JP2007043215A - 化合物半導体レーザ - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチング量の変化に対して横モードが変化しないような素子構造を提供し、特性の揃ったリッジ導波型III族窒化物半導体レーザを効率よく製作することを可能にする。
【解決手段】III族窒化物半導体からなる半導体レーザにおいて、基板上に第1の導電型を有する第1クラッド層と、活性層と、第2の導電型を有する第2クラッド層と、第2の導電型を有するコンタクト層とが積層されており、かつ活性層上方構造の一部において第2クラッド層上部のみもしくは第2クラッド層上部ないしコンタクト層がリッジ状に形成された構造であって、リッジ部の両側に形成される絶縁性もしくは第1の導電型を有する埋込層がレーザの発振波長に対して透明で、かつ第2クラッド層と概略同じ屈折率を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体レーザIII族窒化物半導体からなる半導体レーザに関する。
図2は、従来のリッジ導波路型III族窒化物系半導体レーザを示す断面概略図である。図2の半導体レーザは、まずサファイア基板201上のGaNバッファ層202、n−GaNコンタクト層203、n−GaN緩衝層204、n−AlGaNクラッド層205、n−GaNガイド層206、InGaN系MQW活性層207、p−AlGaNキャップ層208、p−GaNガイド層209、p−AlGaNクラッド層210、p−GaNコンタクト層211からなる積層構造を有する。サファイア基板は絶縁性であるので、n型電極を付設する領域を露出するために素子の一部はn型コンタクト層203まで掘り下げられている。また、メサ構造の一部はリッジ導波路を形成するためにp型クラッド層210まで掘り下げられる。これらの加工には、ドライエッチング法が用いられ、エッチング部分の保護として、SiO2保護膜214が付加されている。
図10は、光ガイド層の無い素子構造における、p−クラッド層残し膜厚とストライプ内外の実効屈折率差(従来例)、及び、エッチング部をp−クラッド層と同じ屈折率を持つ材料で埋め込んだ場合のストライプ内外の実効屈折率差(本発明)の比較を示す図である。従来のリッジ導波型III族窒化物系半導体レーザでは、図10中に示したように、リッジ部とリッジ外部に於けるp−AlGaNクラッド層210の厚さの違いによる屈折率差を利用して、図2の(A)部と同(B)部での実効的な屈折率分布を形成し、横モードの制御を行っているものである。図2の(B)部の実効的屈折率制御はエッチングせずに残すp−AlGaN層210の膜厚を調節することにより行われる。
これにより、室温で連続通電により、垂直方向の光放射角=34°、水平方向の光放射角=7°の光学的特性が得られている。また、室温・連続通電における素子寿命は35時間程度が得られている。図8はこれを示すもので、従来のリッジ導波型III族窒化物系半導体レーザの室温・連続通電時の動作電流の変化を示している。
しかしながら、図2に示したような従来のリッジ導波型III族窒化物系半導体レーザには、横モード特性の揃った半導体レーザを歩留りよく製作することが極めて困難であるという問題があった。なぜなら、III族窒化物半導体には適切な化学エッチング液が存在しないためエッチングにはRIEやRIBEなどのドライエッチングが用いられるのであるが、適切なエッチストップ層が存在しないので、図2の(B)部のp−AlGaN層211の膜厚制御を時間制御により行うなどの精度の低い手法をとらざるを得ず、そのために該AlGaN層211の膜厚がロットごと、あるいは同一ウェハの面内でばらついて横モードの制御性を著しく損ない、生産歩留まりが低下してしまう。
更なる問題点として、室温・連続通電における素子寿命が短いことが挙げられる。これは、ストライプ状リッジ形状を形成する際の加工方法にドライエッチングを用いているため、エッチングされる半導体層の側面及び底面は損傷を受け、結晶欠陥を生じることと、リッジ側面及びリッジ外部のp−AlGaNクラッド層上をSiO2保護膜で覆っているが、SiO2にはピンホールが多く存在し、実質上、当該結晶面の保護を充分に行えないことが原因であることを、筆者らは確認した。
