JP3991604B2 - 樹脂製歯車の製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品等として適した樹脂製歯車の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記樹脂製歯車は、歯の噛み合い時の騒音発生を抑えるために、金属製歯車と噛み合う相手歯車として用いられ、耐摩耗性と高強度が要求される。従来、樹脂製歯車として、樹脂を含浸した補強繊維基材のリング状成形体に歯を加工したものが提案されている。例えば、次のような技術である(特開平8−156124号公報)。
【0003】
補強繊維を束ねた糸を織った又は編んだ筒状体を準備する。この筒状体を端部から軸方向に巻き上げてリング状補強繊維基材とする。そして、リング状補強繊維基材とその中央に位置する金属製ブッシュとを成形金型に収容する。成形金型は、リング状補強繊維基材の厚さ方向に開閉動作するものであり、成形金型を閉じる動作によりリング状補強繊維基材を圧縮して、面方向に広がったリング状補強繊維基材を金属製ブッシュの周囲に圧接してその形状になじませる。次に、閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、リング状補強繊維基材に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属製ブッシュをインサートとする円板を成形する。そして、成形した円板の周囲に切削加工により歯を形成する。
【0004】
この技術においては、リング状の補強繊維基材に、その全周に亘ってつなぎ目がないので、特定の箇所で強度が低下するという問題がない。この技術で重要なことは、成形金型に注入した液状樹脂を、リング状補強繊維基材の全体に亘って十分に浸透させることである。そのためには、成形金型に過剰の樹脂を注入し、注入側から遠い側に余分の液状樹脂を排出して、成形を行なう必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術では、液状樹脂が成形キャビティを挟んで注入側と排出側に残り硬化するので、この硬化樹脂を、ひとつの円板を成形するごとに除去・清掃しなければならない。そればかりか、これら無駄になる樹脂の発生量も多い。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、補強繊維基材を成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂を補強繊維基材に浸透させる工程を経て樹脂製歯車を製造する方法において、液状樹脂の注入側と排出側に残る硬化樹脂の除去・清掃工数を少なくすることである。また、無駄になる樹脂の発生量も少なくすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法は、補強繊維基材として帯状のフェルトを用い、次の(a)〜(d)の工程を経る。
(a)の工程では、帯状のフェルトを筒状に重ね巻きした筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する。
(b)の工程では、前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する。この工程により、筒状体の内周面は金属棒の外周面に十分に圧接される。金属棒の外周面に回り止めのための凹凸を施しておけば、この凹凸が筒状体の内周面に食い込む。
(c)の工程では、前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する。
(d)の工程では、成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する。又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する。
【0008】
このように、一回の成形で複数個の樹脂製歯車に相当する長柱体を得るので、同数の樹脂製歯車を得るのに必要な成形回数は、一回の成形で一個の樹脂製歯車を得る場合に比べて格段に少なくなり、成形の都度実施する硬化樹脂の除去・清掃工数が低減される。また、成形金型に過剰の樹脂を注入する結果、成形キャビティを挟む注入側と排出側に残る硬化樹脂量は、一回の成形で一個の樹脂製歯車を成形する場合も、本発明のように複数個の樹脂製歯車に相当する長柱体を成形する場合も殆ど変わらない。従って、本発明によれば無駄な樹脂量も減る。
帯状のフェルトとは、補強繊維の集積体にその厚さ方向のニードリング処理を施し、ニードリング処理により厚さ方向に配向した補強繊維で平面方向を向いた補強繊維同士を結合した構成のものである。フェルトは、これにより十分な強度を保持しているし、糸のように繊維を束ねていないので繊維間への樹脂の浸透性も良い。
【0009】
本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法は、補強繊維基材として上記第一の製造法と同様に帯状のフェルトを用い、次の(e)〜(h)の工程を経る。
(e)の工程では、帯状のフェルトを筒状に重ね巻きしさらに筒状の軸方向に圧縮して蛇腹状に折り畳んだ一つの筒状体又はその複数個を積み重ねてなる筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する。帯状のフェルトを筒状に重ね巻きしたフェルト層間は一体になっていないが、このことが、蛇腹状にきれいに折り畳む上で好都合となっている。蛇腹状にきれいに折り畳めば補強繊維の配向も乱れない。重ね巻きしたフェルト層間が一体になっていなくとも、蛇腹状に折り畳むことによって層間が互いに入り組み、フェルト層間で剥がれが起こる心配もない。
