JP4127995B2 - 複合誘電体材料および基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波領域での使用に好適な複合誘電体材料および基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信情報の急増に伴い、通信機の小型化、軽量化、高速化が強く望まれている。特に、自動車電話、デジタル携帯電話等の携帯移動体通信、衛星通信に使用される電波の周波数帯域はメガからギガHz帯(以下、「GHz帯」という)の高周波帯域のものが使用されている。
使用される通信機器の急速な発展の中で、匡体および基板、電子素子の小型高密度実装化が図られているが、高周波帯域に対応した通信機器の小型化、軽量化をより一層推進するためには、通信機器に使用される基板等の材料はGHz帯において高周波伝送特性が優れた(誘電損失が小さい)ものでなければならない。
ここで、誘電損失は周波数と基板の誘電率εと誘電正接(以下tanδと記載する)の積に比例する。よって、誘電損失を小さくするためには基板のtanδを小さくしなければならない。また、基板中では電磁波の波長が1/√εに短縮されるため、誘電率εが大きい程基板の小型化が可能である。
以上のことから高周波帯域で使用される小型の通信機器、電子機器、情報機器に用いる回路基板としては、誘電率εが高く、かつtanδが小さい材料特性が要求されている。
【0003】
このような回路基板の材料としては、無機材料として誘電体セラミクス、有機材料としてフッ素樹脂等が用いられている。さらに、有機材料と無機材料の複合体として熱硬化性樹脂とチタン酸バリウム等の誘電体セラミクスを混合してなる複合基板も用いられている(例えば特開平1−245053号、特開平4−307788号公報等参照)。
ところが、上記誘電体セラミクスからなる基板は、誘電率ε、tanδの特性は優れているが寸法精度、加工性に難点があり、脆いため欠けや割れが生じやすいという問題点があった。他方、樹脂等の有機材料からなる基板は、成形性及び加工性に優れtanδも小さいという利点はあるが、誘電率εが小さいという問題があった。このため、近年、両者の利点を有する基板を得るため、チタン酸バリウム等の誘電体セラミクスを有機高分子樹脂と混合した複合基板が提案されている。
しかしながら、従来の複合基板は、誘電体セラミクスに比べ寸法精度、加工精度が改善され、また有機基板に比べ誘電率εが改善されているものの、GHz帯の高周波帯域において、誘電率εは3程度と低く、tanδは50×10-4程度と高く、いずれも不十分であった。
【0004】
こうした問題を解決すべく、特開平8−69712号公報は、BaO−Nd23 −TiO2−Bi23−Mn系の誘電体セラミクスと有機高分子樹脂を混合してなる樹脂−セラミクス複合材を提案している。この特開平8−69712号公報記載の樹脂−セラミクス複合材によれば、低いtanδ、つまり高いQ値(ここで、Qはtanδの逆数であり、Q=1/tanδ)を得ることができるとともに、GHz帯の高周波帯域において4以上の誘電率εを得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、今後も使用周波数帯はどんどん高周波帯域へ移行していくことを考慮すると、GHz帯の高周波帯域において、より高い誘電率εを得ることができる複合誘電体材料が望まれる。
そこで本発明は、高いQ値を維持しつつ、GHz帯の高周波帯域において9以上の高い誘電率εを有するとともに、成形性及び加工性に優れ、小型機器への対応が容易な複合誘電体材料およびこれを用いた基板を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、複合誘電体材料の高周波特性を改善すべく、誘電体セラミクスの組成について様々な検討を行った。その結果、xBaO−yNd23−zTiO2で表される誘電体セラミクスにおいて、x、yおよびzの最適な範囲を知見した。すなわち、本発明は、xBaO−yNd23−zTiO2と表したとき、6.67<x<21.67(mol%),6.67<y<26.67(mol%),61.66<z<76.66(mol%),y>−2x+40,x+y+z=100mol%となる誘電体セラミクスが、ポリビニルベンジルエーテル化合物中に分散していることを特徴とする複合誘電体材料であって、誘電体セラミクスとポリビニルベンジルエーテル化合物との合計を100vol%としたとき、誘電体セラミクスの含有量が20vol%以上70vol%未満であり、誘電体セラミクスにおいて、BaOの一部を、SrOで30mol%未満置換、またはCaOで50mol%未満置換、またはMgOで30mol%未満置換したことを特徴とする複合誘電体材料を提供する。本発明による複合誘電体材料によれば、高いQ値を維持しつつ、2GHzという高周波帯域において9以上の高い誘電率εを有することが可能となる。誘電体セラミクスの組成は12≦x≦20(mol%),12≦y≦17(mol%),64≦z≦75(mol%)であることが好ましい。
【0007】
本発明の誘電体セラミクスにおいて、BaOの一部を、SrOで30mol%未満置換、またはCaOで50mol%未満置換、またはMgOで30mol%未満置換することにより、誘電率εおよびQ値を所望の範囲に変動させることができるMg,Ca,Srの中で特に好ましいのがCaであり、BaOの一部をCaOで5〜40mol%置換した場合には、9.5以上の誘電率εおよび400以上のQ値(Q=1/tanδ、tanδは誘電正接)を得ることができる。
また、本発明において、有機高分子樹脂としてポリビニルベンジルエーテル化合物を使用する理由は以下の通りである。すなわち、ポリビニルベンジルエーテル化合物は、他の有機高分子樹脂と比較して、誘電率εが低く、Q値が高いという優れた電気特性を有する(ε=2.5、Q=260)。ポリビニルベンジルエーテル化合物は、こうした電気特性を有するとともに、優れた耐熱性および耐薬品性を有するとともに、吸水率が非常に低く、しかも各種材料との接着性に優れるという特徴を有する。よって、本発明における有機高分子樹脂としてポリビニルベンジルエーテル化合物を用いることにより、吸水率が非常に低く、耐熱性および耐薬品性に優れた基板を得ることができる。
