JP3983523B2 - エンジンの蒸発燃料パージ系診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸発燃料パージ系内の実際の圧力変化に基づき燃料蒸発ガスのリークの有無を精度よく検出することの可能なエンジンの蒸発燃料パージ系診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の車両においては、燃料タンク内で発生する燃料の蒸発ガスが大気へ排出されないよう、燃料蒸発ガスを一旦キャニスタ内の活性炭等に吸着させて貯溜し、このキャニスタ内の燃料蒸発ガスを設定運転条件下で吸気通路からエンジンの燃焼室へ吸入させる、いわゆる蒸発燃料パージ(エバポパージ)システムが採用されている。
【0003】
このエバポパージシステムでは、燃料タンクより吸気管までの流路途中にリーク孔が開いてしまったり、パイプの接合部のシールが劣化してしまうと、これらの箇所から燃料蒸発ガスが大気中に放出されてしまうため、エバポパージ系のリークの有無を調べる故障診断装置が併設されている。
【0004】
一般に、エバポパージ系の故障診断は、エバポパージ系内を密封して減圧或いは加圧し、燃料蒸発ガスのリークによるエバポパージ系内の圧力変化を調べる手法が多く採用されており、エバポパージ系内の圧力変化を、大気圧を基準とする相対圧センサを用いて検出している。このため、診断中に大気圧が変化してしまうと、エバポパージ系の内圧変化に加えて大気圧変化をモニタすることになり、燃料蒸発ガスのリークの有無を正確に検出することができなくなってしまうという問題がある。
【0005】
その対策として、従来は、大気圧変化の少ない低車速域でのみリークの有無を診断したり、或いは例えば特許第2741702号公報に開示されているように、大気圧センサを別途備え、この大気圧センサにより大気圧変化を検出し、それに基づいて相対圧センサで検出したエバポパージ系内の圧力の補正を行い、燃料蒸発ガスのリークの有無を診断するようにしている。
【0006】
更に、エバポパージ系の内圧変化を検出する相対圧センサの基準圧力側に開閉弁(例えば、ソレノイド弁)を配設し、故障診断中は開閉弁を閉じた状態でエバポパージ系の内圧変化を検出することで、大気圧変化の影響を受けることなくエバポパージ系内の圧力変化を検出する技術や、エバポパージ系内の圧力変化の計測前後に開閉弁を開閉して診断中の大気圧変化を推定し、その大気圧変化の推定値を用いて診断値を補正することで、大気圧変化の影響を受けることなく燃料蒸発ガスのリークの有無を診断する技術が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低車速域のみの診断では、診断頻度が低く、燃料蒸発ガスのリークの有無の検出精度を高めるには限界がある。また、大気圧変化を検出する場合、1000Pa以下の微少な大気圧変化を検出するかなり高精度な大気圧センサが要求される。又、検出することのできない程度の微少な大気圧変化に対しては適正に補正することができないため、エバポパージ系の内圧変化の検出精度が低下してしまう。
【0008】
また、エバポパージ系の内圧変化を検出する相対圧センサの基準圧検出側を遮断して、診断中の基準圧力検出側の圧力変化を0とした場合であっても、エバポパージ系内(特に、燃料タンク内)の大気圧が高くなると収縮し、低くなると膨張する性質を有していることが判明しており、そのため、診断中に大気圧が変化すると、エバポパージ系内部と大気圧との間に圧力差が生じ、エバポパージ系内の収縮/膨張の影響により、エバポパージ系の内圧変化からリークの有無を高精度に検出することが困難となる。
【0009】
