JP2004134501A - 発光素子及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のフォトニック結晶の作製方法とは異なる方法により設けられた屈折率分布を備え、素子特性に優れている発光素子を提供する。
【解決手段】本GaN系半導体レーザ素子30では、リッジ50脇のp型クラッド層46の下部層には、空孔52の一次元の周期的配列からなる屈折率分布構造が形成されている。空孔52は、リッジ50に接近するにつれて径が大きく、深さが深くなっている。寸法の異なる空孔52の一次元の周期的配列により屈折率分布が発光領域の外側に形成される。本GaN系半導体レーザ素子では、寸法の異なる空孔52の一次元の周期的配列による屈折率分布を発光領域の外側に設けることにより、低閾値電流を実現し、レーザ光の強度分布つまりNFPを制御することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】本GaN系半導体レーザ素子30では、リッジ50脇のp型クラッド層46の下部層には、空孔52の一次元の周期的配列からなる屈折率分布構造が形成されている。空孔52は、リッジ50に接近するにつれて径が大きく、深さが深くなっている。寸法の異なる空孔52の一次元の周期的配列により屈折率分布が発光領域の外側に形成される。本GaN系半導体レーザ素子では、寸法の異なる空孔52の一次元の周期的配列による屈折率分布を発光領域の外側に設けることにより、低閾値電流を実現し、レーザ光の強度分布つまりNFPを制御することができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子及びその作製方法に関し、更に詳細には、発光素子特性を制御できる屈折率分布を容易な方法により形成してなる発光素子、及びその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、光通信を始めとする光エレクトロニクスの分野で、規則正しい微細構造を備えた人工結晶であるフォトニック結晶が新しい光学材料として注目されている。フォトニック結晶は、屈折率の異なる、光の波長程度の大きさのユニットを、屈折率が1次元又は多次元周期的な分布を持つように配列してなる構造体であって、材料や構造を自由にデザインすることにより、従来の光学材料では得られない優れた光学特性を有する光デバイスを実現できる材料として期待されている。
例えば、フォトニック結晶を利用した、レーザ素子、偏光分離素子、可視域用複屈折素子等が提案されている。
【0003】
フォトニック結晶を実用化するには、フォトニック結晶を構成するサブマイクロオーダーの多次元周期構造を経済的に作製することが重要である。そこで、フォトニック結晶の作製方法が種々研究され報告されている。
例えば、研究事例として、柱状、球状、ドット状等のユニットを2次元に周期的に配列して形成された構造、多孔状、角材状、あるいは組み木状に3次元に周期的に積層して形成された構造等がある。
フォトニック結晶の作製方法として、例えば高分子微粒子の自己組織化による方法、自己クローニング法、或いは成長工程及びエッチング工程の高精度プロセスを繰り返す方法等のいくつかの方法が、提案され、試行されている。
【0004】
例えば、Optronics(2001)No.7、197頁〜201頁には、自己クローニング法によるフォトニック結晶の作製方法が紹介されている。これによれば、予め、基板表面に凹凸パターンを形成した後、適切な割合でスパッタ成膜とスパッタエッチングを組み合わせたプロセスで多層膜を積層する。基板上の積層が上方に多段で進むにつれ、基板に垂直な縦断面で見て初期の矩形パターンが鋸歯状パターンに自動的に整形され、鋸歯パターンの凹凸パターンが正確に周期的に繰り返される構造を形成することできる。
自己クローニング法によれば、射影効果による凹部の強調、スパッタエッチングの斜面形成、及びスパッタ成膜の際の再付着粒子の凹部への堆積の3つの現象のバランスの結果、鋸歯状パターンが周期的に繰り返された積層構造を作製することができるとしている。
例えば、低屈折率材料としてSiO2 膜を、高屈折率材料として水素化アモルファス・シリコン膜を積層させて、自己クローニング形2次元フォトニック結晶を形成することにより、偏光子あるいは反射型偏光分離素子として動作する光素子を作製できるとしている。
【0005】
また、フォトニック結晶構造をレーザ構造に組込み、レーザ特性に優れた半導体レーザ素子を作製する研究も盛んに行われている。
例えば、特開2001−257425号公報は、3次元フォトニック結晶構造の前駆体と、光閉じ込め部を含むストライプが形成された基板とを貼り合わせることによって、3次元フォトニック結晶構造体の中央部に光閉じ込め部を形成することにより、低閾値電流特性を備えた半導体レーザ素子及びその半導体レーザ素子を製造する方法を開示している。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−257425号公報(第1頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のフォトニック結晶の作製方法は、主として、結晶成長による層生成と、ドライエッチングやスパッタエッチングなどによる層の一定領域の除去との組み合わせによってフォトニック結晶を作製できるとしているものの、果してこれらのフォトニック結晶の作製方法が実用的かどうかは、今後の研究に委ねられている。
【0008】
また、前掲公報によれば、光閉じ込め部を含むストライプが形成されているレーザ発光層、2つの3次元フォトニック結晶構造の前駆体である上部構造体、及び下部構造体を、それぞれ、別々の工程で作製し、次いでレーザ発光層を上部構造体及び下部構造体でいわゆるサンドイッチ状に挟む手法を採用しているので、半導体レーザ素子の作製工程が極めて複雑である。
フォトニック結晶構造をレーザ構造に組み込み、レーザ特性に優れた半導体レーザ素子を実現する研究は、現在、開始されたばかりの状況であって、実用化は今後の課題である。
【0009】
フォトニック結晶の作製方法が実用的であるためには、作製方法が、簡便なプロセスであって、制御性、安定性、再現性等のプロセス特性に優れ、しかも経済的であることが必要である。
そこで、本発明の目的は、従来のフォトニック結晶の作製方法とは異なる方法により設けられた屈折率分布を備え、素子特性に優れている発光素子を提供すること、及びそのような発光素子を簡便なプロセスで、しかも制御性、安定性、再現性等のプロセス特性に優れたプロセスで経済に作製する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述のような発光素子及びその作製方法を開発するに当たって、プロセスを簡便にするために、従来の成膜とエッチングとを交互に繰り返すフォトニック結晶の作製手法に代えて、エッチングを主とする新規な方法で屈折率分布を化合物半導体層に設けることを着想し、実験により着想が有効であることを確認し、本発明を発明するに到った。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る発光素子は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子において、
結晶欠陥の周期的な分布を有する少なくとも一層の化合物半導体層(以下、結晶欠陥化合物半導体層と言う)を積層構造の発光層近傍に有し、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的な分布によって、周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴としている。
【0012】
本発明では、周期的屈折率分布とは、異なる屈折率が周期的に分布することを言う。周期的屈折率分布は、1次元でも、2次元でも、3次元分布でも良い。
つまり、結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布が発光層に平行な2次元方向の周期的な分布であって、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の2次元方向の周期的な分布によって、2次元方向の周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせるようにしても良い。
また、結晶欠陥化合物半導体層が複数の化合物半導体層によって構成され、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布が発光層に平行な面と発光層に直交する方向の3次元方向の周期的な分布であって、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の3次元方向の周期的な分布によって、3次元方向の周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせるようにしても良い。
