JP4134194B2 - 樹脂成形体の製造方法および無電解メッキ法 - Google Patents

樹脂成形体の製造方法および無電解メッキ法 Download PDF

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本発明は表面に機能性を有する樹脂成形体を製造するための熱可塑性樹脂のサンドイッチ射出成形法、および熱可塑性樹脂の無電解メッキ法に関する。
スキン層とコア層がそれぞれ異なる種類の樹脂材料で形成された断面構造を有する熱可塑性樹脂成形品を製造するための射出成形法として、サンドイッチ射出成形法が知られる。該方法は、まず、第一の樹脂材料を第一の可塑化シリンダー内で可塑化溶融した後、金型内に射出充填しスキン層を形成した後、直ちに第二の樹脂材料を第二の可塑化シリンダーより射出充填しコア層を形成することで上記構造の成形品を得る方法である(例えば特許文献1)。本方法は、スキン層とコア層とで異なる種類の樹脂ペレット材料を用いることにより、成形品のスキン層とコア層の物性や特徴を変化させる手法である。
一方、ポリマー表面に安価に金属膜を形成する方法として無電解メッキ法が知られているが、密着性確保のため、前処理としてポリマー表面を六価クロム酸や過マンガン酸等の環境負荷が大きい酸化剤を用いたエッチングで粗化する必要があり、適用可能なポリマーがエッチング液により浸漬されるABS等に限定されていた。これはABSに含まれるブタジエンゴム成分がエッチング液に選択的に浸漬され表面に凹凸が形成されるが、他のポリマーでは選択的に酸化される成分が少なく、凹凸が形成されにくいためである。そのためABS以外のポリカーボネート等では、無電解メッキを可能にするためABSやエラストマーを混合したメッキグレードが市販されている。
上記、従来のサンドイッチ射出成形法においては、スキン層を形成する樹脂材料にメッキの触媒核を予め含有させておく手法や、ABSやエラストマー等エッチングに浸漬される成分を含有したメッキグレード材料を用いる手法を採用することで、コア層に安価で高強度、高耐熱性の樹脂材料を用いることが可能となる。これにより、前記従来の無電解メッキ成形品の課題をある程度改善することができる。
しかしながら、前者のスキン層に金属微粒子からなるメッキ核を含有した樹脂材料を用いる場合、金属微粒子が予め分散されたペレット材料が必要になる。金属微粒子は樹脂内に分散しにくい材料なので、射出成形機の可塑化シリンダー内で混合、分散することは困難だからである。ペレット製造には一般的に押出成形方法が用いられるが、特殊なペレットを作成するのでコスト高になる。また、樹脂に比べ比重が重い金属微粒子は、樹脂の射出充填時に最表面に浮き出しにくい。金属微粒子が溶融樹脂と相溶しにくく、かつ粒子径がミクロンオーダーと大きいためと考えられる。そのため、表面を粗化し成形品内部に埋もれた該金属微粒子を表面に浮き出させないと、無電解メッキ膜の密着性は不十分となった。よって、後述する高反射率が要求される金属反射構造体(リフレクター)等への適用は困難であった。
一方、後者のスキン層にメッキグレードの熱可塑性樹脂を用いた場合、有害なエッチング液を採用する必要がある上、同様に成形品表面を粗化する必要があった。これら表面を粗化する必要のある場合、無電解メッキ後の表面光沢が得られにくい。また、メッキグレードの熱可塑性樹脂は、耐熱性が低下する等、物性低下が避けられない。表面光沢、耐熱性の低下は、後述する金属反射構造体(リフレクター)として採用する場合、非常に問題となる。

一方、超臨界二酸化炭素等の高圧二酸化炭素に機能性材料を溶解させ、該機能材材料の溶解した高圧二酸化炭素を樹脂に接触させて表面を高機能化させる方法が開示されている。本発明者らはこれら高圧二酸化炭素を用いた表面改質処理を射出成形と同時に行い、樹脂表面を高機能化させる方法を開示している(特許文献2)。該公報には、例えば下記に示す表面改質方法を開示している。まず、可塑化計量後にスクリューをサックバックで後退させ、ついで負圧になった溶融樹脂のスクリュー前方部に超臨界状態の高圧二酸化炭素およびそれに溶解した金属錯体等の機能性有機材料を導入する。それによりスクリュー前方部における溶融樹脂に高圧二酸化炭素と機能性材料を浸透させることができる。次いで、射出成形すると、金型内における射出充填時における溶融樹脂のフローフロント部に機能材材料が偏在するので、射出充填後の成形品表面に該機能性材料を偏在させる手法である。該機能性材料に金属錯体等の金属微粒子を用いることで表面を粗化する必要なく無電解メッキ可能な射出成形品を得ることができる。
