JP4130903B2 - ダイカスト装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆる真空ダイカスト法を用いたダイカスト装置に関する。
【0002】
【背景技術】
ダイカストマシンは、たとえば、一対の固定金型と移動金型、これら固定金型および移動金型をそれぞれ保持する固定ダイプレートおよび移動ダイプレート、タイバーを伸長させて固定金型と移動金型とを型締する型締装置、固定金型と移動金型との間に形成されるキャビティに金属溶湯を射出する射出装置、溶融金属を射出装置に供給する給湯装置等を備えている。このようなダイカストマシンでは、固定金型と移動金型とを型締装置によって型締した状態で、給湯装置によって溶融金属を射出装置のスリーブに供給し、射出プランジャを駆動することにより、金型キャビティ内に溶融金属を射出・充填することによってダイカスト製品を鋳造する。
【0003】
ところで、ダイカスト製品の品質のばらつきによる信頼性低下の原因の一つとして、ダイカスト製品へのガスの含有がある。すなわち、高速、高圧で射出・充填された溶湯はスリーブとキャビティ内で乱流となり、空気や気化した金型に塗布された離型剤等を巻き込む。
【0004】
上記のような問題を克服するため、真空ダイカスト法によるダイカストマシンを用いて鋳造することによって、ダイカスト製品へのガスの含有を抑制し、ダイカスト製品のガスの含有による品質のばらつきを低減する技術が知られている。
【0005】
【特許文献1】
米国特許2,785,448号
【0006】
真空ダイカスト法を用いたダイカストマシンにおいては、たとえば、米国特許2,785,448号に開示されているように、真空ポンプで減圧された状態のキャビティ内に溶融金属を射出・充填することにより、溶融金属へのガスの含有を抑制する。
上記のような真空ダイカスト法を用いたダイカストマシンにおいては、高強度、高品質の製品を鋳造するためには、キャビティ内をより高真空化でき、減圧状態を維持できることが求められている。キャビティ内が高真空化されていないと、鋳造された製品にガスが含有し、鋳造後の焼なまし等の熱処理を製品に施した際に、製品に歪みや変形が生じやすく、真空ダイカスト法による十分な効果を得ることが難しいからである。
ところで、キャビティ内を減圧するためには、真空ポンプとキャビティとを連通する排気路の途中にバルブを設け、排気路をバルブによって開閉することが必要となる。
【0007】
バルブの開閉は、たとえば、空圧や液圧によって作動するシリンダ装置を用いて行う方式が知られている。
バルブを閉じるタイミングは、キャビティ内の真空度の低下を防ぐ等の観点から、可能な限り金属溶湯をキャビティ内に射出・充填する直前とすることが好ましい。
【0008】
しかしながら、前記シリンダ装置は応答性が低く、応答時間にばらつきが生じやすく、精密な制御が困難であるため、ある程度余裕をもってバルブを閉じる必要がある。バルブを閉じると、真空ポンプによる排気が停止するため、キャビティ内への外部からの空気の侵入により、キャビティ内の真空度が低下しやすい。他のバルブの開閉方法として、排気路を開くときにはシリンダ装置を用い、排気路を閉じるときにはキャビティ内に射出・充填された溶融金属の慣性力によってバルブを駆動させ、あるいは、溶融金属の慣性力を圧力に変換してバルブを駆動させる方式が知られている。
【0009】
しかしながら、この方法では、バルブが溶融金属に触れるため、排気路内に溶融金属が侵入する可能性があり、侵入した場合には機器に重大な損傷を与える可能性があった。また、溶融金属の慣性力を圧力に変換するには、溶融金属の流路に絞りが必要となり、この部分の断面積が小さくなり、排気を効率良く行うことが難しいという不利益も存在した。さらに、高速でキャビティ内に射出・充填された溶融金属の慣性でバルブを駆動すると、バルブが弁座に勢いよく衝突するため、その反動によって、バルブが弁座から浮き上がる可能性があり、バルブと弁座との間から溶融金属が侵入する可能性もある。
【0010】
一方、キャビティ内をより高真空化するためには、金型合わせ面の間や製品を押出すための押出ピンと金型との間等のシールを十分に行い、外部からの空気の侵入を防ぐ必要がある。これらのシールが確実に行われないと、真空ポンプで排気しても高真空を得ることが難しい。
金型の合わせ面の間のシールは、樹脂製のシール部材を金型の合わせ面間に配置することにより可能であるが、排気路が金型の合わせ面間に形成されシール部材の近傍に位置する場合には、シール部材に耐熱性材料を用いたとしても、高温によってシール部材は連続使用に耐えられない。
このため、金型の合わせ面の間にキャビティの周囲を連続的に囲むようにシール部材を配置することが難しく、特に金型合わせ面の延長上に真空バルブユニットを取り付ける方式では、金型の合わせ面間のシールを確実に行うことが困難であった。
