JP2006078846A - 有機銀塩組成物及びその製造方法、熱現像画像記録材料 - Google Patents

有機銀塩組成物及びその製造方法、熱現像画像記録材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 改良された有機銀塩組成物及びその製造方法を提供し、高い感度と低いカブリ濃度を維持して、且つ保存性と現像性を改良した熱現像画像記録材料を提供すること。
【解決手段】 少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された有機銀塩組成物であって、該有機銀塩組成物中における銀塩化されている有機酸における低融点の有機酸の占める割合が10モル%以上80モル%以下であり、銀塩化されていない有機酸における低融点の有機酸の占める割合が0モル%以上30モル%以下であることを特徴とする有機銀塩組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は熱現像画像記録材料に関し、更に詳しくはその為の有機銀塩組成物及びその製造方法に関する。
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。
その為レーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッターのような効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされてきている。
かかる技術として、例えば、D.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による米国特許第3,152,904号、同3,487,075号の各明細書またはD.H.クロスタベール(Klosterboer)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Materials)」(Handbook of Imaging Materials,Marcel Dekker,Inc.第48頁、1991)等に記載されているように、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀及び還元剤を含有する熱現像画像記録材料が知られている。
従って、上記熱現像画像記録材料は溶液系処理薬品を一切使用しないため、より簡便で環境を損なわないシステムをユーザーに提供することができる。
熱現像画像記録材料は、感光性層中に設置された感光性ハロゲン化銀粒子を光センサーとし、有機銀塩を銀イオンの供給源とし、内蔵された還元剤によって通常80〜140℃にて熱現像することにより画像を形成させ、定着を行わないことが特徴である。
しかしながら、熱現像画像記録材料においては、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子及び還元剤を含有するため、熱現像前の保存期間にカブリが生じやすく、また熱現像後も定着が行われないため、長時間の光照射によりカブリの上昇が起こりやすい。
これらの熱現像画像記録材料の保存性を向上し、カブリを改良する技術として、有機銀塩の改良に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかしながら、前記技術だけでは改良効果は不十分であることが判った。
特開2000−62325号公報 特開2002−196446号公報 特開2004−53985号公報
本発明の目的は、改良された有機銀塩組成物及びその製造方法を提供し、高い感度と低いカブリ濃度を維持して、且つ保存性と現像性を改良した熱現像画像記録材料を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
(請求項1)
少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された熱現像画像記録材料に用いられる有機銀塩組成物であって、該有機銀塩組成物中の銀塩化されている有機酸における低融点の有機酸の占める割合が10モル%以上80モル%以下であり、銀塩化されていない有機酸における低融点の有機酸の占める割合が0モル%以上30モル%以下であることを特徴とする有機銀塩組成物。
(請求項2)
前記銀塩化されている有機酸における低融点の有機酸の占める割合が10モル%以上50モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機銀塩組成物。
(請求項3)
前記銀塩化されていない有機酸における低融点の有機酸の占める割合が0モル%以上10モル%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機銀塩組成物。
(請求項4)
前記銀塩化されている有機酸と銀塩化されていない有機酸の合計に対する銀塩化されていない有機酸の占める割合が3モル%以上10モル%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物。
(請求項5)
少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された熱現像画像記録材料に用いられる有機銀塩組成物であって、示差走査熱量計(DSC)による空容器をリファレンスとし、0〜200℃まで10℃/minで昇温するとき、有機酸に由来するピークトップの位置が65℃以上95℃以内の範囲に存在し、有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置が95℃以上120℃以内の範囲に存在することを特徴とする有機銀塩組成物。
(請求項6)
少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された熱現像画像記録材料に用いられる有機銀塩組成物であって、示差走査熱量計(DSC)による空容器をリファレンスとし、0〜200℃まで10℃/minで昇温し、10℃/minで0℃まで降温し、再び200℃まで10℃/minで昇温するとき、1回目の昇温時の有機酸に由来するピークトップの位置が65℃以上95℃以内の範囲に存在し、2回目の昇温時の有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置が1回目の昇温時の有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置より5℃以上50℃以内の範囲で高いことを特徴とする有機銀塩組成物。
(請求項7)
少なくとも2種類の融点の異なる有機酸アルカリ金属塩の溶液と銀イオン含有溶液を混合することにより形成される有機銀塩組成物の製造方法において(1)低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=10:90〜80:20モル%の範囲になるように各々別々に準備し、(2)アルカリ金属塩で中和されていない低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=0:100〜30:70モル%の範囲になるよう各々別々にアルカリ金属塩で中和して低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)のアルカリ金属塩溶液を調製し、(3)低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)のアルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液を混合する過程を経ることを特徴とする有機銀塩組成物の製造方法。
(請求項8)
前記(1)に記載の低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=10:90〜50:50モル%であることを特徴とする請求項7に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
(請求項9)
前記(2)に記載のアルカリ金属塩で中和されていない低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=0:100〜10:90モル%であることを特徴とする請求項7または8に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
(請求項10)
前記低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の合計量に対して各々中和に使用するアルカリ金属塩の合計量が90モル%以上97モル%以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
(請求項11)
前記(3)に記載の低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)のアルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液の混合が低融点の有機酸(A)のアルカリ金属塩と銀イオン含有溶液との混合を先に行うことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
(請求項12)
支持体上に少なくとも各1種類以上の感光性ハロゲン化銀、銀イオンを還元できる還元剤、バインダー及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
本発明の製造方法で製造された有機銀塩組成物を用いた熱現像画像記録材料によれば、迅速処理でありながら、低カブリ、高感度で色調に優れ、生保存性及び画像保存性の改良された熱現像画像記録材料が得られるなどの効果を有する。
以下、本発明について詳述する。
本発明における有機銀塩組成物とは、銀塩化されている有機酸と銀塩化されていない有機酸(以下、フリー有機酸とも言う)とを含有している混合組成物である。
本発明は少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された有機銀塩組成物であって、該有機銀塩組成物中の銀塩化されている有機酸における低融点の有機酸の占める割合が10モル%以上80モル%以下であり、銀塩化されていない有機酸における低融点の有機酸の占める割合が0モル%以上30モル%以下であることを特徴とする。なお、ここで2種類を超える融点の異なる有機酸を用いる場合は、使用量の多い2種類について融点を比較して、低融点の有機酸、高融点の有機酸とする。
また、本発明の有機銀塩組成物を示差走査熱量計(DSC)による、空容器をリファレンスとした0〜200℃まで10℃/minで昇温する測定するとき、有機酸に由来するピークトップの位置が65℃以上95℃以内、より好ましくは70℃以上95℃以内の範囲に存在し、有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置が95℃以上120℃以内、より好ましくは95℃以上110℃以内の範囲に存在することを特徴とする。更に本発明の有機銀塩組成物を示差走査熱量計(DSC)による、空容器をリファレンスとして0〜200℃まで10℃/minで昇温し、10℃/minで0℃まで降温し、再び200℃まで10℃/minで昇温する測定するとき、1回目の昇温時の有機酸に由来するピークトップの位置が65℃以上95℃以内、より好ましくは70℃以上95℃以内の範囲に存在し、2回目の昇温時の有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置が1回目の昇温時の有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置より5℃以上50℃以内、より好ましくは15℃以上40℃以内の範囲で高いことを特徴とする。
以上によって、保存性と現像性の改良が達成されるが、それについては下記のように考えられる。
本発明の有機銀塩組成物中には、銀塩化されている有機酸と銀塩化されていない有機酸(以下、フリー有機酸とも言う)があり、フリー有機酸の融点が高い方が保存性が向上する。モデルケースとして、例えば、ステァリン酸(融点約63℃)とベヘン酸(融点約71℃)でベヘン酸の方が保存性がよい。しかしながら、同時にベヘン酸銀の吸熱ピーク(DSC)も高くなるため現像性が劣化する。有機銀塩の吸熱ピークはステァリン酸銀、あるいはステァリン酸−ベヘン酸の混合で低下する。しかしながら、単純にステァリン酸、ベヘン酸を混合しただけでは、フリー有機酸も混合組成になり、却って融点が低下する(ステァリン酸とベヘン酸5:5では融点約57℃)し、保存性が劣化する。従って、フリー有機酸はベヘン酸、有機銀塩吸熱ピークは混合組成とすることで、保存性と現像性の両立が可能となる。更に熱現像後の状態に相当するDSCの第2スキャン(200℃まで10℃/minで昇温後、10℃/minで0℃まで降温し、再び200℃まで10℃/minで昇温すること)で、有機銀塩吸熱ピークが高温側に移動することで、画像保存性も向上する。
また、少なくとも2種類の融点の異なる有機酸アルカリ金属塩の溶液と銀イオン含有溶液を混合することにより形成される有機銀塩組成物の製造方法において、(1)低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=10:90〜80:20モル%の範囲になるように各々別々に準備し、(2)アルカリ金属塩で中和されていないAとBの割合がA:B=0:100〜30:70モル%の範囲になるよう各々別々にアルカリ金属塩で中和してAとBのアルカリ金属塩溶液を調製し、(3)AとBのアルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液を混合する過程を経ることを特徴とする。なお、この時アルカリ金属塩で中和された有機酸A及びBのアルカリ金属塩のモル数が、反応に使用された銀イオンのモル数よりも多いことがより好ましい。更にAとBのアルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液を混合するとき、Aのアルカリ金属塩と銀イオン含有溶液との混合を先に行うことを特徴とし、Bのアルカリ金属塩の添加はAのアルカリ金属塩全体の少なくとも10質量%添加終了後が好ましく、50質量%添加終了後がより好ましく、100質量%添加終了後が最も好ましい。
本発明に係る有機銀塩は光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(例えば、感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性有機銀塩については、例えば、特開平6−130543号、同8−314078号、同9−127643号の各公報、特開平10−62899号公報の段落番号〔0048〕〜〔0049〕、特開平10−94074号、同10−94075号の各公報、欧州特許公開第0,803,764A1号明細書の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0,962,812A1号、同1,004,930A2号の各明細書、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2000−112057号、同2000−155383号の各公報等に記載されている。有機酸の銀塩、特に炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステァリン酸銀、及びこれらの混合物であるが、ベヘン酸銀含有率は50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、特に好ましくは80モル%以上100モル%以下である。
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは、有機銀塩組成物の体積加重平均直径の標準偏差を体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である場合のことを指す。測定方法としては、分散媒中に分散した有機銀塩組成物にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズから求める方法が好ましく用いられる。
本発明の有機銀塩組成物は60℃以下の反応温度で調製されることが、最小濃度が低い粒子を調製するという観点で好ましい。添加される薬品、例えば、有機酸アルカリ金属水溶液は60℃より高い温度でも構わないが、反応液が添加される反応浴の温度は60℃以下であることが好ましい。更に50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが特に好ましい。
本発明に係る銀イオンを含む溶液(例えば、硝酸銀水溶液)のpHは、好ましくはpH1以上6以下、更に好ましくはpH1.5以上4以下である。pH調節のため、銀イオンを含む溶液自体に酸及びアルカリを加えることができるが、酸及びアルカリの種類は特に制限されない。
本発明に係る有機銀塩は、銀イオンを含む溶液(例えば、硝酸銀水溶液)及び/または有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液の添加が終了した後、反応温度を上げて熟成をしても構わない。本発明における熟成は前述した反応温度とは別のものと考える。熟成の際は銀イオンを含む溶液及び有機酸アルカリ金属塩溶液、もしくは懸濁液の添加は一切行わない。熟成は反応温度−20℃以上+20℃以下が好ましく、+1℃以上+10℃以下がより好ましい。なお、熟成時間はトライアンドエラーで決定することが好ましい。
本発明の有機銀塩組成物の調製において、有機酸アルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液との混合方法はいかなる方法でもよく、例えば、撹拌による混合方法が制御しやすく、低コストであるので好ましい。また混合方法としては、バッチ式、連続式、外部混合等どのような方法でもよく、例えば、有機酸アルカリ金属塩溶液または銀イオン含有溶液を母液とし、母液を撹拌しながら、その中にもう一方の溶液を添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にもう一方の液を添加する方法などが有機銀塩組成物の分散という観点から好ましい。
更に親水性溶媒を母液とし、母液を撹拌しながらその中に有機酸アルカリ金属塩溶液及び銀イオン含有溶液をコントロールダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは母液を外部循環させ、外部循環経路中に設けた混合器にコントロールダブルジェットで同時に添加する方法、あるいは有機酸アルカリ金属塩溶液及び銀イオン含有溶液を連続混合手段に供給し、連続的に有機銀塩組成物を調製する方法などが有機銀塩組成物の分散という観点からより好ましい。母液を用いる場合には、溶液の添加位置は母液表面でも母液中でもどちらでもよく、より均一な混合という観点から母液中が好ましい。また連続混合手段は内部に撹拌手段を有する動的混合器あるいは内部に撹拌手段を有さない静的混合器どちらでもよく、内部滞留がないという観点から静的混合器が好ましい。更に撹拌レイノルズ数は1000以上、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上で撹拌することが均一混合という観点から好ましい。
本発明の有機銀塩組成物の調製において、有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液の総添加モル数の0.5モル%以上30モル%以下が銀イオンを含む溶液の添加が終了した後、単独添加されても構わない。好ましくは3モル%以上20モル%以上が単独添加されても構わない。この添加は分割された添加の1回として充てられることが好ましい。この添加は外部混合手段を利用している場合は、密閉混合手段中、もしくは反応槽の何れに添加しても構わないが、反応槽に添加することが好ましい。この添加を実施することで、有機銀塩組成物の表面の親水性を高めることができ、その結果、熱現像画像記録材料の造膜性が良化し、膜剥れが改良される。
本発明に用いる銀イオンを含む溶液(例えば、硝酸銀水溶液)の銀イオン濃度は、任意に決定されるが、モル濃度として0.03モル/L以上6.5モル/L以下が好ましく、より好ましくは0.1モル/L以上5モル/L以下である。
