JP3630881B2 - 3族窒化物半導体発光素子の製造方法 - Google Patents

3族窒化物半導体発光素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は発光効率等の素子特性を向上させた3族窒化物半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、3族窒化物半導体発光素子として、バルク構造の発光層の他に超薄膜多層構造の量子井戸構造を発光層とする発光素子が知られている。量子井戸構造の発光素子は、注入されたキャリア(電子及び正孔)が量子井戸層内に局在化し、キャリアの自由度が1つ減ることにより、キャリアは2次元的となり量子サイズ効果を生じる。この量子サイズ効果により発光効率等の素子特性が向上する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
バルク構造の発光層に比べれば、上記の量子井戸構造の発光効率は向上する。しかし、量子井戸構造は量子井戸層に電子及び正孔は2次元的に閉じ込められるに過ぎないために発光効率の向上には限界がある。そこで、発光効率の良い発光層の構造を与えることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
また、請求項1に示すように、量子細線構造の発光層をもつ3族窒化物半導体発光素子の製造方法として、窒素をイオンインプランテーションすることによりストライプ状の高抵抗領域を形成し、その後熱処理により高抵抗領域を拡張して高抵抗領域に挟まれた非高抵抗領域を所定の幅に形成することにより発光層を量子細線構造にすることを特徴とする。
また、請求項2に示すように、量子箱構造の発光層をもつ3族窒化物半導体発光素子の製造方法として、窒素をイオンインプランテーションすることにより格子状の高抵抗領域を形成し、その後熱処理により高抵抗領域を拡張して高抵抗領域に囲まれた所定の大きさの非高抵抗領域を形成することにより発光層を量子箱構造にすることを特徴とする。
また、請求項3に示すように、一旦量子細線構造を形成してその後量子箱構造にすることを特徴とする。
【0006】
また、請求項4に示すように、請求項1の製造方法において、窒素をイオンインプランテーションすることにより形成されるストライプ状の高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅を100〜1000nmとし、その後熱処理をして拡張した高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅を10nm以下とすることを特徴とする。
また、請求項5に示すように、請求項2の製造方法において、窒素をイオンインプランテーションすること形成される格子状の高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一辺は100〜1000nmとし、その後熱処理をして拡張した高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一辺を10nm以下とすることを特徴とする。
また、請求項6に示すように、一旦量子細線構造を形成してその後量子箱構造にすることを特徴とする。
【0008】
【発明の作用及び効果】
族窒化物半導体発光素子の発光層を量子細線構造にすることにより、注入されたキャリア(電子及び正孔)が量子細線構造となった量子井戸層内に局在化する。また、キャリアの自由度は量子井戸構造よりさらに1つ減ってキャリアは1次元的となり量子井戸構造よりも強く量子サイズ効果を生じる。そして、キャリアの局在化および量子サイズ効果により発光効率等の素子特性が向上する。
また、3族窒化物半導体発光素子の発光層を量子箱構造にすることにより、注入されたキャリア(電子及び正孔)が量子箱構造となった量子井戸層内に局在化する。また、キャリアの自由度が量子井戸構造より2つ減ってキャリアは0次元的となり量子井戸構造あるいは量子細線構造よりも強く量子サイズ効果を生じる。そして、キャリアの局在化および量子サイズ効果により発光効率等の素子特性が向上する。
【0009】
請求項1に示すように、量子井戸構造の発光素子に窒素をイオンインプランテーションすることによりストライプ状の高抵抗領域を作製し、その後熱処理にて高抵抗領域を拡張することにより所定の幅の非高抵抗領域を作製することにより量子細線構造の発光層を形成することができる。
