JP4123908B2 - Dcブラシレスモータの並列駆動方法 - Google Patents

Dcブラシレスモータの並列駆動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数台のファンやポンプ等を同一速度で運転するために互いに並列接続された複数台のDCブラシレスモータを駆動するための並列駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
互いに並列接続された複数台のブラシレスモータを1つの駆動回路によって駆動する従来技術として、後述する特許文献1に記載されたブラシレスモータの駆動回路が知られている。
この駆動回路は、ブラシレスモータの数に応じて分周された所定の分周期信号を基準信号とし、この基準信号により位置検出信号を順次切り替えて駆動ドライバに出力すると共に、駆動ドライバでは、位置検出信号に応じた駆動信号により複数台のブラシレスモータを運転するものである。
【0003】
しかるに、上記駆動回路では、位置検出信号を切り替えるタイミングが位置検出信号と完全には同期していないため、この位置検出信号を切り替えた瞬間にモータに印加される電圧の位相が急変して動作が不安定になり易い。
また、この従来技術では、一般に位置検出信号の周期よりも長い周期の基準信号によって切り替えを行うため、位置検出信号が使用されていないモータは、その間、位置検出信号に関係なく運転されるので、動作が不安定になり易いという問題があった。
【0004】
このため、本出願人は、駆動の安定化を主目的としたDCブラシレスモータの並列駆動回路を特願2001−222412(本出願時点で出願公開されておらず、以下では、先願という)として出願している。以下、この先願発明について説明する。
【0005】
図17は先願発明に係る駆動回路の全体構成を示しており、2台のDCブラシレスモータMA,MBを1台の駆動回路によって駆動する場合のものである。 図17において、直流電源Eには半導体スイッチング素子T1〜T6からなる三相ブリッジ回路が接続されている。この三相ブリッジ回路の各相出力端子U,V,Wには同一構成のDCブラスレスモータMA,MBが並列に接続されており、それぞれに設けられたホール素子HU,HV,HWはロータ位置検出回路21,22に接続されている。
【0006】
ロータ位置検出回路21,22から出力される各モータMA,MBのロータ位置検出信号は信号選択回路40に入力され、どちらのモータMA,MBの位置検出信号を使用するかを切り替えて選択可能となっている。そして、この信号選択回路40からは、選択したモータのロータ位置検出信号に応じてスイッチング素子T1〜T6をオン・オフさせるために、スイッチング信号発生回路30に対する制御信号が出力される。
なお、図17において、11はステータ、12はロータ、CU,CV,CWはステータ11の各相コイルである。
【0007】
信号選択回路40は、図18に示すようにモータMAのロータ位置検出信号が入力されるXOR(排他的論理和)ゲートIC1,IC2と、XORゲートIC2の出力側に接続されたNANDゲートIC3〜IC7と、モータMBのロータ位置検出信号が入力されるNANDゲートIC8〜IC10と、プルアップ抵抗等の抵抗R1〜R10と、コンデンサC1と、NANDゲートIC5〜IC10の出力側のダイオードD1〜D7と、出力側のトランジスタTR1〜TR3とから構成されている。
この信号選択回路40は、図19に示すようなモータMA,MBの各相のロータ位置検出信号が入力された際に、スイッチング信号発生回路30に対してモータMA,MBの1相または2相のスイッチング素子を駆動させるための制御信号をトランジスタTR1〜TR3から出力するように動作する。
【0008】
以下、図17の先願発明の動作を、図18、図19を参照しつつ詳述する。
いま、モータMA,MBが同期して同一速度で運転されているとすると、それぞれのロータ位置検出信号は図19のように同期して出力されている。なお、図19では、モータMAに関する信号をA、モータMBに関する信号をBで示している。
ここで、図19に示した各モータMA,MBのロータ位置検出信号は、図17におけるホール素子HU,HV,HWの出力信号と実質的に等しい。
【0009】
両方のモータMA,MBをロータ位置検出信号に同期させて運転するためには、図19のロータ回転角(空間角)が0°,60°,120°,180°,240°,300°のタイミングで位置検出信号が変化するのに合わせて、スイッチング信号発生回路30から出力されるスイッチング信号を変化させる必要がある。
【0010】