本発明の実施に際して、有機銀塩組成物を形成させるためには、銀イオンを含む溶液、有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液、及び予め反応場に準備しておく溶液の少なくとも一つに、有機酸のアルカリ金属塩がひも状会合体やミセルではなく、実質的に透明溶液となり得る量の有機溶剤を含有することが好ましい。この溶液は水、有機溶剤単独、あるいは水と有機溶媒の混合物を用いることが好ましいが、更に水と有機溶媒との混合溶液であることが好ましい。
本発明で用いる有機溶剤としては、水溶性で上記性質を有していればその種類は特に制限されないが、写真性能に支障をきたすものは好ましくなく、好ましくは水と混合できるアルコール、アセトンなどが好ましい。
本発明で使用するアルカリ金属塩の種類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがあるが、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを用いることが好ましく、有機酸アルカリ金属塩溶液の粘度を低く抑えるという観点から水酸化カリウムが好ましい。
有機酸のアルカリ金属塩は、有機酸に水酸化カリウムを添加することにより調製される。このときアルカリ量を有機酸の当量以下として、未反応の有機酸を残存させることが好ましい。この場合の残存有機酸量は、全有機酸に対し3モル%以上50モル%以下であり、好ましくは3モル%以上30モル%以下である。また、アルカリを所望の量以上に添加した後に、硝酸、硫酸等の酸を添加し、余剰のアルカリ分を中和させることで調製してもよい。更に本発明に用いる銀イオン含有溶液及び有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは、懸濁液あるいは両液が添加される外部混合手段の液には、例えば、特開昭62−65035号公報の一般式(1)で示されるような化合物、また特開昭62−150240号公報に記載のような水溶性基含有Nヘテロ環化合物、特開昭50−101019号公報に記載のような無機過酸化物、特開昭51−78319号公報に記載のようなイオウ化合物、特開昭57−643号公報に記載のようなジスルフィド化合物及び過酸化水素等を添加することができる。
有機酸アルカリ金属塩を構成する有機酸としては、脂肪族カルボン酸が好ましく、具体的にはベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等が好ましく用いられる。
本発明で用いる有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液は、有機溶媒の量が水分の体積に対し、有機溶媒体積として3%以上70%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以上50%以下である。この際、反応温度で最適な有機溶媒体積が変化するため、トライアンドエラーで最適量を決定することができる。本発明に用いる有機酸のアルカリ金属塩の濃度は、質量比として5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは7質量%以上45質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
反応容器に供給される有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液の温度としては、有機酸アルカリ金属塩の結晶化、固化の現象を避けるに必要な温度に保っておく目的で、50℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下がより好ましく、65℃以上85℃以下が最も好ましい。また、反応の温度を一定にコントロールするため、上記範囲から選ばれるある温度で一定にコントロールされることが好ましい。これにより、高温の有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液が、外部混合手段中で急冷されて微結晶状に析出する速度と、銀イオンを含む溶液との反応で有機銀塩化する速度が好ましく制御され、有機銀塩の結晶形態、結晶サイズ、結晶サイズ分布を好ましく制御することができる。また、同時に熱現像画像記録材料として性能をより向上させることができる。
反応容器中には予め溶媒を含有させておいてもよく、予め入れられる溶媒には水が好ましく用いられるが、有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液との混合溶媒も好ましく用いられる。
有機酸アルカリ金属塩溶液もしくは懸濁液、銀イオンを含む溶液、あるいは反応液には、水性媒体可溶な分散助剤を添加することができる。分散助剤としては、形成した有機銀塩を分散可能なものであればいずれのものでもよい。具体的な例は後述の有機銀塩の分散助剤の記載に準じる。
有機銀塩の調製法において、銀塩形成後に脱塩・脱水工程を行うことが好ましい。その方法は特に制限はなく、周知・慣用の手段を用いることができる。例えば、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法、また遠心分離沈降による上澄み除去等も好ましく用いられる。中でも遠心分離法が好ましい。脱塩・脱水は1回でもよいし、複数回繰返してもよい。水の添加及び除去を連続的に行ってもよいし、個別に行ってもよい。脱塩・脱水は最終的に脱水された水の伝導度が好ましくは300μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下、最も好ましくは60μS/cm以下になる程度に行う。この場合、伝導度の下限に特に制限はないが、通常5μS/cm程度である。
本発明における限外濾過による脱塩は、処理に先立って、粒子サイズを最終粒子サイズの体積加重平均で2倍程度まで、予め液を分散することが好ましい。分散手段は、後述する、高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等どのような方法でも構わない。
粒子形成後から脱塩操作が進むまでの液温は、低く保つことが好ましい。これは有機酸のアルカリ金属塩を溶解する際に用いる有機溶剤が、生成した有機銀塩組成物内に浸透している状態では、送液操作や脱塩操作によって銀核が生成しやすいからである。このため、本発明では、有機銀塩組成物分散物の温度を1〜30℃、好ましくは5〜25℃に保ちながら脱塩操作を行うことが好ましい。
本発明に係る有機銀塩は目的に応じ所望の量を使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、より好ましくは0.3〜3g/m2、更に好ましくは0.5〜2g/m2である。
本発明の熱現像画像記録材料に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子(以下、単にハロゲン化銀粒子ともいう)について説明する。
なお、本発明における感光性ハロゲン化銀粒子とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収することができ、または人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収することができ、且つ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内のいずれかの領域の光を吸収したときに、ハロゲン化銀結晶内または結晶表面において、物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつ、ハロゲン化銀粒子を調製する、いわゆるコントロールドダブルジェット法が好ましい。
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよいが、臭化銀、沃臭化銀または沃化銀であることが特に好ましい。
沃臭化銀の場合は、沃素含有量は0.02〜16モル%/Agモルの範囲であることが好ましい。沃素はハロゲン化銀粒子全体に分布するように含有させても、あるいはハロゲン化銀粒子の特定個所、例えば、粒子の中心部の沃素の濃度を高くし、表面近傍における濃度を低く、または実質上ゼロとなるようなコア/シェル型構造としてもよい。
粒子形成は、通常ハロゲン化銀種粒子(核粒子)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、あるいは核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件としては、pAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールができる点で好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法の場合には、先ず可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させて核生成(核生成工程)を行った後、コントロールされたpAg、pH等のもとで、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を供給しつつ、粒子成長させる粒子成長工程によりハロゲン化銀粒子を調製する。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、画像形成後の白濁や色調(黄色味)を低く抑えるため、及び良好な画質を得るためにハロゲン化銀粒子の粒径が小さい方が好ましく、平均粒径が0.02μm未満の粒子を計測対象外としたときの値として、0.030μm以上、0.055μm以下が好ましい。
なお、ここでいう粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
本発明において、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる粒径の変動係数が30%以下をいう。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
粒径の変動係数=粒径の標準偏差/粒径の平均値×100(%)
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子などを挙げることができるが、これらのなかで、特に立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以上100以下、より好ましくは2以上50以下がよい。これらは米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号の各明細書等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更にハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する分光増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。逆に、ミラー指数〔111〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔111〕面の占める割合を高めることが好ましい。なお、ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に平均分子量が5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。低分子量ゼラチンは平均分子量5万以下のものであり、好ましくは2000〜40000、更には5000〜25000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより有効である。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、粒子形成時に下記の一般式で示されるポリエチレンオキシド化合物を用いることができる。
一般式
YO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)p(CH2CH2O)n
式中、Yは水素原子、−SO3M、または−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基にて置換されたアンモニウム基を、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは各々0〜50をpは1〜100を表す。
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、熱現像画像記録材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、ハロゲン化銀乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられてきたものであり、消泡剤として用いる技術は、例えば、特開昭44−9497号公報に記載されており、上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物も核形成時の消泡剤としても機能する。
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%で用いる。
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくはハライド水溶液若しくは両方の水溶液に0.01〜2.0質量%で添加して用いることである。また、核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、粉末で添加してもメタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
なお、核形成時の温度は5〜60℃、好ましくは15〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を挙げ、核形成終了時の温度が40℃の様な場合)やその逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は、3.5モル/L以下が好ましく、更には0.01〜2.5モル/Lの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1L当たり1.5×10-3〜3.0×10-1モル/分が好ましく、更に好ましくは3.0×10-3〜8.0×10-2モル/分である。
核形成時のpHは1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げるため、好ましくはpH2〜6である。また、核形成時のpBrは0.05〜3.0程度、好ましくは1.0〜2.5、更には1.5〜2.0がより好ましい。
本発明に係るハロゲン化銀粒子は、如何なる方法で感光性層に添加してもよいが、この時ハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(有機銀塩)に近接するように配置するのが、高感度且つ高カバリングパワー(CP)の熱現像画像記録材料をうるために好ましい。
また、本発明に係るハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを有機銀塩組成物を調製するための溶液に添加することが、ハロゲン化銀粒子調製工程と有機銀塩組成物調製工程を分離して扱え、製造工程のコントロール上も最も好ましい。
〔カブリ防止剤と画像安定化剤〕
前述のように、従来のハロゲン化銀写真感光材料と比較して、熱現像画像記録材料の構成上の最大の相違点は、後者の材料中には、現像処理の前後を問わずカブリやプリントアウト銀(焼出し銀)の発生の原因となり得る感光性ハロゲン化銀、有機銀塩及び還元剤が多量含有されていることである。このため、熱現像画像記録材料には、現像前ばかりでなく現像後の保存安定性を維持するために、高度のカブリ防止及び画像安定化技術が必要であるが、従来はカブリ核の成長及び現像を抑制する芳香族性複素環化合物の他に、カブリ核を酸化消滅する機能を有する酢酸水銀のような水銀化合物が、非常に有効な保存安定化剤として使用されていたが、この水銀化合物の使用は安全性、環境保全性の点で問題であった。
カブリ防止及び画像安定化のための技術については、基本的には現像前の保存時及び現像後の保存時において、銀イオンが還元されて銀原子ないし金属銀が生成する反応を防止すること及び生成してしまった銀(金属銀)を酸化して消滅させる、または金属銀が銀イオンを還元する反応の触媒としての機能を発現するのを防止する等を考慮することが大切であると考えられる。
以下において、本発明の熱現像画像記録材料に用いられるカブリ防止及び画像安定化剤について具体的に説明する。
本発明の熱現像画像記録材料においては、銀イオンの還元剤としては、後述するように、主にビスフェノール類を用いることができるが、当該熱現像画像記録材料の現像前の保存条件下において、及び熱現像後の保存条件下において、この還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好適には当該還元剤からフェノキシルラジカルを生じることを防止することができる化合物、または生じた当該フェノキシルラジカルを捕獲(トラップ)し銀イオンの還元剤として機能しないように安定化することができる化合物が好ましい。このような作用・機能を有する好適な化合物としては、ビスフェノール類の水酸基と水素結合を形成することができる基を有する非還元性化合物、例えば、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などを有する化合物が挙げられる。特に好適なのは、スルホニル基、スルホキシド基、ホスホリル基を有する化合物である。具体例は、特開平6−208192号、特開2001−215648号、同350235号、同2002−6444号、同2002−18264号の各公報等に開示されている。また、ビニル基を有する特定の化合物が、特表2000−515995号、特開2002−207273号、同2003−140298号の各公報等に開示されている。
また、銀(金属銀)を酸化し得る化合物、例えば、酸化力を有するハロゲンラジカルを放出する、または銀と相互作用し電荷移動錯体を形成して、銀を酸化することができる化合物も併用することができる。このような機能を有する化合物の具体例は、特開昭50−120328号、同59−57234号、特開平4−232939号、同6−208193号、同10−197989号の各公報及び米国特許第5,460,938号明細書、特開平7−2781号公報等に開示されている。特に本発明の熱現像画像記録材料において、好ましい化合物の具体例としては、以下に挙げる一般式(OFI)で表すことができるハロゲンラジカル放出性化合物がある。
一般式(OFI) Q2−Y−C(X1)(X3)(X2
一般式(OFI)中、Q2はアリール基またはヘテロ環基を表す。X1、X2及びX3は、各々水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。Yは−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表す。
2で表されるアリール基は単環または縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)であり、より好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
2で表されるヘテロ環基は、N、OまたはSの少なくとも一つの原子を含む3乃至10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
ヘテロ環基として好ましくは、縮合環を有していてもよい5乃至6員の不飽和ヘテロ環基であり、より好ましくは縮合環を有していてもよい5乃至6員の芳香族ヘテロ環基である。更に好ましくは窒素原子を含む縮合環を有していてもよい5乃至6員の芳香族ヘテロ環基であり、特に好ましくは窒素原子を1乃至4原子含む縮合環を有していてもよい5乃至6員の芳香族ヘテロ環基である。このようなヘテロ環基におけるヘテロ環として、好ましくはイミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾールである。
2で表されるアリール基及びヘテロ環基は−Y−C(X1)(X2)(X3)の他に置換基を有していてもよく、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