本改質方法においては、樹脂に相溶する高圧二酸化炭素に、金属微粒子を金属錯体等の有機物の状態で溶解させる。そのため、本発明者らの検討によれば、金属錯体が熱により還元されても数十ナノメートルオーダーの直径を有する微細な金属クラスターになるので、射出充填時に表面に浮き出しやすい。そのため、表面に金属微粒子が偏析しやすい利点を有する。
しかし、表面より樹脂内部に浸透した二酸化炭素が射出充填時に大気開放されることで、発泡等成形品の表面性悪化の要因となる場合があった。また、金属微粒子は成形品最表面のみならず、表面近傍の成形品内部にも偏在しているが、無電解メッキの触媒核として寄与するのは最表面のみである。内部に偏在する金属微粒子は余剰な触媒核となり不経済である。こうした樹脂の内部に存在する触媒核を利用して樹脂内部にも無電解メッキ膜を形成する手法は開示されていない。
一方、表面に金属膜を形成した射出成形品としては、自動車用ランプ等に使用されるリフレクター等の光反射体やレーザービームプリンターや複写機等の光走査に用いられるfθミラー、プロジェクションテレビの光路折曲に用いられる大型ミラー等があるが、蒸着や金属膜を貼り付ける方法が中心であり、無電解メッキの採用は進んでいない。湿式の無電解メッキ法で高反射率の金属膜が得られる方法として銀鏡反応が知られる。該方法によりガラス上に銀薄膜が形成された各種リフレクターや鏡は広く使われている。しかしながら、形状自由度が大きい樹脂成形品への銀鏡反応の適用は進んでいない。前記した理由により、エッチング適用材料および触媒核が固定化できる樹脂材料がABS等に限られており、耐熱性の高い樹脂材料に適用することが困難であること、また表面を粗化することにより鏡面性が得にくいことが原因と考えられる。樹脂基材に銀鏡反応により反射膜を形成する方法として、例えばプラズマ処理やコロナ放電処理等で表面を活性化する方法が開示されているが(特許文献3)、該公報によれば基材表面と反射膜の間に透明なアクリル樹脂等の硬化膜を必要とし、150℃以上の耐熱を有する銀反射膜付成形品は提案されていない。
特に耐久性が要求される自動車のヘッドランプリフレクター等の高耐熱用途、および高反射率特性が要求される光学部品のミラー用途では、耐久性と高反射率特性を両立し、さらに蒸着等のドライプロセスを必要としない、安価で大量生産可能な手法の開発が持ち望まれている。また大面積で複雑形状を有する成形品に高品質な金属膜を形成することは、より困難を極め、自動車用ヘッドランプリクレクター等の照明光源には発熱性の高いLEDへの移行が進行しており、それら光源のリフレクターに対する要求品質は益々厳しくなっている。
特開平10−156883号公報 特開2004−218062公報 特開2000−73178号公報
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、自動車ランプのリフレクター等、高い信頼性や反射特性を有する金属膜の形成された成形品の安価で汎用性の高い製造方法を提案することにある。さらに本発明の更なる目的においては、スキン層を射出成形の可塑化計量時に高機能化するサンドイッチ成形法を提供することにある。更には、金属微粒子等の機能性有機材料を超臨界二酸化炭素等の高圧二酸化炭素に溶解させ、次いで射出充填樹脂のフローフロント部に浸透させ樹脂表面を改質する射出成形方法において、機能性有機材料の溶媒として用いる高圧二酸化炭素が、射出充填時に表面性を悪化させることを抑制する射出成形法を提供することにある。また、成形品の表面のみならず内部に偏析した金属微粒子等の無電解メッキ触媒核を、無電解メッキの触媒として寄与させ成形品最表面だけではなく内部までメッキ膜を成長させることを目的とする。それにより成形品との密着性により優れた無電解メッキ膜を得ることができる。該方法によれば成形品表面を粗化する必要がなく耐熱性の高い多様な樹脂材料に適用できるので、上記リフレクター等に好適である。
本発明における第一の態様においては、サンドイッチ射出成形法により、スキン層とコア層からなる樹脂成形体を製造する方法であって、第一の可塑化シリンダー内で樹脂を可塑化計量し、第一の溶融樹脂とする時に、高圧二酸化炭素に溶解させた機能性材料を前記第一の可塑化シリンダー内へ導入し、前記第一の溶融樹脂に、前記機能性材料および前記高圧二酸化炭素を混合するステップと、前記混合された第一の溶融樹脂を金型内に射出充填して前記スキン層を形成するステップと、第二の可塑化シリンダー内にて可塑化計量した第二の溶融樹脂を前記金型内へ射出充填して前記コア層を形成するステップとを有することを特徴とする。該態様によれば、熱可塑性樹脂に対し浸透性が高い高圧二酸化炭素を媒介とするので、溶融樹脂と相溶しにくい金属微粒子等の機能性材料であっても、樹脂の可塑化計量時に、可塑化スクリューの混錬により均一に分散させることができる。よって、予め特殊なペレットを作成する必要はなく、安価に改質処理を施すことができる。
