JP4133083B2 - バネブレーキシリンダ及びそれを備えたブレーキキャリパ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の制動力をバネによって発生させるバネブレーキシリンダに関する。更には、それを備えるブレーキキャリパ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
バネによって制動力を付与する構成のバネブレーキシリンダは従来から公知とされており、流体圧によらずにブレーキ力を安定して車両に付与できるメリットから、例えば駐車ブレーキ用として、種々の鉄道車両に広く採用されている。
【0003】
このバネブレーキシリンダにおいては、シリンダケースの内部空間にピストンを収納し、該内部空間をピストンによって二つの空間に区画している。そして、一方の空間は、ブレーキ力を発生させるためのバネを収納するバネ室とし、他方の空間は、圧縮空気を給排可能な空気圧室としている。
【0004】
この構成で、空気圧室に圧縮空気を供給することで、ピストンをバネ力に抗する向きに押動し、該ピストンにテコ連結されるブレーキパッド(制輪子)を車軸側のディスクから離間させることで、ブレーキを緩めることができるようにしている。一方、空気圧室から圧縮空気を排気することで、バネの弾発力によってピストンを押動し、制輪子をディスクに押し付けてブレーキ力を作用させることができる。
即ち、圧縮空気の供給/排気を切り換えることで、バネブレーキ緩め状態とバネブレーキ作用状態とに切り換えて、バネブレーキの制御を行うこととしている。
【0005】
このバネブレーキシリンダの構成として、例えば実公平3−48933号公報に開示されるものがある。
同号公報の従来技術として示される第9図の構成は、圧縮空気を供給するための供給空気配管の中途に圧力スイッチ17を設けることで、上記バネブレーキ緩め状態を検知できるようにしたものである。
【0006】
しかし、この第9図の構成では、バネブレーキシリンダ内での空気漏れによってバネブレーキ力が作用し始めた場合に、圧力スイッチ17がそれを検知できないおそれがある。
即ち、シリンダ内で空気漏れが生じてバネ力により制輪子がディスクに接触し、ブレーキ作用が生じ始めた場合であっても、その空気漏れの度合いが僅かである場合には、圧縮空気供給側の圧力が殆ど低下しないことが考えられ、圧力スイッチ17によってそれを検知することができない問題がある。
【0007】
なお、このような空気漏れによって生じるブレーキは僅かであるが(空気漏れが大きければ圧力スイッチ17で検出できることになる)、それでも制輪子の早期摩耗の原因となるなど、問題は小さくない。
特に新幹線等の高速鉄道車両に適用する場合には、高速回転するディスクに制輪子が接触する形となるので、たとえその圧接力が僅かであるとしても、当該制輪子が摩擦で赤熱して異常な高温になり、周辺部に悪影響を与える原因となってしまう。
【0008】
この点に鑑み、上記実公平3−48933号公報では、その第1図〜第5図において、シリンダ体21の端部に電気スイッチ27を設けて、(空気圧室の圧力でなく)ピストンの位置そのものを該電気スイッチ27によって直接検知することで、上記問題を解決することとしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の公報の技術では、シリンダ体21の適当な箇所に電気スイッチ27を設けるためのスペース(同号公報の技術においては、収容部60)を確保する必要がある。
従って、取付スペースの制約が大きい状況には適さないという不具合があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、第1の発明に係るバネブレーキシリンダは、シリンダケースと、該シリンダケースの内部空間をバネ室と空気圧室とに区画するピストンと、を含むバネブレーキシリンダにおいて、該シリンダケースの内壁には、該シリンダケースの内部空間と圧力スイッチとを連絡するように開口を備え、当該開口が、バネブレーキ緩め状態では前記空気圧室に臨み、バネブレーキ作用状態ではバネ室に臨むように構成し、更に前記シリンダケースには、前記バネ室を大気圧に保つための大気孔を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によると、圧力スイッチは、ピストン位置に応じてバネ室または空気圧室のいずれか一方と連絡するよう構成され、バネブレーキ緩め状態で空気圧室と連絡し、バネブレーキ作用状態でバネ室と連絡する。バネ室は大気孔により大気圧に保たれているから、この圧力スイッチの検出結果から、バネブレーキ力の作用の有無を確実に検知できる。
