JP4128744B2 - 抄紙機または板紙抄紙機で汚染された表面に対する表面処理工程 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は抄紙機/板紙抄紙機または仕上機で汚染されがちな部品または表面に対する表面処理工程に関するものである。
【0002】
抄紙機、板紙抄紙機およびそれらの仕上機中には、多数の表面が存在し、それらの汚染はコストや生産上の問題の原因となる。汚染であると分類可能な、固体物、充填物、粘着物、ピッチその他の粒子を含む汚染物は、例えばヘッドボックス中でヘッドボックスの流れ面に付着し、流れを所要の層流から乱流に変えてしまう原因になりがちである。ワイヤ部では、様々な面が汚染物を拾集し、それらはウェブ上に落下してウェブ内に乱れを生じる原因となり得る。コーティング装置のスプレッダロールは、ロール上に粘着性混合物を拾集し、これによりロールが汚染されて次第に使用不能になる。汚染されたスプレッダロールの洗浄は非常に労力を要する作業であり、コスト増加の原因となる。カレンダロールが汚染されると、この汚染により生産上の問題を引き起こす。ドクタや水噴流を用いたり、休止中に頻繁に洗浄したりといった機械的な手段により汚染を低減する試みがなされて来た。表面を反汚染性とするための化学的手段を見出す試みもなされ、例えばフッ化処理を用いた。フィンランド特許出願第941620号には、加圧研摩を用いたロール面のフッ化処理が記載されていて、この場合にはフッ化プラスチック片が回転しているロール表面に圧接され、この結果フッ素がロール表面に付着する。フィンランド特許出願第950849号には、ポリマー状の表面処理剤を用いる抄紙機中の表面処理、特にロール面の処理が示されていて、この処理剤では通常のポリマーの基本ポリマー鎖がハロゲンを含む化合物で変形されている。上記の方法には、処理される表面にフッ化化合物を十分に堅く付着させることができないという欠点がある。
【0003】
本発明の目的は抄紙機/板紙抄紙機およびそれらの仕上機に適する表面処理工程を提供することであり、本工程によれば、部品や表面の汚染を相当程度に低減可能であり、汚染された表面を長期間にわたって清浄に保つことができる。更に、汚染が発生しても、汚染物は表面に堅く付着せず、容易に除去することができる。
【0004】
本発明に係る方法は特許請求の範囲に記載の特徴を有する。
【0005】
従来技術による方式の諸問題は、処理される表面に堅く付着させることができる低表面エネルギーフッ素化合物で所要の表面および部品を表面処理することによって、回避することができる。フッ素化合物が塗被される表面は、同時に研磨材によって表面のRa値を変化させることなく研磨することができる。研磨の目的は表面を軽く分解することであり、これにより表面を活性化することができる。この方法により非常に薄いフィルム状の低表面エネルギーフッ素化合物の層を表面上に設定する。形成された層の厚さはおおよそフッ素化合物分子の長さに等しく、1〜50,000nmの範囲で変更可能である。低表面エネルギーフッ素化合物は有機化合物であり、表面または表面のコーティングに含有されたクロムまたはアルミニウム原子などの金属原子と化学的に反応させることができ、これにより金属錯体が形成され、更に/または化合物が物理的/原子的な吸着効果によって自由表面上で移動不能となる。金属錯体の場合には、結合は非常に強固なイオン結合となり、一方で物理的吸着作用により有機物質は自由表面上に非常に薄い層として拡散し、低表面エネルギーフッ素化合物の層を形成し、この層は表面の水分臨界表面エネルギーが非常に低いため、水をベースとする溶液で置換することができない。金属錯体の形成は冶金学的に純度の高い表面の存在を必要とし、この場合、酸化物層や汚染が表面上に存在することは許されない。物理的吸着作用はまた、適当な表面電荷の媒介による機能である。ある種の低表面エネルギーフッ素化合物は、ステンレススチール中に存在するクロム原子と化学的に反応させることができるため、これにより金属錯体を形成する。例えばステンレスチールの表面上に形成された層は、1μm以下と非常に薄く、金属錯体結合が非常に強固であるため、非常に摩耗しにくい。自由クロム原子がフッ素化合物と反応できるようにするため、ステンレスチールの表面は不活性層を除き清浄化しなければならない。これが表面処理/研磨の組合わせ工程を採用している理由である。
【0006】