上記の問題を解決するために、本発明では、エッチング量の変化に対して横モードが変化しないような素子構造を提供し、特性の揃ったリッジ導波型III族窒化物半導体レーザを効率よく製作することを可能にする。
更に、エッチングにより形成したリッジ状ストライプ外部にピンホールが少ない誘電体層、または、半導体層を厚く形成し実質上リッジ状ストライプを埋め込む構造とすることにより、エッチング加工時に生じた損傷による結晶欠陥が、連続通電動作によっても活性層へ伝搬せず、動作寿命を格段に向上した素子を実現する。
または、エッチングにより形成した凹状溝部を電流通路とするため、または、半導体層で埋め込む構造とすることによっても、エッチング加工時に生じた損傷による結晶欠陥が、連続通電動作によっても活性層へ伝搬せず、動作寿命を格段に向上した素子を実現する。
即ち本発明における半導体レーザは、基板上に第1の導電型を有する第1クラッド層と、活性層と、第2の導電型を有する第2クラッド層と、第2の導電型を有するコンタクト層とが積層されており、かつ活性層上方構造の一部において第2クラッド層上部のみもしくは第2クラッド層上部ないしコンタクト層がリッジ状に形成された構造であって、リッジ部の両側に形成される絶縁性もしくは第1の導電型を有する埋込層がレーザの発振波長に対して透明で、かつ第2クラッド層と概略同じ屈折率を有することを特徴とし、前記埋込層が、TiO2、ZrO2、HfO2、CeO2、In23、Nd23、Sb23、SnO2、Ta25、ZnOのうち少なくとも1種類以上を含む誘電体であることを特徴とし、または、前記埋込層が、ZnMgCdSSe化合物半導体であることを特徴とし、または、前記の埋込層が、第2クラッド層と概略同組成の半導体であることを特徴とする。
上記のような構造をとることにより、図10中に示したように、リッジ部内外での屈折率差はなくなる。一方、リッジ埋込層の電流狭窄作用により、活性層におけるリッジ直下部と埋込層直下部で利得差が生じ、その結果、横モードの制御がなされる。該構造においては、リッジ形成のためのエッチングプロセスのエッチング深さに対する誤差許容範囲が広く、横モード制御性が安定し、特性の揃ったレーザ素子の生産歩留まりが向上する。
また、これらの埋め込み材料はレーザの発振波長に対して透明なので光吸収による熱の発生などがなく、第2クラッド層と概略同じ屈折率を有するのでレーザの横モードに影響を与えず、埋込層として適している。さらに、エッチングにより形成したリッジ状ストライプ部を、前記埋込層により埋め込むため、エッチング加工時に生じた損傷による結晶欠陥が、連続通電動作によっても活性層へ伝搬せず、動作寿命を格段に向上した素子を実現する。さらに、前記埋込層の材料として第2クラッド層と概略同組成のIII族窒化物半導体を用いた場合には埋込層と他のエピタキシャル層との間の格子定数差が解消されるので、熱歪みなどの応力が素子に与える影響を回避することが可能になる。
また、本発明における半導体レーザの別の形態は、基板上に第1の導電型を有する第1クラッド層と、活性層と、第2の導電型を有する第2クラッド層と、第2の導電型を有し第2クラッド層よりも高い屈折率を示す光ガイド層と、第2の導電型を有する第3クラッド層と、第2の導電型を有するコンタクト層とが積層されており、かつ活性層上方構造の一部において第2クラッド層内の任意の位置ないし第3クラッド層、もしくは第2クラッド層内の任意の位置ないしコンタクト層がリッジ状に形成された構造であって、リッジ部の両側に形成される絶縁性もしくは第1の導電型を有する埋込層がレーザの発振波長に対して透明で、かつ第2クラッド層と概略同じ屈折率を有することを特徴とし、前記光ガイド層が、InGaAlNからなることを特徴とし、または、前記埋込層が、TiO2、ZrO2、HfO2、CeO2、In23、Nd23、Sb23、SnO2、Ta25、ZnOのうち少なくとも1種類以上を含む誘電体膜であることを特徴とし、または、前記埋込層が、ZnMgCdSSe化合物半導体であることを特徴とし、または、前記の埋込層が、第2クラッド層と概略同組成の半導体であることを特徴とする。
