以下に、本発明の構成要素について説明する。
〔有機銀塩〕
本発明において、銀画像形成のための銀イオン供給源としての有機銀塩としては、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特にこの中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸の銀塩、及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなリサーチ・ディスクロージャー(以下、単にRDともいう)17029及び29963に記載された有機、または無機の錯体も好ましい。これら好適な銀塩の例としては、以下のものが挙げられる。
有機酸の銀塩、例えば、没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩;銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩、例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩;アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩ないし錯体、例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸)の反応生成物の銀塩ないし錯体;チオン類の銀塩または錯体、例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩ないし錯体;イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;銀メルカプチド類等を挙げることができる。これらの中、特に好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀等の長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸の銀塩が挙げられる。
また、本発明においては有機銀塩が2種以上混合されていることが現像性を上げ高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀等を混合して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
本発明に係る上記の有機銀塩は種々の形状のものを使用できるが、平板状の粒子が好ましい。特に、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子であり、且つ、最大面積を有する2枚のほぼ平行に相対する面(主平面)の形状異方性を小さくして感光層中での充填率を上げるため、主平面方向から計測される該平板状有機銀塩粒子の針状比率の平均値が1.1以上、10.0未満である粒子が好ましい。尚、更に好ましい針状比率は1.1以上5.0未満である。
また、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子であるとは、前記平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の50%以上を占めることを表す。更に、本発明に係る有機銀塩は、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
アスペクト比3以上の平板状粒子とは粒径と厚さの比、下記式で表されるいわゆるアスペクト比(ARと略す)が3以上の粒子である。
AR=粒径(μm)/厚さ(μm)
平板状有機銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは、3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由としては、アスペクト比が低すぎると、有機銀塩粒子が最密されやすくなり、また、アスペクト比があまりに高い場合には、有機銀塩粒子同士が重なりやすく、また、くっついた状態で分散されやすくなるので光散乱等が起きやすくなり、その結果として感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記記載の範囲が好ましい。
上記記載の有機銀塩粒子の粒径を測定するには、分散後の有機銀塩を希釈してカーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子製、2000FX型、直接倍率5000倍)により、写真撮影を行い、粒径を測定する。尚、平均粒径を求める場合は、スキャナにてネガ画像をデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、平均粒径を算出する。
上記記載の有機銀塩粒子の厚さを求めるには、下記に示すようなTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた方法により算出する。
先ず、支持体上に塗布された画像形成層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。作製された超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し液体窒素により−130℃以下に冷却しながら透過型電子顕微鏡(以下TEMと称す)を用いて、倍率5,000倍ないし40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラ等に素速く記録する。この際、観察される視野としては切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
カーボン膜としては極薄いコロジオン、ホルムバール等有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または、上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行うことが好ましい。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナ等でデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調等を必要に応じて施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し2値化処理によって有機銀塩粒子に相当する箇所を抽出する。
平均厚さを求めるには、上記抽出した有機銀塩粒子の厚さを300個以上を適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
また、平板状有機銀塩粒子の針状比率の平均値は下記の方法により求められる。
先ず、平板状有機銀塩粒子を含む感光層を光感光層バインダーを溶解可能な有機溶媒にて膨潤させて支持体上から剥離し、上記溶媒を用いた超音波洗浄、遠心分離、上澄み除去を5回繰り返す。尚、上記工程はセーフライト下に実施する。続いて、有機銀固形分濃度が0.01%になるようにMEK(メチルエチルケトン)にて希釈し、超音波分散した後、グロー放電により親水化されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に滴下し乾燥させる。粒子が搭載されたフィルムは真空蒸着装置にてフィルム面に対して30°の角度から厚さとして3nmのPt−Cを電子ビームにより斜め蒸着した後、観察に使用することが好ましい。
その他、電子顕微鏡観察技法、及び試料作製技法の詳細については「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)をそれぞれ参考にすることができる。
作製された試料は電界放射型走査電子顕微鏡(以下FE−SEMと称す)を用いて加速電圧2kVないし4kVにて倍率として5,000〜20,000倍にて二次電子像を観察し、適当な記録媒体への画像保存を行う。
上記処理のためには電子顕微鏡本体からの画像信号をAD変換し直接メモリ上にデジタル情報として記録可能な装置を用いるのが便利であるが、ポラロイドフィルム等に記録されたアナログ画像もスキャナ等でデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調等を必要に応じ施すことにより使用することができる。
適当な媒体に記録された画像は、画像1枚を少なくとも1024画素×1024画素、好ましくは2048画素×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行うことが好ましい。
上記記載の画像処理の手順としては、先ず、ヒストグラムを作製し2値化処理によって、アスペクト比3以上の有機銀塩粒子に相当する箇所を抽出する。やむを得ず凝集した粒子は適当なアルゴリズムまたはマニュアル操作にて切断し輪郭抽出を行う。その後、各粒子の最大長(MX LNG)及び粒子の最小幅(WIDTH)を少なくとも1000個の粒子に関して各々測定し、各粒子毎に下記式にて針状比率を求める。ここで、粒子の最大長とは粒子内の2点を直線で結んだ時の最大値をいう。粒子の最小幅とは粒子に外接する2本の平行線を引いた時、平行線の距離が最小値になる時の値をいう。
針状比率=(MX LNG)÷(WIDTH)
その後、計測された全粒子に関する針状比率の平均値を算出する。上記手順で計測を行う際には予め、標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元ひずみの補正を十分に行うことが好ましい。標準試料としては米国ダウケミカル社より市販されるユニフォーム・ラテックス・パーティクルス(DULP)が適当であり、0.1ないし0.3μmの粒径に対して10%未満の変動係数を有するポリスチレン粒子が好ましく、具体的には粒径0.212μm、標準偏差0.0029μmというロットが入手可能である。
画像処理技術の詳細は「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては上記操作が可能なものであれば特に限定はされないが、一例としてニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
前記の形状を有する有機銀塩粒子を得る方法としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態等を良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること等が有効である。
本発明に係る平板状有機銀塩粒子は必要に応じバインダーや界面活性剤等と共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザ等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的撹拌機や高速回転遠心放射型撹拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル等の転動ミルや、媒体撹拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグ等に衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等様々なタイプを用いることができる。
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカケイ素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを以下においてジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
平板状有機銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でも、ジルコニアを用いることが好ましい。
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀塩質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザを分散手段として用いる場合には、29.42MPa〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい運転条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合には、周速が6m/秒〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
また、本発明に係る熱現像感光材料において好ましい態様は、当該材料の支持体面と垂直な断面を電子顕微鏡観察した時、0.025μm2未満の投影面積を示す有機銀塩粒子の割合が有機銀塩粒子の全投影面積の70%以上を示し、且つ、0.2μm2以上の投影面積を示す粒子の割合が有機銀塩粒子の全投影面積の10%以下である特徴を有する有機銀塩、更には感光性ハロゲン化銀を含有する感光性乳剤を塗布してなるものである。この様な場合、感光性乳剤中において有機銀塩粒子の凝集が少なく、且つ、均一に分布した状態を得ることができる。
この様な特徴を有する感光性乳剤を作製する条件としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態等を良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機または高圧ホモジナイザ等で分散すること、その際バインダーの使用量(濃度)としては有機銀塩質量の0.1〜10%とすること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないこと等に加えて、調液時にはディゾルバを使用し周速2.0m/秒以上で撹拌すること等が好ましい条件として挙げられる。
上記記載のような特定の投影面積値を有する有機銀塩粒子の投影面積や全投影面積に占める割合等は、上記記載の平板状粒子の平均厚さを求める箇所で記載したと同様に、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いた方法により、有機銀塩粒子に相当する箇所を抽出する。
この際に凝集した有機銀塩粒子は1つの粒子と見なして処理し各粒子の面積(AREA)を求める。同様にして少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm2未満、B:0.025μm2以上、0.2μm2未満、C:0.2μm2以上の3つの群に分類する。本発明の感光材料は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、且つC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものであることが好ましい。
上記手順で計測を行う際には予め、標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元ひずみの補正を上述した針状比率の平均値を算出する際に行った方法を用いることが好ましい。
画像処理技術の詳細は前記と同様「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては上記操作が可能なのであれば特に限定はされないが、やはり一例として前記と同様ニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
本発明に係る有機銀塩粒子は、単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここでいう単分散度とは、下記式で定義される。
単分散度={(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)}×100
上記記載の有機銀塩の平均粒径(円相当径)は0.01〜0.3μmが好ましく、更に好ましくは、0.02〜0.2μmである。尚、平均粒径(円相当径)とは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
本発明においては感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.3g以上、1.5g以下であることが好ましい。この範囲にすることで医用画像として用いる場合は、好ましい画像が得られる。1m2当たり0.3g未満では画像濃度が低下してしまうことがある。また、1m2当たり1.5gを越えるとカブリが増加したり、PS版への焼き付け時に感度低下を起こしてしまうことがある。
〔ハロゲン化銀〕
本発明に係るハロゲン化銀(以下、感光性ハロゲン化銀粒子またはハロゲン化銀粒子ともいう)について説明する。尚、本発明に係るハロゲン化銀とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収し得て、または、人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収し得て、且つ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内のいずれかの領域の光を吸収した時に当該ハロゲン化銀結晶内及び/または結晶表面において物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤(ハロゲン化銀乳剤ともいう)として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製するいわゆるコントロールドダブルジェット法が好ましい。ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
粒子形成は通常、ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、また核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールができるので好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法を行う場合には、先ず銀塩水溶液とハライド水溶液をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させ核(種粒子)生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等のもとで銀塩水溶液とハライド水溶液を供給しつつ粒子成長させる粒子成長工程によりハロゲン化銀粒子を調製する。粒子形成後、脱塩工程により不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等公知の脱塩法により除くことで所望のハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
