JP4554107B2 - エバポパージシステムの故障診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンク内の圧力に基づいて診断実行条件が成立しているか否かを判定するエバポパージシステムの故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン停止中に燃料タンク内で発生した蒸発燃料(エバポレーションガス)をキャニスタ内に吸着させておき、エンジン始動後の所定の運転条件でパージ通路を開き、吸気管負圧を利用して、キャニスタ内に吸着されている燃料粒子を脱離させて吸気系へ導き、燃焼させるエバポパージシステムが知られている。
【0003】
又、エバポパージシステムには、燃料タンクより吸気管までの流路途中にリーク孔が開いてしまったり、パイプの接合部のシールが劣化してしまうと、これらの箇所から蒸発燃料が大気中に放出されてしまうため、リークの有無を調べる故障診断装置が併設されている。
【0004】
一般に、エバポパージシステムの故障診断は、燃料タンクから吸気管へ至る流路を閉空間とし、そのときの圧力変化を調べることで、リークの有無を検出している。この場合、燃料タンクに配設されている内圧センサを用いて、エバポパージ系の故障診断を行う技術が知られている。
【0005】
しかし、燃料タンクに配設された内圧センサで検出した圧力変化に基づいて故障診断する場合、蒸発燃料の発生量が過大な状態では、蒸発燃料により燃料タンクから吸気管へ至る閉空間内の圧力が上昇してしまい誤判定を引き起こす可能性がある。そのため、例えば特開平8-296509号公報には、燃料タンク内の燃料温度をモニタし、燃料温度が所定値以下のときのみ故障診断を行うことにより、誤判定を防止する技術が開示されている。
【0006】
又、特許第2699774号公報には、冷態始動後時間をモニタし、冷態始動後から、燃料蒸発がほとんど発生しない時間域でのみ故障診断を行う技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平8-296509号公報に開示されている技術では、燃料温度を検出するための温度センサを燃料タンク内に設けなければならず、部品点数が増加し、製品コストがアップしてしまう不都合がある。
【0008】
又、特許第2699774号公報に開示されている技術は、燃料温度を検出する必要がないため、温度センサを設ける必要はないが、燃料温度の上昇率は、外気温度や燃料残量によって変化するため、燃料蒸発量を正確に検出することができず、高精度な診断結果を得ることができない。
【0009】
ところで、燃料タンクの内圧を圧力調整弁(PCV)を用いて所定圧(正圧)に調圧しているものがある。この場合の始動後における蒸発燃料発生量とタンク内圧との関係を図3に示す。同図に示すように、蒸発燃料発生量の少ない領域Aでは、徐々にタンク内圧Pが上昇し、蒸発燃料発生量が中程度の領域Bでは、PCVの制御動作により、タンク内圧Pが所定の基準制御圧Poに収まるように調圧され、その後、蒸発燃料発生量が増大し、PCVの設定流量よりも多くなると、領域Cに示すように、PCVの制御圧を越えてタンク内圧が上昇する。
【0010】
通常、故障診断の実行領域を、PCVが作動しない領域Aとした場合、領域A内の設定圧は容易に越えてしまうため、故障診断の頻度が減少してしまう。一方、故障診断の実行領域を領域Cに設定すると、蒸発燃料発生量が過大であるため、正確な診断結果を得ることができない不都合がある。
【0011】
