JP4123855B2 - ドライイメージング材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は銀塩と還元剤を含み、熱現像により画像を形成するドライイメージング材料に関し、詳しくは、高感度、高最高濃度でありながら低カブリであり、且つ熱現像後における銀画像の安定性(現像後の画像保存性)に優れたドライイメージング材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療や印刷製版の分野では、クリーンで作業性のよい画像形成方法が強く望まれ熱現像方式のドライイメージングシステムが普及している。この方式はレーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッターのような効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる。ドライイメージング材料は、感光性ハロゲン化銀粒子を常温下で感光させ、次いで通常80℃〜140℃の範囲で該ハロゲン化銀粒子を還元剤により物理現像核に変換し、有機銀塩を銀イオンの供給源とし、現像核を現像銀粒子へと成長させることで画像を形成する。
【0003】
しかしながら、ドライイメージング材料においては、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有するため、熱現像前の保存期間中にカブリが生じ易い。また露光後、通常80〜140℃で熱現像するだけで定着を行わないため、熱現像後においても、ハロゲン化銀、有機銀塩及び還元剤等が全部又は一部残留併存するため、長期間の保存において、熱や光により金属銀が生じ、銀画像の色調等の画質が変化し易いという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するための技術が、特開平6−208192号、同8−267934号、米国特許第5,714,311号、EP1096310号及びこれらの中で引用されている文献等において開示されているが、これらの開示技術はある程度の効果を有するものの、市場において要求されるレベルを満たすための技術としてはまだ充分なものではない。また、ドライイメージング材料には、特に、医療用画像の分野では、一層正確な診断を可能にする高画質化が要望され、低カブリ、高感度、高鮮鋭性が追求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高感度、高最高濃度でありながら低カブリであり、且つ熱現像後における銀画像の安定性(現像後の画像保存性)に優れたドライイメージング材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0007】
1.少なくとも非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子及びナノサイズ単分散感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤及びバインダーを含有するドライイメージング材料において、該還元剤の少なくとも一種が前記一般式(A)で表される化合物であり、且つ前記一般式(F)で表される化合物を含有することを特徴とするドライイメージング材料。
【0008】
2.前記ドライイメージング材料中に前記一般式(J)で表されるカブリ抑制剤を含有することを特徴とする前記1に記載のドライイメージング材料。
【0009】
3.前記ドライイメージング材料を100℃以上160℃以下の温度で現像処理した後の感光性ハロゲン化銀粒子を含む層の熱転移点温度が、46℃以上90℃以下であることを特徴とする前記1または2に記載のドライイメージング材料。
【0010】
4.バインダーのガラス転移温度Tgが、70℃以上105℃以下であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のドライイメージング材料。
【0011】
5.前記ドライイメージング材料の感光性層又は非感光性層に前記一般式(G)で表される現像促進剤を含有することを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のドライイメージング材料。
【0012】
6.異なる銀量の感光層を2層有し、該感光層のうち含有する銀量が低銀量の感光層中に前記一般式(G)で表される現像促進剤を含有することを特徴とする前記5に記載のドライイメージング材料。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のドライイメージング材料は、少なくとも非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子(以下、有機銀塩粒子または有機銀塩ともいう)及びナノサイズ単分散感光性ハロゲン化銀粒子(以下、感光性ハロゲン化銀粒子またはハロゲン化銀粒子ともいう)を含有する感光性乳剤、還元剤及びバインダーを含有するドライイメージング材料において、該還元剤の少なくとも一種が前記一般式(A)で表される化合物であり、且つ前記一般式(F)で表される化合物を含有することを1つの特徴とする。
【0014】
本発明に用いられる還元剤としては、前記一般式(A)で表される化合物であるビスフェノール誘導体が用いられる。
【0015】
前記一般式(A)において、XはCHRを表し、Rは環基を表す。Rで表される環基としては、4〜6員の環基が挙げられ、芳香族環基、飽和あるいは不飽和の脂環式環基、ヘテロ環基等が挙げられる。芳香族環基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が好ましく、飽和あるいは不飽和の脂環式環基としては、例えばシクロブテニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロへキセニル基、シクロヘキサジエニル基等の4〜6員の環基が好ましく、ヘテロ環基としては、例えばピラゾール環、ピロール環、ピロリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリジン環、トリアジン環、チアゾール環、フラン環、ピラン環等から導かれる5または6員の環基が好ましい。特に好ましくは、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、フェニル基などである。
【0016】
これらの環基は更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、シクロアルケニル基(例えば、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、メチルアミノカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−モルホリノカルボニル基等)、スルファモイル基(スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルフォリノスルファモイル基等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基等)、アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル基、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル基、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アルキルカルボニルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル基、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル基、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)等が挙げられる。また、置換基が二つ以上ある場合には、同じでも異なっていてもよい。
【0017】
R′、R″は各々、水素原子または置換基を表し、該置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、ヘテロ環基等が挙げられる。複数のR′、R″は同じでも異なっていてもよい。
【0018】
R′は、炭素数2以上が好ましい。R″は炭素数1〜5が好ましく、さらに好ましくは炭素数1である。これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、アルケニル基(例えば、エテニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、メチルアミノカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−モルホリノカルボニル基等)、スルファモイル基(スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルフォリノスルファモイル基等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基等)、アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル基、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル基、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アルキルカルボニルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル基、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル基、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いられる前記一般式(A)で表される化合物の具体例を下記に挙げる。
【0020】
【化5】
Figure 0004123855
【0021】
【化6】
Figure 0004123855
【0022】
【化7】
Figure 0004123855
【0023】
【化8】
Figure 0004123855
【0024】
前記一般式(A)で表される化合物は、フェノールの2位にR′および4位にR″を導入した化合物と環基を有するアルデヒドとの縮合により合成することができる。一般式(A)で表される化合物を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。一般式(A)で表される化合物の使用量は、好ましくは銀1モル当り1×10-3モル〜10モル、より好ましくは1×10-2〜2モルである。前者の範囲未満では、ハロゲン化銀の現像効率が低下し、高い濃度を得ることが難しくなる。また、前者の範囲を越えるとカブリの増大を招くので好ましくない。
【0025】
本発明の光熱写真ドライイメージング材料に使用される還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、通常有機銀塩1モル当たり0.05モル〜10モルが好ましく、0.1モル〜3モルがより好ましい。又この量の範囲内において、上述した還元剤は2種以上併用されてもよい。本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀、有機銀塩粒子、溶媒等を含んでなる感光性乳剤の溶液に添加混合して塗布した方が、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0026】