【0008】
本発明におけるポリビニルベンジルエーテル化合物には、補強材を添加することができる。補強材は、機械的強度や寸法安定性を向上させる上で有効であり、特に、本発明の複合誘電体材料を用いて回路用基板を作製するにあたっては、所定量の補強材をポリビニルベンジルエーテル化合物に含有せしめることが好ましい。
また、本発明者は、誘電体セラミクスの平均粒径と、誘電率εおよびQ値は比例することを知見した。誘電体セラミクスの平均粒径は0.5〜20μmとすることが好ましく、平均粒径をこの範囲とすることにより、高いQ値を維持しつつ、2GHzで9以上の誘電率εを得ることができる。
【0009】
さらに、本発明は、BaO−Nd23−TiO2で表される誘電体セラミクス粉末と、ポリビニルベンジルエーテル化合物との混合物を硬化して得られる基板であって、誘電体セラミクス粉末の組成をxBaO−yNd23−zTiO2と表したとき、6.67<x<21.67(mol%),6.67<y<26.67(mol%),61.66<z<76.66(mol%),y>−2x+40,x+y+z=100mol%であり、誘電体セラミクス粉末とポリビニルベンジルエーテル化合物との合計を100vol%としたとき、誘電体セラミクス粉末の含有量が20vol%以上70vol%未満であり、2GHzで9以上の誘電率を有する基板であって、誘電体セラミクス粉末において、BaOの一部を、SrOで30mol%未満置換、またはCaOで50mol%未満置換、またはMgOで30mol%未満置換したことを特徴とする基板を提供する。ここで、本発明における基板とは、電子部品を搭載するための回路基板や多層基板、あるいは半導体素子を収納するための半導体パッケージ用基板等を意味する。
また、本発明における基板によれば、2GHzという高周波帯域において、基板を構成するポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(Q=1/tanδ、tanδは誘電正接)よりも高いQ値を有することができる。
さらに、本発明の基板において、誘電体セラミクス粉末の組成を12≦x≦20(mol%),12≦y≦17(mol%),64≦z≦75(mol%)とすることが好ましい。また、誘電体セラミクス粉末は、平均粒径が0.5〜20μmであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の複合誘電体材料は、誘電体セラミクスが有機高分子樹脂中に分散しており、誘電体セラミクスの組成がxBaO−yNd23 −zTiO2と表したとき、6.67<x<21.67(mol%),6.67<y<26.67(mol%),61.66<z<76.66(mol%),y>−2x+40であることを特徴としている。
次に、x,y,zの限定理由について述べる。xが6.67以下となると、誘電率εが低下する。一方、xが21.67以上となると、Q値が低下してしまう。よって、6.67<x<21.67(mol%)とする。また、yが6.67以下の場合、およびyが26.67以上の場合には、誘電率εが低下する。よって、6.67<y<26.67とする。同様に、zが61.66以下の場合、およびzが76.66以上の場合には、やはり誘電率εが低下してしまう。よって、61.66<z<76.66とする。本発明の誘電体セラミクスの組成をxBaO−yNd23 −zTiO2と表したときに、x,y,zを上記の範囲とすることによって、GHz帯域においても良好なQ値を維持しつつ、2GHzで9以上の高い誘電率εを有する複合誘電体材料を得ることができる。本発明の基板は粘着性に優れており、積層が容易である。
x,y,zの好ましい範囲は、12≦x≦20、12≦y≦17、64≦z≦75である。x,y,zの範囲をこの範囲とすることによって、9.5以上の誘電率ε(at 2GHz)および300以上のQ値を得ることもできる。
【0011】
本発明の複合誘電体材料において、誘電体セラミクスと有機高分子樹脂との合計を100vol%としたとき、誘電体セラミクスの含有量は20vol%以上70vol%未満とする。誘電体セラミクスの量が20vol%未満になる(有機高分子樹脂の量が80vol%以上になる)、基板としての寸法安定性を欠くとともに、誘電率εが低下してしまう。つまり、誘電体セラミクスを含有する効果があまりみられない。一方、誘電体セラミクスの量が70vol%以上になる(有機高分子樹脂の量が30vol%未満になる)と、プレス成形の際、流動性が非常に悪くなり、緻密な成形物が得られなくなる。その結果、水等の侵入が容易になり電気特性の劣化につながる。また、誘電体セラミクスを添加しない場合に比べて、Q値が大きく低下することもある。よって、誘電体セラミクスの含有量は20vol%以上70vol%未満とする。望ましい誘電体セラミクスの含有量は25〜65vol%、さらに望ましい誘電体セラミクスの含有量は30〜60vol%である。
【0012】
前記誘電体セラミクスにおいて、BaOの一部を他のアルカリ土類金属の酸化物で置換することができる。ここで、他のアルカリ土類金属としては、Mg,Ca,Srのうち一種または二種以上とすることができる。
BaOの一部をMgO,CaO,SrOのうち一種または二種以上によって置換することにより、Q値および誘電率εを変動させることができ、2GHzにおいて9以上という高い誘電率εを維持しつつ、Q値を向上させることが可能となる。
【0013】
BaOの一部をMgO,CaO,SrOのうち一種または二種以上で置換する場合の望ましい置換量は50mol%未満であり、より望ましい置換量は、5〜45mol%、さらに望ましい置換量は10〜30mol%である。置換量を50mol%未満とすることによって、上記の効果、すなわち、2GHzにおいて9以上という高い誘電率εを維持しつつ、Q値を向上させることができる。ところが、置換量が50mol%以上になると、Q値が著しく低下してしまう。よって、置換量は50mol%未満とすることが望ましい。より具体的には、BaOの一部をMgOまたはSrOで置換する場合の望ましい置換量は30mol%未満、より望ましくは5〜25mol%である。また、BaOの一部をCaOで置換する場合の望ましい置換量は50mol%未満、より望ましくは5〜40mol%である。