一方、図19における回転角が0°〜60°の間、60°〜120°の間、120°〜180°の間、180°〜240°の間、240°〜300°の間、300°〜0°の間は、各モータMA,MBともにロータ位置検出信号に変化がなく、一定の状態を保っている(例えば、0°〜60°の間はモータMA,MBのロータ位置検出信号としてU相及びW相の信号が検出される状態が続き、60°〜120°の間はモータMA,MBのロータ位置検出信号としてU相のみの信号が検出される状態が続く)。
【0011】
従って、上述したようにロータ位置検出信号に変化がなく一定の状態を保っている間に、モータMA,MB間でロータ位置検出信号を切り替えても何ら悪影響はない。
例えば、モータMAのロータ位置検出信号を用いてモータMAを駆動するためのスイッチング信号(モータMA,MBは並列に接続されているので、モータMBを駆動するためのスイッチング信号でもあり得る)を出力している時に、他方のモータMBのロータ位置検出信号に切り替えてモータMBを駆動するためのスイッチング信号(同じくモータMAを駆動するためのスイッチング信号でもあり得る)を出力するようにしても、この切替がロータ位置検出信号に変化がない期間に行われるのであれば、切り替えた瞬間にモータの印加電圧が急変する心配はない。また、ロータ位置検出信号の周期よりも短い周期で駆動を切り替えるようにすれば、動作が不安定になるおそれも少ない。
【0012】
このため、この先願に係る発明では、角度が0°〜60°の間、60°〜120°の間、120°〜180°の間、180°〜240°の間、240°〜300°の間、300°〜0°(360°)の間である30°、90°、150°、210°、270°、330°の時点で、信号選択回路40によりモータMA,MBのロータ位置検出信号をモータ間で交互に切り替えて選択するようにし、この選択したロータ位置検出信号に基づいてモータMA,MBを駆動するためのスイッチング信号を出力させている。
【0013】
つまり、図19に示す如く、例えば330°〜30°の間はモータMAのロータ位置検出信号を選択しており、この信号に基づいてスイッチング信号発生回路30はU相コイルCU、W相コイルCWに通電する(期間はそれぞれ異なる)ようにスイッチング信号を出力する。また、30°〜90°の間はモータMBのロータ位置検出信号を選択しており、この信号に基づいてスイッチング信号発生回路30はU相コイルCU、W相コイルCWに通電する(期間はそれぞれ異なる)ようにスイッチング信号を作成する。
【0014】
以後同様に、90°〜150°の間はモータMAのロータ位置検出信号を選択し、この信号に基づいてスイッチング信号発生回路30はU相コイルCU、V相コイルCVに通電するようにスイッチング信号を作成し、150°〜210°の間はモータMBのロータ位置検出信号を選択し、この信号に基づいてスイッチング信号発生回路30はU相コイルCU、V相コイルCVに通電するようにスイッチング信号を作成する。
【0015】
図19では、説明の便宜上、角度が30°、90°、150°、210°、270°、330°でモータMA,MBのロータ位置検出信号を切り替えているが、切替角度はこれらの値に限られるものではなく、前述したように0°〜60°の間、60°〜120°の間、120°〜180°の間、180°〜240°の間、240°〜300°の間、300°〜0°(360°)の間であって、モータMA,MBのロータ位置検出信号に変化がない角度で切り替えれば同様の効果を得ることができる。
【0016】
なお、図18に示した信号選択回路40の動作を確認すると、例えば図19の30°〜60°の間のモータMA,MBのロータ位置検出信号(U相,V相,W相)を何れも論理(1,0,1)で表し、これらが図18のモータMA,MBのロータ位置検出信号として入力されているとすると、図18の論理回路によって出力側トランジスタTR1,TR2,TR3(U相,V相,W相)の出力信号の論理は(1,0,1)であり、次の60°〜90°の間のモータMA,MBのロータ位置検出信号(U相,V相,W相)を何れも論理(1,0,0)とすると、出力側トランジスタTR1,TR2,TR3(U相,V相,W相)の出力信号の論理は(1,0,0)となり、図19の30°〜90°の期間における信号選択回路の出力(制御信号)の変化と一致していることが判る。
以上のような動作により、2台のモータMA,MBをロータ位置検出信号に同期させて単一の駆動回路により安定的に並列駆動することを可能にしている。
【0017】
【特許文献1】
特開2000−262082号公報(請求項1、図1〜図3等)
