JP4129396B2 - 細胞の保存 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、細胞、特に肝細胞のような一次細胞の保存方法に関する。本発明は、加水分解ゼラチンを含有するゲルにも関する。
【0002】
全器官コラゲナーゼ灌流技法(Krebs et al., Regulation of Hepatic Metabolism, 726-75, 1974、およびSeglen, Meth. Cell Biol., 13, 29-83, 1976)の導入は、広範囲にわたる生育可能肝細胞の単離を可能にした。用いられる単離方法は低刺激性であって、単離された細胞は、最初は、in vitroでin vivo様特性を保持する。しかしながら高細胞収率は単一肝臓から得られ、一般に産生される細胞の数は実験要件を大きく超える。
【0003】
単離された肝細胞は、樹立細胞系または肝癌細胞と比較して、よりin vivo環境に近似する(Sirica and Pitot, Pharmacol. Rev., 31, 205-227, 1980)が、単離された肝細胞は懸濁培養中における生育可能性が限定されているという欠点を有する。
【0004】
肝細胞は、肝細胞を特に適切なin vitroモデル系にする多数の特徴を有する。肝細胞は高代謝率を有し、解毒に関与する主要な細胞型である。しかしながら、培養に際して、肝細胞は、起こるにしても不十分な分裂しかせず、そして表現型が変化し、それによりそれらの肝特異的プロセスの多くが失われる。肝細胞は一般に単離された直後に用いられ、生育可能性の持続は単一層の形成に依存する。多数のプレートを維持するには、培地を24時間毎に取替える必要があるので、労働集約的である。
【0005】
肝細胞培養におけるさらなる問題は、肝細胞の寿命が限定されていること、および表現型が変化することである(Bissell, Ann. N.Y. Acad. Sci., 349, 85-98, 1980)。表現型が変化するために、長期培養を用いて得られた結果は、樹立細胞系を用いて得られた結果以上に、無傷器官に適用することができない。
【0006】
ゼラチンゲル上での肝細胞の低温保存は開示されている(Evans, Cell Biology International, 18, 999-1008, 1994; Evans, Cell Biology International, 19, 855-860, 1995; Evans, Cell Biology International, 23, 117-124, 1999;およびGriffiths & Evans, Cryobiology, 40, 176-181, 2000)。当該方法は、未処理(非加水分解)ゼラチンを含有する培地からなるゲルの調製、ならびにゲル表面へ肝細胞を付着させることを要する。次に肝細胞は、培地で覆われて、10℃の温度で培養される。ゲルを含有するゼラチン上での肝細胞のこのような保存により、肝細胞の機能に関していかなる実質的悪化も伴わずに、少なくとも7日間の肝細胞の保存が可能である。ゲル表面から細胞を分離するためには、ゲルを37℃に加熱することによりゲルを融解する必要がある。ゲルを37℃に加熱すると、細胞に損傷が生じ得る。この従来技術の方法に関するさらなる問題は、付着細胞を覆う培地を取り換える必要がある点である。細胞はゲルの曝露表面に付着されるので、培地を取り換えるときに、細胞が取り除かれたり、損傷を受けたりする可能性がある。さらに、培養皿に移す際に、培地をこぼしやすい。
【0007】
米国特許出願第5,635,344号および米国特許出願第5,736,397号は、0〜5℃の温度で細胞を培養することを含む細胞の保存方法であって、該細胞が非加水分解ゼラチンを含むゲル中に存在する方法を開示する。非加水分解ゼラチン層の間で細胞を培養することは開示されていない。本発明は、細胞を保存するための従来技術の方法に関連した問題の少なくともいくつかを克服する。
【0008】
本発明は、単離された細胞の保存方法であって、加水分解ゼラチンを含むゲルに細胞を付着させ、0℃〜5℃の温度で細胞を培養することを含む方法を提供する。
【0009】
加水分解ゼラチンの使用により、細胞が付着するための支持体として作用するには十分に強いが、過冷培地のような水溶液の添加により分散されるには十分に弱いゲルを得ることができる。リミング(すなわち、その容器からゲルの分離を容易にするための針または類似用具の使用)も、分散を促すために用いられ得る。
【0010】
したがってゲル中に加水分解ゼラチンを使用することにより、細胞を分離するために37℃にゲルを加熱する必要がなくなり、このような加熱により引き起こされる細胞へのあらゆる損傷を回避する。加水分解ゼラチンを含むゲルを用いることにより、低温損傷および37℃に加熱することにより引き起こされる損傷とを区別することもできる。
【0011】
さらに、ゲル中に加水分解ゼラチンを用いることにより、ゲルが血清を含有しない場合には、固体支持体(すなわち、標準組織培養処理プラスチック支持体、例えば培養皿またはウエル、例えばプリマリア(Primaria)(登録商標)およびコーニング(Corning))に細胞が付着するのを抑制できる。固体支持体は、支持体への細胞の付着を助けるために、その表面に正味の電荷を有するよう、処理されている。ゼラチンを加水分解することにより、固体支持体に細胞が付着するのを促す因子の損失が生じ、および/または細胞付着を抑制する因子が生じることが判明した。したがって本発明の方法により、当業者は固体支持体に細胞が付着するのを防止することができ、それにより培養細胞の収集は容易になり、そして特に、球状体の単離が容易になる。球状体は、多細胞集合体を形成する細胞である。集合体は、通常は球形である。球状体は機能的複合体を再構築し、組織特異的機能を示す(Hamamoto et al., J. Biochem., 124, 972-979, 1998参照)。
【0012】
加水分解ゼラチンの存在は、血清が存在しない場合に、固体支持体に細胞が付着するのを阻害するので、固体支持体への細胞付着という面倒な問題を伴わずに、当業者がより多くの時間、細胞を回収することができる。血清の非存在は、固体支持体に細胞が付着するのを防止するのに役立つ。培地からの血清の非存在は、細胞が保存され得る期間を約7日から3日に低減させる。固体支持体が細胞外マトリックス因子、例えばコラーゲン、フィブロネクチンおよびマトリゲルのコーティングをされていないことも好ましい。このような細胞外マトリックス因子は、固体支持体に細胞が付着するのを促進するので、細胞が固体支持体の表面に付着されないようにする場合には、コーティングを回避する必要がある。
【0013】
さらに、ゲル中に加水分解ゼラチンを用いることにより、ゲルが約37℃で均一に融解することが判明した。加水分解ゼラチンを含有するゲルを加熱すると、非加水分解ゼラチンを含むゲルよりも均一にゲルは融解する。「均一に」という用語は、本明細書中で用いる場合、ゲルの中心がゲルの縁と実質的に同一速度で融解することを意味する。ゲルのこの均一融解は、すべての細胞が、実質的に同時にゲルから単離され得るという利点を有する。
【0014】