本発明の好適な実施態様では、ストライプ状リッジが積層構造の上部に形成され、
リッジ脇の化合物半導体層が、結晶欠陥化合物半導体層を構成してリッジからの距離に応じて結晶欠陥の周期的分布を有し、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布によって、リッジからの距離に応じて屈折率が変わる屈折率分布をリッジ脇の発光層近傍に生じさせている。
【0013】
本発明は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備える、半導体レーザ素子及び発光ダイオード等の発光素子に適用でき、発光素子を構成する基板の種類、化合物半導体層の組成、膜厚に制約はない。
【0014】
本発明に係る発光素子の作製方法は、発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
積層構造の上部を構成する化合物半導体層をストライプ状リッジに形成する工程と、
リッジ脇に露出する化合物半導体層(以下、露出化合物半導体層と言う)又は露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層に、リッジからの距離に応じて周期的に結晶欠陥が分布する構造を形成する工程と
を備え、
結晶欠陥の周期的な分布によって周期的な屈折率分布をリッジ脇の化合物半導体層に生じさせることを特徴としている。
【0015】
本発明方法では、結晶欠陥の周期的な分布構造を形成する方法には制約はない。例えば、発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
積層構造の上部を構成する化合物半導体層をストライプ状リッジに形成する工程と、
リッジ脇に露出する化合物半導体層(以下、露出化合物半導体層と言う)上に、リッジからの距離に応じて膜厚が減少する絶縁体膜又は誘電体膜を堆積させる工程と、
絶縁体膜又は誘電体膜を介して露出化合物半導体層にイオンを注入し、リッジへの距離に応じて露出化合物半導体層に対するイオン注入深さを深くするイオン注入工程と、
絶縁体膜又は誘電体膜を除去し、次いで微小な貫通孔を周期的な配列で備えたマスクを露出化合物半導体層上に形成する工程と、
マスク上から露出化合物半導体層をエッチングして、マスクの貫通孔の配列と同じ配列で、かつリッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部を露出化合物半導体層に設ける開口工程と
を備え、
リッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部からなる結晶欠陥の配列によって周期的な屈折率分布をリッジ脇の化合物半導体層に生じさせるようにしても良い。
【0016】
また、イオン注入工程では、絶縁体膜又は誘電体膜を介して露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層にイオンを注入し、開口工程では、マスク上から露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層をエッチングして、マスクの貫通孔の配列と同じ配列で、かつリッジからの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部を露出化合物半導体層及び露出化合物半導体の下層の化合物半導体層に設けるようにしても良い。
【0017】
本発明方法の好適な実施態様では、先ず、化合物半導体層に少なくとも1種類のイオンを注入して、化合物半導体層にダメージを与えることにより、化合物半導体層の結晶性を悪化させ、化合物半導体層に結晶欠陥を生じさせる。
イオン注入では、イオン注入の加速電圧又はイオン・ドーズ量を制御することによりダメージの程度、つまり結晶欠陥の欠陥密度の大小及び結晶欠陥の深さを容易に変化させることができる。つまり、欠陥密度の大小、及び欠陥の深さを制御することができる。
更には、イオン注入の深さを選択的に制御することにより、欠陥密度を2次元あるいは3次元的に変化させることができる。
【0018】
次いで、化学薬品を使ったウエットエッチング、又はエッチングガスを使ったドライエッチングによって、結晶欠陥の密度分布が生じている化合物半導体層をエッチングして空孔を開口する。
ウエットエッチングでは、化学薬品と化合物半導体層との化学反応により、ドライエッチングでは、エッチングガスに含まれている反応種が活性ラジカルやイオンに解離し、これらの化学反応あるいは半導体層への衝突により、エッチングが進行する。
【0019】
ウエットエッチング及びドライエッチングのエッチング速度は、一般に、結晶性の悪い構造に対しては大きく、結晶性の良好な構造に対しては小さくなるので、イオン注入を調節してエッチング速度を制御することにより、化合物半導体層に設ける空孔の大きさ、深さを制御することができる。
換言すれば、イオン注入による欠陥密度の制御を通じて、適宜に、エッチング速度を変えて、空孔の大きさや深さを周期的に変えることにより、化合物半導体層に屈折率分布を自在に設けることができる。
【0020】
ここで、図1を参照して、本発明方法の原理を説明する。図1(a)から(c)、及び図2(d)と(e)は、それぞれ、本発明方法の原理を説明する基板断面図又は斜視図である。
先ず、図1(a)に示すように、発光層12、化合物半導体層からなる中間層22、化合物半導体層からなる上部層16を含む化合物半導体層の積層構造14の上部層16上に通常のレジスト塗布工程によってレジストを塗布してレジスト膜を形成する。
次いで、通常のリソグラフィー技術を適用して、露光工程、現像工程、ベーキング工程等を実施し、レジスト膜をパターニングして、ストライプ状パターンを有するレジストマスク18を形成する。
続いて、レジストマスク18をエッチングマスクとして用いて、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法により積層構造14の上部層16のレジストマスク18から露出した領域を選択的に除去して、いわゆるリッジ20を作製すると共にリッジ20脇に化合物半導体層22を露出させる。
リッジ20は、後述するように、発光領域の出来るだけ近傍に空孔からなる屈折率変化構造を作製するために設けられる。
【0021】
次に、リッジ20を覆うレジストマスク18を使って、例えばCVD成膜法により、図1(b)に示すように、SiO2 膜24をリッジ20の両側の化合物半導体層22の平坦面に成膜する。
成膜する際には、成膜されたSiO2 膜24の膜厚が、図1(b)に示すように、リッジ20の両脇の境界線に接近するに従って薄くなり、リッジ20の境界線近傍では極めて薄くなるように、SiO2 膜24の成膜条件を調整する。
【0022】
次いで、図1(c)に示すように、SiO2 膜24をイオン注入マスクとして用いて積層構造14の上部層16にイオン注入を行い、結晶性を悪化させた領域25を形成する。
イオン注入では、例えば窒素、ほう素、プロトンなどのイオンのうちの少なくとも1種類をイオン注入する。ここでは、一例としてプロトンをイオン種として用い、上部層16の例えば中間部までイオン注入されるように、ドーズ量及び加速電圧を調整する。
この時、SiO2 膜からなるイオン注入用マスク24はリッジ20に近接するに従って薄くなるので、等ドーズ量及び等加速電圧であっても、図1(c)のようにリッジ20に近くなるに従って、イオン注入の深さが深くなる。図1(c)で、矢印の先端はイオン注入深さを示す。
つまり、イオン注入により損傷(ダメージ)を受ける上部層16の深さ、即ち領域25の深さは、リッジ20に近接するに従って深くなる。しかも、ダメージを受けた化合物半導体層22の欠陥密度の大小、幅、深さなどは、実験的に再現性良く制御することができる。
【0023】
イオン注入用マスク22を除去した後、続いて、図2(d)に示すように、周期的な配列で多数の微細な孔26のパターンを有するレジストマスク27をリッジ20脇の化合物半導体層の平坦面上に形成する。
次に、図2(e)に示すように、レジストマスク27上から化合物半導体層22にエッチングを施して、化合物半導体層22に無数の空孔28を設ける。空孔28は、リッジ20に近い結晶欠陥密度が高い領域では、径が大きく、深さが深くなり、リッジ20から離間するにつれて、結晶欠陥密度が低くなるので、空孔28の径は小さくなり、深さは浅くなる。空孔28の径及び深さの制御性は、良好である。
【0024】
本発明方法を適用することにより、径及び深さの異なる空孔28を所望の周期的分布で再現性良く形成することができる。