また、請求項2に示すように、量子井戸構造の発光素子に窒素をイオンインプランテーションすることにより格子状の高抵抗領域を作製し、その後熱処理にて高抵抗領域を拡張することにより所定の大きさの非高抵抗領域を作製することにより量子箱構造の発光層を形成することができる。
また、請求項3に示すように、一旦量子細線構造を形成してその後量子箱構造にすることができる。
【0010】
また、請求項4に示すように、請求項1の製造方法において、窒素をイオンインプランテーションすることにより形成されるストライプ状の高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅は100〜1000nmとし、その後熱処理にて高抵抗領域を拡張することにより形成される非高抵抗領域の幅は10nm以下とすることにより量子細線構造の発光層を形成することができる。
また、請求項5に示すように、請求項2の製造方法において、窒素をイオンインプランテーションすることにより形成される格子状の高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一辺は100〜1000nmとし、その後熱処理にて高抵抗領域を拡張することにより形成される非高抵抗領域の幅を10nm以下とすることにより量子箱構造の発光層を形成することができる。
また、請求項6に示すように、一旦量子細線構造を形成してその後量子箱構造にすることができる
って、請求項1乃至請求項6の製造方法によって、量子細線構造又は量子箱構造の3族窒化物半導体発光素子を製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
図1は、第1の実施例である、発光層が量子細線構造である3族窒化物半導体発光素子100の全体図を示す。発光素子100は、サファイア基板1を有しており、そのサファイア基板1上に50nmのAlN バッファ層2が形成されている。
【0012】
そのバッファ層2の上には、順に、膜厚約4.0μm、電子濃度2×1018/cm、シリコン(Si)濃度4×1018/cmのシリコン(Si)ドープGaN から成る高キャリア濃度n層3、膜厚0.5μm、電子濃度5×1017/cm、シリコン(Si)濃度1×1018/cmのシリコン(Si)ドープGaN から成るn層4、全膜厚が35nmのAlGaN 及びシリコン(Si)及び亜鉛(Zn)がそれぞれ5×1018/cmドーピングされたInGaN から成る量子細線構造の発光層5、膜厚10nm、ホール濃度2×1017/cm、マグネシウム(Mg)濃度5×1019/cmのマグネシウム(Mg)ドープAl0.08Ga0.92N から成るp伝導形クラッド層71、膜厚35nm、ホール濃度3×1017/cm、マグネシウム(Mg)濃度5×1019/cmのマグネシウム(Mg)ドープGaN から成る第1コンタクト層72、膜厚5nm、ホール濃度6×1017/cm、マグネシウム(Mg)濃度1×1020/cmのマグネシウム(Mg)ドープGaN から成る第2コンタクト層73が形成されている。そして、第2コンタクト層73上面全体にNi/Au から成る透明電極9が形成され、その透明電極9の隅の部分にNi/Au ら成るボンディングのためのパッド10が形成されている。又、n層3上にはAlから成る電極8が形成されている。
【0013】
発光層5は、図2に示すように、Al0.05Ga0.95N から成る厚さ5nmのバリア層51、シリコン(Si)及び亜鉛(Zn)がそれぞれ5×1018/cmドーピングされたIn0.20Ga0.80N から成る厚さ5nmの井戸層52が形成されている。高抵抗領域6は、窒素のイオンインプランテーション及びその後の熱処理によりバリア層51及び井戸層52にストライプ状に形成されている。高抵抗領域6は発光層5だけでなくp伝導形クラッド層71及びn層4にも拡がっている。高抵抗領域6で挟まれた井戸層52の中の非高抵抗領域の井戸層52aの幅wは10nmである。また、非高抵抗領域の井戸層52aの厚さtは5nmに形成されているので、非高抵抗領域の井戸層52aは量子細線構造を形成している。
【0014】
次に、この構造の発光ダイオード100の製造方法について説明する。
上記発光ダイオード100は、有機金属化合物気相成長法(以下「MOVPE 」と示す)による気相成長により製造された。