「保存する」という用語は、本明細書中で用いる場合、細胞の生育可能性および/またはin vivo様機能を維持することであると定義される。生育可能性は、細胞質ゾルマーカー酵素、例えば乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を保持しているか、ならびに非阻害培養条件下で固体支持体に実質的に付着する細胞の能力を維持しているかどうかで判定することができる。in vivo様機能の保持は、タンパク質合成の速度を維持する細胞により、ホルモンに対するin vivo様応答を示す細胞により、シトクロムP450およびその特異的イソ酵素のレベルを維持する細胞により、および非定型酵素特性または表現型変化の非存在により判定され得る。これらのうち2以上の方法を用いて、in vivo様細胞機能を確定し得る。
【0015】
好ましくは、in vivo様細胞機能は、シトクロムP450のレベルが維持されていることを確定することにより測定される。細胞の生育可能性およびin vivo様細胞機能を確定するための方法は、Evans, 1994(上記)、Evans, 1995(上記)、Griffiths and Evans, 2000(上記)およびEvans, 1999(上記)に開示されている。
【0016】
「付着する」という用語は、本明細書中で用いる場合、細胞がゲルの表面に固定されるかまたはゲルの内部に固定されることを指す。
【0017】
「単離された細胞」という用語は、本明細書中で用いる場合、ゼラチナーゼ産生細菌以外の任意の細胞を指す。好ましくは単離された細胞は、真核生物細胞、例えば哺乳類細胞、植物細胞(プロトプラストを含む)、昆虫細胞等である。「単離された細胞」という用語が、一次細胞、例えば肝細胞、腎臓近位尿細管細胞、乳房上皮細胞および一次膵臓細胞を指すのが特に好ましい。単離された細胞は、1つまたは複数の異種遺伝子または修飾遺伝子を含む遺伝子操作された細胞でもよい。好ましくは、単離された細胞は、全器官コラゲナーゼ灌流またはそれと等価の方法により得られる肝細胞である。単離された肝細胞を得るための方法は、当該技術分野で既知である。特に適切な方法は、Evans (Biochim. Biophys. Acta, 677, 433-444, 1981)およびEvans and Mayer (Biochim. Biophys. Res. Comm., 107, 51-58, 1982)に開示されている。
【0018】
腎臓近位尿細管細胞を得るための方法は、Evans (Biochem. Biophys. Acta, 1133, 255-260, 1992)およびEvans (Biochem. Biophys. Acta., 1221, 243-249, 1994)に開示されている。本発明の方法を用いて腎臓近位尿細管細胞を保存すると、in vivo様酵素プロフィールを維持するほかに、ゲルから放出された腎臓近位尿細胞が正常に分裂することも示されている。保存条件により、細胞分裂を抑制する作用を受けることはない。
【0019】
したがって本発明の方法は、非分裂細胞型および分裂細胞型に適している。さらに腎臓近位尿細管細胞は、ほとんど専ら、それらのエネルギー生成を好気呼吸に依存しているが、一方、肝細胞は嫌気呼吸する有意の能力を有する。大きく異なる特性を有するこれらの一次細胞型の保存に成功したことは、本発明の方法が広範な種々の細胞型に適用可能であることを示す。本発明の方法は、非常に有益な一次細胞の保存手法であり、樹立細胞系とともに用いるのにも適している。特にそれは、使用直前に「細胞を成長させる」必要がない。したがって集密的細胞単層、例えばCaco2細胞を要する実験も容易になる。
【0020】
「培養する」という用語は、本明細書中で用いる場合、細胞の維持および/または増殖を指す。
【0021】
細胞を培養するのに適していれば、加水分解ゼラチンを含有する任意のゲルが本発明の方法に用いられ得る。ゲルは、好ましくは、細胞培地および加水分解ゼラチンを含む。細胞培地は、保存すべき細胞を培養し得る任意の細胞培地であり得る。適切な培地は、好ましくは重炭酸塩の代わりにヘペスで緩衝されて、大気への曝露を可能にするレイボヴィッツ(Leibovitz)(L−15)培地である。その他の適切な培地としては、ウェイマウス(Waymouth)培地、ウイリアム(William)培地、ダルベッコ(Dulbecco)培地またはハム(Ham)培地が挙げられるが、これらは重炭酸塩で緩衝され、95%空気5%CO2ガス相を要する。必要に応じて、培地は補足される。適切な補足物としては、炭素源(例えばグルコース)、成長ホルモン(例えばインスリン)、血清(例えば熱不活性化新生仔ウシ血清)および抗生物質(例えばゲンタマイシン)が挙げられる。好ましくはゲルは、グルコース(8.3mM)およびヘペス(25mM)を含有するレイボヴィッツ(L−15)培地(pH7.4)中に1.5%(w/v)の加水分解ゼラチンを含む。
【0022】
細胞培地はさらに、復温損傷から細胞を保護するために細胞保護剤、例えばグルタチオンを含む。グルタチオンは、低温で細胞に進入することが既知である。
【0023】
好ましくは本発明の方法は、4〜14℃の温度で、さらに好ましくは8〜12℃の温度で、最も好ましくは約10℃の温度で細胞を培養することを含む。
【0024】
「加水分解ゼラチン」という用語は、本明細書中で用いる場合、少なくとも部分的に加水分解され、そのゲル強度が低減されたゼラチンを意味する。加水分解されていないゼラチンは、比較的強いゲルを与える。加水分解ゼラチンを用いると、水溶液の添加により分散することができるより弱いゲルが生成される。好ましくは、「加水分解ゼラチン」という用語は、本明細書中で用いる場合、細胞が0〜15℃の温度で付着され得る固体支持体を提供するのに十分に強いが、水溶液の添加により分散されるような十分に弱いゲルを生成する程度に加水分解されたゼラチンを指す。好ましくは加水分解ゼラチンは、ブタ皮膚からの加水分解300ブルームA型ゼラチンである。
【0025】
ゼラチンは、任意の既知の方法、例えば熱加水分解、ゼラチナーゼまたはトリプシンによるタンパク質分解的消化、ならびに酸およびアルカリ性加水分解を含む化学的方法により加水分解され得る。好ましくはゼラチンは、熱加水分解により加水分解される。特に、加水分解ゼラチンは、85〜121℃の温度で0.2〜3時間、ゼラチンを加熱することにより生成されるのが好ましい。さらに好ましくは、ゼラチンは90〜100℃の温度で1〜2.5時間加熱される。最も好ましくは、ゼラチンはそれを約95℃で約2時間加熱することにより、あるいは約121℃で約20分間加熱することにより加水分解される。
【0026】
ゲルは好ましくは、0〜15℃の温度で細胞が保存され得る固体ゲルを生成するのに十分に強いが、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲルを生成するのに十分な量の加水分解ゼラチンを含む。好ましくはゲルは、0.5%〜5.0%(w/v)の加水分解ゼラチンを含む。ゲルは1%〜2%(w/v)の加水分解ゼラチンを含むのがさらに好ましく、最も好ましくは1.5%(w/v)のゼラチンを含む。
【0027】
