JP4126428B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に搭載されるディスクブレーキに関し、特に、シリンダとピストンとの間をシール部材で密封する構造のディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディスクブレーキにおいては、ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドを押圧するためのピストンが、キャリパの有底筒状のシリンダに摺動可能に挿通されており、シリンダに形成されたシリンダボアとピストンとにより形成される液圧室に液圧が導入されることで、ピストンが推進してブレーキパッドを押圧するようになっている。
【0003】
ピストンとシリンダとの間には、両者間を密封するためのEPDM(エチレンプロピレンゴム)材等のゴム材料からなる断面方形の角リングで構成されるシール部材が設けられている。シール部材は、前記シリンダボアに周設されるシール溝内にその底面部へ当接して組み付けられており、このシール溝は、シリンダの軸方向における長さにおいて、前記シール部材よりも長く形成されるとともに、その底面部がシリンダ開口方向に一定の角度で拡径され、シリンダの軸方向における断面が略台形形状となるように形成されている。
【0004】
前記シール部材は、ピストンとシリンダとの間を密封するほかに、制動時にディスク方向に推進したピストンを制動解除時に液圧室方向に所定量戻す機能、いわゆる、ロールバック機能を備えている。
【0005】
ところで、上記のようなシール構造においては、制動時にブレーキパッドで発生する高温の制動熱がピストンを介してシール部材に伝わり、シール部材がこの制動熱によりシール溝に形成されている液圧室側の空間部へ膨張して、非制動時にピストンを液圧室方向に引き摺って移動させてしまう。
【0006】
このピストンの液圧方向への移動により、次回制動時のピストンストロークが増大して、制動の応答性が低下してしまうことが知られている。
【0007】
この問題を解決するために、シール部材として断面円形のOリングを用いてシール部材の熱膨張時のシール部材とピストンとの接触面積の増大を抑えて、ピストンの液圧室方向への移動を抑制したものがある(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−125284号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1のものにおいては、シール部材にOリングを用いているので、ピストンとの接触面積が少ないため、ピストンとの間で滑りが生じやすく、また、角リングに比べて軸方向における剛性が高いためピストンがディスク方向へ推進したときに変形し難い。このため、Oリングでは、シール部材による所期のロールバック性能を安定して得られないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ロールバック性能を安定的に得られる断面方形のシール部材を用い、シール部材の熱膨張によるピストンの液圧室方向への戻りを低減し得るディスクブレーキを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドと、該ブレーキパッドを押圧するためのピストンが摺動可能に挿通される有底筒状のシリンダを有するキャリパと、前記シリンダ内に周設され、前記ピストンとシリンダとの間を密封する断面方形のシール部材が組み付けられるシール溝とを備えたディスクブレーキにおいて、前記シール溝の底面部には、シリンダの軸方向開口側に向けて拡径する拡径部と、シリンダの軸方向底部側に位置して、シリンダの軸方向線に対して拡径部がなす角度よりも小さな角度を有する周面部とが形成されており、前記拡径部と前記周面部との境界点を熱膨張していないときの前記シール部材の角部の位置と同位置またはその近傍に設定し、前記シール部材は、熱により膨張したときに、その膨張部分が前記周面部へ臨むことを特徴とする。
【0012】
