JP4131196B2 - 燃焼装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液体燃料を用いた燃焼装置に係り、更に詳しくは、液体燃料を気化させる気化部の温度異常を的確に検知して安全性、燃焼性を向上させたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
給湯器や暖房機等には、ランニングコスト低減のために、安価な灯油等の液体燃料を使用する燃焼装置が多用されている。この中でも、比較的発熱量が小さい用途に使用される場合は、気化部によって液体燃料を気化し、気化された燃料ガスを燃焼部に送って燃焼させる形式のものが多用されている
【0003】
ところで、従来技術の燃焼装置では、液体燃料を気化させるために気化部に電気ヒータを用いた構造を採用していた。則ち、電気ヒータによって気化部を加熱しつつ、気化部内部に飛散させた液体燃料を熱によって気化させる構造を採用していた。しかし、気化部を液体燃料の気化温度まで昇温させるのに時間を要し、給湯運転の開始時など気化部の温度が低いときは、給湯栓を開いてから湯が出るまでに時間がかかり、使い勝手が悪かった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本出願人は、電気ヒータを用いる構成に代えて、電磁誘導加熱方式を採用して気化部の加熱を行う燃焼装置を試作した。電磁誘導加熱方式を採用した燃焼装置では、燃焼運転の開始時など気化部が冷えている場合でも、電磁誘導によって短時間に効率良く気化部を昇温させることができる。従って、給湯運転に際して、湯が出るまでの待ち時間を大幅に短縮することができ、使い勝手を向上させることが可能である。
【0005】
ところが、電磁誘導加熱方式を採用した燃焼装置では、電磁誘導加熱のために1KW前後の大きな電力を消費する。このため、屋内配線などの電圧降下に伴う弊害が生じ易かった。則ち、燃焼装置の電磁誘導加熱で消費される大電力のために屋内配線に大電流が流れて電圧降下を生じ易く、特に、屋内配線が老朽化している場合は、燃焼装置に供給される電源電圧が著しく低下して、電磁誘導加熱によって気化部を充分昇温できないような不具合が生じ易かった。また、燃焼装置の運転に伴って他の電気機器へ供給される電源電圧も低下し、当該電気機器の動作上の弊害を誘発し易く、改善が望まれていた。
【0006】
また、このような電源電圧の低下の問題とは異なり、電磁誘導加熱方式では、通常、誘導コイルに高周波電圧を通電して磁界を発生し、発生した磁界を加熱しようとする発熱部に鎖交させて発熱させる。この電磁誘導加熱方式は、発熱部を短時間に効率良く加熱可能ではあるが、反面、電源電圧の異常上昇や加熱制御の異常が生じると、発熱部が短時間のうちに液体燃料の発火温度や発熱部の溶融温度に達する危険性がある。
【0007】
そこで、電磁誘導加熱方式を用いた燃焼装置では、通常、発熱部近傍に温度センサーを設け、当該温度センサーの検知温度を制御手段(マイコン)などによって監視する構成が採られており、発熱部が目的の温度よりも高い異常温度に上昇したときは、制御手段によって電磁誘導加熱を遮断する安全対策が採られている。
【0008】
ところが、制御手段によって制御を受ける電磁誘導加熱部に故障が生じると、制御手段の制御にも拘わらず発熱部の異常温度上昇を防止することができず、安全対策の効果を奏することができなかった。また、雑音や静電気などによってマイコンが希に暴走を生じるとことがある。マイコンが暴走すると正常な制御を継続することができず、前記した安全対策が施されているにも拘わらず発熱部が異常発熱して破損するような不具合が生じ、安全性の面から改善が望まれていた。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みて提案されるもので、燃焼装置の気化部の温度異常を的確に検知して、安全性を向上させた燃焼装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために提案される請求項1に記載の発明は、液体燃料を加熱して気化させる気化部と、前記気化部に空気供給を行う送風ファンとを有し、当該気化部で液体燃料を気化し燃焼部に供給して燃焼させる燃焼装置において、前記気化部は、電磁誘導加熱手段によって発熱する誘導発熱部を有すると共に、当該誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、予め定められた昇温制御に基づいて前記電磁誘導加熱手段によって誘導発熱部を昇温しつつ、前記誘導発熱部温度検知手段の検知温度を参照して誘導発熱部の昇温状況を監視し、当該誘導発熱部の昇温状況が前記昇温制御に応じた昇温状況と異なるときは、異常の発生と判別して必要な異常対応処理を行う制御手段とを備え、前記気化部の近傍には、当該気化部の温度に応じて作動する温度動作スイッチが設けられ、前記温度動作スイッチの作動温度は、液体燃料の発火温度領域と気化温度領域との間の発火温度領域側に近接する所定値に設定され、前記気化部が前記温度動作スイッチの作動温度を超えるときは、前記温度動作スイッチの作動によって電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が遮断されると共に、前記制御手段によって前記送風ファンの駆動が停止される異常対応処理を行う構成とされている。
また同様の目的を達成するために提案される請求項2に記載の発明は、液体燃料を加熱して気化させる気化部と、前記気化部に空気供給を行う送風ファンとを有し、当該気化部で液体燃料を気化し燃焼部に供給して燃焼させる燃焼装置において、前記気化部は、電磁誘導加熱手段によって発熱する誘導発熱部を有すると共に、当該誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、予め定められた昇温制御に基づいて前記電磁誘導加熱手段によって誘導発熱部を昇温しつつ、前記誘導発熱部温度検知手段の検知温度を参照して誘導発熱部の昇温状況を監視し、当該誘導発熱部の昇温状況が前記昇温制御に応じた昇温状況と異なるときは、異常の発生と判別して必要な異常対応処理を行う制御手段とを備え、前記気化部の近傍には、当該気化部の温度に応じて作動する温度動作スイッチが設けられ、前記温度動作スイッチの作動温度は、液体燃料の発火温度領域と気化温度領域との間の気化温度領域側に近接する所定値に設定され、前記気化部が前記温度動作スイッチの作動温度を超えるときは、前記温度動作スイッチの作動によって電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が遮断されると共に、前記制御手段によって前記送風ファンの回転数が増加される異常対応処理を行う構成とされている。
【0011】
本発明は、所定の昇温制御に従って誘導発熱部を昇温させる場合は、昇温制御に応じた昇温状況(温度勾配)が得られることに基づいて異常判別を行うものである。ここで、誘導発熱部の昇温状況の監視の結果、昇温制御に応じた昇温状況に比べて昇温勾配が高い場合は、電磁誘導加熱手段の故障による異常発熱や、燃焼装置に供給される電源電圧の異常上昇に伴う異常発熱などの不具合が生じている虞がある。また、誘導発熱部の昇温状況の監視の結果、昇温制御に応じた昇温状況に比べて昇温勾配が低い場合は、燃焼装置に供給される電源電圧の低下に伴う発熱不良などの不具合が生じている虞がある。
【0012】
本発明によれば、前記したような異常の発生を判別して異常対応処理を行うので、異常発熱が継続することにより誘導発熱部や気化部が異常高温に至る不具合を未然に回避することができる。また、発熱不良が継続することにより、液体燃料の気化が不充分となって不完全燃焼が生じるような不具合を未然に回避することが可能である。
【0013】
本発明において、昇温状況を監視するには種々の方法を採ることができる。
例えば、誘導発熱部の昇温中に、誘導発熱部が所定温度からそれよりも高い別の所定温度に至るまでに要する時間を計測することによって監視を行う構成を採ることができる。また、例えば、誘導発熱部の昇温開始時点から所定時間が経過する間における誘導発熱部の昇温値を計測することによって監視を行う構成を採ることも可能である。
【0014】
また、本発明において、誘導発熱部の昇温状況の監視は、昇温勾配が正常値に比べて高い場合だけ行っても良く、逆に、昇温勾配が正常値に比べて低い場合だけ行っても良い。しかし、昇温勾配が正常値に比べて高い場合および低い場合のいずれの場合も監視することにより、安全性、信頼性を一層向上させることが可能である。
【0015】
請求項1又は2に記載の発明は、気化部近傍には、当該気化部の温度に応じて作動する温度動作スイッチが設けられ、気化部が温度動作スイッチの作動温度を超えるときは、温度動作スイッチの作動によって電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱を遮断する異常対応処理を行う構成とされている。
【0016】
ここで、誘導発熱部を加熱する電磁誘導加熱手段に故障が生じると、制御手段から電磁誘導加熱手段に正常な制御信号を送出しているにも拘わらず、誘導発熱部が異常温度上昇を来す虞が生じる。また、制御手段をマイコンで構成する場合、万一、制御手段が暴走すると、電磁誘導加熱手段が正常に動作している場合であっても、制御手段から電磁誘導加熱手段に伝送される制御信号に異常を来して、誘導発熱部が異常に温度上昇する虞が生じる。
【0017】
本発明によれば、電磁誘導加熱手段に故障が生じたり、制御手段が暴走して電磁誘導加熱手段の制御が不能な状態となっても、誘導発熱部の温度が上昇して温度動作スイッチの作動温度を超えると、温度動作スイッチが作動して電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が強制的に遮断される。これにより、誘導発熱部が異常高温になることを未然に防止することができ、燃焼装置の安全性が向上する。
【0018】
また本発明は、温度動作スイッチの作動温度は、気化部を構成する構造体の溶融温度領域の低温側に近接する所定値に設定される構成とすることもできる。
【0019】
このような構成によれば、気化部の温度が構造体の溶融温度に至るまでに電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が強制的に遮断される。これにより、電磁誘導加熱手段の故障や、制御手段の暴走などの不具合が生じても気化部が溶融するような不具合を未然に防止することができ、燃焼装置の安全性、耐久性が向上する。
【0020】
請求項1に記載の発明は、気化部に空気供給を行う送風ファンを備えると共に、温度動作スイッチの作動温度は、液体燃料の発火温度領域と気化温度領域との間の発火温度領域側に近接する所定値に設定され、温度動作スイッチの作動時には、送風ファンの駆動を停止する異常対応処理を行う構成とされている。
【0021】
ここで、気化部の温度が液体燃料の発火温度領域近傍に至ると、気化した液体燃料が燃焼部に供給される前に気化部において発火する虞が生じる。従って、気化部がこの温度状態に至ると、冷却を目的として気化部に空気供給を行うことは爆発的な燃焼を誘発し易く、かえって危険である。
【0022】
本発明によれば、気化部が液体燃料の発火温度に至るまでに電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が遮断されると共に、送風ファンの駆動が停止される。則ち、気化部が液体燃料の発火温度を超える温度まで上昇することがなく、しかも、爆発的な燃焼の要因となる空気供給が強制的に停止される。これにより、電磁誘導加熱手段の故障や、制御手段の暴走などの不具合が生じても、気化部における発火を未然に防止することができ、燃焼装置の安全性が向上する。