更に、エバポパージ系内の圧力変化の計測前後に、相対圧センサの基準圧検出側を開閉弁で開閉して診断中の大気圧変化を推定する場合であっても、相対圧センサと開閉弁とを接続するホース等の容積が小さくならざるを得ないため、その前後に圧力差が生じ、漏れが発生すると、この圧力差による誤差が無視できないレベルとなり、正確に大気圧変化を捉えることは困難である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、大気圧変化を検出するための大気圧センサを必要とせず、しかも、診断領域が低車速領域に限定されず、通常走行の車速領域や高地走行、山岳路走行中であっても診断が可能となり、診断頻度を高めることで、燃料蒸発ガスのリークの有無を高精度に検出することの可能なエンジンの蒸発燃料パージ系診断装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、燃料タンクと該燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタとを第1のパージ通路を介して連通し、更に該キャニスタとエンジンの吸気系とを第2のパージ通路を介して連通し、蒸発燃料パージ条件成立時に上記キャニスタに吸着されている燃料蒸発ガスを上記吸気系へパージする蒸発燃料パージ系の故障を診断する蒸発燃料パージ系診断装置であって、上記第1のパージ通路を開閉する第1の開閉手段と、上記第2のパージ通路を開閉する第2の開閉手段と、大気圧を基準として上記燃料タンクから上記第2の開閉手段に至る上記蒸発燃料パージ系内の圧力を検出する圧力検出手段と、上記第1の開閉手段及び上記第2の開閉手段を共に開として上記吸気系から上記蒸発燃料パージ系内に負圧を導入した後、上記第2の開閉手段を閉として上記蒸発燃料パージ系内を所定の負圧状態に密閉し、この負圧密閉状態下で上記第1の開閉手段を開から閉にしたときの上記圧力検出手段の検出圧と上記第1の開閉手段を閉から開にしたときの上記圧力検出手段の検出圧とから上記蒸発燃料パージ系内の圧力変化量を算出する負圧時圧力変化量算出手段と、上記負圧時圧力変化量算出手段で算出した圧力変化量に基づいて、上記蒸発燃料パージ系内の燃料蒸発ガスのリークの有無を判定するリーク判定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、更に、上記第2の開閉手段を閉として上記蒸発燃料パージ系内を所定の正圧状態に密閉し、この密閉状態下で上記第1の開閉手段を閉としたときの上記圧力検出手段の検出圧と、上記第1の開閉手段を閉から開にしたときの上記圧力検出手段の検出圧とから上記蒸発燃料パージ系内の圧力変化量を算出する正圧時圧力変化量算出手段を備え、上記リーク判定手段は、上記負圧時圧力変化量算出手段で算出した圧力変化量を、上記正圧時圧力変化量算出手段で算出した圧力変化量により補正して上記エバポパージ系内の燃料蒸発ガスのリークの有無を判定することを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項1記載の発明は、燃料タンクとキャニスタとを連通する第1のパージ通路を開閉する第1の開閉手段、及びキャニスタとエンジンの吸気系とを連通する第2のパージ通路を開閉する第2の開閉手段を共に開として吸気系から蒸発燃料パージ系内に負圧を導入した後、第2の開閉手段を閉として蒸発燃料パージ系内を所定の負圧状態に密閉し、この負圧密閉状態下で第1の開閉手段を開から閉にしたときの圧力検出手段の検出圧と第1の開閉手段を閉から開にしたときの圧力検出手段の検出圧とから蒸発燃料パージ系内の圧力変化量を算出する。万一、蒸発燃料パージ系内に亀裂などのリーク箇所がある場合、リーク箇所から蒸発燃料パージ系内に大気が流入して圧力が上昇し、しかも、蒸発燃料パージ系を第1の開閉手段によって燃料タンク側とエンジン側とに分離した場合に燃料タンク側とエンジン側とが大気圧変化に対してほぼ同程度に収縮/膨張することから、第1の開閉手段を閉とした状態での系内圧力と、第1の開閉手段を開とした状態での系内圧力との圧力変化量から、大気圧変化の影響を受けることなくリークの有無を判定することができる。
【0014】