1、X2及びX3は、好ましくはハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ヘテロ環基であり、より好ましくはハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基であり、更に好ましくはハロゲン原子、トリハロメチル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Yは−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表し、好ましくは−SO2−である。
これらの化合物の添加量は、銀1モルに対して1×10-4〜1モル、好ましくは1×10-3〜5×10-2モルの含有量で用いることができる。
なお、本発明の熱現像画像記録材料においては、特開2003−5041号公報に開示されているポリハロゲン化合物を上記の一般式(OFI)で表せる化合物と同様に使用することができる。
〔ポリマーPO防止剤〕
更に本発明の熱現像画像記録材料においては、特開2003−91054号公報に開示されているようなハロゲンラジカル放出基を有するモノマーの繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリマーを画像安定剤として使用することが、銀画像を一層安定化できる上に、高感度化及び高CP化の観点からも好ましい。特に、本発明の熱現像画像記録材料においては予想外に良好な結果が得られる。
なお、上記の化合物の他に、本発明の熱現像画像記録材料中には、従来カブリ防止剤として知られている化合物が含まれてもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同4,546,075号、同4,452,885号の各明細書、特開昭59−57234号公報、米国特許第3,874,946号、同4,756,999号の各明細書、特開平9−288328号、同9−90550号の各公報に記載されている化合物が挙げられる。更にその他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同605,981号、同631,176号の各明細書に開示されている化合物が挙げられる。
〔ポリカルボキシル化合物〕
本発明の熱現像画像記録材料においては、次の一般式(PC)で表される化合物を当該材料のカブリ防止剤及び保存安定剤として使用することも好ましい。
一般式(PC) R−(CO−O−M)n
式中、Rは連結できる原子、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。Mは水素原子、金属原子、四級アンモニウム基またはホスホニウム基を表す。nは2〜20の整数を表す。
前記一般式(PC)において、Rで表される連結できる原子としては、窒素、酸素、硫黄、燐などの原子が挙げられる。
Rで表される脂肪族基としては炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖、または分岐したアルキル、アルケニル、アルキニルまたはシクロアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、イソプロピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、アリル、2−ブテニル、7−オクテニル、プロパルギル、2−ブチニル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロドデシル等の各基が挙げられる。
Rで表される芳香族基としては炭素数6〜20のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニル、ナフチル、アントラニル等の各基が挙げられる。
Rで表されるヘテロ環基としては単環でも縮合環でもよく、O、S、及びN原子、アミンオキシド基の少なくとも1種を環内に有する5〜6員のヘテロ環基が挙げられる。具体的には例えば、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキシラン、モルホリン、チオモルホリン、チオピラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール及びこれらのベンゼローグ類から導かれる基が挙げられる。
RがR1とR2で形成された場合は、R1とR2はRと同義であり、且つR1はR2と同じでも異なってもよい。R1及びR2で環を形成するものとしては4〜7員環を挙げることができる。好ましくは5〜7員環である。R1及びR2で好ましい基としては芳香族基及びヘテロ環基である。R1及びR2で表される脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基は更に置換基により置換されていてもよく、該置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基、ジエチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えば、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えば、ピリジン−オキシド基等)、イミド基(例えば、フタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えば、ベンゼンジスルフィド基、ベンズチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)が挙げられる。R1及びR2はこれらの置換基の中から単独または複数を有することができる。またそれぞれの置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。またR1、R2は同じでも異なっていてもよい。また、一般式(PC)がオリゴマーまたはポリマー(R−(COOM)n0)mとしても効果がある。nは2〜20で、mは1〜100または分子量が50000以下が好ましい。
また、特開昭58−95338号、特開平10−288824号、同11−174621号、同11−218877号、特開2000−10237号、同2000−10236号、同2000−10235号、同2000−10233号、同2000−10232号、同2000−10231号の各公報に記載のジカルボン酸類も好ましく併用できる。
〔チオスルフォン酸類抑制剤〕
本発明の熱現像画像記録材料においては、下記一般式(ST)で表せる化合物を含有することが好ましい。
一般式(ST) Z−SO2・S−M
式中、Zは置換または未置換のアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Mは金属原子または有機カチオンを表す。
一般式(ST)で表される化合物において、式中Zで示されるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、芳香族環及びヘテロ環は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシル基、塩素等のハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基などを挙げることができる。Zで表されるヘテロ環としては、チアゾール、ベンズチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、オキサゾール環等を挙げることができる。Mで表される金属原子としては、ナトリウムイオン、カリウムイオンのごときアルカリ金属原子が、有機カチオンとしては、アンモニウムイオン、グアニジン基などが好ましい。
一般式(ST)で表される化合物の添加量は特に制限はないが、有機銀塩、ハロゲン化銀を含む全銀量1モル当たり1×10-6〜1gの範囲が好ましい。
なお、同様の化合物が特開平8−314059号公報に開示されている。
〔電子吸引基を有するビニル型抑制剤〕
本発明においては、下記一般式(CV)で表せるカブリ抑制剤を併用することが好ましい。
Figure 2006078846
次に、前記一般式(CV)で表される化合物について詳細に説明する。
Xの表す電子吸引基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換、無置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル、ホルミルアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換、無置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアシル基(チオホルミル、チオアセチル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、−S−オキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル、カルボキシル等)、−S−カルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、−S−スルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、−S−スルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基(イミノ、N−メチルイミノ、N−フェニルイミノ、N−ピリジルイミノ、N−シアノイミノ、N−ニトロイミノ等)、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ、N−エトキシカルボニルイミノ、N−エトキサリルイミノ、N−ホルミルイミノ、N−トリフルオロアセチルイミノ、N−カルバモイルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ、N−トリフルオロメタンスルホニルイミノ、N−メトキシスルホニルイミノ、N−スルファモイルイミノ等)、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.2以上のものが好ましく、0.3以上のものが更に好ましい。
Wとしては水素原子、アルキル基(メチル、エチル、トリフルオロメチル等)アルケニル基(ビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等)、アルキニル基(アセチレニル、シアノアセチレニル等)、アリール基(フェニル、クロルフェニル、ニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等)、ヘテロ環基(ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、キノキサリニル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等)の他上記Xで説明したようなハロゲン原子、シアノ基、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、−S−オキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、−S−カルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、−S−スルホニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、−S−スルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基等が挙げられる。
Wとしてはハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる電子吸引基の他、上記したようなアリール基及びヘテロ環基も好ましい。
また、XとWは互いに結合して環状構造を形成してもよい。XとWで形成される環としては、縮合環を有していてもよい飽和ないし不飽和の炭素環またはヘテロ環が挙げられ、環状ケトンであってもよい。ヘテロ環としては、N、O及びSの内の少なくとも1つの原子を1個以上、更には1〜2個含むものが好ましい。
1としては、ヒドロキシル基またはヒドロキシル基の有機もしくは無機塩が挙げられる。R2が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基の具体例としては、Wとして例示したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基の各例が挙げられる。
また、本発明においては、X、W、及びR2は何れも耐拡散性基を含んでもよい。耐拡散性基とは写真用のカプラーなどにおけるバラスト基と呼ばれるもので、添加された化合物が熱現像画像記録材料の被膜中を移動しないような嵩高い分子量とするものである。
また、本発明においては、X、W、及びR2は銀塩への吸着促進基を含んでいてもよい。銀塩への吸着促進基としては、チオアミド基、脂肪族メルカプト基、芳香族メルカプト基、ヘテロ環メルカプト基及びベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアジン等の5〜6員の含窒素ヘテロ環で表される各基が挙げられる。
本発明において、XとWの内、少なくとも一方がシアノ基を表すか、またはXとWが互いに結合して環状構造を形成するものは好ましい。また、本発明において、X、W、R2で表される置換基中にチオエーテル基(−S−)を含む化合物は好ましい。また、X及びWの中、少なくとも一方が下記一般式(CV1)で表されるアルケン基を有するものは特に好ましい。
一般式(CV1) −C(R)=C(Y)(Z)
上式中、Rは水素原子または置換基を表し、Y及びZは、各々水素原子または置換基を表すが、Y、Zの中、少なくとも一方は電子吸引性基を表す。
〔銀イオン還元剤〕
本発明においては、銀イオン還元剤(単に還元剤ということもある)として米国特許第3,589,903号、同4,021,249号もしくは英国特許第1,486,148号の各明細書及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号の各公報に記載されたポリフェノール化合物、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許第3,672,904号明細書に記載されたビスナフトール類、更に、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許第3,801,321号明細書に記載されているようなスルホンアミドフェノールまたはスルホンアミドナフトール類を用いることができる。
しかしながら、本発明においては、銀イオン還元剤としては下記一般式(RED)で表される化合物が好ましい。
Figure 2006078846
式中、X1はカルコゲン原子またはCHR1を表し、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。R2はアルキル基を表す。R3は水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。R4はベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々0〜2の整数を表す。
1の表すカルコゲン原子としては、硫黄、セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。CHR1におけるR1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表し、ハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子等であり、アルキル基としては置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロアルキル等、アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル、シクロヘキセニル等、アリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環等、複素環基としてはチオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール等の各基である。特に環状基としては、例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が好ましい。
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基として具体的には、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(エチニル、1−プロピニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスホノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。特に好ましい置換基はアルキル基である。
2はアルキル基を表す。アルキル基としては置換または無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、t−オクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−メチルシクロプロピル等の基が挙げられる。
アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、(R4n及び(R4mと飽和環を形成してもよい。R2は好ましくは何れも2級または3級のアルキル基であり、炭素数2〜20が好ましい。より好ましくは3級アルキル基であり、更に好ましくはt−ブチル、t−ペンチル、1−メチルシクロヘキシルであり、最も好ましくはt−ブチルである。
3は水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。ベンゼン環に置換可能な基としては、例えば弗素、塩素、臭素等のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、複素環基等が挙げられる。
3として好ましくは、メチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。更に好ましくは、メチル、2−ヒドロキシエチルである。
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、前記R1で挙げた置換基を用いることができる。
また、R3は、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましい。特にヒドロキシル基、または脱保護されることによりヒドロキシル基を形成し得る基を置換基として有するアルキル基、例えば、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。このようなアルキル基を有する還元剤は、一定塗布銀量で高い最高濃度(Dmax)、即ち高い銀被覆率(カバリングパワー、CP)の銀画像濃度を得るためには、単独で使用することまたは他種の還元剤と併用することが好ましい。
2及びR3の最も好ましい組合せは、R2が第3級アルキル基(t−ブチル、1−メチルシクロヘキシル等)であり、R3がアルキル基であって、ヒドロキシル基、または脱保護されることによりヒドロキシル基を形成し得る基を置換基として有するアルキル基、例えば、2−ヒドロキシエチル基である。なお、複数のR2、R3は同じでも異なっていてもよい。
4はベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル、パーフルオロオクチル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロペンチル等)、アルキニル基(プロパルギル等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル等)、複素環基(ピリジル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、フリル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、セレナゾリル、スリホラニル、ピペリジニル、ピラゾリル、テトラゾリル等)、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、弗素)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド等)、スルファモイル基(アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等)、ウレタン基(メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、フェニルウレイド、2−ピリジルウレイド等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、ピリジノイル等)、カルバモイル基(アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル)、アミド基(アセトアミド、プロピオンアミド、ブタンアミド、ヘキサンアミド、ベンズアミド等)、スルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、フェニルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、アミノ基(アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、アニリノ、2−ピリジルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基は更にこれらの基で置換されてもよい。n及びmは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはn、m共に0の場合である。複数のR4は同じでも異なっていてもよい。
また、R4はR2、R3と飽和環を形成してもよい。R4は好ましくは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
以下に、一般式(RED)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2006078846
Figure 2006078846
Figure 2006078846
これら一般式(RED)で表される化合物(ビスフェノール化合物)は、従来公知の方法により容易に合成することができる。
本発明の熱現像画像記録材料に使用される銀イオン還元剤の量は、有機銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には有機銀塩1モル当たり0.05モル乃至10モル好ましくは0.1モル乃至3モルが適当である。またこの量の範囲内において、本発明に係る銀イオン還元剤は2種以上併用されてもよい。即ち、相違する化学構造を有することにより反応性の相違する還元剤を併用することも保存性に優れ、高画質、且つ高CPの画像を得る等の観点から好ましい。
本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び有機銀塩組成物及び溶媒からなる感光乳剤溶液に添加混合して塗布した方が、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
また、本発明の熱現像画像記録材料には、前記した還元剤と併用する現像促進剤として特開2003−43614号公報に記載の一般式(1)〜(4)や、特開2003−66559号公報に記載の一般式(1)〜(3)で表されるヒドラジン誘導体、フェノール誘導体が好ましく用いられる。
本発明の熱現像画像記録材料において使用される現像促進剤のポーラログラフィー測定による酸化電位は、一般式(RED)で表される化合物より0.01Vないし0.4V低いことが好ましく、一般式(RED)で表される化合物より0.01Vないし0.3V低いことが更に好ましい。なお、当該現像促進剤は、pH=6に調整したテトラヒドロフラン:Britton・Robinson緩衝溶液=3:2混合溶媒中での、SCE対極でのポーラログラフィー測定による酸化電位が、0.2V以上0.6V以下であることが好ましく、0.3V以上0.55V以下であることが更に好ましい。また、テトラヒドロフラン:水の3:2混合溶媒中でのpKa値は3以上12以下であることが好ましく、5以上10以下であることが更に好ましい。pH=6に調整したテトラヒドロフラン:Britton・Robinson緩衝溶液=3:2混合溶媒中でのSCE対極でのポーラログラフィー測定による酸化電位が、0.3V以上0.55V以下であり、テトラヒドロフラン:水の3:2混合溶媒中でのpKa値は、5以上10以下であることが特に好ましい。
なお、本発明に係る銀イオン還元剤として、欧州特許第1,278,101号明細書及び特開2003−15252号公報に開示されている各種の還元剤も使用できる。
本発明においては、前記還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び有機銀塩組成物及び溶媒からなる感光乳剤溶液に添加混合して塗布した方が、停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
〔化学増感〕
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子には、化学増感を施すことができる。例えば、特開2001−249428号、同2001−249426号の各公報に記載されている方法等により、硫黄、セレン、テルル等のカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、感光性ハロゲン化銀粒子または当該粒子上の分光増感色素の光励起によって生じた電子または正孔(ホール)を捕獲することができる化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。特に、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。
これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号、同11−218875号、同11−218876号、同11−194447号の各公報等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうち、カルコゲン原子が炭素原子またはリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。特に、複素環基を有するチオ尿素誘導体及びトリフェニルホスフィンサルファイド誘導体等が好ましい。
化学増感を施す方法としては、従来の湿式処理用のハロゲン化銀感光材料の製造の際に慣用されている種々の化学増感技術に準じた技術が使用できる(参考文献:(1)T.H.James編”The Theory of the Photographic Process”第4版、Macmillan Publishing Co.,Ltd.1977、(2)日本写真学会編”写真工学の基礎(銀塩写真編)、コロナ社、1979)。特に、ハロゲン化銀粒子乳剤に予め化学増感を施し、その後に非感光性有機銀塩粒子と混合する場合には、従来の慣用方法により化学増感を施すことができる。
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-7〜10-3モルを用いる。化学増感を施す際の環境条件としては特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀または銀核を消滅、あるいはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、また特に銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましい場合がある。この場合の増感条件はpAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、また温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して、吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号公報に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。
含窒素複素環化合物において、複素環としては、例えば、ピラゾール環、ピリミジン環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,2,3,4−テトラゾール環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、これらの環が2〜3個結合した環、例えば、トリアゾロトリアゾール環、ジアザインデン環、トリアザインデン環、ペンタアザインデン環などを挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えば、フタラジン環、ベンズイミダゾール環、インダゾール環、ベンズチアゾール環なども適用できる。これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、且つ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えば、ヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。複素環にはヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などを有してもよい。
これら含窒素複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、おおよその量はハロゲン化銀1モル当たりの量で10-6〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4〜10-1モルの範囲である。
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。なお、特開平11−194447号公報に開示されている金増感技術が参考となる。また、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物として、例えば、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上、またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
本発明において、化学増感を施されるハロゲン化銀粒子は、有機銀塩の存在下で形成されたのでも、当該有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また両者が混合されたものでもよい。
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子の表面に化学増感を施した場合においては、熱現像過程経過後に該化学増感の効果が実質的に消失することが必要である。ここで、化学増感の効果が実質的に消失するとは、前記の化学増感技術によって得た当該熱現像画像記録材料の感度が熱現像過程経過後に化学増感を施していない場合の感度の1.1以下に減少することを言う。なお、化学増感効果を熱現像過程において消失させるためには、熱現像時に、化学増感中心(化学増感核)を酸化反応によって破壊できる酸化剤、例えば、前記のハロゲンラジカル放出性化合物等の適当量を当該熱現像画像記録材料の乳剤層及び/または非感光性層に含有含有させておくことが必要である。当該酸化剤の含有量については、酸化剤の酸化力、化学増感効果の減少幅等を考慮して調整することが好ましい。
〔分光増感〕
本発明における感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号の各公報、米国特許第4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号の各明細書に記載された増感色素が使用できる。
本発明に使用される有用な増感色素は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643IV−A項(1978年12月p.23)、RD18431X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号の各公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば、米国特許第4,536,473号、同4,515,888号、同4,959,294号の各明細書等に開示されている赤外分光増感色素が挙げられる。
本発明の熱現像画像記録材料においては、下記一般式(SD−1)で表される増感色素及び下記一般式(SD−2)で表される増感色素のうちから少なくとも1種を選び含有することが好ましい。
Figure 2006078846
式中、Y1及びY2は、各々酸素原子、硫黄原子、セレン原子、または−CH=CH−基を表し、L1〜L9は各々、メチン基を表す。R1、R2は各々、脂肪族基を表す。R3、R4、R23及びR24は各々、低級アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、または複素環基を表す。W1、W2、W3、W4は、各々水素原子、置換基、あるいはW1とW2、W3とW4の間で結合して縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。あるいはR3とW1、R3とW2、R23とW1、R23とW2、R4とW3、R4とW4、R24とW3、R24とW4の間で結合して5員、6員の縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。X1は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k1は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。m1は0または1を表す。n1及びn2は各々、0、1または2を表す。但し、n1とn2は同時に0とはならない。
上記の赤外増感色素は、例えば、エフ・エム・ハーマー著、The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻、The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊、New York 1964年)に記載の方法によって容易に合成することができる。
これらの赤外増感色素の添加時期はハロゲン化銀調製後の任意の時期でよく、例えば、溶剤に添加して、あるいは微粒子状に分散した、いわゆる固体分散状態でハロゲン化銀粒子あるいはハロゲン化銀粒子/有機銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。また、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
本発明において、上記の分光増感色素は1種類を単独に用いてもよいが、上述のように、分光増感色素の複数の種類の組合せを用いることが好ましく、そのような増感色素の組合せは、特に強色増感及び感光波長領域の拡大や調整等の目的でしばしば用いられる。
本発明の熱現像画像記録材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、有機銀塩を含有する乳剤は、増感色素とともにそれ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質は、RD17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号の各公報等に記載されているが、強色増感剤としては、下記で表される複素芳香族メルカプト化合物またはメルカプト誘導体化合物が好ましい。
Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンズチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンズセレナゾール、ベンズテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
なお、有機銀塩またはハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させたときに実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も含まれる。特に下記で表されるメルカプト誘導体化合物が、好ましい例として挙げられる。
Ar−S−S−Ar
式中のArは上記で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有しうる。
上記の強色増感剤の他に、特開2001−330918号公報に開示されているヘテロ原子を有する大環状化合物も強色増感剤として使用できる。
本発明に係る強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む感光性層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルで用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの量が好ましい。
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子の表面に分光増感色素を吸着せしめ分光増感が施されており、且つ熱現像過程経過後に該分光増感効果が実質的に消失することが必要である。ここで、分光増感効果が実質的に消失するとは、増感色素、強色増感剤等によって得た当該熱現像画像記録材料の感度が熱現像過程経過後に分光増感を施していない場合の感度の1.1倍以下に減少することを言う。
なお、化学増感効果を熱現像過程において消失させるためには、熱現像時に、熱によってハロゲン化銀粒子より脱離しやすい分光増感色素を使用するまたは/及び分光増感色素を酸化反応によって破壊できる酸化剤、例えば、前記のハロゲンラジカル放出性化合物等の適当量を当該熱現像画像記録材料の乳剤層または/及び非感光性層に含有含有させておくことが必要である。当該酸化剤の含有量については、酸化剤の酸化力、分光増感効果の減少幅等を考慮して調整することが好ましい。
〔省銀化剤〕
本発明では、感光性層または非感光性層に省銀化剤を含有することができる。
本発明において使用される省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは銀の単位量当たりの光学濃度をいう。この省銀化剤は感光性層または非感光性層、更にはそのいずれにも存在せしめることができる。
省銀化剤としては、下記一般式(H)で表されるヒドラジン誘導体、下記一般式(G)で表せるビニル化合物、下記一般式(P)で表される4級オニウム化合物等が好ましい例として挙げられる。
Figure 2006078846
一般式〔H〕において、式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG11)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G11)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。好ましいD0としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
0で表される脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基が挙げられ、これらは更に適当な置換基(例えば、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アシルアミノ基、ウレイド基等)で置換されていてもよい。