【0023】
請求項2に記載の発明は、気化部に空気供給を行う送風ファンを備えると共に、温度動作スイッチの作動温度は、液体燃料の発火温度領域と気化温度領域との間の気化温度領域側に近接する所定値に設定され、当該温度動作スイッチの作動時には、送風ファンの回転数を増加させる異常対応処理を行う構成とされている。
【0024】
本発明によれば、気化部が液体燃料の気化温度よりも高い所定値以上に上昇すると、電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が遮断されると共に、送風ファンの回転数が増加される。これにより、気化部の加熱が遮断され、しかも、空気供給の増加によって気化部が冷却される。これにより、電磁誘導加熱手段の故障や、制御手段の暴走などの不具合が生じても気化部の異常温度上昇を未然に防止することができ、燃焼装置の安全性が向上する。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の燃焼装置において、時間を計測する計時手段を備え、前記制御手段によって監視される誘導発熱部の昇温状況は、当該誘導発熱部が予め定められた第1の温度から当該温度よりも高い第2の温度に至る昇温時間であり、前記制御手段は、前記誘導発熱部温度検知手段の検知温度および前記計時手段の計測値を参照しつつ、前記昇温時間が、前記昇温制御に応じて定められる所定時間範囲から外れるときは、異常の発生と判別する構成とされている。
【0026】
本発明は、前記請求項1又は2に記載の発明で示した昇温状況を監視する構成のうち、誘導発熱部が所定温度からそれよりも高い別の所定温度に至るまでに要する時間を計測することによって昇温状況を監視する構成を採用したものである。
【0027】
誘導発熱部が第1の温度から第2の温度に至る時間が所定時間範囲の最小値よりも短いときは、誘導発熱部の温度上昇勾配が高すぎるために異常高温に至る虞がある。このため、制御手段は、電磁誘導加熱手段の故障や、電源電圧の異常上昇などが生じている虞があると見なして異常対応処理を行う。これにより、誘導発熱部が異常高温に至る前に必要な異常対応処理を行うことができ、機器の損傷を未然に防止しつつ安全性を向上させることができる。
【0028】
また、誘導発熱部が第1の温度から第2の温度に至る時間が所定時間範囲の最大値よりも長いときは、誘導発熱部の温度上昇勾配が低すぎるため、液体燃料を充分に気化可能な温度に至らない虞がある。このため、制御手段は、電磁誘導加熱手段の故障や、電源電圧の異常低下などが生じている虞があると見なして異常対応処理を行う。これにより、誘導発熱部が充分に昇温せず、液体燃料の気化が不充分となって不完全燃焼が生じるような不具合を未然に防止することができる。また、燃焼装置の電力消費に伴う屋内配線の電圧降下の発生の虞が示唆されるので、燃焼装置の設置時において屋内配線の劣化の対策を講じることができ、他の電気機器への弊害も防止可能である。
【0029】
本発明において、誘導発熱部の温度上昇勾配が高すぎる場合、または、誘導発熱部の温度上昇勾配が低すぎる場合のいずれか一方の状態が生じた場合にだけ異常対応処理を行う構成としても良い。しかし、いずれの状態が生じた場合にも異常対応処理を行う構成とすることにより、燃焼装置の安全性、信頼性を一層向上させることが可能である。
【0030】
本発明において、第1の温度は、誘導発熱部の昇温開始時点の温度や、それよりも高い温度に設定することが可能である。また、第2の温度は、第1の温度よりも高い温度であれば適宜の温度に設定することができ、昇温制御による目的温度に設定しても良い。第1の温度および第2の温度は、前記条件を満たす範囲において適宜に定めることができるが、通常の燃焼制御の際に誘導発熱部が加熱される温度の範囲内において、第1の温度と第2の温度の差をできる限り大きく設定するのが望ましい。第1の温度と第2の温度差が少な過ぎると、周囲温度の影響による誤差が生じ易い。
【0031】
また、本発明において、誘導発熱部が第1の温度から第2の温度に至る時間が所定時間範囲から外れたときの異常対応処理としては、例えば、強制的に燃焼制御を停止したり、更に、警報音や音声によって異常報知を行う構成を採ることができる。
【0032】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃焼装置において、温度動作スイッチは、温度上昇によって作動した後に、温度の低下に伴って作動前の状態に復帰する自動復帰型である構成とされている。
【0033】
温度動作スイッチとしては、例えば、所定温度で溶断する温度ヒューズなどを用いることができるが、温度ヒューズは作動する毎に取り換えなければならず、メンテナンスが面倒である。
本発明によれば、温度動作スイッチは温度の低下に伴って作動前の状態に復帰するので、作動毎に取り換える必要がない。温度動作スイッチとしては、例えば、バイメタルを用いて接点を開閉するスイッチを採用することができる。
【0034】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃焼装置において、誘導発熱部は鋳物製筒状部材で構成されると共に、電磁誘導加熱手段はコイル部材を備え、鋳物製筒状部材にはコイル部材の位置決め部材が設けられており、コイル部材は鋳物製筒状部材に位置する構成とされている。
【0035】
ここで、電磁誘導加熱は、導電体で成る誘導発熱部に磁力線が鎖交したときに、誘導発熱部の内部に磁力線によって渦電流が生じ、当該渦電流によるジュール熱によって誘導発熱部が発熱する原理を利用したものである。
【0036】
本発明によれば、コイル部材が鋳物製筒状部材の位置決め部材によって位置決めされるので、コイル部材を鋳物製筒状部材に容易に巻装することができ、コイル部材がずれることもない。位置決め部材は、鋳物製筒状部材の全周壁に渡って螺旋状に設けても良く、周壁に部分的に設けても良い。
【0037】
また、本発明によれば、磁力線を発生するコイル部材が、誘導発熱部である鋳物製筒状部材に設けられるので、コイル部材で生じた磁力線を鋳物製筒状部材に効率良く鎖交させることができ、加熱効率が向上する。また、被加熱部材が鋳物で製されるので、耐熱性が高く変形が少ない。
本発明において、コイル部材と鋳物製筒状部材との間に断熱材を装着するのが良い。これにより、コイル部材が被加熱部材の熱を受けて昇温することを効果的に防止することが可能であり、コイル部材の耐久性が向上する。
【0038】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃焼装置において、気化部は、主として燃焼部の熱を受けて昇温する自己発熱部を有し、当該自己発熱部によっても液体燃料が加熱される構成とされている。
【0039】
自己発熱部は、主として燃焼部の熱を受けて昇温するので、燃焼運転を開始した直後は、自己発熱部は昇温されていない。従って、燃焼運転の開始初期は、専ら誘導発熱部の加熱によって液体燃料が気化されて燃焼し、燃焼時間が経過すると自己発熱部が燃焼部の熱によって昇温して、自己発熱部による液体燃料の気化が可能となる。ところが、燃焼運転を短時間だけ止めて再び開始するような場合は、自己発熱部は昇温された状態を維持しているので、誘導発熱部を昇温することなく直ちに着火させて燃焼を開始することができる。これにより、使い勝手が向上すると共に、誘導発熱部の加熱に伴うランニングコストを低減可能である。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態の燃焼装置1は、液体燃料(本実施形態では灯油を使用)を燃焼させて火炎を発生させるものであり、実施形態の説明に際しては、気化部周辺の構造を模式的に説明すると共に、本発明に係る制御の詳細を説明する。尚、燃焼装置1の詳細な構造については、後述する実施例で説明する。
【0041】
図1は、本実施形態の燃焼装置1の気化部を中心とした要部構成を示す説明図である。図2は、図1に示す燃焼装置1の制御系の構成を示すブロック図である。本実施形態の燃焼装置1は、図2の様に、燃焼制御を統括する制御手段(マイコン)200とリモートコントローラ210を備え、リモートコントローラ210の設定に応じて燃焼運転を行う装置である。
【0042】
燃焼装置1に採用される気化部8は、図1の様に、燃焼部7の中央に位置する。気化部8は、誘導コイル77によって加熱される誘導発熱部10と、主として燃焼部7の熱を受けて昇温する自己発熱部11を備えている。また、誘導発熱部10の内部には第1回転部材23が回転自在に配され、自己発熱部11の内部には第2回転部材25が回転自在に配されている。
【0043】
誘導発熱部10は上下方向に中心軸を有する中空円筒形であり、高さ方向の略中央から上部は一定内径の円筒形であり、高さ方向の略中央から下部は、下方へ向かうに連れて先細りになる円錐形状を有する。高さ方向の略中央から上部の外周壁には、誘導コイル77が巻装されている。また、誘導発熱部10の上部には、温度を検知する温度センサー(誘導発熱部温度検知手段)100と、誘導発熱部10の温度に応じて接点を開閉する温度動作スイッチ99が設けられている。
【0044】
誘導発熱部10の外側には、当該誘導発熱部10よりもひとまわり大きい空気導入筒71が誘導発熱部10を包むように配置されている。空気導入筒71は、上下方向に中心軸を有する中空円筒形であり、高さ方向の上部側は一定内径の円筒形であり、高さ方向の下部側は下方へ向かうに連れて先細りになる円錐形状を有する。
【0045】
空気導入筒71と誘導発熱部10は中心軸を一致させて配され、各々の上部側の開口面の高さは略一致しており、下部側の開口面は、誘導発熱部10の下部側の開口面よりも空気導入筒71の下部側の開口面が低く位置する。
空気導入筒71と誘導発熱部10を同心軸上に配することにより、誘導発熱部10と空気導入筒71との間には環状の空間部131が形成される。
【0046】
一方、自己発熱部11は有底円筒形であり、その内径は、誘導発熱部10の最大外径よりも大きく、空気導入筒71の最大外径よりも小さい。また、誘導発熱部10の内径は、空気導入筒71の下端の最小外径よりも大きい。自己発熱部11は、空気導入筒71および誘導発熱部10と中心軸を一致させ、上部開口面を空気導入筒71の下部開口面に略一致させて固定されている。これにより、誘導発熱部10の内部および空間部131は自己発熱部11の内部に連通し、自己発熱部11の上部側と空気導入筒71の下部側との間は外部に開放され、当該開放部分を介して燃焼部7へ連通する燃料ガス流路51が形成されている。
自己発熱部11の上部には、温度を検知する温度センサー(自己発熱部温度検知手段)115が設けられている。
【0047】
気化部8の内部には、上下方向に回転軸21が配されている。回転軸21は、空気導入筒71、誘導発熱部10および自己発熱部11の中心軸上に位置し、空気導入筒71および誘導発熱部10を貫通して自己発熱部11の底面近傍に至る。回転軸21には、第1回転部材23および第2回転部材25が固定されている。第1回転部材23は誘導発熱部10の最大内径よりも小さく、誘導発熱部10の上下方向中央部に固定されている。また、第2回転部材25は自己発熱部11の内径よりも小さく、自己発熱部11の上下方向中央部に固定されている。
則ち、回転軸21を回転すると、第1回転部材23が誘導発熱部10の内部で回転すると共に、第2回転部材25が自己発熱部11の内部で同時に回転する構造である。
【0048】
気化部8の上部には、燃料パイプ116が開口端を第1回転部材23の上面に対向するようにして固定されている。第1回転部材23および第2回転部材25は、燃料パイプ116から噴射される液体燃料を回転に伴う遠心力によって微粒状に飛散させつつ撹拌する機能を有する。また、気化部8の上流側には、気化部8へ空気供給を行うためのファン13がモータ18の回転軸に固定されて配されている。
