JP4131204B2 - 再現色予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、再現色予測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、プリンタ等による印刷において、再現色を予測する方法(再現色予測方法)が知られている。
従来の再現色予測方法では、2次(2次色)以上の混色を予測する際は、混色も測定し、補間することが必要であった。すなわち、単色のみを測定して混色を予測することは、できなかった。
ここで、従来の再現色予測方法としては、例えば、Yule−Nielsen,Neugebauer法(Y−N−N法)を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載の方法では、ベタ書きの分光反射率を面積率100%としているが、ベタ書きの定義がはっきりしておらず、また、同色の色材(インク)の重なりを考慮していないために、その色材の高濃度(階調)領域での予測の精度は、不十分であり、また、濃度が高すぎると、再現色を予測することができない。
また、混色を予測するには、混色も測定する必要があり、このため、手間と時間とがかかる。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−115002号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、単色のみの測定で、2次(2次色)以上の混色の再現色を、高濃度(階調)領域まで、迅速、正確かつ確実に予測することができる再現色予測方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0016】
本発明の再現色予測方法は、支持体に印刷される混色を予測する再現色予測方法であって、
支持体に複数の単色の色材をそれぞれ階調を変化させて印刷し、該各単色の該各階調について、それぞれ、分光反射率を測定する工程と、
前記各単色の前記各階調について、それぞれ、下記式1を用いて、各波長λに対する吸光係数kλ,g,iを算出する工程と、
下記式3を用いて、予測する混色の分光反射率を算出する工程とを有することを特徴とする。
kλ,g,i=gi −1・ln(Rλ,g,i/R0λ) ・・・(式1)
ここで、上記式1において、giは、色iの階調、Rλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する支持体および印刷された色材の反射率、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率を表す。
Rλ=R0 λ・exp[{kλ ,g,igi・(ratioi)+kλ ,g,jgj・(ratioj)}・{−a・(ratioj)2+a・(ratioj)+1}] ・・・(式3)
ここで、上記式3において、giは、色iの階調、gjは、色jの階調、kλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する吸光係数、kλ,g,jは、色jの階調gjについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率、aは、階調gに対して決まる1次関数的に変化する変数を表し、また、ratioi=kλ ,g,igi/(kλ ,g,igi+kλ ,g,jgj)、ratioj=kλ ,g, jgj/(kλ ,g,igi+kλ ,g,jgj)である。
【0017】
これにより、複数の単色のみの分光反射率の測定(測色)で、2次(2次色)以上の各混色の再現色を、それぞれ、高濃度(階調)領域まで、より正確かつ確実に予測することができる。
すなわち、複数の単色のみの分光反射率の測定で、その単色のすべての組み合せの混色のすべての階調について、それぞれ、分光反射率(分光反射スペクトル)や各色値を、より正確かつ確実に予測する(求める)ことができる。
【0018】
また、複数の単色のみの分光反射率の測定で、各混色の分光反射率を予測することができるので、各混色の再現色の予測を、容易かつ迅速に行うことができる。特に、混色の再現色を予測するために必要であった測定点数を少なくすることができるので、測定に要する時間を短縮することができるとともに、測定に要する手間を削減することができる。
【0023】
本発明の再現色予測方法では、前記予測する混色の分光反射率を算出する工程において、2次色については、前記式3を用いて、分光反射率を算出し、n次色(但し、nは、3以上の整数のうちの少なくとも1つの任意の値)については、下記式3Aを用いて、分光反射率を算出するのが好ましい。