例えばセラミックコーティングを施したロールなどのセラミック表面を表面処理する場合は、セラミックの多孔性により表面処理は二段階に分けて行うことが望ましい。新しいロール表面、すなわち製造後の余熱がある表面上に低表面エネルギーフッ素化合物を塗被すると、化合物は表面の細孔中に浸透し、後工程での研磨乳剤による汚染を防ぐ。第二段階では、低表面エネルギーフッ素化合物を補助剤として使用するセラミックコーティングの仕上研摩を行うことができる。研磨効果により、セラミック表面中のCrおよびAl酸化物からクロムまたはアルミニウム原子が自由状態となり、低表面エネルギーフッ素化合物との結合を形成することが可能になる。フッ素化合物、すなわちフッ素表面活性剤は、熱的および化学的両面の厳しい条件に非常によく耐えることができる。このようなフッ素化合物を使用することにより、50mN/m以下、望ましくは20mN/m以下で10〜16mN/mが最適であるような極めて低い表面エネルギーを表面内に作りだすことが可能となるが、これはフッ素の水素に対する非常に高い電気的負性によって生じるものである。
【0007】
これらの低表面エネルギーフッ素化合物は直線状化合物であり、その中では疎水性の鎖部分が炭素−フッ素構造から成り、これは汚染に関して非常に反撥性があり、優れた放出性を有する。これらのフッ素化合物は疎水性鎖Rf=F(CF2CF2)3 8と親水性部分から構成されている。
【0008】
次の表1に、本発明に係る工程に適するいくつかの低表面エネルギーフッ素化合物を示す。
【0009】
【表1】
Figure 0004128744
Rf=F(CF2CF2)3 8
xは整数である。
【0010】
本発明に係る工程に適する低表面エネルギーフッ素化合物は望ましくは表面活性フッ素化合物1であり、その化学式はRfCH2CH2SCH2CH2CO2Liである。この化合物中で、リチウム(Li)がクロムまたはアルミニウムなどの原子状金属と反応して不完全原子価の結合を形成する。これが、処理される表面に化合物が結合され、非常に低い表面エネルギーを有する化学的に不活性な層が形成される理由である。
【0011】
本発明は製紙工程で汚染されクロムまたはアルミニウムを含有するすべての対象物の表面処理に適している。本発明に係る工程によれば、結合要素としてクロムまたはアルミニウムを含有するスチール表面、一般的には金属表面をコートすることが可能であり、新しい表面をコートすることも使用済みの表面を再コートすることも可能である。更に、本工程はAlまたはCrを含有するセラミック表面のコーティングにも適している。また充填材としてCrまたはAl化合物を含有するポリマー表面も、本発明に係る方法により処理することができる。塗被例としては、ヘッドボックス中の流れ面、クロムメッキされたスプレッダロール、クロムメッキされたアプリケータバー(SymSizer、バルメット社製)、クロムメッキされたカレンダロール、プレートのセット、サクションロールのマントルの内面、セラミックカレンダロール、セラミックセンタロール、ポリマーコートされたロール、またはAlもしくはCr化合物やその等価物を含有するその他の対象物をあげることができる。
【0012】
新しい金属表面に化合物を塗被するのは、研磨材により研磨するのと同時にすることが望ましい。使用済みの表面はコーティングの前に清浄化しなければならないが、これにより汚染層や酸化物等を機械的に除去し、更に/または表面を化学的手段(例えばアルカリ洗浄)または電気化学的手段(例えば電気化学的還元)により活性化することができる。
【0013】
新しいセラミック表面はロールの製造直後に、例えば研磨材加工の機械的処理と同時に表面処理することが望ましい。表面処理および必要に応じての研磨処理は、表面処理剤の所要の層厚に応じて1回ないし数回繰返して行うことができる。
【0014】
表面処理剤の塗被は普通に用いられる噴霧、吹付、ブラシ塗または手塗などのいかなる手段でも行う。表面活性フッ素化合物の濃度は0.1〜100%であるが、25%とするのが望ましい。
【0015】
本工程により処理された表面はその清浄度を非常によく保つ。処理された表面は清浄化が容易であり、従来技術に比し清浄化を要する頻度が非常に少ない。ロールの場合、本処理方法を用いることにより、センタロールからのウェブの分離に効果を与えることができ、この場合、ウェブの引出し差が小さいこと、走行性が良くなること、紙の品質が改善されること等が達成される。このように、著しい工程技術上の利点が得られる上に、汚染により機械を停止しなければならない回数も少なくなる。また、本表面処理は室温下で、いわゆる現場表面処理として実施が可能であり、この場合は部品や装置を使用現場から切り離す必要がない。更に、本工程では、不便であり現場によっては不可能でさえある前処理である砂吹きが不要になる。
【0016】
本発明を以下の実施例により例示するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