本発明において、ハロゲン化銀粒子の粒子サイズは単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる粒子サイズの変動係数が30%以下をいう。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
粒子サイズの変動係数%=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、これらの中、特に、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以上、100以下、より好ましくは2以上、50以下である。これらについては米国特許第5,264,337号、同5,314,798号、同5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好まし、80%以上であることが特に好ましい。尚、ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。
本発明において低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものが好ましく、より好ましくは2,000〜40,000であり、特に好ましくは5,000〜25,000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより好ましい。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に下記の一般式で表される化合物を用いることが好ましい。
一般式
YO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)p(CH2CH2O)nY
式中、Yは水素原子、−SO3M、または−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基にて置換されたアンモニウム基を表し、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは各々0〜50を表し、pは1〜100を表す。
上記の一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられてきたものであり、消泡剤として用いる技術は例えば特開昭44−9497号に記載されている。上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は核形成時の消泡剤としても機能する。
上記一般式で表される化合物は銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%で用いる。
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくはハライド水溶液もしくは両方の水溶液に0.01〜2.0質量%で添加して用いることである。また、上記一般式で表される化合物は核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。上記一般式で表される化合物は粉末で添加しても、メタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
尚、核形成時の温度は通常5〜60℃、好ましくは15〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を上げ、核形成終了時の温度が40℃の様な場合)やその逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は3.5モル/L以下が好ましく、更には0.01〜2.5モル/Lの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1L当たり1.5×10-3モル/分〜3.0×10-1モル/分が好ましく、更に好ましくは3.0×10-3モル/分〜8.0×10-2モル/分である。
核形成時のpHは通常1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げてしまうので好ましくはpH2〜6である。また、核形成時のpBrは通常0.05〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.5〜2.0である。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子はいかなる方法で画像形成層に添加されてもよく、この時ハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(有機銀塩)に近接するように配置するのが好ましい。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを有機銀塩粒子を調製するための溶液に添加するのが、ハロゲン化銀調製工程と有機銀塩粒子調製工程を分離して扱えるので製造コントロール上も好ましいが、英国特許第1,447,454号に記載されている様に、有機銀塩粒子を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を有機銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで有機銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させることもできる。
また、有機銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、有機銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製することも可能である。即ち、予め調製された有機銀塩の溶液もしくは分散液、または有機銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
ハロゲン化銀形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については米国特許第4,009,039号、同3,457,075号、同4,003,749号、英国特許第1,498,956号、及び特開昭53−27027号、同53−25420号に詳説される金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム等の無機ハロゲン化物、例えばトリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様なオニウムハライド類、例えば、ヨードフォルム、ブロモフォルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等のハロゲン化炭化水素類、N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド等のN−ハロゲン化合物、その他例えば、塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等がある。この様にハロゲン化銀を有機酸銀塩とハロゲンイオンとの反応により有機酸銀塩中の銀の一部または全部をハロゲン化銀に変換することによって調製することもできる。また、別途調製したハロゲン化銀にこれらの有機銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、有機銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、有機銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル使用するのが好ましく、0.03〜0.5モル使用するのがより好ましい。
本発明に用いられるハロゲン化銀には、元素周期律表の6族〜11族に属する遷移金属のイオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt及びAuが好ましい。これらは1種類でも同種或いは異種の金属錯体を2種以上併用してもよい。これらの金属イオンは金属塩をそのままハロゲン化銀に導入してもよいが、金属錯体または錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。含有率は銀1モルに対し1×10-9モル〜1×10-2モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-4の範囲がより好ましい。本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンは下記一般式で表されるものが好ましい。
一般式〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、核形成、成長の段階で添加するのがより好ましく、特に好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に亘って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩水溶液とハライド水溶液が同時に混合される時第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液をハライド水溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、熱現像感光材料においては脱塩しないで用いることもできる。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には化学増感を施すことができる。例えば、特開2001−249428号、同2001−249426号に開示されている方法等により、硫黄等のカルコゲン原子を有する化合物や金イオン等の貴金属イオンを放出する貴金属化合物を用いて化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。本発明においては上記のカルコゲン原子を有する化合物による化学増感と貴金属化合物を用いる化学増感を併用することが特に好ましい。
本発明においては、以下に示すカルコゲン原子を含有する化合物により化学増感されているのが好ましい。
これら有機増感剤として有用なカルコゲン原子を含有する化合物はハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号等に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうちカルコゲン原子が炭素原子またはリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。特に好ましいのは特開2002−250984号に開示されている一般式(1−1)、一般式(1−2)の化合物である。
有機増感剤としてのカルコゲン原子を含有する化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境等により変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-8〜1×10-2モルが好ましく、より好ましくは1×10-7〜1×10-3モルである。本発明における化学増感環境としては特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀または銀核を消滅、或いはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、また特に銀核を酸化しうる酸化剤の共存下においてカルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましく、該増感条件として、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、また、温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
従って、本発明の熱現像感光材料においては、前記感光性ハロゲン化銀が、該粒子上の銀核を酸化しうる酸化剤の共存下においてカルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いて温度30℃以下において化学増感を施され、且つ、有機銀塩と混合して分散され脱水及び乾燥された感光性ハロゲン化銀乳剤を用いることが好ましい。
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。本発明において用いられる分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。本発明に用いられる含窒素複素環化合物において、複素環としてはピラゾール環、ピリミジン環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,2,3,4−テトラゾール環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール環、ジアザインデン環、トリアザインデン環、ペンタアザインデン環等を挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えばフタラジン環、ベンズイミダゾール環、インダゾール環、ベンズチアゾール環等も適用できる。
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、且つ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えばヒドロキシトリアザインデン、ヒドロキシテトラアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
複素環にはヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては例えばアルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基等を有してもよい。
これら含複素環化合物の添加量はハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、おおよその量はハロゲン化銀1モル当たりの量で1×10-6モル〜1モルの範囲であり、好ましくは1×10-4モル〜1×10-1モルの範囲である。
本発明に係るハロゲン化銀粒子には、前述のように、金イオン等の貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。
また、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物としてはアスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
本発明に係る化学増感を施されるハロゲン化銀は、有機銀塩の存在下で形成されたものでも、有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀粒子には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばRD17643IV−A項(1978年12月p.23)、同18431X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザイメージャーやスキャナ光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核等の塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核等の酸性核を含む。
本発明においては特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることが好ましい。本発明において、好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば、米国特許第4,536,473号、同4,515,888号、同4,959,294号等に開示されている赤外分光増感色素が挙げられる。
本発明において用いられる赤外分光増感色素については、ベンズアゾール環のベンゼン環上にスルフィニル基が置換されていることを特徴とした長鎖のポリメチン色素が特に好ましい。
上記の赤外増感色素は、例えばエフ・エム・ハーマー著、The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻、The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊、New York 1964年)に記載の方法によって容易に合成することができる。
これらの赤外増感色素の添加時期はハロゲン化銀調製後のどの時点でもよく、例えば、溶剤に添加して、或いは、微粒子状に分散したいわゆる固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/有機銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。また、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成することができる。
本発明において、上記の分光増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。
本発明の熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子または有機銀塩粒子を含有する乳剤は、増感色素と共に、それ自身分光増感作用を持たない色素、或いは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質はRD17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、或いは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、本発明においては、強色増感剤として下記の一般式で表される複素芳香族メルカプト化合物またはメルカプト誘導体化合物が好ましい。