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先願発明では、駆動回路の構成が概して複雑であるためコストを上昇させる原因となっていた。
また、2台のモータのロータ位置が非同一(非同期)の状態から運転を開始して急激に速度を上げると、同期に引き込むまでに大きな循環電流が不規則に流れて不安定になり、騒音を発生したり、場合によっては同期に至らないこともあった。
加えて、同期引き込み時には、モータに接続されている負荷の大小や回転数の大小に関係なくモータに一定時間、直流電流を流す必要があると共に低速で一定時間運転する必要があるが、これらの時間(同期引き込み時間)の管理が煩雑であるため、その自動化が望まれていた。
【0019】
そこで本発明は、複数台のDCブラシレスモータの同期引き込みを確実に行うと共に、設定速度までの安定した加減速を可能とし、更に、同期引き込み時間の自動化、回路構成の簡略化によるコストの低減等を可能にしたDCブラシレスモータの並列駆動方法を提供しようとするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、互いに並列接続された複数台のDCブラシレスモータを複数の半導体スイッチング素子を有する駆動回路により同一速度で駆動するために、スイッチング信号発生手段が、各モータのロータ位置検出信号から各相ごとに論理和または論理積を検出して制御用ロータ位置検出信号を作成し、これらの制御用ロータ位置検出信号に基づいて前記スイッチング素子のスイッチング信号を作成するDCブラシレスモータの並列駆動回路において、
モータの始動時には、前記駆動回路の出力電圧位相角と、前記制御用ロータ位置検出信号に基づくロータ位相角との差である負荷角が所定の設定値以下になるまでモータのコイルに直流電流を流し、前記負荷角が前記設定値以下になったときに複数台のモータの同期引き込みが完了したと判断してモータを加速するものである。
【0021】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
前記負荷角に比例させて前記直流電流の指令値を可変制御するものである。
【0022】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
複数台のモータの同期引き込み後に、前記駆動回路の出力電圧位相角の制限値を出力周波数に応じて変化させながら前記モータを加速するものである。
【0023】
請求項4に記載した発明は、請求項またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
複数台のモータの同期引き込み後に、前記負荷角に比例する補償電圧を、前記モータの起電圧から求めた出力電圧に加算して前記駆動回路の出力電圧指令を作成するものである。
【0024】
請求項5に記載した発明は、請求項またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
複数台のモータの同期引き込み後に、前記負荷角に比例する微調整時間を、負荷特性から求めた負荷加減速時間に加算して前記モータの加減速時間を求めるものである。
【0025】
請求項6に記載した発明は、請求項またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
複数台のモータの同期引き込み後に、前記モータを低速域で一定時間、等速運転し、その後、設定速度まで加速するものである。
【0026】
請求項7に記載した発明は、請求項4,5またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
前記制御用ロータ位置検出信号の論理レベルが全相ともHighレベルまたはLowレベルとなった異常時に前記駆動回路の出力電圧を一定時間遮断し、その後、請求項1に記載した同期引き込み処理を再度実行するリトライ機能を備えたものである。
【0027】
請求項8に記載した発明は、請求項7に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
前記リトライ機能の実行回数をリトライ回数として任意に設定可能とし、前記リトライ回数を超えた場合に異常信号を外部へ出力するものである。
【0028】
請求項9に記載した発明は、請求項4,5または6に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
前記制御用ロータ位置検出信号の論理レベルが全相ともHighレベルまたはLowレベルとなった異常時に加速を停止して等速制御に切り換え、前記異常時が一定時間以上継続した時には異常信号を外部へ出力すると共に、前記異常時が一定時間内に解消した時には再度、加速運転するものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、図17の信号選択回路40に相当する本実施形態の信号選択回路を示している。
