JP4129634B2 - 燃焼装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体等の気体以外の燃料を使用する燃焼装置に関するものである。本発明の燃焼装置は、暖房機器や給湯器に採用する燃焼装置として特に好適である。
【0002】
【従来の技術】
都市ガスが普及していない地域で使用される給湯器や暖房機等には、灯油等の液体燃料を使用した燃焼装置が採用される場合が多い。またこの中でも、比較的発熱量が小さい用途に使用される場合は、気化部によって液体燃料を気化し、この気化ガスを燃焼部に送って燃焼させる形式のものが多用されている。代表的なものとして次の文献に記載された構造が知られている。
【0003】
【特許文献1】
特公平7−21332号公報
【0004】
図10は、従来技術の燃焼装置で採用する気化部の例を示す断面図である。この種の燃焼装置では、気化部200は燃焼部201の下部に設けられる。そして気化部200は、凹穴状の気化室202を備えている。また気化室202の上部の位置には、電気ヒータ203が内蔵されており、気化室202の内壁は昇温可能である。
そして当該気化室202の中にロータリーカップ205が内蔵されている。ロータリーカップ205は、図示しないモータによって高速で回転されるものである。またロータリーカップ205は、底部の中央に開口209を持ち、開口209の近傍には、一次空気供給筒208が設けられている。さらにカップ205の上部には振り切り板206が設けられている。
【0005】
そして図示しないモータによってロータリーカップ205を回転させ、さらに一次空気供給筒208から気化部200のロータリーカップ205内に空気を吹き込む。そして燃料パイプ207からロータリーカップ205の中に灯油を滴下し、遠心力によって灯油を気化室202の内壁に向かって飛散させる。
その結果、灯油は、気化室202の内壁から熱を受けて気化し、さらに気化した燃料は、一次空気供給筒208から気化室202内に吹き込まれた空気と混合される。そしてこの混合ガスは下部の開口210から排出され、燃焼部201に送られて燃焼に供される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記した様に、この種の給湯器等では、液体燃料に運動エネルギーと熱エネルギーを与えて気化させる。ところが従来技術の燃焼装置では、気化部内で燃料に充分なエネルギーを与えることが困難であり、気化部から排出された燃料ガスの温度が低い場合が多い。そのため気化部から燃焼部に至るまでの間に、せっかく気化した燃料が元の液体に戻ってしまうことがあった。そのためこの種の燃焼装置は、燃焼不良を起こす場合があった。
【0007】
また従来技術の燃焼装置では、気化部内における燃料ガスと空気との混合が不十分であり、混合ガスの濃度が不均一となり、火炎の均一性が損なわれ、燃焼が不安定となる場合があった。
【0008】
そこで本発明は従来技術の上記した問題点に注目し、気化部の気化性能と混合性能を向上させ、安定した燃焼を確保することができる燃焼装置の開発を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そして上記した課題を解決するための一つの方策(関連発明)は、液体燃料を気化すると共に空気と混合して燃焼部に送り、燃焼させる燃焼装置において、独立した熱源を有し主として当該熱源から熱を受けて昇温する予備発熱部と、主として燃焼部の熱を受けて昇温する自己発熱部を有し、前記予備発熱部は両端が開口した筒状であってその内周面が発熱し、前記自己発熱部は一端が閉塞した凹形状部材であり、予備発熱部の下流側開口は、自己発熱部の内側に向かって開口していることを特徴とする燃焼装置である。
【0010】
本発明の燃焼装置は、予備発熱部と自己発熱部の二つの熱源を持ち、燃料は、先に予備発熱部によって加熱され、さらに自己発熱部によっても昇温される。そして本発明では、先の予備発熱部は両端が開口した筒状であってその内周面が発熱する。そのため燃料は、当該筒状の部位を通過する際に加熱昇温される。したがって本発明の燃焼装置では、発熱部材との接触距離を長く設計することができる。
また本発明では、後段の自己発熱部は一端が閉塞した凹形状部材であり、予備発熱部の下流側開口は、自己発熱部の内側に向かって開口している。そのため予備発熱部を出た燃料は、自己発熱部の内部と衝突し、効率良く熱エネルギーを受ける。そのため本発明の燃焼装置は、燃料ガスの温度が高く、再液化することが少ない。
【0011】
また同様の課題を解決するための請求項1に記載の発明は、液体燃料を気化すると共に空気と混合して燃焼部に供給し、燃焼させる燃焼装置において、電磁誘導加熱手段を有し主として当該電磁誘導加熱手段から熱を受けて昇温する予備発熱部と、予備発熱部の下流側に配され主として燃焼部の熱を受けて昇温する自己発熱部と、予備発熱部及び自己発熱部に送風する送風手段を有し、前記予備発熱部は予備発熱周壁を有して当該予備発熱周壁が昇温し、さらに予備発熱周壁で囲まれた空間内に第一回転部材が設けられ、前記自己発熱部は自己発熱周壁を有して当該自己発熱周壁が昇温し、さらに自己発熱周壁で囲まれた空間内に第二回転部材が設けられ、液体燃料は最初に前記第一回転部材によって予備発熱周壁に向かって飛散され、予備発熱周壁が電磁誘導加熱手段によって昇温している際には燃料は予備発熱周壁から熱を受けて気化し、予備発熱周壁の温度が低下しているときには予備発熱周壁では気化はほとんど行われず残存した液体燃料は第二回転部材に滴下され第二回転部材によって自己発熱周壁に向かって飛散されることを特徴とする燃焼装置である。
【0012】
本発明の燃焼装置についても予備発熱部と自己発熱部の二つの熱源を持ち、燃料は、先に予備発熱部によって加熱され、さらに自己発熱部によっても昇温される。また本発明の燃焼装置では、予備発熱部は予備発熱周壁を有して当該予備発熱周壁が昇温し、自己発熱部は自己発熱周壁を有して当該自己発熱周壁が昇温するものであり、それぞれの発熱周壁で囲まれた空間内に回転部材が設けられている。
そのため予備発熱部に入った液体燃料は、第一回転部材によって予備発熱周壁に向かって飛散され、予備発熱周壁から熱を受けて気化する。また残存した液体燃料は第二回転部材によって再度飛散されて自己発熱周壁に衝突し、熱エネルギーを得る。
この様に本発明では、多段階に渡って液体燃料に回転エネルギーが与えられ、高温の周壁に衝突される。そのため本発明の燃焼装置では液体燃料が確実に気化され、さらに燃料ガスの温度が高く、再液化することが少ない。