(f)の工程では、前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する。上記と同様に、この工程により、筒状体の内周面は金属棒の外周面に十分に圧接される。
(g)の工程では、前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する。
(h)の工程では、成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する。又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する。
【0010】
本発明に係る第三の樹脂製歯車の製造法は、補強繊維基材として、伸縮性をもたせて編んだ帯状布を用い、次の(i)〜(l)の工程を経る。
(i)の工程では、前記帯状布を筒状に重ね巻きしさらに前記筒状の軸方向に圧縮して蛇腹状に折り畳んだ一つの筒状体又はその複数個を積み重ねてなる筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する。帯状布を筒状に重ね巻きした布層間は一体になっていないが、このことが、蛇腹状にきれいに折り畳む上で好都合となっている。蛇腹状に折り畳んだ構成は、帯状布の編み目が放射状に揃えられ、しかも伸縮性をもつ。重ね巻きした布層間が一体になっていなくとも、蛇腹状に折り畳むことによって層間が互いに入り組み、布層間で剥がれが起こる心配もない。
(j)の工程では、前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する。上記と同様に、この工程により、筒状体の内周面は金属棒の外周面に十分に圧接される。特に、帯状布が伸縮性をもつことから、当該帯状布を重ね巻きし蛇腹状に折り畳んだ筒状体は、成形金型を閉じるときに径方向から圧縮することにより、成形金型の内面及び金属棒の外周面に良好に沿わせることができる。成形金型の内面や金属棒外周面と筒状体の間に隙間ができにくく、金属棒外周面と筒状体の間は強固に結合される。
(k)の工程では、前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する。
(l)の工程では、成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する。又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する。
【0011】
【発明の実施の形態】
帯状のフェルトを構成する補強繊維には、綿や麻等の天然繊維、ポリエステル、フッ素樹脂、パラ系芳香族ポリアミド、メタ系芳香族ポリアミド、ポリベンザゾール等の有機繊維、ガラスやステンレス等の無機繊維を適宜採用することができる。これらの繊維は、歯車の特性を勘案して、単独で採用してもよいし複数種類を組合せて採用してもよい。
【0012】
補強繊維の集積には、水中で抄造する湿式と気中で散布して集積する乾式のいずれの手段も採用できるが、乾式は廃液処理の工程を必要としない点で都合がよい。補強繊維の集積体に施すニードリング処理は、採用する補強繊維の種類に応じてニードリングの密度を適宜設定する。切断を起こしやすいガラス繊維や金属繊維に対してはニードリングの密度を小さくしなければならないが、切断を起こしにくい芳香族ポリアミド繊維、ポリベンザゾール繊維等に対してはニードリングの密度を高くすることができる。ニードリングの密度繊維の大小で、帯状のフェルトの厚さ方向を向く補強繊維の量を変えることができ、フェルトの密度と引張り強度を適宜調整する。
【0013】
本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法について、図1を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
(a)工程における長柱体1は、金属棒11とこれを軸とし帯状のフェルト12を重ね巻きした筒状体13とで構成する。金属棒11の周面には滑り止めのための凸部111を付しておく。金属棒11は、樹脂製歯車のブッシュとして機能するので、中実の金属棒を採用する場合には後加工により、回転軸への装着用穴をあけることになる。従って、金属棒11は、適宜パイプ形状を採用してもよい。
長柱体1は、帯状のフェルト12を重ね巻きして筒状体13を形成してから、その中心に金属棒11を挿入して構成することを妨げるものではないが、上述のように金属棒11を軸にして帯状のフェルト12を重ね巻きすると、緻密な重ね巻きを実施でき都合が良い。
重ね巻きしたフェルト12の層間をニードリング処理により結合しておけば、一層高強度になる。
【0014】
(b)工程では、長柱体1の径方向に開閉する成形金型2に長柱体1を収容して、成形金型2を閉じる動作で長柱体1をその径方向から圧縮する。この操作により、筒状体13の内周面は金属棒11の外周面に圧接され、金属棒外周面の凸部111が筒状体13の内周面に食い込む。この操作は、樹脂製歯車を構成する樹脂成形部と金属製ブッシュとの結合強度を確保するために必要である。
成形金型キャビティの内径を長柱体1の外径より小さく設定しておき、上記圧縮の操作を実現する。成形キャビティに突条を設けて、この突条により長柱体1に概略の歯形を賦形するようにしておけば、筒状体13の内周面はより強く金属棒11の外周面に圧接される。
【0015】