本発明に係る発光素子の作製方法によれば、イオン注入により、簡便で、かつ制御性、安定性、及び再現性が良好な欠陥密度分布を生成し、次いでエッチングを施して、径及び深さの異なる空孔28を所望の周期的分布で再現性良く形成する。これにより、発光素子を構成する化合物半導体層に屈折率分布を再現性良く設けることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照して、実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示した導電型、膜種、膜厚、成膜方法、その他寸法等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
発光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子をGaN系半導体レーザ素子に適用した実施形態の一例であって、図3は本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本実施形態例の発光素子、即ちGaN系半導体レーザ素子30は、図3に示すように、サファイア基板c面32上に、有機金属化学的気相成長(MOCVD法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、順次、エピタキシャル成長させた、GaNバッファ層34、n型GaNコンタクト層36、n型AlGaNクラッド層38、n型GaN光導波層40、活性層42、p型GaN光導波層44、p型AlGaNクラッド層46、およびp型GaNコンタクト層48の積層構造を備えている。
【0026】
各化合物半導体層の膜厚を一例として挙げれば、GaNバッファ層34の膜厚は膜厚50nm、n型コンタクト層36の膜厚は3μm、n型AlGaNクラッド層38の膜厚は0.5μm、n型GaN光導波層40の膜厚は0.1μm、p型GaN光導波層44の膜厚は0.1μm、p型AlGaNクラッド層46の膜厚は0.5μm、p型GaNコンタクト層48の膜厚は0.5μmである。
また、活性層42は、Ga1−x Inx N井戸層(x=0.15)とGa1−y Iny N障壁層(y=0.22)とから構成されている。
【0027】
p型GaNコンタクト層48、及びp型AlGaNクラッド層46の上部層は、ストライプ状リッジ50として形成され、リッジ50脇にp型AlGaNクラッド層46の下部層が露出している。
リッジ50脇のp型クラッド層46の下部層には、空孔52の1次元の周期的配列からなる屈折率分布構造が形成されている。即ち、空孔52は、リッジ50に接近するにつれて径が大きく、深さが深くなっている。寸法の異なる空孔52の1次元の周期的配列により1次元の周期的な屈折率分布が発光領域の外側に形成されている。
【0028】
p型クラッド層46の下部層、p型GaN光導波層44、活性層42、n型GaN光導波層40、及びn型コンタクト層36の上部層は、リッジ50に平行に延びるメサとして形成され、メサ脇にn型コンタクト層36の下部層が露出している。
露出したn型コンタクト層36の下部層上にn型電極54が、p型GaNコンタクト層48上にp型電極56が、それぞれ、形成されている。
【0029】
本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子30では、寸法の異なる空孔52の1次元の周期的配列による1次元の周期的な屈折率分布を発光領域の外側に設けることにより、レーザ光の強度分布つまりNFP(Near Field Pattern)を制御することができる。
【0030】
発光素子の作製方法の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子の作製方法を上述のGaN系半導体レーザ素子30の作製に適用した実施形態の一例である。図4(a)と(b)、図5(c)と(d)、図6(e)と(f)、及び図7は、それぞれ、本実施形態例の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
図4(a)に示すように、基板、例えばサファイア基板c面32上に、例えば有機金属化学的気相成長(MOCVD法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって550℃程度の低温の成長温度でGaNバッファ層34をエピタキシャル成長させる。
続いて、GaNバッファ層34上に、MOCVD法によって1000℃程度の成長温度で、n型GaNコンタクト層36、n型AlGaNクラッド層38、及びn型GaN光導波層40を順次エピタキシャル成長させる。次いで、活性層42を800℃程度の成長温度でエピタキシャル成長させる。続いて、1000℃程度の成長温度で、p型GaN光導波層44、p型AlGaNクラッド層46、およびp型GaNコンタクト層48を順次エピタキシャル成長させる。
【0031】
次に、図4(b)に示すように、p型GaNコンタクト層48上に、通常のレジスト塗布工程によってレジスト膜を形成する。次いで、通常のリソグラフィー技術を適用して、露光工程、現像工程、ベーキング工程等を実施し、レジスト膜をパターニングしてストライプ状のレジストパターンを有するレジストマスク58を形成する。
続いて、レジストマスク58をエッチングマスクに用いてウエットエッチング法又はドライエッチング法によりp型GaNコンタクト層48の露出領域を選択的に除去して、いわゆるリッジ50を作製する。
リッジ50は、電流狭窄構造の形成に加えて、以下に説明するように、発光領域の出来るだけ近傍に、空孔52からなる屈折率分布構造を形成するために設けられる。
【0032】
次に、レジストマスク58を使ってCVD成膜法により、図5(c)に示すように、SiO2 膜60をリッジ50の両側に露出しているp型AlGaNクラッド層46の平坦面に成膜する。成膜する際には、成膜されたSiO2 膜60が、図5(c)に示すように、リッジ50の両脇の境界線に近接するに従って膜厚が薄くなり、リッジ50の境界線近傍では膜厚が極めて薄くなるように、SiO2 膜60の成膜条件を調整する。
【0033】
次いで、図5(d)に示すように、SiO2 膜60をイオン注入マスクとして用いてp型AlGaNクラッド層46にイオン注入を行って、p型AlGaNクラッド層46内に結晶性を悪化させた領域70を形成する。
このイオン注入では、例えば窒素、ほう素、プロトンなどのうちから少なくとも1種類のイオンをイオン注入する。ここでは、一例としてプロトンをイオン種として用い、p型AlGaNクラッド層46の例えば中間部までイオン注入されるように、ドーズ量及び加速電圧を調整する。
この時、SiO2 膜からなるイオン注入用マスク60はリッジ50に近い部分が薄いので、等ドーズ量及び等加速電圧であっても、図5(d)に示すように、リッジ50に近くなるに従って、イオン注入の深さが深くなる。つまり、イオン注入により損傷(ダメージ)を受けるp型AlGaNクラッド層46の深さは、リッジ50に近接するに従って深くなる。しかも、ダメージを受けたp型AlGaNクラッド層46の欠陥密度の大小、幅、深さなどは、実験的に再現性よく制御することができる。
【0034】
イオン注入用マスク60を除去した後、続いて、図6(e)に示すように、周期的な配列で多数の微細な孔のパターンを有する別のレジストマスク62をp型AlGaNクラッド層46上に形成する。
次に、図6(f)に示すように、レジストマスク62上からp型AlGaNクラッド層46にエッチングを施して、p型AlGaNクラッド層46に無数の空孔52を設ける。空孔52は、リッジ50に近い結晶欠陥密度が高い領域では、径が大きく、深さが深くなり、リッジ50から離間するにつれて、結晶欠陥密度が低くなるので、空孔52の径は小さくなり、深さは浅くなる。
【0035】
これにより、径及び深さの異なる空孔52を所望の周期的分布で再現性良く形成することができる。
つまり、本実施形態例の方法によれば、イオン注入という簡便なプロセスで、制御性、安定性、再現性に優れた欠陥密度分布を生成し、次いでエッチングを施して、径及び深さの異なる空孔52を所望の周期的分布で再現性良く形成することにより、p型AlGaNクラッド層46のリッジ50脇に所望の屈折率分布を設けることができる。
【0036】
次に、図7に示すように、p型GaNコンタクト層48上のレジストマスクン58をエッチングマスクにして、p型AlGaNクラッド層46の上部層をエッチングして、p型GaNコンタクト層48に連続するp型AlGaNクラッド層46の上部層を有するリッジ50を形成する。
【0037】
以下、従来のGaN系半導体レーザ素子の作製方法と同様にして、p型AlGaNクラッド層46の下部層、p型GaN光導波層44、活性層42、n型GaN光導波層40、n型AlGaNクラッド層38、及びn型GaNコンタクト層36の上部層をエッチングして、リッジ50と同じ方向に延在するメサ構造を形成する。