【0011】
押出ピンは、高温状態にある製品に直接接触するため、押出ピン自体も温度上昇が避けられない。したがって、押出ピンと金型との間のシールに樹脂性のOリング等のシール部材を用いると、シール部材が高温に耐えられないという問題が存在する。このため、押出ピンと金型との間のシールを十分に行うことも困難であった。
【0012】
以上のように、キャビティ内を減圧するための排気路を開閉するバルブの構造および金型の合わせ面の間や押出ピンと金型との間のシール構造に起因して、キャビティ内を数十Torr程度の高真空に減圧し、これを維持することが困難であった。
本願の発明者は、上述した諸問題を解決すべくダイカスト装置を提案している。
【0013】
【特許文献2】
特開2002−239706号公報
【0014】
本発明は、特許文献2に直接関係する真空バルブの弁体に関すること及び本発明の解決課題の所在を明確にするため、少し説明が長くなるが、ダイカスト装置について前記弁体の構成に関係する部分を中心に図3乃至図8を参照して以下に説明する。
図3において、ダイカストマシン1は、ベース100と、ベース100上に設置された固定ダイプレート91と、固定ダイプレート91に取り付けられた固定金型2と、固定ダイプレート91の固定金型2とは反対側に設けられた射出装置95と、固定ダイプレート91に対向してベース100上に設置された移動ダイプレート92と、固定金型2に対向するように移動ダイプレート92に取り付けられた移動金型3と、移動ダイプレート92を間において固定ダイプレート91とタイバー80によって連結されたリンクハウジング71と、リンクハウジング71と移動ダイプレート92とを連結する複数のリンクからなるトグル機構110とを備えている。
【0015】
固定ダイプレート91は、ベース100に固定されており、移動ダイプレート92はベース100に移動可能に設けられている。
リンクハウジング71と固定ダイプレート91とは、移動ダイプレート92を貫通する4本のタイバー80によって連結されている。
【0016】
トグル機構110は、複数のリンクで構成されており、リンクハウジング71と移動ダイプレート92とを連結している。なお、トグル機構110の構成は、周知の構成であり、詳細については省略する。
このトグル機構110は、クロスヘッド72と連結されており、このクロスヘッド72がねじ軸73に沿って矢印A1およびA2方向に移動することにより作動し、リンクハウジング71と移動ダイプレート92とを接近または離隔させる。
ねじ軸73は、リンクハウジング71に設けられた図示しないサーボモータによって駆動され、ねじ軸73の回転によってこれに螺合するクロスヘッド72が矢印A1およびA2方向に移動する。
【0017】
図3に示すように、図示しないサーボモータの駆動によってクロスヘッド72を矢印A1方向へ移動させると、トグル機構110が作動し、移動ダイプレート92はリンクハウジング71に対して離隔する向き(型閉方向)に移動し、固定金型2と移動金型3の型閉が行われる。さらに、クロスヘッド72を矢印A2方向に移動させると、タイバー80が伸長し、タイバー80に発生した張力によって固定金型2と移動金型3との型締が行われる。
【0018】
射出装置95は、型締された固定金型2および移動金型3に形成される図示しないキャビティに溶融金属を射出・充填する。キャビティに射出・充填された溶融金属が凝固することにより、ダイカスト製品が得られる。
【0019】
一方、ダイカスト製品を鋳造したのち、ダイカスト製品を取り出す際には、クロスヘッド72を矢印A1方向へ移動させると、移動ダイプレート92はリンクハウジング71に対して接近する向き(型開方向)に移動し、移動金型3は固定金型2に対して開く。固定金型2と移動金型3を開くと、ダイカスト製品は移動金型3に嵌まった状態で移動する。この移動金型3に嵌まった状態のダイカスト製品を後述する押出機構によって移動金型3から押し出すことによって、ダイカスト製品を取り出す。
【0020】
図4は、金型周辺の構造を示す断面図である。また、図5は移動金型3の合わせ面(分割面)の構造を示す図である。なお、図4に示す固定金型2および移動金型3は型締状態にある。図4に示すように、固定金型2の背面側には、射出装置95が設けられている。
【0021】
射出装置95は、固定金型2の背面側に設けられた円筒状のスリーブ96と、このスリーブ96の内周に嵌合するプランジャチップ97と、プランジャチップ97と一端が連結されたプランジャロッド98と、プランジャロッド98の他端部と連結された射出シリンダ装置99とを備えている。
【0022】
スリーブ96は、供給口96aを備えており、この供給口96aからラドル100によってスリーブ96内に金属溶湯MLが供給される。
