JP4126846B2 - 樹脂製歯車のためのリング状補強基材の製造法、樹脂製歯車の製造法 - Google Patents
樹脂製歯車のためのリング状補強基材の製造法、樹脂製歯車の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂含浸リング状補強基材の成形品を歯部構成体とし、歯部構成体の中心に金属製ブッシュをインサート成形してなる樹脂製歯車のためのリング状補強基材の製造法に関する。また、この方法により製造したリング状補強基材を用いた樹脂製歯車の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記樹脂製歯車は、図4に示したような構造が代表的である。連続したシート状の織布に熱硬化性樹脂を含浸してこれを端縁より棒状に巻き、さらに輪にしたリング状補強基材を歯部構成体1としている。また、熱硬化性樹脂を含浸した織布の細片(0.7〜2cm角)を固めて、歯部構成体1の内側に位置するウェブ2としている。リング状補強基材とその内側に充填した前記織布の細片は、中央に配置した金属製ブッシュ3をインサートとして加熱加圧成形により一体化され、成形後に切削加工により歯部構成体1に歯が切られる。
歯部構成体1のためのシート状の織布としては、綿布やアラミド繊維織布が用いられている。これにフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸する。また、ウェブ2を構成する細片としては、綿布やガラス織布が用いられる。これは、熱硬化性樹脂を含浸した綿布やガラス織布を裁断して、0.7〜2cm角の細片としたものである。
金属製ブッシュ3の周面には径方向へ突出した回り止め部材4が配置されている。ウェブ2を構成する材料は独立した細片であること、成形時に加圧されることから、この細片は成形時に流動して回り止め部材4の周辺に十分に充填される。これによって、ウェブ2と金属製ブッシュ3とは強固に結合されている。
【0003】
歯車の径が十分に大きいときは、上記のように歯部と金属製ブッシュの間をウェブで連結し、ウェブを構成する材料に金属製ブッシュとの結合強度を大きくできる材料を選ぶことができる。しかし、歯車の径が小さくなると、ウェブを配置する余地がなくなり、歯部構成体と金属製ブッシュとを直接結合しなければならなくなる。しかし、歯部構成体のリング状補強基材は、歯の強度を確保する目的で連続した織布からなるので、成形時の流動が少ない。リング状補強基材が回り止め部材の周辺に十分に充填されることを期待できず、リング状補強基材を成形した歯部構成体と金属製ブッシュの結合強度を確保しにくくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に、リング状補強基材に成形金型内で液状樹脂を含浸する注入成形によって歯部構成体と金属製ブッシュとを直接結合する場合、以下の理由で、上記結合強度の確保を一層しにくくなる。注入成形では、成形金型に投入したリング状補強基材の中央に金属製ブッシュを配置して成形金型を閉じ、リング状補強基材を圧縮する。この状態で成形金型に液状の熱硬化性樹脂を注入しリング状補強基材に含浸して硬化を待つ。リング状補強基材は成形金型を閉じたときの圧力で変形し、多少径方向に広がる。この時金属製ブッシュの回り止め先端がリング状補強基材に食い込むだけであり、その後の液状樹脂の注入ならびに硬化時にリング状補強基材が流動して前記食い込みが促進されることは殆どない。このようなことから、リング状補強基材を成形した歯部構成体と金属製ブッシュの結合強度を確保しにくくなるのである。
【0005】
そこで、図3に示すように、回り止め部材4を一対のリング状補強基材12で上下から挟み込んだ状態にし、成形金型13を閉じたときに金属製ブッシュ3の厚さ方向に加えられる圧力で回り止め部材4をリング状補強基材12に十分に食い込ませ、この状態で注入成形をすることにより、歯部構成体と金属製ブッシュの結合強度を確保することが考えられる。
しかし、一対のリング状補強基材12は独立した別個のものであり、金型にまず一方のリング状補強基材12を収容しその上に金属製ブッシュ3をのせ、さらにもう一方のリング状補強基材12をのせて、一対のリング状補強基材で回り止め部材4を挟み込む作業が必要であり、この一連の作業性はよくない。