この請求項1の発明によれば、ロールバック性能が安定して得られる断面方形のシール部材を用い、このシール部材が熱により膨張したときに、その膨張部分がシール溝の底面部に形成される周面部に臨むようになっているので、熱膨張時におけるシール部材の容積変化を周面部で吸収することができ、ピストンとの当接面側におけるシール部材の容積変化を抑えて、液圧室方向へのピストンの移動量を低減することができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載のディスクブレーキにおいて、周面部は、シリンダの軸方向底部側に向けて拡径していることを特徴とする。
【0014】
この請求項2の発明によれば、シール部材が熱により膨張したときに、その膨張部分がシリンダの軸方向底部側に向けて拡径している周面部に臨むようになっているので、熱膨張時におけるシール部材の容積変化を比較的多く周面部で吸収することができ、ピストンとの当接面側におけるシール部材の容積変化を抑えて、液圧室方向へのピストンの移動量を低減することができる。
【0015】
請求項3の発明は、ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドと、該ブレーキパッドを押圧するためのピストンが摺動可能に挿通される有底筒状のシリンダを有するキャリパと、前記シリンダ内に周設され、前記ピストンとシリンダとの間を密封する断面方形のシール部材が組み付けられるシール溝とを備えたディスクブレーキにおいて、前記シール溝の底面部には、シリンダの軸方向開口側に向けて拡径する拡径部と、シリンダの軸方向底部側に位置して、前記シール部材が熱により膨張したときの膨張部分を前記拡径部の延長線よりもシリンダ径方向外方に受け入れる収容空間とを設け、前記拡径部と前記収容空間との境界点を熱膨張していないときの前記シール部材の角部の位置と同位置またはその近傍に設定したことを特徴とする。
【0016】
この請求項3の発明によれば、シール部材が熱により膨張したときの膨張部分を収容空間が拡径部の延長線よりもシリンダ径方向外方に受け入れるので、熱膨張時におけるシール部材の容積変化を収容空間で吸収することができ、ピストンとの当接面側におけるシール部材の容積変化を抑えて、液圧室方向へのピストンの移動量を低減することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態としてのディスクブレーキの断面図である。また、図2は図1におけるシール部材とシール溝との拡大断面図であり、シール部材が熱膨張していない状態が示されており、図3はシール部材が熱膨張した状態を示す図2と同様の拡大断面図である。
【0019】
本ディスクブレーキは、いわゆる、フローティング型のディスクブレーキであって、図1に全体構造を示すように、ディスクロータDより車両内側に位置する車両の非回転部(ナックル等、図示せず)に固定されるキャリア1と、キャリア1に形成される一対の支持部(図示せず)にスライドピン(図示せず)を用いてディスクロータDの軸方向(図1中矢印A方向及び矢印B方向)へ摺動可能に支持されたキャリパ2と、キャリア1の一対の支持部間に、ディスクロータDの両面側に位置してその軸方向へ移動可能に支持された一対のブレーキパッド3,4とから概略構成されている。
【0020】
キャリパ2は、ディスクロータDより車両外側に位置する爪部5と、ディスクロータDの外周上を跨ぐディスクパス部6と、ディスクロータDより車両内側に位置する有底筒状のシリンダ部7とから構成されている。
【0021】
前記シリンダ部7の内周には、シリンダボア8が形成され、シリンダ部7の底部側7aには、図示しないマスタシリンダからの液圧が導入される流入口9が穿設されている。
【0022】
前記シリンダボア8には、有底筒状のピストン10がシール部材11を介して液密かつ移動可能に挿通されており、ピストン10とシリンダボア8の底部8aとの間に作動液が貯留される液圧室12が形成されている。
【0023】
シール部材11は、長方形若しくは正方形の方形断面を有する円環状のEPDM(エチレンプロピレンゴム)材からなる角リングである。シール部材11は、図2及び図3に詳細に示すように、ピストン10に摺接する内周面11aと、後述のシール溝14の底面部14cに密着する外周面11bと、シリンダ開口側面11cと、シリンダ底部側面11dとを有している。
【0024】