0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、例えば、ベンゼン環またはナフタレン環が挙げられ、A0で表される複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環が好ましく、例えば、ピロリジン環、イミダゾール環、テトラヒドロフラン環、モルホリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、フラン環が挙げられる。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として、特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
また、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としてはカプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましく、バラスト基としては、写真的に不活性であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基等が挙げられ、置換基部分の炭素数の合計は8以上であることが好ましい。ハロゲン化銀吸着基としては、チオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基あるいは特開昭64−90439号公報に記載の吸着基等が挙げられる。
0はブロッキング基を表し、好ましくは−G0−D0基であり、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG11)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G11)−基を表す。好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、またはオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
これら一般式〔H〕で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同5,496,695号の各明細書を参考にして合成することができる。
その他に好ましく用いることのできるヒドラジン誘導体は、米国特許第5,545,505号明細書カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号明細書カラム9〜11に記載の化合物1〜12である。これらのヒドラジン誘導体は公知の方法で合成することができる。
一般式(G)において、XとRはシスの形で表示してあるが、XとRがトランスの形も一般式(G)に含まれる。この事は具体的化合物の構造表示においても同様である。
Xは電子吸引性基を表し、Wは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基を表す。
Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩等)、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基(例えば、ピロリジノ基)、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基(5〜6員の含窒素ヘテロ環、例えば、ベンツトリアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等)、ウレイド基、スルホンアミド基を表す。XとW、XとRは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。XとWが形成する環としては、例えば、ピラゾロン、ピラゾリジノン、シクロペンタンジオン、β−ケトラクトン、β−ケトラクタム等が挙げられる。
Xの表す電子吸引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
Wとして表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。Wとしてはσp値が正の電子吸引性基が好ましく、更にはその値が0.30以上のものが好ましい。
上記Rの置換基の内、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩が挙げられる。
また上記X及びWの置換基の内、置換基中にチオエーテル結合を有するものが好ましい。
一般式(P)において、Q3は窒素原子または燐原子を表し、R1、R2、R3及びR4は、各々水素原子または置換基を表し、X-はアニオンを表す。なお、R1〜R4は互いに連結して環を形成してもよい。
1〜R4で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えば、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。R1〜R4が互いに連結して形成しうる環としては、例えば、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。R1〜R4で表される基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。R1〜R4としては、水素原子及びアルキル基が好ましい。
-が表すアニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機及び有機のアニオンが挙げられる。
上記4級オニウム化合物は公知の方法に従って容易に合成でき、例えば、上記テトラゾリウム化合物は、Chemical Reviews vol.55 p.335〜483に記載の方法を参考にできる。上記省銀化剤の添加量は、有機銀塩1モルに対し10-5〜1モル、好ましくは10-4〜5×10-1モルの範囲である。
本発明では、省銀化剤の少なくとも一種が、シラン化合物であることも好ましい。本発明において、省銀化剤として用いるシラン化合物としては、特開2003−5324号公報に開示されているような一級または二級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物あるいはその塩であることが好ましい。
省銀化剤として、アルコキシシラン化合物あるいはその塩、またはシフ塩基を画像形成層中に添加する場合は、銀1モルに対して通常0.00001〜0.05モルの範囲で添加するのが好ましい。また、アルコキシシラン化合物あるいはその塩と、シフ塩基の両方を画像形成層に添加する場合も同様の範疇となる。
〔バインダー〕
本発明の熱現像画像記録材料に好適なバインダーは、透明または半透明で一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。親水性でも非親水性でもよい。
本発明の熱現像画像記録材料の感光性層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。詳しくは後述する。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光性層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、感光性層において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、感光性層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましい。更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
本発明では、100℃以上の温度で現像処理した後の熱転移点温度が、46℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以上105℃以下である。本発明でいう熱転移点温度とは、VICAT軟化点または環球法で示した値であり、示差走査熱量計(DSC)、例えば、EXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)等を用いて、熱現像済みの感光性層を単離して測定した際の吸熱ピークをさす。一般的に高分子化合物はガラス転移点Tgを有しているが、熱現像画像記録材料においては、感光性層に用いているバインダー樹脂のTg値よりも低いところに、大きな吸熱ピークが出現する。この熱転移点温度を46℃以上200℃以下にすることにより、形成された塗膜の堅牢性が増すのみならず、感度、最大濃度、画像保存性など写真性能の大幅な向上が可能となる。
ガラス転移温度(Tg)は、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁からIII−179頁(1966年、ワイリー アンド サン社版)に記載の方法で求めたものであり、バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは、共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。
なお、上式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
本発明の熱現像画像記録材料において、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤等を含有する感光性層に含有するバインダーとしては、従来公知の高分子化合物を用いることができる。Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等のエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体よりなる化合物、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。
また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂については、朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。これらの高分子化合物に特に制限はなく、誘導される重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜105℃の範囲にあれば、単独重合体でも共重合体でもよい。
このようなエチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体としては、アクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アリールエステル類、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、シアノアクリル酸アルキルエステル類、シアノアクリル酸アリールエステル類などを挙げることができ、それらのアルキル基、アリール基は置換されていてもされていなくてもよく、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、クロロベンジル、オクチル、ステアリル、スルホプロピル、N−エチル−フェニルアミノエチル、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチル、ジメチルアミノフェノキシエチル、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、フェニル、クレジル、ナフチル、2−ヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエチル、3−メトキシブチル、2−アセトキシエチル、2−アセトアセトキシエチル、2−エトキシエチル、2−iso−プロポキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、2−ジフェニルホスホリルエチル、ω−メトキシポリエチレングリコール(付加モル数n=6)、アリル、ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩などを挙げることができる。
その他、下記のモノマー等が使用できる。ビニルエステル類:その具体例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなど;N−置換アクリルアミド類、N−置換メタクリルアミド類及びアクリルアミド、メタクリルアミド:N−置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、ヒドロキシメチル、メトキシエチル、ジメチルアミノエチル、フェニル、ジメチル、ジエチル、β−シアノエチル、N−(2−アセトアセトキシエチル)、ジアセトンなど;オレフィン類:例えば、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど;ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなど;N−置換マレイミド類:N−置換基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジル、n−ドデシル、フェニル、2−メチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2−クロルフェニルなどを有するものなど;その他として、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。
これらのうち、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。このような高分子化合物のなかでも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物では、生成する有機酸との相溶性に優れるため膜の柔軟化を防ぐ効果が大きく好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物としては、下記一般式(V)で表される化合物が、特に好ましい。
Figure 2006078846
式中、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基を表すが好ましくはアリール基以外の基である。R2は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、−COR3または−CONHR3を表す。R3はR1と同義である。
1、R2、R3で表される無置換アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6である。これらは直鎖であっても分岐していてもよく、好ましくは直鎖のアルキル基が好ましい。このような無置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるが、特に好ましくはメチル基もしくはプロピル基である。
無置換アリール基としては炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記のアルキル基、アリール基に置換可能な基としては、アルキル基(例えば、メチル基、n−プロピル基、t−アミル基、t−オクチル基、n−ノニル基、ドデシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ニトロ基、水酸基、シアノ基、スルホ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基等)などが挙げられる。この置換基が2つ以上あるときは、同じでも異なっていてもよい。置換アルキル基の総炭素数は、1〜20が好ましく、置換アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。
2としては、−COR3(R3はアルキル基またはアリール基)、−CONHR3(R3はアリール基)が好ましい。a、b、cは各繰り返し単位の質量をモル(モル)%で示した値であり、aは40〜86モル%、bは0〜30モル%、cは0〜60モル%の範囲で、a+b+c=100モル%となる数を表し、特に好ましくはaが50〜86モル%、bが5〜25モル%、cが0〜40モル%の範囲である。a、b、cの各組成比をもつ各繰り返し単位は、それぞれ同一のもののみで構成されていても、異なるもので構成されていてもよい。
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべてのポリウレタンについて、必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、(Mは水素原子、またはアルカリ金属塩基を表す)、−N(R42、−N+(R43(R4は炭化水素基を表し、複数のR4は同じでも異なっていてもよい)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。これら極性基以外に、ポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のOH基を有することが好ましい。OH基は硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特にOH基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは分子末端にOH基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度が70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
本発明において、上記一般式(V)で表される高分子化合物は、「酢酸ビニル樹脂」桜田一郎編(高分子化学刊行会、1962年)等に記載の一般的な合成方法で合成することができる。
表1に記載のその他の高分子化合物(ポリマー)も同様に合成した。
これらの高分子化合物をバインダーとして単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。本発明に係る感光性層には上記ポリマーを主バインダーとして用いる。ここで言う主バインダーとは「感光性層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」をいう。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明に係るポリマーが可溶となる溶媒であれば、特に制限はない。より好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
以下に、本発明に好ましく用いられる高分子化合物の構成を示す。なお、表中のTgは、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)により測定した値である。
Figure 2006078846
なお、表1中、P−9はソルーシア社製ポリビニルブチラール樹脂B−79である。
本発明においては、上記バインダーに対し架橋剤を用いることにより膜付きがよくなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
本発明で用いられる架橋剤としては、従来ハロゲン化銀写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用いうるが、好ましいのは以下に示すイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。
好適なものの一つである下記一般式(IC)で表されるイソシアネート系及びチオイソシアネート系架橋剤について説明する。
一般式(IC) X=C=N−L−(N=C=X)v
式中、vは1または2であり、Lはアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルキルアリール基で、v+1価の連結基であり、Xは酸素または硫黄原子である。
なお、上記一般式(IC)で表せる化合物において、アリール基のアリール環は置換基を有し得る。好ましい置換基の例はハロゲン原子(例えば、臭素原子または塩素原子)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基及びアルコキシ基から選択される。