一般式 Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香族複素環または芳香族縮合環である。好ましい芳香族複素環または芳香族縮合環としてはベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンズチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンズセレナゾール、ベンズテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリン等が挙げられる。しかしながら、他の芳香族複素環も含まれる。
尚、有機酸銀塩またはハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させた時に実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も本発明に含まれる。特に、下記の一般式で表されるメルカプト誘導体化合物が好ましい例として挙げられる。
一般式 Ar−S−S−Ar
式中のArは上記の一般式で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
上記の芳香族複素環または芳香族縮合環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有しうる。
本発明においては、上記の強色増感剤の他に、特開2001−330918号に開示されている一般式(1)で表される化合物とヘテロ原子を含む大環状化合物を強色増感剤として使用できる。
強色増感剤は有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む乳剤層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルの範囲で用いるのが好ましい。銀1モル当たり0.01〜0.5モルの範囲で用いるのが特に好ましい。
〔還元剤〕
本発明においては、還元剤(銀イオン還元剤)として、特に、還元剤の少なくとも一種がビスフェノール誘導体である化合物を単独または他の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いる。本発明に係る熱現像感光材料において、熱現像感光材料の保存中のカブリ発生等による性能劣化及び熱現像後の銀画像の保存における色調劣化等が予想外に抑制することができる。
本発明に好ましく用いられる還元剤としては、前記一般式(A−1)、より好ましくは前記一般式(A−2)の還元剤、一般式(A−4)または一般式(A−5)の化合物が用いられる。
一般式(A−1)中、Zは炭素原子と共に3〜10員環を構成するのに必要な原子群を表し、Zは3〜10員の非芳香族環または5〜6員の芳香族環であるのが好ましく、3〜10員の非芳香族環であるのがより好ましい。該環として具体的に3員環としてはシクロプロピル、アジリジル、オキシラニル、4員環としてはシクロブチル、シクロブテニル、オキセタニル、アゼチジニル、5員環としてはシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、テトラヒドロチエニル、6員環としてはシクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、ピペリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロチオピラニル、ノルカラニル、ノルピナニル、ノルボルニル、7員環としてはシクロヘプチル、シクロヘプチニル、シクロヘプタジエニル、8員環としてはシクロオクタニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、9員環としてはシクロノナニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロノナトリエニル、10員環としてはシクロデカニル、シクロデケニル、シクロデカジエニル、シクロデカトリエニル等の各基が挙げられる。
好ましくは3〜6員環であり、より好ましくは5〜6員環であり、最も好ましくは6員環であり、その中でもヘテロ原子を含まない炭化水素環が好ましい。該環はスピロ原子を通じて他の環とスピロ結合を形成してもよいし、芳香族環を含む他の環と如何様にも縮環してよい。また環上には任意の置換基を有することができる。前記炭化水素環は−C=C−や−C≡C−を含むアルケニル構造やアルキニル構造を含む炭化水素環であることが特に好ましい。
該置換基として具体的には、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、アルケニル基(例えば、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、ウレイド基(例えば、メチルアミノカルボニルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−モルホリノカルボニル基等)、スルファモイル基(スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルフォリノスルファモイル基等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基等)、アルキルアミノ基(例えばアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等)、スルホ基、ホスフォノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルホニルアミノカルボニル基、エタンスルホニルアミノカルボニル基等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセトアミドスルホニル基、メトキシアセトアミドスルホニル基等)、アルキニルアミノカルボニル基(例えば、アセトアミドカルボニル基、メトキシアセトアミドカルボニル基等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(例えば、メタンスルフィニルアミノカルボニル基、エタンスルフィニルアミノカルボニル基等)等が挙げられる。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なっていてもよい。特に好ましい置換基はアルキル基である。
次に、Zが5〜6員の芳香族環状基である場合について説明する。芳香族炭素環としては、単環でも縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)が挙げられるが、好ましく用いられるのは、ベンゼン環である。また、芳香族ヘテロ環として好ましくは縮合環を有していてもよい5〜6員の芳香族ヘテロ環である。更に好ましくは縮合環を有していてもよい5員の芳香族ヘテロ環である。この様なヘテロ環として、好ましくはイミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾールであり、特に好ましくはチオフェン、フラン、チアゾールである。上記環は芳香族環を含む他の環と如何様にも縮環してよい。また環上には任意の置換基を有することができる。該置換基としては前述した3〜10員の非芳香族環状基上の置換基と同じものを挙げることができる。Zが5〜6員の芳香族環状基である場合、最も好ましいのはZが5員の芳香族へテロ環基である。
R1及びR2は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表すが、アルキル基として具体的には炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−メチルシクロヘキシル基等、アルケニル基としては、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基等、アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基等が挙げられる。R1として好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。更に好ましくはメチル基、t−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基であり、最も好ましくはt−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基である。R2として好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。更に好ましくは、メチル基、2−ヒドロキシエチル基である。R1及びR2で表されるアリール基として具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。R1及びR2で表される複素環基として具体的にはピリジン基、キノリン基、イソキノリン基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、テトラゾール基等の芳香族ヘテロ環基やピペリジノ基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基等の非芳香族ヘテロ環基が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよく、該置換基としては前述の環上の置換基を挙げることができる。
R1及びR2の最も好ましい組合せはR1が第3級アルキル基(例えばt−ブチル基、1−メチルシクロヘキシル基等)であり、R2が第1級アルキル基(例えばメチル基、2−ヒドロキシエチル基等)である。
RXは水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表すが、アルキル基として具体的には炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−メチルシクロヘキシル基等、アルケニル基としてはエテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1−シクロアルケニル基、2−シクロアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基等が挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。好ましくはRXは水素原子である。
Q0はベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル基、パーフルオロオクチル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルキニル基(プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。またこれらの基は更にこれらの基で置換されていてもよい。n及びmは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはn、m共に0の場合である。
Lは2価の連結基を表すが、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基であり、炭素数は1〜20が好ましく、1〜5がより好ましい。kは0〜1の整数を表すが最も好ましくはk=0の場合である。
一般式(A−2)中、Q1はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Q2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表すが、ハロゲン原子として具体的には塩素、臭素、フッ素、ヨウ素が挙げられる。好ましくはフッ素、塩素、臭素である。アルキル基として具体的には炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、1−メチルシクロヘキシル基等、アルケニル基としては、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1−シクロアルケニル基等、アルキニル基としては、2−シクロアルケニル基、エチニル基、1−プロピニル基等が挙げられる。より好ましくは、メチル基、及びエチル基である。アリール基として具体的にはフェノル基、ナフチル基が挙げられる。ヘテロ環基としてはピリジル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基等の5〜6員環のヘテロ芳香族基が好ましく挙げられる。Gは窒素原子または炭素原子を表すが、好ましくは炭素原子である。ngは0または1を表すが好ましくは1である。
Q1として最も好ましくはメチル基であり。Q2として好ましくは水素原子、またはメチル基であり最も好ましくは水素原子である。
Z2は炭素原子及びGと共に3〜10員の非芳香族環を構成するのに必要な原子群を表すが、該3〜10員の非芳香族環としては、前述の一般式(A−1)におけるものと同義である。
R1、R2、RX、Q0、k、n、及びmは一般式(A−1)におけるものと同義である。
次に本発明に関わる一般式(A−4)または一般式(A−5)で表される、前記還元剤について説明する。
前記一般式(A−4)において、R40は前記一般式(A)を表すが、R43〜R45は水素原子または置換基を表す。R43〜R45が表す置換基としては、例えば、アルキル基、(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロヘキシル等の各基)、アルケニル基(ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソヘキセニル、シクロヘキセニル、ブテニリデン、イソペンチリデン等の各基)、アルキニル基(エチニル、プロピニリデン等の各基)、アリール基(フェニル、ナフチル等の各基)、ヘテロ環基(フリル、チエニル、ピリジル、テトラヒドロフラニル等の各基)等の他、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、スルホニル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、スルホ等の各基が挙げられる。
前記一般式(A)のR43〜R45がいずれとも互いに環を形成しない場合は、R40は少なくとも1つの置換されてもよいエチレン基(2,6−ジメチル−5−ヘプテニル、1,5−ジメチル−4−ヘキセニル等)または置換されてもよいアセチレン基(1−プロピニル等)を含む。
前記一般式(A)のR43〜R45がいずれかと互いに環(フェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル等)を形成する場合、R40はこの環外に少なくとも1つの置換されてもよいエチレン基(ビニル、プロペニル、アクリルオキシ、メタクリルオキシ等)または置換されていてもよいアセチレン基(エチニル、アセチレンカルボニルオキシ等)を含む。
R41、R41′、R42、R42′、X41、X41′は、各々水素原子または置換基を表すが、置換基としてはR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
R41、R41′、R42、R42′としては好ましくはアルキル基であり、具体的にはR43〜R45の説明で挙げたアルキル基の例と同様の基が挙げられる。
前記一般式(A−5)において、R50は、水素原子または置換基を表すが、置換基としては一般式(A−4)のR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。R50として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基であり、更に好ましくは水素原子またはアルキル基である。
R51、R51′、R52、R52′、X51、X51′は、各々水素原子または置換基を表すが、置換基としては、一般式(A−4)のR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
R51、R51′、R52、R52′として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等であり、具体的には、R43〜R45の説明で挙げたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の例と同様の基が挙げられる。
但しR51、R51′、R52、R52′、X51、X51′の少なくとも1つが置換されてもよいエチレン基(ビニル、アリル、メタクリルオキシメチル等)または置換されてもよいアセチレン基(エチニル、プロパルギル、プロパルギルオキシカルボニルオキシメチル等)を含む。
本発明においては、前記一般式(A−1)で表される化合物と下記一般式(A−3)で表される化合物とを併用することが好ましい。併用比率としては〔一般式(A−1)の質量〕:〔一般式(A−3)の質量〕=95:5〜55:45が好ましく、より好ましくは90:10〜60:40である。
前記一般式(A−3)中、X1はカルコゲン原子またはCHRを表す。カルコゲン原子としては、硫黄、セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。CHRにおけるRは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルケニル基を表し、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等であり、アルキル基としては置換、または無置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基等である。
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、一般式(A−1)において記載した置換基を用いることができる。また、置換基が2つ以上ある場合は、同じでも異なっていてもよい。
R3はアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一方は2級または3級のアルキル基である。アルキル基としては置換または無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基等が挙げられる。
アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、例えばアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、(Q0)n及び(Q0)mと飽和環を形成してもよい。R3は、好ましくはいずれも2級または3級のアルキル基であり、炭素数2以上、20以下が好ましい。より好ましくは3級アルキル基である。更に好ましくはt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基であり、最も好ましくは1−メチルシクロヘキシル基である。
R4は水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。ベンゼン環に置換可能な基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、ヘテロ環基等が挙げられる。複数のR3、R4は同じでも異なっていてもよい。
R4は炭素数1〜5が好ましく、更に好ましくは炭素数1〜2である。これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、一般式(A−1)において記載した置換基を用いることができる。R4は好ましくはいずれも炭素数1〜20のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
Q0は一般式(A−1)におけるものと同義である。また、Q0はR3、R4と飽和環を形成してもよい。Q0は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
以下に、本発明の一般式(A−1)〜(A−5)で表される化合物の具体例を列記するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の一般式(A−1)、(A−2)及び(A−3)で表される化合物は従来公知の方法により容易に合成することができる。好ましい合成スキームを一般式(A−1)に相当する場合を例にとり以下に図示する。
即ち、好ましくは2当量のフェノール及び1当量のアルデヒドを無溶媒で、もしくは適当な有機溶媒で溶解または懸濁させ、触媒量の酸を加えて、好ましくは−20〜120℃の温度下で0.5〜60時間反応させることにより好収率で目的とする一般式(A−1)に相当する化合物を得ることができる。一般式(A−2)または(A−3)で表される化合物についても同様である。
有機溶媒として好ましくは、炭化水素系有機溶媒であり、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。好ましくはトルエンである。更に収率の点からは無溶媒で反応させることが最も好ましい。酸触媒としてあらゆる無機酸、有機酸を使用することができるが、濃塩酸、p−トルエンスルホン酸、及びリン酸が好ましく用いられる。触媒量としては対応するアルデヒドに対して0.001〜1.5当量使用することが好ましい。反応温度として好ましくは室温付近(15〜25℃)が好ましく、反応時間としては3〜20時間が好ましい。
本発明の一般式(A−4)(代表として1−66及び1−76の合成スキームを記載する)で表される化合物は、以下の方法により合成することができる。
上記スキームに従い、フェノール誘導体とアルデヒド誘導体を水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中で、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等の触媒を用いて、一般式(A−4)または(A−5)で表される化合物を合成することができる。
銀塩光熱写真ドライイメージング材料が含有する還元剤は、有機銀塩を還元して銀画像を形成するものである。本発明の還元剤と併用することができる還元剤としては、例えば、米国特許3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号の各明細書、RD17029及び29963、及び特開平11−119372号公報、特開2002−62616号公報等に記載されている。
前記一般式(A−1)〜(A−5)で表される化合物を始めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10-2〜10モル、特に好ましくは1×10-2〜1.5モルである。
〔画像の色調〕
次に当該熱現像感光材料を熱現像処理して得られる画像の色調について説明する。
従来のレントゲン写真フィルムのような医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、判読者にとって、より的確な記録画像の診断観察結果が得やすいと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であり、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であると言われているが、より厳密な定量的な議論が出来るように、以下においては、国際照明委員会(CIE)の推奨する表現法に基づき説明する。
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度Dmin及び光学濃度D=1.0における色相角habにより表現できる。すなわち、色相角habは国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間であるL*a*b*色空間の色座標a*、b*を用いて次の式によって求める。
hab=tan-1(b*/a*)
上記色相角に基づく表現法により検討した結果、本発明に係る銀塩光熱写真イメージング材料の現像後の色調は、色相角habの範囲が180度<hab<270度であることが好ましい、更に好ましくは200度<hab<270度、最も好ましくは220度<hab<260度であることが分かった。このことは、特開2002−6463号に開示されている。
なお、従来、光学濃度1.0付近でのCIE 1976(L*u*v*)色空間または(L*a*b*)色空間におけるu*、v*またはa*、b*を特定の数値に調整することにより見た目の色調が好ましい診断画像が得られることが知られており、例えば、特開2000−29164号公報に記載されている。
しかしながら、本発明に係る銀塩光熱写真イメージング材料について、更に鋭意検討の結果、CIE 1976(L*u*v*)色空間または(L*a*b*)色空間において横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に、様々な写真濃度でのu*、v*またはa*、b*をプロットし線形回帰直線を作製した際に、その線形回帰直線を特定の範囲に調整することにより従来の湿式の銀塩感光材料同等以上の診断性を持つことを見いだした。以下において、好ましい条件範囲について述べる。
(1) 光熱写真イメージング材料を熱現像処理後に得られた銀画像の光学濃度0.5、1.0、1.5および最低光学濃度の各濃度を測定し、CIE 1976(L*u*v*)色空間の横軸をu*、縦軸をv*とする二次元座標に、上記各光学濃度でのu*、v*を配置し作製した線形回帰直線の決定係数(重決定)R2が0.998以上1.000以下であることが好ましい。
さらに、当該線形回帰直線の縦軸との交点のv*値が−5以上5以下であること、かつ傾き(v*/u*)が0.7以上2.5以下であることが好ましい。
(2) また、当該イメージング材料の光学濃度0.5、1.0、1.5および最低光学濃度の各濃度を測定し、CIE 1976(L*a*b*)色空間の横軸をa*、縦軸をb*とする二次元座標に、上記各光学濃度でのa*、b*を配置し作製した線形回帰直線の決定係数(重決定)R2が0.998以上1.000以下であることが好ましい。
さらに、当該線形回帰直線の縦軸との交点のb*値が−5以上5以下であること、かつ傾き(b*/a*)が0.7以上2.5以下であることが好ましい。
なお、次に、上述の線形回帰直線の作製法、則ち、CIE 1976色空間におけるu*、v*およびa*、b*の測定法の一例を説明する。
熱現像装置を用いて未露光部、および光学濃度0.5、1.0、1.5を含む4段のウエッジ試料を作製する。このようにして作製したそれぞれのウエッジ濃度部を分光色彩計(例:CM−3600d;ミノルタ株式会社製)で測定しu*、v*またはa*、b*を算出する。その際の測定条件は光源としてF7光源、視野角を10°として透過測定モードで測定を行う。横軸をu*またはa*、縦軸をv*またはb*としたグラフ上に測定したu*、v*またはa*、b*をプロットし線形回帰直線を求め決定係数(重決定)R2、切片および傾きを求める。
次に、上記のような特徴をもつ線形回帰直線を得るための具体的な方法について説明する。
本発明においては、下記の調色剤、現像剤、ハロゲン化銀粒子及び脂肪族カルボン酸銀等の現像反応過程において直接的及び間接的に関与する化合物等の添加量の調整により現像銀形状を最適化し好ましい色調にすることができる。例えば、現像銀形状をデンドライト状にすると青味を帯びる方向になり、フィラメント状にすると黄色味を帯びる方向になる。即ち、このような現像銀形状の性向を考慮して調整できる。
従来、調色剤としてはフタラジノン又はフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類が一般的に使用されている。好適な調色剤の例は、RD17029号、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号、同第4,021,249号明細書に開示されている。
一般式(J)において、R1は水素原子を除く一価の置換基を表す。R1で表される置換基の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアラルキル基であり、例えば、ベンジル、α−メチルベンジル、2−フェニルエチル、ナフチルメチル、(4−メチルフェニル)メチル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシル、等)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル等)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド等)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミド等)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノ等)などが挙げられる。これらの置換基はさらに他の置換基で置換されていてもよい。
R1は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基であり、さらに好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基である。
mは1〜6の整数を表し、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。(R1)mはフタラジン環上に1〜6個のR1がそれぞれ独立に存在することを示し、mが2以上の場合、隣接する2つのR1が脂肪族または芳香族の環を形成してもよい。脂肪族環は、好ましくは3〜8員環であり、より好ましくは5〜6員環である。芳香族環は、好ましくはベンゼンまたはナフタレン環である。脂肪族または芳香族の環は、ヘテロ環であってもよく、好ましくは5〜6員環である。
一般式(J)で表されるフタラジン化合物の製造方法としては、例えば、R.G.ElderField、“Heterocyclic Compounds”、John Wiley and Sons、Vol.1〜9、1950−1967や、A.R.Katritzky、“Comprehensive Heterocyclic Chemistry”、Pergamon Press、1984などに記載されている様に、対応するフタル酸誘導体(フタルアルデヒド、フタル酸無水物、フタル酸エステル等)をヒドラジンと縮合してフタラジン骨格を形成する方法、α,α,α’,α’−テトラクロロ−o−キシレンをヒドラジンと縮合してフタラジンを合成する方法や、TetrahedronLetters、22巻、345頁(1981年)に記載されている様に、アリールアルダジン誘導体を塩化アルミニウムと臭化アルミニウムの混合物と共に溶融条件下に反応させ、環化生成させる方法、特開平11−180961号公報記載の、アルダジン化合物を有機溶媒中で塩化アルミニウム触媒により環化させて合成する方法などが挙げられる。以下に、一般式(J)で表されるフタラジン化合物の具体例を挙げるが、本発明に用いるフタラジン化合物はこれらに限定されるものではない。
一般式(J)で表されるフタラジン化合物の使用量は、銀1mol当たり10-4〜1molであることが好ましく、より好ましくは10-3〜0.3molであり、さら好ましくは10-2〜0.3molである。一般式(J)で表されるフタラジン化合物は、溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化物、オイルプロテクト分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。一般式(J)で表されるフタラジン化合物は、支持体上、感光性ハロゲン化銀および還元可能な銀塩と同一の面であればいずれの層に添加してもよいが、ハロゲン化銀を含む層またはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
このような調色剤の他に、特開平11−288057号公報、EP1134611A2号明細書等に開示されているカプラー及び、下で詳述するロイコ染料を使用して色調を調整することもできる。特に、色調の微調整のためにロイコ染料を用いることが好ましい。
ロイコ染料は、好ましくは80〜200℃の温度で0.5〜30秒間加熱した時に酸化されて着色形態になるいずれの無色または僅かに着色した化合物でよく、銀イオンにより酸化して色素を形成するいずれのロイコ染料を本発明で用いることもできる。pH感受性を有しかつ着色状態に酸化できる化合物は有用である。本発明で使用するのに適した代表的なロイコ染料は特に限定するものではないが、例えば、ビフェノールロイコ染料、フェノールロイコ染料、インドアリニリンロイコ染料、アクリル化アジンロイコ染料、フェノキサジンロイコ染料、フェノジアジンロイコ染料およびフェノチアジンロイコ染料等が挙げられる。また、有用なものは、米国特許第3,445,234号、同第3,846,136号、同第3,994,732号、同第4,021,249号、同第4,021,250号、同第4,022,617号、同第4,123,282号、同第4,368,247号、同第4,461,681号明細書及び前述した特開昭50−36110号、特開昭59−206831号、特開平5−204087号、特開平11−231460号、特開2002−169249号、特開2002−236334号の各公報等に開示されているロイコ染料である。所定の色調に調整するために種々の色のロイコ染料を単独使用又は複数の種類の併用をすることが好ましい。特に、本発明において用いることが好ましい染料は、黄色及びシアン色に発色するロイコ染料であり、それぞれについて単独使用又は併用することができる。
発色濃度は現像銀自身による色調との関係で適切に調整することが好ましい。本発明では、0.01〜0.05の反射光学濃度または0.005〜0.03の透過光学濃度を有するように発色させ下記する好ましい色調範囲の画像になるように色調を調整することが好ましい。
本発明において、特に黄色発色性ロイコ染料として好ましく用いられるのは、酸化されることにより360〜450nmの吸光度が増加する一般式(A−6)で表される色像形成剤である。好ましく用いられる一般式(A−6)の化合物について詳細に説明する。一般式(A−6)において、R61は置換または無置換のアルキル基を表す。一般式(A−6)において、R62が水素原子以外の置換基である場合にはR61はアルキル基を表す。アルキル基としては炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、アルキル基は無置換でも置換基を有していてもよい。アルキル基としては具体的にはメチル、エチル、ブチル、オクチル、イソプロピル、t−ブチル、t−オクチル、t−アミル、sec−ブチル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロヘキシル基等が好ましく、イソプロピル基よりも立体的に大きな基(例えば、イソプロピル基、イソノニル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロヘキシル基、アダマンチル基等)であることが好ましく、その中でも2級または3級のアルキル基が好ましく、3級アルキル基であるt−ブチル、t−オクチル、t−アミル基等が特に好ましい。R61が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基等が挙げられる。
R62は水素原子、置換または無置換のアルキル基または置換または無置換のアシルアミノ基を表す。R62が示すアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、R62が示すアシルアミノ基は炭素数1〜30のアシルアミノ基が好ましい。アルキル基の説明はR61と同様である。アシルアミノ基は無置換であっても置換基を有していてもよく、具体的には、アセチルアミノ基、アルコキシアセチルアミノ基、アリールオキシアセチルアミノ基等が挙げられる。R62として好ましくは水素原子または無置換の炭素数1〜24のアルキル基であり、具体的にはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基が挙げられる。R61、R62は2−ヒドロキシフェニルメチル基であることはない。
R63は水素原子または置換または無置換のアルキル基を表す。R63が示すアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、アルキル基の説明はR61と同様である。R63として好ましくは、水素原子または無置換の炭素数1〜24のアルキル基で、具体的にはメチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、R62、R63はいずれか一方は水素原子であることが好ましい。