射出シリンダ装置99は、ピストンを内蔵しており、このピストンに連結されたピストンロッド99aとプランジャロッド98とがカップリング99bによって連結されている。この射出シリンダ装置99は、油圧によって駆動され、ピストンロッド99aを伸縮する。
【0023】
プランジャチップ97は、プランジャロッド98に連結されており、射出シリンダ装置99の駆動により、スリーブ96内を移動する。プランジャチップ97が金属溶湯MLが供給されたスリーブ96内を固定金型2側に向けて移動することにより、金属溶湯MLが固定金型2と移動金型3とによって形成されるランナー部Rnを通じてキャビティCに充填される。
なお、98aはプランジャロッド98の外周に軸方向に対し一定ピッチで磁極N,Sが形成され、この磁極の通過数をパルス列として検出するセンサであって、プランジャチップ97の射出速度を計測するものである。図示の如く、センサ出力はマシンコントローラ52へ与えられる。マシンコントローラ52内の52aは射出プランジャ現在位置カウンタであって、プランジャチップ97の位置を示す。また、52bは溶湯供給口通過位置設定レジスタ、52cは高速射出開始位置設定レジスタであって、前記カウンタ52aの値がそれぞれレジスタ52b,52cの値と一致したとき、マシンコントローラ52は対応するバルブの開閉動作を行うようバルブコントローラ51へ指令を与えるようになっている。
【0024】
ランナー部Rnは、図5に示す移動金型3の分割面3aに形成された溝部Rnaと固定金型2の分割面2aによって形成される。
キャビティCは、固定金型2の分割面2aにダイカスト製品の形状に合わせて形成された凹面Caおよび図5に示す移動金型3の分割面3aにダイカスト製品の形状に合わせて形成された凹面Cbによって形成される。
【0025】
キャビティCの上方には、図4に示すように、排気路Epが形成されている。この排気路Epは、移動金型3の分割面3aに形成された凹面Cbに連なる溝部Epaと、固定金型2の分割面2aに形成された溝部Epbとによって形成される。なお、溝部Epbに隣接する凹部Saは、後述するバルブの当接部である。
【0026】
図4に示すように、固定金型2の分割面2aと移動金型3の分割面3aとの間に形成された排気路Epに連通してバルブ機構部21が設けられている。
このバルブ機構部21の周辺の構造を図6を参照して説明する。
【0027】
図6に示すように、バルブ機構部21は、電磁アクチュエータ22と、電磁アクチュエータ22に連結されたバルブ軸23と、バルブ軸23の先端に一体に形成された円板状の弁体24を備える。
バルブ軸23および弁体24は、たとえば、ステンレス等の金属材料で形成されている。電磁アクチュエータ22は、移動金型3に形成された挿入孔3hに嵌合挿入される有底筒状のガイド部材29の開口端29bにフランジ部材32を介して固定されている。
ガイド部材29と移動金型3に形成された挿入孔3hとの間には、樹脂製のOリング30が介在しており、挿入孔3hとガイド部材29との間をシールしている。
【0028】
ガイド部材29の有底部には、ガイド孔29aが形成されている。このガイド孔29aにバルブ軸23が移動可能に嵌合挿入されている。バルブ軸23は、移動の際の安定化の観点から、ガイド孔29aに嵌合する部分が弁体24側よりも大径化している。また、ガイド孔29aとバルブ軸23とは精密に嵌合しており、ガイド孔29aとバルブ軸23との間はシールされている。
バルブ軸23は、内部が空洞部23aとなっている。軽量化によりバルブ軸23の慣性を減らして、バルブ軸23の移動を高速にするためである。
【0029】
移動金型3には、上記した排気路Epに連通し、バルブ軸23が挿入される排気路26が分割面3aに垂直な方向に沿って形成されている。なお、移動金型3の排気路26が形成される部分は、バルブ機構部21を移動金型3に組み込むために別の金属部材3dで形成されている。
【0030】
排気路26の先端部(分割面3a側)には、弁座部39が形成されている。この弁座部39は、弁体24に相対しており、弁座部39に形成された弁座面39aに弁体24が当接することにより、排気路26を閉塞する。なお、弁座面39aは、移動金型3の分割面3aに沿って形成されている。
この弁座部39は、弁体24よりも軟らかく、弁体24と接触した際になじみの良い材料で形成されている。具体的には、銅合金等の金属材料である。
【0031】
移動金型3には、排気路26に直交する向きに沿って排気路25が形成されている。排気路25と排気路26とは連通している。この排気路25の上方には、装着孔3gが形成されており、この装着孔3gに排気管55が挿入されている。排気管55は、先端外周部にねじが形成されており、このねじと装着孔3gの内周に形成されたネジとが螺合している。
さらに、装着孔3gの上端側外周には、排気管55と装着孔3gとの間を密封するために、樹脂性のOリング59aおよび59bを介してリング部材59が固定されている。
【0032】