図1において、UA,VA,WA,CMはモータMAのロータ位置検出信号であり、UA,VA,WAはそれぞれU相,V相,W相の検出信号、CMはコモンを示している。これらのロータ位置検出信号UA,VA,WA,CMは、図17において信号選択回路40に入力されているロータ位置検出信号(MA)、すなわち図18,図19に記載されたモータMAロータ位置検出信号に相当する。
【0031】
同様にして、UB,VB,WB,CMはモータMBのロータ位置検出信号であり、UB,VB,WBはそれぞれU相,V相,W相の検出信号、CMはコモンを示している。これらのロータ位置検出信号UB,VB,WB,CMは、図17において信号選択回路40に入力されているロータ位置検出信号(MB)、すなわち図18,図19に記載されたモータMBロータ位置検出信号に相当する。
【0032】
また、図1において、41はU相のロータ位置検出信号UA,UBの論理和、V相のロータ位置検出信号VA,VBの論理和、W相のロータ位置検出信号WA,WBの論理和を求めるOR回路であり、OR回路41の各相出力端子は、それぞれダイオード42U,42V,42W、抵抗43U,43V,43W及び抵抗44U,44V,44Wを介して電源(+24V)に接続されている。
抵抗44U,44V,44Wの各両端には、フォトカプラ45U,45V,45W内の発光素子がそれぞれ接続され、フォトカプラ45U,45V,45W内の受光素子の各両端にはコンデンサ46U,46V,46Wが接続されている。
【0033】
コンデンサ46U,46V,46Wの各一端は、プルアップ抵抗47U,47V,47Wをそれぞれ介して電源(+5V)に接続されていると共に、各相の制御用ロータ位置検出信号を出力する出力端子48U,48V,48Wにそれぞれ接続されている。
また、コンデンサ46U,46V,46Wの各他端は、一括して接地端子(5G)に接続されている。
【0034】
次に、図2は、始動時において、2台のモータMA,MBが同期している(各ロータが同じ位置で停止している)場合のU,V,W各相のロータ位置検出信号UA,UB,VA,VB,WA,WBを、OR回路41の出力と共に示したものである。ここで、OR回路41の出力は、図1において出力端子48U,48V,48Wから出力される各相の制御用ロータ位置検出信号に等しい。
この場合、各相の制御用ロータ位置検出信号(OR回路出力)は120°ずつずれており、かつ、それぞれ180°ずつ継続しているため、図17のスイッチング信号発生回路30は2台のモータMA,MBが同期していると判断し、速やかに加速する。
【0035】
図3,図4は、2台のモータMA,MBが同期しておらず、モータMAに対してモータMBが45°遅れている状態(図3)、モータMAに対してモータMBが75°遅れている状態(図4)をそれぞれ示している。
これらの場合にも各相の制御用ロータ位置検出信号(OR回路出力)は120°ずつずれているが、それぞれ180°以上継続しているため、スイッチング信号発生回路30では2台のモータMA,MBが同期していないと判断する。
【0036】
また、図5〜図7は、図1におけるOR回路41の代わりにAND回路(図示せず)を用い、2台のモータMA,MBのU相のロータ位置検出信号UA,UBの論理積、V相のロータ位置検出信号VA,VBの論理積、W相のロータ位置検出信号WA,WBの論理積を求めた場合の、U,V,W各相のロータ位置検出信号UA,UB,VA,VB,WA,WBを、AND回路の出力と共に示したものである。
なお、図5はモータMA,MBが同期している場合、図6はモータMA,MBが同期しておらず、モータMAに対してモータMBが45°遅れている状態、図7はモータMAに対してモータMBが75°遅れている状態をそれぞれ示している。
このようにOR回路41の代わりにAND回路を用いた場合も、各相の制御用ロータ位置検出信号(AND回路出力)から同期、非同期を判断することができる。
【0037】
次に、図3,図4,図6,図7のように2台のモータMA,MBが同期していない場合の同期引き込み条件について、図8を参照しつつ説明する。図8において、実線の矢印は図1における2台のモータMA,MBのある相(例えばU相)のロータ位置検出信号の論理和または論理積出力(制御用ロータ位置検出信号)、一点鎖線の矢印はモータMAのU相のロータ位置、破線の矢印はモータMBのU相のロータ位置を示す。
【0038】