また、本発明の構成は、圧力スイッチをシリンダケースに設置する必要がなく、シリンダ室内と圧力スイッチとを連絡する配管の届く限り、自由な場所に設置することができる。従って、バネブレーキシリンダの取付スペースに制約を受ける状況であっても、検知精度の良いバネブレーキ緩め検知機構を容易に備えることができる。また、圧力スイッチの設置箇所として比較的振動の少ない位置を選択することで、その検知精度も確保できる。
【0013】
第2の発明に係るブレーキキャリパ装置は、前記バネブレーキシリンダが車軸側のディスクと径方向に並び、キャリパボディを貫通するように前記ディスクの軸方向と軸心をほぼ平行にして配設されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、バネブレーキシリンダの取付スペースに大きな制約を受ける場合でも、検知精度の良いバネブレーキ緩め検知機構を容易に備えることができる。また、圧力スイッチを周囲の比較的振動の少ない場所(例えば、空気配管ホースの外壁など)に設置することで、その検知精度を確保できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る対向型ブレーキキャリパ装置1の正面側から見た模式図である。
図2は装置の具体的な構成を示した正面図一部断面図、図3は同じく側面拡大図である。なお、図3におけるA−A断面矢視図に相当するものが図2である。
【0016】
図1において、ブレーキキャリパ装置1は、鉄道車両の台車の適宜の部分に設けられたブレーキ取付面2に固定されている。具体的には図2に示すように、鉄道車両の台車の一部をなす横バリ30にフレーム31を固着し、このフレーム31の下面に形成したブレーキ取付面2に、ブレーキキャリパ装置1が設けられている。
図1に示すように、鉄道車両の台車の車軸3が、前記ブレーキ取付面2の下方に水平に配置されている。車軸3にはディスク4が固着され、このディスク4が後述する制輪子8と圧接することで、鉄道車両に制動力が与えられる構成となっている。
【0017】
ブレーキキャリパ装置1は、前記ブレーキ取付面2にそのキャリパボディ5が固着されることによって、台車に取り付けられる。キャリパボディ5は、前記ブレーキ取付面2に固設される上側の支持部5aと、前記ディスク4の上側の一部を囲むように「コ」字状に形成されたキャリパ部5bと、を有している。
【0018】
図1や図3に示すように、前記キャリパボディ5のキャリパ部5bには、ディスク4の軸方向と平行に配向されるシリンダ部5cがそれぞれ形成されており、このシリンダ部5cのそれぞれにピストン6(図1)が摺動自在に嵌挿される。ピストン6のディスク4に対向する側には、制輪子8が、当たりを均一にするための断熱パッド7を介して取り付けられている。
【0019】
前記ピストン6は油圧式に構成され、図示しない油圧回路を通じて油供給口5d(図1)から導入される圧油によって推進力を得て、ディスク4に近接する方向に変位する。この結果、ピストン6に取り付けられた制輪子8がディスク4に圧接されることで、車軸3に摩擦制動力が付与される。
【0020】
図1に示すように、キャリパボディ5の両肩部にはレバー支持部10が一つずつ突設される。そして、それぞれのレバー支持部10には、上下方向に配設されるレバー9の中途部(支点9a)が枢支され、揺動自在とされている。
それぞれのレバー9の下端(作用点9c)には、押圧棒12が回動自在に連結される。押圧棒12は水平に延出しながら、キャリパボディ5の「コ」字状のキャリパ部5bを貫通して内部に突入し、その先端が前記断熱パッド7を介して前述の制輪子8に取り付けられる。
また、両レバー9の上端(力点9b)同士は、以下に説明するバネブレーキシリンダ20を介して連結されている。
【0021】
バネブレーキシリンダ20は、前記ブレーキ取付面2と、前記キャリパボディ5のキャリパ部5bとに挟まれた位置に配置される。
具体的には、キャリパボディ5の支持部5aに水平方向の貫通路21が形成され、この貫通路21を挿通するように、バネブレーキシリンダ20が設けられている。