本発明に用いられる一般式(F)で表される化合物について説明する。
前記一般式(F)において、Rfで表されるフッ素原子を有する置換基としては、フッ素原子を有する炭素数1〜25の、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基及びオクタデシル基等)またはアルケニル基(例えば、プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基及びドデセニル基等)等が挙げられる。
【0027】
1及びL2で表されるフッ素原子を有さない2価の連結基(但し、L1及びL2は各々、スルホンアミド基またはカルバミド基であることはない)としては、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等)、アルキレンオキシ基(メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、ブチレンオキシ基等)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシブチレン基等)、オキシアルキレンオキシ基(例えば、オキシメチレンオキシ基、オキシエチレンオキシ基、オキシエチレンオキシエチレンオキシ基等)、フェニレン基、オキシフェニレン基、フェニルオキシ基、オキシフェニルオキシ基、オキシピリジレン基、−O−、またはこれらの基を組み合わせて得られる基等が挙げられる。但し、L1及びL2は各々、スルホンアミド基(例えば、−NHSO2−、−NRSO2−(Rは置換基を表す)、等)またはカルバミド基(例えば、−NHCO−、−NRCO−(Rは置換基を表す)、等)であることはない。
【0028】
Aはアニオン基(例えば、カルボン酸基またはそれの塩の基(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等の基)、スルホン酸基またはそれの塩の基(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等の基)及び燐酸基またはそれの塩の基(ナトリウム塩、カリウム塩等の基)等)を表す。
【0029】
Yで表される3〜6価の連結基としては、炭素原子または窒素原子を中心にして構成される原子群が挙げられる。例えば、3〜6価の窒素原子を含んでもよい炭化水素基(例えば、アレキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、窒素原子、等や、それらを組み合わせて得られる基等から導かれる3〜6価の基)が挙げられる。
【0030】
m及びnは各々、0または1を表し、pは1〜3の整数を表し、qは2または3の整数を表す。
【0031】
一般式(F)で表される化合物は、例えば、フッ素原子を導入した炭素数1〜25のアルキル基を有する化合物(沃化物)(例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基、パーフロロオクタデシル基等を有する化合物(沃化物))やフッ素原子を導入した炭素数1〜25のアルケニル基を有する化合物(例えば、パーフロロヘキセニル基及びパーフロロノネニル基等を有する化合物)と、それぞれフッ素原子を導入していない3価〜6価のアルカノール化合物、水酸基を3〜4個有する芳香族化合物またはヘテロ環化合物との付加反応や縮合反応によって得ることができる。アルカノール化合物としては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンテン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ブタノール)−3、脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール等が挙げられる。芳香族化合物及びへテロ環化合物としては、例えば、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリヒドロキシピリジン等が挙げられる。
【0032】
下記に、一般式(F)で表される化合物の好ましい具体的化合物を示す。
【0033】
【化9】
Figure 0004123855
【0034】
【化10】
Figure 0004123855
【0035】
一般式(F)で表される化合物を塗布液に添加するのには、公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されており、これらに準じて分散することができる。一般式(F)で表される化合物は、最外層の保護層に添加することが好ましい。
【0036】
一般式(F)で表される化合物の添加量は、好ましくは1m2当たり1×10- 8モル〜1×10-1モルであり、より好ましくは1×10-5モル〜1×10-2モルである。前者の範囲未満では、保存性の向上が得られ難くなる。また、前者の範囲を越えると湿度依存性が大きく高湿下の保存性が劣化するようになる。
【0037】
本発明のドライイメージング材料(以下、感光材料ともいう)に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子について説明する。なお、本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収することができ、又は人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収することができ、紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内のいずれかの領域の光を吸収したときに、当該ハロゲン化銀結晶内及び/又は結晶表面において、当該写真分野における潜像形成が起こり得るように製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
【0038】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれで製造されてもよく、又可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、所謂コントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0039】
粒子形成は通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、又核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールが出来るので好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法を行う場合には、先ず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させて核(種粒子)を生成(核生成工程)させた後、コントロールされたpAg、pH等のもとで、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ、種粒子を成長させる粒子成長工程によりハロゲン化銀粒子を調製する。粒子形成後、脱塩工程により不要な塩類等をフロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により除くことで所望のハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【0040】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁や色調(黄色味)を低く抑えるため、及び良好な画質を得るために平均粒径が小さい方が好ましく、平均粒径は10nm以上80nm以下が好ましく、20nm以上60nm以下がより好ましい(即ち、ナノサイズ粒子である)。なおここでいう粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0041】
本発明において、ハロゲン化銀粒子は単分散である。ここでいう単分散とは、下記式で求められる粒径の変動係数が30%以下をいう。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0042】
粒径の変動係数(%)=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体、平板状、球状、棒状、ジャガイモ状などの形状を挙げることができるが、これらの内、特に立方体、八面体、14面体、平板状の形状が好ましい。
【0043】
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以上100以下、より好ましくは2以上50以下である。これらは米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
【0044】
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への銀増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0045】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2千〜4万、より好ましくは5千〜2万5千である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸又はアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下又は加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
【0046】
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより好ましい。
【0047】
本発明のハロゲン化銀粒子はいかなる方法で感光性層(単に感光層ともいう)に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
【0048】
本発明のハロゲン化銀は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許第1,447,454号に記載されている様に、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることもできる。又、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、又は脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001モル〜0.7モル使用するのが好ましく、0.03モル〜0.5モル使用するのがより好ましい。
【0049】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、元素周期律表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。これらの金属イオンは金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体又は錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらは1種類でも同種或いは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モル〜1×10-2モルの範囲が好ましく、1×10-6モル〜1×10-4モルの範囲がより好ましい。金属錯体や錯体イオンを形成する配位子としはハロゲンイオン(弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド、アコ、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。