ゲルは、加水分解ゼラチンのほかに、形成されるゲルが0〜15℃の温度での水溶液の添加により分散されるほど十分に弱い場合、非加水分解ゼラチンを含む。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、細胞は、加水分解ゼラチンを含むゲルの表面に付着され、好ましくは液体細胞培地で被覆される。一般に液体細胞培地は、ゲルを形成するために用いられる培地と同一であるが、ただし、それはゼラチンまたは加水分解ゼラチンを含まず、かつゲル中に存在しない補足物を含み得る。液体細胞培地は、細胞保護剤、例えばグルタチオンを含むのが特に好ましい。本発明のさらなる実施形態では、細胞は、加水分解ゼラチンを含む第一のゲル層に付着され、次に細胞がゲルの2つの層の間に保持されるよう、第二の加水分解ゼラチンゲル層で被覆される。本発明の代替的実施形態では、細胞は、ゲルが固化する前に(すなわち約37℃の温度で)加水分解ゼラチンを含むゲルと混合される。ゲルが固化すると(すなわち約10℃の温度で)、細胞はゲルで固定される。必要な場合には、ゲルが乾燥するのを防ぐために、そして任意の必要な栄養素を供給するために、液体培地が添加され得る。細胞がゲルの2つの層の間に、またはゲル内に固定されていることから、細胞は輸送中に損傷を受けず、そして細胞を撹乱することなく液体培地を取り換えることも容易である。ゲルを分散する際に、ゲルが血清を含む場合、および/または固体支持体の表面が細胞外マトリックス因子で被覆されている場合は、細胞はゲルが形成される固体支持体の表面に付着され得る。一方、血清を含有しないゲルを用いることにより、好ましくは細胞外マトリックス因子で被覆されていない固体支持体を用いることにより、細胞が固体支持体に付着するのを防止し得る。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態では、細胞は固体支持体、例えば培養皿またはウエルに直接付着され、次に加水分解ゼラチンを含むゲルの層で被覆される。細胞は次に、ゲルにより被覆される。必要な場合、ゲルはさらに、乾燥するのを防ぐために、そして任意の必要な栄養素を供給するために、細胞培地で被覆され得る。これはまた、輸送中におよび細胞培地を取り換える際に損傷から細胞を保護する。さらに、細胞が表面に付着されたときに細胞を用いるのが望ましい場合に、この方法によれば細胞が付着するのを待つことなく、ゲルが分散された直後に細胞を用いることができる。好ましくは固体支持体の表面は、細胞外マトリックス因子によりコーティングされている。さらに、加水分解ゼラチンゲル層は、非加水分解ゲル層で被覆され得る。好ましくは、非加水分解ゲル層は薄く、すなわち約0.5〜2mm厚である。上部の非加水分解ゼラチンゲル層は、撹乱中に保護するためのより頑強な上部層として作用し得る。「非加水分解ゼラチン」という用語は、以下で定義される。
【0030】
本発明の方法は、ゲルを支持するための任意の適切な固体支持体を用いて実施することができる。適切な固体支持体としては、培養皿、ウエル(例えば96ウエルフォーマットプレート)およびカラムが挙げられる。例えば当該方法は、上記した当業者に既知の標準スクリーニングまたは生化学的アッセイ手法で用いる準備のされている、表面に細胞が付着している固体支持体を生成するために用いられ得る。
【0031】
細胞は剪断力により容易に損傷され得ることが既知であったため、ゲルで細胞を被覆することができるということは驚くべきことである。剪断力は、均質化、音波処理および窒素キャビティーションにより、制御様式で細胞を切り開くために用いられる。ゼラチンのゲル化は、その近くの細胞に強い力を及ぼし、そしておそらくは細胞から水を除去すると予測される。したがって、ゲル内での細胞の被覆、固定に際して、細胞傷害作用が起きないことが見出されたことは意外であった。
【0032】
本発明は、本発明の方法に用いるための加水分解ゼラチンを含むゲルも提供する。上記のように、任意の培地が加水分解ゼラチンと組合せて用いられて、本発明のゲルを形成し得る。
【0033】
上記のように、本発明のゲルは、0〜15℃の温度で細胞を保存することができるという利点を有し、水溶液の添加によりゲルを分散することにより、細胞がゲルから分離され得るという利点を有する。
【0034】
本発明は、固体支持体であって、その上に本発明のゲルが形成されている固体支持体も提供する。
【0035】
固体支持体は、その上にゲルが形成される任意の支持体であり得る。特に固体支持体は、培養皿、ウエルまたはカラムであり得る。固体支持体は、細胞外マトリックス因子でコーティングされていてもよい。
【0036】
本発明の固体支持体上に形成されるゲルに細胞が付着されることがさらに好ましい。上記のように、細胞は
1.ゲルの表面に付着され得るか、
2.ゲルの2つの層の間に保持され得るか、
3.ゲル内部に固定され得るか、または
4.固体支持体に付着されて、ゲルで被覆され得る。
【0037】
本発明は、加水分解ゼラチン、および1種または複数種の単離された細胞を含むゲルも提供する。
【0038】
本発明は、単離された細胞の保存方法であって、細胞がゲルの2つの層の間に保持されるよう、細胞を第一のゲル層の表面に付着し、次に第二のゲル層で被覆すること、および0〜15℃の温度で細胞を培養することを含む方法であって、ゲルの層の少なくとも1つが非加水分解ゼラチンを含む方法も提供する。
【0039】
「非加水分解ゼラチン」という用語は、加水分解されていないゼラチンを指す。好ましくは「非加水分解ゼラチン」という用語は、in vitroで加水分解されていないゼラチンを意味する。ゼラチンは熱加水分解、ゼラチナーゼまたはトリプシンによるタンパク質分解性消化、あるいは化学的方法、例えば酸性またはアルカリ性加水分解により加水分解されていないことがさらに好ましい。
【0040】
好ましくは、ゼラチンは加水分解されていないブタ皮膚からの300ブルームA型ゼラチンである。
【0041】
好ましい実施形態では、ゲルのいずれの層も、非加水分解ゼラチンを含む。
【0042】
代替的な好ましい実施形態では、第一のゲル層は加水分解ゼラチンを含み、第二の層は非加水分解ゼラチンを含む。
【0043】
さらに好ましい代替的実施形態では、第一のゲル層は非加水分解ゼラチンを含み、第二の層は加水分解ゼラチンを含む。細胞が必要とされる場合に、第二のゲル層は水性分散液により除去されて、第一のゲル層に付着されたままの細胞を残す。このように固定化された細胞は、マイクロインジェクション試験に特に適している。種々の物質(例えばDNA、RNAおよびタンパク質)を、固定化細胞に直接注入することができる。細胞の代謝速度が低いことを考慮すれば、固定化細胞の漸進的マイクロインジェクションは、その後の代謝実験のために本質的に一定の開始時間を与える。
【0044】
非加水分解ゼラチンを含むゲルはさらに、加水分解ゼラチンも含み得る。しかしながら好ましくは非加水分解ゼラチンを含むゲルは、加水分解ゼラチンを実質的に含有しない。実質的には、加水分解ゼラチンを含有しないとは、ゲルが非加水分解ゼラチン試料中に存在する内因性レベルより多くの加水分解ゼラチンを含有しないことを意味する。好ましくは加水分解ゼラチンのレベルは、ゼラチンの10%(w/w)未満である。加水分解ゼラチンは、トリクロロ酢酸中で可溶性であるゼラチンタンパク質であるとみなされる。したがって、非加水分解ゼラチンは10%(w/w)未満のトリクロロ酢酸可溶性タンパク質を含有するのが好ましい。好ましくは、非加水分解ゼラチンを含むゲルは、その上で細胞が0〜15℃の温度で保存されるが、水溶液の添加により分散することができない強いゲルである。適切な非加水分解ゼラチンゲルは、以前に記載されている(Evans, Cell Biology International, 18, 999-1008, 1994; Evans, Cell Biology International, 19, 855-860, 1995; Evans, Cell Biology International, 23, 117-124, 1999;およびGriffiths & Evans, Cryobiology, 40, 176-181, 2000参照)。さらに加水分解ゼラチンは一般に30kDaタンパク質断片を含むことが判明しているが、一方、非加水分解ゼラチンは30kDaタンパク質断片を含まない(SDS−PAGEを用いて検出した場合)。
【0045】