また本発明の燃焼装置は、送風手段を持ち、さらに多段階に渡って飛散されるので、空気との混合性能も優れている。
【0013】
また同様の課題を解決するための請求項2に記載の発明は、第一回転部材と第二回転部材は同一軸線上に配置され、共通の回転軸によって駆動回転されることを特徴とする請求項1に記載の燃焼装置である。
【0014】
本発明の燃焼装置では、第一回転部材と第二回転部材は同一軸線上に配置され、共通の回転軸によって駆動回転されるので、単一のモータで二つの回転部材を回転させることができる。そのため本発明の燃焼装置は、部品点数が少ないという効果がある。
【0015】
また上記した課題を解決するための一つの方策(関連発明)は、液体燃料を気化すると共に空気と混合して燃焼部に供給して燃焼させる燃焼装置において、予備発熱周壁を有し電磁誘導加熱手段によって予備発熱周壁を昇温する予備発熱部と、予備発熱部の下流側に配され主として燃焼部の熱を受けて昇温する自己発熱部と、予備発熱部及び自己発熱部に送風する送風手段を有し、液体燃料は最初に予備発熱周壁に向かって飛散され、予備発熱周壁が電磁誘導加熱手段によって昇温している際には燃料は予備発熱周壁から熱を受けて気化し、予備発熱周壁の温度が低下しているときには予備発熱周壁では気化はほとんど行われず、前記気化されずに残存した液体燃料は自己発熱部に流れて自己発熱部で加熱され気化されることを特徴とする燃焼装置である。
【0016】
本発明の燃焼装置は、電磁誘導加熱手段によって加熱される予備発熱部と、燃焼熱によって加熱される自己発熱部を持ち、燃料は先に電磁誘導加熱手段によって加熱され、さらに自己発熱部によっても昇温される。また本発明の燃焼装置では、液体燃料は、先に電磁誘導加熱手段を利用した予備発熱周壁に向かって飛散される。
ここで本発明の燃焼装置では、予備発熱部の発熱に電磁誘導加熱手段を利用している。そのため予備発熱周壁の温度上昇が急峻である。
また本発明の燃焼装置では、予備発熱部及び自己発熱部に送風する送風手段を有し、前記した予備加熱周壁に対する燃料飛散は、通風雰囲の中で行われる。そのため本発明の燃焼装置は、燃料と空気との混合性能が優れる。
さらに本発明の燃焼装置では、予備加熱された燃料がさらに自己発熱部によっても加熱されるので、液体燃料が確実に気化され、さらに燃料ガスの温度が高く、再液化することが少ない。
また本発明の燃焼装置は、予備発熱部と自己発熱部を持つから、燃焼初期においては主として予備発熱部によって液体燃料を気化し、燃焼時間の経過と共に予備発熱部の寄与率を下げて行くことも可能であり、最終的に自己発熱部だけで燃料を気化させるといった使い方をすることもできる。
【0017】
また請求項に記載の発明は、予備発熱部と自己発熱部は、同一軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置である。
【0018】
本発明の燃焼装置では、予備発熱部と自己発熱部は、同一軸線上に配置されている。そのため送風機の送風抵抗が少なく、送風機の負担が軽い。
【0019】
また請求項に記載の燃焼装置は、予備発熱周壁は、下部に溝部を有し、当該溝部によって残存した液体燃料が集められることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃焼装置である。
【0020】
残存した液体燃料をそのまま放置しておくのは適切ではなく、他の工程に回して気化を図らなければならない。そこで本発明の燃焼装置では、予備発熱周壁の下部に溝部を設け、残存した液体燃料が溝部によって集めることとした。そのため本発明の燃焼装置では、残存した液体燃料を集めて次の工程に送ることができる。
【0021】
また請求項に記載の発明は、溝部は傾斜しており、液体燃料は特定の場所に集められて自己発熱部側に滴下されることを特徴とする請求項に記載の燃焼装置溝部である。
【0022】
本発明の燃焼装置では、前記した溝部は傾斜している。そのため、燃料は、傾斜した溝部を流れて低い位置に集まる。そして本発明では、この特定の場所に集められた液体燃料を自己発熱部側に滴下する構成を採用している。本発明の燃焼装置では、予備発熱部で残存した燃料が、自己発熱部側の特定の場所に集中して滴下されるので、自己発熱部側における気化状態が安定する。
【0023】
また請求項に記載の燃焼装置は、誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、自己発熱部の温度を検知する自己発熱部温度検知手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃焼装置である。
【0024】
本発明の燃焼装置では、誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、自己発熱部の温度を検知する自己発熱部温度検知手段を有する。そのため両者の温度を個別に管理することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。なお以下の説明において上下の関係は、燃焼装置を給湯器等に設置した状態を基準とする。
図1は、本発明の実施例の燃焼装置の断面図である。図2は、本発明の実施例の燃焼装置の全体的な部品構成を表す分解斜視図である。
【0026】
図1において、1は、本発明の実施例の燃焼装置を示す。本実施例の燃焼装置1は、図9の様に炎孔を下に向けて給湯装置2に内蔵されるものであり、上から送風機3、駆動機械部5、空気量調整部6が積層され、その下部に燃焼部7及び気化部8が設けられたものである。
気化部8は、後記する様に誘導熱源部10と自己発熱部11を持つ。そして誘導熱源部10は、前記した空気量調整部6と燃焼部7の間にあり、自己発熱部11は、燃焼部7に位置している。
【0027】
上部側から順次説明すると、送風機3は、鋼板を曲げ加工して作られた凹状のハウジング12の中にファン13が回転可能に配されたものである。ハウジング12の中央部には、開口15が設けられている。
【0028】
駆動機械部5は、箱体16を有し、その天板17の中央にモータ18が取り付けられている。モータ18は、両端部から回転軸20,21が突出しており、回転軸20,21は、燃焼装置1の略全長を貫通している。そして後記する様に、モータ18の上方側の回転軸20は、ファン13に接続され、下方側の回転軸21は、気化部8の第一回転部材23及び第二回転部材25に接続されている。