Rλ=R0 λ・exp[{kgn-1, λ・(ratioi)+kλ ,g,jgj・(ratioj)}・{−a・(ratioj)2+a・(ratioj)+1}] ・・・(式3A)
ここで、上記式3Aにおいて、gjは、色jの階調、kλ,g,jは、色jの階調gjについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率、aは、階調gに対して決まる1次関数的に変化する変数、kgn-1, λは、(n−1)次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3または上記式3Aのexpの指数部の値を表し、また、ratioi=kgn-1, λ/( kgn-1, λ+kλ ,g,jgj)、ratioj=kλ ,g, jgj/( kgn-1, λ+kλ ,g,jgj)である。
【0024】
これにより、複数の単色のみの分光反射率の測定(測色)で、2次色およびn次色(但し、nは、3以上の整数のうちの少なくとも1つの任意の値)の再現色を、それぞれ、高濃度(階調)領域まで、より正確かつ確実に予測することができる。
すなわち、複数の単色のみの分光反射率の測定で、その単色のすべての組み合せの混色のすべての階調について、それぞれ、分光反射率(分光反射スペクトル)や各色値を、より正確かつ確実に予測する(求める)ことができる。
【0025】
本発明の再現色予測方法では、前記印刷をインクジェットプリンタで行うのが好ましい。なお、本発明の再現色予測方法は、この他、例えば、レーザプリンタ等の色点で画像を表示(印刷)する場合に適用することが可能である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の再現色予測方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の再現色予測方法の実施形態における工程を示す図(フローチャート)である。
【0027】
本発明の再現色予測方法は、印刷(描画)される2次(2次色)以上の色(混色)の分光反射率を、複数の単色の分光反射率に基づいて求める(予測する)ことによって、その混色の再現色を予測する方法である。また、得られた混色の分光反射率に基づいて、例えば、色値、色差、RMS等を求める。
すなわち、本発明の再現色予測方法は、図1に示すように、単色の分光反射率を測定する工程(第1の工程S101)と、吸光係数kを算出する工程(第2の工程S102)と、階調(階調数)gを変数として吸光係数kを関数化する工程(第3の工程S103)と、混色の分光反射率を算出する工程(第4の工程S104)とを有している。これらの工程は、この順序で、実行される。以下、各工程を順次説明する。
【0028】
<単色の分光反射率の測定(第1の工程S101)>
まず、支持体(例えば、プリント用紙)に、複数(複数色)の単色の各色材(例えば、インク)を、それぞれ、階調(階調数)を変化させて(複数の階調で)印刷(描画)する。
前記印刷する単色の色としては、特に限定されず、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等が挙げられる。また、印刷する単色の数は、2(2色)以上であればよい。
【0029】
また、前記印刷では、必要とされるすべての階調で印刷してもよいが、本実施形態では、階調を間引いて印刷する。そして、後の工程において、必要な階調に関してのデータが得られるように関数化する。
これにより、測定点数を少なくすることができ、測定に要する時間を短縮することができるとともに、測定に要する手間を削減することができる。
また、印刷は、例えば、インクジェットプリンタ(インクジェット方式のプリンタ)で行われる。なお、印刷には、他の方式のプリンタや、他の装置を用いてもよい。他の方式のプリンタとしては、例えば、レーザプリンタ等、色点で画像を表示(印刷)する装置等が挙げられる。
【0030】
次に、所定の測定装置(分光光度計)を用いて、支持体に印刷された各色の各階調について、それぞれ、分光反射率を測定する。すなわち、印刷がなされた支持体の表面(印刷面)の分光反射率を測定する。
この分光反射率は、第1の波長λ1から第2の波長λ2までの範囲において測定される。この場合、可視光領域の複数の波長について、反射率を測定するのが好ましい。
すなわち、前記第1の波長λ1は、例えば、350〜380nm程度とするのが好ましい。
【0031】
また、前記第2の波長λ2は、例えば、730〜750nm程度とするのが好ましい。