その際、請求項2記載の発明のように、第2の開閉手段を閉として蒸発燃料パージ系内を所定の正圧状態に密閉し、この密閉状態下で第1の開閉手段を閉としたときの圧力検出手段の検出圧と、第1の開閉手段を閉から開にしたときの圧力検出手段の検出圧とから蒸発燃料パージ系内の圧力変化量を算出し、この圧力変化量により、負圧導入時の圧力変化量を補正してエバポパージ系内の燃料蒸発ガスのリークの有無を判定することが望ましく、大気圧変化の影響を受けることなく燃料蒸発ガス発生量を正確に把握して確実な診断を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図4は本発明の実施の一形態に係わり、図1はエバポパージ系の全体構成図、図2及び図3は故障診断ルーチンのフローチャート、図4は計測モード毎のエバポ系内の圧力変化を示すタイムチャートである。
【0016】
図1において、符号1はエンジンであり、このエンジン1の吸気ポート1aと排気ポート1bとに吸気通路2と排気通路3とが各々連通されている。吸気通路2の上流にはエアクリーナ4が設けられ、その下流にスロットル弁5が配設され、更に吸気ポート1aの直上流にインジェクタ6が配設されている。また、排気通路3の中途に触媒7が介装され、図示しない排気マフラに連通されている。尚、符号8は吸入空気量センサ、9はスロットル開度センサ、10はO2センサである。
【0017】
また、符号11は燃料タンクで、この燃料タンク11に貯留されている燃料が、図示しない燃料通路を介してインジェクタ6に供給され、このインジェクタ6から所定に計量された燃料が所定のタイミングでエンジン1の燃焼室内へ噴射され、余剰燃料が燃料タンク11へ戻される。更に、燃料タンク11で発生した燃料蒸発ガスを吸気系にパージする蒸発燃料パージ系(エバポパージ系)として、燃料タンク11の上部空間11aが第1のパージ通路12を介してキャニスタ13に連通され、このキャニスタ13とスロットル弁5下流の吸気通路2とが第2のパージ通路14を介して連通されている。キャニスタ13には、吸着材としての活性炭13aが内装されている。
【0018】
第1のパージ通路12には、燃料タンク11内の圧力を制御するための圧力調整弁(PCV)15が介装され、このPCV15とキャニスタ13との間に、大気圧を基準として被計測部の相対圧を検出する相対圧センサ16が介装されている。更に、第2のパージ通路14には、燃料蒸発ガスの吸入空気に対するパージ割合を制御するキャニスタパージ制御弁(CPC)17が介装されている。ここに、PCV15は、第1のパージ通路12を開閉する第1の開閉手段としての機能を兼用し、CPC17は、第2のパージ通路14を開閉する第2の開閉手段としての機能を兼用するものである。
【0019】
そして、CPC17を開弁することで、スロットル弁5下流の負圧がキャニスタ13内に取り込まれ、キャニスタ13の図示しない大気開放口から導入される空気によって活性炭13aに吸着されている燃料粒子が離脱され、この脱離した燃料粒子を含むパージガスが第2のパージ通路14を経てスロットル弁5下流の吸気通路2へ吸入されて燃焼室に送り込まれ、燃焼処理される。尚、キャニスタ13の大気開放口は、後述するエバポパージ系の故障診断の際に図示しない開閉弁によって閉塞される。
【0020】
一方、符号20は、マイクロコンピュータ及び周辺回路からなる電子制御装置(ECU)であり、前述の吸入空気量センサ8、スロットル開度センサ9、O2センサ10、相対圧センサ16等が接続されると共に、インジェクタ6、PCV15、CPC17、及び、異常発生時に警告を発するための警報ランプ18等が接続されている。ECU20は、通常のエバポパージ制御においては、運転条件に基づきエバポパージ条件が成立しているか否かを調べ、エバポパージ条件成立時、CPC17の弁開度を制御し、吸気系へパージする蒸発燃料の空燃比に与える影響がほぼ定率となるように制御する。
【0021】
また、ECU20には、外部接続用コネクタ19が接続されており、この外部接続用コネクタ19にシリアルモニタ(携帯型故障診断装置)100を接続することで、シリアルモニタ100によってECU20における入出力データ、及びECU20の自己診断機能により内部にストアされた故障部位や故障内容を示すトラブルデータを読み出して診断可能としている。尚、シリアルモニタによるトラブルデータの診断については、本出願人による特公平7−76730号公報に詳述されている。