また、前記挟み込む作業の際、一対のリング状補強基材12は二段重ねの接合面が露出し無防備な状態となっている。成形に際しては、鋳バリが発生し、また、成形品の離型を助けるために離型剤を使用するが、これら鋳バリや離型剤が作業者の手袋や自動挿入ワークハンドを介在して、前記露出した二段重ねの接合面に混入する心配がある。リング状補強基材の静電気による吸引力が作用して、露出した二段重ねの接合面に周辺のほこりや鋳バリを吸着する心配もある。これらのことが実際に起こると、二段重ねのリング状補強基材間の接合力を低下させる原因となり、金属製ブッシュとの接合力低下にもつながる。
【0006】
本発明は、リング状補強基材で金属製ブッシュの回り止め部材を挟み込んだ状態で成形し、歯部構成体と金属製ブッシュとを直接結合した樹脂製歯車を対象としている。本発明が解決しようとする課題は、前記成形を実施するときの作業性(リング状補強基材の位置不安定性)を改善することである。さらには、歯部構成体と金属製ブッシュの結合強度の信頼性を高めることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る樹脂製歯車のためのリング状補強基材の製造法は、筒状織布を筒の外周側に輪ができるように両端部から軸方向に巻き上げて二段重ねの輪としたリング状補強基材を製造し、前記リング状補強基材を裏返して内周側と外周側とを反転し、二段重ねの輪が輪の外周側において筒状織布の布地により連結された構成とすることを特徴とする。
本発明が対象とする樹脂製歯車は、筒状織布をその両端部から軸方向に巻き上げた構成の二段重ねの輪をリング状補強基材にする。従って、二段重ねの輪は、輪の内周側又は外周側において筒状織布の布地で連結されており、取扱いが容易となっている。その二段重ねの輪の間に、金属製ブッシュ周面に径方向へ突出するように配置した回り止め部材を上下(金属製ブッシュ厚さ方向)から挟んだ状態にしている。二段重ねの輪は連結されているので、この状態の位置安定性はよい。当該状態の樹脂含浸リング状補強基材の成形品を歯部構成体とし、歯部構成体と金属製ブッシュとが一体になっている。
【0008】
本発明が対象とする樹脂製歯車の製造は、次のように行なう。
筒状織布を両端部から軸方向に巻き上げて二段重ねの輪にしたリング状補強基材を用意する。また、径方向へ突出した回り止め部材を周面に備えた金属製ブッシュを用意する。
このリング状補強基材と金属製ブッシュとを、リング状補強基材が金属製ブッシュの周囲に位置する関係で成形金型に収容し、成形金型を閉じる力でリング状補強基材を金属製ブッシュ厚さ方向に加圧する。そして、成形金型に注入した液状樹脂をリング状補強基材に含浸して加熱成形し、樹脂含浸リング状補強基材の成形品を歯部構成体とする樹脂製歯車を製造する。
上記のような成形を実施するに当たり、リング状補強基材を構成する二段重ねの輪の間に金属製ブッシュの回り止め部材を上下(金属製ブッシュ厚さ方向)から挟み込み、この状態で注入成形を実施する。
二段重ねの輪は、輪の内周側又は外周側において筒状織布の布地で連結されているので、金属製ブッシュの回り止め部材を挟み込んだときの位置安定性がよい。二段重ねの輪が輪の内周側において筒状織布の布地で連結されている場合、回り止め部材の箇所では連結の布地を外側へ突出変形させて、回り止め部材を二段重ねの輪の間に挟み込む。又は、連結の布地を貫通して回り止め部材を二段重ねの輪の間に突出させ挟み込む。本発明に係る方法によれば、二段重ねの輪が輪の外周側において筒状織布の布地で連結されているので、連結の布地が障害となることはなく、回り止め部材を二段重ねの輪の間に問題なく挟み込むことができる。そして、この場合、連結の布地が二段重ねの輪の外周を覆う構成となるので、成形に際して二段重ねの輪の接合面に鋳バリ等の異物が混入するのを阻止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を実施するに当り、リング状補強基材の製作は次のように行なう。
図1に示すように、筒状織布11を両端部から軸方向に巻き上げて二段重ねの輪にしたリング状補強基材12とする。図1(b)は、筒状織布11を筒の外周側に輪ができるように両端から巻き上げたものである。二段重ねの輪は、輪の内周側において筒状織布の布地で連結される。一方、図1(c)は、二段重ねの輪が輪の外周側において筒状織布の布地で連結されたリング状補強基材12である。このようなリング状補強基材12は、筒状織布11を筒の内周側に輪ができるように両端から巻き上げることにより構成できるが、内周側に巻き上げる作業は難しい。そこで、一旦、図1(b)に示したリング状補強基材12を作製し、これを裏返して内周側と外周側を反転させれば、図1(c)に示した構成のリング状補強基材12を容易に製作することができる。