また、隣り合う波長の間隔dは、例えば、5〜10nm程度とするのが好ましい。
また、用いる支持体の色は、特に限定されないが、例えば、白色等が好ましい。
【0032】
<吸光係数kの算出(第2の工程S102)>
次に、Lambert−Beerの法則、すなわち、Lambert−Beerの法則から導かれる下記式1を用いて、各色iの各階調(階調数)giについての各波長λに対する吸光係数kλ,g,iを、それぞれ、算出する(求める)。具体的には、測定した各反射率の値を、それぞれ、下記式1に代入して、各吸光係数kλ,g,iを、それぞれ、算出する。
【0033】
kλ,g,i=gi −1・ln(Rλ,g,i/R0λ) ・・・(式1)
ここで、上記式1において、Rは、支持体および印刷された単色色材の分光反射率、R0は、支持体のみの分光反射率を表す。すなわち、giは、色iの階調(階調数)、Rλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する支持体および印刷された色材の反射率、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率を表す。
また、本実施形態では、階調(階調数)giの最大値は、例えば、255とされる。
【0034】
<階調gを変数として吸光係数kを関数化(第3の工程S103)>
次に、前記算出した各吸光係数kλ,g,iの値と、それに対応する階調giの値とを用いて、各色iの各波長λ毎に、それぞれ、吸光係数kを目的変数、階調(階調数)gを説明変数として、その吸光係数kを多項式(近似多項式)で表す(関数化する)。なお、本実施形態では、前記多項式に代入される階調giの値は、例えば、1〜255の整数のうちの任意の値とされる。
【0035】
この多項式により、測定されていない階調giに関しての吸光係数kλ,g, iでも得ることができる。すなわち、必要なすべての階調giに関しての吸光係数kλ,g,iを得ることができる。
前記多項式の次数は、特に限定されないが、2次以上が好ましく、5次以上がより好ましい。
前記多項式の次数を2次以上、特に5次以上にすることにより、より正確に吸光係数kを求めることができる。
【0036】
<基本式を用いての2次(2次色)以上の色(混色)の分光反射率の算出(第4の工程S104)>
次に、予測する(目的の)2次色以上の各混色について、それぞれ、予測する混色に対応する色(単色)iについての吸収量(吸光係数k×階調g)の和を求め、この和に基づいて、再現色(色再現)を予測する。
この場合、まず、下記式2で示す基本式を用いて、予測する2次色以上の各混色について、それぞれ、分光反射率R(λ)を算出する(求める)。
【0037】
すなわち、算出した各吸光係数kλ,g,iの値を、それぞれ、下記式2に代入して、予測する各混色についての各波長λに対する反射率(支持体および印刷された色材の反射率)Rλを、それぞれ、算出する(予測する)。これにより、予測する各混色についての分光反射率R(λ)が、それぞれ、得られる(予測される)。
【0038】
【数5】
【0039】
ここで、上記式2において、giは、色iの階調、kλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率を表す。
また、Σのi=colorは、予測する混色に対応する各色(単色)に関して足し合わせることを意味する。
また、前述したように、本実施形態では、上記式2に代入される階調giの値は、例えば、1〜255の整数のうちの任意の値とされる。
ここで、混色について分光反射率R(λ)を算出する場合、上記式2で示す基本式に換えて、精度向上式を用いるのが好ましい。
【0040】
精度向上式においては、混色の分光反射率R(λ)を求める際に、吸収の大きな色を、上記式2で示す基本式より大きく評価する(大きく見積もる)。
この精度向上式は、例えば、式2で示す基本式のexpの指数部を変更した式である。すなわち、精度向上式では、式2のexpの指数部において、吸収量(kλ,g,i・gi)の大小に応じて重み付けを行い、吸収量(kλ,g,i・gi)の値が大きい程、その吸収量(kλ,g,i・gi)を大きく評価する(大きく見積もる)。
この精度向上式を用いることにより、混色について分光反射率R(λ)を、より精度良く算出することができる。
【0041】
次に、精度向上式の一例として、2次色の分光反射率R(λ)を算出する式を挙げ、その精度向上式を説明する。2次色の分光反射率R(λ)を算出する精度向上式は、下記式3に示す通りである。
