JP3557742B2 - 3族窒化物半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紫外線発光の効率を向上させた3族窒化物半導体を用いた発光素子に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、3族窒化物半導体を用いた紫外線発光素子は、発光層にInGaN 又はAlGaN が用いられていた。発光層にInGaN を用いた場合には、Inの組成比が5.5%以下の時、バンド間発光で波長380nm以下の紫外線が得られている。又、発光層にAlGaN を用いた場合には、Alの組成比が16%程度で、亜鉛とシリコンとを発光中心として添加して、ドナー・アクセプタ対発光により、波長380nmの紫外線が得られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの構造の発光素子は、まだ、発光効率が低いという問題がある。即ち、発光層にInGaN を用いた場合には、低温成長のために発光層の結晶性が悪く、発光効率が低い。又、発光層にAlGaN を用いた場合には、格子定数のミスフィットによる転位のために、発光効率が低くなる。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、3族窒化物化合物半導体を用いた紫外線発光素子の発光効率を向上させることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1及び請求項2に記載の発明は、発光層に3族窒化物半導体を用いた発光素子において、発光層は、AlX2Ga1-X2N から成るバリア層とAlX1Ga1-X1N (X1 <X2) から成る井戸層とを交互に積層させた量子井戸で構成され、発光層にアクセプタ不純物とドナー不純物とを添加した。尚、量子井戸構造の繰り返し回数は1回でも多数回でも良い。
【0006】
請求項1の発明は、各井戸層にのみアクセプタ不純物とドナー不純物とを共に添加したものである。請求項2の発明は、隣接する井戸層に、アクセプタ不純物とドナー不純物とを交互に添加したものである。
【0007】
請求項3の発明は、アクセプタ不純物を亜鉛とし、ドナー不純物をシリコンとしたものである。又、請求項4の発明は、発光層を、アクセプタ不純物を添加したp伝導型のAlX3Ga1-X3N (X1 ≦X3) から成るp層と、ドナー不純物を添加したn伝導型のAlX4Ga1-X4N (X1 ≦X4) から成るn層とで挟んだ構造を特徴とする。さらに、請求項5の発明は、p層に添加したアクセプタ不純物をマグネシウムとし、n層に添加したドナー不純物をシリコンとしたものである。
【0008】
尚、発光層のAlのモル組成比は15%以上とし、井戸層の厚さは50Å〜200Åの範囲が望ましい。50Å以下だと不純物拡散が起こり、200Å以上だと量子効果が発生しなくなるので望ましくない。又、バリア層の厚さは50Å〜200Åの範囲が望ましい。50Å以下だと井戸層にキャリアを閉じ込める効率が下がるため望ましくなく、200Å以上だと量子効果が発生しなくなるので望ましくない。200Å以上だとノンドープの場合には抵抗が大きくなり、又、ドープした場合には転位によるクラックが入るので望ましくない。
又、発光層に添加するアクセプタ不純物とドナー不純物の濃度は1×1017/cm3 〜1×1020/cm3 の範囲が望ましい。1×1017/cm3 以下であると、発光中心不足により発光効率が低下し、1×1020/cm3 以上となると、結晶性が悪くなり、又、オージェ効果が発生するので望ましくない。
【0009】
【発明の作用及び効果】
発光層にInGaN よりも結晶性の良いAlGaN を用い、発光層を量子井戸構造の歪超格子とすることで、格子定数のミスフィットの伝搬を防止して井戸層の結晶性を向上させ、これにより発光効率を向上させた。特に、結晶性の良い井戸層にアクセプタ不純物とドナー不純物とを共に添加して、アクセプタ準位とドナー準位とによる対発光により、紫外線の発光効率を大きく向上させることができた。
【0010】
【実施例】
第1実施例
図1において、発光ダイオード10は、サファイア基板1を有しており、そのサファイア基板1上に500 ÅのAlN のバッファ層2が形成されている。そのバッファ層2の上には、順に、膜厚約2.0 μm、電子濃度2 ×1018/cm3のシリコンドープGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3、膜厚約1.0 μm、電子濃度 2×1018/cm3のシリコンドープのAl0.3Ga0.7N から成るn層4、全膜厚約0.11μmの発光層5、膜厚約1.0 μm、ホール濃度5 ×1017/cm3、濃度1 ×1020/cm3にマグネシウムがドープされたAl0.3Ga0.7N から成るp層61、膜厚約0.2 μm、ホール濃度 7×1017/cm3、マグネシウム濃度 2×1020/cm3のマグネシウムドープのGaN から成るコンタクト層62が形成されている。そして、コンタクト層62上にコンタクト層62に接合するNiから成る電極7が形成されている。さらに、高キャリア濃度n+ 層3の表面の一部は露出しており、その露出部上にその層3に接合するNiから成る電極8が形成されている。
【0011】
発光層5の詳細な構成は、図2に示すように、膜厚約100 ÅのAl0.25Ga0.75N から成る6層のバリア層51と膜厚約100 ÅのAl0.2Ga0.8N から成る5層の井戸層52とが交互に積層された多重量子井戸構造で、全膜厚約0.11μmである。又、井戸層52には、亜鉛とシリコンが、それぞれ、5 ×1018/cm3の濃度に添加されている。
【0012】
次に、この構造の発光ダイオード10の製造方法について説明する。