図11は、光ガイド層の有る素子構造における、p−クラッド層残し膜厚とストライプ内外の実効屈折率差(従来例)、及び、エッチング部をp−クラッド層と同じ屈折率を持つ材料で埋め込んだ場合のストライプ内外の実効屈折率差(本発明)の比較を示す図であって、上記のように光ガイド層がリッジ部に包含された構造をとることにより、図11中に示したように、リッジ内部の実効的な屈折率が大きくなり、したがって横方向の光分布界がより中央へ集中するようになり、前記の利得差を利用したリッジ導波型レーザよりも横モード制御が容易になる。埋込層がない、あるいは埋込層の屈折率が第2クラッド層と異なる場合には、リッジ外部の第2クラッド層の厚さ(エッチング残し膜厚)がリッジ外部での実効屈折率の値に関与し、レーザの特性に大きく影響する。
しかしながら本発明に係る構造では埋込層の屈折率が第2クラッド層と同じなのでリッジ外部の第2クラッド層の厚さ(エッチング残し膜厚)がリッジ外部での実効屈折率に影響を与えることはなく、したがってエッチング深さを精密に制御する必要がなく、そのエッチング深さは少なくとも光ガイド層がリッジ内部に存在するように光ガイド層−第2クラッド層界面に達していればよい。またオーバーエッチしてもエッチング底面が第2クラッド層内部にあるようにすればよいので、エッチング時の誤差許容範囲が大きく、横モード制御性が安定し、レーザの生産歩留まりが向上する。
また、本発明における半導体レーザの更に別の形態は、基板上に第1の導電型を有する第1クラッド層と、活性層と、第2の導電型を有する第2クラッド層と、絶縁性もしくは第1の導電型を有し第2クラッド層よりも低い屈折率を示す光反射層と、第2の導電型を有する第3クラッド層と、第2の導電型を有するコンタクト層とが積層されており、かつ活性層上方構造の一部において第2クラッド層内の任意の位置ないし第3クラッド層、もしくは第2クラッド層内の任意の位置ないしコンタクト層が凹状に形成された構造であって、凹部の内側に形成される埋込層が第2の導電型を有しかつ第2クラッド層と概略同組成の半導体であることを特徴とし、また、前記光反射層が、InGaAlNからなることを特徴とする。
上記のように絶縁性もしくは第1の導電型を有し、第2クラッド層よりも低い屈折率を示す半導体層が凹構造の溝以外の部分に包含された構造をとることにより、素子電流は凹構造の溝部分へと集中し、レーザの横方向に対して利得分布が生じるようになり、更に、実効的な屈折率は凹構造の溝部分が他に比べて相対的に大きくなり、横方向の光分布界がより中央へ集中するようになり、前記の利得分布の効果と併せてレーザの横モード制御が容易になる。
また、第2クラッド層上に積層される第2クラッド層よりも低い屈折率を示す半導体層の材料としてInGaAlNを用いることにより、該層上に連続して成長する各III族窒化物層が、欠陥の発生を抑止しつつエピタキシャル成長でき、レーザの信頼性向上につながる。
本発明によれば、従来のようにエッチングの残し膜厚によるリッジ導波型半導体レーザの横モード制御を行わないので、単一横モード特性を有する半導体レーザを高い生産歩留まりで作製することができる。
以下に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る半導体レーザの断面構造をあらわす概略図、図3は製造過程を示す模式図である。
本実施例のレーザダイオードは以下のようなプロセスにより形成された。まず有機金属気相成長(MOCVD)法により、(0001)面方位(C面)を有するサファイア基板101上に、アンドープのGaNバッファ層102を20nmと、n型の導電型を有する(以下n−と記す)GaNコンタクト層103を5μmと、n−Al0.3Ga0.7Nクラッド層104を1μmと、n−GaN光閉じ込め層105を0.1μmと、InGaN系MQW構造による活性層106と、p型の導電型を有する(以下p−と記す)GaN光閉じ込め層107を0.1μmと、p−Al0.3Ga0.7Nクラッド層108を1μmと、p−GaNコンタクト層109を0.5μmと、を順次エピタキシャル成長させる(図3(A))。