用いられたガスは、NHとキャリアガスH又はNとトリメチルガリウム(Ga(CH)(以下「TMG 」と記す)とトリメチルアルミニウム(Al(CH)(以下「TMA 」と記す)とトリメチルインジウム(In(CH)(以下「TMI 」と記す)とシラン(SiH)とジエチル亜鉛(Zn)(Zn(C)(以下「DEZ 」と記す)とシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C) (以下「CPMg 」と記す)である。
【0015】
まず、有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とし、単結晶のサファイア基板1をMOVPE 装置の反応室に載置されたサセプタに装着する。次に、常圧でHを流速2liter/分で約30分反応室に流しながら温度1100℃でサファイア基板1をベーキングした。
【0016】
次に、温度を400℃まで低下させて、Hを20liter/分、NHを10liter/分、TMA を1.8×10−5モル/分で約90秒間供給してAlN のバッファ層2を約50nmの厚さに形成した。
次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、Hを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を1.7×10−4モル/分、Hガスにて0.86ppmに希釈されたシラン(SiH)を20×10−8モル/分で40分導入し、膜厚約4.0μm、電子濃度1×1018/cm、シリコン(Si)濃度4×1018/cmのシリコン(Si)ドープGaN からなる高キャリア濃度n層3を形成した。
【0017】
上記の高キャリア濃度n層3を形成した後、続いて温度を1100℃に保持し、Hを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を1.12×10−4モル/分、Hガスにて0.86ppmに希釈されたシラン(SiH)を10×10−9モル/分で30分導入し、膜厚0.5μm、電子濃度5×1017/cm、シリコン(Si)濃度1×1018/cmのシリコン(Si)ドープGaN からなるn層4を形成した。
【0018】
その後、サファイア基板1の温度を1100℃に保持し、N又はHを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を0.5×10−4モル/分、TMA を0.8×10−5モル/分で0.5分導入して、膜厚約5nmのAl0.05Ga0.95N から成るバリア層51を形成した。続いて、温度を800℃に保持し、N又はHを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を0.5×10−4モル/分、TMI を1.6×10−4モル/分、Hガスにて0.86ppmに希釈されたシラン(SiH)を0.15×10−8モル/分、DEZ を0.2×10−6モル/分で1.5分間供給して、シリコン(Si)と亜鉛(Zn)がそれぞれ5×1018/cmドーピングされた膜厚約5nmのIn0.20Ga0.80N から成る井戸層52を形成した。このような手順の繰り返しにより、図3に示すように、バリア層51と井戸層52とを交互に3周期だけ積層した多重量子井戸構造で全体の厚さが35nmの発光層5を形成した。この時点では、発光層において量子細線構造は形成されていない。
【0019】
続いて、温度を1100℃に保持し、N又はHを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を0.5×10−4モル/分、TMA を0.47×10−5モル/分、CpMg を2×10−7モル/分で1分間導入して、マグネシウム(Mg)が5×1019/cmドーピングされた、膜厚約5nmのマグネシウム(Mg)ドープAl0.08Ga0.92N からなるクラッド層71を形成した。この時点ではクラッド層71はまだ、抵抗率10Ωm以上の絶縁体である。
【0020】
次に、クラッド層71まで形成されたサファイア基板1上の半導体素子に対して窒素のイオンインプランテーションを行った。これは、イオン注入装置により窒素イオンを加速してクラッド層71に打ち込むことによって行われた。クラッド層71に打ち込まれたイオンは原子核との衝突や電子との相互作用により次第にエネルギを失いながら発光層5に到達する。そして、図2に示すようにイオンを打ち込まれた領域は高抵抗化し、高抵抗化領域6を形成する。イオン注入制御を行うことによって、発光層5における隣合う高抵抗領域6の間隔w、即ち非高抵抗領域の井戸層52aの幅wが500nmとなる高抵抗領域6を形成した。