上記発光ダイオード10は、有機金属化合物気相成長法( 以下「M0VPE 」と記す) による気相成長により製造された。
用いられたガスは、NH3 とキャリアガスH2又はN2 とトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)(以下「TMG 」と記す) とトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)(以下「TMA 」と記す) とシラン(SiH4)とジエチル亜鉛( 以下「DEZ 」と記す) とシクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C5H5)2)(以下「CP2Mg 」と記す)である。
【0013】
まず、有機洗浄及び熱処理により洗浄したa面を主面とする厚さ100 〜400 μmの単結晶のサファイア基板1をM0VPE 装置の反応室に載置されたサセプタに装着する。次に、常圧でH2を流速2 liter/分で反応室に流しながら温度1100℃でサファイア基板1を気相エッチングした。
【0014】
次に、温度を 400℃まで低下させて、H2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMA を 1.8×10−5モル/分で供給してAlN のバッファ層2が約 500Åの厚さに形成された。次に、サファイア基板1の温度を1150℃に保持し、H2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を 1.7×10−4ル/分、H2ガスにより0.86ppm に希釈されたシランを200ml/分で30分供給して、膜厚約2.2 μm、電子濃度 2×1018/cm3のシリコンドープのGaN から成る高キャリア濃度n+ 層3を形成した。
【0015】
次に、サファイア基板1の温度を1100℃に保持し、N2又はH2を10 liter/分、NH3 を 10liter/分、TMG を1.12×10−4モル/分、TMA を0.47×10−4モル/分、及び、H2ガスにより0.86ppm に希釈されたシランを10×10−9mol/分で、60分供給して、膜厚約1 μm、濃度1 ×1018/cm3のシリコンドープのAl0.3Ga0.7N から成るn層4を形成した。
【0016】
その後、サファイア基板1の温度を1100℃に保持し、N2又はH2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を 1×10−5モル/分、TMA を0.39×10−4モル/分で3分間導入してAl0.25Ga0.75N から成る厚さ100Åのバリア層51を形成した。次に、N2又はH2を20 liter/分、NH3 を10 liter/分、TMG を 1×10−5モル/分、TMA を0.31×10−4モル/分で、且つ、H2ガスにより0.86ppm に希釈されたシランを10×10−9mol/分、DEZ を 2×10−4モル/分で、3分間導入してAl0.2Ga0.8N から成る厚さ100Åのシリコンと亜鉛が、それぞれ、 5×1018/cm3の濃度に添加された井戸層52を形成した。このような手順の繰り返しにより、図6に示すように、バリア層51と井戸層52とを交互に5層だけ積層たし多重量子井戸構造で、全体の厚さ0.11μmの発光層5を形成した。
【0017】
続いて、温度を1100℃に保持し、N2又はH2を20 liter/分、NH3 を 10liter/分、TMG を1.12×10−4モル/分、TMA を0.47×10−4モル/分、及び、CP2Mg を2 ×10−4モル/分で60分間導入し、膜厚約1.0 μmのマグネシウム(Mg)ドープのAl0.3Ga0.7N から成るp層61を形成した。p層61のマグネシウムの濃度は1 ×1020/cm3である。この状態では、p層61は、まだ、抵抗率108 Ωcm以上の絶縁体である。
【0018】
続いて、温度を1100℃に保持し、N2又はH2を20 liter/分、NH3 を 10liter/分、TMG を1.12×10−4モル/分、及び、CP2Mg を 4×10−4モル/分の割合で 4分間導入し、膜厚約0.2 μmのマグネシウム(Mg)ドープのGaN から成るコンタクト層62を形成した。コンタクト層62のマグネシウムの濃度は 2×1020/cm3である。この状態では、コンタクト層62は、まだ、抵抗率108 Ωcm以上の絶縁体である。
【0019】
このようにして、図2に示す断面構造のウエハが得られた。次に、このウエハを、450℃で45分間、熱処理した。この熱処理により、コンタクト層62、p層61は、それぞれ、ホール濃度 7×1017/cm3, 5×1017/cm3、抵抗率 2Ωcm,0.8 Ωcm のp伝導型半導体となった。このようにして、多層構造のウエハが得られた。
【0020】
次に、図3に示すように、コンタクト層62の上に、スパッタリングによりSiO2層9を2000Åの厚さに形成し、そのSiO2層9上にフォトレジスト10を塗布した。そして、フォトリソグラフにより、図3に示すように、コンタクト層62上において、高キャリア濃度n+ 層3に対する電極形成部位A’ のフォトレジスト10を除去した。次に、図4に示すように、フォトレジスト10によって覆われていないSiO2層9をフッ化水素酸系エッチング液で除去した。
【0021】
次に、フォトレジスト10及びSiO2層9によって覆われていない部位のコンタクト層62、p層61、発光層5、n層4を、真空度0.04Torr、高周波電力0.44W/cm2 、BCl3ガスを10 ml/分の割合で供給しドライエッチングした後、Arでドライエッチングした。この工程で、図5に示すように、高キャリア濃度n+ 層3に対する電極取出しのための孔Aが形成された。