次に、p−コンタクト層109の一部にマスキングM1を施し、被マスク部以外のエピタキシャル層をn−コンタクト層103中の適当な深さまでドライエッチングし、メサ形状を形成する(図3(B))。
更に、前記マスクを剥離後、メサ頂上の一部および前のエッチングにより露出したn−コンタクト層103面の全面をマスクM2により被覆し、再度ドライエッチングを施して、メサ上部にリッジ構造を形成する。このときエッチングの深さはp−クラッド層108中のいずれかの位置までとし、残し膜厚を制御する必要はない(図3(C))。
続いて電子ビーム(EB)蒸着法により、TiO2とZrO2の混合物を素子上面から蒸着する。蒸着膜の厚さは、蒸着膜の表面がリッジ上面と同じ高さになる厚さとする。すなわち、TiO2とZrO2の混合物からなる埋込層110により、リッジ部を埋め込む(図3(D)。
最後にマスクM2及びリッジ上のTiO2とZrO2の混合物、n−GaNコンタクト層103に形成されているマスクM2及びマスクM2上のTiO2とZrO2の混合物を除去し、n−電極111及びp−電極112を形成し、図1のリッジ導波型レーザ構造が完成する。
本実施例の半導体レーザでは、活性層106から発する光の波長は520nmとなるように設計した。この波長に対するp−クラッド層108の屈折率はおよそ2.33であるので、埋込層の誘電体は、TiO2(屈折率=2.35)とZrO2(屈折率=2.05)を混合物とし、蒸着された混合膜の波長520nmにおける屈折率が2.33になるように調整した。活性層の設計変更により発振波長が変化した場合にはp−クラッド層108の屈折率も変化するが、その時は埋込層もTiO2とZrO2の混合比を変更したり、あるいは蒸着条件を変えたりして屈折率を変化させればよい。また、誘電体の種類はTiO2やZrO2に限られるものではなく、レーザの発振波長に対して透明であればどのような誘電体が用いられてもよい。また誘電体膜の形成方法もEB蒸着法に限られるものでは勿論なく、スパッタリング法やその他の薄膜形成プロセスが用いられても構わない。
以上のように形成された本実施例の埋め込みリッジ導波型半導体レーザでは、電流は絶縁体である誘電体埋込層110により狭窄され、リッジ部直下の活性層に集中するため、利得分布が生じる。一方、埋込層の屈折率はp−クラッド層のそれと等しいため、活性層で発した光は屈折率分布を感じない。したがって該レーザの横モード制御はリッジ幅の制御によりなされればよいので容易であり、またドライエッチングによるp−クラッド層108の残し膜厚を精密に制御する必要がないのでエッチング誤差の許容範囲が広がり、生産歩留まりが向上する。
さらに、エッチングにより形成したリッジ状ストライプ部を、TiO2とZrO2の混合物からなる埋込層110により埋め込んだため、エッチング加工時に生じた損傷による結晶欠陥が、連続通電動作によっても活性層へ伝搬せず、動作寿命を格段に向上した素子が実現できた。
図4は、本発明の第2の実施例に係る半導体レーザの断面構造をあらわす概略図である。本実施例のレーザダイオードは絶縁性基板を用いているため、その形成プロセスは実施例1とほぼ同様の加工工程を有する。まずMOCVD法により、(0001)面方位(C面)を有するサファイア基板401上に、アンドープのGaNバッファ層402を20nmと、n−GaNコンタクト層403を5μmと、n−Al0.08Ga0.92N第1クラッド層404を1μmと、n−GaN光閉じ込め層405を0.1μmと、InGaN系MQW構造による活性層406と、p−Al0.2Ga0.8N蒸発防止層407を0.05μmと、p−GaN光閉じ込め層408を0.1μmと、p−Al0.08Ga0.92N第2クラッド層409を0.2μmと、p−GaN光ガイド層410を0.05μmと、p−Al0.08Ga0.92N第3クラッド層411を0.8μmと、p−GaNコンタクト層412を0.5μmとを順次エピタキシャル成長させる。