【0050】
これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物(以下、金属化合物ともいう)は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、核形成、成長の段階で添加するのがより好ましく、特に好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号及び同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0051】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0052】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0053】
本発明に係る脂肪族カルボン酸銀塩は還元可能な銀源であり、炭素数10〜30、好ましくは15〜25の脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0054】
ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。これらの内、好ましい銀塩としてはベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。又、本発明においては脂肪族カルボン酸銀塩が2種以上混合されていることが、現像性を上げ高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば2種以上の脂肪族カルボン酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0055】
本発明に使用するカブリ抑制剤として一般式(J)の化合物を使用することが好ましい。
【0056】
本発明に好ましく用いられる一般式(J)で表されるカブリ抑制剤について説明する。
【0057】
前記一般式(J)において、X1、X2およびX3の少なくとも1つは、ハロゲン原子である置換基を表す。X1、X2及びX3はで表される置換基としては各々、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基等が挙げられるが、X1、X2及びX3の少なくとも一つはハロゲン原子である。
【0058】
Yで表される2価の連結基としては、−C(=O)−、−SO−、−SO2−、−NH(C=O)−、−NHSO−、−NHSO2−等が挙げられる。
【0059】
1 しては、「t価の、直鎖又は分枝、或いは飽和又は不飽和の、ヘテロ原子を含んでもよい」、脂肪族残基または脂肪族カルボン酸残基;「t価の」、炭素原子鎖、ヘテロ原子を含む炭素原子鎖、ヘテロ環やヘテロ原子を含んでもよい炭素原子鎖等を骨格とするポリマー残基(例えば、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、セルロース、ゼラチン等の残基);等が挙げられる。
【0060】
tは1〜300の整数を表す。
但し、Q1が「t価の、直鎖又は分枝、或いは飽和又は不飽和の、ヘテロ原子を含んでもよい」、脂肪族残基または脂肪族カルボン酸残基であるとき(ポリマー残基でないとき)は、tは1〜4であることが好ましい。また、Q1がポリマー残基であるときは、tは4〜300であることが好ましく、特に好ましくは4〜250である。
【0061】
1がポリアセタール、ポリアクリレート又はその誘導体(多次元共重合体)、セルロース又はゼラチンのようなポリマー残基の場合、側鎖数の1%〜20%が−Q2−Y−C(X1)(X2)(X3)基で置換されているのが好ましい。
【0062】
2で表される環基を含まない2価の連結基としては、アルキレンオキシ基、アルキレンアミノ基、アルキレンチオ基、アルキレン基、またはそれらの基から選ばれる基を組み合わせた基、等が挙げられる。
【0063】
mは0又は1を表す。
一般式(J)で表されるカブリ抑制剤の好ましい具体例を下記に示す。
【0064】
【化11】
Figure 0004123855
【0065】
【化12】
Figure 0004123855
【0066】
上記一般式(J)で表されるカブリ抑制剤を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり、10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルである。前者の範囲未満であるとカブリ防止効果が得られがたくなる。また、前者の範囲を越えるとコントラストが低下するようになる。
【0067】
本発明の感光性ハロゲン化銀には化学増感を施すことができる。例えば、特願2000−57004号及び特願2000−61942号に記載されている方法等により、硫黄などのカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。下記に示すカルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。
【0068】
これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
【0069】
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号及び同11−218874号公報等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうちカルコゲン原子が炭素原子又はリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
【0070】
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり、10-8モル〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7モル〜10-3モルである。化学増感環境としては、特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀又は銀核を消滅或いはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、又特に銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましく、該増感条件として、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、又温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
【0071】
従って、本発明のドライイメージング材料においては、感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて、温度30℃以下において化学増感を施され、且つ脂肪族カルボン酸銀塩と混合して分散され、脱水及び乾燥された感光性乳剤を用いることが好ましい。
【0072】
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して、吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ、高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。含窒素複素環化合物において、複素環としてはピラゾール環、ピリミジン環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,2,3,4−テトラゾール環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール環、ジアザインデン環、トリアザインデン環、ペンタアザインデン環などを挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン環、ベンズイミダゾール環、インダゾール環及びベンズチアゾール環等も適用できる。
【0073】
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、且つ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
【0074】
複素環にはヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えばアルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などを有してもよい。
【0075】
上記含複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、おおよその量はハロゲン化銀1モル当たりの量で10-6モル〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4モル〜10-1モルの範囲である。
【0076】
本発明の感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
【0077】
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物としては、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0078】
本発明に用いられる化学増感を施されたハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたものでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
【0079】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0080】
本発明に使用される有用な増感色素は、例えばRD17643IV−A項(1978年12月p.23)、同18431X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0081】
有用なシアニン色素は、例えばチアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
【0082】
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば米国特許第4,536,473号、同4,515,888号、同4,959,294号等に開示されている赤外分光増感色素が挙げられる。
【0083】
赤外分光増感色素については、ベンズアゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されていることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が特に好ましい。
【0084】
これらの赤外増感色素の添加時期はハロゲン化銀調製後のどの時点でもよく、例えば溶剤に添加して、或いは微粒子状に分散した所謂固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/脂肪族カルボン酸銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。又、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。本発明において、上記の分光増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