非加水分解ゼラチンを含むゲルの好ましい特徴(ゲルの種々の構成成分を含む)は、そのゲルが非加水分解ゼラチンを含まなければならないことを除いて、加水分解ゼラチンを含むゲルに関して上記した特徴と同一である。本発明は、固体支持体であって、その上に第一のゼラチンゲル層が形成され、および第一のゼラチンゲル層の上に第二のゼラチン層が形成される固体支持体も提供し、その場合、細胞は2つのゼラチンゲル層の間に保持される。第一層および第二層を形成するために用いられるゼラチンゲルは、加水分解ゼラチンゲルまたは非加水分解ゼラチンゲルから別々に選択され得る。
【0046】
固体支持体および細胞は上記と同様である。
【0047】
従来、この2層配置を用いて、細胞を低い温度で保存することに成功したことは全くなかった。実際、それが試みられた唯一の場合において(Stevanovich et al., Cryobiology, 32, 389-403, 1995)、それは急速な膜小気胞化および細胞死をもたらしている。
【0048】
本発明の2層配置は、多数の利点を有する。第一の利点は、2層配置が、上部ゼラチン層の添加前に、下部ゼラチン層上に均一細胞単層を形成させる点である。対照的に、細胞懸濁液中での保存は均一でなく、容器の底に、あるいはおそらくは固化したゼラチンの内部において、局部的に高い細胞密度を生じ得る。急速細胞沈殿は、その作用が容器の底付近および底で最も顕著であることを示唆する。細胞堆積も、細胞沈殿物として問題であると思われる。さらなる利点は、ゼラチンゲルを通しての拡散に関する。低温条件下で代謝は続行する、すなわち細胞は仮死状態でないことを思い起こすべきである。保存のために、エネルギーは依然として必要とされる(例えばイオンポンプおよびタンパク質分解)。2層配置は、細胞がゼラチンゲルの表面上にあるか、または固体支持体に付着され、次にゼラチンゲルで被覆されている場合と異なって、全細胞表面での拡散を可能にする。
【0049】
さらに、細胞の上のゼラチンゲルの深さは一般に、細胞が固体支持体上に固定され、ゲルで被覆された場合よりも浅く、これもまた細胞へ栄養素を拡散しやすくする。
【0050】
さらに、2層の間に細胞を保存することにより、細胞は、それらの全表面にわたる均一な力を受ける。したがって細胞は、歪みにくく、そして表現型変化を受けにくいと思われる。さらに、固体支持体に付着された細胞が非加水分解ゼラチンゲル層で被覆される場合、あるいは細胞が非加水分解ゼラチンゲル内に固定される場合よりも、非加水分解ゼラチンゲル2層配置の場合は、細胞が長時間生存するということを本発明者等は見出した。
【0051】
したがって細胞を固定するための2層配置に関連して、多数の利点が存在する。
【0052】
上記のように、液体培地で被覆されたゼラチン層を有するのが望ましいが、必須要件ではない。これは、保存期間が長期間にわたる場合に、特に好ましい。
【0053】
0〜15℃の温度での細胞の長期間保存後、細胞小器官、例えばミトコンドリアは細胞の中央に集合することも本発明の発明者等は見出した(Griffiths et al., Cryobiology, 40, 176-181, 2000)。これは、細胞中の細胞骨格を崩壊するためである。細胞を短期間20〜37℃の温度にさらすことは、細胞骨格構造を回復するのに十分であるが、一方、短すぎると細胞の表現型変化を引き起こすことが判明した。
【0054】
好ましくは本発明の方法は、少なくとも2〜3日毎に1回(すなわち約2〜5日毎に)、細胞を約1〜16時間(好ましくは約5時間)、約20〜37℃の温度にさらすことをさらに含む。しかしながら温度上昇がゼラチンゲル融解を生じる場合(例えば加水分解ゼラチンゲルが約25℃の温度にされる場合、または非加水分解ゼラチンゲルが約37℃の温度にされる場合)、細胞は温度が上昇している間に、懸濁培養に移され、さらに連続的保存するためにゼラチン含有ゲルに付着されるのが好ましい。懸濁培養は、当業者に既知である。特に肝細胞に関する懸濁培養は、Evans, Biochim. Biophys. Acta., 677, 433-444, 1981に記載されている。
【0055】
本発明は、単離された細胞の保存方法であって、非加水分解ゼラチンおよび/または加水分解ゼラチンを含むゲルに細胞を付着させること、ならびに0〜15℃の温度で細胞を培養することを含み、さらに、少なくとも2〜3日毎に1回(すなわち約2〜5日毎に)、細胞を約1〜16時間(好ましくは約5時間)、約20〜37℃の温度にさらすことを含む方法も提供する。細胞は、ゲルの表面に付着され、ゲルの2つの層の間に保持され、ゲル内部に固定されるか、または固体支持体に付着されて、ゲルで被覆される。
【0056】
本発明の方法により、一次細胞の「細胞バンク」をある動物から作製することができる。細胞は、実質的には何日間かの期間にわたって用いられ、遺伝子変異の厄介な問題を回避する。本方法により、細胞が増殖するのを待たずに直ちに細胞を使用することができる。本方法により、低温保存に感受性である細胞型を保存することができ、遺伝子修飾細胞を最小度の損失で遠位位置に移植することができる。
【0057】
本発明は、加水分解および/または非加水分解ゼラチンを含む液化ゲルで器官または組織を灌流することを含む、単離された器官または単離された組織断片の保存方法であって、灌流後、器官または組織が0〜15℃の温度で保存される方法も提供する。
【0058】
臓器移植に伴う主な難しさは、器官が悪化する前(例えば肝臓に関しては36〜48時間)に利用することができる時間が短時間であることである。これは、器官特異的細胞の保存性が不十分なためではなく、血管を裏打ちする内皮細胞の感受性が高いためであると、多くが主張する(T. Ebert et al., Modern Trends in Bio ThermoKinetics, 3, 288-293, 1994)。これらの細胞は、再灌流をした場合に、壁が「剥がし落とされて」、血管の閉塞、およびその後の循環損傷による器官損傷をもたらす。ゼラチン保存培地を用いての新たに単離された器官の灌流は、これらの変化を防止する。完全に灌流した後、器官は0〜15℃で貯蔵され、ゼラチンが血管等の中で固化し、内皮細胞が正しい位置に保持されるという結果をもたらす。ゼラチンゲルは、固体支持体マトリックス、組織での良好な拡散率ならびに低融解温度という特徴を併有する。必要な場合、器官は37℃で培地(例えば生理食塩水)で還流され得る。保存ゼラチンゲルは、迅速に洗い落とされる。ゼラチンの使用は、ゼラチンが正常身体物質であり、免疫原性であるとは思われないという利点をさらに有する。
【0059】
器官は、任意の器官、例えば心臓、肝臓、腎臓等であり得る。組織は、灌流され得る血管系を有する任意の組織であり得る。好ましくは器官が灌流されて、次に組織試料が灌流器官から採取される。あるいは組織試料が灌流を可能にする十分な血管系を有する場合、直接灌流してもよい。
【0060】
液化ゲルは、それが固化しないようにするのに十分に高い温度(例えば25〜37℃)で維持することにより液化されるゼラチンゲルである。好ましくはゼラチンゲルは加水分解ゼラチンまたは非加水分解ゼラチンを含み、そして上記と同様である。最も好ましくは、ゼラチンゲルは、上記のような加水分解ゼラチンを含む。
【0061】
図面を参照しながら実施例により、ここで本発明を説明する。
【0062】
実施例1
材料および方法
コラゲナーゼは、Boehringer Mannheimから、オプチフェーズX(Opti Phase X)はLKB, Croydon, Surrey, U.K.から購入し、レイボヴィッツ(L−15)培地、新生仔ウシ血清およびゲンタマイシンはBiomedicals LTD, High Wycombe, Bucks U.K.によりICNにより供給を受け、インスリンはBoots, Nottingham, UKから入手した。他の化学物質はすべて、Sigma Poole, Dorset, UKから入手した。