電磁アクチュエータ22は、ケースの内部にバルブ軸23と連結される軸部材22aと、この軸部材22aに固定された図示しない永久磁石と、この永久磁石の周りに設けられた図示しない電磁石とを有する。
電磁石に外部から電力を供給することにより、永久磁石と電磁石との間に吸引力が発生し、軸部材22aが直動する。
電磁アクチュエータ22は、電磁石に供給する電流の向きを適宜変更することにより、弁体24を図6の矢印C1およびC2で示す排気路26を開閉する方向に駆動する。
【0033】
この電磁アクチュエータ22は、図3に示したように、バルブコントローラ51に電気的に接続されており、バルブコントローラ51から電力供給を受ける。バルブコントローラ51は、電磁アクチュエータ22の駆動制御を行い、弁体24を開閉させる。このバルブコントローラ51は、ダイカストマシン1を総合的に駆動制御するマシンコントローラ52に電気的に接続されており、マシンコントローラ52から入力される信号に応じて電磁アクチュエータ22の駆動制御を行う。
【0034】
上記の排気管55は、図4に示したように、真空ポンプ50に接続されている。この真空ポンプ50は、排気管55、排気路25、排気路26および排気路Epを通じてキャビティC内を排気する。真空ポンプ50としては、数Torr〜数十Torr程度の高真空に排気できるものを使用する。
【0035】
移動金型3の分割面3aには、シール部材35をはめ込む溝3bが形成されており、この溝3bにシール部材35がはめ込まれ、シール部材35の一部は分割面3aから突出している。シール部材35の突出した部分が移動金型3の分割面3aと固定金型2の分割面2aを合わせたときに、分割面2aに接触し、分割面2aと分割面3aとの間をシールする。
シール部材35は、たとえば、シリコンゴム等の比較的耐熱性の高い材料で形成されたものを用いることが好ましい。なお、シール部材35を固定金型2の分割面2aにはめ込む構成とすることも可能である。
【0036】
シール部材35は、図5に示したように、移動金型3の分割面3aの外周部に連続して設けられており、継ぎ目が存在しない。
さらに、シール部材35の内周側に、排気路Ep、キャビティCおよびランナー部Rnが配置されており、これらはシール部材35から十分に離隔している。
【0037】
押出機構部41は、図3に示したように、移動金型3の背部に設置されている。
この押出機構部41は、複数の押出ピン42と、押出ピン42の一端を保持する保持板43、44と、保持板43、44が固定された可動板45と、可動板45を移動金型3に対して移動可能に案内する案内軸46と、シール冷却機構部61とを備えている。
【0038】
押出ピン42は、たとえば、ステンレス等の金属部材で形成されており、移動金型3に形成された各挿入孔3kに嵌合挿入されている。なお、後述するように、挿入孔3kは、移動金型3の分割面3aに近いところでのみ押出ピン42に嵌合し、それ以外の部分は押出ピン42が摺動しやすいように、拡径されている。この挿入孔3kは、図5に示したように、移動金型3の分割面3aに開口している。各挿入孔3kは、ランナー部RnやキャビティCの周辺や排気路Epに対して設けられている。これらの挿入孔3kから押出ピン42の先端部を突き出すことにより、移動金型3に嵌まっているダイカスト製品を押し出すことができる。
【0039】
保持板43、44は、各押出ピン42の拡径した後端部を挟持している。この保持板43、44は、可動板45に固定されている。
可動板45は、図4に示したように、矢印E1およびE2の向きに移動可能に案内されている。この可動板45は、図示しない駆動手段によって、矢印E1およびE2の向きに所定の範囲で移動させられる。矢印E2の向きに可動板45を移動させることにより、押出ピン42の先端部が移動金型3の分割面3aから突出する。
【0040】
押出ピン42と挿入孔3kとは嵌合しており、溶湯金属MLが押出ピン42と挿入孔3kとの間に侵入する可能性はないが、押出ピン42と挿入孔3kとの間に空気が侵入する可能性がある。押出ピン42と挿入孔3kとの間に外部から空気が侵入すると、キャビティC内を減圧した際に、キャビティC内を高真空にすることができない。
【0041】
また、押出ピン42は高温のダイカスト製品に直接触れるため、押出ピン42自体の温度も高温になる可能性がある。このため、押出ピン42と挿入孔3kとの間に樹脂性のシール部材(Oリング)を設けて押出ピン42と挿入孔3kとの間をシールすると、Oリングが高温に耐えられず、連続使用できない可能性があるのでシール冷却機構部61を移動金型3の背部に設けている。
【0042】
上記構成のシール冷却機構部61には、冷却液供給管30が接続されており、冷却液供給管30を通じて冷却液Wが供給される。冷却液Wには、たとえば、水が用いられる。
【0043】
上記構成になるダイカストマシン1の動作について説明すると、