(c)工程では、閉じた成形金型2の成形キャビティに液状樹脂3(架橋ポリアミノアミド、エポキシ樹脂、ポリイミドなど)を注入し、筒状体13に浸透させる。注入を円滑に行なうためには成形キャビティを減圧状態にしておく。液状樹脂の注入は、液状樹脂が筒状体13に十分浸透し、さらに一部が排出側まで導かれるような過剰な量で実施する。そして、液状樹脂を加熱硬化し金属棒11をインサートとする長柱体1を成形する。
【0016】
(d)の工程では、成形した長柱体14を成形金型2から取り出し、これに切削加工を施して歯車とする。成形した長柱体14は歯車複数個分の高さがあるので、これを所定幅(歯車の厚さ)で裁断分割し、分割した円板の周囲に切削加工により歯を形成する。或いは、成形した長柱体14のまま周囲に切削加工により歯を形成し、その後に所定の歯車の厚さで裁断分割する。金属棒11が中実の場合は、これらの工程の中で穴あけも実施し、ブッシュとして完成する。
【0017】
本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法について、図2を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
(e)工程における長柱体1’は、先ず帯状のフェルト12を、金属棒11の外径より大きい内径で筒状に重ね巻きする。重ね巻きしたフェルト12をさらに軸方向に圧縮して蛇腹状に折り畳んだ筒状体13’とする。折り畳んだときの高さが金属棒11の長さと同等になるようにフェルト12の幅を金属棒11の長さより大きくしておく。また、重ね巻きしたフェルト12を蛇腹状に折り畳むと、筒状体13’には径方向に幅ができ内径が小さくなる。この内径を、金属棒11の外径とほぼ一致させる。このようにして、筒状体13’と金属棒とからなる長柱体1’を構成する。
重ね巻きしたフェルト12を蛇腹状に折り畳んだときの高さを金属棒11の長さと同等にするためには、フェルト12の幅をかなり広いものにしなければならない。また、蛇腹状に折り畳むストロークも長くなる。そこで、狭い幅のフェルト12を重ね巻きして筒状にし、これを蛇腹状に折り畳んだ高さの低い筒状体を用意し、これを複数個積み重ねることにより筒状体13’とし、その高さを金属棒11の長さと同等にすることが好ましい。この場合、個々の筒状体を得るために蛇腹状に折り畳むストロークは短くて済む。金属棒11に個々の筒状体を通し積み重ねることにより長柱体1’を構成する。
【0018】
その後の長柱体1’を成形金型に収容する(f)の工程、成形金型に液状樹脂を注入する(g)の工程、成形した長柱体1’を切削加工する(h)の工程は、それぞれ上述した(b)(c)(d)の工程に準じて行なう。
【0019】
本発明に係る第三の樹脂製歯車の製造法について、発明の実施の形態を説明する。
帯状布を構成する補強繊維は、綿や麻等の天然繊維、ポリエステル、フッ素樹脂、パラ系芳香族ポリアミド、メタ系芳香族ポリアミド、ポリベンザゾール等の有機繊維を適宜採用することができる。これらの繊維は、求める歯車の特性を勘案して、単独で採用してもよいし複数種類を組合せて採用してもよい。これらの繊維を収束したあるいは混紡した糸を編んで帯状布を構成する。パラ系芳香族ポリアミド繊維とメタ系芳香族ポリアミド繊維の混紡糸を用いると、上記リング状成形体の周囲に歯を形成するときの加工性と歯車の強度のバランスを満足いくレベルで保つことができる。
【0020】
帯状布は、糸を編んで構成することにより、自ずと伸縮性をもたせることができる。横編みした平たい布状の帯状基材であってもよいし、丸編した筒状体を軸方向に切り開いて帯状基材としてもよい。丸編した筒状体を偏平にして2枚重ねの状態の帯状基材としても差し支えない。
上記帯状布を帯状のフェルトの代わりに用い、本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法に準じた工程を経て、樹脂製歯車を製造する。
【0021】
【実施例】
実施例1
パラ系アラミド繊維原綿(繊維径5〜20μm,繊維長50mm)とメタ系アラミド繊維原綿(繊維径5〜20μm,繊維長50mm)を重量比で50/50の割合で気中に散布して集積し、集積体にニードリングを施して、幅2000mm,厚さ3mm,単位重量150g/m2のフェルト12を準備した。図3に示すように、フェルト12は、ニードリングにより厚さ方向を向いた補強繊維121が平面方向を向いた補強繊維122同士を結合した構成を有している。
200mm幅に裁断したフェルト12と、長さ200mmで外周面に凸部111を形成した中実の金属棒11を準備する。そして、図1に示したように、フェルト12を、金属棒11を軸として6回重ね巻きし、外径84mm,内径60mm,高さ200mmの筒状体13とする。このようにして、金属棒11と筒状体13からなる長柱体1を構成する。
【0022】
次に、長柱体1を200℃の成形金型2に投入し型締めする。前記型締めにより、長柱体1の径は84mmから82mmに減じられ、筒状体13の内周面が金属棒11の外周面に圧接される。型締めし1300Paの減圧状態にした成形金型に架橋ポリアミノアミドを注入して加熱成形する。架橋ポリアミノアミドの注入量は、成形金型を減圧にするため設けた脱気通路にまで余剰の樹脂が導かれる量を設定する。
成形した長柱体14は円柱であり、これを15mm幅で裁断分割し、中央が金属棒からなりその周囲が樹脂成形体である円板とする。中央には穴をあけて回転軸への取付用の金属製ブッシュとし、樹脂成形体の周囲に機械切削により歯車の歯を形成する。
【0023】
この実施例によれば、一回の成形で10個の樹脂製歯車を製造することができる。このときに無駄になる樹脂質量は一個当たり2gである。
【0024】
実施例2