【0063】
肝細胞は上記のように調製した(Evans 1981(上記)、Evans and Mayer, 1982(上記))。本発明のゲルは、グルコース(8.3mM)およびヘペス(25mM)を含有するレイボヴィッツ(L−15)培地(pH7.4)、ならびに加水分解ゼラチンからなる細胞培地を含む。加水分解ゼラチンは、滅菌水中で2時間、95℃でゼラチン(3%、ブタ皮膚からのSigmaI型)を加熱することにより得た。1容量の3%加水分解ゼラチン溶液を、1容量の細胞培地の2×溶液に添加して、1.5%(w/v)加水分解ゼラチンを含有する溶液を調製した。加水分解ゼラチンを含有するゲルを、60mm培養皿中で10℃に冷却させた。グルコース(8.3mM)、ヘペス(25mM)、インスリン(0.8μg/ml-1)、ゲンタマイシン(50μg/ml-1)および熱不活性化新生仔ウシ血清(10%v/v)を補充したレイボヴィッツ(L−15)培地(pH7.4)3ml中に、2.5×106個の肝細胞を添加した。1時間かけて、10℃でゲルに細胞を付着させた。ゲルにしっかり付着された細胞は、分散したり、または下層を通して移動することはできなかった。プレートを、加湿10℃インキュベーター中に入れた。図1は、ゲル層に付着された肝細胞を模式的に示す。
【0064】
プレートを1日間隔で試料採取し、細胞質ゾルマーカー酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をそれらが保持する能力、および固体支持体に付着した後のそれらの能力により判定した場合、高生育可能性が維持されることが判明した。細胞は、それらのタンパク質合成速度を維持し、ホルモンに対するin vivo様応答を示すことも判明した。シトクロムP450およびその特異的イソ酵素のレベルは、維持されることが判明した。さらに、表現型変化の非定型酵素特性は現れなかった。
【0065】
保存肝細胞は、少なくとも7日間、上記の特性を維持した。
【0066】
肝細胞は、リミングをしながら過冷培地を添加することによりゲルから分離した。
【0067】
ゲルから分離した肝細胞を収集し、アッセイおよびその他の実験に用いた。
【0068】
実施例2
実施例1に記載した実験を反復したが、ただし、ゲル層に肝細胞が付着した後、培地を除去し、加水分解ゼラチン1.5%(w/v)を含むL−15細胞培地1mlと入れ換えた。上部ゲル層を、室温で1時間かけて、下部ゲル層に付着させた。次にゲル層および細胞を10℃にさらして、ゲルを固化させた。さらに1mlの細胞培地を上部ゲル層の上面に添加した(図2参照)。
【0069】
保存肝細胞は、実施例1の肝細胞と同一の方法で保存できることが判明した。
【0070】
この場合も過冷培地の添加により(リミングをしながら)、細胞をゲルから分離した。
【0071】
実施例3
上記の実施例1に記載したように、1.5%加水分解ゼラチンを含むL−15培地を37℃で融解し、肝細胞を添加した。次に、肝細胞を含むゲルを10℃にして、ゲルを固化し、肝細胞をゲル内に固定した(図3参照)。
【0072】
保存肝細胞は、実施例1の肝細胞と同一の方法で保存できることが判明した。
【0073】
この場合も過冷培地の添加により(リミングをしながら)、細胞をゲルから分離した。
【0074】
実施例4
肝細胞を、1.5%加水分解ゼラチンを含まない実施例1に記載したL−15培地中で、37℃で2時間、ペトリ皿で培養した。肝細胞は皿の表面に付着する。L−15培地を除去し、実施例1に記載した1.5%加水分解ゼラチンを含むL−15培地に取り換える。ペトリ皿を10℃にさらし、ゲルを固化して、皿の表面に付着した細胞を被覆する(図4参照)。
【0075】
保存肝細胞は、実施例1の肝細胞と同一の方法で保存できることが判明した。
【0076】
過冷培地の添加により(リミングをしながら)、細胞をゲルから分離した。細胞は皿の表面に付着されたままで、アッセイまたは他の実験に用いる準備ができていた。
【0077】
当業者に明らかなように、ゼラチンの量、細胞が付着し得る固体支持体、およびゲルを生成するために用いられる培地の種類は、試験の厳密な要件によって変わり得る。実施例2〜4も、加水分解ゼラチンの代わりに非加水分解ゼラチンを用いて実施されており、37℃にゲルを加熱することにより、ゲルから細胞を分離した。
【0078】
実施例5
保存細胞の機能的無傷性の測定
以下の判定基準を用いて、保存細胞の機能的無傷性を調べた。
【0079】
1.7日間にわたって、ゼラチンゲル(非加水分解ゼラチンおよび加水分解ゼラチンの両方を含む)から放出された細胞の90〜95%が、色素トリパンブルーを排除した。この数値は、単離されたばかりの細胞の生育可能性と本質的に同一であることを意味する。
【0080】
2.生体色素の排除または可溶性酵素の保持は、細胞がその時点で生存していることを示す。しかしながら、生育可能性が持続していることは、これらの技法により必ずしも示されない。Poullain等(Hepatology 15, 97-106, 1992)は、ウィスコンシン大学溶液中で冷却保存した後の細胞は、プラスチックに付着すること、および生存することが不可能であったにもかかわらず、乳酸デヒドロゲナーゼ活性が比較的高いと報告した。同様に、低温保存した細胞もしばしば、これらの「矛盾した」特性を示す。この不確実性のために、本発明のゼラチンゲルを用いて保存した細胞を、37℃で2時間にわたって、支持体に付着させ、生化学的マーカーである乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を発現するそれらの能力に関してスクリーニングした。保存細胞は、単離された(非保存)ばかりの細胞と同様に支持体に付着することが判明した(図5参照)。
【0081】
3.支持体への付着は、肝細胞が37℃でそれらの機能を引き続き維持するという決定的証拠とはならない。さらに細胞は、低温保存した細胞に関して観察されたように、回復期間を必要とし、代謝機能の悪化を示し得る(De Loecker et al. Cryobiology 30, 12-18, 1993; Chesne et al. Hepatology 18, 406-414, 1993)。したがって、タンパク質合成速度を、正常反応の判定基準として用いた。タンパク質合成は、高度の代謝完全性を要する。本発明のゼラチンゲル中で保存した後の細胞により示された典型的応答を、図6に示す。トリクロロ酢酸不溶性形態中へのL−[4,5−3H]ロイシンの取り込みにより、タンパク質合成速度を測定した。該速度は少なくとも7時間は一定で、遅延時間は先行しなかった。
【0082】
4.タンパク質合成測定は一般的な細胞機能を示すが、それが組織特異的であるかどうかは示さない。本発明のゼラチンゲルを用いて保存後、細胞を、酵素チロシンアミノトランスフェラーゼのホルモン誘導に関して試験した。この機能は肝臓特異的特性である。それはホルモン受容体結合、占有受容体転位、転写および翻訳を含む。典型的結果を図7に示す。この場合、誘導物質デキサメタソンおよびジブチリルcAMPの存在下で培養された保存細胞はチロシンアミノトランスフェラーゼのレベル増大を示すが、誘導物質の非存在下(基本培地)での保存細胞はレベル増大を示さない。特に興味深いのは、誘導保存細胞が、37℃でin vitro培養された非保存細胞とは対照的に、in vivo様酵素レベルを維持する、という点である。
