミン、例えば、1,3,5−トリスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環族トリアミンなどが挙げられる。
【0022】
芳香脂肪族アミンとしては、例えば、ベンジルアミンなどの芳香脂肪族1級モノアミン、例えば、N−メチルベンジルアミンなどの芳香脂肪族2級モノアミン、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンなどの芳香脂肪族ジアミン、例えば、メシチレントリアミンなどの芳香脂肪族トリアミンなどが挙げられる。
【0023】
これら非芳香族アミンのなかでは、工業的に用いられるポリ(ジ)イソシアネートの前駆体となるジアミン、例えば、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンが好ましく用いられる。
【0024】
このような非芳香族アミンは、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明で用いられる炭酸ジアルキルとしては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0026】
(R1O)2CO (1)
(式中、R1は、互いに同一または相異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。)
上記式(1)中、R1で示される炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの炭素数1〜12の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、例えば、シクロヘキシル、シクロドデシルなどの炭素数5〜12の脂環式飽和炭化水素基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基、さらに好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0027】
また、R1で示される炭素数1〜12の炭化水素基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの炭素数1〜4のアルコキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどの炭素数1〜4のアルキルチオ基など)およびアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)などが挙げられる。これらの置換基は同一または相異なって1〜5個、好ましくは1〜3個置換していてもよい。
【0028】
また、R1で示される炭素数1〜12の炭化水素基は、互いに同一または相異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0029】
このような炭酸ジアルキルとしては、より具体的には、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルなどが挙げられ、取扱性およびコストの観点より、炭酸ジメチルが好ましく用いられる。
【0030】
そして、本発明のアルキルカルバメートの製造方法では、上記した非芳香族アミンと、上記した炭酸ジアルキルとを、所定の割合で配合し、チオシアン酸化合物の存在下、好ましくは液相で反応させる。
【0031】
非芳香族アミンと炭酸ジアルキルとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。通常は、炭酸ジアルキルの配合量として、非芳香族アミンのアミノ基に対して等当量以上あればよく、そのため、炭酸ジアルキルそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。なお、炭酸ジアルキルを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量の炭酸ジアルキルが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、商業生産上、好ましくない。
【0032】
より具体的には、炭酸ジアルキルの配合量は、アルキルカルバメートの収率を向上させる観点から、非芳香族アミンのアミノ基に対して、1〜20倍当量、好ましくは、1.1〜10倍当量、さらに好ましくは、1.2〜5倍当量程度である。
【0033】
本発明において、チオシアン酸化合物は、触媒として用いられ、好ましくは、チオシアン酸塩が用いられる。チオシアン酸とともに塩を形成する元素としては、周期律表(IUPAC、1990年)において、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの第I族元素、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの第II族元素、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド系列などの第III族元素、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの第IV族元素、例えば、バナジウムなどの第V族元素、例えば、クロム、モリブデンなどの第VI族元素、例えば、マンガンなどの第VII族元素、例えば、鉄などの第VIII族元素、例えば、コバルトなどのIX族元素、例えば、ニッケル、パラジウムなどの第X族元素、例えば、銅、銀などのXI族元素、例えば、亜鉛、カドミウム、水銀などのXII族元素、例えば、タリウムなどのXIII族元素、例えば、ケイ素、鉛などのXIV族元素、例えば、リン、オスミウム、ビスマスなどのXV族元素などが挙げられる。これらのうち、チオシアン酸の第II族元素の塩および/またはチオシアン酸の第III族元素の塩、より具体的には、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸イットリウム、チオシアン酸イッテルビウムが好ましく用いられる。
【0034】
また、チオシアン酸化合物としては、例えば、チオシアン酸アンモニウムなどのチオシアン酸のアンモニウム塩、例えば、チオシアン酸メチル、チオシアン酸エチル、チオシアン酸クロロメチル、チオシアン酸フェニル、チオシアン酸ベンジルなどのチオシアン酸エステルなどを用いることもできる。
【0035】
このようなチオシアン酸化合物は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このようなチオシアン酸化合物は、市販品を用いてもよく、また、合成してもよい。チオシアン酸化合物の合成は、新実験化学講座第8巻[1]無機化合物の合成1(丸善出版発行、1996年)、第8巻[2]無機化合物の合成2(丸善出版発行、1997年)およびHuaxue Shiji,1:30−32,1982に記載されている方法に準拠することができる。
【0036】
チオシアン酸化合物の使用量は、非芳香族アミン1モルに対して、0.0001〜0.2モル、さらには、0.001〜0.1モルであることが好ましい。チオシアン酸化合物の使用量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、使用量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、使用量がこれより少ないと、反応促進効果が見られない場合がある。
【0037】
なお、チオシアン酸化合物の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、反応活性に影響を与えることがなく、特に制限されることはない。
【0038】
また、チオシアン酸化合物は、そのまま用いてもよいが、結晶水を含む場合には、反応活性が低下するため、加熱や真空乾燥などにより脱水処理して、含水量を3重量%以下、好ましくは、0.1重量%以下とすることが好ましい。含水量を3重量%以下とすることにより、良好な反応活性を発現させることができる。