本発明における、機能性材料の溶解した高圧二酸化炭素を第一の可塑化シリンダー内に導入し、溶融樹脂に拡散させる方法は、公知の、可塑化シリンダー内にてスクリューを回転させ樹脂を可塑化計量する際に、超臨界流体等の高圧ガスを導入する方法を用いることができる。例えば物理的な減圧部であるベント構造を有するスクリューを用いて、該減圧部にて高圧状態の二酸化炭素を浸透させることができる。あるいは、可塑化時における樹脂の内圧をモニターし、該内圧よりも高い圧力に制御された高圧二酸化炭素を接触および浸透させることができる。
本発明に用いることのできる高圧二酸化炭素に溶解する機能性材料の種類は、超臨界状態等、高圧二酸化炭素にある程度の溶解性を示せば任意であり、有機材料の場合、分子量50〜2000の範囲のモノマー、オリゴマー、ポリマーであることが望ましい。分子量が小さすぎると、二酸化炭素とともに排気されやすく、大きすぎると高圧二酸化炭素に溶解しにくくなるので不適当である。例えば、公知の超臨界二酸化炭素に可溶な各種染料を用いることで表面のみ着色した成形品を得ることができる。ポリアルキルグリコール、アクリルアミド、εカプロラクタム等の水酸基やアミド基を有するポリマーやモノマーを導入することで、表面の濡れ性を改善できる。
あるいは、これら低分子の水溶性材料を樹脂に浸透させた後、水等の溶媒で樹脂表面から抽出することで樹脂表面に微細な凹凸を形成できる。それにより、従来の環境負荷の大きい有機溶媒を用いたエッチング液を用いることなく、多様な樹脂材料に対して、従来のエッチングよりも成形品の表面光沢に影響がでにくい微細な凹凸を形成できる。そして、無電解メッキや蒸着およびスパッタ等の金属膜とのアンカー効果を該微細な凹凸により得ることができる。
またフッソ化合物やシリコーンオイル等を用いることで撥水性を付与することができる。さらには、機能性材料として、無機材料を用いることができる。特に、金属錯体、金属アルコキシド等の有機化合物が配位した金属微粒子、もしくはナノカーボンを用いることにより、電気導電性や熱伝導性を得ることができる。またSiO等の無機微粒子を用いることで、熱膨張係数を抑制できる。あるいは屈折率を制御することができる。無機物を使用する場合、高圧二酸化炭素に可溶となる化学もしくは物理修飾を施すことが望ましい。
あるいは、金属錯体等の金属微粒子を表面に偏析させることで無電解メッキの触媒核とすることができる。それにより、樹脂表面を粗化することなく、また前処理なしで無電解メッキ可能となる。金属微粒子は超臨界状態等の高圧二酸化炭素に溶解すれば任意であるが、金属錯体が好適である。金属錯体として、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジメチル(シクロオクタジエニル)プラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトヒドレート銅(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトプラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナト(トリメチルホスフィン)銀(I)、ジメチル(ヘプタフルオロオクタネジオネート)銀(AgFOD)等を用いることができる。
本発明に用いることのできる高圧二酸化炭素の温度および圧力条件は、溶解させる機能性材料の種類によって任意であるが、溶媒性能が著しく向上する臨界点を越えた超臨界状態であることが望ましい。二酸化炭素の臨界点は温度31.1℃、圧力7.38MPaである。
本発明における更なる態様においては、前記第一の可塑化シリンダー内にて、前記第一の溶融樹脂に、前記機能性材料および前記高圧二酸化炭素を混合するステップの後、前記第一の可塑化シリンダーより前記高圧二酸化炭素を排気するステップを含むことを特徴とする。本態様においては、溶媒として用いた高圧二酸化炭素を射出充填前に除去することで射出充填時における減圧による発泡等を抑制できる。本発明における高圧二酸化炭素の排気方法は任意であるが、例えばベント構造を有するスクリューを用いることで、物理的に樹脂を減圧しガス化した二酸化炭素を排気できる。また、高圧二酸化炭素の機能性材料の溶解度は一般的に低いので、溶融樹脂に浸透させる機能性材料の浸透量が不十分になる場合、浸透と排気を繰り返し機能性材料の樹脂浸透濃度を向上させてもよい。