後述の実施例に示す通り、BaOの一部をCaOによって置換することが特に好ましい。BaOの一部を所定量のCaOで置換した場合には、2GHzという高周波帯域で9.5以上の高い誘電率εおよび400以上のQ値を得ることができる。
【0014】
誘電体セラミクスの平均粒径は、0.5〜20μmとする。誘電体セラミクスの平均粒径が0.5μm未満になると、高い誘電体特性、具体的にはGHz帯域において9以上の誘電率εを得ることが困難である。また、誘電体セラミクスの平均粒径が0.5μm未満と小さい場合には、有機高分子樹脂との混練がしにくいという不都合も生じ、誘電体セラミクスの粒子が凝集して不均一な混合体となるなど、取り扱いが困難となる。
一方、誘電体セラミクスの平均粒径が20μmを超えると、誘電体特性は良好であるものの、基板の厚みよりも径が大きい粒子が存在することとなり、好ましくない。その上、粒径が20μmを超えると、有機高分子樹脂との均一な分散・混合が困難となるとともに、基板の表面に凸凹が生じやすい。よって、誘電体セラミクスの平均粒径は、0.5〜20μmとする。誘電体セラミクスの望ましい平均粒径は1〜10μm、さらに望ましい平均粒径は1.5〜6μmである。誘電体セラミクスの平均粒径を0.5〜20μmとすることによって、2GHzという高い周波数帯域においても、9以上の誘電率εおよび290以上のQ値を得ることが可能となる。
【0015】
このような誘電体セラミクスは、公知の方法により焼成して得られたものであり、その焼成条件にも特に制限はないが、焼成温度としては1000〜1400℃程度であることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の複合誘電体材料における有機高分子樹脂について説明する。有機高分子樹脂としては、重量平均絶対分子量が1000以上の1種または2種以上の樹脂で構成される樹脂組成物であって、炭素原子と水素原子の原子数の和が99%以上からなり、かつ樹脂分子間の一部またはすべてが相互に化学的結合している耐熱性低誘電性高分子材料であることが好ましい。このような構成を有する有機高分子樹脂を用いることによって、高周波数帯域において、高い誘電率εおよび高いQ値を有する複合誘電体材料を得ることができる。
【0017】
上記のように、重量平均絶対分子量が1000以上の樹脂組成物の耐熱性低誘電性高分子材料を用いるのは、十分な強度、金属との密着性、および耐熱性を得るためである。重量平均絶対分子量が1000より小さいと、機械的物性、耐熱性が不足してしまう。
また、炭素と水素の原子数の和を99%以上とするのは、存在する化学的結合を非極性結合とするためであり、これにより高いQ値が得られやすくなる。一方、炭素と水素の原子数の和が99%より少ない場合、特に酸素原子や、窒素原子などの有極性分子を形成する原子数が1%より多く含まれる場合には、Q値が小さくなってしまう。
特に好ましい重量平均絶対分子量は3000以上、さらに好ましくは5000以上である。このときの重量平均絶対分子量の上限に特に制限はないが、通常1000万程度である。
【0018】
上記の有機高分子樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチルペンテン等の非極性α−オレフィンの単独ないし共重合体[以下、(共)重合体ともいう]、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、フェニルブタジエン、ジフェニルブタジエン等の共役ジエンの各単量体の(共)重合体、スチレン、核置換スチレン、例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン、α−置換スチレン、例えばα−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルシクロヘキサン等の炭素環含有ビニルの各単量体の(共)重合体等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いる有機高分子樹脂として特に好ましいのは、ポリビニルベンジルエーテル化合物である。ポリビニルベンジルエーテル化合物としては、式(1)で表されるものが好ましい。
【0020】
【化1】
Figure 0004127995
【0021】
式(1)中、R1はメチル基またはエチル基を表す。R2は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R2で表される炭化水素基は、各々置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、等である。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等であり、アラルキル基としてはベンジル基等であり、アリール基としてはフェニル基等である。
【0022】
3は水素原子またはビニルベンジル基を表し、水素原子は式(1)の化合物を合成する場合の出発化合物に由来するものであり、水素原子とビニルベンジル基とのモル比は60:40〜0:100が好ましく、より好ましくは40:60〜0:100である。
nは2〜4の数である。
【0023】
なお、R3の水素原子とビニルベンジル基とのモル比を上記範囲とすることにより、誘電体を得る際の硬化反応を十分に進行させることができ、また十分な誘電特性を得ることができる。これに対し、R3が水素原子である未反応物が多くなると硬化反応が十分に進行しなくなり、十分な誘電特性が得られなくなる。
【0024】
式(1)で表される化合物の具体例をR1等の組合せで以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【化2】
Figure 0004127995
【0026】
式(1)で表される化合物は、式(1)においてR3=Hであるポリフェノールと、ビニルベンジルハライドとを反応させることにより得られる。この詳細については、特開平9−31006号公報の記載を参照することができる。
【0027】
本発明のポリビニルベンジルエーテル化合物は単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。また、本発明のポリビニルベンジルエーテル化合物は、それのみを樹脂材料として重合して用いてもよく、他のモノマーと共重合させて用いてもよく、さらには、他の樹脂と組み合わせて使用することができる。