まず、図8(a)に示すように、両モータMA,MBが同期しておらず、各々のロータ位置が異なる場合、スイッチング信号発生回路からのスイッチング信号により、図17の三相ブリッジ回路内のスイッチング素子をオンさせてステータのコイルに直流電流を流し、図8(b)に示すように例えばU相の出力電圧の位相角を任意の値に制御する。ここで、出力電圧位相角を中心とした一定の角度範囲(斜線部)を負荷角設定範囲とする。
【0039】
このようにコイルに直流電流を流すことにより、モータMA,MBは各ロータ位置が出力電圧位相角に一致するように移動し、図8(c)の如く各ロータ位置が負荷角設定範囲に入れば2台のモータMA,MBが同期したと判断して加速モードに移行する。
また、図8(d)のように、何れか一方でもロータ位置が負荷角設定範囲外にあり、制御用ロータ位置検出信号の位相角が負荷角設定範囲に入らなければ、2台のモータMA,MBが同期していないと判断し、コイルに直流電流を流し続ける。
【0040】
ここで、2台のモータMA,MBが同期していないためコイルに直流電流を流す場合の直流電流の大きさについて、図9を参照しつつ説明する。
出力電圧位相角と、モータMA,MBのロータ位置の論理和または論理積出力位相角(ロータ位相角という)との差(負荷角)は、モータの発生トルクとほぼ比例関係にあるため、負荷角に比例させて直流電流指令値を可変制御することにより、同期引き込み時に必要なトルクを最適に制御することができ、同期引き込みに要する時間を最短にすることが可能である。
【0041】
すなわち、図9(a)は上記負荷角が大きい場合であり、この場合には直流電流指令値を大きくする。また、図9(b)は上記負荷角が小さい場合であり、この場合には直流電流指令値を小さくする。
これらの直流電流指令値の制御は、スイッチング信号発生回路により実行される。
【0042】
図10は、上述した同期引き込みの手順を示すフローチャートである。
まず、2台のモータMA,MBが同期していないと判断される場合には、任意の出力電圧位相角を出力する(S1)。次に、図1により検出した制御用ロータ位置検出信号の位相角すなわちロータ位相角と、前記出力電圧位相角とから負荷角を求めると共に(S2)、前記ロータ位相角が、負荷角と正負の設定値とによって規定される負荷角設定範囲内に存在するか否かを判断し(S3)、負荷角設定範囲外であれば図9の方法によって直流電流指令値を制御することによりコイルへの出力電流を制御する(S4)。
また、ロータ位相角が、負荷角設定範囲内であれば、同期引き込みが完了したと判断し(S5)、加速モードへ移行する。
【0043】
なお、負荷角が大き過ぎると2台のモータの同期状態を維持しにくくなる。特に、加速時のように出力周波数が低い低速領域では、大きな起動トルクが必要になって負荷角が大きくなる傾向にあることから、出力周波数が低い場合には、出力電圧位相角が進み過ぎない(負荷角が大きくなり過ぎない)ように、出力電圧位相角をリミッタにより制限することが有効である。
図11及び図12はこの出力電圧位相角リミッタの作用を説明する図であり、出力周波数が小さい場合(例えば図11のfa)には出力電圧位相角を下限値近くに制限し、出力周波数が大きい場合(例えば図11のfb)には出力電圧位相角を上限値にて制限するようにした。
これにより、負荷角が大きくなり過ぎて脱調限界を超えるのを防ぐことができ、安定した加速トルクを得ることができる。
【0044】
次いで、同期引き込み後に2台のモータを並列運転する際の駆動方法を図13〜図16を参照しつつ説明する。
同期引き込み後に2台のモータを加速しながら並列運転する場合、2台のモータを脱調させない方法として、例えば図13に示す方法がある。
【0045】
まず、モータの逆起電圧から所定周波数に対するモータ出力電圧のパターン(V/fパターン)を予め定めておき、同期引き込み後の加速時におけるモータの出力周波数に対応するモータ出力電圧をV/f出力電圧として保存しておく(S11)。次に、出力電圧位相角及び前記ロータ位相角から負荷角を求めると共に(S12)、負荷角がモータ発生トルクとほぼ比例関係にあることに着目して、負荷角に比例した出力電圧を補償電圧として算出する(S13)。次いで、この補償電圧を前記V/f出力電圧に加算することにより、出力電圧を得る(S14)。この出力電圧を指令としてスイッチング信号発生回路30に与えることにより、加速時に自動トルク補償を行わせることができる。
【0046】
次に、図14に示す駆動方法は、負荷に応じて予め定めた負荷加減速時間に対し、負荷角から求めた微調整時間を加算して最適な加減速時間を求める方法である。