硬質クロムメッキ部品の表面処理
硬質クロムメッキ部品上へのコーティング試験を実施し、前記部品の表面は、様々な粒度(120、220、500および1000番)の研磨紙でRfCH2CH2SCH2CH2CO2Liとともに研磨し、ここでRf=F(CF2CF2)3 8である。参照用テスト部品は単に部品をRfCH2CH2SCH2CH2CO2Li液中に浸積することにより作成した。研摩および浸積後に部品を水で洗浄した。
【0017】
研摩および非研摩部品について、水およびメチレンヨウ化物により接触角を測定し、接触角から表面エネルギー値を調和平均および幾何平均手法により計算した。
【0018】
研摩部品について水を用いて測定した接触角の値は95〜115度(粒度100番が最小、粒度1000番が最大)の間で変化し、単に浸積したのみの部品について水を用いて測定した接触角は、およそ65〜70度であった。これに対応して、表面エネルギーの値は研摩部品について16〜22mN/mであり、非研摩部品について40〜45mN/mであった。このように、表面処理に関連して行われた機械的処理が表面の疎水性を増大させた。
実施例2
表面処理部品の水中曝露
同様の方法で用意された部品を低温の流水に曝し(48時間)、試験後に表面エネルギーを測定した。試験後の表面エネルギーは、研摩部品および非研摩部品双方とも依然低レベルに保たれていた。
実施例3
表面処理部品の油中曝露
同様の方法で用意された部品を高温(120℃)の鉱油に曝した(24時間)。試験後に、表面をアルコールで洗浄した。試験後の表面エネルギーは、研摩部品および非研摩部品双方とも依然低レベルに保たれていた。

Claims (5)

  1. 抄紙機/板紙抄紙機または仕上機におけるクロムまたはアルミニウムを含有する表面の処理工程において、低表面エネルギーフッ素化合物を表面に付着させる前または同時に、処理される表面を、機械的、化学的または電気化学的に活性化し、低表面エネルギーフッ素化合物を該表面上に塗被し、該化合物を表面内のクロムまたはアルミニウム原子に付着させ、前記低表面エネルギーフッ素化合物は、
    R f CH 2 CH 2 SCH 2 CH 2 CO 2 Li
    (R f CH 2 CH 2 O)P(O)(ONH 4 ) 2 (R f CH 2 CH 2 O) 2 P(O)(ONH 4 )
    (R f CH 2 CH 2 O)P(O)(OH) 2 (R f CH 2 CH 2 O) 2 P(O)(OH)
    R f CH 2 CH 2 O(CH 2 CH 2 O) X H 、または
    R f CH 2 CH 2 SO 3 H であり、
    ここで R f F(CF 2 CF 2 ) 3 8 であり、xは整数であり、前記フッ素化合物は望ましくは、 R f CH 2 CH 2 SCH 2 CH 2 CO 2 Li であることを特徴とする処理工程
  2. 請求項1に記載の処理工程において、表面活性フッ素化合物を、金属表面もしくはセラミック表面上に、または混合物/充填材を含有するポリマー表面上に塗被することを特徴とする処理工程。
  3. 請求項1または2に記載の処理工程において、前記低表面エネルギーフッ素化合物の塗被に関連して、前記表面を同時に研磨材により研摩処理し、または前記低表面エネルギーフッ素化合物の塗被後に前記研摩処理を実施することを特徴とする処理工程。
  4. 抄紙機/板紙抄紙機または仕上機におけるクロムまたはアルミニウムを含有する部品の表面処理に用いる、低表面エネルギーフッ素化合物の使用方法において、該記低表面エネルギーフッ素化合物は、
    R f CH 2 CH 2 SCH 2 CH 2 CO 2 Li
    (R f CH 2 CH 2 O)P(O)(ONH 4 ) 2 (R f CH 2 CH 2 O) 2 P(O)(ONH 4 )
    (R f CH 2 CH 2 O)P(O)(OH) 2 (R f CH 2 CH 2 O) 2 P(O)(OH)
    R f CH 2 CH 2 O(CH 2 CH 2 O) X H 、または
    R f CH 2 CH 2 SO 3 H であり、
    ここで R f F(CF 2 CF 2 ) 3 8 であり、xは整数であり、前記フッ素化合物は望ましくは、 R f CH 2 CH 2 SCH 2 CH 2 CO 2 Li であることを特徴とする使用方法
  5. 請求項に記載の使用方法において、処理される対象物が金属表面、セラミック表面、または混合物/充填材を含有するポリマー表面であることを特徴とする使用方法。
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