共重合可能なモノマーとしては、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルベンジルエーテル、アリルフェノール、アリルオキシベンゼン、ジアリルフタレート、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらのモノマーの配合割合は、ポリビニルベンジルエーテル化合物に対して、2〜50質量%程度である。
【0028】
また、組み合わせて使用することが可能な樹脂としては、例えばビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ポリフェノールのポリシアネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルベンジル化合物等の熱硬化性樹脂や、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ジシクロペンタジエン系樹脂等の熱可塑性樹脂がある。その配合割合は、本発明のポリビニルベンジルエーテル化合物に対して5〜90質量%程度である。中でも好ましくは、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ポリフェノールのポリシアネート樹脂、エポキシ樹脂およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
本発明のポリビニルベンジルエーテル化合物自体、あるいはこの化合物と他のモノマーまたは熱硬化性樹脂とを含有してなる硬化性樹脂組成物の重合および硬化は、公知の方法で行うことができる。硬化は、硬化剤の存在下または不存在下のいずれでも可能である。硬化剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。使用量は、ポリビニルベンジルエーテル化合物100質量部に対して0〜10質量部である。
硬化温度は、硬化剤の使用の有無および硬化剤の種類によっても異なるが、十分に硬化させるためには、20〜250℃、好ましくは50〜250℃である。
また、硬化の調整のために、ハイドロキノン、ベンゾキノン、銅塩等を配合してもよい。
【0030】
本発明における有機高分子樹脂には、補強材を添加することができる。補強材は機械的強度や寸法安定性を向上させる上で有効であり、回路用基板を作製するにあたっては、通常、所定量の補強材が有機高分子樹脂に添加される。
補強材としては、繊維状または板状あるいは粒状などの非繊維状の補強材を挙げることができる。繊維状の補強材としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、硼酸アルミニウム繊維、セラミック繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、金属繊維、ホウ酸マグネシウムウィスカまたはその繊維、チタン酸カリウムウィスカまたはその繊維、酸化亜鉛ウィスカ、ボロンウィスカ繊維等の無機繊維および炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維などが挙げられる。繊維状の補強材を用いる場合には、特開2001−187831号公報等に記載の、いわゆる含浸方法を採用することができる。要するに、誘電体セラミクス粉末と有機高分子樹脂とがスラリー状に調整された塗工槽に、シート状に成形した繊維状の補強材を浸漬すればよい。
また、非繊維状の補強材としては、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト等の珪酸塩、二硫化モリブデン、アルミナ、塩化珪素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの針状、板状、あるいは粒状の補強材などが挙げられ、これらは中空であってもよい。非繊維状の補強材を用いる場合には、有機高分子樹脂に添加すればよい。
【0031】
これらの補強材は、1種だけ用いてもよく、2種類以上併用することが可能であり、必要によりシラン系ならびにチタン系カップリング剤で予備処理して使用することができる。
本発明に用いる特に好ましい補強材は、ガラス繊維である。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、チョップドストランドマット、連続長繊維マット、織物、編物等の布帛状ガラス、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0032】
複合誘電体材料中の補強材の含有量は、10〜30wt%の範囲であることが好ましい。より好ましくは15〜25wt%である。
【0033】
本発明の複合誘電体材料は以下のような製造方法に従うことが好ましい。
まず、誘電体セラミクス粉末と有機高分子樹脂を所定量ずつ調合して混合する。なお、混合は、例えば、乾式混合によっても行えるが、ボールミル、攪拌機等でトルエン、キシレン等の有機溶剤中で十分に混合でするのが望ましい。
このスラリーを90〜120℃で乾燥し、誘電体セラミクス粉末と有機高分子樹脂との固まりを得る。この固まりを粉砕して誘電体セラミクスと有機高分子樹脂の混合粉末を得る。スラリーから混合粉末にする方法は、スプレードライヤー等の顆粒製造装置を用いてもよい。
混合粉末の平均粒径は50〜1000μm程度とすればよい。
次に、この混合粉末を100〜150℃で所望の形状にプレス成形し、この成形物を100〜200℃、30〜180分硬化させる。この硬化に際しては、前述の補強材を存在させてもよい。
【0034】
本発明の複合誘電体材料は、上述のように、誘電体セラミクス粉末を、ポリビニルベンジルエーテル化合物等の有機高分子樹脂の重合ないし硬化前に混合することが好ましいが、場合によっては、重合ないし硬化後に混合してもよい。ただし、完全に硬化した後における誘電体セラミクス粉末の混合は望ましくない。
【0035】