【0022】
ここで、ECU20は、エバポパージ制御の信頼性を維持するため、エンジン始動後、所定タイミングでエバポパージ系の故障診断を実行している。このエバポパージ系の故障診断は、診断中に大気圧が変化したとき、エバポパージ系全体がほぼ同程度に収縮/膨張すること、PCV15及びCPC17の開閉により、燃料タンク11からPCV15までの燃料タンク側のエバポパージ系と、PCV15からキャニスタ13を経て第2のパージ通路14のCPC17までのエンジン側のエバポパージ系と分けて診断が可能であることに着目して行うものであり、エバポパージ系を所定の正圧状態に密閉してエバポ発生量を計測するエバポ発生量計測モードにおける燃料タンク側及びエンジン側の系内圧力変化、及びエバポパージ系に負圧を導入してリーク量を計測するリーク量計測モードにおける燃料タンク側及びエンジン側の系内圧力変化に基づいて、異常(リーク)の有無を判定する。
【0023】
例えば、リーク量計測モードにおいて、エバポパージ系内に負圧を導入して系内圧力を−2000Paとし、PCV15を閉じて燃料タンク側及びエンジン側の系内圧力を計測した場合、燃料タンク側にリークがあり、燃料タンク側の系内圧力が−1500Pa、エンジン側の系内圧力が−2000Paになったとすると、このとき、PCV15を開にすると、燃料タンク側からエンジン側に空気が流れ込み、系内圧力はある平衡点に落ち着く。この平衡点の圧力は、燃料タンク側とエンジン側との容積比によるが、例えば、燃料タンク側とエンジン側との容積比を4/1とすると、−1600Paとなる。従って、燃料タンク11でのエバポ発生がないものとした場合、系内圧力変化量は400Paとなり、この系内圧力変化量を診断値として判定閾値と比較することにより、リークを検出することができる。
【0024】
この場合、診断中に大気圧の変化があったとしても、燃料タンク側及びエンジン側は、リークの有無に拘らず、ほぼ同じ割合で収縮/膨張する。従って、診断中に200Pa分だけ収縮したとすると、PCV15を閉じたときのエンジン側の系内圧力は−1800Pa、PCV15を開にした後の平衡点の圧力は−1400Paとなり、同じ400Paの診断値が得られる。すなわち、大気圧の変化が自動的に補正され、大気気圧変化の影響を受けることなく正確な診断が可能となる。
【0025】
同様に、エバポ発生量計測モードにおいても、診断中の大気圧の変化に拘らず、PCV15を閉じたときのエンジン側の系内圧力とPCV15を開にした後の系内圧力との差圧に基づいて、エバポ発生量を計測することができる。これにより、リーク量計測モードにおける系内圧力変化量をエバポ発生量で補正してエバポ発生量の影響を排除し、正確な診断を行うことができる。
【0026】
すなわち、ECU20は、本発明に係る負圧時圧力変化量算出手段、正圧時圧力変化量算出手段、リーク判定手段としての機能を有し、具体的には、図2及び図3に示すルーチンによってその機能を実現する。以下、ECU20によって実行されるエバポパージ系の故障診断に係わる処理について、図2及び図3に示す故障診断ルーチンのフローチャートを用いて説明する。
【0027】
この故障診断ルーチンでは、先ず、ステップS1で、CPC17を閉弁させ、燃料タンク11から第1のパージ通路12及びキャニスタ13を経て第2のパージ通路14に介装されているCPC17までのエバポパージ系内を閉塞し、診断実行条件が成立するか否かを調べる。この診断実行条件は、停車時、高速走行時、高温時、極低温時等の運転状態を除く通常走行時に診断を実行するための判定条件であり、エンジン回転数、車速、大気圧、スロットル開度、吸気管圧力、燃料残量、燃料温度等のパラメータが通常走行時に取得る範囲の値であるか否かを調べることによって判定する。
【0028】
そして、診断実行条件が不成立と判定したときには、ステップS2で診断をキャンセルしてルーチンを抜け、また、診断実行条件成立と判定したときには、ステップS3へ進んでエバポ発生量計測モード開始条件が成立するか否かを判定する。このエバポ発生量計測モード開始条件は、診断実行条件と同様の条件、すなわち、通常走行下にあり、且つエバポ発生量を計測するに適した運転状態か否かを判断するための条件である。