【0049】
このような構成の気化部8では、誘導コイル77に高周波電流を通電すると、発生する磁界が導電体である誘導発熱部10に渦電流を生じて発熱する。従って、燃料パイプ116から第1回転部材23に噴射された液体燃料は、誘導発熱部10の内壁に向けて飛散し、加熱された内壁に衝突して気化される。ここで、モータ18を駆動してファン13により気化部8の上流側から空気供給を行うと、誘導発熱部10の内部を流動する空気は一次空気として気化された液体燃料と混合撹拌され、混合された燃料ガスは下流側の自己発熱部11へ流入する。同時に、空間部131を流動する空気も一次空気として自己発熱部11へ流入する。自己発熱部11に流入した燃料ガスおよび空気は、第2回転部材25で更に混合され、燃料ガス流路51へ向けて流出し、燃焼部7に至って燃焼に供する。
【0050】
また、燃焼部7において火炎が発生すると、火炎に煽られて自己発熱部11が昇温する。自己発熱部11が液体燃料の気化温度を超えると、誘導コイル77の通電を停止しても、液体燃料を気化可能となる。則ち、自己発熱部11が気化温度以上に上昇し、誘導コイル77の通電を停止すると、燃料パイプ116から噴射された液体燃料は第1回転部材23で飛散され、誘導発熱部10の内壁を伝って第2回転部材25の上部に垂下する。そして、第2回転部材25の遠心力を受けて自己発熱部11の内壁に向けて飛散し、加熱された内壁に衝突して気化される。そして、誘導発熱部10の内部および空間部131を介して自己発熱部11に流入する一次空気と混合撹拌され、周部から燃料ガス流路51へ向けて流出し、燃焼部7に至って燃焼に供する。
【0051】
次に、燃焼装置1の制御系の構成を説明する。燃焼装置1は、図2の様に、燃焼制御や異常対応処理を統括して行う制御手段200を中心に構成される。制御手段200はマイコンで構成され、プログラム処理によって制御信号を生成して必要な制御を行う。
詳細に説明すると、気化部8に設けられた温度センサー100と温度センサー115は制御手段200に接続されている。また、制御手段200は、誘導コイル77への高周波電力の通電制御を行う誘導コイル通電制御部199に接続されると共に、モータ18の通電制御を行うモータ通電制御部202に接続されている。また、制御手段200には、時間を計時する計時手段207が接続されている。
【0052】
計時手段207は、制御手段200によって起動、停止あるいはリセット可能な上限タイマーと下限タイマーを有している。上限タイマーは、誘導発熱部10の加熱開始から初期加熱温度まで上昇するのに要する時間の上限値を規定するタイマーである。また、下限タイマーは、誘導発熱部10の加熱開始から初期加熱温度まで上昇するのに要する時間の下限値を規定するタイマーである。
【0053】
また、屋外から供給される交流電源(AC100V)を降圧した交流電圧、あるいは、整流した直流電圧を生成する電源回路部201を有し、電源回路部201で生成された電源は、燃焼装置1の各部に供給される。
【0054】
本実施形態の燃焼装置1では、図2の様に、温度動作スイッチ99によって誘導コイル77への通電が開閉制御される構成を採用している。則ち、誘導コイル77の一端は直接誘導コイル通電制御部199に接続され、誘導コイル77の他端は温度動作スイッチ99を介して誘導コイル通電制御部199に接続されている。また、誘導コイル通電制御部199と電源回路部201との間には通電遮断リレー203が介在され、当該通電遮断リレー203は制御手段200によって開閉制御される構成とされている。
【0055】
ここで、温度動作スイッチ99は、誘導発熱部10が所定の作動温度未満のときは接点が閉成し、誘導発熱部10が作動温度以上になると接点が開成するバイメタルを利用した自動復帰型のスイッチである。
従って、作動温度未満のときは温度動作スイッチ99の接点が閉成して、誘導コイル通電制御部199と誘導コイル77は接続され、誘導コイル77の通電制御が許容される。逆に、作動温度以上になると温度動作スイッチ99の接点が開成して、誘導コイル通電制御部199と誘導コイル77の接続が遮断され、誘導コイル77の通電制御が禁止される構成とされている。
【0056】
次に、本実施形態の燃焼装置1において実施される制御を説明する。図3は、図1,図2で示す燃焼装置1で実施される制御例を示すフローチャートである。図4は、図3の制御における誘導発熱部および自己発熱部の温度変化を、燃焼指令信号の有無と対応させて示した説明図である。図5は、図3の制御において実施される異常判別の制御における誘導発熱部の温度変化を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対応させて示した説明図である。図6〜図8は、各々、図1,図2で示す燃焼装置1で実施される異常対応制御における誘導発熱部および自己発熱部の温度変化を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対応させて示した説明図である。
【0057】
尚、以下の説明において、燃焼フラグとは、火炎が発生して燃焼中であることを示すフラグ、初期フラグとは、誘導発熱部10の初期加熱処理(後述)の実行中を示すフラグ、昇温フラグとは、誘導発熱部10が初期加熱処理が完了したことを示すフラグである。また、以下の説明において、誘導発熱部10の加熱が開始される時点の温度を第1の温度とし、後述する初期加熱温度T1を第2の温度とする。
【0058】
リモートコントローラ210の運転スイッチ211をオンにした状態で、燃焼指令信号が到来すると、燃焼フラグ、初期フラグおよび昇温フラグはいずれもオフであるので、制御手段200はステップ305へ進む。そして、制御手段200は、温度センサー100の検知温度を参照して誘導発熱部10の温度が気化温度T2(本実施形態では灯油の気化温度である略250℃に設定)以上か否かを判別する。更に、制御手段200は、温度センサー115の検知温度を参照して自己発熱部11の温度が気化温度T2以上か否かを判別する(以上、図3ステップ300〜306参照)。
【0059】
判別の結果、誘導発熱部10または自己発熱部11の少なくともいずれか一方の温度が気化温度T2以上の場合は、ステップ316以降の処理に進んで燃焼制御が開始される(以上、図3ステップ305,306,316参照)。
【0060】
一方、判別の結果、誘導発熱部10または自己発熱部11のいずれの温度も気化温度T2未満の場合、制御手段200は、初期フラグをオンにし、上限タイマーおよび下限タイマーをスタートさせると共に、誘導コイル77へ通電を開始する(以上、図3ステップ305〜309、図4参照)。そして、ステップ309〜311,300〜303の制御を繰り返しつつ、誘導発熱部10の温度が初期加熱温度T1(本実施形態では300℃に設定)まで上昇するのを待機する。
【0061】
ここで、誘導発熱部10の温度上昇待機中に燃焼指令信号の到来が停止すると、燃焼フラグがオフ、初期フラグがオンであるので、ステップ327へ進んで、制御手段200は誘導コイル77の通電を停止し、初期フラグをオフにして次の燃焼指令信号の到来を監視する(以上、図3ステップ300,301,322,326〜328参照)。則ち、誘導発熱部10を初期加熱温度T1まで昇温する途中で燃焼指令信号の到来が停止すると、初期加熱処理は一旦中止される。
【0062】
一方、誘導コイル77への通電が継続されて、誘導発熱部10が初期加熱温度(第2の温度)T1まで温度上昇待機中に、上限タイマーがタイムアップすると、制御手段200は、誘導発熱部10の温度上昇速度が低下していると判別して異常報知を行い、燃焼制御を強制的に停止する(以上、図3ステップ310〜312、図5参照)。則ち、この状態では、上限タイマーがタイムアップする時間が経過しているにも拘わらず、誘導発熱部10が第2の温度である初期加熱温度T1に至らないため、誘導コイル通電制御部199に何らかの異常が発生しているか、または、電源電圧の異常低下が発生しているものと見なして異常報知を行う。
【0063】
一方、上限タイマーがタイムアップするまでに誘導発熱部10が初期加熱温度(第2の温度)T1まで温度上昇すると、制御手段200は、下限タイマーの計時状態を参照する。そして、下限タイマーが既にタイムアップしておれば、ステップ313から316へ進んで、初期フラグをオフ、昇温フラグをオンにすると共に、上限タイマーおよび下限タイマーをリセットして、着火処理に移行する。この際、制御手段200は、誘導発熱部10が液体燃料の気化温度となるように誘導コイル77を通電制御する(以上、図3ステップ310,313、316,317、図4、図5参照)。則ち、この状態では、誘導発熱部10の加熱開始時点(第1の温度)から初期加熱温度(第2の温度)T1に至るまでに要する時間が、下限タイマーがタイムアップする時間よりも長く、上限タイマーがタイムアップするまでの時間よりも短く、適正であるので、誘導コイル通電制御部199が正常に作動しているものと判別して着火処理に移行する。
【0064】
着火処理は、所定のプリパージを行った後に行われる。着火が完了すると、制御手段200は燃焼フラグをオンにし、燃焼制御を開始する。燃焼制御中は、制御手段200は、自己発熱部11の温度を監視しつつ誘導コイル77の通電制御を行う。本実施形態では、自己発熱部11の温度が気化温度(略250℃)を超えると、以降は、誘導コイル77の通電を停止し、ランニングコストの低減を図っている(以上、図3ステップ318〜321、図4参照)。
【0065】
着火が行われて燃焼制御が開始すると、制御手段200は、ステップ320,321,300〜302の制御を繰り返して燃焼運転を継続する。この後、燃焼指令信号の到来が停止すると、ポストパージなどの必要な燃焼停止処理を行うと共に、燃焼フラグをオフにし、誘導コイル77の通電電力を低減して誘導発熱部10を待機温度T3(本実施形態では略100℃に設定)に維持する(以上、図3ステップ300,301,322〜325、図4参照)。
【0066】
誘導発熱部10が待機温度T3に加熱されている状態で再度燃焼指令信号が到来すると、既に昇温フラグがオンであるので、誘導発熱部10を初期加熱温度T1まで昇温する処理は行わず、ステップ304からステップ317へ進み、誘導コイル77へ通電制御して誘導発熱部10を待機温度T3から気化温度T2まで昇温させ、その後着火処理を経て燃焼制御に移行する(以上、図3ステップ301〜304,317〜321、図4参照)。
【0067】
一方、前記ステップ310において、誘導発熱部10が初期加熱温度(第2の温度)T1まで温度上昇したときに、下限タイマーがタイムアップしていないときは、制御手段200は、誘導発熱部10の温度上昇速度が異常と判別して異常報知を行い、強制的に燃焼制御を停止する(以上、図3ステップ310,313,315、図5参照)。則ち、この状態では、下限タイマーがタイムアップする時間が経過していないにも拘わらず、誘導発熱部10が急速に初期加熱温度(第2の温度)T1に至っているため、誘導コイル通電制御部199に何らかの異常が発生しているか、または、電源電圧の異常上昇が発生しているものと見なして異常報知を行う。
【0068】
リモートコントローラ210の運転スイッチ211をオフにすると、制御手段200は、各フラグをオフにすると共に、必要な運転停止処理を行う。この後、運転スイッチ211のオン操作の監視を継続する。
尚、図3のステップ325において、誘導発熱部10を待機温度T3に維持する制御を所定時間だけ行わせ、以降は、誘導コイル77の通電を遮断する構成としても良く、通電電力が削減されランニングコストの低減を図ることが可能となる。