すなわち、負荷特性から求めた加減速時間を負荷加減速時間として予め設定して保存しておく(S21)。次いで負荷角を求め(S22)、この負荷角に比例した加減速時間を算出してこれを微調整時間とする(S23)。次に、この微調整時間を前記負荷加減速時間に加算して最終的な加減速時間を求める(S24)。この加減速時間に従って加速または減速運転することにより、負荷角に比例して加減速時間を自動的に調整することができる。
【0047】
また、図15に示す駆動方法は、同期引き込み後の低速時において一定時間、等速運転し、その後、設定速度まで加速する方法であり、同期引き込み後に定周期割り込み処理として実行される。
まず、停止指令の有無を判断し(S31)、停止指令がある場合には等速運転タイマ値をゼロとして減速モードへ移行する(S342,S372)。
【0048】
停止指令がない場合には、加速中であって出力周波数が所定の低速ポイントにあるか否かを判断する(S32)。両者が否定される場合には、等速運転タイマ値をゼロとして加速モードへ移行する(S343,S373)。
加速中であって出力周波数が所定の低速ポイントにある場合、等速運転タイマ値がゼロであるか否か判断し(S33)、ゼロであれば等速運転タイマ値を所定の値(等速運転時間に相当)にセットして(S341)、その後、タイマ値を逐次デクリメントしていく(S35)。なお、ステップS33において等速運転タイマ値がゼロでない場合には、直接、ステップS35へジャンプする。
【0049】
ステップS35において等速運転タイマ値をインクリメントする都度、等速運転タイマ値がゼロになったか否かを判断し(S36)、ゼロになるまで等速モードを継続し(S371)、ゼロになったら加速モードへ移行する(S373)。
このような処理により、等速運転タイマ値により設定される一定時間の低速運転によって同期運転を確立させ、その後、安定した状態で加速運転に移行させることができる。
【0050】
図16は、同期引き込みが成功しなかった場合、または、一旦同期運転に入った後で脱調の危険性が高くなった場合に、図17の三相ブリッジ回路内のスイッチング素子をすべてオフさせて駆動回路の出力電圧(コイルCU,CV、CWへの供給電圧)を遮断し、その後、同期引き込み処理から再度、実行するリトライ機能を備えた駆動方法である。
【0051】
まず、運転指令のオンにより直流制動を開始する(S41,S42)。ここで、直流制動とは、前述したように図17の三相ブリッジ回路内のスイッチング素子をオンさせて駆動回路からステータのコイルに直流電流を流すことを言う。
その後、2台のモータが同期しているか否かを判断し(S43)、同期していなければ直流制動の設定時間を過ぎた時点でタイムアウトと判定して再度、ステップS41に戻る(S45)。タイムアウトに達しない場合には、後述するステップS47へ移行する。
【0052】
2台のモータが同期している場合には、自動加速を開始し(S44)、前述した図13〜図15の駆動方法に移行する。
このとき、OR回路41の出力信号(制御用ロータ位置検出信号)の論理レベルが図4に示す如く全相とも「High」レベル、または、AND回路(図示せず)の出力信号(制御用ロータ位置検出信号)の論理レベルが図7に示す如く全相とも「Low」レベルであったとすると、このことは、負荷角の絶対値が60°≦|負荷角|<120°の状態にあって、これ以上加速すると脱調の危険性があるという異常事態を意味している。
【0053】
そこで、図16の駆動方法では、ステップS46において、上記異常事態が発生したときにリトライ制御側へ移行するようにした。
すなわち、リトライの回数を予め設定しておき、リトライ回数が設定回数未満の場合には、図17の駆動回路の出力電圧を遮断し(S49)、その後、出力遮断状態が予め設定された時間を経過してタイムオーバーとなったら(S50)ステップS41に戻って再度、同期引き込み処理からリトライする。
また、リトライ回数が設定回数に達したら(あるいは、最初のリトライ後に一定時間を経過しても上記異常事態が解消しない場合には)、出力電圧を遮断すると共に、断線等の異常事態が発生していると判断して異常信号(アラーム)を出力する(S48)。
【0054】
なお、ステップS46の判断が否定される場合には、モータが停止中か否かを判断し(S51)、停止していれば同期引き込み処理を行い(S41以降)、停止していなければステップS46の判断を繰り返し行う。
ここで、リトライ制御の結果、ステップS46において上記異常事態が解消した時は、正常な制御用ロータ位置検出信号が出力されているので、その信号に基づいてモータを再度加速すればよい。