本発明の第二の態様においては、表面に無電解鍍金膜を有する樹脂成形体を製造する方法であって、金型内に、表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する樹脂成形体を、前記金型との界面の一部に隙間を設けた状態で保持するステップと、少なくとも高圧二酸化炭素、無電解メッキ液が含まれる混合流体を調合するステップと、前記隙間に前記混合流体を導入し、前記混合流体の接触した前記樹脂成形体表面に無電解メッキ膜を形成するステップとを有することを特徴とする。前記混合流体は、更に界面活性剤を有する。本態様によれば、界面活性剤を用いることで二酸化炭素と相溶しない水系溶媒である無電解メッキ液と高圧二酸化炭素の均一相を形成し、さらに金型内で該混合流体を樹脂に接触させることで、高圧二酸化炭素の樹脂内部への浸透性を利用し樹脂内部の触媒核とメッキ液を反応させることができる。それにより、樹脂内部にメッキ膜を成長させることができるので、高強度な金属膜が形成できる。本発明は、耐熱性の高い多様な樹脂材料に表面を粗化することなく、堅牢な無電解メッキ膜を形成でき、高い反射率を有しかつ耐候性の高いリフレクターの製造に応用できる。
本発明においては、無電解メッキ液の種類は任意であり、Ni−P(ニッケルーリン)、Cu(銅)、Au(金)、Ag等の公知の水溶性メッキ液を用いることができる。
本発明に用いることのできる超臨界状態等の高圧二酸化炭素と水溶性溶液であるメッキ液を相溶させるための界面活性剤は、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリブチレンオキシド(PBO)、それぞれ単独もしくは複数種類からなるブロックコポリマーを用いることができる。あるいは、アンモニウムカルボキシレートパーフルオロポリエーテル、ポリ(オキシエチレン)ラウリルエーテルを用いることができる。
高圧二酸化炭素と無電解メッキ液、界面活性剤の混合流体の調合方法は任意であるが、例えば高圧容器内に所定量のメッキ液、界面活性剤を導入した後、高圧二酸化炭素を導入して所定圧に保持しながら攪拌することで均一なエマルジョン(乳濁液)ができる。
本発明に用いることのできる表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する熱可塑性樹脂の形態は任意であり、押し出し成形によって金属粉体や金属微粒子を樹脂内部に混錬した樹脂成形体や、高圧二酸化炭素によって金属微粒子を樹脂表面近傍に偏析させた樹脂成形体を用いることができる。特に前記したサンドイッチ成形法によって、スキン層にのみ高圧二酸化炭素を用いて金属微粒子が偏析した樹脂成形体を用いてもよい。本発明によれば、射出成形により金型内に前記樹脂成形体を得た後、続いて同一の金型で無電解鍍金を行うことも可能である。工程が省略でき、コスト低減に有用である。これら樹脂成形体の金型内における保持方法は任意であり、単独あるいは複数の成形体を、ある程度の隙間量開いた状態にてシール機能を有する金型内に保持することが望ましい。
樹脂成形体を前記無電界メッキ液の含まれる混合流体を接触させる方法は任意であるが、金型内の導入後に混合流体を静止すると無電解メッキ液と高圧二酸化炭素が分離してしまう恐れがあるので、金型内において混合流体は攪拌することが望ましい。例えば、金型の開閉動作を連続することで攪拌効果を与えることができる。あるいは、金型内の混合流体を、循環ポンプ等を用いて金型外の混合流体とともに循環させることで攪拌効果が得られる。
本発明の更なる態様によれば、前記無電解メッキ膜を形成した後、前記無電解メッキ膜の上に、銀鏡反応により銀反射膜を作成することを特徴とする。銀反射膜の、加湿状態等における劣化が懸念される場合、表層に保護膜を形成してもよい。例えば、透明な有機―無機ハイブリット材料をコーティングして低温で薄膜固化させることで反射特性を維持した状態にて吸湿による劣化を抑制できる。
本発明によれば、多様な機能性をスキン層に有するサンドイッチ構造の樹脂製成形品を提供することができる。特に高品質な反射膜を有する樹脂成形品を高価なドライプロセスなしで大量生産できる。
[実施例1]
[射出成形]
本発明におけるサンドイッチ射出成形装置の概念図を図1に示す。本発明の射出成形装置は、スキン層を形成する第一の可塑化シリンダー17とコア層を形成する第二の可塑化シリンダー18を有し、少なくとも第一の可塑化シリンダーに高圧二酸化炭素およびそれに溶解した機能性材料を導入する機能を有すれば、装置の形態は任意である。