【0069】
このように、本実施形態の燃焼装置1によれば、燃焼運転に際して、誘導発熱部10を気化温度T2よりも高い初期加熱温度T1まで一旦昇温させるので、気化部8の内部全体を均一に昇温させることができ、液体燃料を安定して気化させることが可能である。また、誘導発熱部10の温度上昇に要する時間を上限タイマーおよび下限タイマーによって監視することにより、誘導発熱部10の温度上昇が異常に速い場合や異常に遅い場合は、誘導コイル通電制御部199の異常と判別して異常報知を行うと共に燃焼制御を停止する。これにより、誘導発熱部10の異常発熱や発熱不足の不具合を的確に報知することが可能となり、安定した燃焼を行わせることが可能となる。
【0070】
ここで、異常報知によって誘導発熱部10の温度上昇速度が速いことが判明した場合は、前記したように、誘導コイル通電制御部199の故障や電源電圧の異常上昇が生じていることが要因と考えられ、誘導発熱部10が異常高温に晒される不具合を未然に防止することができる。また、異常報知によって誘導発熱部10の温度上昇速度が遅いことが判明した場合は、電磁誘導加熱手段198の電力消費に伴う屋内配線の電圧降下が要因として考えられる。この場合も、直ちに対策を講じることにより、誘導発熱部10の昇温が不充分な状態が継続することを未然に防止することができ、安定した燃焼を維持することが可能となる。
【0071】
本実施形態の燃焼装置1は、燃焼運転の開始に際して、前記図3に示した基本制御を行うが、更に、以下に述べる様に気化部8の温度上昇を監視する制御を行う。則ち、前記図3に示した制御は、制御手段200によって、誘導発熱部10の温度を検知しつつ異常対応処理を行うものであったが、以下に述べる制御は、誘導発熱部10に設けた温度動作スイッチ99によって異常対応処理を行うものである。
尚、以下に述べる制御は、燃焼装置1の制御中において実施されるものであるが、説明の便宜上、誘導発熱部10が待機温度T3に維持されている状態において燃焼指令信号が到来し、着火、燃焼制御が開始される場合を例に挙げて説明する。
【0072】
本実施形態の燃焼装置1(図2参照)では、温度動作スイッチ99の作動温度を、誘導発熱部10の溶融温度T4の低温側に隣接する温度領域の所定値である監視温度T5に設定している(図6参照)。
本実施形態の燃焼装置1では、図2,図6の様に、燃焼指令信号が到来すると、制御手段200は、誘導コイル通電制御部199に制御信号を送出して、誘導発熱部10を待機温度T3から気化温度T2まで昇温させる。そして、誘導発熱部10が気化温度T2まで昇温すると、制御手段200は、着火処理を経て燃焼制御を開始する。
【0073】
着火されて燃焼制御が開始した後に、仮に、誘導コイル通電制御部199に故障が生じると、誘導コイル77への通電電力が異常となって誘導発熱部10の温度が急激に上昇するような不具合が生じる。ところが、誘導コイル通電制御部199に異常が生じると、制御手段200は、温度センサー100の検知信号に基づいて誘導コイル77への通電を遮断するべく誘導コイル通電制御部199へ正常に制御信号を送出しても、誘導コイル通電制御部199の異常によって誘導発熱部10の温度上昇を抑制することができない(図2参照)。
【0074】
しかし、誘導発熱部10の温度が監視温度T5を超えると、温度動作スイッチ99が作動して接点が開成し、誘導コイル通電制御部199から誘導コイル77への通電が強制的に遮断される。従って、誘導コイル77による誘導発熱部10の加熱が遮断され、誘導発熱部10の温度は溶融温度T4に至ることなく低下する。
【0075】
一方、制御手段200は、温度動作スイッチ99の作動を接点間の電圧によって監視しており、温度動作スイッチ99の作動を一旦検知すると、燃焼制御を停止して異常報知を行う。同時に、制御手段200は、通電遮断リレー203の駆動コイル204へ制御信号を送出して切換接点205を常開接点側へ移動させ、誘導コイル通電制御部199への電源供給を遮断する。これにより、誘導発熱部10の温度が低下し、温度動作スイッチ99の接点が再び閉成しても、通電遮断リレー203によって誘導コイル通電制御部199への電源供給が遮断されたままとなり、誘導発熱部10が再度異常発熱することが防止される。
【0076】
また、本実施形態の燃焼装置1では、前記した誘導コイル通電制御部199の故障の他にも、制御手段200に万一暴走が生じた場合の異常対応も可能である。本実施形態の燃焼装置1では、制御手段200にウォッチドックタイマなどの暴走監視手段212を設け、当該暴走監視手段212によって制御手段200自体のプログラム処理の暴走を検知して、制御手段200自体をリセットする構成を採用している。
【0077】
制御手段200の暴走に起因して誘導発熱部10が異常発熱を生じると、誘導発熱部10が監視温度T5を超えた時点で、温度動作スイッチ99によって誘導コイル77への通電が強制的に遮断され、誘導発熱部10の温度上昇が阻止される。また、暴走監視手段によって制御手段200がリセットされて、燃焼制御の停止状態に戻る。これにより、誘導発熱部10が異常高温に至ることが阻止されると共に、制御手段200の暴走状態が解除され、燃焼指令信号に応じて再度燃焼制御を開始することが可能となる。
【0078】
このように、本実施例の燃焼装置1によれば、誘導コイル通電制御部199の異常や制御手段200の暴走が万一生じた場合でも、温度動作スイッチ99によって気化部8が溶融温度T4に至ることを未然に防止することができ、装置の安全性を著しく向上させることが可能となる。
【0079】
次に、前記図6に示した制御の変形実施形態を図7を参照して説明する。尚、前記図3に示した制御は同様に実施されるので、説明を省略する。また、前記実施形態と同一構成部分については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図7に示す制御は、前記図2に示した構成と同一の構成によって実施されるが、温度動作スイッチ99の作動温度が異なる。則ち、前記図6に示した制御では、温度動作スイッチ99の作動温度を、気化部8の溶融温度T4よりも低い監視温度T5に設定した。しかし、図7に示す変形実施形態では、温度動作スイッチ99の作動温度を、液体燃料の発火温度T6と気化温度T2との間の気化温度T2の領域側に近接した監視温度T7に設定される。
【0080】
図7に示す制御では、燃焼制御が開始された後に、仮に、誘導コイル通電制御部199に故障が生じると、誘導コイル77への通電電力が異常となって誘導発熱部10の温度が急激に上昇する不具合が生じる。誘導コイル通電制御部199の異常によって、誘導発熱部10の温度が監視温度T7を超えると、温度動作スイッチ99が作動して接点が開成する(図2参照)。
【0081】
温度動作スイッチ99が作動すると、誘導コイル通電制御部199から誘導コイル77への通電が強制的に遮断され、誘導発熱部10の昇温が停止して、誘導発熱部10の温度は発火温度T6に至ることなく低下する。
【0082】
一方、制御手段200は、温度動作スイッチ99の作動を端子電圧によって監視しており、温度動作スイッチ99の作動を一旦検知すると、燃焼制御を停止して、異常報知を行うと共に、制御手段200は、通電遮断リレー203の駆動コイル204へ制御信号を送出して切換接点205を常開接点側へ移動させ、誘導コイル通電制御部199への電源供給を遮断する。これにより、誘導発熱部10の温度が低下し、温度動作スイッチ99の接点が再び閉成しても、通電遮断リレー203によって誘導コイル通電制御部199への電源供給が遮断されたままであるので、誘導発熱部10が再度異常発熱することが防止される。
【0083】
また、制御手段200は、温度動作スイッチ99の作動を検知すると、モータ通電制御部202へ制御信号を送出して、モータ18の回転数を燃焼制御中の回転数よりも増加させる。これにより、気化部8への空気供給を増加させて誘導発熱部10を含む気化部8を冷却する。そして、温度センサー100の検知温度が待機温度T3まで低下すると、制御手段200は、モータ通電制御部202へ制御信号を送出してモータ18の駆動を停止させる。
【0084】
このように、本実施形態の燃焼装置1によれば、誘導コイル通電制御部199の故障に起因して誘導発熱部10が液体燃料の気化温度よりも高い監視温度T7を超えると、誘導発熱部10の加熱を遮断すると共に、空気供給を増加させて冷却を行う。これにより、気化部8が異常温度に上昇することを防止することができ、装置の安全性が向上する。
【0085】
また、本実施形態の燃焼装置1では、前記した誘導コイル通電制御部199の故障の他にも、制御手段200に万一暴走が生じた場合の異常対応も可能である。則ち、制御手段200の暴走に起因して誘導発熱部10が異常発熱を生じると、誘導発熱部10が監視温度T7を超えた時点で、温度動作スイッチ99によって誘導コイル77への通電が強制的に遮断され、誘導発熱部10の温度上昇が阻止される。この場合は、制御手段200によるモータ通電制御部202の制御を正常に行うことができず、空気供給の増加による冷却は期待できない。しかし、暴走監視手段によって制御手段200がリセットされて、燃焼制御の停止状態に戻る。これにより、誘導発熱部10が異常高温に至ることが阻止されると共に、制御手段200の暴走状態が解除され、燃焼指令信号に応じて再度燃焼制御を開始することが可能となる。
【0086】
次に、前記図6、図7に示した制御の変形実施形態を図8、図9を参照して説明する。尚、前記図3に示した制御は同様に実施されるので、説明を省略する。また、前記実施形態と同一構成部分については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図9に示す制御は、図8に示した構成によって実施される。図8に示す構成は、温度動作スイッチ99'の構成と、当該温度動作スイッチ99'の作動によって誘導コイル77およびモータ18の双方の通電を遮断する点が、前記図2に示した構成と異なる。
【0087】
本実施形態に採用する温度動作スイッチ99'では、作動温度が、液体燃料の発火温度T6と気化温度T2との間の発火温度T6の領域側に近接した監視温度T8に設定される。また、温度動作スイッチ99'は、周囲温度が監視温度T8未満の状態で接点が開成され、周囲温度が監視温度T8以上になると接点を閉成する。
【0088】
また、2系統の切換接点222,223を有した通電遮断リレー220を備えている。誘導コイル77の一端は、直接誘導コイル通電制御部199に接続されると共に、誘導コイル77の他端は、切換接点222の常閉接点を介して誘導コイル通電制御部199に接続されている。また、モータ18の一端は、直接モータ通電制御部202に接続され、モータ18の他端は、切換接点223の常閉接点を介してモータ通電制御部202に接続されている。また、通電遮断リレー220の駆動コイル221は、温度動作スイッチ99'を介して電源回路部201へ接続されている。
【0089】
本実施形態の燃焼装置1'では、温度動作スイッチ99'が作動していない状態では、通電遮断リレー220が駆動されない。従って、誘導コイル通電制御部199と誘導コイル77は、切換接点222を介して接続され、モータ通電制御部202とモータ18は、切換接点223を介して接続されて、通常の燃焼制御が行われる。しかし、温度動作スイッチ99'が作動して接点が閉成すると、通電遮断リレー220の駆動コイル221に通電されて切換接点222,223が各々常開接点側へ切り換わる。これにより、誘導コイル通電制御部199と誘導コイル77との接続が遮断されると共に、モータ通電制御部202とモータ18との接続が遮断される構成とされている。
【0090】