【0021】
イオン注入終了後、700℃にて5分間熱処理を行った。これにより熱拡散をするので高抵抗領域6は拡張する。拡張した高抵抗領域6により、隣合う高抵抗領域6の間隔wを10nm、即ち非高抵抗領域の井戸層52aの幅wが10nmとなるようにする。井戸層52の厚さtも5nmなので、図2(b)に示すように高抵抗領域6とバリア層51(図2(b)には図示されていないが非高抵抗領域の井戸層52aの上下に存在する)に囲まれた非高抵抗領域の井戸層52aの幅が10nm、厚さが5nmとなり量子細線構造が形成される。
【0022】
次に、クラッド層71の再成長を行う。先程と同じように温度を1100℃に保持し、N又はHを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を0.5×10−4モル/分、TMA を0.47×10−5モル/分、CpMg を2×10−7モル/分で1分間導入して、マグネシウム(Mg)が5×1019/cmドーピングされた、膜厚約nmのマグネシウム(Mg)ドープAl0.08Ga0.92N からなるクラッド層71を形成した。イオンインプランテーション前に形成したクラッド層とあわせて膜厚約10nmのクラッド層71を形成した。この時点ではクラッド層71はまだ、抵抗率10Ωm以上の絶縁体である。
【0023】
次に、温度を1100℃に保持し、N又はHを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を0.5×10−4モル/分、及び、CpMg を2×10−8モル/分で4分間導入して、マグネシウム(Mg)が5×1019/cmドーピングされた、膜厚約35nmのマグネシウム(Mg)ドープのGaN からなる第1コンタクト層72を形成した。この時点では、第1コンタクト層72はまだ、抵抗率10Ωm以上の絶縁体である。
【0024】
次に、温度を1100℃に保持し、N又はHを20liter/分、NHを10liter/分、TMG を0.5×10−4モル/分、CpMg を4×10−8モル/分で1分間導入して、マグネシウム(Mg)が1×1020/cmドーピングされた、膜厚約5nmのマグネシウム(Mg)ドープのGaN からなる第2コンタクト層73を形成した。この時点では、第1コンタクト層73はまだ、抵抗率10Ωm以上の絶縁体である。
【0025】
次に、電子線照射装置を用いて、第2コンタクト層73、第1コンタクト層72及びクラッド層71に一様に電子線を照射した。電子線の照射条件は、加速電圧約10kV、試料電流1μA、ビームの移動速度0.2mm/sec、ビーム径60μmφ、真空度5.0×10−5Torrである。この電子線の照射により、第2コンタクト層73、第1コンタクト層72及びクラッド層71はそれぞれ、ホール濃度6×1017/cm、3×1017/cm、2×1017/cm、抵抗率2Ωcm、1Ωcm、0.7Ωcmのp伝導型半導体となった。このようにして多層構造のウエハを形成することができた。
【0026】
次に、図4に示すように、第2コンタクト層73の上に、スパッタリングによりSiO層11を200nmの厚さに形成し、そのSiO層11上にフォトレジスト12を塗布した。そして、フォトリソグラフにより、図4に示すように、第2コンタクト層73上において、高キャリア濃度n層3に対する電極形成部位A’のフォトレジスト12を除去した。次に、図5に示すように、フォトレジスト12によって覆われていないSiO層11をフッ化水素酸系エッチング液で除去した。
【0027】
次に、フォトレジスト12及びSiO層1によって覆われていない部位の第2コンタクト層73、第1コンタクト層72、クラッド層71、発光層5、n層4を真空度0.04Torr、高周波電力0.44W/cm、BClガスを10ml/分の割合で供給しドライエッチングし、その後Arでドライエッチングした。この工程で、図6に示すように、高キャリア濃度n層3に対する電極取り出しのための孔Aが形成された。その後、フォトレジスト12およびSiO層11を除去した。
【0028】
次に、一様にNi/Au の2層を蒸着し、フォトレジストの塗布、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程を経て、第2コンタクト層73の上に透明電極9を形成した。そして、その透明電極9の一部にNi/Au の2層を蒸着してパッド10を形成した。一方、n層3に対しては、アルミニウムを蒸着して電極8を形成した。その後、上記のごとく処理されたウエハは、各素子毎に切断され図1に示す構造の発光ダイオードを得た。この発光素子は駆動電流20mA、発光ピーク400nm、発光強度2000mCdであった。従来構造のLEDに比べて発光強度は2倍になった。