次に、p−コンタクト層412の一部にマスキングM1を施し、被マスク部以外のエピタキシャル層をn−コンタクト層403中の適当な深さまでドライエッチングし、メサ形状を形成する。更に、前記マスクM1を剥離後、メサ頂上の一部および前のエッチングにより露出したn−コンタクト層403面の全面をマスクM2により被覆し、再度ドライエッチングを施して、メサ上部にリッジ構造を形成する。このときエッチングの深さはp−第2クラッド層409中のいずれかの位置までとし、残し膜厚を制御する必要はない。続いて分子線エピタキシ(MBE)法により、ClドープZnMgSSe化合物を素子上面から成膜する。該化合物層の厚さは、層の表面がリッジ上面と同じ高さになる厚さとする。即ちZnMgSSeからなる埋込層413により、リッジ部を埋め込む。
最後にマスクM1、マスクM2及びマスクM1、マスクM2上のClドープZnMgSSe化合物を除去し、n−電極414及びp−電極415を形成し、図4のリッジ導波型レーザ構造が完成する。本実施例の半導体レーザでは、活性層406から発する光の波長は410nmとなるように設計した。この波長に対するp−第2クラッド層409の屈折率はおよそ2.50であるので、埋込層のZnMgSSeの各元素の組成比はエネルギーギャップが3.03eV以上、屈折率は2.50となるように調節されている。活性層の設計変更により発振波長が変化した場合にはp−第2クラッド層409の屈折率も変化するが、その時は埋込層もZnMgSSeの組成比を変更して屈折率を変化させればよい。また、埋込に用いるII−VI族半導体の種類はZnMgSSeに限られるものではなく、たとえばZnCdSeなどが用いられてもよい。またII−VI族半導体膜の形成方法もMBE法によるエピタキシャル成長に限られるものでは勿論なく、スパッタリング法やその他の薄膜形成プロセスが用いられても構わない。
以上のように形成された本実施例のリッジ導波型半導体レーザでは、電流はn型の導電型を示すClドープZnMgSSe埋込層413により狭窄され、リッジ部直下の活性層に集中するため、利得分布が生じる。一方、リッジ内部に形成された光ガイド層410は屈折率がp−第2クラッド層409及び埋込層413に対して大きく、またリッジ外では光ガイド層410が取り除かれているため、リッジ内外で実効的な屈折率に分布が生じる。したがって、光ガイド層を有さない第1の実施例に比べて、リッジ直下部への光り閉じ込めの効率がよくなり、横モード制御がより容易になる。またドライエッチングによるリッジ形成においては、エッチング底面が少なくとも光ガイド層410とp−第2クラッド層409の界面に達していればよく、光閉じ込め層408に達しなければオーバーエッチも許容されるので、残し膜厚を精密に制御する必要がなくなり、生産歩留まりが向上する。
さらに、エッチングにより形成したリッジ状ストライプ部を、ZnMgSSeからなる埋込層413により埋め込んだため、エッチング加工時に生じた損傷による結晶欠陥が、連続通電動作によっても活性層へ伝搬せず、動作寿命を格段に向上した素子が実現できた。
図5は、本発明の第3の実施例に係る半導体レーザの断面構造をあらわす概略図である。本実施例のレーザダイオードは以下のようなプロセスにより形成された。まずMOCVD法により、n−SiC基板501上に、アンドープのGaNバッファ層502を20nmと、n−Al0.08Ga0.92N第1クラッド層503を1μmと、n−GaN光閉じ込め層504を0.1μmと、InGaN系MQW構造による活性層505と、p−Al0.2Ga0.8N蒸発防止層506を0.05μmと、p−GaN光閉じ込め層507を0.1μmと、p−Al0.08Ga0.92N第2クラッド層508を0.2μmと、p−Al0.02Ga0.98N光ガイド層509を0.05μmと、p−Al0.08Ga0.92N第3クラッド層510を0.8μmと、p−GaNコンタクト層511を0.5μmとを順次エピタキシャル成長させる。