高圧二酸化炭素に溶解させる機能性材料の種類は任意であるが、本実施例においては、金属錯体を用いた。金属錯体の種類は任意であるが、二酸化炭素に対し高い溶解度を有するヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。導入する高圧二酸化炭素の温度、圧力条件は任意であるが、本実施例においては超臨界状態となる温度40℃、圧力10MPaとした。
本発明におけるスキン層を形成し機能性材料を高圧二酸化炭素により分散させる樹脂材料の種類は熱可塑性樹脂材料であれば任意であり、非晶性、結晶性いずれでも適用できる。例えば、ポリエステル系等の合成繊維、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ABS系樹脂、ポリアミドイミド、ポリ乳酸等の生分解性プラスチック、ナイロン樹脂等及びそれら複合材料を用いることできる。また、ガラス繊維、カーボン繊維、ナノカーボン等、各種無機フィラー等を混練させた樹脂材料を用いることもできる。本実施例においては、ポニフェニレンスルファイド(大日本インキ製FZ-2100)を用いた。
また本発明におけるコア層を形成する樹脂材料の種類は任意であり、スキン層と同様な種類を選択することもできる。またコア層にのみガラス繊維や無機フィラー等を混合した材料を使用することで表面性が良好で、機械的強度や寸法安定性、吸湿性に優れた成形体を得ることができる。本実施例においてはガラス繊維が30%混合したポニフェニレンスルファイド(大日本インキ製FZ-2130)を用いた。
本発明に用いることのできる射出成形の金型およびキャビティの形態は任意であるが、本実施例においては固定金型22および可動金型23より形成されるキャビティ19は、スプール20を中心にして、自動車用のヘッドランプリフレクターが2個取り可能な金型とした。固定金型22は成形機の固定プラテン24、可動金型23は可動プラテン25にそれぞれ固定され、型締め機構26により駆動する可動プラテン25の開閉によって金型29は開閉する。
本実施例においては、高圧二酸化炭素への機能性材料の溶解および可塑化シリンダーへの導入は下記方法で行った。まず、液体二酸化炭素ボンベ28より供給された二酸化炭素をシリンジポンプ27にて所定圧まで昇圧し、過飽和になるように溶解槽13内に仕込まれた金属錯体を溶解させた。この際、導入シリンダー14まで加圧した。本実施例においては、後述する可塑化計量時における高圧二酸化炭素および機能性材料を可塑化シリンダー17内に導入するタイミング以外においては、シリンジポンプ27を溶解槽13から導入シリンダー14まで一定圧力に保持する制御とした。
第一の可塑化シリンダー17に内蔵された第一のスクリュー12には2箇所の減圧箇所をベント部11,10としてそれぞれ設けた。図2に示す通り、可塑化計量時には第一のスクリュー12の回転によりスクリュー前方の内圧が上昇しスクリュー12が後退し始める。その際に導入シリンダー14下部に設けられたベント部11において溶融樹脂は減圧され、同時にエアー駆動式の導入シリンダー14内における導入ピストン42を上昇させ、前記減圧樹脂内部に機能性材料の溶解した高圧二酸化炭素を浸透させた。浸透時間中は、シリンジポンプ27を流量制御に切り替え一定流量の高圧二酸化炭素を一定時間、可塑化シリンダー17内に注入した。
本実施例の成形装置においては、機能性材料を溶解させ溶融樹脂に浸透させた高圧二酸化炭素を射出充填前に排気させる機能を有する。図2に示す通り、可塑化計量時に第一のスクリュー12第二のベント部10にて樹脂を減圧し高圧二酸化炭素を超臨界状態の圧力以下に減圧してガス化させた。
同時に排出シリンダー15に内蔵された排気ピストン41を上昇させ、ガス化した二酸化炭素を一部可塑化シリンダー17より排気した。二酸化炭素はフィルター35、バッファー容器34を通過した後、減圧弁33で圧力計32が0.5MPaになるように減圧され、真空ポンプ31より排気した。
第一のホッパー36より供給された図示しない樹脂ペレットは、前記した方法で金属錯体の機能性材料および高圧二酸化炭素が均一に拡散した状態で可塑化溶融される。第一の可塑化シリンダー17と第二の可塑化シリンダーの金型への流通はロータリーバルブ9の回転によって制御される。例えば、第一の可塑化シリン
ダー17における可塑化計量時には、加圧された樹脂がノズル21の先端部より金型29内へ漏れないように、ロータリーバルブ9は図2、図3に示すように第二の可塑化シリンダー18とノズル21間の樹脂流動路を形成する。
第一のスクリュー12で第一の樹脂材料7の可塑化計量が完了したタイミングで、図3に示す通り導入シリンダー14および排出シリンダー15における導入ピストン42および排出ピストン41を下降させ、同時にシリンジポンプを圧力制御に切り替え、高圧二酸化炭素の導入および排気を停止した。