【0029】
空気量調整部6は、図2に示すように、固定側板状部材27の上に円盤状の移動側板状部材26が重ねられている。移動側板状部材26は、中央の軸挿通孔28の周りに略三角形の開口30を放射状に複数個設けたものである。また、固定側板状部材27には、移動側板状部材26の軸挿通孔28および開口30に相当する位置に軸挿通孔35および開口33が設けられている。また、固定側板状部材27には、移動側板状部材26を重ね合わせた時に両者が重複しない位置に多数の小孔36が設けられている。
【0030】
空気量調整部6は、ハウジング12に外付けされたステップモータ38の回転軸40が回転すると、回転軸40および移動側板状部材26に係合した駆動片37が揺動する。その結果、移動側板状部材26が、固定側板状部材27の上で中央の軸挿通孔28を中心として相対的に回転する。
移動側板状部材26の回転により、移動側板状部材26と固定側板状部材27を連通する開口の面積が変化し、これによって空気量が調節される。
【0031】
燃焼部7は、図1,2に示すように分流部材41と炎孔ベース43及び炎孔部材45によって作られている。そしてこれらの構成部品が燃焼部用ハウジング42(図1)内に収納されたものである。
【0032】
分流部材41、炎孔ベース43および炎孔部材45は、いずれも長方形をした板状の部材であり、それぞれ中央部に大きな開口46,52,58が設けられている。分流部材41は、平板状の部材であり、開口46の周囲に多数の開口47,48,50が設けられたものである。
【0033】
炎孔ベース43は、アルミダイカストによって作られたものであり、複雑な枠組みと開口及び溝が設けられている。炎孔ベース43の上面側は、主として燃料ガス及び二次空気の流路構成面として機能し、下面側は炎孔取付け面として機能する。即ち、炎孔ベース43は、図1に示す様に外周を囲む外側燃焼壁49を有し、その内部に実際に火炎が発生する燃焼部7が形成される。炎孔ベース43には、気化部8において気化された燃料ガスと空気との混合ガスが流れる流路と、分流部材41の開口47,48,50から流入する二次空気が流れる流路とが形成されている。炎孔ベース43には、図1に示すように温度センサー59(炎孔ベース温度検知手段)が取付けられている。
【0034】
炎孔部材45は、図2に示すように炎孔ベース43と重ね合わせられる板状の部材であり、中央に設けられた自己発熱部11用の開口58を取り巻いて多数の丸孔60と小孔61とが規則正しく配列されている。
【0035】
燃焼部7は、炎孔ベース43、分流部材41および炎孔部材45を上記した状態に組み合わせた状態で燃焼部用ハウジング42内に配置されている。そして、燃焼部7には、分流部材41側から炎孔ベース43を通過し炎孔部材45側に抜ける二次空気流路と、炎孔ベース43内の流路および炎孔部材45の小孔61を介して外部に連通した燃料ガス流路が形成されている。
【0036】
次に気化部8について説明する。図3は、本実施形態の燃焼装置の気化器周辺の分解斜視図である。図4は、気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の斜視図である。図5は、気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の正面図、平面図、左右側面図及び底面図である。図6は、気化部の誘導熱源部の一部断面斜視図である。図7は、気化部の誘導熱源部の変形例を示す一部断面斜視図である。図8は、図1の燃焼装置の燃焼部近傍を上から見た斜視図である。
【0037】
本実施例の燃焼装置1で採用する気化部8は、二種類の熱源を持つ。即ち本実施例で採用する気化部8は、図1,2,3の様に誘導熱源部10と、自己発熱部11を有する。そして両発熱部の近傍にそれぞれ第一回転部材23と第二回転部材25が設けられている。また誘導熱源部10と自己発熱部11に適切な一次空気を供給するための空気導入筒71が設けられている。
【0038】
即ち気化部8は、図3の様に、第一回転部材23、ドーナツ状断熱材73、燃料通過筒(誘導発熱部 予備発熱部)75、円筒状断熱材76、コイル部材77、第一空気導入筒78、第二空気導入筒80、第二回転部材25、及び自己発熱部11によって形成されている。
そして前記した燃料通過筒75、円筒状断熱材76、ドーナツ状断熱材73及びコイル部材77の四者によって誘導熱源部10が構成され、第一空気導入筒78及び第二空気導入筒80によって空気導入筒71が構成されている。
【0039】
順次説明すると、燃料通過筒75は、誘導発熱部及び予備発熱部として機能するものであり、電気伝導性があり、かつある程度の電気抵抗を有する素材で作られた筒である。より具体的には、燃料通過筒75は、誘導加熱し易いように薄い磁性体のステンレス鋼材で作られている。
燃料通過筒(誘導発熱部 予備発熱部)75は、両端が開口するものではあるが、図3,4,5の様な特殊な形状をしており、上部側と下部側で形状が大きく異なる。即ち燃料通過筒75の上部側約半分の領域81は、直径が略一定の円筒形状である。燃料通過筒75の開口端(上部側の開口)は、燃料通過筒75の軸線X−X(図5a)方向に開口している。また燃料通過筒75の開口端(上部側の開口)には、フランジ部83が形成されている。
【0040】
これに対して燃料通過筒75の下部側約半分の領域82は、円錐形をしている。そして燃料通過筒75の下部側の開口85は、図5の様に燃料通過筒75の軸線X−X(図5)に対して傾斜方向に開口している。
即ち燃料通過筒75は、使用時の姿勢を基準として、下部側の開口85が傾斜しており、下部側の開口端に高低差がある。
また下部側の開口85は、その内側部分が折り返されており、開口端内部の樋状の溝87が形成されている。即ち燃料通過筒75の内面は、予備発熱周壁64として機能するものであり、本実施例では、予備発熱周壁64たる燃料通過筒75の内面の下部に樋状の溝87が形成された構造である。
そして開口85の最も下部に位置する部位の溝87には開口88が形成されている。開口88は、具体的には小孔であり、残存した燃料を集めて下部の自己発熱部11側に滴下するために設けられている。
【0041】
円筒状断熱材76は、耐熱性と断熱性を兼ね備えた素材で作られ円筒である。円筒状断熱材76の内径は、前記した燃料通過筒75の上部側の領域81の外径と等しい。また円筒状断熱材76の高さは、燃料通過筒75の上部側の領域81の長さに等しい。
