JP4133418B2 - 異種金属をドープしたメソポーラス遷移金属酸化物の新規調製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゾル−ゲル法を用いてメソポーラス構造の遷移金属酸化物を合成する系に、前記ゾル−ゲル法の反応によりメソポーラス構造を形成出来ない乃至形成が困難な前記遷移金属とは異なるドープ金属を金属酸化物として添加し、該系に均一に分散し、次いで該分散系を前記ドープ金属酸化物の金属を溶解する酸性条件にし、更に撹拌して均一なゲル溶液とし、次いでアルカリ水溶液を添加して前記ゾル形成遷移金属化合物を加水分解させると共に、前記系に存在するテンプレート材料を自己組織化させる熟成条件でゲル化をさせ、最後に前記テンプレート材料を酸素存在下で焼成することにより除去して、前記ドープ金属を遷移金属により形成されたメソポーラス構造に原子レベルで均一に分散させたことを特徴とする金属ドープメソポーラス遷移金属酸化物を合成する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、孔径2〜50nmのナノスケ−ルの細孔を持つ結晶構造を有する細孔壁のメソポ−ラス物質がシリカ系および非シリカ系の種々材料からなるものが合成されてきた。該メソポーラス構造を持つものの合成法では、細孔構造の形成の制御が可能であることから、ゾル−ゲル法を用いた合成方法が主として利用されている。該合成系で配合される界面活性剤はミセル集合体により形成される細孔構造鋳型として機能するので、各種界面活性剤の前記機能を利用して所望の、制御されたメソポーラス構造を構築するものである。
このようにして合成されたメソポーラス構造の材料は、その細孔の均一性を利用して、選択性の良い触媒をはじめとして、種々の物理化学的な機能を持つ材料として期待されている。また、このようにして合成された多孔質材料のナノ構造の細孔は量子効果を発現するから、種々の分野で注目されている。
【0003】
非シリカ系のメソポーラス金属酸化物、特にメソポーラス遷移金属酸化物が注目されているのは、構成材料である遷移金属が、種々の触媒として利用されているからであり、構成材料特有の触媒としての機能が期待できると考えられるからである。一方、遷移金属からなる触媒は、複数の金属元素から構成されている場合が多く、メソポーラス遷移金属酸化物の構成材料も複数の金属元素から構成されていることが前記機能材料としての期待の面から好ましいことは明かである。
しかしながら、前記ゾル−ゲル法を用いたメソポーラス構造の材料の合成方法を適用できない、または適用が困難な遷移金属類、例えば、鉄、銅、バナジウム、マンガンなどがある。それらの遷移金属からなる、またはそれらの遷移金属を複合成分とするメソポーラス構造からの機能性材料の合成は不可能であるか、または別の方法を開発する必要がある。
しかしながら、前記したゾル−ゲル法を用いたメソポーラス構造の材料の合成方法は、得られるメソポーラス構造の材料の細孔の孔径の制御性、細孔のサイズの均質性などの点で優れた方法であることが知られている。従って、前記ゾル−ゲル法が適用出来ない遷移金属を複合するのにゾル−ゲル法を適用できれば、これらの金属にもゾル−ゲル法を用いたメソポーラス構造が期待できることが予想される。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−354419号
【非特許文献1】
セラミックス,36(2001)No.12,p913−916
【0005】
この様な中で本発明者らは非シリカ系メソポーラス酸化物、特にメソポーラス遷移金属酸化物、および前記酸化物を複合したものの合成方法について研究し、新規なメソポーラス遷移金属酸化物、および前記金属の複合酸化物などの、細孔壁がより結晶性の進んだ前記材料などの技術を提案してきた(前記特許文献1、および非特許文献1など)。しかしながら、前記提案においても、利用できる遷移金属もゾルーゲル法によりメソポーラス構造を形成できるものに限られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記ゾルーゲル法によりメソポーラス構造を形成できないまたは形成困難な金属を複合したメソポーラス構造の遷移金属酸化物の合成方法を提供することである。