本発明の複合誘電体材料は、フィルムとして、あるいはバルク状や所定形状の成形体で、そしてフィルム状のラミネーションとして、など種々の形態で用いることができる。したがって高周波用の電子機器や電子部品(共振器、フィルタ、コンデンサ、インダクタ、アンテナ等)の各種基板、チップ部品としてのフィルタ(例えば多層基板であるCフィルタ)や共振器(例えばトリプレート型共振器)、あるいは誘電体共振器等の支持台、さらには各種基板ないし電子部品のハウジング(例えばアンテナ棒ハウジング)、ケーシング、あるいは電子部品やそのハウジングやケーシング等に用いることができる。基板としては従来のガラエポ基板の代替品としての用途が期待され、具体的には部品搭載用オンボード基板、Cu張り積層板およびメタルベース/メタルコア基板等が挙げられる。さらには回路内蔵基板、アンテナ基板(パッチアンテナ等)にも用いることができる。また、CPU用オンボード基板にも用いることができる。
【0036】
なお、電極の形成は、Cu等の金属箔で粉末を挟んでプレスしながら硬化させて行うことや、完全硬化する前の段階で片面もしくは両面にCu箔等の金属箔を張り付け、プレスしながら硬化させて行うことや、プレスで金属箔をつけて仮硬化させた後、別に熱処理によって硬化を進めて行うことや、成形物を硬化させた後、金属の蒸着やスパッタ、無電解めっきや(樹脂)電極等の塗布により行うことができる。
【0037】
本発明の複合誘電体材料、誘電体セラミクスおよびこれらを用いた基板は、GHz帯域においても好適に使用することができ、周波数帯域が2GHzの場合において9以上の誘電率ε、および260以上のQ値を有することができる。
【0038】
【実施例】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
まず、誘電体セラミクス粉末(平均粒径1.2μm)とポリビニルベンジルエーテル化合物(誘電率ε=2.5、Q値=261)を表1〜表3に示す組成になるように調合し、ボールミルにて16時間、トルエンに希釈溶解させた。次いで、誘電体セラミクス粉末とポリビニルベンジルエーテル化合物の混合物を110℃で約1.5時間乾燥させた。乾燥後、これを粉砕して、誘電体セラミクスとポリビニルベンジルエーテル化合物の混合粉末を得た。この混合粉末を、355μmの篩を通過させた後、金型に入れ、150℃で30分成型した。次いで、型から取り出した後、180℃で8時間硬化させて、23個の試料(試料No.1〜試料No.17、比較例1〜比較例6)を作製した。各試料は、厚さ1.5mmで1.5mm×100mmの基板である。
【0039】
表1に示すように、試料No.1〜試料No.7、比較例1、比較例2は、Nd23 量を16.67mol%に固定し、BaO量およびTiO2量を変動させたものである。また表2に示すように、試料No.8〜試料No.12、比較例3、比較例4は、TiO2量を66.66mol%に固定し、BaO量およびNd23 量を変動させたものである。さらに、表3に示すように、試料No.13〜試料No.17、比較例5、比較例6は、BaO量を16.67mol%に固定し、Nd23 量およびTiO2量を変動させたものである。
【0040】
ポリビニルベンジルエーテル化合物は、式(1)において、R1がメチル基、R2がベンジル基、R3の水素原子とビニルベンジル基とのモル比が、水素原子:ビニルベンジル基=0:100、n=3のものである。
【0041】
次に、作製した各試料について、誘電率ε(2GHz)を空洞共振器法(摂動法)により測定した(ヒューレットパッカード(株)製83260A、8757Cを使用)。さらには、tanδおよびQ値を求めた。その結果を併せて表1〜表3に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0004127995
【0043】
【表2】
Figure 0004127995
【0044】
【表3】
Figure 0004127995
【0045】
表1〜表3中の試料No.1〜試料No.17のように、BaO量、Nd23量、TiO2量をそれぞれ適切な範囲とすることによって、誘電率εを9以上かつQ値をポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高い値とすることができる。一方、BaO量、Nd23 量、TiO2量のバランスが崩れると、比較例1〜比較例6のように誘電率εが9未満または/およびQ値がポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも低い値を示す。
【0046】
以下、試料No.1〜試料No.17および比較例1〜比較例6を用いて、BaO量、Nd23 量、TiO2量の適切な範囲を検討する。
図1は、試料No.1〜試料No.17の組成および比較例1〜比較例6の組成をプロットしたものである。ここで、表1に示した試料No.1〜試料No.7、比較例1、比較例2のBaO量、Nd23 量、TiO2量はそれぞれ直線a上にプロットされる。同様に、表2に示した試料No.8〜試料No.12、比較例3、比較例4のBaO量、Nd23 量、TiO2量はそれぞれ直線b上に、表3に示した試料No.13〜試料No.17、比較例5、比較例6のBaO量、Nd23 量、TiO2量はそれぞれ直線cにプロットされる。
【0047】
はじめに、BaO量の上限値および下限値について検討する。
図1を見ると、BaO量が最も多いのは、直線a上の比較例2および直線b上の比較例3であり、ともにBaO量は21.67mol%である。ここで、直線a上の比較例2(BaO量:21.67mol%)および試料No.7(BaO量:20.67mol%)に着目すると、表1に示したように、BaO量が20.67mol%である試料No.7は9.69と良好な誘電率εを示すとともに、299.8という、ポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高いQ値を示す。これに対し、BaO量が21.67mol%である比較例2は、9.74と良好な誘電率εを示すものの、Q値は256.3とポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも低い値を示す。また、表2に示したように、直線b上の比較例3(BaO量:21.67mol%)および試料No.8(BaO量:20.67mol%)についても、直線a上の比較例2(BaO量:21.67mol%)および試料No.7(BaO量:20.67mol%)と同様の関係が見られる。よって、BaO量が21.67mol%以上になると、ポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高いQ値を得ることが困難であると推測される。