円筒状断熱材76は、前記した様に耐熱性と断熱性を兼ね備えた素材で作られ、具体的にはグラスウールやセラミック等が採用されている。
【0042】
ドーナツ状断熱材73は、円盤状であり、中央に大きな開口が設けられている。ドーナツ状断熱材73もグラスウールやセラミックのように耐熱性と断熱性を兼ね備えた材質で作られている。
【0043】
コイル部材77は、図6の様にボビン90とコイル線91によって構成されたものである。ボビン90は、これ自体が断熱部材としての機能を兼ね備えるものであり、断熱性と耐熱性を兼ね備えた不飽和ポリエステルを素材としている。ボビン90の形状は、図6の様に筒体部92の両端にフランジ部93,94が設けられたものである
【0044】
コイル線91は、通常の銅線であり、螺旋状に巻き付けられている。なおコイル線の形状は、螺旋形に限定されるものではなく、例えば鞍形であってもよい。 コイル線91は、リッツ線であり、ボビン90の筒体部92の外周に螺旋状に巻き付けられ、さらにコイル線91が解けないようにシリコンワニス等で固められている。また、コイル線91の外周部には、通電により発生する磁界を加熱すべき燃料通過筒75に集中させるために、数個(本実施形態では8個)のフェライトガイド95が固定されている。
【0045】
誘導熱源部10は、前記した燃料通過筒75、円筒状断熱材76、ドーナツ状断熱材73及びコイル部材77の四者によって構成されており、燃料通過筒75の外周に円筒状断熱材76が設けられ、さらにその外周にコイル部材77が設けられている(図6では、作図の関係上、円筒状断熱材76を略している)。従ってコイル線91と燃料通過筒75の間には、円筒状断熱材76と断熱材としての機能を備えたボビン90が介在されており、コイル線91と燃料通過筒75の間は両者によって二重に断熱されている。
また燃料通過筒75の開口端(上部側の開口)のフランジ部83と、ボビン90のフランジ部93の間にはドーナツ状断熱材73が介在されている(図6では、作図の関係上、ドーナツ状断熱材73を略している)。
【0046】
また誘導熱源部10には、発熱部材たる燃料通過筒75の温度を検知する温度センサー(誘導発熱部温度検知手段)100が設けられている。
温度センサー100は、具体的にはサーミスタであり、平板状の温度検知部101を持つ。
本実施例では、図6の様に、ボビン90のフランジ部93に貫通孔102を設け、温度センサー100の一部を保持すると共に信号線等を当該貫通孔102から外部に導出している。また温度検知部101とボビン90のフランジ部93の間にはクッション材103が設けられ、温度検知部101を燃料通過筒75のフランジ部83に押圧している。クッション材103は具体的にはシリコンゴムやステンレススチール等の皿バネや板バネ等である。またこれらに代わって小径のオーリングの様なものをクッション材として使用することもできる。
【0047】
即ち本実施例では、断熱材としての機能を備えたボビン90によって温度センサー(誘導発熱部温度検知手段)100が保持されている。そしてさらに温度検知部101は、断熱材としての機能を備えたボビン90から反力を受けて燃料通過筒75の外側表面に押し当てられている。また温度検知部101の表面にはシリコン等の熱伝導性に優れたぺーストを塗布しておくことが望ましい。
【0048】
本実施例では、温度センサー100を燃料通過筒75のフランジ部83に当接させているが、温度センサー100の取付け位置は任意であり、例えば図7の様に燃料通過筒75の胴部分(側面部分)に温度検知部101を押し当てる構造としてもよい。
図7に示す誘導熱源部105では、ボビン90の筒体部92であってその端部近傍に貫通孔106を設け、さらにフランジ部93の平面部分に溝107を設けている。言い換えると、一方のフランジ部93の内側面に周端部から中心に向かう溝107を設け、当該溝107の延長線上に当たる筒体部92に貫通孔106が設けられている。そして温度センサー100の温度検知部101をボビン90のフランジ部93の内側に配し、さらに温度センサー100の一部をボビン90の貫通孔106及び溝107で保持する。
本実施例においても、温度検知部101とボビン90の筒体部92の間にクッション材103が設けられ、温度検知部101を燃料通過筒75の胴体部に押圧している。
【0049】
自己発熱部11は、図1,2の様に底部96と周部97を持つ円筒体であり、底部96は閉塞し、上部は開口している。即ち自己発熱部11は窪んだ形状をしており、底部96及び周部97は閉塞していて気密・水密性を持ち、上部は開放されている。
自己発熱部11は、前記した様に底部96及び周部97を持ち、あたかもコップの様な形状をしていて、図1,2の様に、炎孔ベース43の中央の開口52部分に取り付けられている。自己発熱部11の位置は、炎孔ベース43の中央にあり、炎孔(小孔61)に囲まれていて燃焼部7に近接して位置する。また自己発熱部11の大部分は、燃焼部7側に露出する。より具体的には、自己発熱部11の底部96の全部と、周部97の大部分が燃焼部7側に露出する。従って後記する様に燃焼時には炎孔(小孔61)から発生する火炎により、自己発熱部11が外側から加熱される。その結果、自己発熱部11の内周面(自己発熱周壁)66及び奥面部67が加熱され、昇温する。
【0050】
また自己発熱部11には、温度センサー(自己発熱部温度検知手段)115が埋め込まれている(図1)。
【0051】
第一回転部材23は、燃料通過筒75の内部で液体燃料を効率良く気化させるために、燃料パイプ116から噴射された液体燃料(本実施例では灯油を使用)を微粒子状にし、燃料通過筒(誘導発熱部 予備発熱部)75の予備発熱周壁64に向かって飛散させると共に、気化した燃料ガスと一次空気とを撹拌させて均一に混合する働きを行うものである。
【0052】
一方、第二回転部材25は、上方から滴下される液体燃料を自己発熱部11の自己発熱周壁66へ向けて飛散させると共に、燃料ガスと一次空気との撹拌混合を行うためのものである。
【0053】
図3に示すように、第一空気導入筒78及び第二空気導入筒80によって空気導入筒71が構成される。
第一空気導入筒78は、薄板を曲げて作られたものであり、図3の様に外フランジ部127と円筒部128及び内フランジ部129によって構成されている。即ち外フランジ部127は、円筒部128の一方の開口端にある。外フランジ部127は、使用時には上部側に位置する。
円筒部128は、内径が前記した誘導熱源部10の外径よりも大きく、空気の流れ方向の先端側は、やや内径が絞られている。
【0054】
