JP4131882B2 - 半導体発光素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、発光ダイオード、半導体レーザ素子等の半導体発光素子は、GaAs、GaN等の直接遷移型の化合物半導体材料により形成されている。しかし、これらの化合物半導体材料の中には、有害性を有する元素や、埋蔵量の少ない元素が含まれており、環境や資源の点から課題が生じつつある。
【0003】
一方、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)やゲルマニウム(Ge)は、無害であり、しかもSi、Cは埋蔵量が豊富であるため、種々の半導体素子に用いられているが、間接遷移型半導体であるため、発光ダイオード、半導体レーザ素子等の半導体発光素子への応用は困難であると考えられていた。
【0004】
しかし、最近、Si、SiCまたはGeの微粒子からなる活性層を有する高効率可視の発光素子が報告されている。この発光素子では、Si、SiCまたはGeの微粒子の量子効果および表面効果により発光が可能になっているものと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の無秩序に分散したSi、SiCまたはGeの微粒子を用いた発光素子では、レーザ発振は行われない。そこで、間接遷移型半導体材料を用いてレーザ発振が可能な半導体発光素子を実現することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、間接遷移型半導体材料によりレーザ発振を行うことができる半導体発光素子およびその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明に係る半導体発光素子は、量子サイズを有する複数の半導体ドットがフォトニック結晶を構成するように半導体または絶縁体からなる複数の媒体層中に周期的に形成され、複数の媒体層は半導体または導体からなる電極層を介して積層され、積層された複数の媒体層の中央部の領域を除く周囲の領域で複数の半導体ドットが媒体層中での発光波長に等しい周期で複数の媒体層中に配列されかつ複数の媒体層が媒体層中での発光波長に等しい周期で積層され、積層された複数の媒体層の中央部の領域での半導体ドットの配列周期および媒体層の積層周期が周囲の領域での半導体ドットの配列周期および媒体層の積層周期と異なるものである。各半導体ドットは複数の微粒子の集合体であってもよい。特に、複数の媒体層間に半導体ドットの周期性を損なわないように電極層を挿入することが好ましい。
【0008】
量子サイズとは、量子効果が発生する寸法であり、数nm(ナノメータ)から数十nmの寸法である。
【0009】
この半導体発光素子においては、各半導体ドットが量子サイズを有するので、発光効率の高い量子準位または界面準位が形成される。それにより、量子準位または界面準位間での注入キャリア(電子および正孔)の遷移により光が放出される。
【0010】
また、複数の半導体ドットが媒体層中に周期的に配列されているので、短距離(数周期)においては、各半導体ドットの発光が互いに干渉し、それにより遷移確率が向上する。さらに、長距離においては、フォトニック結晶を構成するので、半導体ドットの配列周期と等しい波長でのみ光が透過せずに光の反射が生じて共振器が形成される。これらの結果、半導体ドットの発光波長のうちで、半導体ドットの配列周期に対応する特定波長のレーザ発振が可能となる。しかも、バルク結晶で間接遷移型となる半導体材料により半導体ドットを形成した場合でも、レーザ発振が行われる。
【0011】
また、複数の半導体ドットが各媒体層中に2次元的に一定の周囲で配列されるとともに積層方向にも一定の周期で配列されるので、電極層を介して複数の半導体ドットにキャリアを注入することにより、媒体層の表面に平行な方向および媒体層の積層方向に3次元的にレーザ光が出射される。
【0012】
この場合、積層された複数の媒体層の中央部の領域で半導体ドットの周期性および複数の媒体層の積層周期をずらせることにより、発生した光が中央部の領域では透過し、周囲の領域では透過せずに反射する。その結果、反射鏡を設けることなく特定波長のレーザ発振が可能となる。
【0019】