又、領域Aや領域Cで故障診断を行う場合、蒸発燃料発生量の増加に伴いタンク内圧Pが上昇するため、このタンク内圧Pに基づいて故障診断の開始条件を判定することは可能であるが、領域Bでは、PCVの作動によりタンク内圧Pが調圧されているため、タンク内圧Pに基づいて故障診断の開始条件を判定することは困難である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、燃料温度センサを必要とせず低コストで、しかも外気温度や燃料残量の影響を受けることなく、PCVによる調圧領域付近で、故障診断を開始することができ、診断頻度を高め、高精度な診断結果を得ることの可能なエバポパージシステムの故障診断装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、燃料タンク内上部空間に滞留する蒸発燃料をキャニスタへ導く蒸発燃料通路と、上記キャニスタとエンジン吸気系とを連通するパージ通路と、上記パージ通路を開閉するパージ制御手段と、上記燃料タンク内の圧力を検出するタンク内圧検出手段と、上記蒸発燃料通路に介装されると共に上記タンク内圧検出手段で検出したタンク内圧に基づき上記燃料タンク内の圧力が基準制御圧となるように調圧する圧力調整手段と、運転状態に基づき故障診断実行条件が成立した否かを調べる診断実行条件判定手段とを備えるエバポパージシステムの故障診断装置において、上記診断実行条件判定手段は、上記燃料タンク内の圧力が上記基準制御圧よりも低い診断開始圧に達したとき診断実行条件成立と判定し、又該診断実行条件成立と判定した後の経過時間が、上記タンク内の圧力が上記圧力調整手段の調圧領域を越えるまでの時間に基づいて予め設定した設定時間に達したとき故障診断を中止することを特徴とする。
【0014】
このような構成では、エンジンを始動すると燃料タンクに貯留されている燃料が循環して燃料温度が次第に上昇し、このため蒸発燃料発生量が次第に増加する。このとき蒸発燃料通路に介装されている圧力調整手段は基準制御圧に達するまで閉弁状態が維持されているため、蒸発燃料発生量の増加にほぼ比例してタンク内圧が上昇する。そして、このタンク内圧が基準制御圧よりもやや低い診断開始圧に達したとき、診断実行条件成立と判定して、エバポパージシステムの故障診断を開始する。故障診断が開始されると圧力調整手段が開放され、エバポパージ系の圧力変化がタンク内圧検出手段でモニタされる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1にエバポパージシステムの全体構成図を示す。同図の符号1はエンジンで、このエンジン1の吸気ポート1aと排気ポート1bとに吸気通路2と排気通路3とが各々連通されている。吸気通路2の上流にエアクリーナ4が設けられ、その下流にスロットル弁5が配設され、更に吸気ポート1aの直上流にインジェクタ6が配設されている。又、排気通路3の中途に触媒7が介装され、図示しない排気マフラに連通されている。尚、符号8は吸入空気量センサ、9はスロットル開度センサ、10はO2センサである。
【0017】
又、符号11は燃料タンクで、この燃料タンク11に貯留されている燃料が、図示しない燃料通路を介してインジェクタ6に連通されており、このインジェクタ6から燃焼室内へ所定に計量された燃料が所定のタイミングで噴射され、余剰燃料が燃料タンク11へ戻される。
【0018】
燃料タンク11の上部空間11aに、内圧センサ12が連通されている。この内圧センサ12は、燃料タンク11の上部空間11aと大気圧との差圧(相対圧)を計測する一種の歪みゲージである。更に、この燃料タンク11が蒸発燃料通路(以下「エバポ通路」と略称)13を介してキャニスタ14に連通され、このエバポ通路13に圧力制御手段としての圧力調整弁(以下「PCV」と略称)15が介装されている。
【0019】
キャニスタ14には吸着材としての活性炭14aが内装されており、又外部に開口する大気開放口14bが形成されている。この大気開放口14bに、上流側からドレーン弁16、ドレーンフィルタ17が各々介装されている。このドレーン弁16は常開型であり、後述する故障診断の際に閉弁動作される。更に、キャニスタ14とスロットル弁5下流の吸気通路2とがパージ通路19を介して連通されており、このパージ通路19にパージ制御弁20が介装されている。PCV15、ドレーン弁16、パージ制御弁20の開閉動作は、電子制御ユニット(ECU)21にて制御される。
【0020】