【0085】
本発明のドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、脂肪族カルボン酸銀塩を含有する乳剤は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
【0086】
本発明に用いられる還元剤はハロゲン化銀イオンを還元して酸化体に変化するが、該酸化体が特定の化合物と反応して還元性の強い化合物を生成し現像促進をする。該特定の化合物(現像促進剤)としては、前記一般式(G)で表される現像促進剤(ビニル化合物)が好ましい例として挙げられる。
【0087】
一般式(G)で表される現像促進剤について説明する。
前記一般式(G)において、Wは電子求引性置換基を表し、VおよびZは各々置換基を表す。Vで表される置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基等が挙げられる。
【0088】
Zで表される置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩等)、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基(例えば、ピロリジノ基)、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基(5〜6員の含窒素ヘテロ環、例えばベンズトリアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等)、ウレイド基、スルホンアミド基等が挙げられる。
【0089】
VとW、VとZは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。VとWが形成する環としては、例えばピラゾロン環、ピラゾリジノン環、シクロペンタンジオン環、β−ケトラクトン環、β−ケトラクタム環等が挙げられる。
【0090】
一般式(G)について更に説明すると、Wの表す電子求引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0091】
Vとして表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。
【0092】
上記Zで表される置換基の内、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基、ヒドロキシル基又はメルカプト基の有機又は無機の塩が挙げられる。また上記V及びWの置換基の内、置換基中にチオエーテル結合を有するものが好ましい。
【0093】
本発明に好ましく用いられる一般式(G)で表される現像促進剤の好ましい具体例を下記に示す。
【0094】
【化13】
Figure 0004123855
【0095】
【化14】
Figure 0004123855
【0096】
【化15】
Figure 0004123855
【0097】
上記一般式(G)で表される現像促進剤を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり、10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルである。前者の範囲未満であると現像促進作用が得られ難くなる。また、前者の範囲を越えるとカブリが増大し、実用に耐えなくなる。
【0098】
本発明のドライイメージング材料に好適なバインダーとしては、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体が挙げられ、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類が挙げられる。親水性でも非親水性でもよい。
【0099】
本発明のドライイメージング材料の感光層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。詳しくは後述する。又、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
上記バインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定しうる。例えば、感光層において少なくとも脂肪族カルボン酸銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと脂肪族カルボン酸銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、感光層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましい。更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0101】
本発明では、100℃以上160℃以下の温度で熱現像処理した後の感光性ハロゲン化銀粒子を含む層の熱転移点温度が、46℃以上90℃以下であることが好ましい。本発明でいう熱転移点温度とは、VICAT軟化点又は環球法で示した値であり、示差走査熱量計(DSC)、例えばEXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)等を用いて、熱現像済みの感光層を単離して測定した際の吸熱ピークをさす。一般的に高分子化合物はガラス転移点Tgを有しているが、ドライイメージング材料においては、感光層に用いているバインダー樹脂のTg値よりも低いところに、大きな吸熱ピークが出現する。この熱転移点温度に着目し鋭意検討を行った結果、この熱転移点温度を46℃以上、200℃以下にすることにより、形成された塗膜の堅牢性が増すのみならず、感度、最大濃度、画像保存性など写真性能が大幅に向上することを新たに見出し、本発明に至った。熱転移点温度が、46℃未満ではカブリが高く、現像後の画像保存性においてもカブリが高くなるようになる。また、90℃を越えると現像が抑制され画像濃度が得られ難くなるようになる。
【0102】
ガラス転移温度(Tg)は、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年、ワイリー アンド サン社版)に記載の方法で求めたものであり、バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
【0103】
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1Tg2・・・Tgnは、共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
【0104】
本発明のドライイメージング材料において、支持体上に脂肪族カルボン酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤等を含有する感光層に含有するバインダーとしては、従来公知の高分子化合物を用いることができる。Tgが好ましくは70〜105℃、数平均分子量が好ましくは1,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜500,000、重合度が好ましくは約50〜1,000程度のものである(尚、Tgが70℃未満では膜が弱く耐傷性が劣るようになる。また、105℃を越えると造膜性が失われ塗膜に亀裂が生じやすくなる)。
【0105】
上記のような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体よりなる化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂が挙げられる。
【0106】
また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に、特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜105℃の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
【0107】
上記ようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アリールエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されていてもされていなくてもよく、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−iso−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
【0108】
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:その具体例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなど;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトンなど;オレフィン類:例えば、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど;ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、n−ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニルなどを有するものなど;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。
【0109】
これらのうち、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物のなかでも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物は、熱現像により脂肪族カルボン酸銀塩から生成する脂肪族カルボン酸との相溶性が優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。
【0110】
アセタール基を持つ高分子化合物としては、下記一般式(K)で表される化合物が、特に好ましい。
【0111】
【化16】
Figure 0004123855
【0112】
式中、R51は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基または置換アリール基を表すが好ましくはアリール基以外の基である。R52は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、−COR53または−CONHR53を表す。R53はR51と同義である。
【0113】
51、R52、R53で表される無置換アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6である。これらは直鎖であっても分岐していてもよく、好ましくは直鎖のアルキル基が好ましい。このような無置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるが、特に好ましくはメチル基もしくはプロピル基である。
【0114】