本発明に係る半導体発光素子の製造方法は、半導体または導体からなる電極基板上に半導体または絶縁体からなる媒体層を形成し、媒体層中に量子サイズを有する複数の半導体ドットをフォトニック結晶が構成されるように周期的に形成し、媒体層上に半導体または導体からなる電極層を形成し、媒体層の形成、複数の半導体ドットの形成および電極層の形成を交互に繰り返し行うことにより、複数の媒体層を電極層を介して積層し、積層された複数の媒体層の中央部の領域を除く周囲の領域で複数の半導体ドットを媒体層中での発光波長に等しい周期で複数の媒体層に配列しかつ複数の媒体層を媒体層中での発光波長に等しい周期で積層し、積層された複数の媒体層の中央部の領域での半導体ドットの配列周期および媒体層の積層周期を周囲の領域での半導体ドットの配列周期および媒体層の積層周期と異ならせるものである。
【0020】
本発明に係る半導体発光素子の製造方法によれば、量子サイズを有する複数の半導体ドットが周期的に配列されたフォトニック結晶が得られる。それにより、各半導体ドットの量子効果および複数の半導体ドットからなるフォトニック結晶によりレーザ発振が可能となる。
【0021】
また、複数の半導体ドットが各媒体層中に2次元的に一定の周囲で配列されるとともに積層方向にも一定の周期で配列されるので、電極層を介して複数の半導体ドットにキャリアを注入することにより、媒体層の表面に平行な方向および媒体層の積層方向に3次元的にレーザ光が出射される。
【0022】
この場合、積層された複数の媒体層の中央部の領域で半導体ドットの周期性および複数の媒体層の積層周期をずらせることにより、発生した光が中央部の領域では透過し、周囲の領域では透過せずに反射する。その結果、反射鏡を設けることなく特定波長のレーザ発振が可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る半導体発光素子の一例を示し、(a)は半導体発光素子の模式的縦断面図、(b)は半導体発光素子の模式的横断面図、(c)は1つの半導体ドットの模式的断面図である。
【0027】
図1(a)に示すように、複数の媒体層100が一定周期で積層されている。媒体層100は、発光波長の吸収が少ない半導体または絶縁体により形成される。また、図1(b)に示すように、各媒体層100中に複数の半導体ドット101が2次元的に一定の周期で配列されている。図1の例では、各半導体ドット101は六方格子の格子点に配列されている。
【0028】
各半導体ドット101は数nmから数十nmの寸法を有し、図1(c)に示すように、1つの半導体ドット101は数nmから十数nm程度の大きさの複数の微粒子110の集合体からなる。
【0029】
積層された複数の媒体層100の中央部の領域200を除く周囲の領域では、媒体層100中での発光波長に等しい周期で複数の半導体ドット101が配列され、媒体層100中での発光波長に等しい周期で複数の媒体層100が積層されている。すなわち、複数の媒体層100の中央部の領域200での半導体ドット101の配列周期および媒体層100の積層周期は周囲の領域での半導体ドット101の配列周期および媒体層100の積層周期と異なる。
【0030】
積層された複数の媒体層101の上面および下面にはそれぞれ電極102,103が設けられている。これらの電極102,103を介して媒体層100中の半導体ドット101に電子・正孔キャリアが注入される。
【0031】
この半導体発光素子の製造の際には、中央部の領域200および周囲の領域をマスクを用いて別々の工程で形成する。
【0032】
以下、本発明に係る半導体発光素子の一例として半導体レーザ素子の製造方法について説明する。以下の説明では、図1の中央部の領域200を除く周囲の領域の製造方法を示している。中央部の領域200の製造方法は、半導体ドット101の配列周期および媒体層1の積層周期を除いて周囲の領域の製造方法と同様である。
【0033】
図2および図3は本発明の第1の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、Si基板1上に、熱酸化法、CVD法(化学的気相成長法)、スパッタリング法等により膜厚数十nmの酸化シリコン層2aを形成する。
【0035】
次に、図2(b)に示すように、酸化シリコン層2a中に、イオン注入によりGeを酸化シリコン層2aの厚さの半分の深さで最大濃度となるようなエネルギーで過飽和に導入し、膜厚数十nmのGe過飽和層3aを形成する。イオン注入の条件としては、例えばGeイオンの加速エネルギーを十数〜数keVとし、ドーズ量を1015〜1017cm-2とする。この場合、Ge過飽和層3a中のGeの濃度は数原子%〜数十原子%となる。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、酸化シリコン層2aに、エキシマレーザ光、自由電子レーザ光、放射光等の同一光源から分岐した短い波長の可干渉光L1,L2を2方向から互いに角度θ1をなすように照射して干渉縞を形成するとともに、上記干渉縞と角度θ3(図示せず)をなすような干渉縞を同様の可干渉光を2方向から互いに角度θ2(図示せず)をなすように照射して形成し、酸化シリコン層2aに酸化シリコン中での発光波長と等しい空間波長の間隔の互いに交わる格子状の干渉縞を形成する。それにより、互いに交わる干渉縞の交点の強度ピーク位置におけるGe過飽和層3aのGe濃度が最大となる深さに数nm〜十数nmの大きさを有するGeドット4が光励起により析出する。