Rλ=R0 λ・exp[{kλ ,g,igi・(ratioi)+kλ ,g,jgj・(ratioj)}・{−a・(ratioj)2+a・(ratioj)+1}] ・・・(式3)
【0042】
ここで、上記式3において、giは、色iの階調、gjは、色jの階調、kλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する吸光係数、kλ,g,jは、色jの階調gjについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率、aは、階調gに対して決まる1次関数的に変化する変数を表す。
【0043】
また、ratioi=kλ ,g,igi/(kλ ,g,igi+kλ ,g,jgj)、ratioj=kλ ,g, jgj/(kλ ,g,igi+kλ ,g,jgj)である。
また、前述したように、本実施形態では、上記式3に代入される階調gi、giの値は、それぞれ、例えば、1〜255の整数のうちの任意の値とされる。
なお、上記式3は、2次色の場合の例であるが、3次色以上の混色についても、上記式3を用いて、分光反射率R(λ)を算出することができる。
【0044】
例えば、3次色の場合は、まず、その3次色を構成する3つの単色のうちの所定の2つの単色からなる2次色について、上記式3のexpの指数部の値を算出し、その値を、kλ ,g,igiとkλ ,g,jgjとのうちの一方とし、残りの1つの単色を他方とし、上記式3を用いて、分光反射率R(λ)を算出する。
同様にて、4次色以上の混色についても、上記式3を用いて、分光反射率R(λ)を算出する。
【0045】
次に、3次(3次色)以上の混色の分光反射率R(λ)を算出する精度向上式の一例を挙げ、その精度向上式を説明する。n次色(但し、nは、3以上の整数のうちの少なくとも1つの任意の値)の分光反射率R(λ)を算出する精度向上式は、下記式3Aに示す通りである。
Rλ=R0 λ・exp[{kgn-1, λ・(ratioi)+kλ ,g,jgj・(ratioj)}・{−a・(ratioj)2+a・(ratioj)+1}] ・・・(式3A)
ここで、上記式3Aにおいて、gjは、色jの階調、kλ,g,jは、色jの階調gjについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率、aは、階調gに対して決まる1次関数的に変化する変数を表す。
【0046】
また、kgn-1, λは、(n−1)次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3または上記式3Aのexpの指数部の値を表す。すなわち、n=3のときのkgn-1, λ(kg2 , λ)は、2次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3のexpの指数部の値を表し、n≧4のときのkgn-1, λは、(n−1)次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3Aのexpの指数部の値を表す。
【0047】
また、ratioi=kgn-1, λ/( kgn-1, λ+kλ ,g,jgj)、ratioj=kλ ,g, jgj/( kgn-1, λ+kλ ,g,jgj)である。
また、前述したように、本実施形態では、上記式3Aに代入される階調giの値は、例えば、1〜255の整数のうちの任意の値とされる。
2次色については、前述したように、上記式3を用いて、分光反射率R(λ)を算出する。
【0048】
そして、n次色(但し、nは、3以上の整数のうちの少なくとも1つの任意の値)については、上記式3Aを用いて、分光反射率R(λ)を算出する。すなわち、3次色の場合は、2次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3のexpの指数部の値を、上記式3Aのkgn-1, λに代入して、反射率を算出し、4次(4次色)以上の混色の場合は、(n−1)次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3Aのexpの指数部の値を、上記式3Aのkgn-1, λに代入して、反射率を算出する。
【0049】
次に、下記式4〜式11を用いて、各色値L*、a*およびb*と、色差ΔEと、RMSとを、それぞれ、算出して、各混色の再現色をそれぞれ予測する。
なお、下記式10の色差ΔEおよび式11のRMSについては、それぞれ、計算値と実測値との比較を示すが、色差ΔEおよびRMSは、それぞれ、これに限らず、所定の2色の比較であればよい。
【0050】
【数6】
【0051】