無置換アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記のアルキル基、アリール基に置換可能な基としては、アルキル基(例えば、メチル基、n−プロピル基、t−アミル基、t−オクチル基、n−ノニル基、ドデシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ニトロ基、水酸基、シアノ基、スルホ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基等)などが挙げられる。この置換基が2つ以上あるときは、同じでも異なっていてもよい。置換アルキル基の総炭素数は、1〜20が好ましく、置換アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。
【0115】
52としては、−COR53(R53はアルキル基またはアリール基)、−CONHR53(R53はアリール基)が好ましい。a、b、cは各繰り返し単位の質量をモル(mol)%で示した値であり、aは40〜86モル%、bは0〜30モル%、cは0〜60モル%の範囲で、a+b+c=100モル%となる数を表し、特に好ましくは、aが50〜86モル%、bが5〜25モル%、cが0〜40モル%の範囲である。a、b、cの各組成比をもつ各繰り返し単位は、それぞれ同一のもののみで構成されていても、異なるもので構成されていてもよい。
【0116】
本発明の上記一般式(K)で表される高分子化合物は、「酢酸ビニル樹脂」桜田一郎編(高分子化学刊行会、1962年)等に記載の一般的な合成方法で合成することができる。以下に、代表的な合成方法の例を挙げるが、本発明はこれらの代表的な合成例に限定されるものではない。
【0117】
合成例1:P−1の合成
日本合成(株)製のポリビニルアルコール(ゴーセノールGH18)20gと純水180gを仕込み、ポリビニルアルコールが10質量%溶液になるように純水に分散した後、これを95℃に昇温してポリビニルアルコールを溶解した後、75℃まで冷却して、ポリビニルアルコール水溶液を用意し、更にこのポリビニルアルコール水溶液に、酸触媒として10質量%の塩酸を1.6g添加し、これを滴下液Aとした。ついで、ブチルアルデヒド、アセトアルデヒドのmol比1:1の混合物11.5gを計量し、これを滴下液Bとした。冷却管と攪拌装置を取り付けた1000mlの4ツ口フラスコに100mlの純水を入れ、85℃に加温し強攪拌した。これに滴下液Aと滴下液Bを75℃に保温した滴下ロートを用いて、攪拌下で2時間を要して同時滴下した。この際、攪拌速度に注意をして、析出する粒子の融着を防止しながら反応を行った。滴下終了後、酸触媒として10質量%の塩酸を7g追加し、温度85℃で2時間攪拌を行い、十分に反応を行った。その後、40℃まで冷却し、重曹を用いて中和し、水洗を5回繰り返した後、濾別してポリマーを取り出し乾燥し、P−1を得た。得られたP−1を、DSCを用いてTgを測定したところ、Tgは75℃であった。
【0118】
表1に記載のその他の高分子化合物(ポリマー)も同様に合成した。
これらの高分子化合物をバインダーとして単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。本発明の感光性銀塩含有層(好ましくは感光層)には上記ポリマーを主バインダーとして用いる。ここで言う主バインダーとは「感光性銀塩含有層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」をいう。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明に係るポリマーが可溶となるものであれば、特に制限はない。より好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0119】
以下に、本発明に好ましく用いられる高分子化合物の構成を示す。なお、表中のTgは、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)により測定した値である。
【0120】
【表1】
Figure 0004123855
【0121】
なお、表1中、P−9はソルーシア社製ポリビニルブチラール樹脂B−79である。
【0122】
本発明においては、上記バインダーに対し架橋剤を用いることにより膜付きがよくなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
【0123】
本発明で用いられる架橋剤としては、従来ハロゲン化銀写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用いうるが、好ましくはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物又は酸無水物である。
【0124】
上記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個有しているイソシアネート類及びその付加体(アダクト体)であり、更に、具体的には、脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼンジイソシアネート類、ナフタレンジイソシアネート類、ビフェニルイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート類、トリフェニルメタンジイソシアネート類、トリイソシアネート類、テトライソシアネート類、これらのイソシアネート類の付加体及びこれらのイソシアネート類と2価又は3価のポリアルコール類との付加体が挙げられる。
【0125】
具体例としては、特開昭56−5535号の10頁〜12頁に記載されているイソシアネート化合物を利用することができる。
【0126】
なお、イソシアネートとポリアルコールのアダクト体は、特に層間接着を良くし、層の剥離や画像のズレ及び気泡の発生を防止する能力が高い。かかるイソシアネートはドライイメージング材料のどの部分に置かれてもよい。例えば支持体中(特に支持体が紙の場合、そのサイズ組成中に含ませることができる)、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。
【0127】
又、本発明において使用することが可能なチオイソシアネート系架橋剤としては、上記のイソシアネート類に対応するチオイソシアネート構造を有する化合物も有用である。
【0128】
本発明において使用される上記架橋剤の量は、銀1モルに対して好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。
【0129】
本発明のドライイメージング材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及び必要に応じて銀の色調を調整する色調剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有していることが好ましい。
【0130】
好適な色調剤の例は、米国特許第4,123,282号、同3,994,732号、同3,846,136号及び同4,021,249号に開示されている。特に好ましい色調剤としてはフタラジノン又はフタラジンと、フタル酸類又はフタル酸無水物類との組み合わせである。
【0131】
なお、従来医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、レントゲン写真の判読者にとって、より的確な記録画像の診断観察結果が得やすいと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であることを言う。
【0132】
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度Dmin及び光学濃度D=1.0における色相角habにより求められる。色相角habは国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間であるL***色空間の色座標a*、b*を用いて次の式によって求める。
【0133】
ab=tan-1(b*/a*
本発明において、好ましいhabの範囲は180°<hab<270°であり、より好ましくは200°<hab<270°、特に好ましくは220°<hab<260°である。
【0134】
本発明においては、ドライイメージング材料の表面層に(感光層側、又支持体をはさみ感光層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、現像前の取り扱いや熱現像後の画像の傷つき防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対し、質量比で0.1〜30%含有することが好ましい。
【0135】
マット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0136】
マット剤は平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0137】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100(%)
本発明において、マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0138】
本発明のドライイメージング材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(例えば、アルミニウム)等が挙げられるが、情報記録材料としての取り扱い上は可撓性のあるシート又はロールに加工できるものが好適である。従って本発明のドライイメージング材料における支持体としては、プラスチックフィルム(例えばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルム又はポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては通常50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0139】
本発明においては帯電性を改良するために、金属酸化物及び/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層などに含まれる。本発明においては米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
【0140】
本発明のドライイメージング材料は、支持体上に少なくとも1層の感光層を有している。支持体の上に感光層のみを形成してもよいが、感光層の上に少なくとも一層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば、感光層の上には保護層が、感光層を保護する目的で、又支持体の反対の面にはドライイメージング材料間の、或いはドライイメージング材料ロールにおいてくっつきを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては熱現像層よりもガラス転移点が高く、擦り傷や、変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーのなかから選ばれる。なお、階調調整等のために、感光層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
【0141】
本発明のドライイメージング材料においては、感光層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光層に染料又は顔料を含有させることが好ましい。
【0142】