更に、n型GaNコンタクト層36の露出領域にn側電極54をp型GaNコンタクト層上にp側電極56を形成する。
【0038】
発光素子の実施形態例1の変形例
本変形例は実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子30の変形例であって、図8は本変形例のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本変形例のGaN系半導体レーザ素子70は、図8に示すように、空孔52の配列構造が設けられている、リッジ50脇のp型AlGaNクラッド層46上に補助電極72を備えている。
空孔52の配列構造上に補助電極72を設けることにより、実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子30に比べて、駆動電流の制御が容易になるので、発光波長を容易に変化させることができる。また、レーザ光の強度分布、つまりNFP(Near Field Pattern)を制御することができ、キンクの生じるストライプ幅を変えることができる。更には、自然放出光強度を変えることができる。
【0039】
発光素子の作製方法の実施形態例2
本実施形態例は、第2の発明方法に係る発光素子の作製方法の実施形態の一例であって、図9は本実施形態例の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程を示す断面図である。
本実施形態例では、リッジ50脇の空孔52は、膜厚の厚いp型GaN光導波層74、p型AlGaN第1クラッド層76、及びp型AlGaN第2クラッド層78の3層にわたっていて、リッジ50から離間するにしたがって空孔52はp型AlGaN第1クラッド層76及びp型AlGaN第2クラッド層78の2層にわたっていて、更に離間すると、空孔52はp型AlGaN第2クラッド層78の1層のみに位置しており、結局空孔52は3次元的に配列している。
【0040】
以上、本発明を実施形態例により具体的に説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づく各種変形が可能である。
例えば、上述の各実施形態例において記載した数値、構造、材料、プロセス等は一例であって、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、材料、プロセスなどは用いてもよい。
上述の半導体レーザ素子30はGaN系半導体レーザ素子であるが、GaAs系やInP系の半導体レーザ素子でも良い。また、発光ダイオードでも良い。更には、空孔からなる屈折率分布構造を半導体レーザ素子の共振器長全体ではなく、レーザ光の発射面付近だけに設けてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、積層構造を構成する少なくとも一層の化合物半導体層に、結晶欠陥の周期的な分布によって周期的な屈折率分布を生じさせることにより、素子特性に優れた発光素子、例えば駆動電流の制御が可能で、発光波長を変化させることができ、レーザ光の強度分布つまりNFP(NearField Pattern)を制御することができる半導体レーザ素子を実現することができる。更には、キンクの生じるストライプ幅を変えることができ、自然放出光強度を変えることができる半導体レーザ素子を実現することができる。
【0042】
本発明の作製方法によれば、先ず、化合物半導体層に少なくとも1種のイオンを注入することにより、化合物半導体層にダメージを与え、結晶性を悪化させる。その後、ウエットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングを行って、径及び深さが周期的に分布する空孔構造を形成し、これにより屈折率分布を生成させる。
イオン注入の加速電圧を制御することにより、ダメージの程度、即ち欠陥密度の大小を容易に変化させることができるので、周期的分布の空孔構造、従って屈折率分布を所望のように形成することができる。
本発明方法によれば、制御性、安定性、及び再現性に優れた屈折率分布を簡便なプロセスで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)から(c)は、それぞれ、本発明方法の原理を説明する基板断面図又は斜視図である。
【図2】図2(d)と(e)は、それぞれ、図1(c)に続いて本発明方法の原理を説明する基板断面図又は斜視図である。
【図3】実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図4】図4(a)と(b)は、それぞれ、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図5】図5(c)と(d)は、それぞれ、図4(b)に続いて、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図6】図6(e)と(f)は、それぞれ、図5(d)に続いて、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図7】図6(f)に続いて、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の基板断面図である。
【図8】変形例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図9】実施形態例2の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の基板断面図である。
【符号の説明】
12……発光層、14……積層構造、16……上部層、18……レジストマスク、20……リッジ、22……化合物半導体層、24……SiO2 膜、25……結晶性を悪化させた領域、26……孔、27……レジストマスク、28……空孔、30……実施形態例のGaN系半導体レーザ素子、32……サファイア基板c面、34……GaNバッファ層、36……n型GaNコンタクト層、38……n型AlGaNクラッド層、40……n型GaN光導波層、42……活性層、44……p型GaN光導波層、46……p型AlGaNクラッド層、48……p型GaNコンタクト層、50……リッジ、52……空孔、54……n型電極、56……p型電極、70……GaN系半導体レーザ素子、72……補助電極、74……p型GaN光導波層、76……p型AlGaN第1クラッド層、78……p型AlGaN第2クラッド層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子及びその作製方法に関し、更に詳細には、発光素子特性を制御できる屈折率分布を容易な方法により形成してなる発光素子、及びその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、光通信を始めとする光エレクトロニクスの分野で、規則正しい微細構造を備えた人工結晶であるフォトニック結晶が新しい光学材料として注目されている。フォトニック結晶は、屈折率の異なる、光の波長程度の大きさのユニットを、屈折率が1次元又は多次元周期的な分布を持つように配列してなる構造体であって、材料や構造を自由にデザインすることにより、従来の光学材料では得られない優れた光学特性を有する光デバイスを実現できる材料として期待されている。
例えば、フォトニック結晶を利用した、レーザ素子、偏光分離素子、可視域用複屈折素子等が提案されている。
【0003】
フォトニック結晶を実用化するには、フォトニック結晶を構成するサブマイクロオーダーの多次元周期構造を経済的に作製することが重要である。そこで、フォトニック結晶の作製方法が種々研究され報告されている。
例えば、研究事例として、柱状、球状、ドット状等のユニットを2次元に周期的に配列して形成された構造、多孔状、角材状、あるいは組み木状に3次元に周期的に積層して形成された構造等がある。
フォトニック結晶の作製方法として、例えば高分子微粒子の自己組織化による方法、自己クローニング法、或いは成長工程及びエッチング工程の高精度プロセスを繰り返す方法等のいくつかの方法が、提案され、試行されている。
【0004】
例えば、Optronics(2001)No.7、197頁〜201頁には、自己クローニング法によるフォトニック結晶の作製方法が紹介されている。これによれば、予め、基板表面に凹凸パターンを形成した後、適切な割合でスパッタ成膜とスパッタエッチングを組み合わせたプロセスで多層膜を積層する。基板上の積層が上方に多段で進むにつれ、基板に垂直な縦断面で見て初期の矩形パターンが鋸歯状パターンに自動的に整形され、鋸歯パターンの凹凸パターンが正確に周期的に繰り返される構造を形成することできる。