【0037】
なお、酸化シリコン中の光の波長は真空中での光の波長を酸化シリコンの屈折率1.46で除した値となるので、酸化シリコン中の可干渉光の波長は真空中での可干渉光の波長を酸化シリコンの屈折率1.46で除した値となる。この場合、2方向の可干渉光L1,L2がなす角度θ1,θ2および可干渉光L1,L2の波長は、Geドット4の配列周期d1,d2が酸化シリコン中での発光波長と等しくなるように選択する。なお、配列周期d1,d2は、Si基板1の表面に平行な面内で互いに交わる方向における周期であり、図には配列周期d1のみが示される。
【0038】
例えば、真空中でのレーザ発光を0.52μmの緑色光とすると、酸化シリコン中でのレーザ光の波長は0.39μmの紫色光となり、0.39μm周期の干渉縞を形成するためには、これより短い波長の紫外光を可干渉光として用いる。また、干渉縞の交点以外の場所で析出が起こらないように、入射光はパルス状として瞬間的に励起する。このようにして、Ge過飽和層3a中に2次元格子状に複数のGeドット4が形成される。
【0039】
その後、図3(d)に示すように、酸化シリコン層2a上に、スパッタリング法、CVD法、スプレー法等により酸化インジウム・スズ等の透明電極層4bを堆積する。次に、この透明電極層4b上に膜厚数十nmの酸化シリコン層2bを形成する。さらに、図3(e)に示すように、図2(c)の工程と同様にして、酸化シリコン層2b中に膜厚数十nmのGe過飽和層3bを形成し、Ge過飽和層3b中に複数のGeドット4を2次元格子状に形成する。
【0040】
同様にして、図3(f)に示すように、酸化シリコン層2b上に透明電極層4cを堆積し、透明電極層4c上に膜厚数十nmの酸化シリコン層2cを形成し、酸化シリコン層2c中に膜厚数十nmのGe過飽和層3cを形成し、Ge過飽和層3c中に複数のGeドット4を2次元格子状に形成する。
【0041】
この場合、複数のGe過飽和層3a,3b,3c中のGeドット4の上下方向の配列周期d3が酸化シリコン層2a,2b,2cおよび透明電極層4a,4b,4cからなる多層膜中での発光波長と等しくなるように酸化シリコン層2a,2b,2cおよび透明電極層4a,4b,4cの膜厚を設定する。このようにして、複数のGeドット4が3次元格子状に配列され、3次元のフォトニック結晶が構成される。
【0042】
最後に、酸化シリコン層2c上に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、CVD法等によりAu、Al、酸化インジウム・スズ等からなる電極5を形成するとともに、Si基板1の下面に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、CVD法等によりAu、Al等からなる電極6を形成する。
【0043】
本実施例の半導体レーザ素子において、電極5,6からSi基板1および酸化シリコン層2a,2b,2cに電流を注入すると、複数のGeドット4に電子・正孔キャリアが注入される。各Geドット4は数nmの寸法を有するので、量子効果による量子準位あるいは酸化シリコン層との界面準位が形成され、量子準位あるいは界面準位間での注入キャリアの遷移について近距離のGeドット間の相互作用により高効率で光が放出される。また、複数のGeドット4によりフォトニック結晶が構成されるので、複数のGeドット4の配列周期と等しい波長でのみ光の干渉が起こり、発光の位相が揃ってレーザ発振が行われる。
【0044】
なお、本実施例の半導体レーザ素子では、互いに直交する3方向にレーザ光が出射するが、3方向のうち1方向または2方向におけるGeドット4の配列周期をずらせることにより、1方向または2方向にのみレーザ光を出射させることができる。
【0045】
また、図2および図3の例では、Geドット4を含むGe過飽和層3a,3b,3cが上下方向に3層に積層されているが、積層の数はこれに限定されない。上下方向においても発光の位相を十分に揃えるためには、上下方向の積層の数を5〜10以上にすることが好ましい。
【0046】
Geドット4を含むGe過飽和層3aを1層のみ設けた場合には、そのGe過飽和層3aの表面に平行な方向にレーザ光が出射される。