また、前記XYZ表色系としては、例えば、R(レッド)G(グリーン)B(ブルー)表示系等が挙げられ、例えば、RをX、GをY、BをZにそれぞれ対応させる。
また、波長λは、380〜730nmの範囲であって、10nm間隔とされる。
【0052】
L*=116(Y/Yn)1/3-16 ・・・(式7)
a*=500{(X/Xn)1/3-(Y/Yn)1/3} ・・・(式8)
b*=200{(Y/Yn)1/3-(Z/Zn)1/3} ・・・(式9)
但し、Xn、Yn、Zn:照明光源下の完全拡散面の三刺激値
ΔE={(Lcalc-Lexp)2+(acalc-aexp)2+(bcalc-bexp)2}1/2 ・・・(式10)
但し、色値L、aおよびbにおける添え字「calc」は、それぞれ、計算値を表し、添え字「exp」は、それぞれ、実測値を表す。
【0053】
【数7】
但し、Rcalc , λは、分光反射率の波長λにおける計算値(波長λに対する反射率の計算値)、Rexp , λは、分光反射率の波長λにおける実測値(波長λに対する反射率の実測値)であり、また、mは、データ数を表す。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の再現色予測方法によれば、複数の単色のみの分光反射率の測定(測色)で、2次(2次色)以上の各混色の再現色を、それぞれ、高濃度(階調)領域まで、正確かつ確実に予測することができる。
すなわち、複数の単色のみの分光反射率の測定で、その単色のすべての組み合せの混色のすべての階調について、それぞれ、分光反射率(分光反射スペクトル)および各色値を、正確かつ確実に予測する(求める)ことができる。
【0055】
また、複数の単色のみの分光反射率の測定で、各混色の分光反射率を予測することができるので、各混色の再現色の予測を、容易かつ迅速に行うことができる。特に、混色の再現色を予測するために必要であった測定点数を少なくすることができるので、測定に要する時間を短縮することができるとともに、測定に要する手間を削減することができる。
【0056】
また、複数の単色のみの分光反射率の測定で、各混色の分光反射率を予測することができるので、必要なデータ量を少なくすることができ、これにより、プリンタのメモリ(記憶手段)の容量を減少させることができる。
また、本実施形態の再現色予測方法では、低濃度領域はもちろんのこと、高濃度領域であっても、各混色の再現色を精度良く予測することができるので、この再現色予測方法は、色域を求める方法として、好適であり、また、色材(インク)の組み合わせの良否を判定するにあたって、好適に用いることができる。
【0057】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例(実験例)について説明する。
(実施例1)
C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色の各インクを、それぞれ、専用カートリッジに充填し、各専用カートリッジをプリンタにセットし、そのプリンタにより、各インクを使用し、それぞれ、階調を変化させてプリント用紙に印刷を行った。この場合、階調gは、20〜240の範囲であって、20間隔とした。
【0058】
プリンタとしては、インクジェットプリンタMC2000(セイコーエプソン社製)を用い、プリント用紙としては、インクジェット専用紙MC写真用紙半光沢(セイコーエプソン社製)を用いた。
そして、分光光度計スペクトロ・アイ(グレタグマクベス社製)を用いて、分光反射率および各色値を測定した。この場合、波長λは、380〜730nmの範囲であって、10nm間隔とした。
【0059】
次に、前述した式1および式2(基本式)を用いて、CとMの2次色、CとYの2次色、MとYの2次色、CとMとYの3次色の分光反射率を、それぞれ、算出した。
この場合、各2次色は、それぞれ、各色の階調gが20から160まで(20間隔)の同階調の組合せとし、3次色は、各色の階調gが20から100まで(20間隔)の同階調の組合せとした。
【0060】
また、後述する評価のため、各2次色および3次色について、それぞれ、実際に印刷を行って、分光反射率および各色値を測定した。
そして、前述した式4〜式11を用いて、各単色、各2次色および3次色について、それぞれ、色差ΔEおよびRMSを算出し、色差ΔEの平均値およびRMSの平均値をそれぞれ求めた。この場合、各平均値は、階調100までのものと、予測したすべての階調に対してのものとを求めた。結果は、下記表1に示す通りである。
【0061】
(実施例2)