即ち、バネブレーキシリンダ20は図3に示すように、車軸側の前記ディスク4と径方向に並んで配置される。また、該シリンダ20は、前記ディスク4の軸方向と軸心をほぼ平行にしながら、前記キャリパボディ5を貫通するように配設されている。
【0022】
バネブレーキシリンダ20の具体的な構成を、図4を主に参照しながら詳細に説明する。
図4はバネブレーキシリンダのバネブレーキ緩め状態を示す断面図、図5はバネブレーキ作用状態を示す断面図である。
【0023】
該バネブレーキシリンダ20は、内部にシリンダ室を形成する円筒状のシリンダケース20aと、該シリンダ室の内部で当該シリンダ室を二つの空間20e・20fに区画しながら軸心方向に摺動自在とされたピストン20bと、当該ピストン20bと一体的に移動するシリンダロッド20gと、該ピストン20bを一側に付勢するバネ20cと、を有している。このバネ20cは、シリンダ20を伸張させる方向の付勢力を常時加えるためのものである。
【0024】
前記シリンダケース20aには、前記二本のレバー9のうちの一本の上端部(力点9b)が、回動自在に連結されている。
また、前記シリンダロッド20gは、その一端をシリンダケース20aから外部へ延出させ、この延出部分に、後述するロック機構40を介して押動棒11が結合される。該押動棒11の端部に、前記二本のレバー9のうち残りの一本の上端部(力点9b)が、回動自在に連結されている。
【0025】
ピストン20bは前述のとおり、シリンダケース20a内部の空間(シリンダ室)を二つの空間20e・20fに区画している。
この区画された一側の空間20fはバネ室とされ、ピストン20bを付勢するための前述のバネ20cが収納される。また、このバネ室20fは、シリンダケース20aに形成された大気孔20hを介して外部に連通されているので、常に大気圧に保たれている。
他側の空間20eは空気圧室とされ、シリンダケース20aにはこの空気圧室20eに臨ませるように空気供給口20dを形成し、当該空気供給口20dが図示せぬ配管を介して、適宜の圧縮空気供給系統と接続されている。
【0026】
以上の構成で、空気圧室20eに圧縮空気を導入しない状態であるときは、バネ20cによってピストン20bが押動される結果、バネブレーキシリンダ20が伸張し、図5の状態になる。
バネブレーキシリンダ20が伸張すると、図1の白抜き矢印で示すように、該シリンダ20にレバー9を介して連結される押圧棒12が、制輪子8をディスク4に圧接する。この結果、車軸3に対し制動作用が付与される(バネブレーキ作用状態)。
なお、このときは、バネ20cの力はレバー9による挺子の作用によって増力される構成となっているので、制輪子8は押圧棒12から強い押圧力を受ける形となって、ブレーキ力を効果的に発生させ得る構成となっている。
【0027】
一方、空気供給口20dから圧縮空気を空気圧室20e内に導入すると、発生する空気圧によってピストン20bは前記バネ20cのバネ力に抗する向きに変位し、シリンダ20は縮退して、図4に図示の状態になる。これに伴って、図1に示す白抜き矢印と逆向きの力が作用するので、前記押圧棒12による制輪子8−ディスク4間の圧接を解除させ、車軸3のブレーキを緩める(または完全に解除する)ことができる(バネブレーキ緩め状態)。
【0028】
次に、バネブレーキシリンダ20が上記のバネブレーキ作用状態およびバネブレーキ緩め状態のいずれの状態にあるかを検知する、バネブレーキ緩め検知機構の構成を説明する。
図4に示すように、シリンダケース20aの壁部分の内部に空気路20iが形成され、この空気路20iの一端が、シリンダケース20aの内壁に開口20jを形成している。
この開口20jの形成される位置は、図4および図5に示すように、バネブレーキ緩め状態におけるピストン20bの位置と、バネブレーキ作用状態におけるピストン20bの位置との間とされている。従って、バネブレーキ緩め状態(図4)では開口20jは前記空気圧室20eに臨み、バネブレーキ作用状態(図5)では開口20jは前記バネ室20fに臨むことになる。
バネブレーキ緩め状態でのピストン20bの位置は前記バネ20cのバネ力に抗する向きのストローク終端であるのに対し、バネブレーキ作用状態でのピストン20bの位置は制輪子8の厚み(摩耗量)に応じて変動する。こうしたことから、バネブレーキ緩めを確実に検知するため、前記開口20jの位置は、バネブレーキ緩め状態でのピストン20bに近い位置に設けられている。