まず、ダイカストマシン1が図3に示した状態、すなわち、固定金型2と移動金型3とが型開状態にある状態から、マシンコントローラ52の制御により、トグル機構110を作動させ、固定金型2と移動金型3とを型締する。
固定金型2と移動金型3とが型締されると、固定金型2の分割面2aと移動金型3の分割面3aの間は、シール部材35によってシールされる。
ダイカストマシン1の起動時には、上記したシール冷却機構部61には、冷却液Wが供給された状態にある。
また、ダイカストマシン1の起動時には、真空ポンプ50も起動されるが、バルブ機構部21の弁体24は排出路26を閉じた状態にある。したがって、キャビティC内は排気されない。
【0044】
一方、射出装置95のスリーブ96には、所定の量の、たとえば、アルミニウム合金等の溶湯がラドル100によって供給される。
ラドル100による溶湯の供給が完了すると、プランジャチップ97がマシンコントローラ52の制御により駆動される。プランジャチップ97の先端がスリーブ96の供給口96aを通過すると、スリーブ96がプランジャチップ97によって密封され、スリーブ96側からのキャビティCへの空気の侵入が遮断される。
なお、プランジャチップ97の移動開始時には、プランジャチップ97は通常低速で移動される。
【0045】
マシンコントローラ52は、たとえば、プランジャチップ97の検出位置からプランジャチップ97がスリーブ96の供給口96aを通過したことを判断し、バルブ機構部21の弁体24を開ける指令をバルブコントローラ51に出力する。
バルブコントローラ51は、マシンコントローラ52からの指令を受けて、バルブ機構部21の電磁アクチュエータ22を駆動する電力を電磁アクチュエータ22に供給する。
【0046】
電磁アクチュエータ22が駆動されると、図7に示すように、弁体24が矢印C2の向きに移動し、固定金型2の分割面2aに形成された当接面Saに弁体24が当接して止まる。このとき、電磁アクチュエータ22によって弁体24を駆動しているため、たとえば、弁体24は数msec〜十数msecの時間でかつ略一定時間で開く。たとえば、弁体24の駆動に油圧シリンダを用いた場合には、弁体24が完全に開くまで2百数十msecの時間を要し、かつ、時間にばらつきが発生する。
【0047】
この弁体24の移動により、弁体24と弁座面39aとの間に隙間が形成される。この弁体24と弁座面39aとの間の隙間から、キャビティCに連通する排出路Ep、排出路26、排出路25および排出管55を通じてキャビティCの空気(ガス)が排気される。
【0048】
固定金型2の分割面2aと移動金型3の分割面3aの間は、シール部材35によって確実にシールされており、また、押出ピン42と移動金型3との間は、シール冷却機構部61に設けたOリングによって確実にシールされているため、キャビティC内は急速に減圧される。
【0049】
ここで、図8に示すグラフを参照して、キャビティC内の減圧と射出速度との関係について説明する。
同図のグラフ(1)は、キャビティC内の減圧曲線を示しており、グラフ(2)はプランジャチップ97の射出速度波形を示している。なお、グラフ(3)は、比較例として、従来の電磁切換弁および油空圧シリンダ装置を用いてバルブを開閉する場合のキャビティC内の減圧曲線を示しており、グラフ(4)は排気路を閉じるときにはキャビティ内に射出・充填された溶融金属の慣性力によってバルブを駆動させる場合のキャビティC内の減圧曲線を示している。グラフ(3),(4)は、シール冷却機構部61を備えておらず、かつ、固定金型2の分割面2aと移動金型3の分割面3aとの間に連続的にシール部材を介在させていない場合である。
【0050】
グラフ(1)に示すように、減圧開始時点をPt1とすると、弁体24の応答性がよいため、減圧開始時点Pt1からキャビティC内は急速に減速される。さらに、押出ピンと金型の間あるいは固定金型2の分割面2aと移動金型3の分割面3aとの間から空気の漏れがほとんど存在しないため、減圧が短時間で効率よく行われるのがわかる。
【0051】
一方、グラフ(3)やグラフ(4)では、バルブの駆動にシリンダ装置を用いるため、減圧開始時点Pt1から実際に減圧が開始されるまでのタイムラグが比較的長く、また、押出ピンと金型の間あるいは固定金型2の分割面2aと移動金型3の分割面3aとの間から空気の漏れが存在するため、効率良く減圧されないことが分かる。
【0052】
プランジャチップ97の移動の進行に伴って、キャビティCとスリーブ96を連通するランナー部Rnにも金属溶湯MLが充填される。この状態においては、キャビティC内は、たとえば、20〜40Torr程度の高真空状態となっている。
【0053】
キャビティC内への金属溶湯MLの射出・充填は、プランジャチップ97の射出速度を高速に切り換えることによって行われる。すなわち、図8に示す高速射出開始時点Pt2において、射出速度が高速に切り換えられる。