前記ゾルーゲル法の適用出来ない遷移金属を如何にしてゾルーゲル法によりメソポーラス構造を持つ遷移金属酸化物に複合することができるかを鋭意検討する中で、前記ゾルーゲル法の適用出来ない遷移金属(遷移金属Bと言う。)、を、ゾルーゲル法によりメソポーラス構造を形成することができる遷移金属(遷移金属Aという。)のゾルを形成する過程で前記ゾルを形成する系を遷移金属Bの酸化物を可溶にする酸性条件にすることにより均一に溶解させ、次いで、遷移金属Bを均一に溶解したゾルに水またはアルカリ水溶液を加え、前記遷移金属Aのゲルの形成、熟成およびテンプレート材料の自己組織化を進行させる工程を加えることにより、遷移金属Aのメソポーラス構造酸化物に遷移金属BがTEM−EDS観測での原子レベルで均一に存在する遷移金属Bドープ型メソポーラス遷移金属A属酸化物が得られることを見出し、前記本発明の課題を解決することが出来た。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)少なくともテンプレート剤が存在する有機溶媒の溶液にドープするV及び/又はCuの酸化物を添加し、前記添加した溶液を撹拌して前記V及び/又はCuの酸化物を均一に分散させ、前記分散液にゾル−ゲル法によりメソポーラス構造酸化物を形成する遷移金属化合物またはメソポーラス構造酸化物を形成する遷移金属化合物および酸を加え前記ドープ金属酸化物を可溶化する酸性条件にする工程を含むことを特徴とするゾル−ゲル法により前記V及び/又はCuの酸化物由来の金属を原子レベルの均一性で存在させたV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法である。好ましくは、(2)ゾル−ゲル法によりメソポーラス構造酸化物を形成する遷移金属化合物が遷移金属塩化物および遷移金属アルコキシドからなる群から選択されるものであることを特徴とする前記(1)記載のV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法であり、より好ましくは、(3)前記遷移金属の塩化物がニオブ、タンタルおよびチタンの塩化物およびアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(2)に記載のV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法である。
【0008】
また、好ましくは、(4)前記テンプレート材料がポリエチレンオキシド鎖(CH2CH2O)mとポリプロピレンオキシド鎖〔CH2CH(CH3)O〕nとから構成されるブロックコポリマーからなるノニオン界面活性剤(ここで、mおよびnは10〜70であり、該ポリマーの末端はH、アルコールやフェノールでエーテル化されている)であり、有機溶媒がメタノール、ブタノール、プロパノール、ヘキサノールまたはこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする前記(1)、(2)又は(3)に記載のV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法である。
【0009】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
I、本発明におけるゾルーゲル法によりメソポーラス構造遷移金属酸化物などを合成するための基本的な技術は既に知られている。
該方法に使用される基本材料は、ゲル化の過程で自己組織化し、前記メソポーラス構造遷移金属酸化物のメソポーラス構造の鋳型となる界面活性剤、特に高分子ノニオン界面活性剤のようなテンプレート剤、前記テンプレート剤を溶解する有機溶媒、特にアルコール類、及び前記メソポーラス構造遷移金属酸化物を形成する遷移金属の塩化物、遷移金属のアルコキシドなどである。
【0010】
II、テンプレート剤としては、基本的には、前記メソポーラス構造遷移金属酸化物の前駆体である遷移金属の塩または/および金属アルコキシドを加水分解し、ポリマー化する過程において、水洗、酸処理、焼成などによるテンプレート剤の除去後に前記メソポーラス構造が形成されるように充分組織化したゲルを形成するゾル溶液が形成できるものであれば良い。界面活性剤、特に好ましい材料としては請求項で挙げているポリエチレンオキシド鎖(CH2CH2O)mとポリプロピレンオキシド鎖〔CH2CH(CH3)O〕nとから構成されるブロックコポリマーからなるノニオン界面活性剤を挙げることができる。