【0029】
前記空気路20iの開口20jと反対側の端部は、シリンダケース20aの外面に形成された圧力測定口20kに接続される。該圧力測定口20kには、可撓性配管25を介して圧力スイッチ27が接続される。
【0030】
この圧力スイッチ27は公知のものであって、概略図である図4に示すように、摺動自在とされたピストン27aと、当該ピストンを一側に付勢する付勢バネ27bと、該ピストン27aと連結されて一体的に動く接触片27cと、を有している。そして、圧力スイッチ27に導入される空気が、ピストン27aを、前記付勢バネ27bの弾発力に抗して押動するように構成している。
以上の構成で、圧力スイッチ27に導入される空気の圧力が、前記付勢バネ27bのバネ力によって規定される所定のしきい値以上である場合は、ピストン27aとともに移動する接触片27cが電気接点28・28に接触し、両接点28・28間を導通させる(On状態)。一方、空気の圧力が当該しきい値を下回るときは、電気接点28・28間は導通されない(Off状態)。
この結果、圧力スイッチ27は、空気圧力が前記所定のしきい値以上であるか否かを判定し、OnまたはOffの電気信号として出力することができる。この信号は鉄道車両の運転室へ送られて制御パネル等に表示されるので、前記圧力スイッチ27の状態を運転士が確認できるようになっている。
【0031】
以上にブレーキキャリパ装置1の構成を説明したが、次に、▲1▼鉄道車両の運転中、▲2▼ブレーキ操作が行われたとき、▲3▼駐車ブレーキ操作がされたとき、の各場合において、該ブレーキキャリパ装置1のバネブレーキシリンダ20およびバネブレーキ緩め検知機構がどのように作動するかについて、具体的に説明する。
【0032】
まず、▲1▼鉄道車両の運転中においては、キャリパ部5bの両端に位置するシリンダ部5c(図1)には高圧油が導入されておらず、制輪子8への押圧力は作用していない。
またこのときは、バネブレーキシリンダ20におけるシリンダケース20a内の空間20eに対し、圧縮空気が供給されている。従って図4に示すように、ピストン20bはこの空気圧によって、バネ20cのバネ力に抗する向き(図中左向き)に押圧される。このため、バネブレーキシリンダ20は、制輪子8のディスク4への押圧を解除する方向の力を、レバー9を介して押圧棒12に加える(バネブレーキ緩め状態)。
以上の結果、制輪子8はブレーキ作用を発生させない。
【0033】
また、このようにバネブレーキシリンダ20がバネブレーキ緩め状態にあるときは、図4に示すように、シリンダケース20a内壁に形成した開口20jが空気圧室20e側に臨むことになる。この結果、前記圧力スイッチ27には空気圧室20eの圧縮空気が導入されるので、高圧を検知した圧力スイッチ27は、その接触片27cによって電気接点28・28間を閉じる。
この電気信号が運転室側に送られ、運転士は、バネブレーキシリンダ20がバネブレーキ緩め状態にあることを確認できるようになっている。
【0034】
次に、▲2▼鉄道車両の運転状態において、運転士がブレーキ操作を行った場合を説明する。このブレーキ操作に基づく制動開始信号が図略の油圧供給系統に伝達されると、キャリパ部5bに設けられたシリンダ部5c内に高圧油が油供給口5dを介して導入され、ピストン6がディスク4に近接する方向(図1に矢印で示す方向)に押圧される。この結果、ピストン6に押動される制輪子8は、車軸3とともに回転するディスク4に対し圧接する。
以上より、車両の運動エネルギーが制輪子8とディスク4との間の摩擦熱に変換され(制動作用)、鉄道車両は減速する。
【0035】
なお、このときは、前述のバネブレーキシリンダ20に圧縮空気が供給されているので、バネブレーキを発生させない図4の状態(バネブレーキ緩め状態)のままである。従って、圧力スイッチ27もその電気接点28・28間を閉じた状態のままとされる。
【0036】
最後に、▲3▼前述の油圧ブレーキによる制動操作が行われて車両が停止した後、そのまま駐車を行う場合について説明する。
車両が停止した後も、制輪子8は、ピストン6によってディスク4を押圧したままになっている。ここで運転士が駐車ブレーキ操作を行うと、駐車ブレーキ開始信号を受け取った圧縮空気供給系統は、前述の空気圧室20e内の圧縮空気を排気する。