前記シリンダボア8の開口8b側には、一端がシリンダボア8側に嵌合保持され、他端がピストン10の外周に嵌合保持されたダストブーツ13が設けられており、このダストブーツ13によりシリンダボア8内への埃や水分の侵入が防止されるようになっている。
【0025】
前記シリンダボア8のダストブーツ13が嵌合保持されている部分よりも底部8a側には前記シール部材11が組み付けられるシール溝14がシリンダボア8の全周にわたって周設されている。
【0026】
このシール溝14は、図2及び図3に詳細に示すように、シリンダ開口側壁14a、シリンダ底部側壁14b、及び底面部14cから大略形成されており、シリンダ開口側壁14aのシリンダボア8側には、後述するロールバックのための面取り部14aaが形成されている。
【0027】
底面部14cには、シリンダ開口側壁14a側に底面部14cのほとんどの長さを占める拡径部14dと、シリンダ底部側壁14b側に周面部14eとが形成されている。拡径部14dは、シリンダボア8の開口側に向け、シリンダボア8の軸方向線Lに対して角度θ0をもって拡径して形成されている。また、周面部14eは、シリンダボア8の軸方向底部側に向け、シリンダボア8の軸方向線Lに対して角度θ1をもって拡径して形成されている。
【0028】
ここで、図2に示すように、本発明においては、拡径部14dと周面部14eとの境界点Kを通るシリンダボア8の軸方向線Lを基準として、拡径部14dの延長線L1と上記軸方向線Lとのなす角度θ0をプラス方向の角度としている。これに対して、軸方向線Lと周面部14eとのなす角度θ1は、上記軸方向線Lに対してマイナス方向の角度となる。このため、角度θ1は角度θ0よりも小さな角度となっている。
【0029】
これにより、周面部14eの内周と拡径部14dの延長線L1との間に、この延長線L1よりもシリンダボア8の径方向外方に位置する収容空間14gが形成される。
【0030】
また、前記拡径部14dと周面部14eとの境界点Kは、熱膨張していないときのシール部材11の外周面11bとシリンダ底部側面11dとの角部Sの位置と同位置に設定されている。
【0031】
上述したように、シール溝14は、その拡径部14dがシリンダボア8の軸方向開口側に向けて一定の角度θ0で拡径して斜面となっているので、この拡径部14dにシール部材11の外周面11bが当接すると、斜面に沿ってシール部材11のシリンダ開口側面11cがシリンダ開口側壁14a側に寄せられる。このことにより、前記シール部材11のシリンダ底部側面11dとシール溝14のシリンダ底部側壁14bとの間に空間部14fが設定されるようになっている。
【0032】
また、シール溝14の拡径部14dが斜面となっていることで、角リングからなるシール部材11のピストン10への締め代を液圧室12側でもたせて液圧室12からの液漏れを防止することができるようになっている。
【0033】
拡径部14dの途中には、シール溝14の加工時に発生する切子を二分するために、シール溝14の加工前に予め切削される断面V字形状の切子分断溝15が位置するようになっている。このように、シール溝14の加工前に予め切子分断溝15を切削しておくことで、シール溝14の加工時の切子が二分されて細くなり、切子をシール溝14内に残留させてしまうことが防止されるようになっている。
【0034】
つぎに、本第1の実施の形態のディスクブレーキにおける作動を説明する。
【0035】
運転者の制動操作により、図示しないマスタシリンダより図1に示すキャリパ2の液圧室12に流入口9を介して液圧が供給されると、ピストン10がシリンダボア8内をディスクロータD方向(図1中のA方向)に推進される。
【0036】
このピストン10の推進により、ピストン10がブレーキパッド3を介してディスクロータDを押圧し、この押圧力がディスクパス部6を介して爪部5にも伝達されて爪部5がブレーキパッド4を介してディスクロータDを押圧する。このようにディスクロータDが両面から押圧されることで制動力が発生する。
【0037】
上記ピストン10がA方向に推進されたときに、シール部材11は、液圧室12の液圧及びピストン10との締め代の嵌合力により、ピストン10に伴ってシール部材11の内周面11aがA方向に移動する。これによって、シール部材11は弾性変形して面取り部14aaに入り込んで、液圧が除かれたときにピストン10をB方向へ復元する力が蓄積される。
【0038】