また、前記テンプレート剤の前記組織化を実現するには、使用するテンプレート剤とも関連するが、前記テンプレート剤と組み合わせる有機溶剤、特にアルコール類の溶液中における前記テンプレート剤および前駆体である遷移金属化合物の濃度も、合成されるメソポーラス構造の周期、細孔のサイズ、細孔壁の結晶性などに影響する。
【0011】
III、本発明の特徴である、遷移金属BであるV及び/又はCuをメソポーラス構遷移金属A酸化物に均一にドープするには、先ず、ゾル−ゲル法によりメソポーラス構造遷移金属酸化物を形成する過程のゾル溶液において前記酸化物として添加する遷移金属BであるV及び/又はCuが均一に存在すること重要である。そのために、前記遷移金属BであるV及び/又はCuの添加後に前記遷移金属A酸化物を形成する塩化物など、HClのような酸を生成する前駆体遷移金属の塩を配合するか、前記酸を発生しない前駆体遷移金属化合物の場合には、酸を加えて、ゾル溶液を前記遷移金属BであるV及び/又はCuの酸化物を溶解させるpHにして遷移金属BであるV及び/又はCuをゾル溶液中で均一に配合し、その後前記ゾル溶液にアルカリ水溶液を加え前記前駆体遷移金属化合物の加水分解の促進及び界面活性剤分子の自己組織化を促進させる。このようにして得られたゾル溶液を温度、雰囲気を調整した環境下でゾルの形成、熟成を行い無機相のネットワークが発達した安定化したゲルを得る。
このような、ゾル−ゲル工程により、前記テンプレート除去後に遷移金属BであるV及び/又はCuが遷移金属Aの酸化物からなるメソポーラス構造に均質にドープされた金属ドープ型メソポーラス遷移金属酸化物が合成できる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、この例示により本発明が限定的に解釈されるものではない。
使用する測定機器;
X線回折分析;RINT 2100、CuKα線(Rigaku社製)
窒素ガス吸着測定; SA3100(Coulter 社製)
UV−Vis (紫外可視)拡散反射スペクトル;紫外可視透過、反射、蛍光分光測定装置V−560(日本分光)
TEM(透過型電子顕微鏡);JEOL JEM2010 F(日本電子)
EDS (エネルギー分散型X線分析);JEOL JEM2010 F(日本電子、NORAN社)
ICP−AES (ICP:Inductively coupled plasma atomic emission spectrometry(発光分光分析);ICPS−800(島津製作所)
【0013】
試験例
メソポーラス酸化ニオブにドープ遷移金属Bとして鉄を導入した合成例;
遷移金属Aの原料として塩化ニオブを用いた。また、遷移金属B原料として酸化鉄(Aldrich社製のFe2O3ナノ粒子) を使用した。配合する酸化鉄量を、生成物における鉄のニオブに対する比率がそれぞれ1%、3%および5モル%になるようにした合成例を示す。
テンプレートとしてポリエチレンオキシド鎖(CH2CH2O)mとポリプロピレンオキシド鎖〔CH2CH(CH3)O〕nとから構成される非イオン性界面活性剤(mおよびnはそれぞれ26および39である。)を使用し、これをエタノール溶媒に10重量%となるように溶解した。この溶液中に前記酸化鉄を前記所定の比率になるように添加し、均一に分散させた。次いで、前記遷移金属Aの原料として塩化ニオブ(NbCl5)を投入した。その後、30−40の撹拌を行ない均一なゾル溶液を得る。前記撹拌中に0.05モル(M)のアルカリ水溶液を0.5〜2.0mL添加することにより塩化ニオブの加水分解の促進及び前記非イオン界面活性剤分子の自己組織化を促進させた。得られたゾル溶液は40℃で3−10日間の熟成を行ないゲル化させた後、空気中で450℃で5時間の焼成をし、前記テンプレート剤を除去した。Feをニオブに対して1%、3%および5モル%の比率でドープしたFeドープメソポーラス酸化ニオブを得た。
【0014】
前記合成したFeドープメソポーラス酸化ニオブの評価;
解析には前記測定器を用いた。
X線回折の測定;測定範囲は、2θ=1−60°の範囲である。
まず、図1に低角度領域 ( 2θ=1−8°)の範囲から測定したX線回折パターンを示した。低角度領域の回折パターンは、Feの配合比率1%、3%および5%で合成を行なった3種類の材料においてすべて周期構造を持つ均一なサイズのメソ孔を有するメソポーラス材料であることを示す回折パターンが得られた。