【0039】
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、反応溶媒を配合することにより操作性を向上させることができる。このような反応溶媒は、反応原料である非芳香族アミンおよび炭酸ジアルキルと、反応生成物であるアルキルカルバメートなどに対して不活性であるか反応性に乏しいものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノールなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ペンタン、石油エーテル、リグロイン、シクロドデカン、デカリン類など)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、メチルナフタレン、クロロナフタレン、ジベンジルトルエン、トリフェニルメタン、フェニルナフタレン、ビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニルなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリルなど)、脂肪族ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,4−ジクロロブタンなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ニトロ化合物類(例えば、ニトロメタン、ニトロベンゼンなど)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾールなど)、炭酸エステル類(例えば、炭酸ジメチル,炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルなど)や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0040】
これら反応溶媒のなかでは、経済性、操作性などを考慮すると、脂肪族アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、フェノール類、炭酸エステル類が好ましく用いられる。また、このような反応溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、反応溶媒の使用量は、目的生成物のアルキルカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されるものではないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、使用量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、非芳香族アミン1重量部に対して、通常、0.01〜50重量部、好ましくは、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。
【0042】
また、この反応においては、反応温度は、例えば、40〜160℃、好ましくは、50〜100℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大して目的生成物であるアルキルカルバメートの収率が低下する場合がある。
【0043】
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
【0044】
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応容器内に、非芳香族アミン、炭酸ジアルキル、チオシアン酸化合物および必要により反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。そうすると、温和な条件下において、高選択的かつ高収率で、例えば、下記一般式(2)で示される目的生成物であるアルキルカルバメートが生成する。
【0045】
(R1OCONH)nR2 (2)
(式中、R1は、上記式(1)のR1と同意義を、R2は、非芳香族アミン残基を、nは、非芳香族アミンのアミノ基の数を示す。)
また、この反応においては、例えば、下記一般式(3)で示されるアルコールが副生される。
【0046】
R1−OH (3)
(式中、R1は、上記式(1)のR1と同意義を示す。)
なお、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。また、この反応は、副生するアルコールを系外に留出させながら反応させることもできる。
【0047】
また、得られたアルキルカルバメートを単離する場合には、例えば、過剰(未反応)の炭酸ジアルキル、アルキルカルバメート、チオシアン酸化合物、反応溶媒、アルコールなどを含む反応液から、公知の分離精製方法によって、アルキルカルバメートを分離すればよい。
【0048】
そして、このようなアルキルカルバメートの製造方法によると、簡易な方法により、実質的に非芳香族アミンと炭酸ジアルキルとを配合するのみで、温和な条件で、高選択的かつ高収率でアルキルカルバメートを得ることができるので、低コストで効率よくアルキルカルバメートを製造することができる。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、反応生成物の定量には、ガスクロマトグラフィー(内部標準法)を用いた。
【0050】
実施例1
還流冷却器、温度計、窒素吹き込み用ノズル、滴下ロートおよび攪拌装置を備えた内容量300mLのガラス製4つ口フラスコに、炭酸ジメチル(162.1g;1.80mol)、1,6−ヘキサメチレンジアミン(34.9g;0.30mol)および触媒としてチオシアン酸ナトリウム(6mmol)を仕込み、70℃で8時間反応させた。反応液の一部をサンプリングし、同定および定量したところ、目的生成物である1,6−ヘキサメチレンジメチルカルバメート(ジカルバメート)が、1,6−ヘキサメチレンジアミンに対して63重量%の収率で生成していることが確認された。また、1,6−ヘキサメチレンモノメチルカルバメート(モノカルバメート)が20重量%、副生成物であるN−メチル体が3.5重量%生成していることも確認された。それらの結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸カルシウム・4水和物(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0052】
実施例3
チオシアン酸カルシウム・4水和物(6mmol)に代えてチオシアン酸カルシウム・4水和物(12mmol)を仕込んだ以外は、実施例2と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0053】
実施例4
チオシアン酸カルシウム・4水和物(6mmol)に代えてチオシアン酸カルシウム・4水和物(24mmol)を仕込み、反応温度を50℃とした以外は、実施例2と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0054】
実施例5
1,6−ヘキサメチレンジアミン(0.30mol)に代えて1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(0.30mol)を仕込んだ以外は、実施例3と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0055】
実施例6
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸バリウム・2水和物(6mmol)を脱水処理した後に仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0056】
