JP4123970B2 - 蒸発燃料処理装置のリーク診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用内燃機関の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の内燃機関の蒸発燃料処理装置では、燃料タンクで発生する蒸発燃料をキャニスタに導いて一時的に吸着させ、該キャニスタに吸着された蒸発燃料を新気導入口から導入される新気と共にパージ制御弁を介して内燃機関の吸気系に吸入させることによって、蒸発燃料の外気への放散を防止するようにしている。
【0003】
ところで、上記装置では、燃料タンクからキャニスタを経てパージ制御弁へ至るパージラインの配管に万一亀裂が生じたり、配管の接合部にシール不良が生じたりすると、蒸発燃料のリークを生じ、本来の放散防止効果を十分に発揮させることができなくなる。
【0004】
そこで、パージラインからの蒸発燃料のリークの有無を診断するリーク診断装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。
これは、新気導入口を開閉する新気導入口開閉弁を設け、パージ制御弁を開弁すると共に新気導入口開閉弁を閉弁して、パージラインに所定の負圧を導入後、パージ制御弁及び新気導入口開閉弁を共に閉弁して、負圧密閉状態のパージラインの第1の圧力変化率を計測する。また、パージ制御弁を閉弁すると共に新気導入口開閉弁を開弁して、パージラインを大気に開放した後、パージ制御弁及び新気導入口開閉弁を共に閉弁して、大気密閉状態のパージラインの第2の圧力変化率を計測する。そして、第1の圧力変化率と第2の圧力変化率との差を所定値と比較して、所定値以上の場合にリーク有りと判定する。
【0005】
第1の圧力変化率(負圧密閉状態からの圧力変化率)は、パージラインのリーク孔径が大きくなるほど大きくなるが、蒸発燃料の発生量が大きいときも大きくなる。そこで、蒸発燃料の発生量のみに依存する第2の圧力変化率(大気密閉状態からの圧力変化率)を求め、第1の圧力変化率から第2の圧力変化率を減算補正することで、リーク孔径にのみ依存する圧力変化率を求め、これによってリークの有無を判定するのである。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−256215号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のリーク診断装置においては、圧力変化率として、一定時間内における圧力変化量を検出しており、圧力変化量が大きい場合にも、一定時間経過するまで待つため、診断に時間がかかるという問題点があった。
【0008】
そこで、診断時間を短縮するため、圧力変化量が所定の閾値に達した場合に、その時点までの圧力変化率を計測することで、診断時間を短くすることが考えられるが、燃料温度が高く、蒸発燃料発生分(燃料気化分)が圧力変化の大部分を占めるような場合に、圧力変化量の閾値に基づき、一様に診断時間を短くしてしまうと、診断時間が短くなる分、診断精度が悪化するという問題点があった。
【0009】
これは、蒸発燃料発生分の補正を行っているとは言え、負圧密閉状態と大気密閉状態とでは負圧密閉状態の方が蒸発燃料の発生量が多く、また、負圧が大きいときほど蒸発燃料の発生量が多くなるので、燃料温度が高い場合に、負圧が高いうちに診断を打ち切ると、補正しきれずに、診断精度の悪化を招くのである。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、診断時間短縮と診断精度向上との両立を図ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明では、パージ制御弁を開弁すると共に新気導入口開閉弁を閉弁して、パージラインに所定の負圧を導入後、パージ制御弁及び新気導入口開閉弁を共に閉弁して、負圧密閉状態のパージラインの第1の圧力変化率を、圧力変化量が所定の閾値に達するまでの診断時間にて、計測する。この際に、燃料温度に応じて、前記閾値を変更する。また、パージ制御弁を閉弁すると共に新気導入口開閉弁を開弁して、パージラインを大気に開放した後、パージ制御弁及び新気導入口開閉弁を共に閉弁して、大気密閉状態のパージラインの第2の圧力変化率を計測する。そして、前記第1の圧力変化率と前記第2の圧力変化率との差に基づいてリーク度合を判定する。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料温度に応じて、前記閾値を変更することで、診断時間を変更できるため、燃料温度が低いときに診断時間を短くして診断時間短縮を図り、燃料温度が高いときに診断時間を長くして診断精度向上を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すシステム図である。