【0083】
5.肝臓特異的機能を維持するほかに、保存細胞が単離されたばかりの細胞と同程度である場合には、それらは保存中に表現型変化を受けていない。酵素γグルタミルトランスペプチダーゼの発現は肝臓癌の初期マーカーであり、肝細胞を37℃で培養すると誘導される(Edwards, Cancer Res., 42, 1107-1115, 1982)。図8は、表現型マーカーは保存中は生じないが、37℃で48時間培養後には明らかに生じることを示す。保存後の細胞を培養すると、単離されたばかりの細胞の場合と同一時間にわたって、γ−グルタミルトランスペプチダーゼの誘導を引き起こすことは興味深い。これは、それらの機能が保存によっても維持されていたことを示し、細胞は、その後37℃で培養されると、結局は単離されたばかりの細胞と同様に作用することを示す。
【0084】
6.明らかに、「長期」表現型変化(例えばγ−グルタミルトランスペプチダーゼの誘導)は防止される。しかしながら表現型変化は、異なる速度で起こる。急激な変化が、保存系において依然として起こることが考えられた。おそらくは、早期表現型変化はシトクロムP450における低下であり、これは、毒性試験における肝細胞の長期培養の値を最終的に低減する。シトクロムP450およびより安定なシトクロムb5のレベルに対する種々の形態の培養の作用を比較した。予測どおり、慣用的培養によって、シトクロムP450のレベルは急激に低下した(図9a)。しかしながら保存モデルによっては、シトクロムb5のレベルとほとんど等価の高レベルのシトクロムP450を保持した(図9b)。
【0085】
7.in vivo環境に関連したさらなる試験と同様に、シトクロムP450のイソ酵素プロフィールは、保存手法により変更されない。図10は、保存手法によって特異的シトクロムP450イソ酵素1A1が維持されることを例証する。
【0086】
実施例6
代謝は保存条件下で継続する
低温保存と異なり、細胞は、本発明のゼラチンゲル中での保存中は仮死状態ではない。何らかの代謝が持続するが、速度は非常に遅い。これが事実であることを実証するために、長期にわたってモニタリングし得る方法が必要とされた。タンパク質合成測定は、標識放射性同位元素および/または新規合成タンパク質の代謝回転における消耗のために比較的短時間にわたり測定できるに過ぎない。しかしながらタンパク質分解測定は、はじめにタンパク質中に取り込まれた(再利用を防止するため)増大レベルの非標識物質の存在下で、長時間にわたってすることができる。測定は、細胞中のトリクロロ酢酸不溶性物質の損失と、培地中のトリクロロ酢酸可溶性物質の発生の両方に関してなされ得る。図11aおよび11bは、正常培養中および保存系における37℃での、同一の「長期存続」タンパク質のタンパク質分解速度を示す。皿に2時間付着させることによる保存細胞の収集というより、保存マトリックスから直接、保存細胞を収集した。これは、ゲルを37℃に20分間加熱することにより(非加水分解)、または水性分散液により(加水分解)実行した。その結果生じた細胞懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットおよび上清を、それらの放射能含量に関して別個に分析した。
【0087】
本発明のゼラチンゲルを用いた保存により、タンパク質の半減期が20倍に増大した。両条件下で、トリクロロ酢酸不溶性形態から放出される放射能は、トリクロロ酢酸可溶性分画中に回収される放射能により完全に説明され得る。したがって細胞死は、両組の条件下では最小であった。これは、37℃において、細胞のタンパク質代謝は定常状態にあり、保存中に低減したタンパク質含量はわずかに過ぎなかったことを示した総タンパク質測定により立証された。タンパク質分解は、エネルギー依存性過程である。保存中にタンパク質分解速度は変化せず、このことは、測定時間中に有害作用が起きなかったことを示す。
【0088】
実施例7
細胞形状は維持される
細胞形状は、細胞機能に本質的に関連する。37℃で培養中における、表現型の変化が細胞形状の変化に関連することを実証する試験を、本発明者等は実施した。多数のその他の試験も、細胞機能が保持される場合にはin vivo細胞形状が維持されるという重要性を指摘した。本発明のゼラチンゲルを用いて培養された細胞が球形形状を維持することを示す図12を参照されたい。
【0089】
実施例8
血清、栄養素またはホルモンの非存在下で保存中の細胞生育可能性
調査研究目的で、細胞機能に及ぼすそれらの作用を試験するために、因子に細胞を曝露するのが望ましい場合があり、例えば、誘導プロフィールを試験するために細胞はホルモンに曝露される。細胞が試験前に曝露される場合には、試験の作用因子は無効であり得る。このことに留意して、種々のゼラチンゲル構成成分が、保存能力に及ぼす効果を、セラチンゲルの構成をできるだけ簡素化するという潜在的目的で調べた。図13は、3つの重要な構成成分、すなわち、血清、栄養素またはホルモンのうちの1つを省略した場合に、細胞生育可能性が受ける影響を示す。細胞生育可能性を、ゼラチンゲルの構成成分が完全補足物を含有している場合の細胞生育可能性と、時間との関係で比較している。
【0090】
この試験は、系の安定性を明らかにし、非常にシンプルな組成を有するゲルの開発を可能にする。
【0091】
実施例9
一次腎臓近位尿細管細胞保存
肝細胞は多数の有益な特性を有するが、培養中の多数の細胞とは、少なくとも1つの明白な相違を有する。in vitroでは、肝細胞は成長能力が不十分であり、単離されたばかりの細胞は継代培養により維持することができない。細胞成長に及ぼす保存系の作用を評価するために、一次腎臓近位尿細管細胞を用意した。結果として、近位尿細管細胞は、同一手法を用いることにより、本発明のゼラチンゲルを用いて保存できることがわかった。この細胞型のマーカー酵素、例えばアルカリホスファターゼおよびγ−グルタミルトランスペプチダーゼは、少なくとも1週間、単離たれたばかりの調製物のレベルで維持される。当該細胞は、重炭酸塩の無い保存培地中で維持される。単離された細胞の生育可能性は、トリパンブルー排除により示される。尿細管細胞の生育可能性は、低張培地中に尿細管を入れることにより実証される。最初に小気胞形成が尿細管の末端で観察されるが、後に、それらに沿って小気胞が生じる。小気胞の発生後、尿細管中の細胞はトリパンブルーを取り込み始める。保存近位尿細管調製物は、肝細胞の場合とは、1つの差異を示す。近位尿細管細胞は、細胞を洗浄することによりゼラチンが除去されない限り、支持体に付着しない。37℃で細胞が付着した後、細胞は重炭酸塩補足培地中で正常に成長して、単離されたばかりの近位尿細管細胞と同一の速度で集密的細胞単層を形成する。保存手法は、細胞成長に有害作用を及ぼさない(データは示されていない)。
【0092】
実施例10
ゼラチン含有ゲルの物理機械的性質
加水分解ゼラチンゲルの物理機械的性質は、非加水分解ゼラチンゲルの性質とは異なる。加水分解ゼラチンゲルは、非加水分解ゼラチンゲルよりも低い温度で融解する。さらに加水分解ゼラチンゲルは、過剰量の水性培地(例えば細胞培地)の添加により分散され得る。非加水分解ゼラチンゲルは、加熱過程を用いた場合に分散され得るだけである。
【0093】
加水分解ゼラチンゲルは、制御条件下で、天然ゼラチンの熱処理により形成される。その結果生じたゼラチンの分子的性質における変化は、TCAによる沈殿に対するゼラチンの耐性の変化により明示される(図14)。
【0094】