脱水処理は、チオシアン酸バリウム・2水和物を、80℃、12時間真空乾燥して、結晶水が除去されるように処理した。示差熱天秤(TG−DTA)の重量変化により含水量を測定したところ、チオシアン酸バリウム・2水和物の場合、脱水処理前での重量変化率は12.4%(2水和物に相当)であったが、脱水処理後での重量変化は見られず、100ppm(TG−DTAの検出限界)以下であった。
【0057】
なお、以下の実施例および比較例で用いられる触媒の脱水処理は、すべて同様の方法で実施しており、脱水処理後の含水量は、いずれも100ppm以下であった。
【0058】
実施例7
チオシアン酸バリウム・2水和物(6mmol)に代えてチオシアン酸バリウム・2水和物(12mmol)を脱水処理した後に仕込んだ以外は、実施例6と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0059】
実施例8
チオシアン酸バリウム・2水和物(6mmol)に代えてチオシアン酸バリウム・2水和物(24mmol)を脱水処理した後に仕込み、反応温度を50℃とした以外は、実施例6と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0060】
実施例9
チオシアン酸バリウム・2水和物(6mmol)を脱水処理せずに、そのまま仕込んだ以外は、実施例6と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0061】
実施例10
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸イットリウム・n水和物(6mmol)を脱水処理した後に仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0062】
実施例11
1,6−ヘキサメチレンジアミン(0.30mol)に代えて1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(0.30mol)を仕込んだ以外は、実施例10と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0063】
実施例12
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸イッテルビウム・n水和物(6mmol)を脱水処理した後に仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0064】
実施例13
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸亜鉛(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0065】
実施例14
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸鉛(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0066】
実施例15
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸アンモニウム(24mmol)を仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0067】
実施例16
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えてチオシアン酸ベンジル(12mmol)を仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表1に示す。
【0068】
比較例1
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)に代えて酢酸ナトリウム(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0069】
比較例2
チオシアン酸カルシウム・4水和物(6mmol)に代えて酢酸カルシウム・1水和物(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例2と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0070】
比較例3
酢酸カルシウム・1水和物(6mmol)に代えて酢酸カルシウム・1水和物(12mmol)を仕込んだ以外は、比較例2と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0071】
比較例4
チオシアン酸バリウム・2水和物(6mmol)に代えて酢酸バリウム(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例9と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0072】
比較例5
チオシアン酸亜鉛(6mmol)に代えて酢酸亜鉛(6mmol)を仕込んだ以外は、実施例13と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0073】
比較例6
チオシアン酸鉛(6mmol)に代えて酢酸鉛・3水和物(6mmol)を脱水処理した後に仕込んだ以外は、実施例14と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0074】
比較例7
チオシアン酸ナトリウム(6mmol)を仕込まず、18時間反応した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0075】
比較例8
1,6−ヘキサメチレンジアミン(0.30mol)に代えて1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(0.30mol)を仕込んだ以外は、比較例7と同様の操作を行なった。得られたジカルバメート、モノカルバメートおよびN−メチル体の収率を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【発明の効果】
本発明のアルキルカルバメートの製造方法によれば、簡易な方法により、実質的に非芳香族アミンと炭酸ジアルキルとを配合するのみで、温和な条件で、高選択的かつ高収率でアルキルカルバメートを得ることができるので、低コストで効率よくアルキルカルバメートを製造することができる。
Claims (6)
- 脂肪族アミン、脂環族アミンおよび芳香脂肪族アミンからなる群より選ばれる非芳香族アミンと、炭酸ジアルキルとを、チオシアン酸化合物の存在下で反応させることを特徴とする、アルキルカルバメートの製造方法。
- 非芳香族アミンが、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のアルキルカルバメートの製造方法。
- 炭酸ジアルキルが、下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアルキルカルバメートの製造方法。
(R1O)2CO (1)
(式中、R1は、互いに同一または相異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。) - チオシアン酸化合物が、チオシアン酸の第II族元素の塩および/またはチオシアン酸の第III族元素の塩であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアルキルカルバメートの製造方法。
- チオシアン酸化合物の含水量が、3重量%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のアルキルカルバメートの製造方法。
- 40〜160℃の反応温度で反応させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のアルキルカルバメートの製造方法。
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