図2に示した高角度側 (2θ=5−60°)のX線回折パターンは全ての合成試料について、この材料が非晶質であることを示した。このことから、酸化鉄のみが構造中に局所的に存在しているという現象は起こらず、酸化物構造中に均一に分散していることが分かった。
【0015】
窒素吸着量(Y軸/容積(cc(=cm3)/g))と相対圧(P/P0)(X軸)との相関を図3に示す。まず、測定により得られる吸着等温線について検討を行なうと、すべての比率について吸着等温線はIV型に帰属される形状となることがわかった。この形状によりメソ細孔構造の存在が確認でき、メソポーラス材料であることが確認できる。また、窒素ガス吸着量の立ち上がり部が明確に観測されていることから、細孔径が均一になっていることが確認できる。また、Feドープ配合比率1%、3%、5%の合成試料の比表面積はそれぞれ、208、254および235m2・g−1となり遷移金属酸化物を構造骨格とするメソポーラス材料と比べても比較的高い値を示している。また、細孔径分布曲線も併せて示した。メソ細孔領域(2−50nm)から細孔容積を求めるとそれぞれ、0.37、0.45、0.37mL/g と見積もられた。これらの値はメソポーラス遷移金属酸化物系において高い数字であるといえる。窒素ガス吸着測定により得られる値をまとめて表1テーブルに示す。細孔径分布曲線から求めたピークトップは1%、3%、5%それぞれ5−6nm、4−5.7nm、および4.3−5.5nmとなった。これら3種の合成条件においておよそ4−6nmのメソサイズの細孔を有する材料であることが確認された。
【0016】
【表1】
【0017】
TEMによる細孔の構造規則性に関する分析を行なった。
図4(顕微鏡写真)に示すように高い構造規則性を有していることが確認された。このような高い構造規則性を有していること、また均一なサイズの細孔を有していることは、細孔容積に規制された構造選択性を伴う反応などに活かすことが可能であると考えられる。また、ドープしたFeがどの程度均一に混合しているかを確認する目的でEDSによる元素分析を行なった。こちらの結果から平均値は鉄原子が全体の2.2%を占めていることが確認され、粒子内に均一に分散していることが確認できた。TEM−EDS観察の結果を図5に示す。
【0018】
ICP発光分光分析(ICP−AES)は、酸化物をフッ酸に溶解して溶液とした状態での元素分析が可能であることから、試料全体の金属元素の比率を求めることが出来る。TEMによる局所的な元素分析と共に用いることで、より正確な金属元素の比率の解析が出来る。酸化ニオブに対して鉄を1%及び3%ドープしたメソポーラス酸化ニオブについての元素分析を行なった。分析結果はそれぞれ0.99%、2.71%となることがわかった。TEMによる元素分析結果と類似した結果となったことから、今回使用した合成法により異種金属ドープ型メソポーラス金属酸化物を合成すると試料全体に渡り前記異種金属が均一に混合していることが確認できた。
【0019】
実施例1
試験例における酸化鉄に代えて酸化バナジウムを用いバナジウムを導入したメソポーラス酸化ニオブの合成例を示す。
まず、酸化バナジウム3.4モル%をドープ異種金属成分としてメソポーラス酸化ニオブ合成時に導入して得たバナジウムドープメソポーラス酸化ニオブのXRD測定結果を図6に示した。
低角度側の領域から、メソポーラス材料特有の回折パターンが得られ、これはメソポーラス材料の(100)面に相当する。その時のd値は6.38nmとなった。 これらの結果から、酸化バナジウムも先に述べた方法と同様にして酸化ニオブ骨格内に均一に分散していることが示唆される。第2、及び第3ピークは明瞭に観測されなかったことから、細孔構造の規則性がやや低くなっていることが予想される。しかしながら、調製条件を最適化することで更に高規則性の細孔構造を有する材料の合成は可能であると考えられる。また、高角度側のXRDパターンはブロードな回折パターンを示したことから、この材料に関しても450℃で5時間の焼成を行なった後も、なお非晶質酸化物構造であることを示している。