【0029】
この製造方法にて作製された量子細線構造は、半導体を積層する方向に対しては、従来の量子井戸構造であり、量子効果により量子井戸層にミニゾーンが形成される。また、積層方向と垂直な方向に対しては、発光層である非高抵抗領域の井戸層の幅が狭いことにより生じる量子効果として離散的な量子準位が形成される。ただし、積層方向と垂直な方向におけるバリア層にあたる高抵抗領域が広いことにより量子トンネル効果は生じないためにミニゾーンは形成されない。しかし、量子細線構造であることによりキャリアの自由度が1つ減ることにより遷移確率が向上するために発光効率は向上する。また、ミニゾーンは形成されなくても離散的な量子準位が形成されているので、発光スペクトルの半値幅が狭くなる効果もある。
【0030】
図7は、第2の実施例である、発光層が量子箱構造である3族窒化物半導体発光素子200の全体図を示す。発光素子200は、サファイア基板21を有しており、そのサファイア基板1上に50nmのAlN バッファ層22が形成されている。
【0031】
そのバッファ層22の上には、順に、膜厚約4.0μm、電子濃度2×1018/cm、シリコン(Si)濃度4×1018/cmのシリコン(Si)ドープGaN から成る高キャリア濃度n層23、膜厚0.5μm、電子濃度5×1017/cm、シリコン(Si)濃度1×1018/cmのシリコン(Si)ドープGaN から成るn層24、全膜厚が35nmのAlGaN 及びシリコン(Si)及び亜鉛(Zn)がそれぞれ5×1018/cmドーピングされたInGaN から成る量子箱構造の発光層25、膜厚10nm、ホール濃度2×1017/cm、マグネシウム(Mg)濃度5×1019/cmのマグネシウム(Mg)ドープAl0.08Ga0.92N から成るp伝導形クラッド層271、膜厚35nm、ホール濃度3×1017/cm、マグネシウム(Mg)濃度5×1019/cmのマグネシウム(Mg)ドープGaN から成る第1コンタクト層272、膜厚5nm、ホール濃度6×1017/cm、マグネシウム(Mg)濃度1×1020/cmのマグネシウム(Mg)ドープGaN から成る第2コンタクト層273が形成されている。そして、第2コンタクト層273上面全体にNi/Au から成る透明電極29が形成され、その透明電極29の隅の部分にNi/Au ら成るボンディングのためのパッド210が形成されている。又、n層23上にはAlから成る電極28が形成されている。
【0032】
発光層25は、図8に示すように、Al0.05Ga0.95N から成る厚さ5nmのバリア層251、シリコン(Si)及び亜鉛(Zn)がそれぞれ5×1018/cmドーピングされたIn0.20Ga0.80N から成る厚さ5nmの井戸層252が形成されている。高抵抗領域26は、窒素のイオンインプランテーション及びその後の熱処理によりバリア層251及び井戸層252に格子状に形成されている。高抵抗領域26は発光層25だけでなくp伝導形クラッド層271及びn層24にも拡がっている。高抵抗領域26で囲まれた井戸層252の中の非高抵抗領域の井戸層252aの幅wは10nmである。また、非高抵抗領域の井戸層252aの奥行Dは10nmである。さらに、非高抵抗領域の井戸層252aの厚さtは5nmに形成されているので、非高抵抗領域の井戸層252aは量子箱構造を形成している。
【0033】
次に、この構造の発光ダイオード200の製造方法について説明する。
上記発光ダイオード200は、第1の実施例である量子細線構造の発光ダイオードと同様の方法で、サファイア基板21、バッファ層22、n層23、n層24、多重量子井戸構造である発光層25、クラッド層271までを形成する。
【0034】
次に、クラッド層271まで形成されたサファイア基板21上の半導体素子に対して窒素のイオンインプランテーションを行う。これは、イオン注入装置により窒素イオンを加速してクラッド層271に打ち込むことによって行われる。クラッド層271に打ち込まれたイオンは原子核との衝突や電子との相互作用により次第にエネルギを失いながら発光層25に到達する。図8に示すようにイオンを打ち込まれた領域は高抵抗化し、高抵抗領域6を形成する。イオン注入制御を行うことによって、隣合う高抵抗領域6の幅w及び奥行Dが、、即ち非高抵抗領域の井戸層252aの幅w及び奥行Dが500nmとなるように高抵抗領域6を形成した。