上記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個有しているイソシアネート類及びその付加体(アダクト体)であり、更に具体的には脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼンジイソシアネート類、ナフタレンジイソシアネート類、ビフェニルイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート類、トリフェニルメタンジイソシアネート類、トリイソシアネート類、テトライソシアネート類、これらのイソシアネート類の付加体及びこれらのイソシアネート類と2価または3価のポリアルコール類との付加体が挙げられる。具体例としては、特開昭56−5535号公報の10〜12頁に記載されているイソシアネート化合物を利用することができる。
なお、イソシアネートとポリアルコールのアダクト体は特に層間接着を良くし、層の剥離や画像のズレ及び気泡の発生を防止する能力が高い。かかるイソシアネートは熱現像画像記録材料のどの部分に置かれてもよい。例えば、支持体中(特に支持体が紙の場合、そのサイズ組成中に含ませることができる)、感光性層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光性層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層または2層以上に添加することができる。
また、本発明において使用することが可能なチオイソシアネート系架橋剤としては、上記のイソシアネート類に対応するチオイソシアネート構造を有する化合物も有用である。
本発明において使用される上記架橋剤の量は、銀1モルに対して0.001〜2モル、好ましくは0.005から0.5モルの範囲である。
本発明において含有させることができるイソシアネート化合物及びチオイソシアネート化合物は、上記の架橋剤として機能する化合物であることが好ましいが、上記の一般式においてvが零(0)、即ち当該官能基を一つのみ有する化合物であっても良い結果が得られる。
本発明において架橋剤として使用できるシラン化合物の例としては、特開2002−22203号公報に記載されている一般式(1)または一般式(2)で表せる化合物が挙げられる。
これらの一般式において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ置換されてもよい直鎖、分枝または環状の炭素数1〜30のアルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、シクロアルキル基等)、アルケニル基(プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基等)、アルキニル基(アセチレン基、ビスアセチレン基、フェニルアセチレン基等)、アリール基またはヘテロ環基(フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロピラン基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、イミダゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基等)を表し、置換基としては電子吸引性の置換基または電子供与性の置換基いずれをも有することができる。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8から選ばれる置換基の少なくとも1つが耐拡散性基または吸着性基であることが好ましく、特にR2が耐拡散性基または吸着性基であることが好ましい。
なお、耐拡散性基は、バラスト基とも呼ばれ炭素数が6以上の脂肪族基や炭素数が3以上のアルキル基が導入されているアリール基等が好ましい。耐拡散性はバインダーや架橋剤の使用量によって異なるが、耐拡散性の基を導入することにより、室温状態の分子内の移動距離が抑制され経時での反応を抑制できる。
架橋剤として用いることができるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。またエポキシ化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等のいずれであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2000〜20000程度である。
エポキシ化合物としては、下記一般式(EP)で表される化合物が好ましい。
Figure 2006078846
一般式(EP)において、Rで表されるアルキレン基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシアルキル基またはアミノ基から選ばれる基であることが好ましい。またRで表される連結基中にアミド連結部分、エーテル連結部分、チオエーテル連結部分を有していることが好ましい。Xで表される2価の連結基としては、−SO2−、−SO2NH−、−S−、−O−、または−NR1−が好ましい。ここでR1は1価の基であり、電子吸引基であることが好ましい。
これらのエポキシ化合物は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。
エポキシ化合物は感光性層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光性層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層または2層以上に添加することができる。また、併せて支持体の感光性層と反対側の任意の層に添加することができる。なお、両面に感光性層が存在するタイプの感材ではいずれの層であってもよい。
酸無水物は下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。
−CO−O−CO−
酸無水物はこのような酸無水基を1個以上有するものであればよく、酸無水基の数、分子量、その他に制限はないが、下記一般式(SA)で表される化合物が好ましい。
Figure 2006078846
一般式(SA)において、Zは単環または多環系を形成するのに必要な原子群を表す。これらの環系は未置換であってもよく、置換されていてもよい。置換基の例には、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ヘキシル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシル基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル)、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、及びアミノ基が含まれる。置換基としては、ハロゲン原子を含まないものが好ましい。
これらの酸無水物は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。
本発明において酸無水物は、感光性層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光性層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層または2層以上に添加することができる。また、前記エポキシ化合物と同じ層に添加すしてもよい。
〔色調調整〕
次に当該熱現像画像記録材料を熱現像処理して得られる画像の色調について説明する。
従来のレントゲン写真フィルムのような医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、判読者にとってより的確な記録画像の診断観察結果が得やすいと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であると言われているが、より厳密な定量的な議論ができるように、以下においては、国際照明委員会(CIE)の推奨する表現法に基づき説明する。
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度Dmin及び光学濃度D=1.0における色相角habにより表現できる。即ち、色相角habは国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間であるL***色空間の色座標a*、b*を用いて次の式によって求める。
hab=tan-1(b*/a*
上記色相角に基づく表現法により検討した結果、本発明の熱現像画像記録材料の現像後の色調は、色相角habの範囲が180度<hab<270度であることが好ましい、更に好ましくは200度<hab<270度、最も好ましくは220度<hab<260度であることが分かった。このことは、特開2002−6463号公報に開示されている。
なお、従来、光学濃度1.0付近でのCIE 1976(L***)色空間または(L***)色空間におけるu*、v*またはa*、b*を特定の数値に調整することにより見た目の色調が好ましい診断画像が得られることが知られており、例えば、特開2000−29164号公報に記載されている。
しかしながら、本発明の熱現像画像記録材料について、更なる鋭意検討の結果、CIE 1976(L***)色空間または(L***)色空間において横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に、様々な写真濃度でのu*、v*またはa*、b*をプロットし線形回帰直線を作成した際に、その線形回帰直線を特定の範囲に調整することにより従来の湿式の銀塩感光材料同等以上の診断性を持つことを見いだした。以下において、好ましい条件範囲について述べる。
1)熱現像画像記録材料を熱現像処理後に得られた銀画像の光学濃度0.5、1.0、1.5及び最低光学濃度の各濃度を測定し、CIE 1976(L***)色空間の横軸をu*、縦軸をv*とする二次元座標に、上記各光学濃度でのu*、v*を配置し作成した線形回帰直線の決定係数(重決定)R2が0.998以上1.000以下であることが好ましい。
更に当該線形回帰直線の縦軸との交点のv*値が−5以上5以下であること、且つ傾き(v*/u*)が0.7以上2.5以下であることが好ましい。
2)また、当該熱現像画像記録材料の光学濃度0.5、1.0、1.5及び最低光学濃度の各濃度を測定し、CIE 1976(L***)色空間の横軸をa*、縦軸をb*とする二次元座標に、上記各光学濃度でのa*、b*を配置し作成した線形回帰直線の決定係数(重決定)R2が0.998以上1.000以下であることが好ましい。
更に当該線形回帰直線の縦軸との交点のb*値が−5以上5以下であること、且つ傾き(b*/a*)が0.7以上2.5以下であることが好ましい。
なお、次に上述の線形回帰直線の作成法、則ちCIE 1976色空間におけるu*、v*及びa*、b*の測定法の一例を説明する。
熱現像装置を用いて未露光部、及び光学濃度0.5、1.0、1.5を含む4段のウエッジ試料を作製する。このようにして作製したそれぞれのウエッジ濃度部を分光色彩計(例:CM−3600d;コニカミノルタ株式会社製)で測定しu*、v*またはa*、b*を算出する。その際の測定条件は光源としてF7光源、視野角を10°として透過測定モードで測定を行う。横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に測定したu*、v*またはa*、b*をプロットし線形回帰直線を求め決定係数(重決定)R2、切片及び傾きを求める。
次に、上記のような特徴をもつ線形回帰直線を得るための具体的な方法について説明する。
本発明においては、上記の調色剤、現像剤、ハロゲン化銀粒子及び有機銀塩等の現像反応過程において直接的及び間接的に関与する化合物等の添加量の調整により現像銀形状を最適化し好ましい色調にすることができる。例えば、現像銀形状をデンドライト状にすると青味を帯びる方向になり、フィラメント状にすると黄色味を帯びる方向になる。即ち、このような現像銀形状の性向を考慮して調整できる。
従来、調色剤としてはフタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類が一般的に使用されている。好適な調色剤の例は、RD17029号、米国特許第4,123,282号、同3,994,732号、同3,846,136号、同4,021,249号の各明細書に開示されている。
このような調色剤の他に、特開平11−288057号公報、欧州特許第1,134,611A2号明細書等に開示されているカプラー、及び下で詳述するロイコ染料を使用して色調を調整することが好ましい。また、本発明に係る熱現像後に内部潜像型に変換するハロゲン化銀粒子を併用することにより銀画像保存時における色調の変動を予想外に防止することができる。
〔ロイコ染料〕
本発明の熱現像画像記録材料にはロイコ染料を用いることができる。
ロイコ染料として好ましくは、約80〜200℃の温度で約0.5〜30秒間加熱した時に、酸化されて着色形態になる何れの無色または僅かに着色した化合物でよく、銀イオンにより酸化して色素を形成する何れのロイコ染料を用いることもできる。pH感受性を有し、且つ着色状態に酸化できる化合物は有用である。
本発明で使用するのに適した代表的なロイコ染料は特に限定されないが、例えば、ビフェノールロイコ染料、フェノールロイコ染料、インドアリニリンロイコ染料、アクリル化アジンロイコ染料、フェノキサジンロイコ染料、フェノジアジンロイコ染料及びフェノチアジンロイコ染料等が挙げられる。また、有用なものは、米国特許第3,445,234号、同3,846,136号、同3,994,732号、同4,021,249号、同4,021,250号、同4,022,617号、同4,123,282号、同4,368,247号、同4,461,681号の各明細書、及び特開昭50−36110号、同59−206831号、特開平5−204087号、同11−231460号、特開2002−169249号、同2002−236334号の各公報等に開示されているロイコ染料である。
所定の色調に調整するために、種々の色のロイコ染料を単独使用または複数の種類の併用をすることが好ましい。本発明においては高活性な還元剤を使用することに伴って色調が過度に黄色味をおびたり、微粒子のハロゲン化銀を用いることにより特に濃度が2.0以上の高濃度部で画像が過度に赤みをおびることを防止するために、シアン色に発色するロイコ染料を用いることが好ましいが、色調の微調整のためには更に黄色ロイコ染料、及びその他のシアン色に発色するロイコ染料を併用するのが好ましい。
発色濃度は現像銀自身による色調との関係で適切に調整することが好ましい。本発明では、ロイコ染料により形成される色素像の吸収極大波長における最大濃度の総和が通常0.01以上0.30以下、好ましくは0.02以上0.20以下、特に好ましくは0.02以上0.10以下を有するように発色させ、後述する好ましい色調範囲の画像になるように色調を調整することが好ましい。
ロイコ染料の添加量は通常0.00001〜0.05モル/Ag1モルであり、好ましくは0.0005〜0.02モル/Ag1モル、より好ましくは0.001〜0.01モル/Ag1モルである。
ロイコ染料の添加方法としては、一般式(RED)で表される還元剤の添加方法と同様な方法で添加することができ、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態等、任意の方法で塗布液に含有せしめ、熱現像画像記録材料に含有させてよい。
ロイコ染料は有機銀塩を含有する画像形成層に含有させることが好ましいが、一方を画像形成層に他方を該画像形成層に隣接する非画像形成層に含有させてもよく、両者を非画像形成層に含有させてもよい。また、画像形成層が複数層で構成されている場合には、それぞれ別層に含有させてもよい。
〔塗布助剤、その他〕
本発明においては、熱現像画像記録材料の表面層に(感光性層側、また支持体をはさみ感光性層の反対側に非感光性層を設けた場合にも)、現像前の取り扱いや熱現像後の画像の傷つき防止のためマット剤を含有することが好ましく、バインダーに対し、質量比で0.1〜30%含有することが好ましい。
マット剤の材質は有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
マット剤は平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。また、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明に係るマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
〔フッ素系界面活性剤〕
本発明の熱現像画像記録材料においては、下記の一般式(SA−1)〜(SA−3)で表されるフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。
一般式(SA−1) (Rf−L)p−Y−(A)q
一般式(SA−2) LiO3S−(CF2n−SO3Li
一般式(SA−3) MO3S−(CF2n−SO3
式中、Mは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子またはアンモニウム基を表し、nは正の整数を表すが、M=Hの時n=1〜6及び8であり、M=Naの時n=4であり、M=Kの時n=1〜6であり、M=アンモニウム基の時n=1〜8である。
前記一般式(SA−1)において、Rfはフッ素原子を含有する置換基を表すが、該フッ素原子を含有する置換基としては、例えば、炭素数1〜25のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基及びオクタデシル基等)またはアルケニル基(例えば、プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基及びドデセニル基等)等が挙げられる。
Lはフッ素原子を有さない2価の連結基を表すが、該フッ素原子を有さない2価の連結基としては例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等)、アルキレンオキシ基(メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、ブチレンオキシ基等)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシブチレン基等)、オキシアルキレンオキシ基(例えば、オキシメチレンオキシ基、オキシエチレンオキシ基、オキシエチレンオキシエチレンオキシ基等)、フェニレン基、オキシフェニレン基、フェニルオキシ基、オキシフェニルオキシ基またはこれらの基を組み合わせた基等が挙げられる。
Aはアニオン基またはその塩基を表すが、例えば、カルボン酸基またはその塩基(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、スルホン酸基またはその塩基(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)及び燐酸基またはその塩基(ナトリウム塩及びカリウム塩等)等が挙げられる。
Yはフッ素原子を有さない3価または4価の連結基を表すが、例えば、フッ素原子を有さない3価または4価の連結基で炭素原子または窒素原子を中心にして構成される原子群が挙げられる。pは1〜3の整数を表し、qは2〜3の整数を表す。
一般式(SA−1)で表されるフッ素系界面活性剤は、フッ素原子を導入した炭素数1〜25のアルキル化合物(例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基及びパーフロロオクタデシル基等を有する化合物)及びアルケニル化合物(例えば、パーフロロヘキセニル基及びパーフロロノネニル基等)と、それぞれフッ素原子を導入していない3価〜6価のアルカノール化合物、水酸基を3〜4個有する芳香族化合物またはヘテロ化合物との付加反応や縮合反応によって得られた化合物(一部Rf化されたアルカノール化合物)に、更に、例えば、硫酸エステル化等によりアニオン基(A)を導入することにより得ることができる。
上記3〜6価のアルカノール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンテン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ブタノール)−3、脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール等が挙げられる。
また、上記水酸基を3〜4個有する芳香族化合物及びへテロ化合物としては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン及び2,4,6−トリヒドロキシピリジン等が挙げられる。