これにより空気圧室20e内が減圧され、バネ20cに抗してピストン20bを押圧していた空気圧力が失われるので、ピストン20bはバネ20cの弾発力によって変位し、バネブレーキシリンダ20は伸張して図5の状態になる。これは、制輪子8をディスク4側へ圧接する方向(図1の白抜き矢印方向)の力が、レバー9を介して加えられることを意味する(バネブレーキ作用状態)。
即ち、前述のバネ20cのバネ力が、車軸3が回転しないようにディスク4を固定するためのブレーキ力として用いられるので、長時間留置で油圧ブレーキ力が減少もしくは消滅しても鉄道車両は停止位置から動き出すことがない。
【0037】
そして、このようにバネブレーキシリンダ20がバネブレーキ作用状態にあるときは、図5に示すように、シリンダケース20aに形成した開口20jは、バネ室20f側に臨むことになる。
バネ室20f内は大気孔20hによって常に大気圧に保持されているから、圧力スイッチ27にはこの大気圧状態の空気が導入される。この結果、圧力スイッチ27は前記付勢バネ27bの復元力によって、接触片27cを電気接点28・28から離間させる。
この電気信号が運転室側に送られるので、運転士は、バネブレーキシリンダ20がバネブレーキ作用状態にあることを確認できることになる。
【0038】
上記の駐車ブレーキの状態から運転を再開する場合は、空気圧室20e内に再度圧縮空気を導入し、バネブレーキシリンダ20による制輪子8のディスク4への押圧力を解除して、再びバネブレーキ無作用状態とすればよい。
【0039】
以上のバネブレーキ緩め検知機構の説明で明らかなとおり、圧力スイッチ27はバネブレーキ緩め状態では空気圧室20eと連絡し、バネブレーキ作用状態では大気圧状態のバネ室20fと連絡するように構成している。
従って、バネブレーキ作用状態とすべく空気圧室20eに圧縮空気を供給しているにもかかわらず、少量の空気漏れに基づく空気圧室20eの圧力低下が生じ、バネ20cのバネ力によってピストン20bが図4の位置から右方に移動しようとする場合でも、移動するピストン20bが前記開口20jの位置を越えた瞬間に該開口20jが大気圧状態のバネ室20fに連絡するので、該開口20jに接続している圧力スイッチ27も、大気圧を検知して接点28・28間の導通を遮断する結果となる。
即ち、圧縮空気を排気して積極的にバネブレーキ作用状態に移行させた場合は勿論、ピストン20bがバネブレーキ作用状態から空気漏れによって徐々に移動することで僅かなバネブレーキ作用を行おうとする場合をも、前述の圧力スイッチ27によって確実に検知することができる。即ち、本発明によれば、検知精度の優れたバネブレーキ緩め検知機構を構成できるのである。
【0040】
また、本発明の構成においては圧力スイッチ27をシリンダケース20aに直接設ける必要はなく、前記配管25が届く場所である限りは、いかなる場所であっても設置することが可能である。従って、レイアウトの自由度に優れるのでコンパクト化も容易であり、また、取付スペースに制約を受ける状況にも適合的である。
特に本実施形態では前述のとおり、バネブレーキシリンダ20は、ブレーキ取付面2とキャリパ部5bの間の位置で、支持部5aに設けた貫通路21に、前記バネブレーキシリンダ20を挿通させた状態で設けることとしている。このように狭い空間にバネブレーキシリンダ20を収納するような構成でも、本発明によれば、前述の圧力スイッチ27を、周囲の機器と干渉しないよう容易に取り付けることができるのである。
【0041】
更には、圧力スイッチ27の取付場所の自由度が増すので、比較的振動の少ない箇所(例えば、図示しない空気配管ホースの外壁など)を選択してそこに圧力スイッチ27を取り付けることも可能であるから、振動によって圧力スイッチ27の検知精度が悪影響を受けることも防止できるのである。
【0042】
次に、前記バネブレーキシリンダ20によるバネブレーキを手動で強制的に開放させるための機構を説明する。
即ち、前述したとおり、バネブレーキシリンダ20のシリンダロッド20gと、押動棒11とは、ロック機構40で一体的に連結されている。このロック機構40のロックを外すことで、シリンダロッド20gと押動棒11との連結を解除し、これによってバネブレーキを解除できるように構成しているのである。
【0043】
前記ロック機構40を、図4・図6を参照しながら詳細に説明する。図6はブレーキの手動開放状態を示す断面図である。
このロック機構40は図4に示すように、前記押動棒11に対し軸方向摺動自在に外嵌される筒体41と、該筒体41に回動自在に取り付けられるロック解除レバー42を備える。