R64はベンゼン環に置換可能な基を表し、例えば一般式(A−1)のR2で説明したのと同様な基である。R64として好ましいのは置換または無置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のオキシカルボニル基であり、炭素数1〜24のアルキル基がより好ましい。アルキル基の置換基としてはアリール基、アミノ基、アルコキシ基、オキシカルボニル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、イミド基、ウレイド基等が挙げられ、アリール基、アミノ基、オキシカルボニル基、アルコキシ基がより好ましい。これらのアルキル基の置換基は更にこれらの置換基で置換されていてもよい。
本発明で好ましく用いられる、下記一般式(A−7)で表されるビスフェノール化合物について説明する。
式中、Zは−S−基または−C(R73)(R73′)−基を表しR73、R73′は、各々水素原子または置換基を表す。R73、R73′の表す置換基としては、一般式(A)のR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。R73、R73′として好ましくは水素原子またはアルキル基である。
R71、R72、R71′、R72′は、各々置換基を表すが、置換基としては一般式(A)のR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
R71、R72、R71′、R72′として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基等であるが、アルキル基が更に好ましい。
アルキル基上の置換基としては、一般式(A)のR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
R71、R72、R71′、R72′として更に好ましくは、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、1−メチル−シクロヘキシル等の3級アルキル基である。
X71、X71′は、各々水素原子または置換基を表すが、置換基としては、一般式(A)のR43〜R45の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
一般式(A−6)及び(A−7)で表される化合物としては、例えば特開2002−169249号の「0032」〜「0038」記載の化合物(II−1)〜(II−40)、EP第1,211,093号の「0026」記載の化合物(ITS−1)〜(ITS−12)を挙げることができる。
以下に、一般式(A−6)及び(A−7)で表されるビスフェノール化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(A−6)の化合物(ヒンダードフェノール化合物)(一般式(A−7)の化合物も含まれる)の添加量は、通常0.00001〜0.01モル/Ag1モルであり、好ましくは0.0005〜0.01モル/Ag1モル、より好ましくは0.001〜0.008モル/Ag1モルである。
次に本発明で用いられるシアン発色性ロイコ染料について説明する。
本発明において、特にシアン発色性染料として好ましく用いられるのは、酸化されることにより600〜700nmの吸光度が増加する色像形成剤であり、特開昭59−206831号(特にλmaxが600〜700nmの範囲内にある化合物)、特開平5−204087号の一般式(I)〜一般式(IV)の化合物具体的には「0032」〜「0037」に記載の(1)〜(18)の化合物及び特開平11−231460号の一般式4〜一般式7の化合物(具体的には「0105」に記載されているNo.1〜No.79の化合物)である。
本発明において特に好ましく用いられるシアン発色性ロイコ染料は、下記一般式(CL)で表される。
式中、R81、R82は水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、−NHCO−R10基(R10はアルキル基、アリール基、複素環基を表す。)であるか、またはR81、R82は互いに連結して脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環または複素環を形成する基である。A8は−NHCO−基、−CONH−基または−NHCONH−基を表し、R83は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。また、−A8−R83は水素原子であってもよい。W8は水素原子または−CONH−R85基、−CO−R85基または−CO−O−R85基(R85は置換または無置換のアルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、R84は水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはニトリル基を表す。R86は−CONH−R87基、−CO−R87基または−CO−O−R87基(R87が置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表す。X8は、置換または無置換の、アリール基、複素環基を表す。
一般式(CL)において、R81、R82で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、臭素原子、塩素原子等があげられ、アルキル基としては炭素原子数が20までのアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等)が挙げられ、アルケニル基としては炭素原子数20までのアルケニル基(例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル等)が挙げられ、アルコキシ基としては炭素原子数20までのアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ等)が挙げられる。また、−NHCO−R10基におけるR10で表されるアルキル基としては、炭素原子数が20までのアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等)が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、チエニル基のような炭素原子数6〜20の基が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。R83で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数20までのアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。W8で表される−CONH−R85基、−CO−R85基または−CO−O−R85基において、R85で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数20までのアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素数6〜20までのアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
R84で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられ、アルキル基としては鎖状若しくは環状のアルキル基、例えば、メチル基、ブチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルケニル基としては炭素原子数20までのアルケニル基(例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル等)が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、ブトキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられ、カルバモイル基としては、例えば、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。またニトリル基も好ましい。これらの中でも、水素原子、アルキル基がより好ましい。前記R83とR84は、互いに連結して環構造を形成してもよい。
上記の基はさらに単一の置換基または複数の置換基を有することができる。典型的な置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ドデシル基等)、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メチルスルホンアミド基、オクチルスルホンアミド基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、フェニルスルホンアミド基、ナフチルスルホンアミド基等)、アルキルスルファモイル基(例えば、ブチルスルファモイル基等)、アリールスルファモイル(例えば、フェニルスルファモイル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、アミノスルホンアミド基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホキシ基、スルホ基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノカルボニル基等が挙げられる。
R10またはR85は好ましくはフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子およびシアノ基を置換基として複数有するフェニル基である。
R86で表される−CONH−R87基、−CO−R87基または−CO−O−R87基において、R87で表されるアルキル基は、好ましく炭素原子数20までのアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
R87で表される基が有することができる置換基としては一般式(CL)のR81〜R84の説明において挙げた置換基と同様のものが使用できる。
X8で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基のような炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
X8で表される基が有することができる置換基としては一般式(CL)のR81〜R84の説明において挙げた置換基と同様のものを挙げることができる。
X8で表される基としてはパラ位にアルキルアミノ基(ジエチルアミノ基等)を有するアリール基または複素環基が好ましい。これらの基は写真的に有用な基を含んでもよい。
以下にシアン発色性ロイコ染料(CL)の具体例を示すが、本発明で用いられるシアン発色性ロイコ染料はこれらに限定されるものではない。
シアン発色性ロイコ染料の添加量は、通常0.00001〜0.05モル/Ag1モルであり、好ましくは0.0005〜0.02モル/Ag1モル、より好ましくは0.001〜0.01モル/Ag1モルである。
また、シアン発色性ロイコ染料の一般式(A−1)〜(A−5)で表される還元剤の総和に対する添加量比は、モル比で0.001〜0.2であることが好ましく、0.005〜0.1であることがより好ましい。本発明では、シアンロイコ染料により形成される色素像の極大吸収波長における最高濃度の総和を0.01以上、0.50以下とするのが好ましく、より好ましくは0.02以上、0.30以下、特に好ましくは0.03以上、0.10以下を有するように発色させることが好ましい。
一般式(A−6)、(A−7)で表される化合物およびシアン発色性ロイコ染料の添加方法としては、一般式(A−1)〜(A−5)で表される還元剤の添加方法と、同様な方法で添加することができ、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態等、任意の方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
一般式(A−1)〜(A−7)の化合物は、有機銀塩を含有する画像形成層に含有させることが好ましいが、一方を画像形成層に他方をその隣接する非画像形成層に含有させてもよく、両者を非画像形成層に含有させてもよい。また、画像形成層が複数層で構成されている場合にそれぞれ別層に含有させてもよい。本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号公報に記載の式(A)で表されるフェノール誘導体が好ましく用いられる。
本発明の熱現像感光材料に好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、特開2001−330918号公報の「0069」に記載のものが挙げられる。これらのうち本発明に係る熱現像感光材料の感光性層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。詳しくは後述する。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組合せて用いうる。バインダーには−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、(Mは水素原子、またはアルカリ金属塩基を表す)、−N(R)2、−N+(R)3(Rは炭化水素基を表す)、エポキシ基、−SH、−CN等から選ばれる少なくとも1つ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましく、特に−SO3M、−OSO3M、が好ましい。この様な極性基の量は、1×10-1〜1×10-8モル/gであり、好ましくは1×10-2〜1×10-6モル/gである。
この様なバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定しうる。例えば、画像形成層において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2が好ましく、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、画像形成層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましい。更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
本発明で用いるバインダーのガラス転移温度Tgは、70℃以上、105℃以下であることが好ましい。Tgは、示差走査熱量計で測定して求めることができ、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をガラス転移点とする。
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、ブランドラップらによる“重合体ハンドブック”III−139頁〜III−179頁(1966年,ワイリーアンドサン社版)に記載の方法で求めたものである。
バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。
上式に従って計算されたTgの精度は、±5℃である。
Tgが70〜105℃のバインダーを用いると、画像形成において十分な最高濃度を得ることができ好ましい。
本発明のバインダーとしてはTgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。
また、エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体または共重合体については特開2001−330918号の段落番号「0069」に記載のものが挙げられる。
これらのうち、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。この様な高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物でも、アセトアセタール構造を持つポリビニルアセタールであることがより好ましく、例えば、米国特許第2,358,836号、同3,003,879号、同2,828,204号、英国特許第771,155号に示されるポリビニルアセタールを挙げることができる。
アセタール基を持つ高分子化合物としては、下記一般式(V)で表される化合物が、特に好ましい。
式中、R11は無置換アルキル基、置換アルキル基、アリール基または置換アリール基を表すが好ましくはアリール基以外の基である。R12は無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、−COR13または−CONHR13を表す。R13はR11と同義である。
R11、R12、R13で表される無置換アルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6である。これらは直鎖であっても分岐していてもよく、好ましくは直鎖のアルキル基が好ましい。この様な無置換アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられるが、特に好ましくはメチル基もしくはプロピル基である。
無置換アリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記のアルキル基、アリール基に置換可能な基としては、アルキル基(例えば、メチル基、n−プロピル基、t−アミル基、t−オクチル基、n−ノニル基、ドデシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ニトロ基、水酸基、シアノ基、スルホ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、カルボキシ基、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基等)等が挙げられる。この置換基が2つ以上ある時は、同じでも異なっていてもよい。置換アルキル基の総炭素数は、1〜20が好ましく、置換アリール基の総炭素数は6〜20が好ましい。