【0035】
イオン注入終了後、700℃にて5分間熱処理を行った。これにより熱拡散をするので高抵抗領域26は拡がる。その結果、隣合う高抵抗領域26との幅w及び奥行D、即ち非高抵抗領域の井戸層252aの幅w及び奥行Dが10nmとなるようにした。井戸層252の厚さも5nmなので、高抵抗領域26とバリア層251に囲まれた非高抵抗領域の井戸層252aは一辺が10nmの量子箱構造となった。
【0036】
量子箱構造の発光層25の形成後は、第1の実施例にて量子細線構造5を形成後と同様の方法で作製される。つまり、クラッド層71の再成長、第1コンタクト層72の形成、第2コンタクト層73の形成をおこなう。次に、電子線照射装置を用いて、第2コンタクト層73、第1コンタクト層72及びクラッド層71をp伝導型半導体にする。そして、第2コンタクト層73の上に透明電極9を形成し、その透明電極9の上にパッド10の形成し、n層3に対して電極8を形成した。その後、上記のごとく処理されたウエハは、各素子毎に切断され図7に示す構造の発光ダイオードを得た。この発光素子は駆動電流20mA、発光ピーク390nm、発光強度2000mCdであった。従来構造のLEDに比べて発光強度は2倍になった。
【0037】
この製造方法にて作製された量子箱構造は第1の実施例である量子細線構造と同様に、半導体を積層する方向に対しては、従来の量子井戸構造であり、量子効果により量子井戸層にミニゾーンが形成される。また、積層方向と垂直な方向に対しては、非高抵抗領域である発光層の幅及び奥行が狭いことにより生じる量子効果として離散的な量子準位が形成される。ただし、バリア層にあたる高抵抗領域が広いことにより量子トンネル効果は生じないためにミニバンドは形成されない。しかし、キャリアの自由度が量子井戸構造に比べて2つ、量子細線構造に比べて1つ減ることにより遷移確率が向上するので発光効率は向上する。また、離散的な量子準位が形成されることにより発光スペクトルの半値幅が狭くなる効果もある。
【0038】
上記実施例において、発光層は多重量子井戸構造から量子細線構造及び量子箱構造を作製しているが、単一量子井戸構造から量子細線構造及び量子箱構造を作製してもよい。さらに、発光層は3元系のInGaN やAlGaN でなくその他の3族窒化物半導体、例えば、GaN 、4元系のInAlGaN によって井戸層、バリア層が構成されていてもよい。
また、発光層にドナー不純物やアクセプタ不純物が添加されされていなくてもよい。発光層にドナー不純物やアクセプタ不純物が添加され手いる場合はアクセプタ不純物として2族元素のベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)を用いても良い。2族元素をアクセプタ不純物として用いる場合は、ドナー不純物として4族元素の炭素(C) 、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)、鉛(Pb)を用いることがてきる。又、4族元素をアクセプタ不純物として用いる場合は、ドナー不純物として6族元素の硫黄(S) 、セレン(Se)、テルル(Te)を用いることができる。
【0039】
発光層5のシリコン(Si)及び亜鉛(Zn)の濃度はそれぞれ、1×1017〜1×1020/cmが望ましい。1×1017/cm以下であると、発光中心不足により発光効率が低下し、1×1020/cm以上になると、結晶性が悪くなり、又、オージェ効果が発生するので望ましくない。さらに好ましくは、1×1018〜1×1019/cmの範囲が良い。又、シリコン(Si)濃度は亜鉛(Zn)に比べて10倍〜1/10が好ましく、さらに好ましくは1〜1/10の間か、少ない程度が望ましい。
【0040】
また、非高抵抗領域の井戸層51aの幅あるいは非高抵抗領域の井戸層251aの幅及び奥行は、上記実施例にて10nmとしたが2〜10nmの範囲にすることができる。10nm以上になると量子効果による量子準位の形成が困難になり、2nm以下になると膜厚の制御が困難になるからである。また、非高抵抗領域の井戸層251aの幅と奥行は上記実施例では同じ寸法てあるが2〜10nmの範囲であれば異なっていてもよい。
また、イオンインプランテーション後の非高抵抗領域の幅及び奥行は上記実施例にて500nmとしたが、100〜1000nmの範囲で良い。イオンインプランテーション後の非高抵抗領域の幅を1000nm以上にすると熱処理にて非高抵抗領域の幅が10nm以下にならなくなり量子細線構造あるいは量子箱構造を作製することができず、また、100nm以下にすると熱処理でイオンが拡散して高抵抗となるからである。