【0044】
前記押動棒11は円筒状に形成され、その内部に前記シリンダロッド20gを摺動自在に嵌合させるとともに、その外面に鍔部11aと突起11bとを形成している。また、押動棒11の筒状部分には孔11cが複数個形成され、それぞれの孔11cの内部に、鋼球43を移動可能にそれぞれ収納させている。
一方、シリンダロッド20gには、当該鋼球43を嵌入させ得る環状溝45が形成されている。
【0045】
前記筒体41の内面には突起41aが形成され、この突起41aと押動棒11の前記鍔部11aとの間には、付勢バネ44が介在される。この付勢バネ44は、前記筒体41を一側(図4における左方側。以下、「ロック側」と称する)に付勢する弾発力を常時加えている。
【0046】
図4は前記鋼球43がシリンダロッド20gの環状溝45に嵌入した状態を示しており、このときは前記筒体41は、前記付勢バネ44によって、その突起41aが前記孔11cを閉鎖する位置で静止される。
従って、該孔11cへの鋼球43は、孔11cから外側へ突出する方向の移動が前記突起41aによって阻止されるので、環状溝45から外れることはない。この結果、シリンダロッド20gと押動棒11とは一体的に結合した状態にロックされるのである。
【0047】
このロックを解除するには、筒体41に設けられたロック解除レバー42を手で掴んで回動させればよい。この操作によって図6に示すように、ロック解除レバー42の一端が突起11bを押動するので、筒体41は付勢バネ44に抗して反ロック側に変位し、突起41aが前記孔11cの位置から外れる。従って、突起41aによる規制が解除された鋼球43は、孔11cから突出する方向に変位して、環状溝45に対する係合を解除する。この結果、シリンダロッド20gは押動棒11に対して自由に移動できる状態となる。
即ち、このようにしてロックを解除することで、シリンダロッド20gと押動棒11との間の結合が解除され切り離される結果、前記バネ20cのバネ力が制輪子8を押圧しなくなり、前述のバネブレーキを解除することができるのである。
【0048】
なお、バネブレーキシリンダ20は鉄道台車一つにつき四台設けられるのが通例であるが、これを圧力スイッチ27とどのように接続するかについては、例えば図7〜図9に示すような様々な態様が考えられる。
図7は、四つのバネブレーキシリンダ20のそれぞれの圧力測定口20k(ただし、図7においては図略)を、単一の圧力スイッチ27に接続する構成である。この構成は、圧力スイッチ27が一つで済むことから、コンパクト化が容易なメリットがある。
図8は、四つのバネブレーキシリンダ20のそれぞれに対応して圧力スイッチ27を一つずつ設け、圧力スイッチ27のそれぞれを車両の運転室側に独立して配線した構成である。この構成は車両側への配線が増えるが、故障したバネブレーキシリンダ20を容易に特定できるメリットがある。
図9は、四つのバネブレーキシリンダ20のそれぞれに対応して圧力スイッチ27を一つずつ設けるが、四つの圧力スイッチ27を直列接続して車両の運転室側に配線した構成である。この構成は、車両側への配線を簡素化できるメリットがある。
【0049】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲はこの実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上に示すとおり、第1の発明によると、圧力スイッチは、ピストン位置に応じてバネ室または空気圧室のいずれか一方と連絡するよう構成され、バネブレーキ緩め状態で空気圧室と連絡し、バネブレーキ作用状態でバネ室と連絡する。バネ室は大気孔により大気圧に保たれているから、この圧力スイッチの検出結果から、バネブレーキ力の作用の有無を確実に検知できる。
また、第1の発明の構成は、圧力スイッチをシリンダケースに設置する必要がなく、シリンダ室内と圧力スイッチとを連絡する配管の届く限り、自由な場所に設置することができる。従って、バネブレーキシリンダの取付スペースに制約を受ける状況であっても、検知精度の良いバネブレーキ緩め検知機構を容易に備えることができる。また、圧力スイッチの設置箇所として比較的振動の少ない位置を選択することで、その検知精度も確保できる。
【0051】