自己クローニング法によれば、射影効果による凹部の強調、スパッタエッチングの斜面形成、及びスパッタ成膜の際の再付着粒子の凹部への堆積の3つの現象のバランスの結果、鋸歯状パターンが周期的に繰り返された積層構造を作製することができるとしている。
例えば、低屈折率材料としてSiO2 膜を、高屈折率材料として水素化アモルファス・シリコン膜を積層させて、自己クローニング形2次元フォトニック結晶を形成することにより、偏光子あるいは反射型偏光分離素子として動作する光素子を作製できるとしている。
【0005】
また、フォトニック結晶構造をレーザ構造に組込み、レーザ特性に優れた半導体レーザ素子を作製する研究も盛んに行われている。
例えば、特開2001−257425号公報は、3次元フォトニック結晶構造の前駆体と、光閉じ込め部を含むストライプが形成された基板とを貼り合わせることによって、3次元フォトニック結晶構造体の中央部に光閉じ込め部を形成することにより、低閾値電流特性を備えた半導体レーザ素子及びその半導体レーザ素子を製造する方法を開示している。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−257425号公報(第1頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のフォトニック結晶の作製方法は、主として、結晶成長による層生成と、ドライエッチングやスパッタエッチングなどによる層の一定領域の除去との組み合わせによってフォトニック結晶を作製できるとしているものの、果してこれらのフォトニック結晶の作製方法が実用的かどうかは、今後の研究に委ねられている。
【0008】
また、前掲公報によれば、光閉じ込め部を含むストライプが形成されているレーザ発光層、2つの3次元フォトニック結晶構造の前駆体である上部構造体、及び下部構造体を、それぞれ、別々の工程で作製し、次いでレーザ発光層を上部構造体及び下部構造体でいわゆるサンドイッチ状に挟む手法を採用しているので、半導体レーザ素子の作製工程が極めて複雑である。
フォトニック結晶構造をレーザ構造に組み込み、レーザ特性に優れた半導体レーザ素子を実現する研究は、現在、開始されたばかりの状況であって、実用化は今後の課題である。
【0009】
フォトニック結晶の作製方法が実用的であるためには、作製方法が、簡便なプロセスであって、制御性、安定性、再現性等のプロセス特性に優れ、しかも経済的であることが必要である。
そこで、本発明の目的は、従来のフォトニック結晶の作製方法とは異なる方法により設けられた屈折率分布を備え、素子特性に優れている発光素子を提供すること、及びそのような発光素子を簡便なプロセスで、しかも制御性、安定性、再現性等のプロセス特性に優れたプロセスで経済に作製する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述のような発光素子及びその作製方法を開発するに当たって、プロセスを簡便にするために、従来の成膜とエッチングとを交互に繰り返すフォトニック結晶の作製手法に代えて、エッチングを主とする新規な方法で屈折率分布を化合物半導体層に設けることを着想し、実験により着想が有効であることを確認し、本発明を発明するに到った。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る発光素子は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子において、
結晶欠陥の周期的な分布を有する少なくとも一層の化合物半導体層(以下、結晶欠陥化合物半導体層と言う)を積層構造の発光層近傍に有し、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的な分布によって、周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴としている。
【0012】
本発明では、周期的屈折率分布とは、異なる屈折率が周期的に分布することを言う。周期的屈折率分布は、1次元でも、2次元でも、3次元分布でも良い。
つまり、結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布が発光層に平行な2次元方向の周期的な分布であって、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の2次元方向の周期的な分布によって、2次元方向の周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせるようにしても良い。
また、結晶欠陥化合物半導体層が複数の化合物半導体層によって構成され、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布が発光層に平行な面と発光層に直交する方向の3次元方向の周期的な分布であって、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の3次元方向の周期的な分布によって、3次元方向の周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせるようにしても良い。
本発明の好適な実施態様では、ストライプ状リッジが積層構造の上部に形成され、
リッジ脇の化合物半導体層が、結晶欠陥化合物半導体層を構成してリッジからの距離に応じて結晶欠陥の周期的分布を有し、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布によって、リッジからの距離に応じて屈折率が変わる屈折率分布をリッジ脇の発光層近傍に生じさせている。
【0013】
本発明は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備える、半導体レーザ素子及び発光ダイオード等の発光素子に適用でき、発光素子を構成する基板の種類、化合物半導体層の組成、膜厚に制約はない。
【0014】
本発明に係る発光素子の作製方法は、発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
積層構造の上部を構成する化合物半導体層をストライプ状リッジに形成する工程と、
リッジ脇に露出する化合物半導体層(以下、露出化合物半導体層と言う)又は露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層に、リッジからの距離に応じて周期的に結晶欠陥が分布する構造を形成する工程と
を備え、
結晶欠陥の周期的な分布によって周期的な屈折率分布をリッジ脇の化合物半導体層に生じさせることを特徴としている。
【0015】
本発明方法では、結晶欠陥の周期的な分布構造を形成する方法には制約はない。例えば、発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
積層構造の上部を構成する化合物半導体層をストライプ状リッジに形成する工程と、
リッジ脇に露出する化合物半導体層(以下、露出化合物半導体層と言う)上に、リッジからの距離に応じて膜厚が減少する絶縁体膜又は誘電体膜を堆積させる工程と、
絶縁体膜又は誘電体膜を介して露出化合物半導体層にイオンを注入し、リッジへの距離に応じて露出化合物半導体層に対するイオン注入深さを深くするイオン注入工程と、
絶縁体膜又は誘電体膜を除去し、次いで微小な貫通孔を周期的な配列で備えたマスクを露出化合物半導体層上に形成する工程と、
マスク上から露出化合物半導体層をエッチングして、マスクの貫通孔の配列と同じ配列で、かつリッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部を露出化合物半導体層に設ける開口工程と
を備え、
リッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部からなる結晶欠陥の配列によって周期的な屈折率分布をリッジ脇の化合物半導体層に生じさせるようにしても良い。
【0016】
また、イオン注入工程では、絶縁体膜又は誘電体膜を介して露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層にイオンを注入し、開口工程では、マスク上から露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層をエッチングして、マスクの貫通孔の配列と同じ配列で、かつリッジからの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部を露出化合物半導体層及び露出化合物半導体の下層の化合物半導体層に設けるようにしても良い。
【0017】
本発明方法の好適な実施態様では、先ず、化合物半導体層に少なくとも1種類のイオンを注入して、化合物半導体層にダメージを与えることにより、化合物半導体層の結晶性を悪化させ、化合物半導体層に結晶欠陥を生じさせる。