実施例1と同様の組成で100mm幅に裁断したフェルト12を4回重ね巻きして筒状にし、これを蛇腹状に折り畳んだ高さの低い筒状体(外径84mm,内径60mm)を用意する。これを実施例1と同様の金属棒11に、3個通して積み重ね、筒状体13’とする。積み重ねてなる筒状体13’の高さを金属棒11の長さと同等にし長柱体1’を構成する。
上記長柱体1’を用い、以下実施例1と同様に樹脂製歯車を製造する。一回の成形で製造できる樹脂製歯車の個数、このときに無駄になる樹脂量は実施例1と同様である。
【0025】
実施例3
パラ系アラミド繊維(繊維長50mm,繊維径16μm)とメタ系アラミド繊維(繊維長50mm,繊維径16μm)を、質量比50/50で混紡し、太さ20番手のアラミド繊維糸を準備した。このアラミド繊維糸1本で70mm径の筒状体を編んだ(丸編み)。前記筒状体を偏平にして100mm幅の帯状布とする。この帯状布を4回重ね巻きして筒状にし、これを蛇腹状に折り畳んだ高さの低い筒状体(外径84mm,内径60mm)を用意する。これを実施例1と同様の金属棒に、3個通して積み重ね、筒状体とする。積み重ねてなる筒状体の高さを金属棒の長さと同等にし長柱体を構成する。
上記長柱体を用い、以下実施例1と同様に樹脂製歯車を製造する。一回の成形で製造できる樹脂製歯車の個数、このときに無駄になる樹脂量は実施例1と同様である。
【0026】
従来例1
パラ系アラミド繊維及びメタ系アラミド繊維を、重量比で50/50の割合で混紡した糸をニット編みして筒状体を構成する。この筒状体を端部から軸方向に巻き上げて、外径82mm,内径60mm,厚さ20mmのリング状補強繊維基材とする。
二個積み重ねた上記リング状補強繊維基材とその中央に位置する金属製ブッシュとを200℃の成形金型に収容する。成形金型は、リング状補強繊維基材の厚さ方向に開閉動作するものであり、成形金型を閉じる動作によりリング状補強繊維基材を圧縮して、面方向に広がったリング状補強繊維基材を金属製ブッシュの周囲に圧接してその形状になじませる。次に、閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、リング状補強繊維基材に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属製ブッシュをインサートとする円板を成形する。そして、成形した円板の周囲に切削加工により歯を形成する。
この従来例において、実施例と同個数の樹脂製歯車を製造するときの樹脂硬化物の除去・清掃工数は、実施例の10倍である。また、無駄になる樹脂量は一個当たり15gである。
【0027】
上記実施例と従来例における樹脂製歯車の特性を表1に示す。表1に示した各特性の測定は次のようにして行なった。尚、各例の樹脂製歯車の樹脂中に占める補強繊維の含有量はいずれも同じである。
曲げ強度は、製造した樹脂製歯車の歯部三箇所から切り出した扇形試料の曲げ強度(初期強度)を測定したものである。
実装耐久時間は、自動車エンジンのギヤ加速テスト(回転数:6000rpm,油温130℃,歯元負荷応力255MPa)での耐久時間を測定した。10個の試料の測定値の平均値を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る製造法によれば、少ない工数で、且つ無駄になる樹脂の発生量も抑えて樹脂製歯車を製造することができる。特に、本発明に係る第二の製造法によれば、従来に比べ優れた性能を備えた樹脂製歯車を製造することも可能になる。本発明に係る第三の製造法によれば、本発明に係る第一、第二の製造法による場合より、筒状体の樹脂成形部と金属棒の結合強度を優れたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す製造工程の説明図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す製造工程の説明図である。。
【図3】フェルトを構成する補強繊維の配向状態を示す概念図である。
【符号の説明】
1,1’:長柱体
11:金属棒
111:凸部
12:フェルト
121:厚さ方向を向いた補強繊維
122:平面方向を向いた補強繊維
13,13’:筒状体
14:成形した長柱体
2:成形金型
3:液状樹脂
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品等として適した樹脂製歯車の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記樹脂製歯車は、歯の噛み合い時の騒音発生を抑えるために、金属製歯車と噛み合う相手歯車として用いられ、耐摩耗性と高強度が要求される。従来、樹脂製歯車として、樹脂を含浸した補強繊維基材のリング状成形体に歯を加工したものが提案されている。例えば、次のような技術である(特開平8−156124号公報)。
【0003】
補強繊維を束ねた糸を織った又は編んだ筒状体を準備する。この筒状体を端部から軸方向に巻き上げてリング状補強繊維基材とする。そして、リング状補強繊維基材とその中央に位置する金属製ブッシュとを成形金型に収容する。成形金型は、リング状補強繊維基材の厚さ方向に開閉動作するものであり、成形金型を閉じる動作によりリング状補強繊維基材を圧縮して、面方向に広がったリング状補強繊維基材を金属製ブッシュの周囲に圧接してその形状になじませる。次に、閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、リング状補強繊維基材に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属製ブッシュをインサートとする円板を成形する。そして、成形した円板の周囲に切削加工により歯を形成する。