R12としては、−COR13(R13はアルキル基またはアリール基)、−CONHR13(R13はアリール基)が好ましい。a、b、cは、各繰り返し単位の質量をモル(mol)%で示した値であり、aは、40〜86モル%、bは0〜30モル%、cは0〜60モル%の範囲で、a+b+c=100モル%となる数を表し、特に好ましくは、aが50〜86モル%、bが5〜25モル%、cが0〜40モル%の範囲である。a、b、cの各組成比を持つ各繰り返し単位は、それぞれ同一のもののみで構成されていても、異なるもので構成されていてもよい。
上記一般式(V)で表される高分子化合物は、「酢酸ビニル樹脂」桜田一郎編(高分子化学刊行会、1962年)等に記載の一般的な合成方法で合成することができる。
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン等公知のものが使用できる。またポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のOH基を有することが好ましい。OH基は、硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特に、OH基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは、分子末端にOH基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度が70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
これらの高分子化合物(ポリマー)は単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。本発明の画像形成層には上記ポリマーを主バインダーとして用いる。ここでいう主バインダーとは「画像形成層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」をいう。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明のポリマーが可溶となる溶媒であれば、特に制限はない。より好ましくはポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
本発明においては、画像形成層に有機性ゲル化剤を含有せしめてもよい。尚、ここででいう有機性ゲル化剤とは、例えば、多価アルコール類のように有機液体に添加することにより、その系に降伏値を付与し、系の流動性を消失或いは低下させる機能を有する化合物をいう。
本発明においては、画像形成層用塗布液が水性分散されたポリマーラテックスを含有するのも好ましい態様である。この場合、画像形成層用塗布液中の全バインダーの50質量%以上が水性分散されたポリマーラテックスであることが好ましい。
また、本発明に係る画像形成層がポリマーラテックスを含有する場合、前記画像形成層中の全バインダーの50質量%以上がポリマーラテックスであることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。
本発明に係る「ポリマーラテックス」とは水不溶性の疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、或いはポリマー分子中に部分的に親水的な構造をもち、分子鎖自身が分子状分散したもの等いずれでもよい。
分散粒子の平均粒径は1〜50,000nmが好ましく、より好ましくは5〜1,000nm程度の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
本発明に係るポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。本発明に係るポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は、−30〜90℃であることが好ましく、更に好ましくは0〜70℃程度である。また、最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。本発明に用いられる造膜助剤は可塑剤とも呼ばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶媒)であり、例えば「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
ポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体等がある。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は数平均分子量で通常5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度である。分子量が小さすぎるものは感光層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは製膜性が悪く好ましくない。
ポリマーラテックスは25℃、60%RHでの平衡含水率が0.01〜2質量%以下のものが好ましく、更に好ましくは、0.01〜1質量%のものである。平衡含水率の定義と測定法については、例えば「高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)」等を参考にすることができる。
ポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックス等が挙げられる。
これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。ポリマーラテックスのポリマー種としては、アクリレートまたはメタクリレート成分の如きカルボン酸成分を0.1〜10質量%程度含有するものが好ましい。
更に、必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は前記感光層の全バインダーの30質量%以下が好ましい。
本発明に係る画像形成層用塗布液の調製において、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスの添加の順序については、いずれが先に添加してもよいし、同時に添加してもよいが、好ましくは、ポリマーラテックスが後である。
更に、ポリマーラテックス添加前に有機銀塩、更には還元剤が混合されていることが好ましい。また、本発明においては、有機銀塩とポリマーラテックスを混合した後、経時させる温度が低すぎると塗布面状が損なわれ、高すぎるとカブリが上昇する問題があるので、混合後の塗布液は30℃〜65℃で経時されることが好ましい。更には35℃〜60℃で経時させることが好ましく、特には35℃〜55℃で経時されることが好ましい。この様に温度を維持するには塗布液の調液槽等を保温すればよい。
本発明に係る画像形成層用塗布液の塗布は有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスを混合した後、30分〜24時間経過した塗布液を用いるのが好ましく、更に好ましくは、混合した後、60分〜12時間経過させることであり、特に好ましくは、120分〜10時間経過した塗布液を用いることである。
ここで、「混合した後」とは、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスを添加し、添加素材が均一に分散された後をいう。
本発明においては、架橋剤を上記バインダーに対し用いることにより膜付きがよくなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
本発明で用いられる架橋剤としては、従来写真感材用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤が用いられるが、好ましくは以下に示す、イソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。
上記イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個有しているイソシアネート類及びその付加体(アダクト体)であり、更に、具体的には、脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼンジイソシアネート類、ナフタレンジイソシアネート類、ビフェニルイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート類、トリフェニルメタンジイソシアネート類、トリイソシアネート類、テトライソシアネート類、これらのイソシアネート類の付加体及びこれらのイソシアネート類と2価または3価のポリアルコール類との付加体が挙げられる。
具体例としては、特開昭56−5535号の10頁〜12頁に記載されているイソシアネート化合物を利用することができる。
尚、イソシアネートとポリアルコールの付加体は特に、層間接着を良くし、層の剥離や画像のズレ及び気泡の発生を防止する能力が高い。かかるイソシアネートは光熱写真材料のどの部分に置かれてもよい。例えば支持体中(特に支持体が紙の場合、そのサイズ組成中に含ませることができる。)感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層または2層以上に添加することができる。
また、本発明において使用することが可能なチオイソシアネート系架橋剤としては、上記のイソシアネート類に対応するチオイソシアネート構造を有する化合物も有用である。
本発明において使用される上記架橋剤の量は、銀1モルに対して通常0.001〜2モル、好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。
本発明において含有させることができるイソシアネート化合物及びチオイソシアネート化合物は、上記の架橋剤として機能する化合物であることが好ましいが、当該官能基を1つのみ有する化合物であっても良い結果が得られる。
本発明において架橋剤として使用できるシラン化合物の例としては、特開2001−264930号に開示されている一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
本発明において架橋剤として使用できるエポキシ化合物としてはエポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。またエポキシ化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマー等のいずれであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2,000〜20,000程度である。
また、本発明に用いられる酸無水物は下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。
−CO−O−CO−
本発明に用いられる酸無水物はこの様な酸無水物基を1個以上有するものであればよく、酸無水物基の数、分子量、その他に制限はない。
上記のエポキシ化合物や酸無水物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。
本発明においてエポキシ化合物や酸無水物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引き層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層または2層以上に添加することができる。
本発明では、省銀化剤を使用することにより、本発明の効果を更に高めることができる。
〔省銀化剤〕
本発明において使用される省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。
省銀化剤としては、下記一般式(H)で表されるヒドラジン誘導体化合物、下記一般式(G)で表されるビニル化合物、及び下記一般式(P)で表される4級オニウム化合物等が好ましい例として挙げられる。
一般式(H)において、式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2は共に水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。好ましいD0としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
一般式(H)において、A0で表される脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基が挙げられ、これらは更に適当な置換基(例えば、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アシルアミノ基、ウレイド基等)で置換されていてもよい。
一般式(H)において、A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、例えばベンゼン環またはナフタレン環が挙げられ、A0で表される複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環が好ましく、例えばピロリジン環、イミダゾール環、テトラヒドロフラン環、モルホリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、フラン環が挙げられる。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として、特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
また、一般式(H)において、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を、少なくとも1つ含むことが好ましい。耐拡散基としては、カプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましく、バラスト基としては、写真的に不活性であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基等が挙げられ、置換基部分の炭素数の合計は8以上であることが好ましい。
一般式(H)において、ハロゲン化銀吸着促進基としては、チオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基或いは特開昭64−90439号に記載の吸着基等が挙げられる。
一般式(H)において、B0はブロッキング基を表し、好ましくは−G0−D0基であり、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A1、A2は共に水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、またはオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
これら一般式(H)で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同5,496,695号を参考にして合成することができる。
その他に好ましく用いることのできるヒドラジン誘導体は、米国特許第5,545,505号カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号カラム9〜11に記載の化合物1〜12、特開2001−27790の「0042」〜「0052」に記載の化合物H−1−1〜H−1−28、H−2−1〜H−2−9、H−3−1〜H−3−12、H−4−1〜H−4−21、H−5−1〜H−5−5、特開2002−278017の「0020」〜「0035」に記載のD1〜D206の化合物をあげることができる。これらのヒドラジン誘導体は公知の方法で合成することができる。
以下に本発明にて好ましく使用されるヒドラジン誘導体の化合物例を示すが、これらの化合物に限定されない。
一般式(G)において、X21とR21はシスの形で表示してあるが、X21とR21がトランスの形も一般式(G)に含まれる。この事は具体的化合物の構造表示においても同様である。
一般式(G)において、X21は電子吸引性基を表し、W21は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基を表す。
R21はハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩等)、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基(例えば、ピロリジノ基)、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基(5〜6員の含窒素ヘテロ環、例えばベンツトリアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等)、ウレイド基、スルホンアミド基を表す。X21とW21、X21とR21は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。X21とW21が形成する環としては、例えばピラゾロン、ピラゾリジノン、シクロペンタンジオン、β−ケトラクトン、β−ケトラクタム等が挙げられる。
一般式(G)について更に説明すると、X21の表す電子吸引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
W21として表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。W21としてはσp値が正の電子吸引性基が好ましく、更にはその値が0.30以上のものが好ましい。
上記R21の置換基のうち、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩が挙げられる。
一般式(G)の化合物の具体例としては米国特許5,545,515号のカラム13〜14に記載の化合物CN−01〜CN−13、米国特許5,635,339号のカラム10に記載の化合物HET−01〜HET−02、米国特許5,654,130号のカラム9〜10に記載の化合物MA−01〜MA−07の化合物、米国特許5,705,324号のカラム9〜10に記載の化合物IS−01〜IS−04、特開2001−125224号の「0043」〜「0088」記載の化合物1−1〜218−2があげられる。
以下に本発明にて好ましく使用される化合物例を示すが、これらの化合物に限定されない。
一般式(P)において、Qは窒素原子またはリン原子を表し、R31、R32、R33及びR34は、各々水素原子または置換基を表し、X31 -はアニオンを表す。尚、R31〜R34は互いに連結して環を形成してもよい。