イオン注入では、イオン注入の加速電圧又はイオン・ドーズ量を制御することによりダメージの程度、つまり結晶欠陥の欠陥密度の大小及び結晶欠陥の深さを容易に変化させることができる。つまり、欠陥密度の大小、及び欠陥の深さを制御することができる。
更には、イオン注入の深さを選択的に制御することにより、欠陥密度を2次元あるいは3次元的に変化させることができる。
【0018】
次いで、化学薬品を使ったウエットエッチング、又はエッチングガスを使ったドライエッチングによって、結晶欠陥の密度分布が生じている化合物半導体層をエッチングして空孔を開口する。
ウエットエッチングでは、化学薬品と化合物半導体層との化学反応により、ドライエッチングでは、エッチングガスに含まれている反応種が活性ラジカルやイオンに解離し、これらの化学反応あるいは半導体層への衝突により、エッチングが進行する。
【0019】
ウエットエッチング及びドライエッチングのエッチング速度は、一般に、結晶性の悪い構造に対しては大きく、結晶性の良好な構造に対しては小さくなるので、イオン注入を調節してエッチング速度を制御することにより、化合物半導体層に設ける空孔の大きさ、深さを制御することができる。
換言すれば、イオン注入による欠陥密度の制御を通じて、適宜に、エッチング速度を変えて、空孔の大きさや深さを周期的に変えることにより、化合物半導体層に屈折率分布を自在に設けることができる。
【0020】
ここで、図1を参照して、本発明方法の原理を説明する。図1(a)から(c)、及び図2(d)と(e)は、それぞれ、本発明方法の原理を説明する基板断面図又は斜視図である。
先ず、図1(a)に示すように、発光層12、化合物半導体層からなる中間層22、化合物半導体層からなる上部層16を含む化合物半導体層の積層構造14の上部層16上に通常のレジスト塗布工程によってレジストを塗布してレジスト膜を形成する。
次いで、通常のリソグラフィー技術を適用して、露光工程、現像工程、ベーキング工程等を実施し、レジスト膜をパターニングして、ストライプ状パターンを有するレジストマスク18を形成する。
続いて、レジストマスク18をエッチングマスクとして用いて、ウエットエッチング法あるいはドライエッチング法により積層構造14の上部層16のレジストマスク18から露出した領域を選択的に除去して、いわゆるリッジ20を作製すると共にリッジ20脇に化合物半導体層22を露出させる。
リッジ20は、後述するように、発光領域の出来るだけ近傍に空孔からなる屈折率変化構造を作製するために設けられる。
【0021】
次に、リッジ20を覆うレジストマスク18を使って、例えばCVD成膜法により、図1(b)に示すように、SiO2 膜24をリッジ20の両側の化合物半導体層22の平坦面に成膜する。
成膜する際には、成膜されたSiO2 膜24の膜厚が、図1(b)に示すように、リッジ20の両脇の境界線に接近するに従って薄くなり、リッジ20の境界線近傍では極めて薄くなるように、SiO2 膜24の成膜条件を調整する。
【0022】
次いで、図1(c)に示すように、SiO2 膜24をイオン注入マスクとして用いて積層構造14の上部層16にイオン注入を行い、結晶性を悪化させた領域25を形成する。
イオン注入では、例えば窒素、ほう素、プロトンなどのイオンのうちの少なくとも1種類をイオン注入する。ここでは、一例としてプロトンをイオン種として用い、上部層16の例えば中間部までイオン注入されるように、ドーズ量及び加速電圧を調整する。
この時、SiO2 膜からなるイオン注入用マスク24はリッジ20に近接するに従って薄くなるので、等ドーズ量及び等加速電圧であっても、図1(c)のようにリッジ20に近くなるに従って、イオン注入の深さが深くなる。図1(c)で、矢印の先端はイオン注入深さを示す。
つまり、イオン注入により損傷(ダメージ)を受ける上部層16の深さ、即ち領域25の深さは、リッジ20に近接するに従って深くなる。しかも、ダメージを受けた化合物半導体層22の欠陥密度の大小、幅、深さなどは、実験的に再現性良く制御することができる。
【0023】
イオン注入用マスク22を除去した後、続いて、図2(d)に示すように、周期的な配列で多数の微細な孔26のパターンを有するレジストマスク27をリッジ20脇の化合物半導体層の平坦面上に形成する。
次に、図2(e)に示すように、レジストマスク27上から化合物半導体層22にエッチングを施して、化合物半導体層22に無数の空孔28を設ける。空孔28は、リッジ20に近い結晶欠陥密度が高い領域では、径が大きく、深さが深くなり、リッジ20から離間するにつれて、結晶欠陥密度が低くなるので、空孔28の径は小さくなり、深さは浅くなる。空孔28の径及び深さの制御性は、良好である。
【0024】
本発明方法を適用することにより、径及び深さの異なる空孔28を所望の周期的分布で再現性良く形成することができる。
本発明に係る発光素子の作製方法によれば、イオン注入により、簡便で、かつ制御性、安定性、及び再現性が良好な欠陥密度分布を生成し、次いでエッチングを施して、径及び深さの異なる空孔28を所望の周期的分布で再現性良く形成する。これにより、発光素子を構成する化合物半導体層に屈折率分布を再現性良く設けることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照して、実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示した導電型、膜種、膜厚、成膜方法、その他寸法等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
発光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子をGaN系半導体レーザ素子に適用した実施形態の一例であって、図3は本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本実施形態例の発光素子、即ちGaN系半導体レーザ素子30は、図3に示すように、サファイア基板c面32上に、有機金属化学的気相成長(MOCVD法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、順次、エピタキシャル成長させた、GaNバッファ層34、n型GaNコンタクト層36、n型AlGaNクラッド層38、n型GaN光導波層40、活性層42、p型GaN光導波層44、p型AlGaNクラッド層46、およびp型GaNコンタクト層48の積層構造を備えている。
【0026】
各化合物半導体層の膜厚を一例として挙げれば、GaNバッファ層34の膜厚は膜厚50nm、n型コンタクト層36の膜厚は3μm、n型AlGaNクラッド層38の膜厚は0.5μm、n型GaN光導波層40の膜厚は0.1μm、p型GaN光導波層44の膜厚は0.1μm、p型AlGaNクラッド層46の膜厚は0.5μm、p型GaNコンタクト層48の膜厚は0.5μmである。
また、活性層42は、Ga1−x Inx N井戸層(x=0.15)とGa1−y Iny N障壁層(y=0.22)とから構成されている。
【0027】
p型GaNコンタクト層48、及びp型AlGaNクラッド層46の上部層は、ストライプ状リッジ50として形成され、リッジ50脇にp型AlGaNクラッド層46の下部層が露出している。
リッジ50脇のp型クラッド層46の下部層には、空孔52の1次元の周期的配列からなる屈折率分布構造が形成されている。即ち、空孔52は、リッジ50に接近するにつれて径が大きく、深さが深くなっている。寸法の異なる空孔52の1次元の周期的配列により1次元の周期的な屈折率分布が発光領域の外側に形成されている。
【0028】
p型クラッド層46の下部層、p型GaN光導波層44、活性層42、n型GaN光導波層40、及びn型コンタクト層36の上部層は、リッジ50に平行に延びるメサとして形成され、メサ脇にn型コンタクト層36の下部層が露出している。
露出したn型コンタクト層36の下部層上にn型電極54が、p型GaNコンタクト層48上にp型電極56が、それぞれ、形成されている。
【0029】
本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子30では、寸法の異なる空孔52の1次元の周期的配列による1次元の周期的な屈折率分布を発光領域の外側に設けることにより、レーザ光の強度分布つまりNFP(Near Field Pattern)を制御することができる。
【0030】
発光素子の作製方法の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子の作製方法を上述のGaN系半導体レーザ素子30の作製に適用した実施形態の一例である。図4(a)と(b)、図5(c)と(d)、図6(e)と(f)、及び図7は、それぞれ、本実施形態例の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