運転者が制動を解除すると、マスタシリンダの液圧が減圧され、液圧室12の液圧がほぼ大気圧まで低下する。このため、ピストン10は、シール部材11の復元力により、シリンダボア8の底部8a側(図1中B方向)へシール部材11の弾性変形が解消される所定量分だけ移動する。このピストン10の移動によりブレーキパッド3,4がディスクロータDから離間して制動力が解除される。
【0039】
上記制動時の制動エネルギは、熱エネルギに変換されてディスクロータD及びブレーキパッド3,4に高温の制動熱が発生する。この制動熱は、制動が終了したのちにブレーキパッド3からピストン10を介してシール部材11に伝達され、その制動熱によりシール部材11が熱膨張する。
【0040】
このシール部材11の熱膨張時の状態について、図3により説明する。
【0041】
図3において実線で示しているのは、シール部材11が熱膨張している状態であり、シール部材11の温度は約150℃となっている。また、図3中、点線で示しているのは、熱膨張していないとき(図2に示す状態)のシール部材11のシリンダ底部側面11dを示しており、シール部材11の温度としては約20℃のときの状態である。さらに、図3中、一点鎖線で示しているのは、従来のディスクブレーキにおけるシール溝の底面部Mと熱膨張したときのシール部材のシリンダ底部側面Nとであり、これらは本件発明との比較のために記載している。
【0042】
従来のシール溝の底面部Mにおいては、シリンダボア8の軸方向線Lに対して拡径部14dがなす角度θ0で傾斜面が設けられている。このため、熱膨張したときのシール部材の外周面はこの角度θ0の傾斜面に沿って容積が変化するので、シール部材の膨張部分のシリンダ底部側面Nでは、シール部材の外周面側よりも内周面側の容積変化が大きくなっている。
【0043】
したがって、シール部材の内周面とシリンダ底部側面との角部Tが角部T”まで移動することになり、このT−T”がピストン10をシリンダボア8の底部8a側へ移動させる移動量となっていた。
【0044】
これに対して、本第1の実施の形態においては、シール溝14の底面部14cの周面部14eが、シリンダボア8の軸方向線Lに対して拡径部14dがなす角度θ0よりも小さな角度θ1を有し、シリンダボア8の底部8a側に向けて拡径してシリンダ底部側壁14b側に形成されている。
【0045】
このため、熱膨張したときのシール部材11の膨張部分11eは、この周面部14eに臨み、これに当接しつつ収容空間14g内に受け入れられるので、この受け入れられた分だけシリンダ底部側面11d’では、シール部材11の外周面11b側よりも内周面11a(ピストン10への当接面)側の容積変化が小さくなる。すなわち、シール部材11の内周面11a側の容積変化が小さく抑えられる。
【0046】
したがって、シール部材11の内周面11aとシリンダ底部側面11dとの角部Tが、シール部材11の内周面11aとシリンダ底部側面11d’との角部T’までしか移動せず、ピストン10をシリンダボア8の底部8a側へ移動させる量もT−T'となり、従来の移動量T−T”よりも小さく抑えられることになる。
【0047】
上述したように、本第1の実施の形態においては、周面部14eを形成して、熱膨張時におけるシール部材11の容積変化をこの周面部14eで吸収することができ、ピストン10を移動させるシール部材11の内周面11a側の容積変化を抑えることができる。よって、シール部材にロールバック性能を安定的に得られる角リングを用いて、シール部材11の熱膨張によるピストン10の戻りの移動量を低減することができる。
【0048】
なお、本第1の実施の形態においては、前記拡径部14dと周面部14eとの境界点Kを、熱膨張していないときのシール部材11の外周面11bとシリンダ底部側面11dとの角部Sの位置と同位置に設定しているが、熱膨張時にシール部材11の膨張部分11eが周面部14eに臨む位置であれば、角部Sの位置と同位置に設定しなくてもよく、角部Sの近傍に設定するようにしてもよい。
【0049】