実験を通して、加水分解ゼラチンは合成細胞培養基質(この場合はプリマリア(Primaria)(登録商標))に肝細胞が付着するのを阻害することが判明した。図15は、阻害レベルがほぼ100%であることを明示する。水性収集(すなわちゲルを消散するための水性媒質を用いての細胞の回収)および色素排除試験は、細胞が生育可能であることを明示した(水性収集は非加水分解ゼラチンゲルに対してはできないということに留意していただきたい)。阻害は、細胞が血清の存在下で培養される場合には失われる。付着が抑制化された細胞も、完全血清含有培地中で再培養すれば、迅速に付着することができた。
【0095】
種々の程度に加水分解されたゼラチンのSDS−PAGE分析(図16参照)は、その組成に関するより詳細な研究を可能にした。ゼラチンポリペプチドの分布は、TCA試験と同様に、変化し、広範化し、断片化して、小分子量(MW)を有するポリペプチドの頻度の増大が認められる。さらに、主要MWは、非加水分解ゼラチンにおける大型95KDa断片から、加水分解ゼラチンにおける小型30KDa断片に変化することも認められた。
【0096】
これらの小型ポリペプチドは、ゲルがより弱くなる原因となり、ゲルを低温で融解させる。小型ポリペプチドは、水性培地による分散に対するゲルの感受性の原因ともなる。しかしながらより重要なのは、加水分解ゼラチンを用いるゲルが、細胞生育可能性および機能の保持に関して、非加水分解ゼラチンを含有する保存ゲルよりも優れている理由をも、小型ポリペプチドが説明し得ることである。
【0097】
実施例11
種々の配置で保存される肝細胞の生育可能性
組成を変える(実施例8参照)だけでなく、図17に示したように配置(すなわち、細胞と保存ゼラチンゲルの関係)を変えた保存ゼラチンゲルを用いて、肝細胞を保存した。
【0098】
市販の75ブルームゼラチンは、細胞傷害性であり、大きな形態学的異常を引き起こすため、肝細胞の保存のために用いることができない。
【0099】
オートクレーブ処理したゼラチンを使用して細胞を保存することにより、95℃(2時間)処理したゼラチン中で保存した場合と同一の結果が得られた。
【0100】
図17から得られる結論は、非加水分解ゼラチンサンドイッチが、細胞の保存において、非加水分解スラリーまたは非加水分解ゼラチン被覆より優れているというものである。これは、均一単層を作る(細胞堆積を回避する)能力またはその改良された分散特性によるものであり得る。非加水分解スラリーまたは被覆における明らかな制限は、対応する加水分解法においては存在しない。いずれの形態の加水分解ゲルも同様の特性を有するが、95℃(2時間)で熱処理されたゼラチンだけが、細胞単層を支持するのに十分に安定であるゲルを形成する。オートクレーブ処理されたゼラチンゲルは、水性媒質により容易に消散され過ぎる。95℃支持体の利点は、保存中に培地を変化させることができる(おそらくは新たな細胞安定剤を添加する)点である。これにより、長期保存における低温損傷の原因の研究が可能になる。
【0101】
熱処理によって、ゲル強度が漸進的に弱まることが観察される。非加水分解および80℃処理ゼラチンゲルはともに、細胞を放出するためには加熱過程が必要である。対照的に、95℃処理ゲルおよびオートクレーブ処理ゼラチンはともに、水性媒質または加熱により消散され得る。80℃処理ゼラチンの可溶化は、非加水分解ゼラチンより短い加熱過程で可溶化できるのと同様に、オートクレーブ処理ゼラチンゲルは水溶液によってより容易に分散され、一方、95℃ゲル(2時間)はより強く、水性媒質中で分散する前にリミングを要する。
【0102】
実施例12
ゼラチンゲルの加熱および冷却速度
図18は、10℃から37℃への、またその逆の非加水分解ゼラチンゲルの加熱/冷却速度を示す。非加水分解ゼラチンを含む60mmプレートの縁部に熱電対を置いて、実験を実施した。温度変化が完了するのに少なくとも14分かかることは明らかである。これはプレーティングに要する時間(2時間)より非常に短い。プレートを挟んで温度勾配が存在し、これがゼラチン固化前に細胞の分布に実質的作用を及ぼすと思われる。
【0103】
このような温度勾配が存在することを立証するために、96ウエルマイクロプレートを用いた。非加水分解ゼラチンを各ウエルに添加し、ここで熱電対をそれぞれのウエル中に正確に配置した。図19aおよび19bは、異なるウエル中でのゼラチンの冷却速度を示す。中央のウエルは外側のウエルよりゆっくり冷却することは明らかであり、この温度勾配により、細胞の不均一分布が非加水分解ゲルスラリー中で引き起こされ、堆積作用が生じたことを意味する。加水分解ゼラチンの融点が低下したことは、温度差の作用が最小になったことを意味する。
【0104】
非加水分解法の保存特性と比較して加水分解ゼラチンスラリーおよび被覆法の保存特性がより良好である原因は、良好な拡散特性、および/または細胞堆積の回避によるためであることを、図18および19が示唆する。肝細胞の保存において拡散が重要な作用であることをさらに論証するために、グリセロール(0.5M)が当該系に含まれる場合に(低温保存における場合のような細胞を保護する能力を調べるために)、グリセロールが細胞傷害性であることは注目に値する。グリセロールは、細胞の生育可能性を実質的に低減する(7日後に10%残存)。グリコールの明白な細胞傷害性向は排除できないが、その粘性は確実に細胞が拡散するのを制限する。
【0105】
上で引用した文書はすべて、それらの記載内容が参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加水分解ゼラチンを含むゲルの1層上に保存される細胞を模式的に示す。
【図2】 加水分解ゼラチンを含む2つのゲル層の間に保存される細胞を模式的に示す。
【図3】 加水分解ゼラチンを含むゲルの1層内部に保存される細胞を模式的に示す。
【図4】 固体支持体上に固定され、加水分解ゼラチンを含むゲルの1層で被覆される細胞を模式的に示す。
【図5】 10℃での低温保存後のラット肝細胞の回復を示す。その値は、2時間後に付着した細胞中にその後見出された酵素活性を指す。
【図6】 タンパク質合成速度に及ぼす低温保存の作用を示す。
【図7】 保存後のチロシンアミノトランスフェラーゼ±ホルモン添加の活性を示す。(■)基本培地、(□)基本培地+デキサメタソンおよびジブチリルcAMP。
【図8】 肝細胞培養中のγ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性を示す。肝細胞は連続保存される(●)か、または保存96時間後に37℃で再培養された(○)。γ−GT誘導プロフィールは、単離されたばかりの肝細胞が予備保存なしで培養された場合と同一である。
【図9】 9aはシトクロムP450およびシトクロムb5の肝細胞レベルに対する培養(37℃)の作用を示し、9bはシトクロムP450およびシトクロムb5の肝細胞レベルに対する保存の作用を示す。
【図10】 保存肝細胞におけるシトクロムP4501A1の維持を示す。
【図11】 11aは37℃で培養された肝細胞における細胞内タンパク質分解を示し、11bは保存肝細胞における細胞内タンパク質分解を示す。トリクロロ酢酸不溶性放射能(■)およびトリクロロ酢酸可溶性放射能(□)。
【図12】 in vitroでの肝細胞の形態を示す。単離されたばかりの細胞(a)は、球形形状を有する。慣用的培養では、肝細胞は急速に薄く広がり、24時間以内に、核が歪み、細胞が非常に平坦になる(b)。低温下で保存ゼラチンゲルを用いた場合は、球形形状が保持され(c)、in vivo状態に近づく。細胞は、保存中この形状を保持する。
【図13】 血清(■)、栄養素(●)またはホルモン(□)の非存在下での保存中の細胞生存可能性を示す。