そして円筒部128の空気流の先端側には内フランジ部129が設けられている。
これに対して第二空気導入筒80は円錐形をしている。第二空気導入筒80の上部の開口130は、前記した第一空気導入筒78の先端部の開口径に等しい。また第二空気導入筒80の下部の開口径は、前記した自己発熱部11の開口径よりも小さい。
第一空気導入筒78と第二空気導入筒80は重ねられて一連の空気流路を構成する。第一空気導入筒78の接合部分には図示しないパッキンが介在されている。
【0055】
気化部8は、前記した様に誘導熱源部10と自己発熱部11を持つ。そして誘導熱源部10は、前記した空気量調整部6と燃焼部7の間にあり、自己発熱部11は、燃焼部7に位置している。
気化部8は、前記した様に、第一回転部材23、ドーナツ状断熱材73、燃料通過筒75、円筒状断熱材76、コイル部材77、第一空気導入筒78、第二空気導入筒80、第二回転部材25、及び自己発熱部11によって構成されているが、これらはいずれも同一軸線状に並べて配されている。即ち第一空気導入筒78と第二空気導入筒80によって構成される空気導入筒71の内部に燃料通過筒75、円筒状断熱材76、ドーナツ状断熱材73及びコイル部材77の四者から成る誘導熱源部10が配されており、空気導入筒71の中心軸と、誘導熱源部10の中心軸は一致する。
【0056】
空気導入筒71と誘導熱源部10の下部に自己発熱部11があり、空気導入筒71の先端部は、自己発熱部11の開口(奥側)に向かって開いている。また誘導熱源部10を構成する燃料通過筒(誘導発熱部 予備発熱部)75についても自己発熱部11の奥側に向かって開いている。
また第一回転部材23は誘導熱源部10の内部に位置し、第二回転部材25は自己発熱部11の内部に位置する。より詳細には、第一回転部材23は誘導熱源部10を構成する燃料通過筒(予備発熱部)75内にあり、予備発熱周壁64に囲まれた空間に位置する。また第二回転部材25は自己発熱部11の自己発熱周壁66に囲まれた空間に位置する。
【0057】
また誘導熱源部10の内部には燃料パイプ116が挿入され、燃料パイプ116は図1,2の様に第一回転部材23の上部に至っている。
より具体的に説明すると、燃料パイプ116は誘導熱源部10の上部の開口から真っ直ぐに垂下され、上から第一回転部材23の上部に至る。そして燃料パイプ116から第一回転部材23に灯油等の液体燃料が滴下される。
【0058】
また誘導熱源部10には前記した様に開口85に傾斜した溝87があり、当該溝87には開口88が形成されているが、この開口88は、第二回転部材25の上部に位置する。即ち開口88は、第二回転部材25の中心近傍の上部にある。
【0059】
次に、本実施例の燃焼装置1の各部の組み立て構造について説明する。
本実施例の燃焼装置1は、送風機3、駆動機械部5、空気量調整部6及び気化部8が中心軸を一致させて順次積み重ねられたものであり、駆動機械部5の天板17に送風機3が直接的にネジ止めされている。即ち本実施例では、送風機3の回転中心と空気量調整部6の軸挿通孔28,35と気化部8の中心軸が同一軸線上に直線的に並べられている。なお気化部8自体の構成部品についても同一軸線状に並べて配されているので、前記した送風機3の回転中心と空気量調整部6の軸挿通孔28,35と気化部8の中心軸に対して気化部8の二つの回転部材23,25の回転中心軸も一致する。
【0060】
そして駆動機械部5の上部に空気量調整部6がネジ止めされている。
また空気量調整部6の下部には、気化部8が位置する。
即ち空気量調整部6の中心部に、パッキンを介して空気導入筒71の大きいほうの開口が取り付けられている。
【0061】
空気導入筒71の中心軸は、空気量調整部6の移動側板状部材26および固定側板状部材27の軸挿通孔28,35と一致し、空気導入筒71は固定側板状部材27の中心側のエリアを覆う様に位置することとなる。従って空気量調整部6の中心側のエリアから排出された空気は、空気導入筒71によって捕捉される。
なお空気導入筒71内には前記した様に誘導熱源部10があり、誘導熱源部10は、中心に燃料通過筒75があって上下に連通するため、空気量調整部6の中心側のエリアから排出された空気は、空気導入筒71によって捕捉され、中心部の燃料通過筒75を流れる空気と、誘導熱源部10の周辺部を流れる空気に分流される。
【0062】
即ち空気導入筒71内には燃料通過筒75があるため、空気の一部は燃料通過筒75を通過して自己発熱部11に至る。
また空気導入筒71の内面と誘導熱源部10の外周との間には環状の空間部131が有るため、空気の残部は当該空間部131を通過して直接的に自己発熱部11に入る。
空気導入筒71に入った空気は、いずれの経路を通る場合でも、一次空気として燃焼に寄与する。
【0063】
また駆動機械部5のモータ18の回転軸21は、空気量調整部6の中央の軸挿通孔28,35を連通して空気導入筒71及び誘導熱源部10を通過し、自己発熱部11の内部に至る。
そしてモータ18の回転軸21は、誘導熱源部10の内部、より詳細には燃料通過筒75の内部において第一回転部材23と係合している。またモータ18の回転軸21は、自己発熱部11の内部において第二回転部材25と係合している。
即ち駆動機械部5のモータ18の回転軸21は、その先端部分が第二回転部材25と係合し、中間部分が第一回転部材23と係合している。そして第一回転部材23は誘導熱源部10の燃料通過筒75内に位置し、第二回転部材25は自己発熱部11内に位置し、いずれもモータ18によって回転される。
【0064】
またモータ18の後端側の回転軸20は、ファン13にも接続されているから、本実施例では、単一のモータ18によって気化部8の二つの回転部材23,25とファン13の三者が駆動される。
なお軸挿通孔28,35は、移動側板状部材26の回転中心でもあるから、移動側板状部材26が回転する際に移動することはない。そのため軸挿通孔28,35にモータ18の回転軸21があっても、移動側板状部材26の回転の妨げとならない。
【0065】
本実施例の燃焼装置1は、炎孔を下に向けて使用される。以下、燃焼装置1の取付方向について説明する。
図9は、図1の燃焼装置を採用した給湯器の配管系統図である。
本実施例の燃焼装置1は、図9の様な給湯装置2に使用される。
そして燃焼装置1は、熱交換器135が内蔵された缶体136の上部に設置され、下部の熱交換器135に向かって火炎を発生させる。
【0066】