用いられる染料としては、ドライイメージング材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。
【0143】
例えば、本発明のドライイメージング材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特願平11−255557号に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料、又スクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、又はピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
【0144】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。以下本明細書ではこれらの色素を便宜的に一括してスクアリリウム染料とよぶ。
【0145】
なお、染料としては特開平8−201959号の化合物も好ましい。
本発明のドライイメージング材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0146】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引き層とともに塗布する場合についても同様である。
【0147】
なお、本発明において、塗布銀量はドライイメージング材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、医療用画像を目的とする場合には、0.6g/m2以上2.5g/m2以下が好ましい。また1.0g/m2以上1.5g/m2以下がより好ましい。該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましい。また3〜15%がより好ましい。
【0148】
また本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014個/m2以上1×1018個/m2以下が好ましい。また1×1015個/m2以上1×1017個/m2以下がより好ましい。
【0149】
更に本発明の脂肪族カルボン酸銀塩の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり、10-17g以上10-15g以下が好ましく、更には10-16g以上10-14g以下がより好ましい。
【0150】
上記のような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち、銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
【0151】
本発明において、現像条件は使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において、像様に露光したドライイメージング材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(例えば、通常約100〜200℃)で十分な時間(通常約1秒〜約2分間)、ドライイメージング材料を加熱することにより現像し画像を得ることができる。加熱温度が100℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、又200℃を越えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで脂肪族カルボン酸銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する上記熱現像の反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
【0152】
加熱する機器、装置、手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素又は白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行うことができる。より好ましくは本発明の保護層の設けられたドライイメージング材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、又熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0153】
本発明のドライイメージング材料の露光は、当該感光材料に付与した感色性に対し、適切な光源を用いることが好ましい。例えば、当該感光材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm〜820nm)がより好ましく用いられる。
【0154】
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
【0155】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として、好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。
【0156】
縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかけるなどの方法がよい。なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、露光波長の分布が通常5nm以上、また、10nm以上になることが好ましい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0157】
ドライイメージング材料に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、短軸径として通常5〜75μm、長軸径として通常5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度はドライイメージング材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、感光材料毎に最適な値に設定することができる。
【0158】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0159】
実施例1
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の片方の面に、0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを、乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に同様に0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Bを用い、下引層bを、乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群からなるフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃にて15分熱処理を行った。
【0160】
(下引塗布液A)
n−ブチルアクリレート30質量%、t−ブチルアクリレート20質量%、スチレン25質量%及び2−ヒドロキシエチルアクリレート25質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(サイロイド350、富士シリシア社製)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation(株)製、Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて、下引塗布液Aとした。
【0161】
(コロイド状酸化スズ分散液の調製)
塩化第2スズ水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸留水を添加し、全量を2000mlとする。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して、容量が470mlになるまで濃縮してコロイド状酸化スズ分散液を調製した。
【0162】
(下引塗布液B)
前記コロイド状酸化スズ分散液37.5g、n−ブチルアクリレート20質量%、t−ブチルアクリレート30質量%、スチレン27質量%及び2−ヒドロキシエチルアクリレート28質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、n−ブチルアクリレート40質量%、スチレン20質量%、グリシジルメタクリレート40質量%の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0163】
《バック面側塗布》
メチルエチルケトン(MEK)830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB381−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し、溶解した。次に溶解した液に、0.30gの赤外染料1を添加し、更にメチルエチルケトンに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌しバック面側用の塗布液を調製した。
【0164】
【化17】
Figure 0004123855
【0165】
このように調製したバック面塗布液を、上記支持体の下引層bの上に乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0166】
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
溶液(A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
溶液(B1)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
溶液(C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
溶液(D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
塩化ルテニウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
溶液(E1)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
溶液(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
溶液(G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
溶液(aqH1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
特公昭58−58288号及び同58−58289号に示される混合攪拌機を用いて、溶液(A1)に、溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液(F1)の全量を添加した。この間pAgの調整を、水溶液(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、温度30℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、乳剤を得た。
【0167】
この乳剤は平均粒子サイズ40nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0168】