【0048】
また、図1を見ると、BaO量が最も少ないのは、直線b上の比較例4であり、そのBaO量は6.67mol%である。ここで、直線b上の比較例4(BaO量:6.67mol%)および試料No.12(BaO量:7.67mol%)に着目すると、表2に示したように、BaO量が7.67mol%である試料No.12は、9以上の誘電率εおよび321.0という良好なQ値を示す。一方、BaO量が6.67mol%である比較例4は、316.6という良好なQ値を示すものの、誘電率εは8.87まで低下してしまう。よって、BaO量が6.67mol%以下になると、9以上の誘電率εを得ることが困難であると推測される。
以上の結果から、誘電率εを9以上かつQ値をポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高い値とするためには、6.67mol%<BaO量<21.67mol%とすることが有効であることがわかった。
【0049】
次に、Nd23 量の上限値および下限値について検討する。
図1を見ると、Nd23 量が最も多いのは、直線b上の比較例4であり、そのNd23 量は26.67mol%である。ここで、直線b上の比較例4(Nd23 量:26.67mol%)および試料No.12(Nd23 量:25.67mol%)に着目すると、表2に示したように、Nd23 量が25.67mol%である試料No.12は9以上の誘電率εを示すとともに、321.0という高いQ値を示す。これに対し、Nd23 量が26.67mol%である比較例4は、316.6という良好なQ値を示すものの、誘電率εは8.87まで低下してしまう。よって、Nd23 量が26.67mol%以上になると、9以上の誘電率εを得ることが困難であると推測される。
【0050】
また、図1を見ると、Nd23 量が最も少ないのは、直線c上の比較例6であり、そのNd23 量は6.67mol%である。ここで、直線c上の比較例6(Nd23 量:6.67mol%)および試料No.17(Nd23 量:7.67mol%)に着目すると、表3に示したように、Nd23 量が7.67mol%である試料No.17は、9以上の誘電率εおよびポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高いQ値を示す。一方、Nd23 量が6.67mol%である比較例6のQ値は297.4と良好であるものの、誘電率εは8.88まで低下してしまう。よって、Nd23 量が6.67mol%以下になると、9以上の誘電率εを得ることが困難であると推測される。
以上の結果から、誘電率εを9以上かつQ値をポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高い値とするためには、6.67mol%<Nd23 量<26.67mol%とすることが有効であることがわかった。
【0051】
続いて、TiO2量の上限値および下限値について検討する。
図1を見ると、TiO2量が最も多いのは、直線c上の比較例6であり、そのTiO2量は76.66mol%である。ここで、直線c上の比較例6(TiO2量:76.66mol%)および試料No.17(TiO2量:75.66mol%)に着目すると、表3に示したように、TiO2量が75.66mol%である試料No.17は9以上の誘電率εおよび298.8というビニルベンジルエーテル化合物のQ値よりも高いQ値を得ている。これに対し、TiO2量が76.66mol%である比較例6の誘電率εは8.88と、9以下の値を示す。よって、TiO2量が76.66mol%以上になると、9以上の誘電率εを得ることが困難であると推測される。
【0052】
また、図1を見ると、TiO2量が最も少ないのは、直線a上の比較例2および直線c上の比較例5であり、ともにTiO2量は61.66mol%である。ここで、直線a上の比較例2(TiO2量:61.66mol%)および試料No.7(TiO2量:62.66mol%)に着目すると、表1に示したように、TiO2量が62.66mol%である試料No.7は9.69と良好な誘電率εを示すとともに、299.8という、ポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高いQ値を示す。これに対し、TiO2量が61.66mol%である比較例2は、9.74と良好な誘電率εを示すものの、Q値は256.3とポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも低い値を示す。また、表3に示したように、直線c上の比較例5(TiO2量:61.66mol%)および試料No.13(TiO2量:62.66mol%)についても、直線a上の比較例2(TiO2量:61.66mol%)および試料No.7(TiO2量:62.66mol%)と同様の関係が見られる。よって、TiO2量が61.66mol%以下になると、ポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高いQ値を得ることが困難であると推測される。
以上の結果から、誘電率εを9以上かつQ値をポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高い値とするためには、61.66mol%<TiO2量<76.66mol%とすることが有効であることがわかった。
【0053】