給湯装置2は、図9に示すように、本実施例の燃焼装置1と、燃焼装置1において発生した燃焼ガスと湯水などの熱媒体とが熱交換を行う熱交換器135と流水回路141及び燃料供給部142によって構成されている。また流水回路141は、外部から湯水を供給する流入側流路143と、熱交換器135において加熱された湯水を外部に流出させる流出側流路145とを備えている。流入側流路143は熱交換器135の入水口146に接続されており、流出側流路145は熱交換器135の出水口147に接続されている。
【0067】
流入側流路143の中途には、水量センサー150(最小作動水量検知手段)と入水サーミスタ151(入水温度検知手段)とが設けられている。水量センサー150は、流入側流路143を介して供給される湯水の量を検知するものであり、当該水量センサー150が所定の水量を検知すると、燃焼装置1が点火動作を開始する。
また、入水サーミスタ151は、外部から供給される湯水の水温を検知するものである。
【0068】
流出側流路145は、熱交換器135において燃焼ガスとの熱交換により加熱された高温の湯水を給湯栓152に供給するものである。流出側流路145の中途には、缶体サーミスタ153と、攪拌部154と、水量調整弁155(出湯量制限手段)と、出湯サーミスタ156(出湯温度検知手段)とが設けられている。水量調整弁155は、流出側流路145の流路を開閉することにより、給湯栓152から出湯される湯の総量を規制するものである。
また、缶体サーミスタ153は、熱交換器135において加熱された高温の湯水の温度を検知するものである。
【0069】
攪拌部154は、流出側流路145と、後述するバイパス流路158との接続部に設けられている。攪拌部154では、熱交換器135において加熱された高温の湯水と、バイパス流路158を介して流入する比較的低温の湯水とが混合される。攪拌部154の下流側には、出湯サーミスタ156が設けられている。出湯サーミスタ156は、攪拌部154を通過した湯の温度を検知するものである。
【0070】
流入側流路143と流出側流路145とは、バイパス流路158によってバイパスされている。バイパス流路158の流出側流路145側の端部は、上記した攪拌部154に接続されている。バイパス流路158の中途には、バイパス水量調整弁159が設けられている。バイパス水量調整弁159は、攪拌部154に流れ込む水量を調整するものである。
また、燃焼装置1の給気口近傍に外気温度(給気温度)を測定する空気温度センサー161が設けられている。さらに給湯装置2には凍結防止センサー162が設けられている。
【0071】
次に本実施例の燃焼装置1の機能について説明する。
本実施例の燃焼装置1では、モータ18を起動してファン13と第一回転部材23及び第二回転部材25を回転させる。
ファン13の回転により、図1の矢印の様に送風機3のハウジング12の中央部に設けられた開口15から空気が吸い込まれ、空気は駆動機械部5に入る。そして空気は、駆動機械部5から上部の空気量調整部6を経て気化部8及び燃焼部7に流れるが、本実施例では空気量調整部6によって流量調整される。即ち、気化部8および燃焼部7側に流れる空気量は、ステップモータ38を動作させ、移動側板状部材26を固定側板状部材27に対して回転させて開口面積を変化させることにより調整される。
【0072】
空気量調整部6を通過した空気は、一次空気として燃焼に寄与するものと、二次空気として燃焼に寄与するものに別れる。即ち空気量調整部6の中心部のエリアを通過した空気は、直接的に空気導入筒71に捕捉され、その一部は燃料通過筒75に入って燃料ガスと混合され、残部は直接的に自己発熱部11の中に入って燃料ガスと混合される。
【0073】
また送風の残部は、図8に示すように分流部材41に列状に設けられた長孔状の開口48から、炎孔ベース43を横切って流れ、炎孔部材45の丸孔60へ経て燃焼部7に至る。
【0074】
そして送風機3の送風により、上記した様に気化部8内に大量に一次空気が導入され、誘導熱源部10の燃料通過筒75内及び自己発熱部11を通風雰囲気とする。
また誘導熱源部10のコイル線91に図示しない高周波インバータから高周波電流を流し、高周波誘導加熱の原理によって誘導熱源部10の燃料通過筒75を発熱させる。
【0075】
即ちコイル線91に高周波電流を流すことにより、コイルの内部に変動磁場が生成し、当該変動磁場中に置かれた燃料通過筒75を変動する磁力線が貫く。ここで燃料通過筒75は磁性体のステンレス鋼で作られており、導電性を有するから、燃料通過筒75の内部に渦電流が生じる。そして前記した様に燃料通過筒75はステンレス鋼で作られており、相当の電気抵抗を有するから、渦電流に起因するジュール熱によって燃料通過筒75が発熱する。
また高周波誘導加熱による発熱は、熱効率が高く、且つ早期に昇温する。そのため燃料通過筒75は、従来の電気ヒータを使用した場合に比べて極めて短時間の間に昇温し、液体燃料を気化し得る温度に達する。
【0076】
なお本実施例では、高周波誘導加熱によって燃料通過筒75を加熱する際に、コイル線91が昇温しない様に工夫がなされている。
即ち本実施例の様に燃焼装置1の内部に誘導加熱用のコイル線91を設けると、内部の熱によってコイル線91が加熱され、断線等のおそれが生じる。そこで本実施例では、コイル線91が過度に加熱されない様に工夫がなされている。
即ち本実施例では、コイル線91は、ボビン90に巻かれているが、ボビン90は、樹脂で作られており、導電性がないので発熱しない。またボビン90は断熱性と耐熱性を具備した不飽和ポリエステルを素材としている。そのためボビン90が断熱材として機能し、燃料通過筒75の熱をコイル線91に伝えない。
【0077】
またボビン90と燃料通過筒75の間にも発熱せず、且つ断熱性に優れた断熱材(円筒状断熱材76)が介在されている。
また燃料通過筒75は、フランジ部83を有するが、当該フランジ部83とコイル線91との間にも、ドーナツ状断熱材73とボビン90のフランジ部93が存在し、コイル線91の昇温を防いでいる。
さらに本実施例では、後記する様に誘導熱源部10の外側に一次空気が流れる構造となっているので、当該一次空気によってもコイル線91が冷却される。
【0078】
上記した様に、コイル線91に通電し、高周波誘導加熱によって燃料通過筒75を発熱させ、燃料通過筒75の内壁全体を昇温させる。この状態において、燃料パイプ116から灯油を第一回転部材23に対して滴下する。