電子制御ユニット21は、エンジン始動後、内圧センサ12で検出したタンク内圧P[Pa](相対圧)に基づき、このタンク内圧Pが予め設定した基準制御圧Po(例えば700〜1000[Pa])に収まるように、PCV15を開閉動作させる。すなわち、図3に示すように、タンク内圧Pが正圧上限値(例えば1000[Pa])に達するまでの領域Aでは、閉弁状態を維持し、その後、タンク内圧Pが正圧上限値(例えば1000[Pa])以上となったとき開弁動作して、燃料タンク11内の蒸発燃料をキャニスタ14へ供給し、活性炭14aに蒸発燃料中の燃料粒子を吸着させる。そして、タンク内圧Pが正圧下限値(700[Pa])以下となったとき閉弁動作させることで、燃料タンク11内を基準制御圧Po(図3の領域B)に保持する。尚、領域Cは、PCV15の設定流量よりも蒸発燃料発生量が多い場合を示しており、このような場合は、PCV15の制御圧を越えてタンク内圧Pが上昇する。
【0021】
更に、電子制御ユニット21では、エンジン始動後、所定周期毎にエバポパージ制御を実行している。このエバポパージ制御では、先ず、運転条件に基づきエバポパージ条件が成立しているか否かを調べ、エバポパージ条件成立時はパージ制御弁20に対して開弁信号を出力して、開弁動作させる。すると、スロットル弁5下流の負圧がキャニスタ14内に取り込まれ、大気開放口14bから導入される空気によって活性炭14aに吸着されている燃料粒子が離脱され、この脱離した燃料粒子を含むパージガスがパージ通路19を経てスロットル弁5下流の吸気通路2へ吸入されて燃焼室に送り込まれ燃焼処理される。
【0022】
又、電子制御ユニット21では、エンジン始動後、エバポパージシステムの故障診断が1回程度行われる。この場合、エバポパージシステムの故障診断に先駆けで、診断実行条件が成立しているか否かの判定が行われる。
【0023】
この診断実行条件は、タンク内圧Pが基準制御圧Poよりも若干低い、予め設定した診断開始圧P1(約600[Pa])に基づき判定し、タンク内圧Pが診断開始圧P1に達したとき診断実行条件成立と判断する。又、診断実行条件成立後、設定時間に達したとき診断実行条件不成立と判断する。
【0024】
この診断実行条件判定は、具体的には、図2に示す診断実行条件判定ルーチンに従って処理される。
【0025】
このルーチンは、イグニッションスイッチをON後、設定周期毎に起動され、先ず、ステップS1でタンク内圧Pと診断開始圧P1とを比較する。
【0026】
例えば冷態始動においては、エンジン始動直後の燃料タンク11に貯留されている燃料温度は外気温度と同じため、蒸発燃料発生量は少なく、P<P1と判定されて、ステップS2へ分岐し、経過時間計測タイマをクリアしルーチンを終了する。
【0027】
次に、始動後の燃料循環によって、燃料温度が徐々に上昇すると、図3の領域Aに示すように、蒸発燃料発生量が次第に増加し、タンク内圧Pも徐々に上昇する。そして、タンク内圧Pが診断開始圧P1に達すると(P≧P1)、ステップS1からステップS3へ進み、経過時間計測タイマをインクリメントしてステップS4へ進む。
【0028】
この診断開始圧P1は、PCV15の制御動作によるタンク内圧Pの変動を考慮して設定した値であり、基準制御圧P0よりも若干低い値(本実施の形態では600[Pa]程度)に設定されている。そのため、タンク内圧Pが診断開始圧P1に達したとき、PCV15は未だ非作動状態にあり、内圧センサ12では、蒸発燃料発生量にほぼ比例したタンク内圧Pの上昇を検出することができる。従って、外気温度や燃料残量によって燃料温度の上昇率が相違しても、タンク内圧Pに基づいて正確な蒸発燃料発生量を検出することができる。
【0029】
次に、ステップS4へ進むと、経過時間計測タイマの値を調べ、タイマ設定時間以内の場合は、ステップS5へ進み、診断実行条件成立フラグをセットしてルーチンを抜ける。このタイマ設定時間は、通常運転において燃料蒸発量が増加しても、タンク内圧Pが領域Cに至る前に故障診断を終了させることの可能な時間であり、予め実験等から求められる。
【0030】
そして、経過時間計測タイマの値がタイマ設定時間に達したときはステップS6へ分岐し、診断実行条件成立フラグをクリアしてルーチンを抜ける。