また、図1を見ると、比較例1(BaO量:11.67mol%、Nd23 量:16.67mol%、TiO2量:71.66mol%)、比較例4(BaO量:6.67mol%、Nd23 量:26.67mol%、TiO2量:66.66mol%)、比較例6(BaO量:16.67mol%、Nd23 量:6.67mol%、TiO2量:76.66mol%)は同一直線上に位置していることがわかる。ここで、比較例1、比較例4、比較例6のBaO量およびNd23 量に基づき、この直線を求めると、BaOの係数xとNd23 の係数yは、y=−2x+40の関係にあることが導き出せる。そして、この直線上に位置する比較例1、比較例4、比較例6は、上述の通り、誘電率εが9未満またはQ値がポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも低い値を示す。よって、本発明では、BaO量とNd23 量の関係は、y>−2x+40とする。
【0054】
以上の結果をまとめると、誘電体セラミクスをxBaO−yNd23 −zTiO2とで表したとき、6.67<x<21.67(mol%)、6.67<y<26.67(mol%)、61.66<z<76.66(mol%)、y>−2x+40の範囲とすることにより、誘電率εを9以上かつQ値をポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(261)よりも高い値とすることができることがわかった。ここで、この範囲を図1に示すと、ほぼホームベースのような形となり、試料No.1〜試料No.17はいずれもこの範囲に含まれる。
また、試料No.1〜試料No.6、試料No.9、試料No.15については、誘電率εが9.5以上かつQ値が300以上という非常に良好な誘電体特性を示していることが注目される。よって、x、y、zの好ましい範囲は、12≦x≦20、12≦y≦17、64≦z≦75であるといえる。
【0055】
(実施例2)
誘電体セラミック粉末の粒径の変動に伴う誘電特性の変動を確認するために行った実験を、実施例2として説明する。
誘電体セラミクスの組成を16.67BaO−16.67Nd23 −66.66TiO2(mol%)とし、誘電体セラミクス粉末の平均粒径(以下、適宜「誘電体粒子径」という)を表4に示すような値とする以外は実施例1と同一の条件で試料を作製した。誘電体セラミクス粉末とポリビニルベンジルエーテル化合物の体積比は40vol%:60vol%である。
次に、作製した各試料について、誘電率ε(2GHz)を空洞共振器法(摂動法)により測定した(ヒューレットパッカード(株)製83260A、8757Cを使用)。さらには、tanδおよびQ値を求めた。その結果を併せて表4に示す。また、誘電体粒子径と誘電率εの関係を図2に示す。
【0056】
【表4】
Figure 0004127995
【0057】
表4および図2に示すように、誘電体粒子径が大きくなるにつれて、誘電率εが増加する。具体的には、誘電体粒子径が0.4μmの場合(比較例7)の誘電率εは8.82であるのに対し、誘電体粒子径が0.6μm(試料No.18)になると、誘電率εは9.00まで向上する。そして、誘電体粒子径が4.0μm程度になると、10以上の誘電率εを示す。
また、表4に示したように、Q値についても誘電体粒子径と比例関係にあり、誘電体粒子径が大きくなるに従って、Q値も増加する。すなわち、誘電体粒子径が0.4μmの場合(比較例7)のQ値は283であるのに対し、誘電体粒子径が0.6μm(試料No.18)になるとQ値は295まで増加する。さらに誘電体粒子径が0.9μm(試料No.19)になると、300以上のQ値を示す。
以上の結果から、誘電体粒子径を0.5μm以上とすることによって、2GHzの周波数帯域において9以上の誘電率εおよび290以上のQ値を得ることができることがわかった。また、誘電体粒子径が4.0μm以上である試料No.22〜試料No.24については2GHzの周波数帯域において10以上の誘電率εおよび300以上のQ値を得ていることが注目される。但し、誘電体粒子径が20μmを超えると、有機高分子樹脂との均一な分散・混合が困難となるとともに、基板の表面に凸凹が生じやすい。よって、誘電体セラミクスの平均粒径は、0.5〜20μmとする。誘電体セラミクスの望ましい平均粒径は1〜10μm、さらに望ましい平均粒径は1.5〜6μmである。
【0058】
(実施例3)
BaO−Nd23 −TiO2で示される誘電体セラミクスのBaOの一部を他のアルカリ土類金属の酸化物で置換した場合の効果を確認するために行った実験を、実施例3として説明する。
誘電体セラミクスの組成を16.67BaO−16.67Nd23 −66.66TiO2(mol%)とし、誘電体セラミクス粉末とポリビニルベンジルエーテル化合物(誘電率ε=2.5、Q値=261)を表5〜表7に示す組成になるように調合し、他の条件は実施例1と同一にして試料を作製した。表5はBaOをSrOで置換した場合(試料No.26、比較例8、比較例9)、表6はBaOをCaOで置換した場合(試料No.27、試料No.28、比較例10)、表7はBaOをMgOで置換した場合(試料No.29、比較例11、比較例12)の組成を示しているが、置換量はSrO置換、CaO置換、MgO置換のいずれの場合についても10mol%、30mol%、50mol%である。
なお、誘電体セラミクス粉末とポリビニルベンジルエーテル化合物との体積比は40vol%:60vol%である。
【0059】
次に、作製した各試料について、誘電率ε(2GHz)を空洞共振器法(摂動法)により測定した(ヒューレットパッカード(株)製83260A、8757Cを使用)。さらには、tanδおよびQ値を求めた。
誘電率ε、tanδ、Q値の測定結果を併せて表5〜表7に示す。
【0060】
【表5】
Figure 0004127995
【0061】
【表6】
Figure 0004127995
【0062】
【表7】
Figure 0004127995
【0063】
表5を見ると、SrO置換量の変動に伴い、誘電率εおよびQ値が変動することがわかる。SrO置換量が10mol%である試料No.26は、試料No.25(SrO置換なし)よりも若干低い誘電率εを示すものの、依然として9以上の高い誘電率εを示す。また、試料No.26(SrO置換量:10mol%)のQ値は413であり、試料No.25(SrO置換なし)のQ値よりも50以上高い値を示していることが注目される。ところが、SrO置換量が30mol%の場合(比較例8)のQ値は350であり、試料No.25(SrO置換なし)のQ値よりも低い値を示す。さらに、SrO置換量が50mol%の場合(比較例9)には、10.13という良好な誘電率εを示すものの、Q値が234まで低下した。