【0047】
上記では、Geの過飽和層を形成して可干渉光の干渉縞の照射によりGeドットを周期構造に析出させているが、上記のGeの代わりに、Si、Cあるいはそれらを混合したSi−C−Geの過飽和層を形成して可干渉光の干渉縞の照射によりSi、SiCあるいはSi−C−Geドットを、同様にして周期構造に析出させてもよい。
【0048】
図4、図5および図6は本発明の第2の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【0049】
まず、図4(a)に示すように、Si基板21上に、熱酸化法、CVD法(化学的気相成長法)、スパッタリング法等により膜厚数百nmの酸化シリコン膜22aを形成する。
【0050】
その後、図4(b)に示すように、ハロゲン系ガス等のエッチング性ガスeを供給しながら、酸化シリコン膜22aに、エキシマレーザ光、自由電子レーザ光、放射光等の可干渉光L3,L4を2方向から互いに角度θ1をなすように照射して干渉縞を形成するとともに、上記干渉縞と角度θ3(図示せず)をなすような干渉縞を同様の可干渉光を2方向から角度θ2(図示せず)をなすように照射して形成し、酸化シリコン膜22aに発光波長に対応する酸化シリコン中での空間波長の間隔の互いに交わる格子状の干渉縞を形成する。それにより、互いに交わる干渉縞の交点の強度ピーク位置の酸化シリコン膜22aが光励起によりエッチングされ、酸化シリコン中での発光波長と等しい空間波長の周期d1,d2で酸化シリコン膜22aに数nm〜数百nmの大きさの複数の孔23がマトリクス状に形成される。
【0051】
さらに、図4(c)に示すように、Siの水素化物のガス、Cの水素化物のガスおよびGeの水素化物のガスを含む堆積原料ガスgを供給しながら、図4(b)の工程と同様にして、酸化シリコン膜22aに、可干渉光L5,L6を2方向から互いに角度θ1をなすように照射するとともに、上記干渉縞と角度θ3をなすような干渉縞を可干渉光を2方向から互いに角度θ2をなすように照射して形成し、酸化シリコン膜22aに形成された孔23に一致するように互いに角度θ3をなす格子状の干渉縞を形成する。それにより、酸化シリコン膜22aの孔23内に光励起CVDにより厚さサブnm〜数nmのSi−C−Geドット24が堆積する。このようにして、酸化シリコン膜22aに複数のSi−C−Geドット24が2次元周期的に格子状に形成される。ここで、サブnmは、0.数nmである。
【0052】
次に、図5(d)に示すように、酸化シリコン膜22a上に膜厚数百nmのSi層25を形成し、Si層25上に熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等により膜厚数十nmの酸化シリコン膜22bを形成する。
【0053】
さらに、図5(e)に示すように、図4(b),(c)の工程と同様にして、酸化シリコン膜22bに複数の孔23を2次元周期的に形成し、複数の孔23内に膜厚サブnm〜数nmのSi−C−Geドット24を形成する。
【0054】
同様にして、図6(f)に示すように、酸化シリコン膜22b上に膜厚数百nmのSi層26および膜厚数十nmの酸化シリコン膜22cを順に形成し、酸化シリコン膜22cに複数の孔23を2次元周期的に形成し、複数の孔23内に膜厚サブnm〜数nmのSi−C−Geドット24を形成する。
【0055】
この場合、複数の酸化シリコン膜22a,22b,22c中のSi−C−Geドット24の上下方向の配列周期d3が酸化シリコン膜22a,22b,22cおよびSi層25,26による多層膜中での発光波長と等しくなるように酸化シリコン膜22a,22b,22cおよびSi層25,26の膜厚を設定する。このようにして、複数のSi−C−Geドット24が3次元周期的に配列され、3次元のフォトニック結晶が構成される。
【0056】
次に、図6(g)に示すように、酸化シリコン膜22c上に膜厚数百nmのSi層27を形成した後、Si層27上に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等によりAu、Al、酸化インジウム・スズ等からなる電極28を形成するとともに、Si基板21の下面に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等によりAu、Al、酸化インジウム・スズ等からなる電極29を形成する。
【0057】
