JP4124113B2 - インサート成形方法 - Google Patents
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また、インサート部品としての多孔質体はその構造上表面粗さが粗いため、型締めする際に前記金型面が多孔質体の表面に一様に当接せず、したがって、前記金型面により多孔質体の表面を圧縮して固定する過程において、多孔質体の位置ずれが発生し易く、高精度な複合多孔質体を製造することが困難であるという問題があった。
さらに、要望される複合多孔質体は一般に、厚さが薄いシート状とされ、さらに多孔質体は三次元網目構造を有しているので、この多孔質体は強度が低く、したがって、前記従来のインサート成形では、キャビティにおける溶融樹脂の射出圧により多孔質体が容易に変形するなどして高精度な複合多孔質体を製造することが困難であるという問題があった。
請求項1に係る発明は、型締め状態で金型面間に形成されるキャビティにインサート部品としての多孔質体をインサートし、この多孔質体に連なるように溶融樹脂を射出するインサート成形を行うことにより、多孔質体と樹脂部とが一体に形成されてなる複合多孔質体を製造するためのインサート成形用金型装置を用いたインサート成形方法であって、前記インサート成形用金型装置は、前記金型面に対して出没可能に支持された位置決め手段を備え、 該位置決め手段は、前記金型面に対して進出移動したときに当該金型面に配置された前記多孔質体の縁部のうち複数箇所に各別に対向するとともに、これらのうち少なくとも一つが前記多孔質体の縁部に接し、該多孔質体を前記金型面に沿った方向に位置決めする構成とされた複数の位置決め部を備え、前記複数の位置決め部を前記金型面に対して進出移動させた状態で、型締めによって前記多孔質体を前記金型面により固定した後、前記位置決め部のうち少なくとも一つを後退移動して第1のキャビティを形成し、該第1のキャビティに溶融樹脂を射出した後に、前記金型面に対して前進移動している前記位置決め部を後退移動して第2のキャビティを形成し、該第2のキャビティに溶融樹脂を射出することを特徴とする。
この複合多孔質体10は、例えば金属からなる三次元網目構造を有する薄板状をなす多孔質体11と、この多孔質体11のそれぞれの外周縁部から多孔質体11の面方向に延びる樹脂部12とが一体に形成されたものであり、全体として矩形薄板状をなしている。
一方、樹脂部12は、多孔質体11と略同じ厚さを有する枠形薄板状をなし、図6(b)に示すように、多孔質体11の外周縁部に対して段差なく連ねられている。
なお、多孔質体11と樹脂部12とが一体になった矩形薄板状をなす複合多孔質体10は、その樹脂部12が固定あるいは狭持されるなどして各種装置に取り付けられることにより、例えば、フィルタ・ガス拡散部材・放熱部材・吸水部材などに用いられる。また、多孔質体11は、これを用いて製造する複合多孔質体10に要求される特性に応じて適宜選択されるものであり、金属不織布であってもよく、また金属製に限らず、結晶性の黒鉛や、結晶性でない無定形炭素を含むものとしての炭素質であってもよい。
図5に、ドクターブレード法によってスラリーを薄く成形するためのグリーンシート製造装置を示す。
スラリーSは、例えばSUS316L等の金属粉末、有機バインダ(メチルセルロース)、溶媒(水)を混合したものであり、必要に応じて、加熱処理により気化する発泡剤(ヘキサン)や消泡剤(エタノール)等が添加される。
グリーンシート製造装置30において、まず、スラリーSが貯蔵されたホッパ31から、ローラ32によって搬送されるキャリアシート33上にスラリーSが供給されると、キャリアシート33上のスラリーSが、移動するキャリアシート33とドクターブレード34との間で延ばされ、所定の厚さに成形される。
最後に、このグリーンシートGは、キャリアシート33から取り外された後、図示しない真空炉にて脱脂・焼成されることにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結した多孔質体11となる。
また、前記駆動部は、位置決め部8a,8bを各別に出没移動させる図示しない第1,第2の駆動部を備えており、これらの駆動部により第1,第2の位置決め部8a,8bが可動金型面4aに進出移動すると、図1(b)に示すように、これらの位置決め部8a,8bが全体として枠体を構成するようになっている。
まず、1つ目は、前記第1,第2の駆動部により位置決め部8a,8bを可動金型面4aに進出移動して枠体を構成した後に、多孔質体11をこの枠体の内側に位置する可動金型面4a上に配置する。これにより、多孔質体11の外周縁部が第1,第2の位置決め部8a,8bの内面の少なくとも一部に接することによって、図1に示すように、多孔質体11が金型面3a,4aの表面に沿った方向に位置決めされる。
次に、2つ目は、多孔質体11を可動金型面4a上に配置した後に、前記第1,第2の駆動部により第1,第2の位置決め部8a,8bを可動金型面4aに進出移動する。この際、第1,第2の位置決め部8a,8bの内面の少なくとも一部が多孔質体11の外周縁部に接することにより、図1に示すように、多孔質体11の前記位置決めがなされる。