【0004】
この技術においては、リング状の補強繊維基材に、その全周に亘ってつなぎ目がないので、特定の箇所で強度が低下するという問題がない。この技術で重要なことは、成形金型に注入した液状樹脂を、リング状補強繊維基材の全体に亘って十分に浸透させることである。そのためには、成形金型に過剰の樹脂を注入し、注入側から遠い側に余分の液状樹脂を排出して、成形を行なう必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術では、液状樹脂が成形キャビティを挟んで注入側と排出側に残り硬化するので、この硬化樹脂を、ひとつの円板を成形するごとに除去・清掃しなければならない。そればかりか、これら無駄になる樹脂の発生量も多い。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、補強繊維基材を成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂を補強繊維基材に浸透させる工程を経て樹脂製歯車を製造する方法において、液状樹脂の注入側と排出側に残る硬化樹脂の除去・清掃工数を少なくすることである。また、無駄になる樹脂の発生量も少なくすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法は、補強繊維基材として帯状のフェルトを用い、次の(a)〜(d)の工程を経る。
(a)の工程では、帯状のフェルトを筒状に重ね巻きした筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する。
(b)の工程では、前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する。この工程により、筒状体の内周面は金属棒の外周面に十分に圧接される。金属棒の外周面に回り止めのための凹凸を施しておけば、この凹凸が筒状体の内周面に食い込む。
(c)の工程では、前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する。
(d)の工程では、成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する。又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する。
【0008】
このように、一回の成形で複数個の樹脂製歯車に相当する長柱体を得るので、同数の樹脂製歯車を得るのに必要な成形回数は、一回の成形で一個の樹脂製歯車を得る場合に比べて格段に少なくなり、成形の都度実施する硬化樹脂の除去・清掃工数が低減される。また、成形金型に過剰の樹脂を注入する結果、成形キャビティを挟む注入側と排出側に残る硬化樹脂量は、一回の成形で一個の樹脂製歯車を成形する場合も、本発明のように複数個の樹脂製歯車に相当する長柱体を成形する場合も殆ど変わらない。従って、本発明によれば無駄な樹脂量も減る。
帯状のフェルトとは、補強繊維の集積体にその厚さ方向のニードリング処理を施し、ニードリング処理により厚さ方向に配向した補強繊維で平面方向を向いた補強繊維同士を結合した構成のものである。フェルトは、これにより十分な強度を保持しているし、糸のように繊維を束ねていないので繊維間への樹脂の浸透性も良い。
【0009】
本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法は、補強繊維基材として上記第一の製造法と同様に帯状のフェルトを用い、次の(e)〜(h)の工程を経る。
(e)の工程では、帯状のフェルトを筒状に重ね巻きしさらに筒状の軸方向に圧縮して蛇腹状に折り畳んだ一つの筒状体又はその複数個を積み重ねてなる筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する。帯状のフェルトを筒状に重ね巻きしたフェルト層間は一体になっていないが、このことが、蛇腹状にきれいに折り畳む上で好都合となっている。蛇腹状にきれいに折り畳めば補強繊維の配向も乱れない。重ね巻きしたフェルト層間が一体になっていなくとも、蛇腹状に折り畳むことによって層間が互いに入り組み、フェルト層間で剥がれが起こる心配もない。
(f)の工程では、前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する。上記と同様に、この工程により、筒状体の内周面は金属棒の外周面に十分に圧接される。
(g)の工程では、前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する。
(h)の工程では、成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する。又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する。
【0010】
本発明に係る第三の樹脂製歯車の製造法は、補強繊維基材として、伸縮性をもたせて編んだ帯状布を用い、次の(i)〜(l)の工程を経る。
(i)の工程では、前記帯状布を筒状に重ね巻きしさらに前記筒状の軸方向に圧縮して蛇腹状に折り畳んだ一つの筒状体又はその複数個を積み重ねてなる筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する。帯状布を筒状に重ね巻きした布層間は一体になっていないが、このことが、蛇腹状にきれいに折り畳む上で好都合となっている。蛇腹状に折り畳んだ構成は、帯状布の編み目が放射状に揃えられ、しかも伸縮性をもつ。重ね巻きした布層間が一体になっていなくとも、蛇腹状に折り畳むことによって層間が互いに入り組み、布層間で剥がれが起こる心配もない。