この試料の窒素ガス吸着測定を行なった結果を図7に示した。この窒素ガス吸着等温線の形状はIV型を示していることから、メソ細孔構造を有していることが確認された。下記の表2に窒素ガス吸着測定の結果を示す。Vを3.4モル%導入した場合のVドープメソポーラス酸化ニオブのBET比表面積は200m2/gであり、多孔性材料の高い比表面積を示している。図7(cc/STP/g=cm3/STP/g)の挿入図として、BJH式により求められる細孔径分布を示した。こちらの結果からメソ細孔領域(2−50nm)に狭い分布を持つことが確認された。
【0020】
【表2】
【0021】
図8はVドープメソポーラス酸化ニオブのTEM写真である。この像から、細孔は規則的な構造を有しておらず、worm hole−様構造となっていることが確認された。ここで、細孔径は均一なサイズに揃っていることも同時に確認され、機能性材料としての特性を有していることが確認できる。なお、合成時の条件を代えることにより細孔構造の規則性を向上させることが十分可能である。
【0022】
図9にVドープメソポーラス酸化ニオブのTEM−EDSを用いて測定した元素分析の結果を示した。測定は10種類のサンプルの中から64個所のスポットについて測定を行なった。また、EDSのスポットサイズは5nmで測定した。その結果、平均値は3.36モル%、標準偏差は0.61となることを確認した。合成時のVの比率3.43モル%と比較しても非常に近い値を得た。TEM−EDSを用いた局所的な元素分析から、非常に均一に混合されていることがわかった。
また、ICP−AESによる元素分析を行なった結果、Vは3.8モル%含まれていることが確認できた。
【0023】
実施例2
ドープ金属酸化物として酸化銅を用い、銅を導入したメソポーラス酸化ニオブを試験例と同様に合成した。
銅ドープメソポーラス酸化ニオブのXRD測定結果を図10に示した。
この結果から、Cuを導入した場合においても低角度側からはメソ細孔構造に由来する回折パターン(第1ピーク)が得られた。また高角度領域はブロードなパターンを示し、アモルファスであることが確認された。
図11に窒素ガス吸着測定結果を示す。
吸着等温線の形状から、メソ細孔を有する材料であることが確認できる。また、BET比表面積は233m2/gであった。メソ細孔領域から求められた細孔容積は0.38mL/gである。細孔径はほぼ4.4nm−5.9nmの範囲に最も分布している。窒素ガス吸着測定により求められた諸データを表3て示す。
【0024】
【表3】
【0025】
TEMにより、銅ドープメソポーラス酸化ニオブの細孔の形状及び細孔構造の規則性に関する観測を行なった。TEM像を図12に示す。この結果から、Cuを3%導入したメソポーラス酸化ニオブにおいてはworm hole−様構造をとり易いことが確認された。なお、調製条件により規則的な細孔構造のものが得られる。細孔径は均一構造であることはTEM観測から確認出来た。
ICP−AESによる元素分析を行なったところ、この材料中に含まれるCuの割合は2.8モル%であることが確認でき、Cu原子は酸化ニオブ構造中にほぼ均一に導入されていることが確認された。
【0026】
実施例3
酸化銅としてCuOを用いた場合とCu2Oを用いた場合の、得られた銅ドープメソポーラス酸化ニオブの特性を、窒素ガス吸着を測定して観察したところ、どちらの酸化物を出発原料としてもメソポーラス材料の合成は可能であることが分かった。前記測定結果を図11に示す。窒素ガス吸着測定により求められた結果を表4にまとめて示した。
【0027】
【表4】
【0028】
上記実施例においてはメソポーラス遷移金属酸化物を形成する金属としてNbの場合を示したが、公知のゾルーゲル法によりメソポーラス構造を形成できるTa、Zr、Tiなどの遷移金属のメソポーラス遷移金属酸化物の合成においても、前記実施例で示した技術が適用できることは明かである。また、ドープに用いられる金属についても、実施例で挙げたもの以外に、前記ゾルーゲル法によりメソポーラス構造を形成する過程において、酸に可溶な金属の酸化物、例えば酸化マンガン、酸化タングステンならば前記実施例で示した技術を適用できる。
【0029】
参考例
前記試験例、実施例1〜3で製造した遷移金属ドープメソポーラス酸化ニオブを触媒として用い、シクロヘキセンのエポキシ化反応における触媒の活性、反応の選択性を見た。結果を表5に示す。このことから前記遷移金属ドープにより、反応の選択性および/または反応活性に改善が見られることが理解できる。
【0030】
【表5】
【0031】
【発明の効果】