まず、多孔質体11を可動金型面4a上に前述したように位置決め状態で配置する(図1参照)。そして、前述したように第1,第2の位置決め部8a,8bを多孔質体11の外周縁部に接触させた状態で、可動金型4を固定金型3に向かって前進移動させて型締めし、金型面3a,4aにより多孔質体11を型開閉方向に圧縮して固定するとともに、キャビティ2を形成する。ここで、この型締めの過程において、第1,第2の位置決め部8a,8bの先端面が固定金型面3aに当接した後は、可動金型4の前進移動に従って、徐々に弾性部材8cが縮小されることにより、第1,第2の位置決め部8a,8bの可動金型面4aからの突出長さが短くなる(図2参照)。
その後、第1のキャビティ内で溶融樹脂7が硬化する前に、第1の位置決め部8aと対向するように配置されている第2の位置決め部8bを前記第2の駆動部により後退移動させ、この位置決め部8bの先端面と可動金型面4aとを面一とし、金型面3a,4a間における第2の位置決め部8aが位置していた部分に第2のキャビティが得られる。そして、この第2のキャビティと連通しているゲート6を介してランナ5から溶融樹脂7を射出し(図4参照)、この溶融樹脂7を第1のキャビティ内に射出された溶融樹脂7と連続した状態で硬化させることにより、多孔質体11と樹脂部12とが段差なく連なり一体になったインサート成形品である複合多孔質体10が形成される。
逆に、多孔質体11の気孔径や気孔率が大きすぎても、多孔質体11自体の強度が不足して、樹脂成形圧及び樹脂硬化時の圧縮に耐えられなくなって変形の生じるおそれや、溶融樹脂7が多孔質体11の気孔内の奥深くまで浸透しすぎてしまって、所望の形状を維持することができなくなるおそれがある。
それゆえ、多孔質体11については、気孔径が10μm〜2mm程度、気孔率が40〜98%程度に設定されていることが好ましい。
また、この樹脂部12は、図6(b)に示すように平坦であってもよいが、ねじ挿通孔用の穴や、装置に対する嵌合用の溝形状、強度向上のためのリブ形状、ボスなどを樹脂成形時に設けておいてもよい。
さらにまた、樹脂部12は、図6(a)に示すように、多孔質体11の外周縁部すべてに連なる必要はなく、必要に応じて部分的に連なっていてもよいし、多孔質体11に予め穴を設けておいて、ここに溶融樹脂7を充填するように射出することにより、多孔質体11の外周縁部だけではなく中程にも樹脂部12が連なるようにしてもよいし、多孔質体12の少なくとも片面側に例えば格子状に連なるようにしてもよい。
すなわち、この構成では、次のような製造方法が実現される。可動金型4が前進移動して型締めする過程において、固定金型3に配設された位置決め部8a,8bのうち少なくとも一方が多孔質体11の外周縁部に接することにより、徐々に多孔質体11が金型面3a,4aに沿った方向に位置決めされ、型締めが完了した際に、この位置決めが完了するとともに、多孔質体11が金型面3a,4aにより型開閉方向に圧縮されて固定されることになる。その後、前記実施形態と同様に、第1,第2のキャビティを順次形成して、これらのキャビティに各別に溶融樹脂7を射出する。
さらにこの構成では、複合多孔質体10を形成した後に、可動金型4を固定金型3から離間するように後退移動させ、その後、再度位置決め部8a,8bを固定金型面3a上に進出移動すると、可動金型4が固定金型3から後退移動した際に、複合多孔質体10が固定金型面3a上に取られる不具合、いわゆる「キャビ取られ」の発生が抑制される。
さらに、位置決め部8a,8bは、前記実施形態に限らず、例えば、金型面3aまたは4aに出没可能に支持された1本以上のピン部材であってもよい。なお、このピン部材の断面形状は、円形状、矩形状、楕円形状などのいずれであってもよい。
さらにまた、第1,第2のキャビティに各別にランナ5からゲート6を介して溶融樹脂を射出した方法を示したが、このキャビティの数(位置決め部の数)は2つに限らずこれ以上であってもよい。
2 キャビティ
3 固定金型
3a 固定金型面
4 可動金型
4a 可動金型面
7 溶融樹脂
8 位置決め手段
8a 第1の位置決め部
8b 第2の位置決め部
10 複合多孔質体
11 多孔質体
12 樹脂部
Claims (1)
- 型締め状態で金型面間に形成されるキャビティにインサート部品としての多孔質体をインサートし、この多孔質体に連なるように溶融樹脂を射出するインサート成形を行うことにより、多孔質体と樹脂部とが一体に形成されてなる複合多孔質体を製造するためのインサート成形用金型装置を用いたインサート成形方法であって、前記インサート成形用金型装置は、前記金型面に対して出没可能に支持された位置決め手段を備え、 該位置決め手段は、前記金型面に対して進出移動したときに当該金型面に配置された前記多孔質体の縁部のうち複数箇所に各別に対向するとともに、これらのうち少なくとも一つが前記多孔質体の縁部に接し、該多孔質体を前記金型面に沿った方向に位置決めする構成とされた複数の位置決め部を備え、前記複数の位置決め部を前記金型面に対して進出移動させた状態で、型締めによって前記多孔質体を前記金型面により固定した後、前記位置決め部のうち少なくとも一つを後退移動して第1のキャビティを形成し、該第1のキャビティに溶融樹脂を射出した後に、前記金型面に対して前進移動している前記位置決め部を後退移動して第2のキャビティを形成し、該第2のキャビティに溶融樹脂を射出することを特徴とするインサート成形方法。
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