【図14】 天然ゼラチン、熱加水分解した天然ゼラチンおよび75ブルームゼラチンのTCA可溶性含量を示す。ゼラチン溶液を、示した期間中、37℃および40℃(●)、50℃(▲)、60℃(◆)、70℃(□)、80℃(■)および95℃(×)で加熱した。オートクレーブ処理天然ゼラチン(---)(上線)および75ブルームゼラチン(---)(下線)のTCA可溶性タンパク質含量も示す。
【図15】 非加水分解または加水分解ゼラチンを含有する保存ゲルからの放出の2時間後の、37℃でのプリマリア(Primaria)(登録商標)プレートへの肝細胞の付着を示す。第一カラムは、加熱(37℃)により放出され、付着のための時間が2時間であった細胞を示す。第二カラムは、10℃で余分量のL−15培地を添加することにより加水分解保存ゲルから回収され、次に遠心分離/ペレット化により懸濁液から分離された細胞の生育可能性を示す。血清は存在する(+ve血清)か、またはゲルから省かれた(−ve血清)。
【図16】 天然ゼラチン(a);80℃(2,5時間)熱処理ゼラチン(b);95℃(2.5時間)熱処理ゼラチン(c);およびオートクレーブ処理天然ゼラチン(d)のSDS−PAGE。
ゲルa:(i)MW:95KDa
ゲルb:(i)MW:95KDa;(ii)MW:30KDa
ゲルc:(i)MW:30KDa
ゲルd:(i)MW:30KDa
【図17】 異なる配置(ゲルに対して)で、および/または非加水分解ゼラチンまたは加水分解ゼラチンから成るゲル中で保存された肝細胞の生育可能性を示す。データは、各時点での非加水分解ゼラチンサンドイッチ中での生育可能細胞(LDH活性で判断した)の数のパーセンテージとして表される。天然ゲル/細胞スラリー(−◆−)(非加水分解ゼラチンのゲル中に懸濁された肝細胞);前付着肝細胞を天然ゲルで被覆(−■−)(非加水分解ゼラチンのゲルにより被覆される前に、下層に付着された肝細胞);加水分解ゼラチンスラリー(−×−)(95℃で加水分解された非加水分解ゼラチンのゲル中に懸濁された肝細胞);75ブルームスラリー(−●−)(75ブルームゼラチン(Sigmaから市販)から成るゲル中に懸濁された肝細胞);前付着肝細胞を加水分解ゲルで被覆(−○−)(加水分解ゼラチンのゲルにより被覆される前に、下層に付着された肝細胞)。
【図18】 60mmコーニング(Corning)プレート内の非加水分解ゼラチンを含有する保存ゲルの加熱および冷却プロフィールを示す。
【図19】 冷却段階(10℃)中の96ウエルマイクロプレートの異なるウエル内の温度プロフィールを示す。各ウエルの相対位置に関しては図19b参照。

Claims (17)

  1. 単離された肝細胞の保存方法であって、
    ゼラチンを90〜100℃の温度で1〜2.5時間加熱することにより生成した加水分解ゼラチンを1.5%(w/v)含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲルに細胞を付着させ、
    10℃の温度で細胞を培養することを含む方法。
  2. 前記ゲルは細胞培地および加水分解ゼラチンを含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記加水分解ゼラチンは、ブタ皮膚からの加水分解A型ゼラチンである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ゲルは、グルコースおよびヘペスを含むレイボヴィッツ(Leibovitz)培地中に、1.5%(w/v)の加水分解ゼラチンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記細胞はゲルの表面に付着され、液体培地で被覆される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記細胞が前記ゲルの2つの層の間に保持されるように、該細胞は第一のゲル層の表面に付着され、第二のゲル層で被覆される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記細胞は、前記ゲルが固化する前に該ゲルと混合されて、該ゲルが固化した場合に該ゲル中に固定されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記細胞は固体支持体に付着され、次に前記ゲルの層で被覆される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記固体支持体は培養皿、ウエルまたはカラムである、請求項記載の方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法に用いるための加水分解ゼラチンを含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲル。
  11. 単離された肝細胞の保存方法であって、該細胞がゲルの2つの層の間に保持されるように、該細胞を第一のゲル層の表面に付着させ、そして該細胞を第二のゲル層で被覆すること、および10℃の温度で細胞を培養することを含む方法であって、該ゲルの層の一層が非加水分解ゼラチンを含み、他の一層がゼラチンを90〜100℃の温度で1〜2.5時間加熱することにより生成した加水分解ゼラチンを1.5%(w/v)含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲルからなる方法。
  12. 前記第一のゲル層は前記加水分解ゼラチンを1.5%(w/v)含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲルからなり、前記第二のゲル層は非加水分解ゼラチンを含む、請求項11記載の方法。
  13. 前記第一のゲル層は非加水分解ゼラチンを含み、前記第二のゲル層は前記加水分解ゼラチンを1.5%(w/v)含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲルからなる、請求項11記載の方法。
  14. 少なくとも2〜3日毎に1回、前記細胞を1〜16時間、20〜37℃の温度にさらすことをさらに含む、請求項1〜9、11〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記温度上昇により、ゼラチンゲルの融解を引き起こし、
    前記温度が上昇している間に、前記細胞を懸濁培養に移し、次に保存し続けるためにゼラチンを含有するゲルに付着させることをさらに含む、請求項14記載の方法。
  16. 固体支持体であって、その上に第一のゼラチンゲル層が形成され、該第一のゼラチンゲル層の上に第二のゼラチンゲル層が形成され、これらのゼラチンゲル層の少なくとも一つはゼラチンを90〜100℃の温度で1〜2.5時間加熱することにより生成した加水分解ゼラチンを1.5%(w/v)含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱いゲルからなり、2つのゼラチンゲル層の間に細胞が保持され、10℃の温度で培養されるための固体支持体。
  17. ゼラチンを90〜100℃の温度で1〜2.5時間加熱することにより生成した加水分解ゼラチンを1.5%(w/v)含み、水溶液の添加により分散されるほど十分に弱い液化ゲルで肝臓またはその組織断片を灌流することを含む、単離された肝臓またはその組織断片の保存方法であって、
    灌流後、肝臓またはその組織断片10℃の温度で保存され、前記液化ゲルは固化する方法。
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