【0014】
内燃機関1の吸気系には、上流側から、エアクリーナ2、スロットル弁3、吸気マニホールド4が設けられている。燃料供給は、各気筒毎に設けた燃料噴射弁(図示せず)によりなされる。
【0015】
蒸発燃料処理装置としては、燃料タンク5にて発生する蒸発燃料を蒸発燃料導入通路6により導いて一時的に吸着するキャニスタ7が設けられている。キャニスタ7は、容器内に活性炭などの吸着材8を充填したものである。
【0016】
キャニスタ7にはまた、新気導入口(大気開放口)9が形成されると共に、パージ通路10が導出されている。パージ通路10は、パージ制御弁11を介して、スロットル弁3下流の吸気マニホールド4に接続されている。パージ制御弁11は、エンジンコントロールユニット(以下ECUという)20から出力される信号により開弁するようになっている。
【0017】
従って、内燃機関1の停止中などに燃料タンク5にて発生した蒸発燃料は、蒸発燃料導入通路6によりキャニスタ7に導かれて、ここに吸着される。そして、内燃機関1が始動されて、所定のパージ許可条件が成立すると、パージ制御弁11が開き、内燃機関1の吸入負圧がキャニスタ7に作用する結果、新気導入口9から導入される新気によってキャニスタ7に吸着されていた蒸発燃料が脱離され、この脱離した蒸発燃料を含むパージガスがパージ通路10を通って吸気マニホールド4内に吸入され、この後、内燃機関1の燃焼室内で燃焼処理される。
【0018】
蒸発燃料処理装置のリーク診断装置の構成要素としては、キャニスタ7の新気導入口9に、これを開閉可能な新気導入口開閉弁12が設けられる。
ECU20では、所定のリーク診断条件にて、パージ制御弁11及び新気導入口開閉弁12の開閉を制御しつつ、リーク診断を行う。このリーク診断のため、ECU20には、圧力センサ21と燃温センサ22とからそれぞれ信号が入力されている。
【0019】
圧力センサ21は、燃料タンク5からキャニスタ7を経てパージ制御弁11に至るパージラインの圧力Pを検出すべく、キャニスタ7内に臨ませてある。
燃温センサ22は、燃料温度Tfを検出すべく、燃料タンク5内に臨ませてある。
【0020】
次に、ECU20による蒸発燃料処理装置のリーク診断について、図2のフローチャートにより、図3のタイムチャートを参照しつつ、説明する。
S1では、リーク診断が未完了か否かを判定し、未完了の場合にS2へ進む。完了している場合は処理を終了する。
【0021】
S2では、所定のリーク診断条件が成立しているか否かを判定する。ここで、運転条件や運転履歴から、蒸発燃料のパージを停止することが可能で、スロッシング影響(振動で生じる過剰な気化)が無く、かつ、吸気系に負圧が得られる条件のときに、リーク診断条件が成立するものとする。
【0022】
リーク診断条件が成立していない場合は、成立するのを待ち、成立した場合に、S3へ進む。
S3では、診断開始に先立って、燃温センサ22により検出される燃料温度Tfを読込み、これに応じて、図4に示すようなテーブルを参照することで、診断時間を決定する圧力変化量の閾値ΔPevを設定する。ここで、燃料温度Tfが高くなるほど、診断時間が長くなるように、圧力変化量の閾値ΔPevを大きく設定する。尚、連続的に変化させて設定する他、低温ど高温との2段階など、複数段に設定するようにしてもよい。
【0023】
S4では、パージ制御弁11を開弁(OPEN)すると共に、新気導入口開閉弁12を閉弁(CLOSE)する(図3のA点)。これにより、パージラインに負圧を導入する。
【0024】
S5では、圧力センサ21により検出されるパージラインの圧力Pを読込み、この圧力Pが所定の負圧(診断開始負圧)Psに達したか否かを判定し、達した段階でS6へ進む。
【0025】
S6では、診断を開始するため、パージ制御弁11を閉弁(CLOSE)すると共に、新気導入口開閉弁12を閉弁(CLOSE)する(図3のB点)。これにより、パージラインは負圧密閉状態となる。この後、パージラインのリーク度合(リーク孔径)と、蒸発燃料の発生量とに応じて、次第に、圧力が上昇していく。
【0026】
S7では、診断開始と同時に、診断時間タイマをスタートさせる。
S8では、診断中の処理として、圧力センサ21により検出されるパージラインの圧力Pを読込む。
【0027】