以上のように、有用性が認められているメソポーラス遷移金属酸化物に、機能性を高める異種の金属のドープを可能にする技術は、触媒、固体電解質などの種々の用途に利用されるメソポーラス遷移金属酸化物の改善、改質において顕著な効果をもたらすことは明かである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Feを各比率でドープしたメソポーラス酸化ニオブのXRDパターン(低角度領域 2θ=1〜8°) (a)1モル%、(b)3モル%、(c)5モル%
【図2】Feを各比率でドープしたメソポーラス酸化ニオブのXRDパターン(高角度領域 2θ=5〜60°) (a)1モル%、(b)3モル%、(c)5モル%
【図3】Feを各比率でドープしたメソポーラス酸化ニオブの窒素ガス吸着等温線(挿入図)BJH式により算出される細孔径分布曲線(a)1モル%、(b)3モル%、(c)5モル%
【図4】Feを各比率でドープしたメソポーラス酸化ニオブのTEM写真(Fe3モル%)
【図5】Feを各比率でドープしたメソポーラス酸化ニオブのTEM−EDS測定結果 (Fe3モル%)
【図6】Vを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブのXRDパターン(a)低角度領域 2θ=1〜8°、(b)高角度領域 2θ=5〜60°
【図7】Vを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブの窒素ガス吸着等温線(挿入図)BJH式により算出される細孔径分布曲線
【図8】Vを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブのTEM写真
【図9】Vを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブのTEM−EDS測定結果
【図10】Cuを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブのXRDパターン(a)低角度領域 2θ=1〜8°、(b)高角度領域 2θ=5〜60°
【図11】Cuを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブの窒素ガス吸着等温線(挿入図)BJH式により算出される細孔径分布曲線
【図12】Cuを3モル%ドープしたメソポーラス酸化ニオブのTEM写真
Claims (4)
- 少なくともテンプレート剤が存在する有機溶媒の溶液にドープするV及び/又はCuの酸化物を添加し、前記添加した溶液を撹拌して前記V及び/又はCuの酸化物を均一に分散させ、前記分散液にゾル−ゲル法によりメソポーラス構造酸化物を形成する遷移金属化合物またはメソポーラス構造酸化物を形成する遷移金属化合物および酸を加え前記ドープ金属酸化物を可溶化する酸性条件にする工程を含むことを特徴とするゾル−ゲル法により前記V及び/又はCuの酸化物由来の金属を原子レベルの均一性で存在させたV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法。
- ゾル−ゲル法によりメソポーラス構造酸化物を形成する遷移金属化合物が遷移金属塩化物および遷移金属アルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法。
- 遷移金属化合物がニオブ、タンタルおよびチタンの塩化物およびアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法。
- テンプレート材料がポリエチレンオキシド鎖(CH2CH2O)mとポリプロピレンオキシド鎖〔CH2CH(CH3)O〕nとから構成されるブロックコポリマーからなるノニオン界面活性剤(ここで、mおよびnは10〜70であり、該ポリマーの末端はH、アルコールやフェノールでエーテル化されている)であり、有機溶媒がメタノール、ブタノール、プロパノール、ヘキサノールまたはこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1、2、または3に記載のV及び/又はCuドープ型メソポーラス遷移金属酸化物の合成方法。
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2003
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