一般式(SA−2)中のnは1〜4の整数を表す。
一般式(SA−3)中、Mは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子またはアンモニウム基を表し、nは正の整数を表すが、M=Hの時n=1〜6及び8であり、M=Naの時n=4であり、M=Kの時n=1〜6であり、M=アンモニウム基の時n=1〜8である。
一般式(SA−1)〜(SA−3)で表されるフッ素系界面活性剤を塗布液に添加する方法としては、公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。また、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。当該フッ素系界面活性剤は、最外層の保護層に添加することが好ましい。
当該フッ素系界面活性剤の添加量は1m2当たり1×10-8〜1×10-1モルが好ましく、1×10-5〜1×10-2モルが特に好ましい。前者の範囲未満では帯電特性が得られず、前者の範囲を越えると湿度依存性が大きく高湿下の保存性が劣化する。
なお、一般式(SA−1)、一般式(SA−2)及び一般式(SA−3)で表せる界面活性剤は、それぞれ特開2003−57786号公報に開示されている。
本発明の熱現像画像記録材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(例えば、アルミニウム)等が挙げられるが、情報記録材料としての取り扱い上は可撓性のあるシートまたはロールに加工できるものが好適である。従って、本発明の熱現像画像記録材料における支持体としては、プラスチックフィルム(例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルムまたはポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
本発明においては帯電性を改良するために、金属酸化物及び/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バックコート層、感光性層と下引の間の層などに含まれる。本発明においては米国特許第5,244,773号明細書カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
本発明の熱現像画像記録材料は、支持体上に少なくとも1層の感光性層を有している。支持体の上に感光性層のみを形成してもよいが、感光性層の上に少なくとも一層の非感光性層を形成するのが好ましい。例えば、感光性層の上には保護層が、感光性層を保護する目的で、また支持体の反対の面には熱現像画像記録材料間の、あるいは熱現像画像記録材料ロールにおいてくっつきを防止する為に、バックコート層が設けられるのが好ましい。これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては熱現像層よりもガラス転移点が高く、擦り傷や、変形の生じにくいポリマー、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーのなかから選ばれる。なお、階調調整等のために、本発明では感光性層が2層以上からなることが好ましい、例えば、感光性層を支持体の一方の側に2層以上設けても、あるいは支持体の両側に1層以上設置してもよい。
本発明の熱現像画像記録材料においては、感光性層を透過する光の量または波長分布を制御するために感光性層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、感光性層に染料または顔料を含有させることが好ましい。用いられる染料としては、熱現像画像記録材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。
例えば、本発明の熱現像画像記録材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号公報に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料、またスクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
なお、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。
なお、染料としては特開平8−201959号公報の化合物も好ましい。
〔層構成及び塗布条件等〕
本発明の熱現像画像記録材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば、感光性層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光性層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
本発明では、銀塗布量が0.5g/m2以上2.0g/m2以下であることが好ましい、更には1.0g/m2以上1.5g/m2以下が好ましい。
また本発明では、ハロゲン化銀粒子乳剤において、粒径0.030μm以上0.055μm以下のハロゲン化銀粒子の銀換算含有量が、銀塗布量が0.5g/m2以上1.5g/m2以下の範囲で、3%以上15%以下であることが好ましい。
当該塗布銀量の内、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましい、更には3〜15%がより好ましい。
また本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014個/m2以上1×1018個/m2以下、更には1×1015個/m2以上1×1017個/m2以下が好ましい。
更に本発明に係る有機銀塩の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり、10-17g以上10-15g以下、更には10-16g以上10-14g以下が好ましい。
上記のような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
〔露光条件〕
本発明の熱現像画像記録材料の露光は、当該熱現像画像記録材料に付与した感色性に対し、適切な光源を用いることが望ましい。例えば、当該熱現像画像記録材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、熱現像画像記録材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、熱現像画像記録材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として、好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。
レーザ光が、熱現像画像記録材料に走査されるときの熱現像画像記録材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。
また、第2の方法として、露光を縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことが好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
縦マルチ化するには、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかけるなどの方法がよい。なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
なお、上述した第1、第2の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;HeNeレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、HeCdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、熱現像画像記録材料に走査されるときの該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像画像記録材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像画像記録材料毎に最適な値に設定することができる。
〔現像条件〕
本発明において、現像条件は使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において、像様に露光した熱現像画像記録材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(例えば、約100〜200℃)で十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、熱現像画像記録材料を加熱することにより現像することができる。加熱温度が100℃以下では短時間に十分な画像濃度が得られず、また200℃以上ではバインダーが溶融し、ローラーへの転写など、画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩等から供給される銀イオン(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の一切の供給なしに進行する。
加熱する機器、装置、手段はホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは本発明に用いられる保護層の設けられた熱現像画像記録材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが、均一な加熱を行う上で、また熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
実施例1
《感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
(溶液A1)
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物A(*1)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
(溶液B1)
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
(溶液C1)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
(溶液D1)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
3IrCl6(4×10-5モル/Ag相当) 50.0ml
水で1982mlに仕上げる
(溶液E1)
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(溶液F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(溶液G1)
56%酢酸水溶液 18.0ml
(溶液H1)
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
(*1)化合物A:
HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)m
(m+n=5〜7)
特公昭58−58288号公報に記載の混合撹拌機を用いて、溶液A1に、溶液B1の1/4量及び溶液C1の全量を温度32℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し、核形成を行った。1分後、溶液F1の全量を添加した。この間pAgの調整を、溶液E1を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液B1の3/4量及び溶液D1の全量を、温度32℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間撹拌した後、40℃に昇温し、溶液G1を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液H1を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、乳剤を得た。
この乳剤は平均粒子サイズ0.040μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
《有機銀塩組成物の調製》
(有機銀塩組成物1−1の調製)
図1に示すような装置を使って有機銀塩組成物1−1を調製した。タンク11の中で有機酸Aとしてステァリン酸(St)0.3モル、純水1710ml、5モル/L濃度のKOH水溶液を有機酸Aのモル数に対して90モル%分混合し、80℃にて60分間反応させて有機酸アルカリ溶液(A)を得た。タンク12の中に1モル/Lの硝酸銀水溶液を有機酸Aのモル数に対して89モル%分となるように第1銀イオン含有溶液を用意し、10℃にて保温した。
タンク16の中で有機酸Bとしてベヘン酸(Bhe)0.7モル、純水3990ml、5モル/L濃度のKOH水溶液を有機酸Bのモル数に対して94モル%分混合し、80℃にて60分間反応させて有機酸アルカリ溶液(B)を得た。タンク17の中に1モル/Lの硝酸銀水溶液を有機酸Bのモル数に対して93モル%分となるように第2銀イオン含有溶液を用意し、10℃にて保温した。反応タンク13の中で純水6Lを30℃に保温した。
反応タンク13内の液を十分に撹拌しながら、先の有機酸アルカリ溶液(A)と第1銀イオン含有溶液の添加を行った。添加流量は一定で、それぞれ12分で全量添加される速度とした。このとき、第1銀イオン含有溶液の添加開始後60秒間は銀イオン含有溶液のみが添加されるようにし、その後、有機酸アルカリ溶液(A)の添加を開始した。第1銀イオン含有溶液添加終了後60秒間は、有機酸アルカリ溶液(A)のみが添加されるようにした。有機酸アルカリ溶液(A)の添加終了後、そのまま5分間撹拌した。このとき、分析用サンプルの採取を行った。
その後、切替バルブ18、19を操作して、有機酸アルカリ溶液(B)と第2銀イオン含有溶液の添加を開始した。添加流量は一定で、それぞれ28分で全量添加される速度とした。このとき、第2銀イオン含有溶液の添加開始後60秒間は、銀イオン含有溶液のみが添加されるようにし、そのあと有機酸アルカリ溶液(B)の添加を開始した。第2銀イオン含有溶液添加終了後60秒間は、有機酸アルカリ溶液(B)のみが添加されるようにした。このとき、反応タンク13の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、有機酸アルカリ溶液の添加系の配管は2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が80℃になるよう調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。有機酸アルカリ溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は、撹拌軸を中心として対称的な配置になるように添加ノズルの位置を設定した。添加終了後、そのままの温度で10分間撹拌して有機銀塩組成物を得た。
更に上記感光性ハロゲン化銀乳剤Aの60gを純水100mlに溶解した水溶液を混合し、5分間撹拌した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を透過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。得られた脱水済みケーキを40℃、72時間乾燥して、感光性ハロゲン化銀を含有した有機銀塩組成物1−1の乾燥済み粉体を得た。
(有機銀塩組成物1−2〜1−4の調製)
有機酸、アルカリ、硝酸銀及び添加時間などを表2に示す値に変更する以外は有機銀塩組成物1−1と同様にして、有機銀塩組成物1−2〜1−4を作製した。
Figure 2006078846
以下の方法により、各有機銀塩組成物の分析を行った。
[有機銀塩量の分析]
感光性ハロゲン化銀乳剤Aを混合する前の有機銀塩組成物をサンプリングし、これを濃硫酸、濃硝酸を1:1の割合で混合した。溶液20ml中で加熱溶解した。この溶液について、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)にて銀の定量を行った。ICP−AES装置にはセイコー電子製SPS−4000を用い、測光波長328.068nm、定量は検量線法にて行った。また、有機銀塩Aの定量は途中サンプリングしたものを使用し、最終的に得られた有機銀塩と有機銀塩Aの差より、有機銀塩Bの量を算出した。
[銀塩化されていない有機酸の分析]
以下の前処理により、試料中の有機酸をメチル化し、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)によりメチル化された各有機酸の定量を行った。試料を10mg秤量し、これにエタノール添加後、超音波分散し濾過及び濃縮乾固した。これにメタノール及び4M−HClを添加しリフラックス処理を行い、脂肪酸をメチル化した。反応物に酢酸エチル及び水を加え、有機酸のメチル化体を抽出し濃縮乾固した。乾固物をトルエンに溶かし、内部標準(リグノセリン酸メチル)を添加し、10mlに仕上、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)にて定量を行った。GC/MS装置はアジレントテクノロジー製6890GC/5973MSDを用い、分離カラムにはJ&W社製DB−WAX(0.25mmi.d.×30m)を用いた。GCは以下の条件で作動させた。
インジェクション=250℃
トランスファーライン=280℃
オーブン=初期温度200℃
昇温5℃/min
最終温度280℃(10min保持)
質量分析計は選択イオンモニタリングモード(SIM)で動作させ、m/z=74のピーク強度を定量に用いた。上記処理を行い得られる定量値は有機酸のメチル化体の値なので、これを有機酸の値に換算した。各有機銀塩組成物の分析結果を表3に示す。表3において、割合とは請求項4に相当する全有機酸に対する銀塩化されていない有機酸の割合を指す。
Figure 2006078846
《感光性乳剤分散液A−1の調製》
前記表1に記載の例示化合物P−9の7.3gを、メチルエチルケトンの728.5gに溶解し、VMA−GETZMANN社製のディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、上記ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩1−1の250gを徐々に添加し、十分に混合することにより予備分散液A−1を調製した。
上記予備分散液A−1をポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製 トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/secにて分散を行い、感光性乳剤分散液A−1を調製した。
《感光性乳剤分散液A−2〜A−4の調製》
上記感光性乳剤分散液A−1の調製において、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物1−1に代えて、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物1−2〜1−4をそれぞれ用いた以外は同様にして、感光性乳剤分散液A−2〜A−4を調製した。
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色した175μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片方の面に、0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを、乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更にもう一方の面に、同様に0.5kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した後、その上に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを、乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群からなるフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃にて15分熱処理を行った。