R31〜R34で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
R31〜R34が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
R31〜R34で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。R31、R32、R33及びR34としては、水素原子及びアルキル基が好ましい。
X31 -が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機及び有機のアニオンが挙げられる。
上記4級オニウム化合物は公知の方法に従って容易に合成でき、例えばテトラゾリウム化合物はChemical Reviews vol.55 p.335〜483に記載の方法を参考にできる。上記省銀化剤の添加量は有機銀塩1モルに対し1×10-5〜1モル、好ましくは1×10-4〜5×10-1モルの範囲である。
本発明では、省銀化剤の少なくとも一種が、シラン化合物であることが好ましい。
本発明において、省銀化剤として用いるシラン化合物としては、特願2001−192698号に記載されているような一級または二級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物或いはその塩であることが好ましい。
ここで、一級または二級アミノ基を2個以上有するとは、一級アミノ基のみを2個以上、二級アミノ基のみを2個以上、更には一級アミノ基と二級アミノ基をそれぞれ1個以上含むことを指し、アルコキシシラン化合物の塩とは、アミノ基とオニウム塩を形成しうる無機酸或いは有機酸とアルコキシシラン化合物との付加物を指す。
この様なアルコキシシラン化合物或いはその塩としては、下記に記載するようなものを挙げることができるが、本発明においては、分子内一級または二級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物或いはその塩であれば、これらの化合物に限定されない。
これらの化合物において、アルコキシシリルを形成するアルコキシ基としては、飽和炭化水素からなるアルコキシ基が好ましく、更には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基がより保存安定性に優れることから好ましい。また、熱現像前の保存条件による感度変動を低減する目的においては、分子内に不飽和炭化水素基を有さない化合物がより好ましい。尚、これらのアルコキシシラン化合物、或いはその塩は1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
また、画像形成層が少なくとも1個以上の一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物とケトン化合物との脱水縮合反応から形成されるシフ塩基を含有することが好ましい。
この様なシフ塩基を用いることにより、省銀化することができ、且つ熱現像前の保存時条件によらず低カブリで感度変動も少なく、ガンマも極端に立たない画像が得られる。更に、予め一級アミン部分が封鎖されているため、画像形成層形成塗工液を調製する際にケトン系溶剤を用いる場合には、塗工液調製後の経時による感度変動を抑制することができる。
上記のアルコキシシラン化合物とシフ塩基を形成するために用いられるケトン化合物としては、特に制限なく用いることができるが、画像形成方法により画像を形成した際に生じる臭気の問題から、沸点が150℃以下のものが好ましく、更には100℃以下のものがより好ましい。
この様なシフ塩基としては、下記に示す化合物を挙げることができるが、1個以上の一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物とケトン化合物との脱水縮合反応から形成されるシフ塩基であれば、これらに限定されない。
尚、上述の化合物の中で、より省銀化する目的のためには、分子内に1個以上の二級アミノ基を有するシフ塩基がより好ましい。尚、これらのシフ塩基は1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
省銀化剤として、アルコキシシラン化合物或いはその塩、またはシフ塩基を画像形成層中に添加する場合は、銀1モルに対して通常0.00001〜0.05モルの範囲で添加するのが好ましい。また、アルコキシシラン化合物或いはその塩と、シフ塩基の両方を画像形成層に添加する場合も同様の範疇となる。
しかしながら、上述のアルコキシシラン化合物またはシフ塩基の銀1モルに対する添加量が少しでも多くなると、画像形成方法で形成された未露光部の画像濃度が高くなる場合がある。そこで、添加するアルコキシシラン化合物またはシフ塩基の銀1モルに対する添加量の依存性を緩和する目的で、更に、画像形成層に分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を添加するのが好ましい。イソシアネート化合物としては、前述した架橋剤として使用されるイソシアネート化合物を用いることができる。
〔カブリ防止及び画像安定化剤〕
本発明の熱現像感光材料に用いられるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
還元剤としては、主に、ビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンを持った還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。
従ってこれらの機能を有する化合物であればいかなる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有し、且つ熱現像感光材料に格別の弊害を生じることのない化合物であればいかなる構造を持った化合物でもよい。
また、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに十分な時間接触できる位の安定性を持たせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。
これらの化合物の代表的なものとしてビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物を挙げることができる。
上記のビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物の添加量は0.001〜0.1モル/m2、好ましくは、0.005〜0.05モル/m2の範囲である。尚、当該化合物は、本発明の感光材料において、いかなる構成層中にも含有させることができるが、還元剤の近傍に含有させることが好ましい。
また、カブリ防止及び画像安定化剤として、ハロゲン原子を活性種として放出する化合物を好ましく使用することができる。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、以下に挙げる一般式(9)の化合物がある。
一般式(9)中、Q51はアリール基またはヘテロ環基を表す。X51、X52及びX53は水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも1つはハロゲン原子である。Y51は−C(=O)−、−SO−または−SO2−を表す。
Q51で表されるアリール基は、単環または縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等)であり、より好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
Q51で表されるヘテロ環基は、N、OまたはSの少なくとも1つの原子を含む3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
ヘテロ環基として好ましくは、縮合環を有していてもよい5ないし6員の不飽和ヘテロ環基であり、より好ましくは縮合環を有していてもよい5ないし6員の芳香族ヘテロ環基である。更に好ましくは窒素原子を含む縮合環を有していてもよい5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、特に好ましくは窒素原子を1ないし4原子含む縮合環を有していてもよい5ないし6員の芳香族ヘテロ環基である。この様なヘテロ環基におけるヘテロ環として好ましくは、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾールである。
Q51で表されるアリール基及びヘテロ環基は−Y51−C(X51)(X52)(X53)の他に置換基を有していてもよく、置換基として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子である。
X51、X52及びX53は好ましくはハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ヘテロ環基であり、より好ましくはハロゲン原子、ハロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。ハロゲン原子の中でも好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
Y51は−C(=O)−、−SO−、−SO2−を表し、好ましくは−SO2−である。
これらの化合物の添加量は、実質的にハロゲン化銀の生成によるプリントアウト銀の増加が問題にならない範囲が好ましく、活性ハロゲンラジカルを生成しない化合物に対する比率で、最大150%以下、更に好ましくは100%以下であることが好ましい。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、特開2002−169249号の段落番号「0086」〜「0087」に記載されている化合物(III−1)〜(III−23)を挙げることができる。
次に本発明におい
て用い
てもよい一般式(1)で示される化合物について説明する。
一般式(1)において、Z1およびZ2はそれぞれ独立にハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、沃素)を表すが、Z1およびZ2は両方とも臭素原子であることが最も好ましい。一般式(1)において、X1は水素原子または電子吸引性基を示すが、電子吸引性基としては一般式(G)のX21で説明したものを用いることができる。好ましい電子吸引性基としては、例えば、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ハロゲン原子、アシル基、ヘテロ環基であり、水素原子またはハロゲン原子であることが好ましく、最も好ましいのは臭素原子である。一般式(1)において、Y1は−CO−基または−SO2−基を表すが、好ましくは−SO2−基である。
一般式(1)において、Qはアリーレン基または二価のヘテロ環基を表す。式(1)のQで表されるアリーレン基とは、好ましくは炭素数6〜30の単環または縮合環のアリーレン基であり、より好ましくは6〜20の単環または縮合環のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、特に好ましくはフェニレン基である。Qで表わされるアリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては写真性能に悪影響を及ぼさない置換基であればどのような基でも構わないが、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(N−置換の含窒素ヘテロ環基を含む、例えばモルホリノ基)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、窒素原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、カルバゾイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、ニトロ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、水酸基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基等が挙げられる。これらの置換基は、これらの置換基自体でさらに置換されていてもよい。
一般式(1)のQで表わされるアリーレン基の置換基として特に好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基またはその塩、スルホ基の塩、リン酸基である。
一般式(1)において、Qで表わされる二価のヘテロ環基中のヘテロ環は、N、OまたはSの原子を少なくとも1つ含む5ないし7員の飽和または不飽和のヘテロ環であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成していてもよい。Qで表わされるヘテロ環基中のヘテロ環としては例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ベンゾチアゾール、ベンツイミダゾール、チアジアゾール、キノリン、イソキノリン、トリアゾール等が挙げられる。これらは置換基を有していても良く、例えば、Qで表わされるアリール基の置換基と同様の基が挙げられる。一般式(1)のQは好ましくはアリーレン基であり、特に好ましくはフェニレン基である。Qがフェニレン基を表すとき、−Y1−C(X1)(Z1)(Z2)と−(L)n−CON(W1)(W2)は互いにメタ位に結合していることが好ましい。
一般式(1)のLは二価の連結基を表し、例えばアルキレン基(好ましくは炭素数1〜30であり、さらに好ましくは炭素数1〜20であり、特に好ましくは炭素数1〜10である。)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30であり、さらに好ましくは炭素数6〜20であり、特に好ましくは炭素数6〜10である。)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜30であり、さらに好ましくは炭素数2〜20であり、特に好ましくは炭素数2〜10である。)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜30であり、さらに好ましくは炭素数2〜20であり、特に好ましくは炭素数2〜10である。)、2価の複素環基(好ましくは炭素数1〜30であり、さらに好ましくは炭素数1〜20であり、特に好ましくは炭素数1〜10である。)、−O−基、−NR−基、−CO−基、−S−基、−SO−基、−SO2−基、リン原子を含む基や、これらを組み合わせることによって形成される基等が挙げられる(ここでRで表わされる基は水素原子または置換基を有しても良いアルキル基または置換基を有しても良いアリール基である)。一般式(1)のLで表わされる連結基は置換基を有していても良く、例えば、Qで表わされるアリーレン基の置換基と同様のものが挙げられる。一般式(1)のLで表わされる連結基は好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−O−基、−NRCO−基、−SO2NR−基およびこれらを組み合わせることによって形成される基である。一般式(1)のnは0または1であり、好ましくは0である。
一般式(1)においてW1およびW2はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。一般式(1)のW1およびW2で表されるアルキル基とは、直鎖、分岐、環状、またはそれらの組み合わせのいずれでもよく、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜6である。例えば、メチル基、エチル基、アリル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ペンチル基、3−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(1)のW1およびW2で表わされるアルキル基は置換基を有していても良く、例えば、Qで表わされるアリーレン基の置換基と同様のものが挙げられる。W1およびW2で表わされるアルキル基の置換基は、好ましくはハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホンアミド基、(アルキルまたはアリール)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、スルホ基またはその塩、カルボキシル基またはその塩、リン酸基またはその塩、あるいは水酸基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキルまたはアリール)チオ基、スルホ基またはその塩、カルボキシル基またはその塩、あるいは水酸基であり、特に好ましくはハロゲン原子、アルケニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、スルホ基の塩、カルボキシル基またはその塩、あるいは水酸基である。
一般式(1)のW1およびW2で表わされるアリール基は単環または縮合環のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。W1およびW2で表わされるアリール基は置換基を有していても良く、例えば、W1およびW2で表わされるアルキル基の置換基と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
一般式(1)のW1およびW2で表わされるヘテロ環は、N、OまたはSの原子を少なくとも1つ含む5ないし7員の飽和または不飽和のヘテロ環であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成していてもよい。例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンツイミダゾリル、チアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、トリアゾリル等が挙げられる。これらは置換基を有していても良く、例えば、W1およびW2で表わされるアルキル基の置換基と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。W1およびW2はそれぞれ同じでも異なっていても良く、互いに結合して環状構造になっていても良い。W1およびW2は好ましくは水素原子またはアルキル基またはアリール基であり、特に好ましくは水素原子またはアルキル基である。