【0041】
又、n層3の電子濃度は1×1016〜1×1020/cmが望ましい。電子濃度が1×1020/cm以上になると、不純物濃度が高くなり結晶性が低下し発光効率が低下するので望ましくなく、1×1016以下となると、直列抵抗が高くなりすぎるので望ましない。
n層4の電子濃度は1×1014〜1×1018/cmが望ましい。電子濃度が1×1018/cm以上になると、不純物濃度が高くなり結晶性が低下し発光効率が低下するので望ましくなく、1×1014以下となると、直列抵抗が高くなりすぎるので望ましない。
【0042】
クラッド層71のホール濃度は1×1017〜1×1018/cmが望ましい。ホール濃度が1×1018/cm以上となると、不純物濃度が高くなり結晶性が低下し発光効率が低下するので望ましくなく、1×1017/cm以下となると、直列抵抗が高くなりすぎるので望ましくない。
【0043】
又、コンタクト層は上記実施例にて2層構造としたが1層構造でもよい。
2層構造の場合、第1コンタクト層72は、マグネシウム(Mg)濃度が1×1019〜5×1020/cmの範囲で第2コンタクト層73のマグネシウム(Mg)濃度より低濃度に添加されp伝導型を示す層にすることで、その層のホール濃度を3×1017〜8×1017/cmと最大値を含む領域とすることができる。これにより、発光効率を低下させることがない。
【0044】
第2コンタクト層73はマグネシウム(Mg)濃度を1×1020〜1×1021/cmとする場合が望ましい。マグネシウム(Mg)が1×1020〜1×1021/cm添加されたp伝導型を示す層は、金属電極に対しオーミック性を向上させることができるが、ホール濃度が1×1017〜8×1017/cmとやや低下する。(駆動電圧を5V以下にできる範囲を含む。オーミック性の改善からマグネシウム(Mg)濃度が上記の範囲が良い。)
【0045】
上記実施例において、イオンインプランテーションは窒素を用いて行ったが、アルミニウムで行ってもよい。また、イオンインプランテーションは集束イオンビームにより注入する方法を行うこともできる。
また、イオンインプランテーション後の熱処理の温度は700℃としたが、600〜900℃の範囲ならば良い。900℃以上では結晶が劣悪となり、600℃以下では注入イオンが熱拡散し難いからである。また、熱処理の時間は、5分としたが、1〜8分の範囲ならば良い。8分以上では結晶が劣悪となり、1分以下ではイオンの熱拡散が困難となるからである。
また、クラッド層及びコンタクト層を電子線照射によりp型化したが、熱アニーリング、Nプラズマガス中での熱処理、レーザ照射によって行ってもよい。
【0046】
また、上記実施例では発光ダイオードについてであるが、レーザダイオードに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な第1実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図
【図2】同実施例の発光ダイオードの発光層の構成を示した構成図
【図3】同実施例のイオンインプランティング後の発光ダイオードの発光層の構成を示した構成図
【図4】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図
【図5】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図
【図6】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図
【図7】本発明の具体的な第2実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図
【図8】同実施例の発光ダイオードの発光層の構成を示した構成図
【図9】同実施例の発光ダイオードの発光層の構成を示した構成図
【符号の説明】
100、200…発光ダイオード
1、21…サファイア基板
2、22…バッファ層
3、23…高キャリア濃度n層
4、24…n層
5、25…発光層
6、26…高抵抗領域
51、251…バリア層(高抵抗領域6、非高抵抗領域共に含む)
52、252…井戸層(高抵抗領域6、非高抵抗領域共に含む)
51a、251a…非高抵抗領域のバリア層
52a…量子細線構造の井戸層(非高抵抗領域の井戸層)