しかしながら、高速射出に切り換える前に、バルブ機構部21に金属溶湯MLが侵入するのを防ぐために、排気路を弁体24によって閉じる必要がある。
排気路26を弁体24によって閉じるタイミングは、高速射出開始時点Pt2の直前が好ましい。すなわち、弁体24によって排気路26を閉じたのちには、キャビティC内の排気が行われず、空気の漏れによってキャビティC内の圧力が上昇する可能性があるからである。
【0054】
また、弁体24の駆動に電磁アクチュエータ22を用い、さらに、バルブ軸23を軽量化しているため、数msec〜十数msec程度の短時間で閉じることが可能であり、かつ、電磁アクチュエータ22の応答にばらつきがほとんどないため、高速射出開始時点Pt2の直前に行うことができる。
【0055】
なお、弁体24によって排気路26を閉じるタイミングは、プランジャチップ97の検出位置や金型内に設けた圧力センサ等でキャビティC内の圧力をマシンコントローラ52が検出することによって決定する。マシンコントローラ52は、これらの信号の検出に応じて、バルブコントローラ51に指令を出力する。
【0056】
電磁アクチュエータ22を駆動して、弁体24によって排出路26を閉じたとき、弁体24は高速で弁座部39の弁座面39aに衝突するため、弁体24が弁座部39から反発して跳ね上がる可能性があるが、弁座部39の形成材料として、反発を抑制する材料、すなわち、弁体24の形成材料よりも軟らかく、かつ、なじみの良い材料を用いているため、弁体24が弁座部39に衝突した際の跳ね上がりを極力抑制することができる。この結果、誤って、バルブ機構部21に金属溶湯が侵入することを防ぐことができる。
【0057】
高速射出開始時点Pt2において、高速射出に切り換えられると、金属溶湯MLは、キャビティC内に充填され、凝固する。これにより、所望のダイカスト製品が得られる。
【0058】
型締状態にある固定金型2と移動金型3から成形されたダイカスト製品を取り出すには、トグル機構110を作動させて、固定金型2と移動金型3とを開く。固定金型2と移動金型3とを開く(この時、プランジャチップは所定圧でランナー部に続くビスケット部を押しつけている)と、成形されたダイカスト製品は固定金型2から離れる。
この状態で押出機構部41を動作させ、押出ピン42を移動金型3の分割面3aから突出させることにより、ダイカスト製品を移動金型3から取り外すことができる。
さらに、シール冷却機構部61には連続的に冷却液Wが供給されているため、シール冷却機構部61の温度は移動金型3の温度よりも十分に低下する。
以上のように、キャビティCと真空ポンプ50とを連通する排気路を開閉する弁体の駆動に電磁アクチュエータ22を用いることにより、排気路の開閉を速やかに行うことができる。電磁アクチュエータ22は、電力によって駆動されるため、作動油等を供給する必要がなく、バルブ機構部21を小型化することが可能である。このため、金型に対するバルブ機構部21の配置の自由度が増し、弁体24およびキャビティCと真空ポンプ50とを連通する排気路の配置を最適化することが容易となる。
【0059】
以上説明した電磁アクチュエータ22により駆動される弁体24の外周部は図6に示すように、アルミ合金等の溶湯が固化して覆われており、製品取り出しのため移動金型3が左方へ移動すると、前記固化部分は、前記キャビティC及び排気路Epの固化部分とともに固定金型2から離脱する。その後、前述したように、押出しピン42の動作によりこれら固化部分は成形品即ち、製品とともに移動金型3から離脱されるようになっている。
【0060】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図4、図6に示すように弁体24はキャビティCから上方へ排気路Epを介しかなり離れて配置されており、また、排気路Epの部分の断面はランナー部Rnに比べ狭くなっている。さらに、図5から判るように、押出しピン42が挿入される挿入孔3kはキャビティCの両側及びランナー部Rn近傍に配置されており、従って、型開終了後、押出しピン42を駆動するとキャビティC部分の凝固した成形品は左右及び上下にバランスよく押出し力が作用してランナー部とともに正常に押出されるが、排気路Ep及び、特に弁体24部分で凝固した凝固部分には前記押出しピン42の押出し力の一部はモーメントとして作用する。その場合、この凝固部分の移動金型3との附着性が強いと前記モーメントにより排気路Epの途中で破断することがあり、その場合弁体24に附着している凝固部分があると、次の成形サイクルにおける真空引きができない。これを避けるために、前記排気路Ep近傍に別途押出しピンを設けることが一応考えられるが、図6から分かるように、弁体24及び排気路Ep付近は移動金型3に組み込まれた金属部材3及びバルブ機構部21が配置されているため新たに押出しピン用の挿入孔を設けるスペースを確保することが困難であり、また仮にできたとしても、その押出しピン用の挿入孔の存在が図8に示す20〜40Torrという高真空に保持するための真空引きを阻害することとなる。