つぎに、上記第1の実施の形態に関する変形例について、図4に基づいて説明する。図4の(A)は、本変形例におけるシール部材11が熱膨張した状態を示すシール溝24及びシール部材11の拡大断面図であり、また、図4の(B)は(A)の点線丸囲み部分の拡大図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成については同符号を付してあり、以下、この同符号を付した構成については詳細な説明を省略する。また、シール溝の符号については、14から24に変更したが、これに続くアルファベットについては第1の実施の形態と同じものを使用し、同じ部位を表すようにした。
【0050】
本変形例において、上記第1の実施の形態と異なるのは、シール溝24の形状であり、特に、周面部24eのシリンダボア8の軸方向線Lに対してなす角度θ2が0°になっている点である。なお、角度θ2がシリンダボア8の軸方向線Lに対して拡径部24dの延長線L1がなす角度θ0よりも小さな角度となっている点は第1の実施の形態と同様である。
【0051】
このような周面部24eを有するシール溝24内で、シール部材11が熱膨張した場合には、熱膨張したときのシール部材11の膨張部分11eは、この周面部24eに臨むとともに、この上に沿って膨張する。この場合、周面部24eがシリンダボア8の軸方向に対して拡径部24dがなす角度θ0よりも小さな角度θ2を有してシリンダ底部側壁24b側に形成されている。このため、両者の角度差に基づいて、シール溝24のシリンダボア8の底部8a側に位置する周面部24eの内周側に、収容空間24gが形成される。この収容空間24gによってシール部材11の膨張部分11eを拡径部24dの延長線L1よりもシリンダボア8の径方向外方において受け入れるようになっている。したがって、周面部24e側にシール部材11の容積変化が起こり、シール部材11の内周面11a側の容積変化は比較的小さく抑えられる。
【0052】
このため、シール部材11の内周面11aとシリンダ底部側面11dとの角部Tが、シール部材11の内周面11aとシリンダ底部側面11d’との角部T’までしか移動しない。このため、ピストン11をシリンダボア8の底部8a側へ移動させる量もT−T'となり、従来の移動量T−T”よりも比較的小さく抑えられる。したがって、この変形例においてもシール部材11の熱膨張によるピストン10の戻りの移動量を低減することができる。
【0053】
なお、上記第1の実施の形態においては、周面部24eがシリンダボア8の軸方向線Lに対してなす角度θ1を軸方向線Lに対してマイナス方向の角度とし、また、上記変形例においては周面部24eがシリンダボア8の軸方向線Lに対してなす角度θ2を0°として、シリンダボア8の軸方向線Lに対して拡径部14dがなす角度θ0よりも小さくしている。しかしながら、これに限ることなく、周面部24eがシリンダボア8の軸方向線Lに対してなす角度は、軸方向線Lに対してプラス方向の角度で角度θ0よりも小さいものであってもよい。
【0054】
つぎに、シール溝の加工方法に関する第2の実施の形態について、図5及び図6に基づいて説明する。
【0055】
図5は、本第2の実施の形態における加工方法を適用したシール溝34におけるシール部材11が熱膨張した状態を示す拡大断面図であり、また、図6(A),(B)は本第2の実施の形態におけるシール溝34の加工手順を示す断面図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成については同符号を付し、この同符号を付した構成については詳細な説明を省略する。
【0056】
本第2の実施の形態おいては、上記第1の実施の形態と異なり、拡径部34dの途中には切子分断溝が位置せず、図5中、破線で示す周面部形成溝35により周面部34eがシール溝34の切削に先立って行われ、その後にシール溝34が切削形成される。なお、熱膨張時のシール部材11に対するシール溝34の作用としては、上述の第1の実施の形態と変わるところはない。
【0057】
上述した周面部34eを周面部形成溝35で形成するためのシール溝34の加工手順を図6に基づき説明すると、図6の(A)は周面部形成溝35を切削加工する手順を示す断面図であり、図6の(B)はシール溝34全体を切削加工する手順を示す断面図である。
【0058】