この燃焼装置1'では、図9の様に、燃焼制御が開始された後に、仮に、誘導コイル通電制御部199に故障が生じると、誘導コイル77への通電電力が異常となって誘導発熱部10の温度が急激に上昇する不具合が生じる。そして、誘導発熱部10の温度が監視温度T8を超えると、温度動作スイッチ99'が作動して接点が閉成する(図8参照)。
【0091】
温度動作スイッチ99'が作動すると、通電遮断リレー220が駆動されて誘導コイル通電制御部199と誘導コイル77との接続が強制的に遮断され、誘導コイル77による誘導発熱部10の加熱が停止する。同時に、モータ通電制御部202とモータ18との接続が強制的に遮断されて、気化部8への空気供給が停止する。これにより、誘導発熱部10は発火温度T6に至ることなく低下する。則ち、本実施形態では、誘導発熱部10が発火温度に近接した監視温度T8に至った時点で加熱を停止するため、冷却を目的として直ちに空気供給を行うと、かえって爆発的な燃焼を誘発する虞がある。このため、誘導発熱部10の温度が低下するまでは空気供給を強制的に停止させている。
【0092】
一方、制御手段200は、温度動作スイッチ99'の作動を端子電圧によって監視しており、温度動作スイッチ99の作動を一旦検知すると、燃焼制御を停止して、異常報知を行う。この後、誘導発熱部10の温度が低下し、温度動作スイッチ99'の接点が再び開成しても、制御手段200は、モータ18の駆動を直ぐには開始しない。そして、誘導発熱部10が気化温度T2まで低下すると、制御手段200は、モータ通電制御部202に制御信号を送出してモータ18を駆動し、ファンの空気供給によって気化部8の冷却を行う。この後、温度センサー100の検知温度が待機温度T3まで低下すると、制御手段200は、モータ通電制御部202へ制御信号を送出してモータ18の駆動を停止させる。
【0093】
このように、本実施形態の燃焼装置1'によれば、誘導コイル通電制御部199の故障に起因して誘導発熱部10が液体燃料の発火温度に近接した監視温度T8を超えると、誘導発熱部10の加熱を遮断すると共に、空気供給を遮断させる。これにより、気化部8が異常温度に上昇することを防止しつつ爆発的な燃焼を防止することが可能となる。
【0094】
また、本実施形態の燃焼装置1'においても、前記した誘導コイル通電制御部199の故障の他にも、制御手段200に万一暴走が生じた場合の異常対応も可能である。則ち、制御手段200の暴走に起因して誘導発熱部10が異常発熱を生じると、誘導発熱部10が監視温度T8を超えた時点で、通電遮断リレー220によって誘導発熱部10の温度上昇が遮断されると共に、ファンによる空気供給も遮断される。一方、暴走監視手段によって制御手段200がリセットされて、燃焼制御の停止状態に戻る。これにより、誘導発熱部10が異常高温に至ることが阻止されると共に、制御手段200の暴走状態が解除され、燃焼指令信号に応じて再度燃焼制御を開始することが可能となる。
【0095】
【実施例】
次に、本発明の燃焼装置の具体的実施例について説明する。なお以下の説明において上下の関係は、燃焼装置を給湯器等に設置した状態を基準とする。
図10は、本発明の実施例の燃焼装置の断面図である。図11は、本発明の実施例の燃焼装置の全体的な部品構成を表す分解斜視図である。
【0096】
図10において、1は、本発明の実施例の燃焼装置を示す。本実施例の燃焼装置1は、図18の様に炎孔を下に向けて給湯装置2に内蔵されるものであり、上から送風機3、駆動機械部5、空気量調整部6が積層され、その下部に燃焼部7及び気化部8が設けられたものである。
気化部8は、後記する様に誘導発熱部10と自己発熱部11を持つ。そして誘導発熱部10は、前記した空気量調整部6と燃焼部7の間にあり、自己発熱部11は、燃焼部7に位置している。
【0097】
上部側から順次説明すると、送風機3は、鋼板を曲げ加工して作られた凹状のハウジング12の中にファン13が回転可能に配されたものである。ハウジング12の中央部には、開口15が設けられている。
【0098】
駆動機械部5は、箱体16を有し、その天板17の中央にモータ18が取り付けられている。モータ18は、両端部から回転軸20,21が突出しており、回転軸20,21は、燃焼装置1の略全長を貫通している。そして後記する様に、モータ18の上方側の回転軸20は、ファン13に接続され、下方側の回転軸21は、気化部8の第一回転部材23及び第二回転部材25に接続されている。
【0099】
空気量調整部6は、図11に示すように、固定側板状部材27の上に円盤状の移動側板状部材26が重ねられている。移動側板状部材26は、中央の軸挿通孔28の周りに略三角形の開口30を放射状に複数個設けたものである。また、固定側板状部材27には、移動側板状部材26の軸挿通孔28および開口30に相当する位置に軸挿通孔35および開口33が設けられている。また、固定側板状部材27には、移動側板状部材26を重ね合わせた時に両者が重複しない位置に多数の小孔36が設けられている。
【0100】
空気量調整部6は、箱体16に外付けされたステップモータ38の回転軸40が回転すると、回転軸40および移動側板状部材26に係合した駆動片37が揺動する。その結果、移動側板状部材26が、固定側板状部材27の上で中央の軸挿通孔28を中心として相対的に回転する。
移動側板状部材26の回転により、移動側板状部材26と固定側板状部材27を連通する開口の面積が変化し、これによって空気量が調節される。
【0101】
燃焼部7は、図10,図12に示すように分流部材41と炎孔ベース43及び炎孔部材45によって作られている。そしてこれらの構成部品が燃焼部ハウジング14(図10)内に収納されたものである。
【0102】
分流部材41、炎孔ベース43および炎孔部材45は、いずれも長方形をした板状の部材であり、それぞれ中央部に大きな開口46,52,58が設けられている。
【0103】
分流部材41は、平板状の部材であり、開口46の周囲に多数の開口47,48,50が設けられたものである。炎孔ベース43は、アルミダイカストによって作られたものであり、複雑な枠組みと開口及び溝が設けられている。炎孔ベース43の上面側は、主として燃料ガス及び二次空気の流路構成面として機能し、下面側は炎孔取付け面として機能する。則ち、炎孔ベース43は、図10に示す様に外周を囲む外側燃焼壁49を有し、その内部に実際に火炎が発生する燃焼部7が形成される。炎孔ベース43には、気化部8において気化された燃料ガスと空気との混合ガスが流れる流路と、分流部材41の開口47,48,50から流入する二次空気が流れる流路とが形成されている。炎孔ベース43には、図10に示すように温度センサー59(炎孔ベース温度検知手段)が取付けられている。
【0104】
炎孔部材45は、図12に示すように炎孔ベース43と重ね合わせられる板状の部材であり、中央に設けられた自己発熱部11用の開口58を取り巻いて多数の丸孔60と小孔61とが規則正しく配列されている。
【0105】
燃焼部7は、炎孔ベース43、分流部材41および炎孔部材45を上記した状態に組み合わせた状態で燃焼部ハウジング14内に配置されている。そして、燃焼部7には、分流部材41側から炎孔ベース43を通過し炎孔部材45側に抜ける二次空気流路と、炎孔ベース43内の流路および炎孔部材45の小孔61を介して外部に連通した燃料ガス流路が形成されている。
【0106】
次に気化部8について説明する。図12は、本実施形態の燃焼装置の気化部周辺の分解斜視図である。図13は、気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の斜視図である。図14は、気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の正面図、平面図、左右側面図及び底面図である。図15は、気化部の誘導熱源部の一部断面斜視図である。図16は、気化部の誘導熱源部の別の実施形態を示す断面図である。図17は、図10の燃焼装置の燃焼部近傍を上から見た斜視図である。
【0107】
本実施例の燃焼装置1で採用する気化部8は、二種類の熱源を持つ。則ち、本実施例で採用する気化部8は、図10〜図12の様に誘導熱源部9と、自己発熱部11を有する。そして両発熱部の近傍にそれぞれ第一回転部材23と第二回転部材25が設けられている。また誘導熱源部9と自己発熱部11に適切な一次空気を供給するための空気導入筒71が設けられている。
【0108】
則ち、気化部8は、図12の様に、第一回転部材23、ドーナツ状断熱材73、燃料通過筒(誘導発熱部10)75、円筒状断熱材76、コイル部材77、第一空気導入筒78、第二空気導入筒80、第二回転部材25、及び自己発熱部11によって形成されている。
そして前記した燃料通過筒75、円筒状断熱材76、ドーナツ状断熱材73及びコイル部材77の四者によって誘導発熱部10が構成され、第一空気導入筒78及び第二空気導入筒80によって空気導入筒71が構成されている。
【0109】
順次説明すると、燃料通過筒75は、誘導発熱部10として機能するものであり、電気伝導性があり、かつある程度の電気抵抗を有する素材で作られた筒である。より具体的には、燃料通過筒75は、誘導加熱し易いように薄い磁性体のステンレス鋼材で作られている。
燃料通過筒(誘導発熱部10)75は、両端が開口するものではあるが、図12〜図14の様な特殊な形状をしており、上部側と下部側で形状が大きく異なる。則ち、燃料通過筒75の上部側約半分の領域81は、直径が略一定の円筒形状である。燃料通過筒75の開口端(上部側の開口)は、燃料通過筒75の軸線X−X(図14a)方向に開口している。また燃料通過筒75の開口端(上部側の開口)には、フランジ部83が形成されている。
【0110】
これに対して燃料通過筒75の下部側約半分の領域82は、円錐形をしている。そして燃料通過筒75の下部側の開口85は、図14の様に燃料通過筒75の軸線X−X(図14)に対して傾斜方向に開口している。
則ち、燃料通過筒75は、使用時の姿勢を基準として、下部側の開口85が傾斜しており、下部側の開口端に高低差がある。
また下部側の開口85は、その内側部分が折り返されており、開口端内部の樋状の溝87が形成されている。則ち、燃料通過筒75の内面は、予備発熱周壁64として機能するものであり、本実施例では、予備発熱周壁64たる燃料通過筒75の内面の下部に樋状の溝87が形成された構造である。
そして開口85の最も下部に位置する部位の溝87には開口88が形成されている。開口88は、具体的には小孔であり、気化しなかった燃料を集めて下部の自己発熱部11側に滴下するために設けられている。
【0111】
円筒状断熱材76は、耐熱性と断熱性を兼ね備えた素材で作られ円筒である。円筒状断熱材76の内径は、前記した燃料通過筒75の上部側の領域81の外径と等しい。また円筒状断熱材76の高さは、燃料通過筒75の上部側の領域81の長さに等しい。
円筒状断熱材76は、前記した様に耐熱性と断熱性を兼ね備えた素材で作られ、具体的にはグラスウールやセラミック等が採用されている。
【0112】
ドーナツ状断熱材73は、円盤状であり、中央に大きな開口が設けられている。ドーナツ状断熱材73もグラスウールやセラミックのように耐熱性と断熱性を兼ね備えた材質で作られている。
【0113】
コイル部材77は、図15の様にボビン90とコイル線91によって構成されたものである。ボビン90は、これ自体が断熱部材としての機能を兼ね備えるものであり、断熱性と耐熱性を兼ね備えた不飽和ポリエステルを素材としている。ボビン90の形状は、図15の様に筒体部92の両端にフランジ部93,94が設けられたものである
【0114】
コイル線91は、通常の銅線であり、螺旋状に巻き付けられている。なおコイル線の形状は、螺旋形に限定されるものではなく、例えば鞍形であってもよい。 コイル線91は、リッツ線であり、ボビン90の筒体部92の外周に螺旋状に巻き付けられ、さらにコイル線91が解けないようにシリコンワニス等で固められている。また、コイル線91の外周部には、通電により発生する磁界を加熱すべき燃料通過筒75に集中させるために、数個(本実施形態では8個)のフェライトガイド95が固定されている。