また、ステップS46においてOR回路41(AND回路)の出力信号が全相とも「High」(Low)レベルである場合には、加速を一旦停止して前回の正常な制御用ロータ位置検出信号に基づいて等速制御に切り換えても良い。
【0055】
上記実施形態では2台のDCブラシレスモータを並列運転する場合について説明したが、本発明は3台以上のモータを並列運転する場合にも適用可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、複数台のDCブラシレスモータから検出した各相ごとのロータ位置検出信号の論理和または論理積に基づいて、比較的簡単な回路構成により、各モータを並列駆動することができる。
また、同期引き込みの正確な判断や同期引き込み時間の自動化が可能であり、複数台のモータを脱調させることなく低速での等速運転や所定速度までの加減速運転を確実に行うことができる。
総じて、本発明によれば、低騒音で安定した運転が要求される複数台のファンやポンプ等の並列駆動装置を低コストにて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における信号選択回路の構成図である。
【図2】本発明の実施形態において、2台のモータが同期している場合の各相のロータ位置検出信号をOR回路の出力と共に示したタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施形態において、2台のモータが同期していない場合の各相のロータ位置検出信号をOR回路の出力と共に示したタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施形態において、2台のモータが同期していない場合の各相のロータ位置検出信号をOR回路の出力と共に示したタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態において、2台のモータが同期している場合の各相のロータ位置検出信号をAND回路の出力と共に示したタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施形態において、2台のモータが同期していない場合の各相のロータ位置検出信号をAND回路の出力と共に示したタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態において、2台のモータが同期していない場合の各相のロータ位置検出信号をAND回路の出力と共に示したタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施形態における同期引き込み条件の説明図である。
【図9】本発明の実施形態における直流電流指令値の決定方法の説明図である。
【図10】本発明の実施形態における同期引き込みの手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態における出力電圧位相角リミッタの作用を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態における出力電圧位相角リミッタの作用を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態において、同期引き込み後に2台のモータを並列運転する際の手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態において、同期引き込み後に2台のモータを並列運転する際の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施形態において、同期引き込み後に2台のモータを並列運転する際の手順を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施形態において、同期引き込み後に2台のモータを並列運転する際の手順を示すフローチャートである。
【図17】先願に係る駆動回路の回路図である。
【図18】図17における信号選択回路の構成を示す回路図である。
【図19】図17の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
E:直流電源
T1〜T6:スイッチング素子
U,V,W:出力端子
MA,MB:DCブラシレスモータ
CU,CV,CW:コイル
HU,HV,HW:ホール素子
11:ステータ
12:ロータ
21,22:ロータ位置検出回路
30:スイッチング信号発生回路
40:信号選択回路
41:OR回路
42U,42V,42W:ダイオード
43U,43V,43W,44U,44V,44W:抵抗
45U,45V,45W:フォトカプラ
46U,46V,46W:コンデンサ