【0031】
この診断実行条件成立フラグの値は、故障診断ルーチン実行時において読込まれ、診断実行条件成立フラグがセットされている期間において、故障診断が実行され、故障診断成立フラグがクリアされたとき故障診断が中止される。
【0032】
故障診断ルーチンが実行されると、先ず、パージ制御弁20、ドレーン弁16を閉弁させると共に、PCV15を開弁動作させて、燃料タンク11からパージ通路19のパージ制御弁20までを閉空間として、内圧センサ12で検出したタンク内圧Pに基づいて閉空間の圧力変化をモニタし、閉空間にリーク孔等が形成されているか否かを調べる。
【0033】
このように、本実施の形態では、PCV15が調圧動作する基準制御圧Poよりもやや低い診断開始圧P1に達したとき診断実行条件成立と判断して、故障診断を開始し、その後、タンク内圧Pが領域C(図3参照)に至る前に故障診断を中止させるようにしたので、燃料温度センサ等のセンサ類を特別に設けることなく、蒸発燃料発生量を内圧センサ12で検出したタンク内圧Pから正確に検出することができるため、製品コストの低減を図ることが出来る。
【0034】
又、本実施の形態では、蒸発燃料発生量が中程度の領域B(調圧領域)付近で故障診断を行うようにしたので、エンジンの始動直後に故障診断を開始する従来のものに比し、燃料残量や外気温度の影響よって相違する燃料温度の上昇率を加味した判断を行うことができるので、診断精度が向上する。
【0035】
更に、調圧領域である領域B付近で故障診断を行うことができるので、診断頻度が高くなり、高精度な診断結果を得ることができる。
【0036】
尚、本発明は上述した実施の形態に限るものではなく、例えば内圧センサ12はエバポ通路13のPCV15の上流側に設けても良い。
【0037】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、燃料温度センサ等の特別なセンサ類を装備する必要がないため、製品コストの低減が図れ、しかも外気温度や燃料残量の影響を受けることなく、圧力調整弁による調圧領域付近で、故障診断を開始することができるため、診断頻度が多くなるばかりでなく高精度な診断結果を得ることができる等、優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】エバポパージシステムの全体構成図
【図2】診断実行条件判定ルーチンを示すフローチャート
【図3】タンク内圧と蒸発燃料発生量との関係を示す説明図
【符号の説明】
11 燃料タンク
11a 上部空間
12 内圧センサ(タンク内圧検出手段)
13 蒸発燃料通路
14 キャニスタ
15 圧力調整弁(圧力制御手段)
19 パージ通路
20 パージ制御弁(パージ制御手段)
P タンク内圧
Po 基準制御圧
P1 診断開始圧
Claims (1)
- 燃料タンク内上部空間に滞留する蒸発燃料をキャニスタへ導く蒸発燃料通路と、
上記キャニスタとエンジン吸気系とを連通するパージ通路と、
上記パージ通路を開閉するパージ制御手段と、
上記燃料タンク内の圧力を検出するタンク内圧検出手段と、
上記蒸発燃料通路に介装されると共に上記タンク内圧検出手段で検出したタンク内圧に基づき上記燃料タンク内の圧力が基準制御圧となるように調圧する圧力調整手段と、
運転状態に基づき故障診断実行条件が成立した否かを調べる診断実行条件判定手段とを備えるエバポパージシステムの故障診断装置において、
上記診断実行条件判定手段は、上記燃料タンク内の圧力が上記基準制御圧よりも低い診断開始圧に達したとき診断実行条件成立と判定し、又該診断実行条件成立と判定した後の経過時間が、上記タンク内の圧力が上記圧力調整手段の調圧領域を越えるまでの時間に基づいて予め設定した設定時間に達したとき故障診断を中止することを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。
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