本実施例の半導体レーザ素子において、電極28,29からSi基板21およびSi層25,26,27に電流を注入すると、複数のSi−C−Geドット24に電子・正孔キャリアが注入される。各Si−C−Geドット24は数nmの大きさを有するので、量子効果による量子準位あるいは界面準位が形成され、量子準位あるいは界面準位間での注入キャリアの遷移により光が放出される。また、複数のSi−C−Geドット24が周期的に配列されているので、複数のSi−C−Geドット24の配列周期と等しい波長で選択的に発光の効率が上がりかつレーザ発振が行われる。
【0058】
なお、本実施例の半導体レーザ素子においても、互いに直交する3方向にレーザ光が出射するが、3方向のうち1方向または2方向におけるSi−C−Geドット24の配列周期をずらせることにより、1方向または2方向にのみレーザ光を出射させることができる。
【0059】
また、図4〜図6の例では、Si−C−Geドット24を含む酸化シリコン膜22a,22b,22cを上下方向に3層に積層しているが、積層の数はこれに限定されない。上下方向においても発光の位相を十分に揃えるためには、上下方向の積層の数を5〜10以上にすることが好ましい。
【0060】
Si−C−Geドット24を含む酸化シリコン膜22aを1層のみ設けた場合には、その酸化シリコン膜22aの表面に平行な方向にレーザ光が出射される。
【0061】
図7、図8および図9は本発明の第3の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【0062】
まず、図7(a)に示すように、Si基板31上に、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等により膜厚数十nmの酸化シリコン膜32aを形成する。
【0063】
次に、図7(b)に示すように、酸化シリコン膜32aに、10keVで加速されたGa(ガリウム)イオンからなる集束イオンビームb1を数nm〜数百nmの直径に絞って酸化シリコン膜32aに照射するとともに、ガスノズル50からハロゲン系ガス等のエッチング性ガスg1を集束イオンビームb1と同じ箇所に照射し、酸化シリコン膜32aにイオン誘起により直径数十nm〜数百nmの孔33を形成する。この操作を順次繰り返すことにより、酸化シリコン膜32aに複数の孔33を発光波長に対応する酸化シリコン中での空間波長の周期d1,d2でマトリクス状に形成する。
【0064】
その後、図7(c)に示すように、酸化シリコン膜32aに形成された各孔33に10keVで加速されたGaイオンからなる集束イオンビームb2を照射するとともに、ガスノズル51からSiの水素化物のガス、Cの水素化物のガスおよびGeの水素化物のガスを含む堆積原料ガスg2を照射し、各孔33内にイオン誘起により膜厚サブnm〜数nmのSi−C−Geドット34をエピタキシャル成長させる。このようにして、酸化シリコン膜32aに複数のSi−C−Geドット34が2次元周期的に格子状に形成される。
【0065】
次に、図8(d)に示すように、酸化シリコン膜32a上に膜厚数百nmのSi層35を形成し、Si層35上に熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等により膜厚数十nmの酸化シリコン膜32bを形成する。
【0066】
さらに、図8(e)に示すように、図7(b),(c)の工程と同様にして、酸化シリコン膜32bに複数の孔33を2次元周期的に形成し、各孔33内に膜厚サブnm〜数nmのSi−C−Geドット34を形成する。
【0067】
次に、図9(f)に示すように、酸化シリコン膜32b上に膜厚数百nmのSi層36および膜厚数十nmの酸化シリコン膜32cを順に形成し、図7(b),(c)の工程と同様にして、酸化シリコン膜32cに複数の孔33を2次元周期的に形成し、各孔33内に膜厚サブnm〜数nmのSi−C−Geドット34を形成する。
【0068】
この場合、複数の酸化シリコン膜32a,32b,32c中のSi−C−Geドット34の上下方向の配列周期d4が酸化シリコン膜32a,32b,32cおよびSi層35,36による多層膜中での発光波長と等しくなるように酸化シリコン膜32a,32b,32cおよびSi層35,36の膜厚を設定する。このようにして、複数のSi−C−Geドット34が3次元周期的に配列され、3次元のフォトニック結晶が構成される。
【0069】
次に、図9(g)に示すように、酸化シリコン膜32c上に膜厚数百nmのSi層37を形成した後、Si層37上に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等によりAu、Al、酸化インジウム・スズ等からなる電極38を形成するとともに、Si基板31の下面に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等によりAu、Al等からなる電極39を形成する。