【0061】
本願発明者は、上述した問題点を解決すべく鋭意努力検討し、試行した結果、前記弁体の形状を図6に示されるフラット状でなく、全体を曲面で且つ山形状とすることにより前記問題点が解決できることを突き止めた。
従って、本発明の目的は、図3乃至8に示した高真空を可能にするタイプのダイカスト装置において、近傍に押出しピンを配置することなく弁体表面に付着している凝固部材が容易に当該弁体から離脱でき、従って、キャビティと当該弁体との間の排気路部分で破断を起こさないようにした弁体表面形状を有するダイカスト装置を提供することにある。
【0062】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のダイカスト装置は、一対の移動金型と固定金型との間に形成されるキャビティ内を減圧して高真空状態で当該キャビティ内に溶湯を射出・充填してダイカスト製品を成形するダイカスト装置であって、前記キャビティ内の気体を吸引排気する真空ポンプ手段と、前記真空ポンプ手段とキャビティとの間に形成された排気路と、前記排気路を遮断及び連通せしめる真空弁手段と、前記キャビティ近傍に設けた複数の押出しピン手段を備え、前記真空弁手段は、前記排気路内にあって直接排気路を遮断及び連通する部材としての弁体と、一端部に前記弁体を設けたバルブ軸と、同バルブ軸の他端に結合し前記遮断及び連通方向に駆動するリニアアクチュエータ手段とからなり、さらに、前記排気路を介して前記弁体に達する前記溶湯の接する前記弁体表面の形状は山形の曲面で形成されていることを構成上の特徴とする。
【0063】
その場合、前記弁体表面の形状は球面の一部で形成されることができる。
さらに、その場合好適には、前記弁体表面の形状は山形の曲面で形成され且つその頂部は前記バルブ軸の軸心よりも前記キャビティから離れた位置に形成されることができる。
また、前記バルブ軸の軸心は、前記リニアアクチュエータ手段の駆動軸の軸心から偏心するよう配置されることができる。
その場合、偏心はキャビティ側と反対の方向とすることができる。
【0064】
本発明では、弁体の溶湯と接する面の形状を山形状の曲面とし、且つその頂部がバルブ軸の軸心に対しキャビティと反対の方向に位置するように形成されている。型開後、ランナー部等キャビティ近傍に配置された押出しピンを駆動してキャビティ部分の成形品が押出されるとき弁体表面に付着している凝固部分には、前記押出しピンの押出し力に基づく若干のモーメントが作用する。しかし、山形状曲面の頂部がバルブ軸心よりもキャビティから離れた位置に形成されているので、キャビティと弁体の間の排気路部分で破断が生じる前に前記弁体表面に付着している凝固部分が弁体から離脱する。
【0065】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明が適用されるダイカスト装置の構成の一例を示す図であり、同図(a)は本発明における真空バルブ手段VLVの実施例の軸方向断面図、同図(b)は図(a)のY矢視図、同図(c)は弁体の拡大断面図である。
図1(a)において、参照符号200は電磁アクチュエータである。電磁アクチュエータ200の右端側に中空状のガイド202が配設されている。
ガイド202内には、バルブ軸204が摺動可能に挿入されている。バルブ軸204の左端部は電磁アクチュエータ200の駆動軸208と係合している。
なお、参照符号212はシール部である。バルブ軸204の右端部には弁体204Aが形成されている。
【0066】
弁体204Aの右端面は山形状の曲面、好適には、球面状に形成され排気路216の端部空間に面している。
また、弁体204Aの鍔部内側面はガイド202右端部に装着した弁座部206とで面シールを構成している。
参照符号210は移動金型MVDと固定金型FMDとの合わせ面を示す。参照符号214は図示しない真空ポンプ側に接続される排気路であって、弁体204Aが弁座部206とのシール状態から離れたとき排気路216と連通するようになっている。
【0067】
前記バルブ軸204の軸心は電磁アクチュエータ200の駆動軸208の軸心から量eだけ上方へ偏心して構成されている。従って、前記弁体204Aの最右端部即ち、球面の頂部は量eだけ偏心している。
図1(b)は同図(a)のY矢視図である。また、同図(c)は弁体204A近傍の拡大図であって、アルミ合金等の溶湯MLTが排気路216の上端部に達して弁体204Aの球状表面を覆っている状態を示す。
【0068】
なお、前記電磁アクチュエータ200は、図6の説明において電磁石の吸引力を利用するものとして説明したがボイスコイル式のものであってもよく、本発明におけるリニアアクチュエータ手段を構成している。