実施例1の式2(基本式)を前述した式3(精度向上式)および式3A(精度向上式)に変更した他は、実施例1と同様にして、各2次色および3次色の分光反射率をそれぞれ算出し、色差ΔEの平均値およびRMSの平均値をそれぞれ求めた。結果は、下記表1に示す通りである。
【0062】
(比較例)
特許文献1に記載されているYule−Nielsen,Neugebauer法(Y−N−N法)を用いて、各2次色および3次色の分光反射率をそれぞれ算出し、色差ΔEの平均値およびRMSの平均値をそれぞれ求めた。結果は、下記表1に示す通りである。
【0063】
【表1】
【0064】
上記表1に示すように、実施例1および2では、100を超える階調まで、混色の再現色の予測を精度良く行うことができたことが判る。
これに対し、比較例では、階調100で面積率が100%となるので、100を超える階調では、混色の再現色の予測を行うことはできなかった。
また、実施例1および2では、単色のみの分光反射率の測定により、混色の再現色の予測を行うことができたが、比較例では、混色の再現色の予測を行うには、混色についての分光反射率を測定する必要があった。
【0065】
以上、本発明の再現色予測方法を、実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を有する任意の構成に置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の再現色予測方法の工程を示す図(フローチャート)。
【符号の説明】
S101……第1の工程 S102……第2の工程 S103……第3の工程
S104……第4の工程
Claims (3)
- 支持体に印刷される混色を予測する再現色予測方法であって、
支持体に複数の単色の色材をそれぞれ階調を変化させて印刷し、該各単色の該各階調について、それぞれ、分光反射率を測定する工程と、
前記各単色の前記各階調について、それぞれ、下記式1を用いて、各波長λに対する吸光係数kλ,g,iを算出する工程と、
下記式3を用いて、予測する混色の分光反射率を算出する工程とを有することを特徴とする再現色予測方法。
kλ,g,i=gi −1・ln(Rλ,g,i/R0λ) ・・・(式1)
ここで、上記式1において、giは、色iの階調、Rλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する支持体および印刷された色材の反射率、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率を表す。
Rλ=R0 λ・exp[{kλ ,g,igi・(ratioi)+kλ ,g,jgj・(ratioj)}・{−a・(ratioj)2+a・(ratioj)+1}] ・・・(式3)
ここで、上記式3において、giは、色iの階調、gjは、色jの階調、kλ,g,iは、色iの階調giについての波長λに対する吸光係数、kλ,g,jは、色jの階調gjについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率、aは、階調gに対して決まる1次関数的に変化する変数を表し、また、ratioi=kλ ,g,igi/(kλ ,g,igi+kλ ,g,jgj)、ratioj=kλ ,g, jgj/(kλ ,g,igi+kλ ,g,jgj)である。 - 前記予測する混色の分光反射率を算出する工程において、2次色については、前記式3を用いて、分光反射率を算出し、n次色(但し、nは、3以上の整数のうちの少なくとも1つの任意の値)については、下記式3Aを用いて、分光反射率を算出する請求項1に記載の再現色予測方法。
Rλ=R0 λ・exp[{kgn-1, λ・(ratioi)+kλ ,g,jgj・(ratioj)}・{−a・(ratioj)2+a・(ratioj)+1}] ・・・(式3A)
ここで、上記式3Aにおいて、gjは、色jの階調、kλ,g,jは、色jの階調gjについての波長λに対する吸光係数、R0λは、波長λに対する支持体のみの反射率、aは、階調gに対して決まる1次関数的に変化する変数、kgn-1, λは、(n−1)次色の波長λに対する反射率を算出する際の上記式3または上記式3Aのexpの指数部の値を表し、また、ratioi=kgn-1, λ/( kgn-1, λ+kλ ,g,jgj)、ratioj=kλ ,g, jgj/( kgn-1, λ+kλ ,g,jgj)である。 - 前記印刷をインクジェットプリンタで行う請求項1または2に記載の再現色予測方法。
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