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)の270g、界面活性剤(UL−1)の0.6g及びメチルセルロースの0.5gを混合した。更にシリカ粒子(サイロイド350:富士シリシア社製)の1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間の分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて、これを下引塗布液Aとした。
(下引塗布液B)
下記コロイド状酸化錫分散液の37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)の3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%)の共重合体ラテックス液(固形分30%)の14.8gと界面活性剤(UL−1)の0.1gとを混合し、水で1000mlに仕上げ、これを下引塗布液Bとした。
〈コロイド状酸化錫分散液の調製〉
塩化第2錫水和物の65gを、水/エタノール混合溶液の2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸溜水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸溜水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸溜水を添加し、全量を2000mlとする。更に30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して、容量が470mlになるまで濃縮してコロイド状酸化錫分散液を調製した。
Figure 2006078846
《試料101の作製》
下記の手順に従って、熱現像画像記録材料である試料101を作製した。
〔バック面側塗布〕
メチルエチルケトンの830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB381−20)の84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社製:VitelPE2200B)の4.5gを添加し、溶解した。次に、溶解した液に0.30gの赤外染料1、弗素系活性剤−1の4.5gと弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.5gを添加し、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ粒子(富士シリシア社製:サイリシア450)を75g添加、攪拌してバック面塗布液を調製した。
弗素系活性剤−1:C917O(CH2CH2O)22917
次いで、調製したバック面塗布液を乾燥膜厚が3.5μmになるように押出しコーターを用いて、上記支持体の下引き層bを塗布した面上に塗布、乾燥を行った。乾燥温度100℃で、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
Figure 2006078846
〔感光性層面側の塗布〕
(各添加液の調製)
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムを、メタノール4.97gに溶解して安定剤液を調製した。
〈赤外増感色素液Aの調製〉
19.2mgの赤外増感色素−1、1.488gの2−クロロ−安息香酸、2.779gの安定剤−2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールを、31.3mlのメチルエチルケトンに暗所にて溶解し、赤外増感色素液Aを調製した。
〈添加液aの調製〉
現像剤としてRED−12を27.98g、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1を、メチルエチルケトンの110gに溶解し、添加液aとした。
〈添加液bの調製〉
3.56gのカブリ防止剤−2、3.43gのフタラジンを、メチルエチルケトン40.9gに溶解し、添加液bとした。
(感光性層塗布液A−1の調製)
不活性気体雰囲気下(窒素97%)で、50gの前記感光性乳剤分散液A−1及び15.11gのメチルエチルケトンを攪拌しながら21℃に保温し、カブリ防止剤−1(10%メタノール溶液)を390μl加え、1時間攪拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)を494μl添加して20分攪拌した。続いて、安定剤液167μlを添加して10分間攪拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間攪拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分攪拌した。13℃に保温したまま、バインダー樹脂としてポリマー(表1に記載の例示化合物P−9)を13.31g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4質量%メチルエチルケトン溶液)1.084gを添加して15分間攪拌した。更に攪拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300(モーベイ社製の脂肪族イソシアネート 10%メチルエチルケトン溶液)、4.27gの添加液bを順次添加して、攪拌することにより感光性層塗布液A−1を得た。
Figure 2006078846
(表面保護層塗布液の調製)
865gのメチルエチルケトンを撹拌しながら、セルロースアセテートブチレート(CAB171−15:前出)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製:パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.0g、弗素系活性剤(ジェムコ社製:エフトップEF−105)1.0gを添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液の30gを添加、攪拌して、表面保護層塗布液を調製した。
〈マット剤分散液の調製〉
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイリシア320)5gを添加し、ディゾルバ型ホモジナイザにて8000rpmで30分分散し、マット剤分散液を調製した。
(塗布)
上記調製した感光性層塗布液A−1と表面保護層塗布液とを、公知のエクストルージョン型コーターを用いて、同時重層塗布した。塗布は感光性層が塗布銀量1.7g/m2、表面保護層が乾燥膜厚で2.5μmとなるように行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行い、試料101を作製した。
《試料102〜104の作製》
上記試料101の作製において、感光性層塗布液A−1の調製に用いた感光性乳剤分散液の種類をA−2〜A−4に変更した以外は同様にして、試料102〜104を作製した。
《熱現像画像記録材料の評価》
上記作製した試料101〜104について、下記の方法に従って各種評価を行った。
(即写真性能の評価)
試料を熱現像画像記録材料の乳剤面側から、波長810nmの半導体レーザーを有するレーザー感光計を用いて露光し、その後ヒートドラムを有する自動現像機を用いて熱現像画像記録材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、123℃で8秒熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。得られた画像のカブリ及び感度を測定した。光学濃度はコニカミノルタ社製:デンシトメータPDA−65にて測定した。
カブリ:未露光部分のビジュアルの透過濃度(前出:PDA−65で小数点以下3桁まで)を10点測定し、その平均値をカブリとした。
感度:未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数として求め、試料101を100とする相対値で示した。
(色調の評価)
色調の評価は露光現像後、濃度1.0付近の画像の色調を目視で5段階に評価した。色調は標準として許容されている色調見本のレベルを5、微かに劣るレベルを4、実質的に問題のないレベルを3、茶色がやや強く劣るレベルを2、茶色がかなり強く問題のレベルを1として評価した。
(生保存性の評価)
作製した各試料を2組に分け、それぞれを湿度55%の暗室下で、厚さ25μmアルミ包装袋に密封し、25℃、55℃の恒温箱に3日間保存した。その後、即写真性能評価と同様の処理を行って、両者のカブリ及び感度を測定した。25℃、55℃で保存した熱現像画像記録材料のカブリ及び感度の差(Δカブリ、Δ感度)により各試料の生保存性を評価した。
(画像保存性)
露光現像した試料を1万ルックスのシャーカステン上に放置し、10時間後の色調を評価した。
結果を表4に示す。
Figure 2006078846
表4より明らかなように、本発明の熱現像画像記録材料は、本実施例の8秒という迅速処理条件においても写真性能が良好で、生保存性、画像保存性に優れていることがわかる。
実施例2
(有機銀塩組成物2−1〜2−5の調製)
有機酸、アルカリ、硝酸銀及び添加時間などを表5に示す値に変更する以外は有機銀塩組成物1−1と同様にして、有機銀塩組成物2−1〜2−5を作製した。
Figure 2006078846
各有機銀塩組成物の分析結果を表6に示す。表6中の割合は表3中のそれと同じである。
Figure 2006078846
《感光性乳剤分散液B−1〜B−5の調製》
実施例1の感光性乳剤分散液A−1の調製において、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物1−1に代えて、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物2−1〜2−5をそれぞれ用いた以外は感光性乳剤分散液A−1と同様にして、感光性乳剤分散液B−1〜B−5を調製した。
《試料201〜205の作製》
実施例1の試料101の作製において、感光性層塗布液A−1の調製に用いた感光性乳剤分散液の種類をB−1〜B−5に変更した以外は試料101と同様にして、試料201〜205を作製した。
《熱現像画像記録材料の評価》
上記作製した試料201〜205について、即写真性能、生保存性、画像保存性の評価を行った。なお、感度の評価は試料201を100とする相対値で示した。結果を表7に示す。
Figure 2006078846
表7より明らかなように、本発明の熱現像画像記録材料は、本実施例の8秒という迅速処理条件においても写真性能が良好で、生保存性、画像保存性に優れていることがわかる。
実施例3
(有機銀塩組成物3−1〜3−5の調製)
有機酸、アルカリ、硝酸銀及び添加時間などを表8に示す値に変更する以外は有機銀塩組成物1−1と同様にして、有機銀塩組成物3−1〜3−5を作製した。
Figure 2006078846
各有機銀塩組成物の分析結果を表9に示す。表9中の割合は表3中のそれと同じである。
Figure 2006078846
《感光性乳剤分散液C−1〜C−5の調製》
実施例1の感光性乳剤分散液A−1の調製において、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物1−1に代えて、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物3−1〜3−5をそれぞれ用いた以外は感光性乳剤分散液A−1と同様にして、感光性乳剤分散液C−1〜C−5を調製した。
《試料301〜305の作製》
実施例1の試料101の作製において、感光性層塗布液A−1の調製に用いた感光性乳剤分散液の種類をC−1〜C−5に変更した以外は試料101と同様にして、試料301〜305を作製した。
《熱現像画像記録材料の評価》
上記作製した試料301〜305について、即写真性能、生保存性、画像保存性の評価を行った。なお、感度の評価は試料301を100とする相対値で示した。結果を表10に示す。
Figure 2006078846
表10より明らかなように、本発明の熱現像画像記録材料は、本実施例の8秒という迅速処理条件においても写真性能が良好で、生保存性、画像保存性に優れていることがわかる。
実施例4
(有機銀塩組成物4−1〜4−6の調製)
有機酸、アルカリ、硝酸銀及び添加時間などを表11に示す値に変更する以外は有機銀塩組成物1−1と同様にして、有機銀塩組成物4−1〜4−6を作製した。
Figure 2006078846
各有機銀塩組成物のDSC分析結果を表12に示す。
[DSC測定]
パーキンエルマー社製DSC−7を用い、試料に対して10℃/minの条件で0℃から200℃まで昇温(第1スキャン)し、次いで200℃で1分間放置後、10℃/minの条件で0℃まで降温し、0℃で1分間放置後、10℃/minの条件で200℃まで昇温(第2スキャン)し、それぞれで吸熱ピークを求めた。
Figure 2006078846
《感光性乳剤分散液D−1〜D−6の調製》
実施例1の感光性乳剤分散液A−1の調製において、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物1−1に代えて、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩組成物4−1〜4−6をそれぞれ用いた以外は感光性乳剤分散液A−1と同様にして、感光性乳剤分散液D−1〜D−6を調製した。
《試料401〜406の作製》
実施例1の試料101の作製において、感光性層塗布液A−1の調製に用いた感光性乳剤分散液の種類をD−1〜D−6に変更した以外は試料101と同様にして、試料401〜406を作製した。
《熱現像画像記録材料の評価》
上記作製した試料401〜406について、即写真性能、生保存性、画像保存性の評価を行った。なお、感度の評価は試料401を100とする相対値で示した。結果を表13に示す。
Figure 2006078846
表13より明らかなように、本発明の熱現像画像記録材料は、本実施例の8秒という迅速処理条件においても写真性能が良好で、生保存性、画像保存性に優れていることがわかる。
有機銀塩組成物の製造装置の構成図である。
符号の説明
11 添加液1用タンク
12 添加液2用タンク
13 反応タンク
14 流量計
15 ポンプ
16 添加液3用タンク
17 添加液4用タンク
18、19 切替バルブ

Claims (12)

  1. 少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された熱現像画像記録材料に用いられる有機銀塩組成物であって、該有機銀塩組成物中の銀塩化されている有機酸における低融点の有機酸の占める割合が10モル%以上80モル%以下であり、銀塩化されていない有機酸における低融点の有機酸の占める割合が0モル%以上30モル%以下であることを特徴とする有機銀塩組成物。
  2. 前記銀塩化されている有機酸における低融点の有機酸の占める割合が10モル%以上50モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機銀塩組成物。
  3. 前記銀塩化されていない有機酸における低融点の有機酸の占める割合が0モル%以上10モル%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機銀塩組成物。
  4. 前記銀塩化されている有機酸と銀塩化されていない有機酸の合計に対する銀塩化されていない有機酸の占める割合が3モル%以上10モル%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物。
  5. 少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された熱現像画像記録材料に用いられる有機銀塩組成物であって、示差走査熱量計(DSC)による空容器をリファレンスとし、0〜200℃まで10℃/minで昇温するとき、有機酸に由来するピークトップの位置が65℃以上95℃以内の範囲に存在し、有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置が95℃以上120℃以内の範囲に存在することを特徴とする有機銀塩組成物。
  6. 少なくとも2種類の融点の異なる有機酸から作製された熱現像画像記録材料に用いられる有機銀塩組成物であって、示差走査熱量計(DSC)による空容器をリファレンスとし、0〜200℃まで10℃/minで昇温し、10℃/minで0℃まで降温し、再び200℃まで10℃/minで昇温するとき、1回目の昇温時の有機酸に由来するピークトップの位置が65℃以上95℃以内の範囲に存在し、2回目の昇温時の有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置が1回目の昇温時の有機銀塩に由来する最も低温側のピークトップの位置より5℃以上50℃以内の範囲で高いことを特徴とする有機銀塩組成物。
  7. 少なくとも2種類の融点の異なる有機酸アルカリ金属塩の溶液と銀イオン含有溶液を混合することにより形成される有機銀塩組成物の製造方法において(1)低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=10:90〜80:20モル%の範囲になるように各々別々に準備し、(2)アルカリ金属塩で中和されていない低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=0:100〜30:70モル%の範囲になるよう各々別々にアルカリ金属塩で中和して低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)のアルカリ金属塩溶液を調製し、(3)低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)のアルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液を混合する過程を経ることを特徴とする有機銀塩組成物の製造方法。
  8. 前記(1)に記載の低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=10:90〜50:50モル%であることを特徴とする請求項7に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
  9. 前記(2)に記載のアルカリ金属塩で中和されていない低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の割合がA:B=0:100〜10:90モル%であることを特徴とする請求項7または8に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
  10. 前記低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)の合計量に対して各々中和に使用するアルカリ金属塩の合計量が90モル%以上97モル%以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
  11. 前記(3)に記載の低融点の有機酸(A)と高融点の有機酸(B)のアルカリ金属塩溶液と銀イオン含有溶液の混合が低融点の有機酸(A)のアルカリ金属塩と銀イオン含有溶液との混合を先に行うことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物の製造方法。
  12. 支持体上に少なくとも各1種類以上の感光性ハロゲン化銀、銀イオンを還元できる還元剤、バインダー及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機銀塩組成物を含有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
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