まず、図6(A)に示すように、キャリパ2のシリンダ部7におけるシリンダボア8に、断面略レの字形状のバイトC1をシリンダボア8の内周円に沿って回転させながら少しずつ切削して周面部形成溝35が形成される。この周面部形成溝35は、シリンダボア8の開口8b側に向って縮径する傾斜面35aと、底部側に面取り部を有してシリンダボア8の軸方向に直交する直交面35bとにより形成され、傾斜面35aの底部側の一部がシール溝34の周面部34eとなる。また、周面部形成溝35の溝深さは、シール溝34の溝深さよりも若干深く形成されるようになっている。
【0059】
この周面部形成溝35が形成された後に、図6(B)に示すように、シール溝34の底面部34cに対応する先端形状が凸形状となっている総形バイトC2によりシール溝34を形成する。この総形バイトC2により形成されるのは、シール溝34のシリンダ開口側壁34a・面取り部34aa・シリンダ底部側壁34bの開口側面取り面34ba・底面部34cの拡径部34dである。これらは、周面部形成溝35の加工方法と同様に、総形バイトC2をシリンダボア8の内周円に沿って回転させながら少しずつ切削されていく。
【0060】
なお、このシール溝34を切削加工するときに発生する切子は、第1の実施の形態における切子分断溝15によって二分された切子よりも大きいものとなる。しかしながら、断面略レの字形状の周面部形成溝35が予め形成されているため、シール溝34の軸方向長さよりも短い切子となるので、シール溝34に切子が残留してしまう可能性は低くなっている。
【0061】
このように、本第2の実施の形態においては、周面部形成溝35により周面部34eが形成されるので、バイトC1を変更することで周面部34eの形状を任意に変更することができる。したがって、図5に一点鎖線で示すような溝36を形成して収容空間を形成することもできる。
【0062】
なお、上述の第1,2の実施の形態及び変形例においては、ディスクブレーキの形式として、フローティング式のディスクブレーキにより説明したが、これに限らず、液圧により作動するディスクブレーキであれば、キャリパ固定式のディスクブレーキに適用してもよい。
【0063】
上述の第1の実施の形態及び変形例において、周面部14e,24eはシール溝14,24の全周にわたって形成したが、これに限らず、シール部材11の熱膨張による容積変化を周面部14e,24eで吸収できれば、シール溝14,24の全周のうちの複数箇所に周面部14e,24eを形成してもよい。
【0064】
また、上記第1、2の実施の形態、及び変形例を示す図面においては、周面部14e,24e,34eを断面において直線状にしたものを示しているが、これに代えて、円弧状に形成するようにしてもよい。
【0065】
【発明の効果】
請求項1の発明においては、ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドと、該ブレーキパッドを押圧するためのピストンが摺動可能に挿通される有底筒状のシリンダを有するキャリパと、前記シリンダ内に周設され、前記ピストンとシリンダとの間を密封する断面方形のシール部材が組み付けられるシール溝とを備えたディスクブレーキにおいて、前記シール溝の底面部には、シリンダの軸方向開口側に向けて拡径する拡径部と、シリンダの軸方向底部側に位置して、シリンダの軸方向線に対して拡径部がなす角度よりも小さな角度を有する周面部とが形成されており、前記拡径部と前記周面部との境界点を熱膨張していないときの前記シール部材の角部の位置と同位置またはその近傍に設定し、前記シール部材は、熱により膨張したときに、その膨張部分が前記周面部へ臨むことにより、ロールバック性能が安定して得られる断面方形のシール部材を用い、このシール部材が熱により膨張したときに、その膨張部分がシール溝の底面部に形成される周面部に臨むようになっているので、熱膨張時におけるシール部材の容積変化を周面部で吸収することができ、ピストンとの当接面側におけるシール部材の容積変化を抑えて、液圧室方向へのピストンの移動量を低減することができる。
【0066】
請求項2の発明においては、請求項1記載のディスクブレーキにおいて、周面部が、シリンダの軸方向底部側に向けて拡径していることにより、シール部材が熱により膨張したときに、その膨張部分がシリンダの軸方向底部側に向けて拡径している周面部に臨むようになっているので、熱膨張時におけるシール部材の容積変化を比較的多く周面部で吸収することができ、ピストンとの当接面側におけるシール部材の容積変化を抑えて、液圧室方向へのピストンの移動量を低減することができる。