【0029】
すなわち、前述の各パラメータが通常走行時に取得る範囲の値であり、且つ閉塞されたエバポパージ系内の内圧が設定正圧領域で燃料タンク11内の圧力が飽和状態となっておらず、且つエバポ発生量計測モード開始後の経過時間を計時するタイマがスタートしていない状態のとき、エバポ発生量計測開始条件成立と判断する。そして、計測開始条件不成立の場合には、ステップS3からステップ5へジャンプし、計測開始条件成立の場合、タイマをスタートさせてステップS3からステップS4へ進む。
【0030】
ステップS4では、PCV15を閉弁させて燃料タンク11からPCV15までの経路を分離させ、PCV15からキャニスタ13を経て第2のパージ通路14のCPC17までのエンジン側のエバポパージ系を閉塞状態とする。次に、ステップS5へ進んでPCV15を閉弁させた後、タイマの値からエンジン側の系内圧力計測開始時間に達したか否かを調べる。このエンジン側の系内圧力計測開始時間は、燃料タンク11内のエバポ発生量が所定範囲となる時間であり、予め燃料タンク側の容積を考慮して設定されている。
【0031】
そして、エンジン側の系内圧力の計測開始時間に達していないときには、ステップS5からステップS7へジャンプし、エンジン側の系内圧力の計測開始時間に達したき、ステップS5からステップS6へ進んで、所定時間の間、相対圧センサ16のセンサ値を取込み、取込んだセンサ値を平均化処理してエバポ発生量計測モードにおけるモード開始エンジン側の系内圧力P1Bとする。
【0032】
次に、ステップS7へ進み、エンジン側の系内圧力の計測時間が終了したか否かを調べ、計測時間が終了していないときにはステップS11へジャンプし、エンジン側の系内圧力の計測時間が終了したとき、ステップS8へ進んでPCV15を開弁させ、燃料タンク11からPCV15までの経路を、PCV15からキャニスタ13を経て第2のパージ通路14のCPC17までの経路と連通させる。そして、ステップS9へ進み、所定のディレイ時間を経て燃料タンク11側の系内圧力とエンジン側の系内圧力とが平衡に達したとき、所定時間の間、相対圧センサ16のセンサ値を取込み、取込んだセンサ値を平均化処理してエバポ発生量計測モードにおけるモード終了時の系内圧力P1Aとする。
【0033】
次いで、ステップS10へ進み、リーク量計測モードへ移行するため、図4に示すように、CPC17を開動作させてエバポパージ系内に吸気管負圧を導入し、エバポパージ系内の圧力を一旦下げる処理を行う。そして、エバポ系内に負圧を導入した後、ステップS11でCPC17を閉じてエバポパージ系内を閉塞し、リーク量計測モード開始条件が成立するか否かを判断する。このリーク量計測モード開始条件は、前述の診断実行条件と同様に通常走行下にあり、且つリーク量を計測するに適した運転状態か否かを判断するための条件である。すなわち、診断実行条件を判定するための各パラメータが通常走行時に取得る範囲の値であり、且つエバポパージ系内の内圧が設定負圧以下に低下しており、且つリーク量計測モード開始後の経過時間を計時するタイマがスタートしていない状態のとき、リーク量計測開始条件成立と判断する。
【0034】
そして、リーク量計測開始条件が非成立の場合には、ステップS11からステップS13へジャンプし、リーク量計測開始条件が成立する場合、タイマをスタートさせ、ステップS11からステップS12へ進む。ステップS12では、PCV15を閉弁させて燃料タンク11からPCV15までの経路を分離させ、PCV15からキャニスタ13を経て第2のパージ通路14のCPC17までのエンジン側のエバポパージ系を閉塞状態としてステップS13へ進む。
【0035】
ステップS13では、タイマの値からエンジン側の系内圧力計測開始時間に達したか否かを調べる。この計測開始時間は、エンジン側の系内圧力が安定化するまでの時間であり、予めエンジン側の容積を考慮して設定されている。そして、計測開始時間に達していな場合には、ステップS15へジャンプし、計測開始時間に達した場合、ステップS14へ進んで、所定時間の間、相対圧センサ16のセンサ値を取込み、取込んだセンサ値を平均化処理し、リーク量計測モードにおけるモード開始時の系内圧力P2BとしてステップS15へ進む。