【0010】
上記の巻き上げや反転を容易にするためには、筒状織布11に伸縮性を持たせるとよい。伸縮性を持たせることにより、巻き上げや反転が容易になるばかりでなく、二段重ねの輪の間に金属製ブッシュの回り止めを挟み込む作業も容易に行なえるようになる。伸縮性は、筒状織布をニット編みにより製作すれば容易に付与できる。本発明において、筒状織布とは、厳密に筒状に織ったもののほか筒状に編んだものもその概念に含む。
【0011】
上記のようなリング状補強基材を用い、図2に示すように、リング状補強基材の二段重ねの輪が回り止め部材4を金属製ブッシュ3厚さ方向両側から挟み、樹脂含浸リング状補強基材を成形した歯部構成体1とインサート成形した金属製ブッシュ3とが一体となった樹脂製歯車とする。
【0012】
注入成形は次のように行なう。
図3において説明したように、径方向へ突出した回り止め部材4を周面に配した金属製ブッシュ3とリング状補強基材12とを成形金型13に収容する。リング状補強基材12は、中央に配置した金属製ブッシュ3の周囲に配置するが、リング状補強基材12を構成する二段重ねの輪が回り止め部材4を上下から挟むようにする。すなわち、リング状補強基材12の内径を、回り止め部材4を含む金属製ブッシュ3の外径より小さく設定する。
図1(b)に示したリング状補強基材12を用いる場合は、二段重ねの輪を連結している布地を回り止め部材4の箇所で外側へ突出変形させて、回り止め部材4を二段重ねの輪の間に挟み込む。又は、連結の布地を貫通して回り止め部材4を二段重ねの輪の間に突出させ挟み込んでもよい。前記貫通の穴は、筒状織布を織ったり編む段階で形成することもできるし、筒状織布を製作した後で所定箇所を切除・裁断してあけることもできる。図1(c)に示したリング状補強基材12を用いる場合は、何等作業を施すことなく二段重ねの輪の間にそのまま回り止め部材4を挟み込むことができる。いずれの場合も、二段重ねの輪が筒状織布の布地で連結されているので、リング状補強基材12は金属製ブッシュ3に確実に保持・位置決めされる。その結果、二段重ねの輪による回り止め部材4の挟み込みも確実になる。
【0013】
上記のようにリング状補強基材12と金属製ブッシュ3を成形金型13に位置決めして型締めし、その圧力でリング状補強基材12を変形させて回り止め部材4をリング状補強基材12に食い込ませる。あるいは、リング状補強基材12を回り止め部材4の周囲に回り込ませる。リング状補強基材12に伸縮性を持たせておくと、前記回り止め部材4の食い込みあるいはリング状補強基材12の回り込みを良好に行なうことができる。そして、減圧状態にした金型内に液状樹脂(架橋ポリアミノアミド、エポキシ樹脂やポリイミド)を注入し、リング状補強基材に含浸させて加熱成形する。図2は、成形した結果を示す断面図である。金属製ブッシュ3の回り止め部材4は、リング状補強基材が成形された歯部構成体1に確実に食い込んでいる。
【0014】
回り止め部材4を、先端が大きく基部が小さいアンダーカット形状にしておくと、歯部構成体と金属製ブッシュとの結合強度をより大きくできるので好都合である。上記の例では、一つのリング状補強基材12を使用している。歯車の厚さを厚くする等の都合で、リング状補強基材12を二つ以上重ねるときには、回り止め部材4を金属製ブッシュ3の周面に複数列配置する。そして、各回り止め部材を各リング状補強基材の二段重ねの輪で挟むようにする。
【0015】
【実施例】
実施例1
ニット編みした筒状のアラミド繊維織布を両端部から軸方向に巻き上げ、図1(c)に示したリング状補強基材とした。このリング状補強基材を一つ用い、上記発明の実施の形態で説明した方法により成形を行なった。リング状補強基材への樹脂含浸は、減圧状態にした成形金型に架橋ポリアミノアミドを注入して行なった。成形体の寸法は、外径80mm,厚さ10mmである。
【0016】
実施例2