第2の発明によると、バネブレーキシリンダの取付スペースに大きな制約を受ける場合でも、検知精度の良いバネブレーキ緩め検知機構を容易に備えることができる。また、圧力スイッチを周囲の比較的振動の少ない場所(例えば、空気配管ホースの外壁など)に設置することで、その検知精度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのブレーキキャリパ装置の一部断面を含む模式図。
【図2】ブレーキキャリパ装置の具体的な構成を示す正面図一部断面図。
【図3】同じく側面図。
【図4】バネブレーキシリンダのバネブレーキ緩め状態を示す断面図。
【図5】同じくバネブレーキ作用状態を示す断面図。
【図6】ブレーキの手動開放状態を示す断面図。
【図7】バネブレーキシリンダと圧力スイッチとの第一接続例を示す図。
【図8】第二接続例を示す図。
【図9】第三接続例を示す図。
【符号の説明】
1 ブレーキキャリパ装置
3 車軸
4 ディスク
5 キャリパボディ
8 制輪子
9 レバー
20 バネブレーキシリンダ
20a シリンダケース
20e 空気圧室
20f バネ室
20h 大気孔
20j 開口
27 圧力スイッチ
Claims (5)
- シリンダケースと、
該シリンダケースの内部空間をバネ室と空気圧室とに区画するピストンと、を含むバネブレーキシリンダにおいて、
該シリンダケースの内壁には、該シリンダケースの内部空間と圧力スイッチとを連絡するように開口を備え、
当該開口が、バネブレーキ緩め状態では前記空気圧室に臨み、バネブレーキ作用状態ではバネ室に臨むように構成し、
更に前記シリンダケースには、前記バネ室を大気圧に保つための大気孔を備え、
前記バネ室には、前記ピストンを付勢するためのバネが収納されており、
前記開口は、バネブレーキ緩め状態における前記ピストンの位置と、バネブレーキ作用状態における前記ピストンの位置との間であり、且つ、バネブレーキ緩め状態での前記ピストンに近い位置に配置されており、
当該バネブレーキ緩め状態での前記ピストンの位置は、前記バネのバネ力に抗する向きのストローク終端であることを特徴とするバネブレーキシリンダ。 - 前記バネ室には、前記ピストンを付勢するためのバネが収納されており、
前記空気圧室に圧縮空気を導入しない状態であるときは、前記バネによって前記ピストンが押動される結果、伸張してバネブレーキ作用状態となり、
前記空気圧室に圧縮空気を導入すると、発生する空気圧によって前記ピストンは前記バネのバネ力に抗する向きに変位し、縮退してバネブレーキ緩め状態となることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のバネブレーキシリンダ。 - 請求項1または2に記載のバネブレーキシリンダを備えるブレーキキャリパ装置であって、前記バネブレーキシリンダは、車軸側のディスクと径方向に並び、キャリパボディを貫通するように前記ディスクの軸方向と軸心をほぼ平行にして配設されていることを特徴とする、ブレーキキャリパ装置。
- 前記キャリパボディは、上側の支持部を有し、
当該支持部は車両の台車部分に設けられたブレーキ取付面に固設され、且つ、前記支持部には貫通路が設けられており、
前記バネブレーキシリンダは、前記貫通路を挿通した状態で設けられていることを特徴とする請求項3に記載のブレーキキャリパ装置。 - バネブレーキシリンダを備えるブレーキキャリパ装置であって、
前記バネブレーキシリンダは、シリンダケースと、該シリンダケースの内部空間をバネ室と空気圧室とに区画するピストンと、を含み、
該シリンダケースの内壁には、該シリンダケースの内部空間と圧力スイッチとを連絡するように開口を備え、
当該開口が、バネブレーキ緩め状態では前記空気圧室に臨み、バネブレーキ作用状態ではバネ室に臨むように構成し、
更に前記シリンダケースには、前記バネ室を大気圧に保つための大気孔を備え、
前記バネブレーキシリンダは、車軸側のディスクと径方向に並び、キャリパボディを貫通するように前記ディスクの軸方向と軸心をほぼ平行にして配設されており、
前記キャリパボディは、上側の支持部を有し、
当該支持部は車両の台車部分に設けられたブレーキ取付面に固設され、且つ、前記支持部には貫通路が設けられており、
前記バネブレーキシリンダは、前記貫通路を挿通した状態で設けられていることを特徴とする、ブレーキキャリパ装置。
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