図4(a)に示すように、基板、例えばサファイア基板c面32上に、例えば有機金属化学的気相成長(MOCVD法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって550℃程度の低温の成長温度でGaNバッファ層34をエピタキシャル成長させる。
続いて、GaNバッファ層34上に、MOCVD法によって1000℃程度の成長温度で、n型GaNコンタクト層36、n型AlGaNクラッド層38、及びn型GaN光導波層40を順次エピタキシャル成長させる。次いで、活性層42を800℃程度の成長温度でエピタキシャル成長させる。続いて、1000℃程度の成長温度で、p型GaN光導波層44、p型AlGaNクラッド層46、およびp型GaNコンタクト層48を順次エピタキシャル成長させる。
【0031】
次に、図4(b)に示すように、p型GaNコンタクト層48上に、通常のレジスト塗布工程によってレジスト膜を形成する。次いで、通常のリソグラフィー技術を適用して、露光工程、現像工程、ベーキング工程等を実施し、レジスト膜をパターニングしてストライプ状のレジストパターンを有するレジストマスク58を形成する。
続いて、レジストマスク58をエッチングマスクに用いてウエットエッチング法又はドライエッチング法によりp型GaNコンタクト層48の露出領域を選択的に除去して、いわゆるリッジ50を作製する。
リッジ50は、電流狭窄構造の形成に加えて、以下に説明するように、発光領域の出来るだけ近傍に、空孔52からなる屈折率分布構造を形成するために設けられる。
【0032】
次に、レジストマスク58を使ってCVD成膜法により、図5(c)に示すように、SiO2 膜60をリッジ50の両側に露出しているp型AlGaNクラッド層46の平坦面に成膜する。成膜する際には、成膜されたSiO2 膜60が、図5(c)に示すように、リッジ50の両脇の境界線に近接するに従って膜厚が薄くなり、リッジ50の境界線近傍では膜厚が極めて薄くなるように、SiO2 膜60の成膜条件を調整する。
【0033】
次いで、図5(d)に示すように、SiO2 膜60をイオン注入マスクとして用いてp型AlGaNクラッド層46にイオン注入を行って、p型AlGaNクラッド層46内に結晶性を悪化させた領域70を形成する。
このイオン注入では、例えば窒素、ほう素、プロトンなどのうちから少なくとも1種類のイオンをイオン注入する。ここでは、一例としてプロトンをイオン種として用い、p型AlGaNクラッド層46の例えば中間部までイオン注入されるように、ドーズ量及び加速電圧を調整する。
この時、SiO2 膜からなるイオン注入用マスク60はリッジ50に近い部分が薄いので、等ドーズ量及び等加速電圧であっても、図5(d)に示すように、リッジ50に近くなるに従って、イオン注入の深さが深くなる。つまり、イオン注入により損傷(ダメージ)を受けるp型AlGaNクラッド層46の深さは、リッジ50に近接するに従って深くなる。しかも、ダメージを受けたp型AlGaNクラッド層46の欠陥密度の大小、幅、深さなどは、実験的に再現性よく制御することができる。
【0034】
イオン注入用マスク60を除去した後、続いて、図6(e)に示すように、周期的な配列で多数の微細な孔のパターンを有する別のレジストマスク62をp型AlGaNクラッド層46上に形成する。
次に、図6(f)に示すように、レジストマスク62上からp型AlGaNクラッド層46にエッチングを施して、p型AlGaNクラッド層46に無数の空孔52を設ける。空孔52は、リッジ50に近い結晶欠陥密度が高い領域では、径が大きく、深さが深くなり、リッジ50から離間するにつれて、結晶欠陥密度が低くなるので、空孔52の径は小さくなり、深さは浅くなる。
【0035】
これにより、径及び深さの異なる空孔52を所望の周期的分布で再現性良く形成することができる。
つまり、本実施形態例の方法によれば、イオン注入という簡便なプロセスで、制御性、安定性、再現性に優れた欠陥密度分布を生成し、次いでエッチングを施して、径及び深さの異なる空孔52を所望の周期的分布で再現性良く形成することにより、p型AlGaNクラッド層46のリッジ50脇に所望の屈折率分布を設けることができる。
【0036】
次に、図7に示すように、p型GaNコンタクト層48上のレジストマスクン58をエッチングマスクにして、p型AlGaNクラッド層46の上部層をエッチングして、p型GaNコンタクト層48に連続するp型AlGaNクラッド層46の上部層を有するリッジ50を形成する。
【0037】
以下、従来のGaN系半導体レーザ素子の作製方法と同様にして、p型AlGaNクラッド層46の下部層、p型GaN光導波層44、活性層42、n型GaN光導波層40、n型AlGaNクラッド層38、及びn型GaNコンタクト層36の上部層をエッチングして、リッジ50と同じ方向に延在するメサ構造を形成する。
更に、n型GaNコンタクト層36の露出領域にn側電極54をp型GaNコンタクト層上にp側電極56を形成する。
【0038】
発光素子の実施形態例1の変形例
本変形例は実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子30の変形例であって、図8は本変形例のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本変形例のGaN系半導体レーザ素子70は、図8に示すように、空孔52の配列構造が設けられている、リッジ50脇のp型AlGaNクラッド層46上に補助電極72を備えている。
空孔52の配列構造上に補助電極72を設けることにより、実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子30に比べて、駆動電流の制御が容易になるので、発光波長を容易に変化させることができる。また、レーザ光の強度分布、つまりNFP(Near Field Pattern)を制御することができ、キンクの生じるストライプ幅を変えることができる。更には、自然放出光強度を変えることができる。
【0039】
発光素子の作製方法の実施形態例2
本実施形態例は、第2の発明方法に係る発光素子の作製方法の実施形態の一例であって、図9は本実施形態例の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程を示す断面図である。
本実施形態例では、リッジ50脇の空孔52は、膜厚の厚いp型GaN光導波層74、p型AlGaN第1クラッド層76、及びp型AlGaN第2クラッド層78の3層にわたっていて、リッジ50から離間するにしたがって空孔52はp型AlGaN第1クラッド層76及びp型AlGaN第2クラッド層78の2層にわたっていて、更に離間すると、空孔52はp型AlGaN第2クラッド層78の1層のみに位置しており、結局空孔52は3次元的に配列している。
【0040】
以上、本発明を実施形態例により具体的に説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づく各種変形が可能である。
例えば、上述の各実施形態例において記載した数値、構造、材料、プロセス等は一例であって、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、材料、プロセスなどは用いてもよい。
上述の半導体レーザ素子30はGaN系半導体レーザ素子であるが、GaAs系やInP系の半導体レーザ素子でも良い。また、発光ダイオードでも良い。更には、空孔からなる屈折率分布構造を半導体レーザ素子の共振器長全体ではなく、レーザ光の発射面付近だけに設けてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、積層構造を構成する少なくとも一層の化合物半導体層に、結晶欠陥の周期的な分布によって周期的な屈折率分布を生じさせることにより、素子特性に優れた発光素子、例えば駆動電流の制御が可能で、発光波長を変化させることができ、レーザ光の強度分布つまりNFP(NearField Pattern)を制御することができる半導体レーザ素子を実現することができる。更には、キンクの生じるストライプ幅を変えることができ、自然放出光強度を変えることができる半導体レーザ素子を実現することができる。
【0042】
本発明の作製方法によれば、先ず、化合物半導体層に少なくとも1種のイオンを注入することにより、化合物半導体層にダメージを与え、結晶性を悪化させる。その後、ウエットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングを行って、径及び深さが周期的に分布する空孔構造を形成し、これにより屈折率分布を生成させる。
イオン注入の加速電圧を制御することにより、ダメージの程度、即ち欠陥密度の大小を容易に変化させることができるので、周期的分布の空孔構造、従って屈折率分布を所望のように形成することができる。