滴下された灯油は、第一回転部材23から遠心力を受け、燃料通過筒(誘導発熱部)75の予備発熱周壁64に向かって飛散する。なお本実施例で採用した第一回転部材23は、上下方向へ延びる回転軸と一体的に回転する板体の外縁から放射状に撹拌羽根を延出させて形成され、当該撹拌羽根は、板体の外縁に沿って全周に渡って複数設けられると共に、板体に対して所定角度だけ傾斜させた構成とされている。
【0079】
そのため第一回転部材23の板体の表面に噴射された液体燃料は、遠心力によって板体の表面を流動し、一部は傾斜した撹拌羽根の表面に沿って流動して撹拌羽根の先端から燃料通過筒75の予備発熱周壁64へ向けて飛散する。
従って、撹拌羽根の先端が板体に対して回転軸方向(上下方向)に位置する構成とすれば、板体に対して上方や下方に位置する部位から液体燃料を分散させて飛散させることができ、飛散した液体燃料に気化部内周壁の熱エネルギーを効率良く加えて気化を促進させることが可能となる。
【0080】
そして飛散した灯油は、第一回転部材23の周囲に配された燃料通過筒75の内面に接触し、熱を受けて気化する。このとき、燃料通過筒75に接触した灯油はほぼ100%気化され、気化されずに灯油が残留することはない。
また前記した様に空気導入筒71に捕捉された空気の一部が燃料通過筒75の内部を通過するので、燃料通過筒75の内面から熱を受けて気化した燃料は、燃料通過筒75を通過する空気と混合される。
【0081】
ここで本実施例では、第一回転部材23に撹拌羽根が設けられているから、第一回転部材23の内面に設けられた撹拌羽根によって燃料通過筒75内の空気が攪拌され、燃料ガスと空気との混合が促進される。
また本実施例では、燃料通過筒75が筒状であるから、飛散された燃料及び気化した燃料は、筒状の部分を通過する間、加熱され続ける。即ち本実施例では、誘導発熱部分が筒状であるから、燃料が当該筒状の部分を通過する際に加熱昇温される。そのため本実施例の燃焼装置は、燃料と発熱体との接触距離及び接触時間が長く、燃料の気化が確実であるばかりでなく、気化した燃料ガスの温度が高い。
【0082】
こうして発生した混合ガスは、燃料通過筒75を通過して自己発熱部11内に入る。
一方、前記した様に、空気導入筒71に捕捉された空気の残部は、空気導入筒71の内面と誘導熱源部10の外周との間に形成された空間部131を通過して自己発熱部11に入る。
また本実施例では、自己発熱部11内にも回転部材が設けられている。即ち本実施例では、二段に回転部材が設けられ、その一つたる第二回転部材25は、自己発熱部11の中で回転する。
そのため自己発熱部11内に入った燃料ガスと空気との混合ガスは、再度第二回転部材25によって攪拌混合される。
【0083】
特に本実施例では、燃料通過筒75の先端側が絞られており、前記した第一回転部材23によって混合攪拌された燃料ガスは、狭い燃料通過筒75の先端を通過する際に互いに激しく衝突し、混合が進む。そして当該燃料ガスは、狭い部分から第二回転部材に対して吹き込まれ、再度第二回転部材25によってかき混ぜられる。また燃料ガスは、自己発熱部11内において、空気導入筒71の内面と誘導熱源部10の外周との間に形成された空間部131を通過して新たに自己発熱部11に導入された空気とも混合される。
こうして発生し、さらに一次空気と混合された燃料ガスは、図1の矢印の様に、第二回転部材25の外壁と自己発熱部11の内周面66によって形成される空隙138を流れて下流に向かう。即ち混合ガスは、自己発熱部11の円筒状の内周面66に沿って一旦上方に流れる。ここで自己発熱部11の開口部近傍には空気導入筒71の吹き出し口側があるので、混合ガスの流路は極めて狭い。そのため混合ガスの攪拌は、当該部位においてさらに進行する。
【0084】
こうして空気導入筒71から自己発熱部11の内部に供給された空気は、飛散した燃料と混合され、高温状態となって自己発熱部11の上部の開口部140から排出される。そして自己発熱部11を出た混合ガスは、炎孔ベース43に流れ込む。
【0085】
そして混合ガスは、炎孔ベース43の下部に設けられた炎孔(小孔61)から放出される。
前記した様に、本実施例の燃焼装置1では、気化部8で液体燃料が気化されて炎孔ベース43を流れ、炎孔(小孔61)から放出されるが、気化部8を出る際における燃料ガスの温度が高いので、炎孔(小孔61)に至るまでの間で再液化することはない。
【0086】
一方、他の部位から下流側に流れた空気は、燃料と混合されることなく、直接燃焼部7側に流れ込み、二次空気として燃焼に寄与する。
【0087】
そして図示しない点火装置によって燃料ガスに点火されると、炎孔(小孔61)から下向きの火炎が発生する。
【0088】
ここで本実施例の燃焼装置1では、気化部8が、燃焼部7の中央に直接的に露出しているので、燃焼が開始されると、自己発熱部11が火炎によって加熱される。そのため自己発熱部11内の温度が上昇し、燃料の気化がさらに促進される。
【0089】
所定時間の間、燃焼が行われ、自己発熱部11の温度が十分に昇温すると、
誘導熱源部10のコイル線91への通電を停止し、誘導加熱を終了する。そして以後は、自己発熱部11の発熱だけに頼って燃料を気化させる。
【0090】
即ち誘導加熱を停止すると、燃料通過筒75の温度が低下し、誘導熱源部10での気化はほとんど行われなくなり、実質的に自己発熱部11のみで燃料は気化される。
誘導熱源部10で気化されない液体燃料は、燃料通過筒75の内面を伝い、重力によって下方に至る。ここで本実施例では、燃料通過筒75の下端部に樋状の溝87が形成されている。そのため燃料通過筒75の内面を伝い落ちた燃料は、下部の溝87に集められる。さらに本実施例では、下部側の開口85が傾斜しているから、端部の溝87にも傾斜があり、集められた燃料は、溝87内を流れてさらに下方に集まる。そして本実施例では、溝87の最下部に開口88が設けられているから、溝87を流れた燃料は、最終的に溝87の最下部に形成された開口88から滴下する。
【0091】
ここで燃料通過筒75に設けられた開口88は、第二回転部材25の上部であってさらに第二回転部材25の中心近傍に開いているから、開口88から滴下した燃料は、常に一定の位置に落下し、第二回転部材25と接触する。より具体的には、気化されなかった燃料は、すべて第二回転部材25の中央部分に集中的に滴下され、第二回転部材25に巻き込まれて飛散する。
【0092】
そして飛散した燃料は、自己発熱部11の内周面66に衝突し、自己発熱部11から熱を受けて気化する。
また前記した空気導入筒71の内外を流れて自己発熱部11に入った空気とも混合される。