【0070】
本実施例の半導体レーザ素子において、電極38,39からSi基板31およびSi層35,36,37に電流を注入すると、複数のSi−C−Geドット34にキャリアが注入される。各Si−C−Geドット34は数nmの大きさを有するので、量子効果により量子準位あるいは界面準位が形成され、量子準位あるいは界面準位間での注入キャリアの遷移により光が放出される。また、Si−C−Geドット34が周期的に配列されているので、複数のSi−C−Geドット34の配列周期と等しい波長でのみ選択的に発光の効率が上がりかつレーザ発振が行われる。
【0071】
なお、本実施例の半導体レーザ素子においても、互いに直交する3方向にレーザ光が出射するが、3方向のうち1方向または2方向におけるSi−C−Geドット34の配列周期をずらせることにより、1方向または2方向にのみレーザ光を出射させることができる。
【0072】
また、図7〜図9の例では、Si−C−Geドット34を含む酸化シリコン膜32a,32b,32cを上下方向に3層に積層しているが、積層の数はこれに限定されない。上下方向においても発光の位相を十分に揃えるためには、上下方向の積層の数を5〜10以上にすることが好ましい。
【0073】
Si−C−Geドット34を含む酸化シリコン膜32aを1層のみ設けた場合には、その酸化シリコン膜32aの表面に平行な方向にレーザ光が出射される。
【0074】
図10および図11は本発明の第4の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【0075】
まず、図10(a)に示すように、Si基板41上に、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等により膜厚数十nmの酸化シリコン膜42aを形成する。
【0076】
次に、図10(b)に示すように、酸化シリコン膜42aに、集束イオンビームb3によりSi、CまたはGeを注入し、注入部43を形成する。注入部43の位置は、フォトニック結晶を構成する格子点であり、注入深さは、酸化シリコン膜42a厚さの半分の深さ付近である。Geイオンの場合の注入エネルギーは、十数〜数keVであり、注入量は、1015〜1017cm-2である。
【0077】
その後、図10(c)に示すように、加熱処理により酸化シリコン膜42aの注入部43の原子を析出させ、数nm〜数十nmの大きさの半導体ドット44を周期的に形成する。Siの場合の加熱温度は、1000〜1400℃である。
【0078】
次に、図11(d)に示すように、酸化シリコン膜42a上に膜厚数百nmのSi層45を形成した後、図10(a),(b),(c)の工程と同様にして、Si層45上に酸化シリコン膜42b、Si層46および酸化シリコン膜42cを順に形成するとともに、複数の酸化シリコン膜42a,42b,42c中に半導体ドット44を周期的に形成する。
【0079】
この場合、複数の酸化シリコン膜42a,42b,42c中の半導体ドット44の上下方向の配列周期d5が酸化シリコン膜42a,42b,42cおよびSi層45,46による多層膜中での発光波長と等しくなるように酸化シリコン膜42a,42b,42cおよびSi層45,46の膜厚を設定する。このようにして、複数の半導体ドット44が3次元周期的に配列され、3次元のフォトニック結晶が構成される。
【0080】
次に、図11(e)に示すように、酸化シリコン膜42c上に膜厚数百nmのSi層47を形成した後、Si層47上に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等によりAu、Al、酸化インジウム・スズ等からなる電極48を形成するとともに、Si基板41の下面に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ法等によりAu、Al等からなる電極49を形成する。
【0081】
上記では、Geの集束イオンビームを用い、Geドットを周期的に配列しているが、上記のGeの代わりに、Si、Cあるいはそれらを組合せてSi、SiCまたはSi−C−Geドットを周期的に配列してもよい。
【0082】
本実施例の半導体レーザ素子において、電極48,49からSi基板41およびSi層45,46,47に電流を注入すると、複数の半導体ドット44にキャリアが注入される。各半導体ドット44は数nmの大きさを有するので、量子効果により量子準位あるいは界面準位が形成され、量子準位あるいは界面準位間での注入キャリアの遷移により光が放出される。また、半導体ドット44が周期的に配列されているので、複数の半導体ドット44の配列周期と等しい波長でのみ選択的に発光の効率が上がりかつレーザ発振が行われる。