本発明方法によれば、制御性、安定性、及び再現性に優れた屈折率分布を簡便なプロセスで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)から(c)は、それぞれ、本発明方法の原理を説明する基板断面図又は斜視図である。
【図2】図2(d)と(e)は、それぞれ、図1(c)に続いて本発明方法の原理を説明する基板断面図又は斜視図である。
【図3】実施形態例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図4】図4(a)と(b)は、それぞれ、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図5】図5(c)と(d)は、それぞれ、図4(b)に続いて、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図6】図6(e)と(f)は、それぞれ、図5(d)に続いて、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図7】図6(f)に続いて、実施形態例1の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の基板断面図である。
【図8】変形例の半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図9】実施形態例2の方法に従って半導体レーザ素子を製造する際の基板断面図である。
【符号の説明】
12……発光層、14……積層構造、16……上部層、18……レジストマスク、20……リッジ、22……化合物半導体層、24……SiO2 膜、25……結晶性を悪化させた領域、26……孔、27……レジストマスク、28……空孔、30……実施形態例のGaN系半導体レーザ素子、32……サファイア基板c面、34……GaNバッファ層、36……n型GaNコンタクト層、38……n型AlGaNクラッド層、40……n型GaN光導波層、42……活性層、44……p型GaN光導波層、46……p型AlGaNクラッド層、48……p型GaNコンタクト層、50……リッジ、52……空孔、54……n型電極、56……p型電極、70……GaN系半導体レーザ素子、72……補助電極、74……p型GaN光導波層、76……p型AlGaN第1クラッド層、78……p型AlGaN第2クラッド層。
Claims (8)
- 発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子において、
結晶欠陥の周期的な分布を有する少なくとも一層の化合物半導体層(以下、結晶欠陥化合物半導体層と言う)を積層構造の発光層近傍に有し、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的な分布によって、周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴とする発光素子。 - 結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布が発光層に平行な2次元方向の周期的な分布であって、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の2次元方向の周期的な分布によって、2次元方向の周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。 - 結晶欠陥化合物半導体層が複数の化合物半導体層によって構成され、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布が発光層に平行な面と発光層に直交する方向の3次元方向の周期的な分布であって、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の3次元方向の周期的な分布によって、3次元方向の周期的な屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。 - ストライプ状リッジが積層構造の上部に形成され、
リッジ脇の化合物半導体層が、結晶欠陥化合物半導体層を構成してリッジからの距離に応じて結晶欠陥の周期的分布を有し、
結晶欠陥化合物半導体層に存在する結晶欠陥の周期的分布によって、リッジからの距離に応じて屈折率が変わる屈折率分布をリッジ脇の発光層近傍に生じさせていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。 - 発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
積層構造の上部を構成する化合物半導体層をストライプ状リッジに形成する工程と、
リッジ脇に露出する化合物半導体層(以下、露出化合物半導体層と言う)又は露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層に、リッジからの距離に応じて周期的に結晶欠陥が分布する構造を形成する工程と
を備え、
結晶欠陥の周期的な分布によって周期的な屈折率分布をリッジ脇の化合物半導体層に生じさせることを特徴とする発光素子の作製方法。 - 発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
積層構造の上部を構成する化合物半導体層をストライプ状リッジに形成する工程と、
リッジ脇に露出する化合物半導体層(以下、露出化合物半導体層と言う)上に、リッジからの距離に応じて膜厚が減少する絶縁体膜又は誘電体膜を堆積させる工程と、
絶縁体膜又は誘電体膜を介して露出化合物半導体層にイオンを注入し、リッジへの距離に応じて露出化合物半導体層に対するイオン注入深さを深くするイオン注入工程と、
絶縁体膜又は誘電体膜を除去し、次いで微小な貫通孔を周期的な配列で備えたマスクを露出化合物半導体層上に形成する工程と、
マスク上から露出化合物半導体層をエッチングして、マスクの貫通孔の配列と同じ配列で、かつリッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部を露出化合物半導体層に設ける開口工程と
を備え、
リッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部からなる結晶欠陥の配列によって周期的な屈折率分布をリッジ脇の化合物半導体層に生じさせることを特徴とする発光素子の作製方法。 - イオン注入工程では、絶縁体膜又は誘電体膜を介して露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層にイオンを注入し、
開口工程では、マスク上から露出化合物半導体層及び露出化合物半導体層の下層の化合物半導体層をエッチングして、マスクの貫通孔の配列と同じ配列で、かつリッジへの距離に応じて深さが周期的に深くなる微小な開口部を露出化合物半導体層及び露出化合物半導体の下層の化合物半導体層に設けることを特徴とする請求項6に記載の発光素子の作製方法。 - 開口工程に続いて、リッジ上に電極を形成する工程を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の発光素子。
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JP2006054473A (ja) * | 2004-08-04 | 2006-02-23 | Lumileds Lighting Us Llc | 複数の格子を有するフォトニック結晶発光装置 |
JP2006276576A (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-12 | Ricoh Co Ltd | 光制御素子及び光制御素子製造方法 |
JP2007234724A (ja) * | 2006-02-28 | 2007-09-13 | Canon Inc | 垂直共振器型面発光レーザ、該垂直共振器型面発光レーザにおける二次元フォトニック結晶の製造方法 |
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US8405103B2 (en) | 2007-07-30 | 2013-03-26 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Photonic crystal light emitting device and manufacturing method of the same |
-
2002
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