次に、p−コンタクト層511の一部にマスクを施し、被マスク部以外のエピタキシャル層をドライエッチングして、リッジ構造を形成する。このときエッチングの深さはp−第2クラッド層508中のいずれかの位置までとし、残し膜厚を制御する必要はない。続いて、リッジ上部にマスクを残したままMOCVD法による選択成長により、n−Al0.08Ga0.92N層をリッジ側面にのみ成膜する。該AlGaN層の厚さは、層の表面がリッジ上面と同じ高さになる厚さとする。即ちn−Al0.08Ga0.92Nからなる埋込層512により、リッジ部を埋め込む。最後にマスクを除去し、基板裏面にn−電極513を、素子上面にp−電極514を形成し、図5のリッジ導波型レーザ構造が完成する。
本実施例の半導体レーザでは、活性層505から発する光の波長は450nmとなるように設計した。この波長に対するp−第2クラッド層508の屈折率はおよそ2.45である。本実施例においては、埋込層512はp−第2クラッド層508と導電型が異なるだけで同一の組成であり、該埋込層の屈折率はおよそ2.45であり、発振波長に対して透明である。したがって本実施例のリッジ導波型半導体レーザでは、素子電流はn−AlGaN埋込層512により狭窄され、リッジ部直下の活性層に集中するため、利得分布が生じる。一方、リッジ内部に形成された光ガイド層509は屈折率がp−第2クラッド層508及び埋込層412に対して大きく、またリッジ外では光ガイド層410が取り除かれているため、リッジ内外で実効的な屈折率に分布が生じる。したがって第2の実施例と同様、リッジ直下部への光り閉じ込めの効率がよくなり、横モード制御がより容易になる。またドライエッチングによるリッジ形成においては、エッチング底面が少なくとも光ガイド層509とp−第2クラッド層508の界面に達していればよく、光閉じ込め層507に達しなければオーバーエッチも許容されるので、残し膜厚を精密に制御する必要がなくなり、生産歩留まりが向上する。
図6は、本発明の第4の実施例に係る半導体レーザの断面構造をあらわす概略図、図7は製造過程を示す模式図である。
本実施例のレーザダイオードは以下のようなプロセスにより形成された。まずMOCVD法により、n−GaN基板601上に、アンドープのGaNバッファ層602を20nmと、n−Al0.08Ga0.92N第1クラッド層603を1μmと、n−GaN光閉じ込め層604を0.1μmと、InGaN系MQW構造による活性層605と、p−Al0.2Ga0.8N蒸発防止層606を0.05μmと、p−GaN光閉じ込め層607を0.1μmと、p−Al0.08Ga0.92N第2クラッド層608を0.2μmと、n−Al0.3Ga0.7N光反射層609を0.1μmと、p−Al0.08Ga0.92N第3クラッド層610を0.7μmと、p−GaNコンタクト層611を0.5μmと、を順次エピタキシャル成長させる(図7(A))。
次に、p−コンタクト層611の一部にマスキングM1を施し、被マスク部以外のエピタキシャル層をドライエッチングして、凹構造を形成する。このときエッチングの深さはp−第2クラッド層608中のいずれかの位置までとし、残し膜厚を制御する必要はない(図7(B))。
続いて、凹部以外のマスクを残したままMOCVD法による選択成長により、凹構造の溝内部にのみ選択的にp−Al0.08Ga0.92N層612をp−第3クラッド層610とp−コンタクト層611の界面付近まで、続いてp−GaN層613をp−コンタクト層611の表面近傍までエピタキシャル成長させる。即ちp−Al0.08Ga0.92Nからなる埋込層612により、凹構造の溝部を埋め込む(図7(C))。