【0022】
次に、試料の上全面に、一様にNiを蒸着し、フォトレジストの塗布、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て、図1に示すように、高キャリア濃度n+ 層3及びコンタクト層62に対する電極8,7を形成した。その後、上記の如く処理されたウエハを各チップに切断して、発光ダイオードチップを得た。
【0023】
このようにして得られた発光素子は、駆動電流20mAで、発光ピーク波長 380nm、発光強度2mWであった。この発光効率は3%であり、従来の構成のものに比べて10倍に向上した。
【0024】
上記の実施例では、発光層5のバリア層51のバンドギャップが両側に存在するp層61とn層4のバンドギャップよりも小さくなるようなダブルヘテロ接合に形成されている。
上記実施例ではダブルヘテロ接合構造を用いたが、シングルヘテロ接合構造であっても良い。さらに、p層を形成するのに熱処理を用いたが、電子線照射によってp型化しても良い。
【0025】
第2実施例
上記第1実施例では、各井戸層52に亜鉛とシリコンとを同時に添加している。第2実施例の発光ダイオード100の発光層5は、図6に示すように、複数の井戸層520に、順に交互に、シリコンと亜鉛を添加したものである。
この構造において、アクセプタ準位とドナー準位による対発光が可能となり、紫外線の発光効率が向上する。 このようにして得られた発光素子は、駆動電流20mAで、発光ピーク波長 380nm、発光強度5mWであった。この発光効率は7%であり、従来の構成のものに比べて25倍に向上した。
【0026】
第3実施例
第3実施例の発光ダイオード200は、図7に示すように、全ての井戸層521に亜鉛を添加し、全てのバリア層511にシリコンを添加したものである。
この構造において、アクセプタ準位とドナー準位による対発光が可能となり、紫外線の発光効率が向上する。
尚、逆に、全ての井戸層521にシリコンを添加し、全てのバリア層511に亜鉛を添加するようにしても良い。
このようにして得られた発光素子は、駆動電流20mAで、発光ピーク波長 370nm、発光強度5mWであった。この発光効率は7%であり、従来の構成のものに比べて25倍に向上した。
【0027】
第4実施例
上記の全ての実施例において、バリア層51、510、511にはマグネシウムが添加されていないが、マグネシウムを添加した後の、熱処理、又は、電子線照射処理によりp型化しても良い。
このようにして得られた発光素子は、駆動電流20mAで、発光ピーク波長 380nm、発光強度10mWであった。この発光効率は15%であり、従来の構成のものに比べて50倍に向上した。
【0028】
上記の実施例は発光素子として、全て発光ダイオードを示したが、レーザダイオードでも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な第1実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【図2】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図3】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図4】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図5】同実施例の発光ダイオードの製造工程を示した断面図。
【図6】第2実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【図7】第3実施例に係る発光ダイオードの構成を示した構成図。
【符号の説明】
10,100,200…発光ダイオード
1…サファイア基板
2…バッファ層
3…高キャリア濃度n+ 層
4…n層
5…発光層
51,510,511…バリア層
52,520,521…井戸層
61…p層
62…コンタクト層
7,8…電極
Claims (5)
- 発光層に3族窒化物半導体を用いた発光素子において、
前記発光層は、AlX2Ga1-X2N から成るバリア層とAlX1Ga1-X1N (X1 <X2) から成る井戸層とを交互に積層させた量子井戸で構成され、
前記発光層の各井戸層にのみ前記アクセプタ不純物と前記ドナー不純物とが共に添加されていることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子。 - 発光層に3族窒化物半導体を用いた発光素子において、
前記発光層は、AlX2Ga1-X2N から成るバリア層とAlX1Ga1-X1N (X1 <X2) から成る井戸層とを交互に積層させた量子井戸で構成され、
前記発光層の隣接する井戸層に、前記アクセプタ不純物と前記ドナー不純物とが交互に添加されていることを特徴とする3族窒化物半導体発光素子。 - 前記アクセプタ不純物は亜鉛であり、前記ドナー不純物はシリコンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3族窒化物半導体発光素子。
- 前記発光層は、アクセプタ不純物が添加されたp伝導型のAlX3Ga1-X3N (X1 ≦X3) から成るp層と、ドナー不純物が添加されたn伝導型のAlX4Ga1-X4N (X1 ≦X4) から成るn層とで挟まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3族窒化物半導体発光素子。
- 前記p層に添加されている前記アクセプタ不純物はマグネシウムであり、前記n層に添加されている前記ドナー不純物はシリコンであることを特徴とする請求項4に記載の3族窒化物半導体発光素子。
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