次に上記乳剤に硫黄増感剤トリフェニルホスフィンサルファイド(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更にこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤(塩化金酸)を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した。これを感光性ハロゲン化銀乳剤Aとする。
【0169】
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。後、1モル/Lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。その後、得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて脂肪族カルボン酸銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が50μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の脂肪族カルボン酸銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により、含水率が0.1%になるまで乾燥して粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aを得た。脂肪族カルボン酸銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0170】
《予備分散液Aの調製》
バインダー樹脂としてポリビニルアセタールP−1(一般式(K)で表される化合物)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aの500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0171】
《感光性乳剤分散液Aの調製》
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ製トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行なうことにより感光性乳剤分散液Aを調製した。
【0172】
《赤外増感色素液Aの調製》
2mgの赤外増感色素1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを、31.3mlのMEKに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
【0173】
【化18】
Figure 0004123855
【0174】
《添加液aの調製》
還元剤としての1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン(比較1:本発明に用いられる一般式(A)で表される化合物の比較化合物)を5×10-3モル、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
【0175】
《添加液bの調製》
3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し、添加液bとした。
【0176】
《感光層塗布液Aの調製》
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液A(50g)及びMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ抑制剤2−トリブロモメチルスルホニルキノリン(比較3:本発明に好ましく用いられる一般式(J)で表される化合物の比較化合物)(2.6×10-2モル/Lメタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して20分攪拌した。続いて、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、バインダー樹脂としてポリビニルアセタールP−1(前出)を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%MEK溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液bを順次添加し攪拌することにより感光層塗布液Aを調製した。
【0177】
《マット剤分散液の調製》
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30min分散し、マット剤分散液を調製した。
【0178】
《表面保護層塗布液Sの調製》
MEK(メチルエチルケトン)865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)を96g、含フッ素活性剤パーフロオロオクチル−N−プロピルスルホンアミドグリシンカリウム塩(比較2:本発明に用いられる一般式(F)で表される化合物の比較化合物)を2.2×10-3モル、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)を4.5g、ベンズトリアゾールを1.0g添加し溶解した。次に上記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、表面保護層塗布液Sを調製した。
【0179】
《ドライイメージング材料試料101の作製》
感光層塗布液A、表面保護層塗布液Sを、公知のエクストルージョン型コーターを用いて、同時に重層塗布することにより試料101を作製した。塗布は感光層が塗布銀量1.5g/m2、表面保護層が乾燥膜厚で2.5μmになる様にして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、試料101を得た。
【0180】
感光層塗布液A中の還元剤(添加液aに添加した還元剤(比較1))、カブリ抑制剤(感光層塗布液Aに添加したカブリ抑制剤(比較3))、バインダー樹脂のポリビニルアセタールP−1(一般式(K)で表される化合物;予備分散液A、感光層塗布液Aに添加したバインダー樹脂)、表面保護層中の含フッ素活性剤(比較2)を表2に記載したように変更する(使用量は同モルで変更せず)以外は、試料101と同様にして、試料102〜112を作製した。
【0181】
《露光及び熱現像処理》
ドライイメージング材料試料の乳剤面側から、高周波重畳にて波長800〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機により、レーザ走査による露光を与えた。この際に、試料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。(なお、当該角度を90度とした場合に比べ、ムラが少なく、且つ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。)
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて、試料の保護層とドラム表面が接触するようにして、110℃で15秒熱現像処理し、(尚、その際、露光及び熱現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った)画像試料を作製した。得られた画像試料を濃度計により測定し、カブリ(未露光部の光学濃度)、最高濃度(画像部の光学最高濃度)、感度(未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)を求めた。尚、感度および最高濃度は、試料101の感度および最高濃度をそれぞれ100とする相対値で表2にそれぞれ示す。
【0182】
〈熱転移点温度の測定〉
テフロン(R)板の上に、前記と同一組成の感光層塗布液及び表面保護層塗布液を、各々ワイヤーバーを用いて同一条件となるように塗布、乾燥させた後、同様に露光、熱現像した後、テフロン(R)板より塗設した構成層を剥離した。剥離した試料約10mgをアルミ製のパンに装填し、示差走査型熱量計(セイコー電子社製、EXSTAR6000)を用い、JIS K7121に従って各試料の熱転移点温度を測定した。測定の際の昇温条件としては、0から200℃までは10℃/minで昇温し、後、0℃までの冷却は20℃/minで行い、この操作を2回繰り返して、熱転移点温度を求めた。
【0183】
〈現像後の画像保存性の評価〉
下記のようにして一定条件下における最小濃度変化率及び最高濃度変化率を求め、熱現像後の画像保存性を表す指標として示す。
【0184】
(1)カブリ濃度変化率=最小濃度変化率(ΔDmin)の測定
上記感度測定と同様の方法で作製した各熱現像処理済試料を、45℃、55%RHの環境下で、市販の白色蛍光灯を試料表面における照度が500luxとなるように配置し、3日間連続照射を施した。蛍光灯照射済み試料の最小濃度(D2)と蛍光灯未照射試料の最小濃度(D1)をそれぞれ測定し、以下の式よりカブリ濃度変化率(%)を算出した。
【0185】
カブリ濃度変化率=最小濃度変化率=(D2/D1)×100(%)
(2)最高濃度変化率(ΔDmax)の測定
上記最小濃度変化率の測定と同様の方法にて作製した各熱現像処理済み試料を、25℃及び45℃の2種類の別の環境下に3日間放置した後、最高濃度を各々測定し、下式により画像の最高濃度変化率(ΔDmax)を求めた。
【0186】
最高濃度変化率=(45℃保存試料の最高濃度/25℃保存試料の最高濃度)×100(%)
【0187】
【表2】
Figure 0004123855
【0188】
表2から明らかなように、本発明のドライイメージング材料は、比較のものに比べ高感度、高最高濃度でありながら、カブリが低く、かつ、熱現像後の画像保存性に優れていることがわかる。
【0189】
実施例2
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Bの調製》
4720mlの純水にベヘン酸104.6g、アラキジン酸54.2g、ステアリン酸34.9g、パルミチン酸1.8gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液432.2mlを添加し、濃硝酸5.5mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。該脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、36.2gの前記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0190】
次に1モル/Lの硝酸銀溶液562.1mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し脂肪族カルボン酸銀塩分散物を得た。
【0191】
以後は実施例1の粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aと同様にして、粉末脂肪族カルボン酸銀塩Bを調製した。
【0192】
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Cの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、t−ブチルアルコール347mlを添加し20分間攪拌した後、45.3gの前記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0193】