最後にマスクM1を除去し、基板裏面にn−電極614を、素子上面にp−電極615を形成し、図6のレーザ構造が完成する。本実施例の半導体レーザでは、活性層605から発する光の波長は430nmとなるように設計した。本実施例においては、埋込層612はp−第2クラッド層608と導電型も組成も同一であり、かつ凹構造の溝部分以外に付設されている光反射層609はその導電型の違いから電流阻止層となるため、素子電流は溝部直下の活性層に集中し、レーザの横方向に対して利得分布が生じる。一方、溝部以外に付設されている光反射層609は屈折率がp−第2クラッド層608及び埋込層612に対して小さく、また溝部では屈折率が一様であるので、溝部以外で光が感じる実効的な屈折率が小さいため、ストライプ構造の内外で実効屈折率に分布が生じる。したがって、ストライプ部への光り閉じ込めの効率がよくなり、横モード制御がより容易になる。またドライエッチングによる溝構造形成においては、エッチング底面が少なくとも光反射層609とp−第2クラッド層608の界面に達していればよく、光閉じ込め層607に達しなければオーバーエッチも許容されるので、残し膜厚を精密に制御する必要がなくなり、生産歩留まりが向上する。なお、上記の4実施例では種々の基板やバッファ層、光閉じ込め層など、請求の範囲にない構造が用いられているが、これらは特性のよいレーザ素子の形成のために用いられたものであって、リッジ部分の構造に関する本発明の実施に影響を及ぼすものではない。
本発明の第1の実施例に係る半導体レーザの断面構造を示す模式図である。 従来の半導体レーザの断面構造を示す模式図である。 本発明の第1の実施例の半導体レーザの製作過程を示す模式図である。 本発明の第2の実施例に係る半導体レーザの断面構造を示す模式図である。 本発明の第3の実施例に係る半導体レーザの断面構造を示す模式図である。 本発明の第4の実施例に係る半導体レーザの断面構造を示す模式図である。 本発明の第4の実施例の半導体レーザの製作過程を示す模式図である。 従来の半導体レーザの室温・連続通電時の動作電流の変化を示す図である。 本発明の第1の実施例に係る半導体レーザの室温・連続通電時の動作電流の変化を示す図である。 光ガイド層の無い素子構造における、p−クラッド層残し膜厚とストライプ内外の実効屈折率差を従来例、本発明を比較して示す図である。 光ガイド層の有る素子構造における、p−クラッド層残し膜厚とストライプ内外の実効屈折率差を従来例、本発明を比較して示す図である。
符号の説明
101、401 サファイア基板
103、403 n−GaNコンタクト層
104 n−Al0.15Ga0.85Nクラッド層
105、405、504、604 n−GaN光閉じ込め層
106、406、505、605 InGaN系多重量子井戸活性層
107、408、507、607 p−GaN光閉じ込め層
108 p−Al0.15Ga0.85Nクラッド層
109、412、511、611 p−GaNコンタクト層
110 誘電体埋込層
404、503、603 n−Al0.08Ga0.92N第1クラッド層
407、506、606 p−Al0.2Ga0.8N蒸発防止層
409、508、608 p−Al0.08Ga0.92N第2クラッド層
410、509、609 p−GaN光ガイド層
411、510、610 p−Al0.08Ga0.92N第3クラッド層
413 ClドープZnMgSSe埋込層
501 n−SiC基板
512 n−Al0.08Ga0.92N埋込層
601 n−GaN基板
612 p−Al0.08Ga0.92N埋込層
613 p−GaN層

Claims (1)

  1. III族窒化物半導体からなる半導体レーザにおいて、基板上に第1の導電型を有する第1クラッド層と、活性層と、第2の導電型を有する第2クラッド層と、第2の導電型を有するコンタクト層とが積層されており、かつ活性層上方構造の一部において第2クラッド層上部のみもしくは第2クラッド層上部ないしコンタクト層がリッジ状に形成された構造であって、リッジ部の両側に形成される絶縁性もしくは第1の導電型を有する埋込層がレーザの発振波長に対して透明で、かつ第2クラッド層と概略同じ屈折率を有することを特徴とする化合物半導体レーザ。
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