次に図4に示す通り、第一の可塑化シリンダー17より可塑化計量された溶融樹脂が第一のスクリュー12の前進により金型29内へスプール20およびキャビティ19内に射出充填される際には、ロータリーバルブ9は回転し、第一の可塑化シリンダーとノズル21の樹脂流動路を形成した。
同時に第二の可塑化シリンダー18では、図示しない第二のホッパーより供給された、コア層を形成する樹脂ペレットを第二のスクリュー16の回転により可塑化計量した。図5に示す通り、第一の樹脂が充填完了する直前には、第二の樹脂8の可塑化計量を完了させた。
第一の可塑化シリンダー17より、スキン層を形成する第一の樹脂材料7が充填された直後、ロータリーバルブ9を回転させ、図6に示す通り第二の可塑化シリンダーより第二の樹脂材料8を射出充填した。そして図7に示す通り、スキン層は金属錯体およびそれが還元された金属微粒子の分散した第一の樹脂材料7で形成され、コア層は第二の樹脂材料8で形成されたサンドイッチ成形体100を射出成形した。冷却固化させた後、金型29を開き成形体100を取り出した。
本発明においては、金属微粒子が表面に偏析した成形体に、従来の大気中における無電解メッキ処理を施すことにより、表面に無電解メッキ膜を形成できる。本実施例においては超臨界二酸化炭素浴における無電解メッキ処理を行った。
[無電解メッキ]
本発明においては、無電解メッキの触媒核となる金属微粒子が分散した樹脂成形体を金型内にて超臨界二酸化炭素、無電解メッキ液と界面活性剤の混合流体により無電解メッキすることを特徴とし、金型や装置および成形体の形態においては任意であるが、本実施例においては、図8の模式図に示す型締め機構を有する装置および金型を用いた。また成形体は、本実施例における前記サンドイッチ成形法で得た成形体100を用いた。成形体100は図8に示す通り、固定プラテン110に固定された固定金型113、と可動プラテン111に固定された可動金型114の閉鎖により形成されるキャビティ101内に保持される。可動プラテン111および可動金型114の開閉およびそれによるキャビティ101隙間の位置制御は電動式型締め機構112による行われる。
金型キャビティ101内における高圧流体のシールはバネを内蔵したポリイミドのシール機構106によって行った。固定金型113と可動金型114の勘合方式を印籠構造にすることで、キャビティ101がある程度の隙間開いても高圧混合流体が漏れない構造とした。
本実施例においては、まず、高圧二酸化炭素、無電解メッキ液、界面活性剤の高圧混合流体の調合を下記のように行った。
本発明における無電解メッキ液は公知のものを用いることができるが、本実施例においてはNi−P(ニッケルリン)メッキ液である奥野製薬製ニコロンDKを用いた。該無電解メッキ液は、該無電解メッキ液は、イオン交換水を主成分とし、次亜燐酸ナトリウムを還元剤としてする。本発明における界面活性剤は超臨界状態等の高圧二酸化炭素に可溶化する界面活性剤であれば任意であるが、本実施例においてはポリエチレンオキシド−ポリポロピレンオキシドのブロックコポリマーを用いた。界面活性剤と無電解メッキ液の混合液体46を作製し、フィルター61を介し、シリンジポンプ45により吸い上げ、次いでシリンジポンプポンプ45内部で10MPaに加圧した。同様に液体二酸化炭素ボンベ28より供給された液体二酸化炭素を、バルブ60を介しシリンジポンプ30に吸い上げ同様に加圧した。界面活性剤と無電解メッキ液の混合流体46および液体二酸化炭素の体積混合比が一定になるように各々のシリンジポンプ45、30の流量を制御した。
本実施例においては、混合流体46の流量は40ml/min.、高圧二酸化炭素の流量は40ml/min.とし混合比が1:1になるように設定した。各ポンプの駆動と同時に手動バルブ64を開放し混合槽55内に各液体を導入した。図示しないパワートランスミッターで混合槽55の内圧を監視しておき、所定圧力に到達した際には、各シリンジポンプの駆動を停止した。混合槽55の所定内圧は15MPaとした。混合槽55内には攪拌子56を設置しておき、外部のマグネティックスターラーで攪拌子を回転させ高圧の混合槽55内部を攪拌した。
本実施例においては、金型内に保持した表面に触媒核が分散した成形体への無電解メッキ液の接触は下記のように行った。
前記方法にて高圧混合流体を調合した後、金型キャビティ101を500μm開き、該高圧流体を導入した。自動バルブ52を開き、可動金型114の金型導入口103を経て、各キャビティの導入口107よりキャビティ101内部に導入した。高圧混合流体は、固定金型113の内周排出口104および外周排出口102より排出され、金型排出口105を経て高圧循環ポンプ50内に充填される。キャビティ101近傍の高圧混合流体導入時の模式図を図9に示す。