以後は実施例1の粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aと同様にして、粉末脂肪族カルボン酸銀塩Cを調製した。
【0194】
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Dの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸32.2g、パルミチン酸2.3g、イソアラキジン酸17.0gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの前記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0195】
以後は実施例1の粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aと同様にして、粉末脂肪族カルボン酸銀塩Dを調製した。
【0196】
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Eの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸37.6g、パルミチン酸2.3g、オレイン酸6.0gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの前記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0197】
以後は実施例1の粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aと同様にして、粉末脂肪族カルボン酸銀塩Eを調製した。
【0198】
《粉末脂肪族カルボン酸銀塩Fの調製》
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3g及びポリビニルアルコール1.5g(クラレ社製PVA−205)を80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの前記の感光性ハロゲン化銀乳剤Aと純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0199】
以後は実施例1の粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aと同様にして、粉末脂肪族カルボン酸銀塩Fを調製した。
【0200】
《予備分散液B〜Fの調製》
粉末脂肪族カルボン酸銀塩Aを粉末脂肪族カルボン酸銀塩B〜Fに変更する他は、実施例1の予備分散液Aと同様にして予備分散液B〜Fを調製した。
【0201】
《感光性乳剤分散液B〜Fの調製》
予備分散液Aを予備分散液B〜Fに変更する他は、実施例1の感光性乳剤分散液Aと同様にして感光性乳剤分散液B〜Fを調製した。
【0202】
《ドライイメージング材料試料201〜213の作製》
感光層塗布液Aの、感光性乳剤分散液A、還元剤:比較1(本発明に用いられる一般式(A)で表される化合物の比較化合物)、カブリ抑制剤:比較3(本発明に好ましく用いられる一般式(J)で表される化合物の比較化合物)を表3記載の感光性乳剤分散液、還元剤、カブリ抑制剤のようにそれぞれ変更し(使用量(モル数)は変更せず)、また、表面保護層塗布液Sの含フッ素活性剤:比較2(本発明に用いられる一般式(F)で表される化合物の比較化合物)を表3記載のようにそれぞれ変更(使用量(モル数)は変更せず)した他は、実施例1のドライイメージング材料試料101と同様にして、ドライイメージング材料試料201〜213を作製した。
【0203】
なお、いずれの試料も感光層塗布液中のバインダー樹脂としてはP−1を使用して、感光層の熱転移温度を約55℃に調整した。
【0204】
〈脂肪族カルボン酸銀塩の粒径と厚さの測定〉
分散後の脂肪族カルボン酸銀塩を希釈してカーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(日本電子製、2000FX型)を用いて直接倍率5000倍で撮影し、スキャナーにてネガをデジタル画像として取り込み、画像処理装置LUZEXIII(ニコレ社製)を用いて300個の粒径を測定し、この平均値を求めた。
【0205】
次に厚さを求めるため、支持体上に塗布された感光層を接着剤によりホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製した。超薄切片を銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し、液体窒素により−130℃以下に冷却しながら上記透過型電子顕微鏡を用いて、倍率5,000〜40,000で明視野像を観察し画像をフィルムに記録した。この画像を画像処理装置LUZEXIII(ニコレ社製)を用いて300個の厚さを測定し、この平均値を求めた。
【0206】
露光、熱現像処理及び各種の評価は実施例1と同様にして行った。
【0207】
【表3】
Figure 0004123855
【0208】
表3から明らかなように、本発明のドライイメージング材料は、比較のものに比べ高感度、高最高濃度でありながら、カブリが低く、かつ、現像処理後の画像保存性に優れていることがわかる。
【0209】
実施例3
ここでは下記に示すように感光層を2層に分け、下層の感光層に現像促進剤(表4記載)を3×10-4モル/銀1モル追加した以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法で試料を作製した。
【0210】
《感光性ハロゲン化銀乳剤aの調製》
実施例1の感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製における、「上記乳剤に硫黄増感剤トリフェニルホスフィンサルファイド(0.5%メタノール溶液)240mlを加え、更にこの増感剤の1/20モル相当の金増感剤(塩化金酸)を添加し、55℃にて120分間攪拌して化学増感を施した」の部分を行わない他は同様にして、感光性ハロゲン化銀乳剤aを調製した。
【0211】
《感光性乳剤分散液aの調製》
感光性ハロゲン化銀乳剤Aに代えて、上記感光性ハロゲン化銀乳剤aを用いた以外は、実施例2の感光性乳剤分散液Cと同様にして感光性乳剤分散液aを調製した。
【0212】
《感光層塗布液Cおよびaの調製》
感光性乳剤分散液Aを実施例2の感光性乳剤分散液Cおよび感光性乳剤分散液aに変更した他は感光層塗布液Aと同様にして感光層塗布液Cおよびaをそれぞれ調製した。
【0213】
《ドライイメージング材料試料301の作製》
公知のエクストルージョン型コーターを用いて、感光層2層及び表面保護層1層の計3層を同時に重層塗布することにより試料301を作製した。即ち、塗布は感光層塗布液Cからなる感光層(上層)の塗布銀量が0.7g/m2、感光層塗布液aからなる感光層(下層)の塗布銀量が0.3g/m2、表面保護層塗布液Sからなる表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになる様にして行った。その後、乾燥温度50℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥を行い、試料301を得た。
【0214】
感光層塗布液C、a中の還元剤(添加液a中の還元剤)、カブリ抑制剤、表面保護層塗布液S中の含フッソ活性剤、低銀量感光層(感光層(下層)、感光層塗布液a)中の現像促進剤(一般式(G)で表される化合物、使用量は3×10-4モル/モルAg)、を表4に記載したように変更する(使用量(モル数)は変更せず)以外は、試料301と同様にして、試料302〜308を作製した。
【0215】
なお、いずれの試料も感光層塗布液中のバインダーとしてはP−1を使用して、感光層の熱転移温度を約55℃に調整した。
【0216】
露光、熱現像処理及び各種の評価は実施例1と同様にして行った。
【0217】
【表4】
Figure 0004123855
【0218】
表4から明らかなように、本発明のドライイメージング材料は感光層重層系でも、比較に比べ高感度、高最高濃度でありながら、カブリが低く、かつ、現像処理後の画像保存性に優れていることがわかる。
【0219】
【発明の効果】
本発明により、高感度、高最高濃度でありながら低カブリであり、且つ熱現像後における銀画像の安定性(現像後の画像保存性)に優れたドライイメージング材料を提供できる。

Claims (6)

  1. 少なくとも非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子及びナノサイズ単分散感光性ハロゲン化銀粒子を含有する感光性乳剤、還元剤及びバインダーを含有するドライイメージング材料において、該還元剤の少なくとも一種が下記一般式(A)で表される化合物であり、且つ下記一般式(F)で表される化合物を含有することを特徴とするドライイメージング材料。
    Figure 0004123855
    (式中、XはCHRを表し、Rは環基を表す。R′及びR″は水素素原子または置換基を表す。)
    Figure 0004123855
    (式中、Rfはフッ素原子を有する置換基を表し、L1及びL2は各々、フッ素原子を有さない2価の連結基(但し、L1及びL2は各々、スルホンアミド基またはカルバミド基であることはない)を表し、Yは3価〜6価の連結基を表し、Aはアニオン基またはそれの塩の基を表す。m及びnは各々、0または1を表し、pは1〜3の整数を表し、qは2または3の整数を表す。)
  2. 前記ドライイメージング材料中に下記一般式(J)で表されるカブリ抑制剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のドライイメージング材料。
    Figure 0004123855
    (式中、Q1;「t価の、直鎖又は分枝、或いは飽和又は不飽和の、ヘテロ原子を含んでもよい」、脂肪族残基または脂肪族カルボン酸残基;或いは;「t価の」、炭素原子鎖、ヘテロ原子を含む炭素原子鎖、ヘテロ環やヘテロ原子を含んでもよい炭素原子鎖を骨格とするポリマー残基;を表し、Q2は環基を含まない2価の連結基を表し、Yは2価の連結基を表し、X1、X2およびX3の少なくとも1つは、ハロゲン原子である置換基を表す。mは0又は1を表し、tは1〜300の整数を表す。)
  3. 前記ドライイメージング材料を100℃以上160℃以下の温度で現像処理した後の感光性ハロゲン化銀粒子を含む層の熱転移点温度が、46℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のドライイメージング材料。
  4. バインダーのガラス転移温度Tgが、70℃以上105℃以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のドライイメージング材料。
  5. 前記ドライイメージング材料の感光性層又は非感光性層に下記一般式(G)で表される現像促進剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のドライイメージング材料。
    Figure 0004123855
    (式中、Wは電子求引性置換基を表し、VおよびZは各々、置換基を表す。)
  6. 異なる銀量の感光層を2層有し、該感光層のうち含有する銀量が低銀量の感光層中に前記一般式(G)で表される現像促進剤を含有することを特徴とする請求項5に記載のドライイメージング材料。
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