【0036】
ステップS15では、エンジン側の系内圧力計測時間が終了したか否かを調べ、計測時間が終了していないときにはルーチンを抜け、計測時間が終了したとき、ステップS16へ進んでPCV15を開弁させ、燃料タンク11からPCV15までの経路を、PCV15からキャニスタ13を経て第2のパージ通路14のCPC17までの経路と連通させる。そして、ステップS17で、所定のディレイ時間を経て燃料タンク11側の系内圧力とエンジン側の系内圧力とが平衡に達したとき、所定時間の間、相対圧センサ16のセンサ値を取込み、取込んだセンサ値を平均化処理してリーク量計測モードにおけるモード終了時の系内圧力P2Aとする。
【0037】
続いて、ステップS18へ進み、エバポ発生量計測モードにおけるモード開始時の系内圧力P1B及びモード終了時の系内圧力P1A、リーク発生量計測モードにおけるモード開始時の系内圧力P2B及びモード終了時の系内圧力P2Aを用い、エバポパージ系を燃料タンク側とエンジン側とに分けて診断値を求め、各診断値を判定閾値と比較して異常判定を行う。
【0038】
すなわち、CPC17を閉弁させてエバポパージ系内を所定の正圧状態で密閉したとき、エバポパージ系内の圧力はエバポガスの発生量に応じて上昇し、しかも、大気圧変化に対してPCV15によって分離される燃料タンク側とエンジン側とがほぼ同程度に収縮/膨張することから、エバポ発生量計測モードにおいて、PCV15を閉とした状態での系内圧力P1Bと、PCV15を開とした状態での系内圧力P1Aとの差圧を求めることで、大気圧変化の影響を受けることなくエバポ発生量を算出することが可能であり、直接的に差圧(P1A−P1B)をエバポ発生量PEVPBとして扱うことができる。
【0039】
また、リーク発生量計測モードにおいては、エバポパージ系内は負圧状態であるため、例えばエバポパージ系内に亀裂などのリーク箇所がある場合、リーク箇所からエバポパージ系内に大気が流入して圧力が上昇し、しかも、大気圧変化に対してPCV15によって分離される燃料タンク側とエンジン側とがほぼ同程度に収縮/膨張することから、PCV15を閉とした状態での系内圧力P2Bと、PCV15を開とした状態での系内圧力P2Aとの差圧を求めることで、大気圧変化の影響を受けることなくリーク量を算出することが可能である。
【0040】
従って、直接的に、差圧(P2A−P2B)を燃料タンク側のリーク量PLEAKB_T、差圧(P2B−P2A)をエンジン側のリーク量PLEAKB_Eとして扱い、エバポ発生量に応じた系内圧力の変化を考慮した燃料タンク側の診断値(PLEAKB_T−K1・PEVPB)、エンジン側の診断値(PLEAKB_E+K2・PEVPB)を、それぞれ判定閾値と比較することにより、リークの有無を判定することができる。尚、下式のリーク判定条件におけるK1,K2は、燃料タンク側とエンジン側との容積の差を補正する係数である。
PLEAKB_T−K1・PEVPB≧判定閾値
…燃料タンク側のエバポパージ系が異常(リーク有り)
PLEAKB_E+K2・PEVPB≧判定閾値
…エンジン側のエバポパージ系が異常(リーク有り)
【0041】
そして、正常(PLEAKB_T−K1・PEVPB<判定閾値、PLEAKB_E+K2・PEVPB<判定閾値)と判定されたときは、例えば故障判定フラグをクリアしてルーチンを抜ける。又、異常(PLEAKB_T−K1・PEVPB≧判定閾値、或いは、PLEAKB_E+K2・PEVPB≧判定閾値)と判定されたときは、故障判定フラグをセットしてルーチンを抜ける。この故障判定フラグがセットされると、ECU20から警報ランプ18へ駆動信号を出力し、警報ランプ18を点灯或いは点滅させて、運転者にエバポパージ系の故障を知らせる。
【0042】