252a…量子箱構造の井戸層(非高抵抗領域の井戸層)
71、271…クラッド層
72、272…第1コンタクト層
73、273…第2コンタクト層
8、28…電極
9、29…透明電極
10、210…パッド

Claims (6)

  1. 発光層が量子井戸構造である3族窒化物半導体発光素子において、
    窒素のイオンインプランテーションにより前記発光層にストライプ状の高抵抗領域を形成し、
    熱処理によって前記高抵抗領域を拡張することにより所定の幅の非高抵抗領域を形成することで発光層を量子細線構造とすることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  2. 発光層が量子井戸構造である3族窒化物半導体発光素子において、
    窒素のイオンインプランテーションにより前記発光層に格子状の高抵抗領域を形成し、
    熱処理によって前記高抵抗領域を拡張することにより所定の大きさの非高抵抗領域を形成することで発光層を量子箱構造とすることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  3. 発光層が量子井戸構造である3族窒化物半導体発光素子において、
    第1の窒素のイオンインプランテーションにより前記発光層にストライプ状の高抵抗領域を形成し、
    第1の熱処理によって前記高抵抗領域を拡張することにより所定の幅の非高抵抗領域を形成することで発光層を量子細線構造としたのち、
    第2の窒素のイオンインプランテーションにより量子細線構造の前記発光層に部分的に高抵抗領域を形成し、
    第2の熱処理によって前記高抵抗領域を拡張することにより所定の大きさの非高抵抗領域を形成することで発光層を量子箱構造とすることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  4. 請求項1に記載の3族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    前記窒素のイオンインプランテーションにより形成されるストライプ状の高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅は100〜1000nmであり、
    前記熱処理により拡張される高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅は10nm以下であることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  5. 請求項2に記載の3族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    前記窒素のイオンインプランテーションにより形成される格子状の高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一辺は100〜1000nmであり、
    前記熱処理により拡張される高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一辺が10nm以下であることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  6. 請求項3に記載の3族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    前記第1の窒素のイオンインプランテーションにより形成されるストライプ状の高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅は100〜1000nmであり、
    前記第1の熱処理により拡張される高抵抗領域に挟まれる非高抵抗領域の幅は10nm以下であり、
    前記第2の窒素のイオンインプランテーションにより量子細線構造の前記発光層に部分的に形成される高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一方の辺は100〜1000nmであり、
    前記第2の熱処理により拡張される高抵抗領域に囲まれる非高抵抗領域の一辺が10nm以下であることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子の製造方法。
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