【0067】
請求項3の発明においては、ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドと、該ブレーキパッドを押圧するためのピストンが摺動可能に挿通される有底筒状のシリンダを有するキャリパと、前記シリンダ内に周設され、前記ピストンとシリンダとの間を密封する断面方形のシール部材が組み付けられるシール溝とを備えたディスクブレーキにおいて、前記シール溝の底面部には、シリンダの軸方向開口側に向けて拡径する拡径部と、シリンダの軸方向底部側に位置して、前記シール部材が熱により膨張したときの膨張部分を前記拡径部の延長線よりもシリンダ径方向外方に受け入れる収容空間とを設け、前記拡径部と前記収容空間との境界点を熱膨張していないときの前記シール部材の角部の位置と同位置またはその近傍に設定したことにより、シール部材が熱により膨張したときの膨張部分を収容空間が拡径部の延長線よりもシリンダ半径方向外方に受け入れるので、熱膨張時におけるシール部材の容積変化を収容空間で吸収することができ、ピストンとの当接面側におけるシール部材の容積変化を抑えて、液圧室方向へのピストンの移動量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施の形態としてのディスクブレーキの全体断面図である。
【図2】図1におけるシール溝14及びシール部材11の拡大断面図である。
【図3】図2においてシール部材11が熱膨張したときの状態を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の変形例におけるシール溝及びシール部材の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるシール溝34及びシール部材11の拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるシール溝34の加工手順を示す断面図である。
【符号の説明】
D ディスクロータ
2 キャリパ
3,4 ブレーキパッド
7 シリンダ部(シリンダ)
8 シリンダボア(シリンダ)
10 ピストン
11 シール部材
14,24,34 シール溝
14c,24c,34c 底面部
14d,24d,34d 拡径部
14e,24e,34e 周面部
Claims (3)
- ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドと、
該ブレーキパッドを押圧するためのピストンが摺動可能に挿通される有底筒状のシリンダを有するキャリパと、
前記シリンダ内に周設され、前記ピストンとシリンダとの間を密封する断面方形のシール部材が組み付けられるシール溝と
を備えたディスクブレーキにおいて、
前記シール溝の底面部には、シリンダの軸方向開口側に向けて拡径する拡径部と、シリンダの軸方向底部側に位置して、シリンダの軸方向線に対して拡径部がなす角度よりも小さな角度を有する周面部とが形成されており、前記拡径部と前記周面部との境界点を熱膨張していないときの前記シール部材の角部の位置と同位置またはその近傍に設定し、
前記シール部材は、熱により膨張したときに、その膨張部分が前記周面部へ臨むことを特徴とするディスクブレーキ。 - 前記周面部は、シリンダの軸方向底部側に向けて拡径していることを特徴とする請求項1記載のディスクブレーキ。
- ディスクを介して両側に配置される一対のブレーキパッドと、
該ブレーキパッドを押圧するためのピストンが摺動可能に挿通される有底筒状のシリンダを有するキャリパと、
前記シリンダ内に周設され、前記ピストンとシリンダとの間を密封する断面方形のシール部材が組み付けられるシール溝と
を備えたディスクブレーキにおいて、
前記シール溝の底面部には、シリンダの軸方向開口側に向けて拡径する拡径部と、シリンダの軸方向底部側に位置して、前記シール部材が熱により膨張したときの膨張部分を前記拡径部の延長線よりもシリンダ径方向外方に受け入れる収容空間とを設け、前記拡径部と前記収容空間との境界点を熱膨張していないときの前記シール部材の角部の位置と同位置またはその近傍に設定したことを特徴とするディスクブレーキ。
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