このように、本実施の形態では、エバポパージ系内の燃料蒸発ガスのリークの有無を検出するに際し、PCV15によって分離されるエバポパージ系の燃料タンク側とエンジン側とが大気圧変化に対してほぼ同程度に収縮/膨張することに着目し、図4に示すように、PCV15を閉とした状態での系内圧力と、PCV15を開とした状態での系内圧力との差圧を算出することで、エバポ発生量計測モード、リーク量計測モード中の大気圧変化によってもたらされる相対圧センサ16の基準圧変化の影響を相殺してリークの有無を診断することができる。
【0043】
これにより、低速走行は勿論のこと、通常走行の車速領域や高地、山岳走行中においても、故障診断が可能となり、診断頻度をアップして信頼性を向上することができる。しかも、燃料タンク側とエンジン側とを個別に診断することが可能であるため、故障部位を特定し易く、迅速な修理を可能とすることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、大気圧変化を検出するための大気圧センサを必要とせず、しかも、低車速領域はもとより通常走行の車速領域や高地走行、山岳路走行中であっても診断が可能となり、診断領域が広範囲となる分、診断頻度が向上し、燃料蒸発ガスのリークの有無を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エバポパージ系の全体構成図
【図2】故障診断ルーチンのフローチャート(その1)
【図3】故障診断ルーチンのフローチャート(その2)
【図4】各計測モード毎のエバポパージ系内の圧力変化を示すタイムチャート
【符号の説明】
1 エンジン
11 燃料タンク
12 第1のパージ通路
13 キャニスタ
14 第2のパージ通路
15 PCV(第1の開閉手段)
16 相対圧センサ
17 CPC(第2の開閉手段)
20 電子制御装置(負圧時圧力変化量算出手段、正圧時圧力変化量算出手段、リーク判定手段)
Claims (2)
- 燃料タンクと該燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタとを第1のパージ通路を介して連通し、更に該キャニスタとエンジンの吸気系とを第2のパージ通路を介して連通し、蒸発燃料パージ条件成立時に上記キャニスタに吸着されている燃料蒸発ガスを上記吸気系へパージする蒸発燃料パージ系の故障を診断する蒸発燃料パージ系診断装置であって、
上記第1のパージ通路を開閉する第1の開閉手段と、
上記第2のパージ通路を開閉する第2の開閉手段と、
大気圧を基準として上記燃料タンクから上記第2の開閉手段に至る上記蒸発燃料パージ系内の圧力を検出する圧力検出手段と、
上記第1の開閉手段及び上記第2の開閉手段を共に開として上記吸気系から上記蒸発燃料パージ系内に負圧を導入した後、上記第2の開閉手段を閉として上記蒸発燃料パージ系内を所定の負圧状態に密閉し、この負圧密閉状態下で上記第1の開閉手段を開から閉にしたときの上記圧力検出手段の検出圧と上記第1の開閉手段を閉から開にしたときの上記圧力検出手段の検出圧とから上記蒸発燃料パージ系内の圧力変化量を算出する負圧時圧力変化量算出手段と、
上記負圧時圧力変化量算出手段で算出した圧力変化量に基づいて、上記蒸発燃料パージ系内の燃料蒸発ガスのリークの有無を判定するリーク判定手段とを備えることを特徴とするエンジンの蒸発燃料パージ系診断装置。 - 更に、上記第2の開閉手段を閉として上記蒸発燃料パージ系内を所定の正圧状態に密閉し、この密閉状態下で上記第1の開閉手段を閉としたときの上記圧力検出手段の検出圧と、上記第1の開閉手段を閉から開にしたときの上記圧力検出手段の検出圧とから上記蒸発燃料パージ系内の圧力変化量を算出する正圧時圧力変化量算出手段を備え、
上記リーク判定手段は、
上記負圧時圧力変化量算出手段で算出した圧力変化量を、上記正圧時圧力変化量算出手段で算出した圧力変化量により補正して上記エバポパージ系内の燃料蒸発ガスのリークの有無を判定することを特徴とする請求項1記載のエンジンの蒸発燃料パージ系診断装置。
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