(j)の工程では、前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する。上記と同様に、この工程により、筒状体の内周面は金属棒の外周面に十分に圧接される。特に、帯状布が伸縮性をもつことから、当該帯状布を重ね巻きし蛇腹状に折り畳んだ筒状体は、成形金型を閉じるときに径方向から圧縮することにより、成形金型の内面及び金属棒の外周面に良好に沿わせることができる。成形金型の内面や金属棒外周面と筒状体の間に隙間ができにくく、金属棒外周面と筒状体の間は強固に結合される。
(k)の工程では、前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する。
(l)の工程では、成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する。又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する。
【0011】
【発明の実施の形態】
帯状のフェルトを構成する補強繊維には、綿や麻等の天然繊維、ポリエステル、フッ素樹脂、パラ系芳香族ポリアミド、メタ系芳香族ポリアミド、ポリベンザゾール等の有機繊維、ガラスやステンレス等の無機繊維を適宜採用することができる。これらの繊維は、歯車の特性を勘案して、単独で採用してもよいし複数種類を組合せて採用してもよい。
【0012】
補強繊維の集積には、水中で抄造する湿式と気中で散布して集積する乾式のいずれの手段も採用できるが、乾式は廃液処理の工程を必要としない点で都合がよい。補強繊維の集積体に施すニードリング処理は、採用する補強繊維の種類に応じてニードリングの密度を適宜設定する。切断を起こしやすいガラス繊維や金属繊維に対してはニードリングの密度を小さくしなければならないが、切断を起こしにくい芳香族ポリアミド繊維、ポリベンザゾール繊維等に対してはニードリングの密度を高くすることができる。ニードリングの密度繊維の大小で、帯状のフェルトの厚さ方向を向く補強繊維の量を変えることができ、フェルトの密度と引張り強度を適宜調整する。
【0013】
本発明に係る第一の樹脂製歯車の製造法について、図1を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
(a)工程における長柱体1は、金属棒11とこれを軸とし帯状のフェルト12を重ね巻きした筒状体13とで構成する。金属棒11の周面には滑り止めのための凸部111を付しておく。金属棒11は、樹脂製歯車のブッシュとして機能するので、中実の金属棒を採用する場合には後加工により、回転軸への装着用穴をあけることになる。従って、金属棒11は、適宜パイプ形状を採用してもよい。
長柱体1は、帯状のフェルト12を重ね巻きして筒状体13を形成してから、その中心に金属棒11を挿入して構成することを妨げるものではないが、上述のように金属棒11を軸にして帯状のフェルト12を重ね巻きすると、緻密な重ね巻きを実施でき都合が良い。
重ね巻きしたフェルト12の層間をニードリング処理により結合しておけば、一層高強度になる。
【0014】
(b)工程では、長柱体1の径方向に開閉する成形金型2に長柱体1を収容して、成形金型2を閉じる動作で長柱体1をその径方向から圧縮する。この操作により、筒状体13の内周面は金属棒11の外周面に圧接され、金属棒外周面の凸部111が筒状体13の内周面に食い込む。この操作は、樹脂製歯車を構成する樹脂成形部と金属製ブッシュとの結合強度を確保するために必要である。
成形金型キャビティの内径を長柱体1の外径より小さく設定しておき、上記圧縮の操作を実現する。成形キャビティに突条を設けて、この突条により長柱体1に概略の歯形を賦形するようにしておけば、筒状体13の内周面はより強く金属棒11の外周面に圧接される。
【0015】
(c)工程では、閉じた成形金型2の成形キャビティに液状樹脂3(架橋ポリアミノアミド、エポキシ樹脂、ポリイミドなど)を注入し、筒状体13に浸透させる。注入を円滑に行なうためには成形キャビティを減圧状態にしておく。液状樹脂の注入は、液状樹脂が筒状体13に十分浸透し、さらに一部が排出側まで導かれるような過剰な量で実施する。そして、液状樹脂を加熱硬化し金属棒11をインサートとする長柱体1を成形する。
【0016】
(d)の工程では、成形した長柱体14を成形金型2から取り出し、これに切削加工を施して歯車とする。成形した長柱体14は歯車複数個分の高さがあるので、これを所定幅(歯車の厚さ)で裁断分割し、分割した円板の周囲に切削加工により歯を形成する。或いは、成形した長柱体14のまま周囲に切削加工により歯を形成し、その後に所定の歯車の厚さで裁断分割する。金属棒11が中実の場合は、これらの工程の中で穴あけも実施し、ブッシュとして完成する。
【0017】
本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法について、図2を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
(e)工程における長柱体1’は、先ず帯状のフェルト12を、金属棒11の外径より大きい内径で筒状に重ね巻きする。重ね巻きしたフェルト12をさらに軸方向に圧縮して蛇腹状に折り畳んだ筒状体13’とする。折り畳んだときの高さが金属棒11の長さと同等になるようにフェルト12の幅を金属棒11の長さより大きくしておく。また、重ね巻きしたフェルト12を蛇腹状に折り畳むと、筒状体13’には径方向に幅ができ内径が小さくなる。この内径を、金属棒11の外径とほぼ一致させる。このようにして、筒状体13’と金属棒とからなる長柱体1’を構成する。