【0115】
誘導熱源部9は、前記した燃料通過筒75、円筒状断熱材76、ドーナツ状断熱材73及びコイル部材77の四者によって構成されており、燃料通過筒75の外周に円筒状断熱材76が設けられ、さらにその外周にコイル部材77が設けられている(図15では、作図の関係上、円筒状断熱材76を略している)。従ってコイル線91と燃料通過筒75の間には、円筒状断熱材76と断熱材としての機能を備えたボビン90が介在されており、コイル線91と燃料通過筒75の間は両者によって二重に断熱されている。
また燃料通過筒75の開口端(上部側の開口)のフランジ部83と、ボビン90のフランジ部93の間にはドーナツ状断熱材73が介在されている(図15では、作図の関係上、ドーナツ状断熱材73を略している)。
【0116】
誘導発熱部10には、発熱部材である燃料通過筒75の温度に応じて接点を開閉する温度動作スイッチ99が設けられている。
また誘導発熱部10には、発熱部材たる燃料通過筒75の温度を検知する温度センサー(誘導発熱部温度検知手段)100が設けられている。温度センサー100は、具体的にはサーミスタであり、平板状の温度検知部101を持つ。
本実施例では、図15の様に、ボビン90のフランジ部93に貫通孔102を設け、温度センサー100の一部を保持すると共に信号線等を当該貫通孔102から外部に導出している。また温度検知部101とボビン90のフランジ部93の間にはクッション材103が設けられ、温度検知部101を燃料通過筒75のフランジ部83に押圧している。クッション材103は具体的にはシリコンゴムやステンレススチール等の皿バネや板バネ等である。またこれらに代わって小径のオーリングの様なものをクッション材として使用することもできる。
【0117】
則ち、本実施例では、断熱材としての機能を備えたボビン90によって温度センサー(誘導発熱部温度検知手段)100が保持されている。そしてさらに温度検知部101は、断熱材としての機能を備えたボビン90から反力を受けて燃料通過筒75の外側表面に押し当てられている。また温度検知部101の表面にはシリコン等の熱伝導性に優れたぺーストを塗布しておくことが望ましい。
【0118】
ここで、前記した誘導熱源部9は、コイル線91をボビン90の筒体部92に適宜に巻装する構成であったが、コイル線91を位置決めしつつ巻装する構成を採ることも可能である。
図16(a)は、コイル線91を位置決めしつつ巻回すようにした誘導熱源部106の構造を模式的に示す説明図、同図(b)は、その誘導熱源部106の断面図である。
【0119】
誘導熱源部106は、誘導発熱部107を形成する鋳物製筒状部材で成る燃料通過筒108と、コイル部材113で構成される。また、コイル部材113は、断熱材110とコイル線91で構成される。
【0120】
燃料通過筒108は、前記燃料通過筒75と概ね同一の形状を有するが、鋳物で製されている点と上部側の形状が異なる。則ち、直径が略一定の上部側の上端および下端には全周に渡ってフランジ部111,112が設けられている。則ち、燃料通過筒108がコイル部材113を装着するボビンの機能を兼ね備えている。このフランジ部111,112の間には、上部側の周面に沿って螺旋状に等間隔に位置決め部材109が設けられている。そして、隣接する位置決め部材109同士の間、および、位置決め部材109とフランジ部111,112の間に、コイル部材113を装着する断面が凹状のコイル装着溝114を形成している。
【0121】
断熱材110は、断面がコ字状の細長い部材で、上下方向の幅は燃料通過筒108のコイル装着溝114の上下方向の幅と略同一である。断熱材110は、前記したボビン90と同一の素材で形成される。
【0122】
誘導熱源部106は、図16(b)の様に、コイル部材113を燃料通過筒108のコイル装着溝109に嵌入させつつ螺旋状に装着して組み立てられる。則ち、断熱材110を、コ字状の断面の開口部分が外方となるようにして燃料通過筒108のコイル装着溝114に沿って挿入しつつ螺旋状に装着する。次いで、断熱材110の開口部分に沿ってコイル線91を嵌入させつつ螺旋状に装着することにより、誘導熱源部106が組み立てられる。
【0123】
この様な構成の誘導熱源部106によれば、燃料通過筒108の位置決め部材109によってコイル部材113の上下方向へのずれが抑止されるので、振動や衝撃によってコイル線91が上下方向へずれることがない。また、コイル線91が燃料通過筒108のコイル装着溝114に嵌入した状態に位置するので、コイル線91へ通電される高周波電流によって生じる磁力線を効率良く燃料通過筒108に鎖交させることができ、加熱効率を向上させることが可能である。また、燃料通過筒108を導電性の低い鋳物で製しているので、加熱効率が一層向上すると共に、熱による変形に対しても優れる。しかも、燃料通過筒108で生じる熱を断熱材110によって効果的に遮断して、コイル線91に熱が伝達されることを防止することが可能である。
【0124】
自己発熱部11は、図10,図11の様に底部96と周部97を持つ円筒体であり、底部96は閉塞し、上部は開口している。則ち、自己発熱部11は窪んだ形状をしており、底部96及び周部97は閉塞していて気密・水密性を持ち、上部は開放されている。
【0125】
自己発熱部11は、前記した様に底部96及び周部97を持ち、あたかもコップの様な形状をしていて、図10,図11の様に、炎孔ベース43の中央の開口52部分に取り付けられている。自己発熱部11の位置は、炎孔ベース43の中央にあり、炎孔(小孔61)に囲まれていて燃焼部7に近接して位置する。また自己発熱部11の大部分は、燃焼部7側に露出する。より具体的には、自己発熱部11の底部96の全部と、周部97の大部分が燃焼部7側に露出する。従って後記する様に燃焼時には炎孔(小孔61)から発生する火炎により、自己発熱部11が外側から加熱される。その結果、自己発熱部11の内周面(自己発熱周壁)66及び底面部67が加熱され、昇温する。
また自己発熱部11には、温度センサー(自己発熱部温度検知手段)115が埋め込まれている(図10)。
【0126】
第一回転部材23は、燃料通過筒75の内部で液体燃料を効率良く気化させるために、燃料パイプ116から噴射された液体燃料(本実施例では灯油を使用)を微粒子状にし、燃料通過筒(誘導発熱部10)75の予備発熱周壁64に向かって飛散させると共に、気化した燃料ガスと一次空気とを撹拌させて均一に混合する働きを行うものである。
【0127】
一方、第二回転部材25は、上方から滴下される液体燃料を自己発熱部11の自己発熱周壁66へ向けて飛散させると共に、燃料ガスと一次空気との撹拌混合を行うためのものである。
【0128】
図12に示すように、第一空気導入筒78及び第二空気導入筒80によって空気導入筒71が構成される。
第一空気導入筒78は、薄板を曲げて作られたものであり、図12の様に外フランジ部127と円筒部128及び内フランジ部129によって構成されている。則ち、外フランジ部127は、円筒部128の一方の開口端にある。外フランジ部127は、使用時には上部側に位置する。
円筒部128は、内径が前記した誘導発熱部10の外径よりも大きく、空気の流れ方向の先端側は、やや内径が絞られている。
【0129】
そして円筒部128の空気流の先端側には内フランジ部129が設けられている。
これに対して第二空気導入筒80は円錐形をしている。第二空気導入筒80の上部の開口130は、前記した第一空気導入筒78の先端部の開口径に等しい。また第二空気導入筒80の下部の開口径は、前記した自己発熱部11の開口径よりも小さい。
第一空気導入筒78と第二空気導入筒80は重ねられて一連の空気流路を構成する。第一空気導入筒78の接合部分には図示しないパッキンが介在されている。
【0130】
気化部8は、前記した様に誘導発熱部10と自己発熱部11を持つ。そして誘導発熱部10は、前記した空気量調整部6と燃焼部7の間にあり、自己発熱部11は、燃焼部7に位置している。
気化部8は、前記した様に、第一回転部材23、ドーナツ状断熱材73、燃料通過筒75、円筒状断熱材76、コイル部材77、第一空気導入筒78、第二空気導入筒80、第二回転部材25、及び自己発熱部11によって構成されているが、これらはいずれも同一軸線状に並べて配されている。則ち、第一空気導入筒78と第二空気導入筒80によって構成される空気導入筒71の内部に燃料通過筒75、円筒状断熱材76、ドーナツ状断熱材73及びコイル部材77の四者から成る誘導発熱部10が配されており、空気導入筒71の中心軸と、誘導発熱部10の中心軸は一致する。
【0131】
空気導入筒71と誘導発熱部10の下部に自己発熱部11があり、空気導入筒71の先端部は、自己発熱部11の開口(奥側)に向かって開いている。また誘導発熱部10を構成する燃料通過筒(誘導発熱部10)75についても自己発熱部11の奥側に向かって開いている。
また第一回転部材23は誘導発熱部10の内部に位置し、第二回転部材25は自己発熱部11の内部に位置する。より詳細には、第一回転部材23は誘導発熱部10を構成する燃料通過筒(誘導発熱部10)75内にあり、予備発熱周壁64に囲まれた空間に位置する。また第二回転部材25は自己発熱部11の自己発熱周壁66に囲まれた空間に位置する。
【0132】
また燃料通過筒75(誘導発熱部10)の内部には燃料パイプ116が挿入され、燃料パイプ116は、図11の様に、第一回転部材23の上部に至っている。より具体的に説明すると、燃料パイプ116は誘導発熱部10の上部の開口から真っ直ぐに垂下され、上から第一回転部材23の上部に至る。そして燃料パイプ116から第一回転部材23に灯油等の液体燃料が滴下される。
【0133】
また誘導発熱部10には前記した様に開口85に傾斜した溝87があり、当該溝87には開口88が形成されているが、この開口88は、第二回転部材25の上部に位置する。則ち、開口88は、第二回転部材25の中心近傍の上部にある。
【0134】
次に、本実施例の燃焼装置1の各部の組み立て構造について説明する。
本実施例の燃焼装置1は、送風機3、駆動機械部5、空気量調整部6及び気化部8が中心軸を一致させて順次積み重ねられたものであり、駆動機械部5の天板17に送風機3が直接的にネジ止めされている。則ち、本実施例では、送風機3の回転中心と空気量調整部6の軸挿通孔28,35と気化部8の中心軸が同一軸線上に直線的に並べられている。なお気化部8自体の構成部品についても同一軸線状に並べて配されているので、前記した送風機3の回転中心と空気量調整部6の軸挿通孔28,35と気化部8の中心軸に対して気化部8の二つの回転部材23,25の回転中心軸も一致する。
【0135】
そして駆動機械部5の上部に空気量調整部6がネジ止めされている。また空気量調整部6の下部には、気化部8が位置する。則ち、空気量調整部6の中心部に、パッキンを介して空気導入筒71の大きいほうの開口が取り付けられている。
【0136】
空気導入筒71の中心軸は、空気量調整部6の移動側板状部材26および固定側板状部材27の軸挿通孔28,35と一致し、空気導入筒71は固定側板状部材27の中心側のエリアを覆う様に位置することとなる。従って空気量調整部6の中心側のエリアから排出された空気は、空気導入筒71によって捕捉される。
なお空気導入筒71内には前記した様に誘導発熱部10があり、誘導発熱部10は、中心に燃料通過筒75があって上下に連通するため、空気量調整部6の中心側のエリアから排出された空気は、空気導入筒71によって捕捉され、中心部の燃料通過筒75を流れる空気と、誘導発熱部10の周辺部を流れる空気に分流される。