S9では、診断開始時からの圧力変化量P−Psを求め、これが閾値ΔPevに達したか否かを判定する。未達の場合は、S10へ進む。
S10では、診断時間タイマにより計測される診断時間が予め定めた診断時間上限値Tmax に達したか否かを判定する。未達の場合は、S8へ戻る。
【0028】
診断中は、S8〜S10を繰り返し実行し、診断開始時からの圧力変化量P−Psが閾値ΔPevに達したとき(図3のC)、又は、診断時間が上限値Tmax に達したとき(図3のF)に、S9又はS10から、S11へ進む。
【0029】
S11では、このときの診断時間(診断時間タイマの値)を、診断時間T1として記憶する。
S12では、このときの圧力変化量P−Psを診断時間T1により除算して、第1の圧力変化率ΔP1=(P−Ps)/T1を求める。これは、リーク度合及び蒸発燃料発生量に応じた値となる。
【0030】
S13では、パージ制御弁11を閉弁(CLOSE)すると共に、新気導入口開閉弁12を開弁(OPEN)する(図3のC又はF点)。これにより、パージラインを大気に開放する。
【0031】
S14では、圧力センサ21により検出されるパージラインの圧力Pを読込み、この圧力Pが大気圧Paに達したか否かを判定し、達した段階でS15へ進む。
【0032】
S15では、補正用の診断を開始するため、パージ制御弁11を閉弁(CLOSE)すると共に、新気導入口開閉弁12を閉弁(CLOSE)する(図3のD又はG点)。これにより、パージラインは大気密閉状態となる。この後、蒸発燃料の発生量に応じて、次第に、圧力が上昇していく。
【0033】
S16では、補正用の診断開始と同時に、診断時間タイマをスタートさせる。
S17では、補正用の診断中の処理として、圧力センサ21により検出されるパージラインの圧力Pを読込む。
【0034】
S18では、診断時間タイマにより計測される診断時間が最初の診断時間と同じ長さの診断時間T1に達したか否かを判定する。未達の場合は、S17へ戻る。
【0035】
診断中は、S17〜S18を繰り返し実行し、診断時間がT1に達したとき(図3のE又はH点)に、S18から、S19へ進む。
S19では、このときの圧力変化量P−Paを診断時間T1により除算して、第2の圧力変化率ΔP2=(P−Pa)/T1を求める。これは、蒸発燃料発生量のみに応じた値となる。
【0036】
S20では、第1の圧力変化率ΔP1から第2の圧力変化率ΔP2を減算することで、リーク度合(リーク孔径)にのみ依存する圧力変化率、すなわちリークレベルLV=ΔP1−ΔP2を求める。
【0037】
S21では、リークレベルLVを所定値と比較することで、リークの有無を判定する。すなわち、リークレベルLVが所定値以上のときにリーク有りと判定し、所定値未満のときにリーク無しと判定する。
【0038】
尚、フローでは省略したが、診断終了後は、パージ制御弁11をパージ要求の有無により開弁又は閉弁する一方、新気導入口開閉弁12は開弁させる。
次に作用効果について説明する。
【0039】
図5は燃料温度が低い場合(リーク有り)であり、(a)は圧力変化量の閾値を大きく設定した上、燃料温度が低いがために結果的に診断時間が長くなった場合、(b)は閾値ΔPevを小さく設定して(リークのため)結果的に診断時間が短くなった場合である。
【0040】
図中e1は実際の蒸発燃料発生分による圧力上昇、e2は大気密閉状態で学習した蒸発燃料発生分による圧力上昇であり、燃料温度が低い場合は、蒸発燃料の発生量が少ないので、(a)と(b)とで大きな差はなく、(b)のように結果的に診断時間が短くなっても、診断精度への影響はない。
【0041】
図6は燃料温度が高い場合(リーク無し)であり、(a)は圧力変化量の閾値を大きく設定して結果的に診断時間が長くなった場合、(b)は閾値ΔPevを小さく設定して燃料温度が高いがために結果的に診断時間が短くなった場合である。
【0042】
図中e1は実際の蒸発燃料発生分による圧力上昇、e2は大気密閉状態で学習した蒸発燃料発生分による圧力上昇であり、燃料温度が高い場合は、蒸発燃料の発生量が多いので、(a)に比べて、(比較的負圧が大きな所で計測が打ち切られる)(b)で大きな誤差を生じてしまう。よって、(a)のように圧力変化量の閾値ΔPevを大きく設定して、燃料温度が高くとも結果的に診断時間が長くなるようにすることで、診断精度の悪化を防止することが望ましい。
【0043】
すなわち、図7に燃料温度が高いとき(リークなし)と低いとき(リークあり)とに分けて、閾値を設けたことによる結果的な診断時間と診断誤差との関係を示すように、燃料温度が低いときは、結果的に診断時間が短くなっても診断誤差はさほど大きくならず、燃料温度が高いときは、結果的に診断時間を長めにしないと、診断誤差を小さくできない。