また燃料の一部は、遠心力によって飛散する前に第二回転部材25から零れ落ちるが、このように落下した燃料は、自己発熱部11の奥面部67に接触し、熱を受けて気化する。
そして第一回転部材23の内面に設けられた羽根部によって自己発熱部11内の空気が攪拌され、燃料ガスと空気との混合が促進される。
その後の燃料ガスの流れは、前述した通りであり、高温状態となって自己発熱部11の上部の開口部140から排出される。そして自己発熱部11を出た混合ガスは、一旦炎孔ベース43の上部側の通路に流れ込み、炎孔ベース43の炎孔(小孔61)から放出され、燃焼する。
【0093】
【発明の効果】
請求項1乃至に記載の燃焼装置は、予備発熱部と自己発熱部の二つの熱源を持ち、燃料は、先に予備発熱部によって加熱され、さらに自己発熱部によっても昇温される。そのため本発明の燃焼装置は、燃料ガスの温度が高く、炎孔に至る間において再液化することが少なく、安定して燃焼する効果がある。
【0094】
また特に請求項1に記載の燃焼装置は、多段階に渡って液体燃料に回転エネルギーが与えられ、高温の周壁に衝突されるので、燃料ガスの温度が高く、再液化することが少ない。さらに本発明の燃焼装置は、送風手段を持ち、燃料が多段階に渡って飛散されるので、空気との混合性能も優れている。
【0095】
また請求項2に記載の燃焼装置は、単一のモータで二つの回転部材を回転させることができる。そのため本発明の燃焼装置は、部品点数が少ないという効果がある。
【0096】
また請求項に記載の燃焼装置は、電磁誘導加熱手段を利用した予備発熱周壁を有する。そのため予備発熱周壁の温度上昇が急峻であり、予熱時間が短く使い勝手がよい。また本発明の燃焼装置では、予備発熱部及び自己発熱部に送風する送風手段を有し、前記した予備加熱周壁に対する燃料飛散は、通風雰囲の中で行われるので、燃料と空気との混合性能が優れる。
【0097】
また請求項に記載の燃焼装置は、予備発熱部と自己発熱部が、同一軸線上に配置されているので、送風機の送風抵抗が少なく、送風機の負担が軽い。
【0098】
また請求項に記載の燃焼装置によると、残存した液体燃料が溝部によって集められるので、残存した液体燃料を集めて次の工程に送ることができる。
【0099】
また請求項に記載の燃焼装置では、予備発熱部で残存した燃料が、自己発熱部側の特定の場所に集中して滴下されるので、自己発熱部側における気化状態が安定する。
【0100】
また請求項に記載の燃焼装置は、誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、自己発熱部の温度を検知する自己発熱部温度検知手段を有する。そのため両者の温度を個別に管理することができる効果がある。
【0101】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の燃焼装置の断面図である。
【図2】 本発明の実施例の燃焼装置の全体的な部品構成を表す分解斜視図である。
【図3】 図1の燃焼装置の気化器周辺の分解斜視図である。
【図4】 気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の斜視図である。
【図5】 気化部の誘導発熱部を構成する燃料通過筒の正面図、平面図、左右側面図及び底面図である。
【図6】 気化部の誘導発熱部の一部断面斜視図である。
【図7】 気化部の誘導発熱部の変形例を示す一部断面斜視図である。
【図8】 図1の燃焼装置の燃焼部近傍を上から見た斜視図である。
【図9】 図1の燃焼装置を採用した給湯器の配管系統図である。
【図10】 従来技術の燃焼装置で採用する気化部の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 燃焼装置
7 燃焼部
8 気化部
75 燃料通過筒(誘導発熱部 予備発熱部)
11 自己発熱部
23 第一回転部材
25 第二回転部材
40 回転軸
64 予備発熱周壁
66 内周面(自己発熱周壁)
87 溝
100 温度センサー(誘導発熱部温度検知手段)
115 温度センサー(自己発熱部温度検知手段)

Claims (7)

  1. 液体燃料を気化すると共に空気と混合して燃焼部に供給し、燃焼させる燃焼装置において、電磁誘導加熱手段を有し主として当該電磁誘導加熱手段から熱を受けて昇温する予備発熱部と、予備発熱部の下流側に配され主として燃焼部の熱を受けて昇温する自己発熱部と、予備発熱部及び自己発熱部に送風する送風手段を有し、前記予備発熱部は予備発熱周壁を有して当該予備発熱周壁が昇温し、さらに予備発熱周壁で囲まれた空間内に第一回転部材が設けられ、前記自己発熱部は自己発熱周壁を有して当該自己発熱周壁が昇温し、さらに自己発熱周壁で囲まれた空間内に第二回転部材が設けられ、液体燃料は最初に前記第一回転部材によって予備発熱周壁に向かって飛散され、予備発熱周壁が電磁誘導加熱手段によって昇温している際には燃料は予備発熱周壁から熱を受けて気化し、予備発熱周壁の温度が低下しているときには予備発熱周壁では気化はほとんど行われず残存した液体燃料は第二回転部材に滴下され第二回転部材によって自己発熱周壁に向かって飛散されることを特徴とする燃焼装置。
  2. 第一回転部材と第二回転部材は同一軸線上に配置され、共通の回転軸によって駆動回転されることを特徴とする請求項に記載の燃焼装置。
  3. 予備発熱部と自己発熱部は、同一軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼装置。
  4. 予備発熱周壁は、下部に溝部を有し、当該溝部によって残存した液体燃料が集められることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃焼装置。
  5. 溝部は傾斜しており、液体燃料は特定の場所に集められて自己発熱部側に滴下されることを特徴とする請求項に記載の燃焼装置。
  6. 誘導発熱部の温度を検知する誘導発熱部温度検知手段と、自己発熱部の温度を検知する自己発熱部温度検知手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃焼装置。
  7. 前記自己発熱部は一端が閉塞した凹形状部材であり、予備発熱部の下流側開口は、自己発熱部の内側に向かって開口していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の燃焼装置。
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