重ね巻きしたフェルト12を蛇腹状に折り畳んだときの高さを金属棒11の長さと同等にするためには、フェルト12の幅をかなり広いものにしなければならない。また、蛇腹状に折り畳むストロークも長くなる。そこで、狭い幅のフェルト12を重ね巻きして筒状にし、これを蛇腹状に折り畳んだ高さの低い筒状体を用意し、これを複数個積み重ねることにより筒状体13’とし、その高さを金属棒11の長さと同等にすることが好ましい。この場合、個々の筒状体を得るために蛇腹状に折り畳むストロークは短くて済む。金属棒11に個々の筒状体を通し積み重ねることにより長柱体1’を構成する。
【0018】
その後の長柱体1’を成形金型に収容する(f)の工程、成形金型に液状樹脂を注入する(g)の工程、成形した長柱体1’を切削加工する(h)の工程は、それぞれ上述した(b)(c)(d)の工程に準じて行なう。
【0019】
本発明に係る第三の樹脂製歯車の製造法について、発明の実施の形態を説明する。
帯状布を構成する補強繊維は、綿や麻等の天然繊維、ポリエステル、フッ素樹脂、パラ系芳香族ポリアミド、メタ系芳香族ポリアミド、ポリベンザゾール等の有機繊維を適宜採用することができる。これらの繊維は、求める歯車の特性を勘案して、単独で採用してもよいし複数種類を組合せて採用してもよい。これらの繊維を収束したあるいは混紡した糸を編んで帯状布を構成する。パラ系芳香族ポリアミド繊維とメタ系芳香族ポリアミド繊維の混紡糸を用いると、上記リング状成形体の周囲に歯を形成するときの加工性と歯車の強度のバランスを満足いくレベルで保つことができる。
【0020】
帯状布は、糸を編んで構成することにより、自ずと伸縮性をもたせることができる。横編みした平たい布状の帯状基材であってもよいし、丸編した筒状体を軸方向に切り開いて帯状基材としてもよい。丸編した筒状体を偏平にして2枚重ねの状態の帯状基材としても差し支えない。
上記帯状布を帯状のフェルトの代わりに用い、本発明に係る第二の樹脂製歯車の製造法に準じた工程を経て、樹脂製歯車を製造する。
【0021】
【実施例】
実施例1
パラ系アラミド繊維原綿(繊維径5〜20μm,繊維長50mm)とメタ系アラミド繊維原綿(繊維径5〜20μm,繊維長50mm)を重量比で50/50の割合で気中に散布して集積し、集積体にニードリングを施して、幅2000mm,厚さ3mm,単位重量150g/m2のフェルト12を準備した。図3に示すように、フェルト12は、ニードリングにより厚さ方向を向いた補強繊維121が平面方向を向いた補強繊維122同士を結合した構成を有している。
200mm幅に裁断したフェルト12と、長さ200mmで外周面に凸部111を形成した中実の金属棒11を準備する。そして、図1に示したように、フェルト12を、金属棒11を軸として6回重ね巻きし、外径84mm,内径60mm,高さ200mmの筒状体13とする。このようにして、金属棒11と筒状体13からなる長柱体1を構成する。
【0022】
次に、長柱体1を200℃の成形金型2に投入し型締めする。前記型締めにより、長柱体1の径は84mmから82mmに減じられ、筒状体13の内周面が金属棒11の外周面に圧接される。型締めし1300Paの減圧状態にした成形金型に架橋ポリアミノアミドを注入して加熱成形する。架橋ポリアミノアミドの注入量は、成形金型を減圧にするため設けた脱気通路にまで余剰の樹脂が導かれる量を設定する。
成形した長柱体14は円柱であり、これを15mm幅で裁断分割し、中央が金属棒からなりその周囲が樹脂成形体である円板とする。中央には穴をあけて回転軸への取付用の金属製ブッシュとし、樹脂成形体の周囲に機械切削により歯車の歯を形成する。
【0023】
この実施例によれば、一回の成形で10個の樹脂製歯車を製造することができる。このときに無駄になる樹脂質量は一個当たり2gである。
【0024】
実施例2
実施例1と同様の組成で100mm幅に裁断したフェルト12を4回重ね巻きして筒状にし、これを蛇腹状に折り畳んだ高さの低い筒状体(外径84mm,内径60mm)を用意する。これを実施例1と同様の金属棒11に、3個通して積み重ね、筒状体13’とする。積み重ねてなる筒状体13’の高さを金属棒11の長さと同等にし長柱体1’を構成する。
上記長柱体1’を用い、以下実施例1と同様に樹脂製歯車を製造する。一回の成形で製造できる樹脂製歯車の個数、このときに無駄になる樹脂量は実施例1と同様である。
【0025】
実施例3
パラ系アラミド繊維(繊維長50mm,繊維径16μm)とメタ系アラミド繊維(繊維長50mm,繊維径16μm)を、質量比50/50で混紡し、太さ20番手のアラミド繊維糸を準備した。このアラミド繊維糸1本で70mm径の筒状体を編んだ(丸編み)。前記筒状体を偏平にして100mm幅の帯状布とする。この帯状布を4回重ね巻きして筒状にし、これを蛇腹状に折り畳んだ高さの低い筒状体(外径84mm,内径60mm)を用意する。これを実施例1と同様の金属棒に、3個通して積み重ね、筒状体とする。積み重ねてなる筒状体の高さを金属棒の長さと同等にし長柱体を構成する。
上記長柱体を用い、以下実施例1と同様に樹脂製歯車を製造する。一回の成形で製造できる樹脂製歯車の個数、このときに無駄になる樹脂量は実施例1と同様である。
【0026】
従来例1
パラ系アラミド繊維及びメタ系アラミド繊維を、重量比で50/50の割合で混紡した糸をニット編みして筒状体を構成する。この筒状体を端部から軸方向に巻き上げて、外径82mm,内径60mm,厚さ20mmのリング状補強繊維基材とする。