47U,47V,47W:プルアップ抵抗
48U,48V,48W:出力端子

Claims (9)

  1. 互いに並列接続された複数台のDCブラシレスモータを複数の半導体スイッチング素子を有する駆動回路により同一速度で駆動するために、スイッチング信号発生手段が、各モータのロータ位置検出信号から各相ごとに論理和または論理積を検出して制御用ロータ位置検出信号を作成し、これらの制御用ロータ位置検出信号に基づいて前記スイッチング素子のスイッチング信号を作成するDCブラシレスモータの並列駆動回路において、
    モータの始動時には、前記駆動回路の出力電圧位相角と、前記制御用ロータ位置検出信号に基づくロータ位相角との差である負荷角が所定の設定値以下になるまでモータのコイルに直流電流を流し、前記負荷角が前記設定値以下になったときに複数台のモータの同期引き込みが完了したと判断してモータを加速することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法
  2. 請求項1に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    前記負荷角に比例させて前記直流電流の指令値を可変制御することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  3. 請求項1または2に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    複数台のモータの同期引き込み後に、前記駆動回路の出力電圧位相角の制限値を出力周波数に応じて変化させながら前記モータを加速することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  4. 請求項またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    複数台のモータの同期引き込み後に、前記負荷角に比例する補償電圧を、前記モータの起電圧から求めた出力電圧に加算して前記駆動回路の出力電圧指令を作成することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  5. 請求項またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    複数台のモータの同期引き込み後に、前記負荷角に比例する微調整時間を、負荷特性から求めた負荷加減速時間に加算して前記モータの加減速時間を求めることを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  6. 請求項またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    複数台のモータの同期引き込み後に、前記モータを低速域で一定時間、等速運転し、その後、設定速度まで加速することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  7. 請求項4,5またはに記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    前記制御用ロータ位置検出信号の論理レベルが全相ともHighレベルまたはLowレベルとなった異常時に前記駆動回路の出力電圧を一定時間遮断し、その後、請求項1に記載した同期引き込み処理を再度実行するリトライ機能を備えたことを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  8. 請求項7に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    前記リトライ機能の実行回数をリトライ回数として任意に設定可能とし、前記リトライ回数を超えた場合に異常信号を外部へ出力することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
  9. 請求項4,5または6に記載したDCブラシレスモータの並列駆動方法において、
    前記制御用ロータ位置検出信号の論理レベルが全相ともHighレベルまたはLowレベルとなった異常時に加速を停止して等速制御に切り換え、前記異常時が一定時間以上継 続した時には異常信号を外部へ出力すると共に、前記異常時が一定時間内に解消した時には再度、加速運転することを特徴とするDCブラシレスモータの並列駆動方法。
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