【0044】
よって、本発明では、燃料温度に応じて、閾値ΔPevを最適に設定することで、燃料温度が低いときは、圧力変化量の閾値を小さく設定して診断時間が比較的短くなるようにして、診断時間の短縮を図り、燃料温度が高いときは、圧力変化量の閾値を大きく設定して診断時間が比較的長くなるようにして、診断精度の向上を図るのである。
【0045】
また、本実施形態によれば、第2の圧力変化率を、第1の圧力変化率の計測のための診断時間と同じ長さの診断時間にて、計測することで、補正精度をより向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、パージラインの圧力の変化量が所定の閾値に達する前に、予め定めた診断時間上限値に達したときは、当該時間内での圧力変化率を第1の圧力変化率として計測することにより、診断時間が必要以上に長くなるのを防止することができる。
【0047】
尚、圧力変化率の計測に際しては、診断中に、診断開始時の圧力からの変化量P−Ps又はP−Paを積算し、これらの積算値Σ(P−Ps)又はΣ(P−Pa)を診断時間T1で除算することにより、圧力変化率を求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示すシステム図
【図2】 リーク診断のフローチャート
【図3】 リーク診断のタイムチャート
【図4】 燃料温度と閾値との関係を示す図
【図5】 燃料温度が低い時の説明図
【図6】 燃料温度が高い時の説明図
【図7】 診断時間と診断誤差との関係を示す図
【符号の説明】
1 内燃機関
2 エアクリーナ
3 スロットル弁
4 吸気マニホールド
5 燃料タンク
6 蒸発燃料導入通路
7 キャニスタ
8 活性炭
9 新気導入口
10 パージ通路
11 パージ制御弁
12 新気導入口開閉弁
20 ECU
21 圧力センサ
22 燃温センサ
Claims (4)
- 燃料タンクからの蒸発燃料を新気導入口を有するキャニスタに導いて一時的に吸着させ、該キャニスタに吸着された蒸発燃料を新気導入口から導入される新気と共にパージ制御弁を介して内燃機関の吸気系に吸入させる蒸発燃料処理装置において、燃料タンクからキャニスタを経てパージ制御弁に至るパージラインからの蒸発燃料のリークを診断するリーク診断装置であって、
前記キャニスタの新気導入口を開閉する新気導入口開閉弁と、
前記パージラインの圧力を検出する圧力検出手段と、
前記パージ制御弁を開弁すると共に前記新気導入口開閉弁を閉弁して、前記パージラインに所定の負圧を導入後、前記パージ制御弁及び前記新気導入口開閉弁を共に閉弁して、負圧密閉状態のパージラインの第1の圧力変化率を、圧力変化量が所定の閾値に達するまでの診断時間にて、計測する第1圧力変化率計測手段と、
前記パージ制御弁を閉弁すると共に前記新気導入口開閉弁を開弁して、前記パージラインを大気に開放した後、前記パージ制御弁及び前記新気導入口開閉弁を共に閉弁して、大気密閉状態のパージラインの第2の圧力変化率を計測する第2圧力変化率計測手段と、
前記第1の圧力変化率と前記第2の圧力変化率との差に基づいてリーク度合を判定するリーク判定手段と、
燃料温度を検出する燃料温度検出手段と、
燃料温度に応じて、前記閾値を変更する閾値変更手段と、
を含んで構成されることを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。 - 前記閾値変更手段は、燃料温度が高くなるほど、前記第1の圧力変化率を計測するための診断時間が長くなるように、前記閾値を大きくすることを特徴とする請求項1記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
- 前記第2圧力変化率計測手段は、前記第2の圧力変化率を、前記第1圧力変化率計測手段での診断時間と同じ長さの診断時間にて、計測することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
- 前記第1圧力変化率計測手段は、前記パージラインの圧力の変化量が所定の閾値に達する前に、予め定めた診断時間上限値に達したときは、当該時間内での圧力変化率を前記第1の圧力変化率として計測することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
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