【0137】
則ち、空気導入筒71内には燃料通過筒75があるため、空気の一部は燃料通過筒75を通過して自己発熱部11に至る。
また空気導入筒71の内面と誘導発熱部10の外周との間には環状の空間部131が有るため、空気の残部は当該空間部131を通過して直接的に自己発熱部11に入る。
空気導入筒71に入った空気は、いずれの経路を通る場合でも、一次空気として燃焼に寄与する。
【0138】
また駆動機械部5のモータ18の回転軸21は、空気量調整部6の中央の軸挿通孔28,35を連通して空気導入筒71及び誘導発熱部10を通過し、自己発熱部11の内部に至る。
そしてモータ18の回転軸21は、誘導発熱部10の内部、より詳細には燃料通過筒75の内部において第一回転部材23と係合している。またモータ18の回転軸21は、自己発熱部11の内部において第二回転部材25と係合している。則ち、駆動機械部5のモータ18の回転軸21は、その先端部分が第二回転部材25と係合し、中間部分が第一回転部材23と係合している。そして第一回転部材23は誘導発熱部10の燃料通過筒75内に位置し、第二回転部材25は自己発熱部11内に位置し、いずれもモータ18によって回転される。
【0139】
またモータ18の後端側の回転軸20は、ファン13にも接続されているから、本実施例では、単一のモータ18によって気化部8の二つの回転部材23,25とファン13の三者が駆動される。
なお軸挿通孔28,35は、移動側板状部材26の回転中心でもあるから、移動側板状部材26が回転する際に移動することはない。そのため軸挿通孔28,35にモータ18の回転軸21があっても、移動側板状部材26の回転の妨げとならない。
【0140】
本実施例の燃焼装置1は、炎孔を下に向けて使用される。以下、燃焼装置1の取付方向について説明する。図18は、図10の燃焼装置を採用した給湯器の配管系統図である。本実施例の燃焼装置1は、図18の様な給湯装置2に使用される。そして燃焼装置1は、熱交換器135が内蔵された缶体136の上部に設置され、下部の熱交換器135に向かって火炎を発生させる。
【0141】
給湯装置2は、図18に示すように、本実施例の燃焼装置1と、燃焼装置1において発生した燃焼ガスと湯水などの熱媒体とが熱交換を行う熱交換器135と流水回路141及び燃料供給部142によって構成されている。また流水回路141は、外部から湯水を供給する流入側流路143と、熱交換器135において加熱された湯水を外部に流出させる流出側流路145とを備えている。流入側流路143は熱交換器135の入水口146に接続されており、流出側流路145は熱交換器135の出水口147に接続されている。
【0142】
流入側流路143の中途には、流量センサー150(最小作動水量検知手段)と入水温度センサー151(入水温度検知手段)とが設けられている。流量センサー150は、流入側流路143を介して供給される湯水の量を検知するものであり、当該流量センサー150が所定の水量を検知すると、燃焼装置1が点火動作を開始する。また、入水温度センサー151は、外部から供給される湯水の水温を検知するものである。
【0143】
流出側流路145は、熱交換器135において燃焼ガスとの熱交換により加熱された高温の湯水を給湯栓152に供給するものである。流出側流路145の中途には、温度センサー153と、攪拌部154と、水量調整弁155(出湯量制限手段)と、出湯温度センサー156(出湯温度検知手段)とが設けられている。水量調整弁155は、流出側流路145の流路を開閉することにより、給湯栓152から出湯される湯の総量を規制するものである。
また、温度センサー153は、熱交換器135において加熱された高温の湯水の温度を検知するものである。
【0144】
攪拌部154は、流出側流路145と、後述するバイパス流路158との接続部に設けられている。攪拌部154では、熱交換器135において加熱された高温の湯水と、バイパス流路158を介して流入する比較的低温の湯水とが混合される。攪拌部154の下流側には、出湯温度センサー156が設けられている。出湯温度センサー156は、攪拌部154において攪拌された湯水の温度を検知するものである。
【0145】
流入側流路143と流出側流路145とは、バイパス流路158によってバイパスされている。バイパス流路158の流出側流路145側の端部は、上記した攪拌部154に接続されている。バイパス流路158の中途には、バイパス流量調整弁159が設けられている。バイパス流量調整弁159は、攪拌部154に流れ込む水量を調整するものである。
【0146】
次に本実施例の燃焼装置1の機能について説明する。
本実施例の燃焼装置1では、モータ18を起動してファン13と第一回転部材23及び第二回転部材25を回転させる。
ファン13の回転により、図10の矢印の様に送風機3のハウジング12の中央部に設けられた開口15から空気が吸い込まれ、空気は駆動機械部5に入る。そして空気は、駆動機械部5から上部の空気量調整部6を経て気化部8及び燃焼部7に流れるが、本実施例では空気量調整部6によって流量調整される。則ち、気化部8および燃焼部7側に流れる空気量は、ステップモータ38を動作させ、移動側板状部材26を固定側板状部材27に対して回転させて開口面積を変化させることにより調整される。
【0147】
空気量調整部6を通過した空気は、一次空気として燃焼に寄与するものと、二次空気として燃焼に寄与するものに別れる。則ち、空気量調整部6の中心部のエリアを通過した空気は、直接的に空気導入筒71に捕捉され、その一部は燃料通過筒75に入って燃料ガスと混合され、残部は直接的に自己発熱部11の中に入って燃料ガスと混合される。
【0148】
また送風の残部は、図17に示すように分流部材41に列状に設けられた長孔状の開口48から、炎孔ベース43を横切って流れ、炎孔部材45の丸孔60へ経て燃焼部7に至る。
【0149】
そして送風機3の送風により、上記した様に気化部8内に大量に一次空気が導入され、誘導発熱部10の燃料通過筒75内及び自己発熱部11を通風雰囲気とする。
また誘導発熱部10のコイル線91に図示しない高周波インバータから高周波電流を流し、高周波誘導加熱の原理によって誘導発熱部10の燃料通過筒75を発熱させる。
【0150】
則ち、コイル線91に高周波電流を流すことにより、コイルの内部に変動磁場が生成し、当該変動磁場中に置かれた燃料通過筒75を変動する磁力線が貫く。ここで燃料通過筒75はステンレス鋼で作られており、導電性を有するから、燃料通過筒75の内部に渦電流が生じる。そして前記した様に燃料通過筒75はステンレス鋼で作られており、相当の電気抵抗を有するから、渦電流に起因するジュール熱によって燃料通過筒75が発熱する。
また高周波誘導加熱による発熱は、熱効率が高く、且つ早期に昇温する。そのため燃料通過筒75は、従来の電気ヒータを使用した場合に比べて極めて短時間の間に昇温し、液体燃料を気化し得る温度に達する。
【0151】
なお本実施例では、高周波誘導加熱によって燃料通過筒75を加熱する際に、コイル線91が昇温しない様に工夫がなされている。
則ち、本実施例の様に燃焼装置1の内部に誘導加熱用のコイル線91を設けると、内部の熱によってコイル線91が加熱され、断線等のおそれが生じる。そこで本実施例では、コイル線91が過度に加熱されない様に工夫がなされている。
則ち、本実施例では、コイル線91は、ボビン90に巻かれているが、ボビン90は、樹脂で作られており、導電性がないので発熱しない。またボビン90は断熱性と耐熱性を具備した不飽和ポリエステルを素材としている。そのためボビン90が断熱材として機能し、燃料通過筒75の熱をコイル線91に伝えない。
【0152】
またボビン90と燃料通過筒75の間にも発熱せず、且つ断熱性に優れた断熱材(円筒状断熱材76)が介在されている。
また燃料通過筒75は、フランジ部83を有するが、当該フランジ部83とコイル線91との間にも、ドーナツ状断熱材73とボビン90のフランジ部93が存在し、コイル線91の昇温を防いでいる。
さらに本実施例では、後記する様に誘導発熱部10の外側に一次空気が流れる構造となっているので、当該一次空気によってもコイル線91が冷却される。
【0153】
上記した様に、コイル線91に通電し、高周波誘導加熱によって燃料通過筒75を発熱させ、燃料通過筒75の内壁全体を昇温させる。この状態において、燃料パイプ116から灯油を第一回転部材23に対して滴下する。
滴下された灯油は、第一回転部材23から遠心力を受け、燃料通過筒(誘導発熱部)75の予備発熱周壁64に向かって飛散する。なお本実施例で採用した第一回転部材23は、上下方向へ延びる回転軸と一体的に回転する板体の外縁から放射状に撹拌羽根を延出させて形成され、当該撹拌羽根は、板体の外縁に沿って全周に渡って複数設けられると共に、板体に対して所定角度だけ傾斜させた構成とされている。
【0154】
そのため第一回転部材23の板体の表面に噴射された液体燃料は、遠心力によって板体の表面を流動し、一部は傾斜した撹拌羽根の表面に沿って流動して撹拌羽根の先端から燃料通過筒75の予備発熱周壁64へ向けて飛散する。
従って、撹拌羽根の先端が板体に対して回転軸方向(上下方向)に位置する構成とすれば、板体に対して上方や下方に位置する部位から液体燃料を分散させて飛散させることができ、飛散した液体燃料に気化部内周壁の熱エネルギーを効率良く加えて気化を促進させることが可能となる。
【0155】
そして飛散した灯油は、第一回転部材23の周囲に配された燃料通過筒75の内面に接触し、熱を受けて気化する。このとき、燃料通過筒75に接触した液体燃料はほぼ完全に気化され、気化されずに液体燃料が残留することはない。
また前記した様に空気導入筒71に捕捉された空気の一部が燃料通過筒75の内部を通過するので、燃料通過筒75の内面から熱を受けて気化した燃料は、燃料通過筒75を通過する空気と混合される。
【0156】
ここで本実施例では、第一回転部材23に撹拌羽根が設けられているから、第一回転部材23の内面に設けられた撹拌羽根によって燃料通過筒75内の空気が攪拌され、燃料ガスと空気との混合が促進される。
また本実施例では、燃料通過筒75が筒状であるから、飛散された燃料及び気化した燃料は、筒状の部分を通過する間、加熱され続ける。則ち、本実施例では、誘導発熱部分が筒状であるから、燃料が当該筒状の部分を通過する際に加熱昇温される。そのため本実施例の燃焼装置は、燃料と発熱体との接触距離及び接触時間が長く、燃料の気化が確実であるばかりでなく、気化した燃料ガスの温度が高い。
【0157】
こうして発生した混合ガスは、燃料通過筒75を通過して自己発熱部11内に入る。
一方、前記した様に、空気導入筒71に捕捉された空気の残部は、空気導入筒71の内面と誘導発熱部10の外周との間に形成された空間部131を通過して自己発熱部11に入る。
また本実施例では、自己発熱部11内にも回転部材が設けられている。則ち、本実施例では、二段に回転部材が設けられ、その一つたる第二回転部材25は、自己発熱部11の中で回転する。
そのため自己発熱部11内に入った燃料ガスと空気との混合ガスは、再度第二回転部材25によって攪拌混合される。
【0158】
特に本実施例では、燃料通過筒75の先端側が絞られており、前記した第一回転部材23によって混合攪拌された燃料ガスは、狭い燃料通過筒75の先端を通過する際に互いに激しく衝突し、混合が進む。そして当該燃料ガスは、狭い部分から第二回転部材に対して吹き込まれ、再度第二回転部材25によってかき混ぜられる。また燃料ガスは、自己発熱部11内において、新たに空間部131を通過して自己発熱部11に導入された空気とも混合される。