二個積み重ねた上記リング状補強繊維基材とその中央に位置する金属製ブッシュとを200℃の成形金型に収容する。成形金型は、リング状補強繊維基材の厚さ方向に開閉動作するものであり、成形金型を閉じる動作によりリング状補強繊維基材を圧縮して、面方向に広がったリング状補強繊維基材を金属製ブッシュの周囲に圧接してその形状になじませる。次に、閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、リング状補強繊維基材に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属製ブッシュをインサートとする円板を成形する。そして、成形した円板の周囲に切削加工により歯を形成する。
この従来例において、実施例と同個数の樹脂製歯車を製造するときの樹脂硬化物の除去・清掃工数は、実施例の10倍である。また、無駄になる樹脂量は一個当たり15gである。
【0027】
上記実施例と従来例における樹脂製歯車の特性を表1に示す。表1に示した各特性の測定は次のようにして行なった。尚、各例の樹脂製歯車の樹脂中に占める補強繊維の含有量はいずれも同じである。
曲げ強度は、製造した樹脂製歯車の歯部三箇所から切り出した扇形試料の曲げ強度(初期強度)を測定したものである。
実装耐久時間は、自動車エンジンのギヤ加速テスト(回転数:6000rpm,油温130℃,歯元負荷応力255MPa)での耐久時間を測定した。10個の試料の測定値の平均値を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
上述のように、本発明に係る製造法によれば、少ない工数で、且つ無駄になる樹脂の発生量も抑えて樹脂製歯車を製造することができる。特に、本発明に係る第二の製造法によれば、従来に比べ優れた性能を備えた樹脂製歯車を製造することも可能になる。本発明に係る第三の製造法によれば、本発明に係る第一、第二の製造法による場合より、筒状体の樹脂成形部と金属棒の結合強度を優れたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す製造工程の説明図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す製造工程の説明図である。。
【図3】フェルトを構成する補強繊維の配向状態を示す概念図である。
【符号の説明】
1,1’:長柱体
11:金属棒
111:凸部
12:フェルト
121:厚さ方向を向いた補強繊維
122:平面方向を向いた補強繊維
13,13’:筒状体
14:成形した長柱体
2:成形金型
3:液状樹脂
Claims (5)
- 次の(a)〜(d)の工程を経ることを特徴とする樹脂製歯車の製造法。
(a)帯状のフェルトを筒状に重ね巻きした筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する工程、
(b)前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する工程、
(c)前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する工程、
(d)成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する工程、又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する工程。 - 筒状に重ね巻きしたフェルトの層間をニードリング処理により結合することを特徴とする請求項1記載の樹脂製歯車の製造法。
- 次の(e)〜(h)の工程を経ることを特徴とする樹脂製歯車の製造法。
(e)帯状のフェルトを筒状に重ね巻きしさらに筒状の軸方向に蛇腹状に折り畳んだ一つの筒状体又はその複数個を積み重ねてなる筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する工程、
(f)前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する工程、
(g)前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する工程、
(h)成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する工程、又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する工程。 - 次の(i)〜(l)の工程を経ることを特徴とする樹脂製歯車の製造法。
(i)伸縮性をもたせて編んだ帯状布を筒状に重ね巻きしさらに前記筒状の軸方向に蛇腹状に折り畳んだ一つの筒状体又はその複数個を積み重ねてなる筒状体とその中心を貫通する金属棒とからなる長柱体を用意する工程、
(j)前記長柱体を長柱体の径方向に開閉動作する成形金型に収容し、成形金型を閉じる動作により長柱体をその径方向から圧縮する工程、
(k)前記閉じた成形金型に液状樹脂を注入し、筒状体に浸透させた液状樹脂を加熱硬化して金属棒をインサートとする長柱体を成形する工程、
(l)成形した長柱体を所定幅で分割し、分割した円板の周囲に歯を形成する工程、又は、成形した長柱体の周囲に歯を形成し、その後にこれを所定幅で分割する工程。 - 成形金型により、長柱体の周囲に概略の歯形を賦形することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂製歯車の製造法。
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