実施例1において、平織りした筒状のアラミド繊維織布を用いる以外は、実施例1と同様にして成形した。平織りの織布は伸縮性に乏しいので、リング状補強基材の二段重ねの輪の間に金属製ブッシュの回り止め部材を挟み込む作業が多少手間取ることになる。
【0017】
比較例1
ニット編みした筒状のアラミド繊維織布を一方の端部から軸方向に巻き上げ、リング状補強基材とした。このリング状補強基材を二つ用いて二段重ねにし、その間に金属製ブッシュの回り止め部材を挟み込んだ。そのほかは実施例1と同様にして成形した。
【0018】
比較例2
比較例1において、平織りした筒状のアラミド繊維織布を用いる以外は、比較例1と同様にして成形した。
【0019】
上記の各例の樹脂製歯車は、歯部構成体に切削加工により歯を形成した。表1には、歯部構成体と金属製ブッシュ間の破壊強度を測定した結果を示した。測定方法は、固定された鋼製の相手歯車に樹脂製歯車を噛み合わせ、樹脂製歯車の回転軸を捻じって、歯部構成体と金属製ブッシュの間の破壊強度を測定するものである。破壊強度は歯部構成体にクラックが発生する時点の大きさとし、それぞれ2個の樹脂製歯車の測定値を示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
上述のように、本発明が対象とする樹脂製歯車は、リング状補強基材を構成する二段重ねの輪の一安定性がよく、二段重ねの輪の間に金属製ブッシュの回り止め部材を確実に挟み込んで、樹脂含浸リング状補強基材を成形した歯部構成体と金属製ブッシュの大きな結合強度を確保することができる。
リング状補強基材に伸縮性を持たせた場合(実施例1)は、回り止め部材のリング状補強基材への食い込みが良好になり、さらに大きな結合強度を確保することができる。
本発明が対象とする方法によれば、成形に際し、リング状補強基材を構成する二段重ねの輪の間に金属製ブッシュの回り止め部材を挟み込んだ状態を保つ位置決め安定性が良好であり、作業性も改善される。本発明に係る方法によれば、リング状補強基材を構成する二段重ねの輪が、輪の外周側において筒状織布の布地で連結された構成としたので、成形時に二段重ねの輪の接合面に異物が混入するのを阻止でき、接合強度の信頼性も高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る樹脂製歯車の歯部構成体に使用するリング状補強基材と、これを準備する工程を示す説明図である。
【図2】 本発明が対象とする樹脂製歯車の断面図である。
【図3】 本発明が対象とする樹脂製歯車を成形する様子を示す断面説明図である。
【図4】 従来の樹脂製歯車を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1は歯部構成体
2はウェブ
3は金属製ブッシュ
4は回り止め部材
11は筒状織布
12はリング状補強基材
13は成形金型
Claims (3)
- 筒状織布を筒の外周側に輪ができるように両端部から軸方向に巻き上げて二段重ねの輪としたリング状補強基材を製造し、前記リング状補強基材を裏返して内周側と外周側とを反転し、二段重ねの輪が輪の外周側において筒状織布の布地により連結された構成とすることを特徴とする樹脂製歯車のためのリング状補強基材の製造法。
- 筒状織布が伸縮性を有することを特徴とする請求項1記載の樹脂製歯車のためのリング状補強基材の製造法。
- リング状補強基材と、径方向へ突出した回り止め部材を周面に備えた金属製ブッシュとを成形金型に投入し、成形金型を閉じることにより、前記金属製ブッシュ周囲に配置したリング状補強基材を金属製ブッシュ厚さ方向に加圧し、成形金型に注入した液状樹脂をリング状補強基材に含浸し加熱成形して、樹脂含浸リング状補強基材の成形品を歯部構成体とする樹脂製歯車を製造するに当たり、
リング状補強基材として、請求項1又は2記載の工程を経て製造したものを用い、
前記リング状補強基材の二段重ねの輪の間に前記回り止め部材を金属製ブッシュ厚さ方向両側から挟むようにして、成形を行なうことを特徴とする樹脂製歯車の製造法。
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JPH0858009A (ja) * | 1994-08-29 | 1996-03-05 | Chugoku Gomme Kogyo Kk | ゴム複合体 |
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