こうして発生し、さらに一次空気と混合された燃料ガスは、図10の矢印の様に、第二回転部材25の外壁と自己発熱部11の内周面66によって形成される空隙138を流れて下流に向かう。則ち、混合ガスは、自己発熱部11の円筒状の内周面66に沿って一旦上方に流れる。ここで自己発熱部11の開口部近傍には空気導入筒71の吹き出し口側があるので、混合ガスの流路は極めて狭い。そのため混合ガスの攪拌は、当該部位においてさらに進行する。
【0159】
こうして空気導入筒71から自己発熱部11の内部に供給された空気は、飛散した燃料と混合され、高温状態となって自己発熱部11の上部の開口部140から排出される。そして自己発熱部11を出た混合ガスは、炎孔ベース43に流れ込む。
【0160】
そして混合ガスは、炎孔ベース43の下部に設けられた炎孔(小孔61)から放出される。
前記した様に、本実施例の燃焼装置1では、気化部8で液体燃料が気化されて炎孔ベース43を流れ、炎孔(小孔61)から放出されるが、気化部8を出る際における燃料ガスの温度が高いので、炎孔(小孔61)に至るまでの間で再液化することはない。
【0161】
一方、他の部位から下流側に流れた空気は、燃料と混合されることなく、直接燃焼部7側に流れ込み、二次空気として燃焼に寄与する。
そして図示しない点火装置によって燃料ガスに点火されると、炎孔(小孔61)から下向きの火炎が発生する。
【0162】
ここで本実施例の燃焼装置1では、気化部8が、燃焼部7の中央に直接的に露出しているので、燃焼が開始されると、自己発熱部11が火炎によって加熱される。そのため自己発熱部11内の温度が上昇し、燃料の気化がさらに促進される。所定時間の間、燃焼が行われ、自己発熱部11の温度が十分に昇温すると、
誘導発熱部10のコイル線91への通電を停止し、誘導加熱を終了する。そして以後は、自己発熱部11の発熱だけに頼って燃料を気化させる。
【0163】
則ち、誘導加熱を停止すると、燃料通過筒75の温度が低下し、誘導発熱部10での気化は殆ど行われなくなり、実質的に自己発熱部11のみで燃料は気化される。
誘導発熱部10で気化されない液体燃料は、燃料通過筒75の内面を伝い、重力によって下方に至る。ここで本実施例では、燃料通過筒75の下端部に樋状の溝87が形成されている。そのため燃料通過筒75の内面を伝い落ちた燃料は、下部の溝87に集められる。さらに本実施例では、下部側の開口85が傾斜しているから、端部の溝87にも傾斜があり、集められた燃料は、溝87内を流れてさらに下方に集まる。そして本実施例では、溝87の最下部に開口88が設けられているから、溝87を流れた燃料は、最終的に溝87の最下部に形成された開口88から滴下する。
【0164】
ここで燃料通過筒75に設けられた開口88は、第二回転部材25の上部であってさらに第二回転部材25の中心近傍に開いているから、開口88から滴下した燃料は、常に一定の位置に落下し、第二回転部材25と接触する。より具体的には、気化されなかった燃料は、すべて第二回転部材25の中央部分に集中的に滴下され、第二回転部材25に巻き込まれて飛散する。
【0165】
そして飛散した燃料は、自己発熱部11の内周面66に衝突し、自己発熱部11から熱を受けて気化する。
また前記した空気導入筒71の内外を流れて自己発熱部11に入った空気とも混合される。
また燃料の一部は、遠心力によって飛散する前に第二回転部材25から零れ落ちるが、このように落下した燃料は、自己発熱部11の底面部67に接触し、熱を受けて気化する。
そして第一回転部材23の内面に設けられた羽根部によって自己発熱部11内の空気が攪拌され、燃料ガスと空気との混合が促進される。
その後の燃料ガスの流れは、前述した通りであり、高温状態となって自己発熱部11の上部の開口部140から排出される。そして自己発熱部11を出た混合ガスは、一旦炎孔ベース43の上部側の通路に流れ込み、炎孔ベース43の炎孔(小孔61)から放出され、燃焼する。
【0166】
【発明の効果】
請求項1〜3に記載の発明によれば、誘導発熱部の温度上昇速度によって電磁誘導加熱手段や電源供給の異常を的確に判別することが可能となり、安全性、信頼性を向上させた燃焼装置を提供できる。
請求項1,2,4に記載の発明によれば、電磁誘導加熱手段や制御手段に異常が生じた場合でも、気化部の異常温度上昇を確実に回避することができ、安全性、信頼性を向上させた燃焼装置を提供できる。
請求項5に記載の発明によれば、誘導発熱部の耐熱性、耐久性が向上すると共に、製造性を向上させた燃焼装置を提供できる。
請求項6に記載の発明によれば、誘導発熱部によらず自己発熱部によって液体燃料を気化させることが可能となり、ランニングコストを低減した燃焼装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る燃焼装置の気化部周辺の構造を示す説明図である。
【図2】 図1の燃焼装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】 図1および図2で示す燃焼装置で実施される制御のフローチャートである。
【図4】 図3に示す制御における気化部の温度を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対比させて示す説明図である。
【図5】 図3に示す制御における気化部の昇温状態を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対比させて示す説明図である。
【図6】 図1および図2で示す燃焼装置で実施される別の制御における気化部の温度を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対比させて示す説明図である。
【図7】 図6に示す制御の変形例の制御における気化部の温度を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対比させて示す説明図である。
【図8】 図2に示す燃焼装置の制御系の変形例を示すブロック図である。
【図9】 図1および図8で示す燃焼装置で実施される制御における気化部の温度を、各部の動作状態を示すタイムチャートと対比させて示す説明図である。
【図10】 本発明に係る燃焼装置の具体的な実施例を示す断面図である。
【図11】 図10に示す燃焼装置の全体的な部品構成を表す分解斜視図である。
【図12】 図10に示す燃焼装置の気化部周辺の分解斜視図である。
【図13】 図10に示す燃焼装置の気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の斜視図である。
【図14】 図10に示す燃焼装置の気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の正面図、平面図、左右側面図及び底面図である。
【図15】 図10に示す燃焼装置の気化部の誘導熱源部の一部断面斜視図である。
【図16】 (a)は、図10に示す燃焼装置の気化部の誘導熱源部の別の実施形態の構成を分解状態で示す模式図、(b)は(a)の誘導熱源部の断面図である。
【図17】 図10に示す燃焼装置の燃焼部近傍を上から見た斜視図である。
【図18】 図10に示す燃焼装置を用いて構成した給湯装置の流路系統図である。
【符号の説明】
1 燃焼装置
7 燃焼部
8 気化部
10 誘導発熱部
11 自己発熱部
13 送風ファン
99 温度動作スイッチ
100 誘導発熱部温度検知手段(温度センサー)
108 鋳物製筒状部材
109 位置決め部材
113 コイル部材
198 電磁誘導加熱手段
200 制御手段
207 計時手段

Claims (6)

  1. 液体燃料を加熱して気化させる気化部と、前記気化部に空気供給を行う送風ファンとを有し、当該気化部で液体燃料を気化し燃焼部に供給して燃焼させる燃焼装置において、
    前記気化部は、電磁誘導加熱手段によって発熱する誘導発熱部を有すると共に、当該誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、
    予め定められた昇温制御に基づいて前記電磁誘導加熱手段によって誘導発熱部を昇温しつつ、前記誘導発熱部温度検知手段の検知温度を参照して誘導発熱部の昇温状況を監視し、当該誘導発熱部の昇温状況が前記昇温制御に応じた昇温状況と異なるときは、異常の発生と判別して必要な異常対応処理を行う制御手段とを備え、
    前記気化部の近傍には、当該気化部の温度に応じて作動する温度動作スイッチが設けられ、前記温度動作スイッチの作動温度は、液体燃料の発火温度領域と気化温度領域との間の発火温度領域側に近接する所定値に設定され、
    前記気化部が前記温度動作スイッチの作動温度を超えるときは、前記温度動作スイッチの作動によって電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が遮断されると共に、前記制御手段によって前記送風ファンの駆動が停止される異常対応処理を行うことを特徴とする燃焼装置。
  2. 液体燃料を加熱して気化させる気化部と、前記気化部に空気供給を行う送風ファンとを有し、当該気化部で液体燃料を気化し燃焼部に供給して燃焼させる燃焼装置において、
    前記気化部は、電磁誘導加熱手段によって発熱する誘導発熱部を有すると共に、当該誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、
    予め定められた昇温制御に基づいて前記電磁誘導加熱手段によって誘導発熱部を昇温しつつ、前記誘導発熱部温度検知手段の検知温度を参照して誘導発熱部の昇温状況を監視し、当該誘導発熱部の昇温状況が前記昇温制御に応じた昇温状況と異なるときは、異常の発生と判別して必要な異常対応処理を行う制御手段とを備え、
    前記気化部の近傍には、当該気化部の温度に応じて作動する温度動作スイッチが設けられ、前記温度動作スイッチの作動温度は、液体燃料の発火温度領域と気化温度領域との間の気化温度領域側に近接する所定値に設定され、
    前記気化部が前記温度動作スイッチの作動温度を超えるときは、前記温度動作スイッチの作動によって電磁誘導加熱手段による誘導発熱部の加熱が遮断されると共に、前記制御手段によって前記送風ファンの回転数が増加される異常対応処理を行うことを特徴とする燃焼装置。
  3. 時間を計測する計時手段を備え、
    前記制御手段によって監視される誘導発熱部の昇温状況は、当該誘導発熱部が予め定められた第1の温度から当該温度よりも高い第2の温度に至る昇温時間であり、
    前記制御手段は、前記誘導発熱部温度検知手段の検知温度および前記計時手段の計測値を参照しつつ、前記昇温時間が、前記昇温制御に応じて定められる所定時間範囲から外れるときは、異常の発生と判別することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置。
  4. 前記温度動作スイッチは、温度上昇によって作動した後に、温度の低下に伴って作動前の状態に復帰する自動復帰型であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃焼装置。
  5. 前記誘導発熱部は鋳物製筒状部材で構成されると共に、前記電磁誘導加熱手段はコイル部材を備え、前記鋳物製筒状部材にはコイル部材の位置決め部材が設けられており、コイル部材は鋳物製筒状部材に位置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃焼装置。
  6. 前記気化部は、主として燃焼部の熱を受けて昇温する自己発熱部を有し、当該自己発熱部によっても液体燃料が加熱されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃焼装置。
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