なお、金型キャビティ101への高圧混合流体導入時には、混合槽55の内圧が低下するので、シリンジポンプ45,30はそれぞれ前記一定流量にて高圧流体の送液を再開した。そして、キャビティ101内圧が一定になり、混合槽55内圧低下が停止した際に各ポンプを自動停止させた。
成形体100は可動金型に押し付けられ、固定金型113の対向面にのみ高圧混合流体が接触するので、固定側のみ無電解メッキ膜が成長する。
次いで、自動バルブ52を閉鎖し、高圧循環ポンプ50を一定流量の制御で駆動させた。それにより、高圧混合流体は逆止弁53、金型導入口103、キャビティ101、金型排出口105の順で循環する。高速で混合流体を循環させることで、高圧二酸化炭素と無電解メッキの分離を抑制した。キャビティ101内で成形体表面に無電解メッキ膜を成長させた後、高圧循環ポンプ50を停止し、排気用自動バルブ51を開放し、高圧混合流体を分離容器49に排気した。
分離容器49は、導入配管58より導入された混合流体が、容器内壁を遠心分離の原理で高速循環し、軽い二酸化炭素は排気口67より上部に排気され、重い無電解メッキ液と界面活性剤は分離容器49下部に溜まる役割を持つ。それにより、無電解メッキ液と界面活性剤は回収容器48に貯蔵される。回収容器に蓄積された溶液は成分分析され、精製および成分調整され再利用する。さらに、図示しない窒素ガスをパージガスとして経路内を簡易洗浄し1サイクル完了とした。
本実施例で得られた成形品の断面構造図を図10,11に示す。図10はリフレクターの成形体のメッキ直後のマクロ構造図であり、図11はメッキ膜1上に保護膜6を形成した後の断面拡大図である。本実施例における成形体100はコア層3およびスキン層2のサンドイッチ構造からなり固定側のスキン層面には、無電解メッキ膜1の層が形成された。また拡大模式図である図11に示す通り、スキン層2には触媒核となる金属錯体およびその変性物である金属クラスター5が分散しているのが確認された。また、無電解メッキ膜1はスキン層2の樹脂内部にも成長しているのが確認された。
本発明においては、無電解メッキにより反射膜を得た場合、耐候性向上のため、各種公知の保護膜を形成することが望ましい。特に銀は、反射率は高いものの酸化しやすく錆びやすいので、公知の紫外線硬化樹脂、無電解メッキ膜等にて保護することが望ましい。保護膜の種類は任意であるが、本実施例においては、ウエットプロセスで成膜でき、熱硬化後はガラスに近い200℃程度の耐熱性を有するアクリル成分とポリシロキサンの有機―無機ハイブリット材料(JSR製グラスカ)を用いた。本実施例の成形品上にディッピンクで約10μmの膜を形成後、100℃2hrで硬化させ図11に示す通り保護膜6を得た。
本実施例の成形品について、(1)高温放置150℃、500hr、(2)高温多湿放置85℃85%RH、250hr、(3)ヒートショック 80℃30min.放置⇔―40℃30min.放置を1サイクルとして連続100サイクル、の各種環境試験を行った。本実施例における成形品の変形、Ni-P(ニッケルーリン)反射膜の剥離や劣化は認められなかった。
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同様な装置方法でサンドイッチ射出成形を行い、実施例1と同様な設備で無電解パラジウムメッキを行った。次いで、無電解メッキ液に銀メッキ液を用いて、大気中における無電解メッキ処理を施すことにより、パラジウムメッキ被膜上に銀反射膜を形成した。銀メッキ液は、アンモニア過剰のアンモニア性硝酸銀水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ブドウ糖水溶液の混合液を用いた。
本実施例の成形品について、実施例1と同様な各種環境試験を行ったところ、成形品の変形、銀反射膜の剥離や劣化は認められなかった。
本発明にかかるサンドイッチ射出成形装置の概略構成図である。 本発明にかかるサンドイッチ成形方法の概念説明図(その1)である。 本発明にかかるサンドイッチ成形方法の概念説明図(その2)である。 本発明にかかるサンドイッチ成形方法の概念説明図(その3)である。 本発明にかかるサンドイッチ成形方法の概念説明図(その4)である。 本発明にかかるサンドイッチ成形方法の概念説明図(その5)である。 本発明にかかるサンドイッチ成形方法の概念説明図(その6)である。 本発明にかかる無電解メッキ装置の概略構成図(その1)である。 本発明にかかる無電解メッキ装置の概略構成図(その2)である。 本発明における成形品の断面構造の模式図(その1)である。 本発明における成形品の断面構造の模式図(その2)である。