以上の結果から、BaOの一部を所定量のSrOで置換することによって、9以上の高い誘電率εを維持しつつ、Q値を向上させることができることがわかった。BaOをSrOで置換する場合の好ましい置換量は、30mol%未満、より好ましくは5〜25mol%程度、さらに好ましくは5〜15mol%程度であるといえる。置換量をこの範囲とすることにより、9以上の誘電率εおよび400以上のQ値を得ることも可能となる。
【0064】
次に、表6を見ると、試料No.27(CaO置換量:10mol%)および試料No.28(CaO置換量:30mol%)は、9以上の高い誘電率εを示しつつ、400以上の高いQ値を得ていることがわかる。ところが、CaO置換量が50mol%(比較例10)になると、Q値は242まで低下した。
以上の結果から、BaOの一部を所定量のCaOで置換した場合においても、9以上の高い誘電率εを維持しつつ、Q値を向上させることができることがわかった。BaOをCaOで置換する場合の好ましい置換量は、50mol%未満であるといえる。試料No.27(CaO置換量:10mol%)は試料No.25(CaO置換なし)のQ値よりも100以上高い値を示していること、また試料No.28(CaO置換量:30mol%)は、誘電率εおよびQ値がともに試料No.25(CaO置換なし)の値を上回っていることから、より好ましい置換量は5〜40mol%程度、さらに好ましくは5〜30mol%程度であるといえる。
【0065】
また、表7を見ると、BaOの一部をMgOにて置換した場合についても、上記と同様の傾向を示すことがわかる。つまり、BaOの一部を所定量のMgOで置換することにより、9以上の高い誘電率εを維持しつつ、Q値を向上させることができる。BaOをMgOで置換する場合の好ましい置換量は、30mol%未満、より好ましくは5〜25mol%程度、さらに好ましくは5〜15mol%程度であるといえる。置換量をこの範囲とすることにより、9以上の誘電率εを維持しつつ、MgO置換前のQ値よりも高いQ値を得ることができる。
【0066】
本実施例によって、BaO−Nd23 −TiO2で示される誘電体セラミクスのBaの一部を他のアルカリ土類金属で置換することにより、誘電率εおよびQ値を所望の範囲に変動せしめることができることが明らかとなった。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、高いQ値を維持しつつ、GHz帯の高周波帯域において9以上の高い誘電率εを有するとともに、成形性及び加工性に優れ、小型機器への対応が容易な複合誘電体材料および基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試料No.1〜試料No.17および比較例1〜比較例6の組成をプロットした状態を示す図である。
【図2】 誘電体粒子径と誘電率εの関係を示す図である。

Claims (9)

  1. xBaO−yNd23−zTiO2と表したとき、
    6.67<x<21.67(mol%),
    6.67<y<26.67(mol%),
    61.66<z<76.66(mol%),
    y>−2x+40,
    x+y+z=100mol%
    となる誘電体セラミクスが、ポリビニルベンジルエーテル化合物中に分散していることを特徴とする複合誘電体材料であって、
    前記誘電体セラミクスと前記ポリビニルベンジルエーテル化合物との合計を100vol%としたとき、前記誘電体セラミクスの含有量が20vol%以上70vol%未満であり、
    前記誘電体セラミクスにおいて、BaOの一部を、SrOで30mol%未満置換、またはCaOで50mol%未満置換、またはMgOで30mol%未満置換したことを特徴とする複合誘電体材料。
  2. 12≦x≦20(mol%),
    12≦y≦17(mol%),
    64≦z≦75(mol%)であることを特徴とする請求項1に記載の複合誘電体材料。
  3. 前記誘電体セラミクスにおいて、BaOの一部をCaOで5〜40mol%置換したことを特徴とする請求項1または2に記載の複合誘電体材料。
  4. 前記ポリビニルベンジルエーテル化合物は補強材で強化されたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の複合誘電体材料。
  5. 前記誘電体セラミクスは、平均粒径が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の複合誘電体材料。
  6. BaO−Nd23−TiO2で表される誘電体セラミクス粉末と、ポリビニルベンジルエーテル化合物との混合物を硬化して得られる基板であって、
    前記誘電体セラミクス粉末の組成をxBaO−yNd23−zTiO2と表したとき、
    6.67<x<21.67(mol%),
    6.67<y<26.67(mol%),
    61.66<z<76.66(mol%),
    y>−2x+40,
    x+y+z=100mol%であり、
    前記誘電体セラミクス粉末と前記ポリビニルベンジルエーテル化合物との合計を100vol%としたとき、前記誘電体セラミクス粉末の含有量が20vol%以上70vol%未満であり、2GHzで9以上の誘電率を有する基板であって、
    前記誘電体セラミクス粉末において、BaOの一部を、SrOで30mol%未満置換、またはCaOで50mol%未満置換、またはMgOで30mol%未満置換したことを特徴とする基板。
  7. 2GHzで、前記ポリビニルベンジルエーテル化合物のQ値(Q=1/tanδ、tanδは誘電正接)よりも高いQ値を有することを特徴とする請求項に記載の基板。
  8. 12≦x≦20(mol%),
    12≦y≦17(mol%),
    64≦z≦75(mol%)であることを特徴とする請求項6または7に記載の基板。
  9. 前記誘電体セラミクス粉末は、平均粒径が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の基板。
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