また、弁体204Aはバルブ軸204と一体に形成されているものとしたが弁体部分をバルブ軸に取付けるようにして構成することもできる。
【0069】
図2は、型開後に押出しピン230を矢視Pの方向に押出してキャビティ部分の成形品220を移動金型MVDから離脱させるときの状況を説明する図である。
図2において、キャビティに続く排気路222、排気路端部224には凝固した溶湯、すなわち、凝固部材MLTが達しており、バルブ軸226上端の弁体228の山形状曲面を覆っている。
弁体228の頂部TPLはバルブ軸226の軸心に関し、キャビティ側と反対方向、すなわち、左方に離れて形成されている。
【0070】
一方、一点鎖線で示す弁体の場合はその頂部TPRはキャビティ側即ち、押出しピン230に近い位置にある。
これら2つの場合を比較すると、頂部TPRの弁体の場合は、押出しピン230の押出し力Fに対し頂部TPRから右側の急斜面部分が抵抗し、そのため排気路222部分での凝固部材MLTの破断が起きやすい。これに対し、頂部TPLの弁体228の場合は頂部TPLの右方側斜面はなだらかであって、前記抵抗が少なく、従って、凝固部材MLTはある程度の曲げモーメントを受けるものの破断する前に弁体表面から離脱する。なお、この場合弁体228は必ずしも球面状でなくてもよい。
以上本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく当業者であれば種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、弁体の溶湯と接する面の形状を山形状の曲面とし、且つその頂部が先端部に前記弁体を固定したバルブ軸の軸心に対しキャビティと反対の方向に位置するように形成されているので、押出しピンの押出し力に基づくモーメントがあるものの、キャビティと弁体の間の排気路部分で破断が生じる前に前記弁体表面に付着している凝固部分を弁体から離脱させることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるダイカスト装置の構成の一例を示す図であり、(a)は真空バルブの軸方向断面図、(b)は(a)のY矢視図、(c)は弁体の拡大断面図である。
【図2】本発明が適用される真空バルブ弁体の山形状頂部の位置を示す図である。
【図3】横型締、横射出方式のダイカストマシンの構成を示す一例であって、同ダイカストマシンの型開状態を示す図である。
【図4】ダイカスト装置の金型周辺部の構造を示す断面図である。
【図5】図4中の移動金型の分割面の構造を示す図である。
【図6】図4中のバルブ機構部周辺の構造を示す断面図である。
【図7】図4中のバルブ機構部の動作状態を説明するための図である。
【図8】キャビティC内の減圧と射出速度との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
1…ダイカストマシン、2…固定金型、3…移動金型、3k…挿入孔、21…バルブ機構部、22…電磁アクチュエータ、23…バルブ軸、24…弁体、39…弁座部、39a…弁座面、42…押出ピン、50…真空ポンプ、200…電磁アクチュエータ、202…ガイド、204…バルブ軸、204A…弁体、206…弁座部、208…駆動軸、216…排気路、220…成形品、MLT…凝固部材、TPL…頂部、W…冷却液。
Claims (2)
- 移動金型と固定金型との間に形成されるキャビティ内を減圧して高真空状態で当該キャビティ内に溶湯を射出・充填してダイカスト製品を成形するダイカスト装置であって、
前記キャビティ内の気体を吸引排気する真空ポンプ手段と、
前記真空ポンプ手段と前記キャビティとの間に形成された排気路と、
前記排気路を遮断及び連通せしめる真空弁手段と、
前記キャビティ近傍に設けた複数の押出しピン手段とを備え、
前記真空弁手段は、前記排気路内にあって直接排気路を遮断及び連通する部材としての弁体と、一端部に前記弁体を設けたバルブ軸と、同バルブ軸の他端に結合し前記遮断及び連通方向に駆動するリニアアクチュエータ手段とを有し、さらに、前記排気路を介して前記弁体に達する前記溶湯の接する前記弁体表面の形状は山形の曲面で形成され且つその頂部は前記バルブ軸の軸心よりも前記キャビティから離れた位置に形成されている
ダイカスト装置。 - 前記弁体表面の形状は球面の一部で形成されていることを特徴とする
請求項1に記載のダイカスト装置。
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- 2003-05-27 JP JP2003148630A patent/JP4130903B2/ja not_active Expired - Lifetime
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