符号の説明
1 無電解メッキ膜
2 サンドイッチ樹脂成形体のスキン層
3 サンドイッチ樹脂成形体のコア層
5 金属微粒子
6 保護膜
9 ロータリーバルブ
10、11 ベント部
12 第一のスクリュー
13 溶解槽
14 高圧二酸化炭素導入シリンダー
15 高圧二酸化炭素排気シリンダー
16 第二のスクリュー
17 第一の可塑化シリンダー
18 第二の可塑化シリンダー
19、101 キャビティ
27、30,45 シリンジポンプ
28 液体二酸化炭素ボンベ
50 循環ポンプ
55 混合槽
18 樹脂圧力センサー
19 キャビティ
22 金型
23 可塑化シリンダー
103 溶融樹脂
104 超臨界流体
105 超臨界流体及び機能性材料が浸透した溶融樹脂

Claims (8)

  1. 表面に無電解鍍金膜を有する樹脂成形体を製造する方法であって、
    金型内に、表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する樹脂成形体を、前記金型との界面の一部に隙間を設けた状態で保持するステップと、
    少なくとも加圧状態の二酸化炭素、無電解メッキ液が含まれる混合流体を調合するステップと、
    前記隙間に前記混合流体を導入し、前記混合流体の接触した前記樹脂成形体表面に無電解メッキ膜を形成するステップとを有する
    ことを特徴とする製造方法。
  2. 前記表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する樹脂成形体は、
    前記金属微粒子を加圧状態の二酸化炭素に溶解させるステップと、
    熱可塑性樹脂に前記金属微粒子の溶解した加圧状態の二酸化炭素を接触させるステップにより製造されること
    を特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 前記表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する樹脂成形体は、
    射出成形により前記金型内で成形した樹脂成形体であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  4. 前記表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する樹脂成形体は、
    サンドイッチ射出成形法により成形されたスキン層とコア層からなる樹脂成形体であって、
    第一の可塑化シリンダー内で樹脂を可塑化計量し第一の溶融樹脂とする時に、加圧状態の二酸化炭素に溶解させた前記金属微粒子を前記第一の可塑化シリンダー内へ導入し、前記第一の溶融樹脂に、前記金属微粒子および前記加圧状態の二酸化炭素を混合するステップと、
    前記混合された第一の溶融樹脂を金型内に射出充填して前記スキン層を形成するステップと
    第二の可塑化シリンダー内にて可塑化計量した第二の溶融樹脂を、前記金型内へ射出充填して前記コア層を形成するステップとを有する方法
    により製造されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  5. 更に、前記無電解メッキ膜を形成した後、前記無電解メッキ膜の上に、銀鏡反応により銀反射膜を作成する請求項1乃至4いずれか記載の製造方法。
  6. 前記表面に無電解鍍金膜を有する樹脂成形体が、金属反射構造体であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
  7. 前記混合流体は、更に界面活性剤が含まれることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の製造方法。
  8. 樹脂成形体の無電解鍍金方法であって、
    金型内に、表面に無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を有する樹脂成形体を、前記金型との界面の一部に隙間を設けた状態で保持するステップと、
    少なくとも加圧状態の二酸化炭素、無電解メッキ液が含まれる混合流体を調合するステップと、
    前記隙間に前記混合流体を導入し、前記混合流体の接触した前記樹脂成形体表面に無電解メッキ膜を形成するステップとを有する
    ことを特徴とする無電解鍍金方法。
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