【0083】
なお、本実施例の半導体レーザ素子においても、互いに直交する3方向にレーザ光が出射するが、3方向のうち1方向または2方向における半導体ドット44の配列周期をずらせることにより、1方向または2方向にのみレーザ光を出射させることができる。
【0084】
また、図10および図11の例では、半導体ドット44を含む酸化シリコン膜42a,42b,42cを上下方向に3層に積層しているが、積層の数はこれに限定されない。上下方向においても発光の位相を十分に揃えるためには、上下方向の積層の数を5〜10以上にすることが好ましい。
【0085】
半導体ドット44を含む酸化シリコン膜42aを1層のみ設けた場合には、その酸化シリコン膜42aの表面に平行な方向にレーザ光が出射される。
【0086】
上記のように、第1、第2、第3および第4の実施例の半導体レーザ素子では、Si系の間接遷移型半導体材料を用いることによりレーザ発振が可能となる。したがって、半導体レーザ素子をSiからなる集積回路に集積化することができる。また、周期構造による発光体内での選択則を用いることにより特定の波長での光の誘起・反射が行われているので、発光効率が向上し、また、反射鏡が不要となる。したがって、半導体レーザ素子の設計の自由度が増すとともに、反射面の劣化による素子特性の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る半導体発光素子の一例を示す模式的縦断面図、模式的横断面図および半導体ドットの模式的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図9】本発明の第3の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図10】本発明の第4の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【図11】本発明の第4の実施例における半導体レーザ素子の製造方法を示す模式的工程断面図である。
【符号の説明】
1,21,31,41 Si基板
2a,2b,2c 酸化シリコン層
3a,3b,3c Ge過飽和層
4 Geドット
4b,4c 透明電極層
5,6,28,29,38,39,48,49 電極
22a,22b,22c,32a,32b,32c,42a,42b,42c酸化シリコン膜
23,33 孔
24,34 Si−C−Geドット
44 半導体ドット
Claims (3)
- 量子サイズを有する複数の半導体ドットがフォトニック結晶を構成するように半導体または絶縁体からなる複数の媒体層中に周期的に形成され、前記複数の媒体層は半導体または導体からなる電極層を介して積層され、
前記積層された複数の媒体層の中央部の領域を除く周囲の領域で前記複数の半導体ドットが前記媒体層中での発光波長に等しい周期で前記複数の媒体層中に配列されかつ前記複数の媒体層が前記媒体層中での発光波長に等しい周期で積層され、前記積層された複数の媒体層の中央部の領域での前記半導体ドットの配列周期および前記媒体層の積層周期が周囲の領域での前記半導体ドットの配列周期および前記媒体層の積層周期と異なることを特徴とする半導体発光素子。 - 各半導体ドットは複数の微粒子の集合体であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
- 半導体または導体からなる電極基板上に半導体または絶縁体からなる媒体層を形成し、前記媒体層中に量子サイズを有する複数の半導体ドットをフォトニック結晶が構成されるように周期的に形成し、前記媒体層上に半導体または導体からなる電極層を形成し、
前記媒体層の形成、前記複数の半導体ドットの形成および前記電極層の形成を交互に繰り返し行うことにより、前記複数の媒体層を前記電極層を介して積層し、
前記積層された複数の媒体層の中央部の領域を除く周囲の領域で前記複数の半導体ドットを前記媒体層中での発光波長に等しい周期で前記複数の媒体層に配列しかつ前記複数の媒体層を前記媒体層中での発光波長に等しい周期で積層し、前記積層された複数の媒体層の中央部の領域での前記半導体ドットの配列周期および前記媒体層の積層周期を周囲の領域での前記半導体ドットの配列周期および前記媒体層の積層周期と異ならせることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
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