一般式(1)で表される有機ポリハロゲン化合物としては特開2001−133925号の段落「0036」〜「0052」記載のP1〜P117の化合物があげられる。以下に具体例を示すが、本発明の感光材料に利用可能なポリハロゲン化合物はこれに限定されることはない。
本発明においては、前記一般式(1)の化合物と前記一般式(9)の化合物を併用することが、室温保存時の画像保存性を向上させることができる点で特に好ましい。
次に本発明で用い
てもよい一般式(A−8)の化合物について説明する。
前記式中、Zは含窒素複素環を形成するに必要な原子群を表す。前記含窒素複素環には、縮環構造を有する含窒素複素環も含まれる。Zにより形成される含窒素複素環の例としては、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、1H−インダゾール、プリン、ペリミジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、2−ピロリン、2−イミダゾリン、3−ピラゾリン、モルホリン、インドリン、イソインドリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、オキサゾリン、セレナゾール、ナフトセレナゾール、セレナゾリン、テルラゾール、ベンゾテルラゾール、ナフトテルラゾール、テルラゾリン、インドレニン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、オキサジアゾール、チアジアゾール等を好ましい例として挙げることができる。
Zにより形成される含窒素複素環の更に好ましい例としてはピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、1H−インダゾール、プリン、ペリミジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、2−ピロリン、2−イミダゾリン、3−ピラゾリン、モルホリン、インドリン、イソインドリン、チアゾリン、オキサゾリン等を挙げることができる。
Zにより形成される含窒素複素環として特に好ましいものは、ベンゾトリアゾール、1H−インダゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、2H−チアゾリン、イミダゾリジンである。
Zにより形成される含窒素複素環は更に置換基を有していてもよく、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。含窒素複素環の置換基の例としては、一般式(A−1)における環上の置換基として記載したものや、特開2002−236335号の段落番号「0023」〜同「0028」に記載の置換基を用いることができる。
前記式中、R81は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、飽和または不飽和のヘテロ環基を表すが、アルキル基、アリール基、飽和または不飽和のヘテロ環基であることがより好ましい。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、更に好ましくは炭素数1〜22であり、特に好ましくは炭素数4〜22である。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、ペンチル基、ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イコサ基、ドコサ基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フェネチル基、トリルエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、ナフトキシエチル基、スルホフェネチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、カルバモイルエチル基、ヒドロキシエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、スルホエチル基、2−クロロ−3−スルホプロピル基、3−スルホプロピル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、2−(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ)エチル基、2−〔2−(3−スルホプロピルオキシ)エトキシ〕エチル基、アセチルアミノエチル基、メチルスルホニルアミノエチル基、メチルスルホニルアミノカルボニルエチル基、アセチルアニノカルボニルエチル基等が挙げられる。
R81で表されるアリール基としては、炭素数6〜30であることが好ましく、炭素数6〜22であることが更に好ましく、炭素数6〜20であることが特に好ましい。R81で表されるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−トリル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−クロロフェニル基、m−シアノフェニル基、p−カルボキシフェニル基、o−カルボキシフェニル基、o−(メトキシカルボニル)フェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−エトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル基、メシチル基等が挙げられる。
R81で表される飽和または不飽和の複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、モルホリル基、キノリル基、ピペラジノ基、ピロリジニル基等を挙げることができる。R81で表されるこれらの基は、更に置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前述のZにより形成されるヘテロ環の置換基を挙げることができる。
前記一般式(A−8)で表される化合物は、Zh.Obshch.Khim.,2614(1959),Indian J.Chem.,1273(1986),J.Gen.Chem.U.S.S.R(Engl.Transl.),188(1965)等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
以下に本発明の一般式(A−8)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
次に本発明で用い
てもよい一般式(A−9)の化合物について説明する。
X1、X2は、電子吸引性基である。ここにおいて、X1、X2の電子吸引性は、「ハメット定数σp」で定義される。ハメット定数σpは、ハメット則:LogK/K0=σpρ(式中、K0は、25℃での水溶液中における参照物質の酸解離定数であり、Kは、パラ置換された酸の同様の定数であり、及びρは、パラ置換安息香酸の解離定数1.0である。)で定義される。正のハメット定数σは、基が電子吸引性であることを示す。
電子吸引性基X1、X2は、少なくとも−COOR(但し、Rは、例えば、H、−CH3または−CH2CH3である。)と同等の電子吸引性でなければならない。−COOHについて報告されているハメット定数σpは0.43、−COOCH3については0.39、及び−COOC2H5については0.45である。即ち、電子吸引性基のハメット定数σpは、0.39以上でなければならない。そのような電子吸引性基Xの非限定的な例としては、シアノ、アルコキシカルボニル、メタロキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ニトロ、アセチル、パーフルオロアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル及びLange”著のハンドブック・オブ・ケミストリー、第14版、マクグローヒル、1992年;第9章、2〜7頁に列挙されている他の基が挙げられる。
R91は、ヒドロキシまたはヒドロキシの金属塩[例えば、OM+(式中、M+は、金属カチオンである。)]であってよい。好ましいM+は、Li+、Na+、K+、Fe2+等のような1価のカチオンであるが、2価及び3価のカチオンも使用してよい。R92は好ましくは、アルキル基またはアリール基である。R92がアルキル基である場合、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。特に好ましくは、R92はメチル基である。R92がアリール基である場合、炭素数5〜10、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基であることが好ましい。最も好ましくは、R92はフェニル基である。或いは、X1、X2は互いに結合して環状構造を有してもよい。なお、X1とR91はシスの形で表示してあるが、X1とR91がトランスの形を含む。好ましくは、環は、5−、6−または7員環である。そのような環の例は、ラクトン環またはシクロヘキセノン環である。以下、一般式(A−9)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
次に本発明において好ましく使用されるその他のカブリ防止剤について説明する。本発明で好ましく使用されるカブリ防止剤としては例えば特開平8−314059号公報の「0012」に記載の化合物例a〜j、特開平7−209797号の「0028」に記載のチオスルホネートエステルA〜K、特開昭55−140833号公報のp14から記載の化合物例(1)〜(44)、特開2001−13627号公報の段落番号「0063」記載の化合物(I−1)〜(I−6)、同「0066」記載の(C−1)〜(C−3)、特開2002−90937号公報の同「0027」記載の化合物(III−1)〜(III−108)、ビニルスルホン類またはβ−ハロスルホン類の化合物として特開平6−208192号公報の同「0013」に記載の化合物VS−1〜VS−7、化合物HS−1〜HS−5を挙げることができる。
上記カブリ防止剤は一般に銀のモルに対して少なくとも0.001モル用いる。通常、その範囲は銀のモルに対して化合物は0.01〜5モル、好ましくは銀のモルに対して化合物は0.02〜0.6モルである。
尚、上記の化合物の他に、本発明の熱現像感光材料中には、従来カブリ防止剤として知られている化合物が含まれてもよいが、上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同4,546,075号、同4,452,885号の各明細書、特開昭59−57234号公報、米国特許第3,874,946号、同4,756,999号の各明細書、特開平9−288328号、同9−90550号各公報に記載されている化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同605,981号、同631,176号明細書に開示されている化合物が挙げられる。
本発明に用いる還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)を有する場合、特にビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物の具体例としては例えば特開2002−90937号公報の段落番号「0061」〜同「0064」に記載の化合物(II−1)〜(II−40)が挙げられる。
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、必要に応じて銀の色調を調整する色調剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有していることが好ましい。
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD17029号、米国特許第4,123,282号、同3,994,732号、同3,846,136号及び同4,021,249号の各明細書に開示されており、例えば、次のものがある。
イミド類(例えば、スクシンイミド、フタルイミド、ナフタールイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジンとフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸)の組合せ;フタラジンとマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組合せ等が挙げられる。特に好ましい色調剤としてはフタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組合せである。
〔フッ素系界面活性剤〕
本発明では熱現像処理装置でのフィルム搬送性や環境適性(生体内への蓄積性)を改良するために前記一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤が用いられる。
前記一般式(SF)において、Rfはフッ素原子を含有する置換基を表すが、該フッ素原子を含有する置換基としては例えば、炭素数1〜25のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基及びオクタデシル基等)またはアルケニル基(例えば、プロペニル基、ブテニル基、ノネニル基及びドデセニル基等)等が挙げられる。
L1はフッ素原子を有さない2価の連結基を表すが、該フッ素原子を有さない2価の連結基としては例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等)、アルキレンオキシ基(メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、ブチレンオキシ基等)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシブチレン基等)、オキシアルキレンオキシ基(例えば、オキシメチレンオキシ基、オキシエチレンオキシ基、オキシエチレンオキシエチレンオキシ基等)、フェニレン基、オキシフェニレン基、フェニルオキシ基、オキシフェニルオキシ基またはこれらの基を組合せた基等が挙げられる。
Aはアニオン基またはその塩基を表すが、例えば、カルボン酸基またはその塩基(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、スルホン酸基またはその塩基(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)及び燐酸基またはその塩基(ナトリウム塩及びカリウム塩等)等が挙げられる。
Yはフッ素原子を有さない3価または4価の連結基を表すが、例えば、フッ素原子を有さない3価または4価の連結基で炭素原子または窒素原子を中心にして構成される原子群が挙げられる。n1は0または1の整数を表すが、1であるのが好ましい。
一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤は、フッ素原子を導入した炭素数1〜25のアルキル化合物(例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基及びパーフロロオクタデシル基等を有する化合物)及びアルケニル化合物(例えば、パーフロロヘキセニル基及びパーフロロノネニル基等)と、それぞれフッ素原子を導入していない3価〜6価のアルカノール化合物、水酸基を3〜4個有する芳香族化合物またはヘテロ化合物との付加反応や縮合反応によって得られた化合物(一部Rf化されたアルカノール化合物)に、更に例えば硫酸エステル化等によりアニオン基(A)を導入することにより得ることができる。
上記3〜6価のアルカノール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンテン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ブタノール)−3、脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール等が挙げられる。
また、上記水酸基を3〜4個有する芳香族化合物及びへテロ化合物としては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン及び2,4,6−トリヒドロキシピリジン等が挙げられる。
以下に、一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤の好ましい具体的化合物を示す。
本発明の一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤を塗布液に添加する方法としては公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。また、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザ分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤は、最外層の保護層に添加することが好ましい。
本発明の一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤の添加量は1m2当たり1×10-8〜1×10-1モルが好ましく、1×10-5〜1×10-2モルが特に好ましい。前者の範囲未満では、帯電特性が得られず、前者の範囲を越えると、湿度依存性が大きく高湿下の保存性が劣化する。
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層を有する側の最表面に含まれるマット剤の平均粒径をLe(μm)、バックコート層を有する側の最表面に含まれるマット剤の平均粒径をLb(μm)とする時Lb/Leが1.5以上10以下であることが好ましい。Lb/Leをこの範囲とすることで熱現像時の濃度ムラを改良することができる。
〔表面層〕
本発明においては、熱現像感光材料の表面層に(画像形成層側、また支持体をはさみ画像形成層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、本発明の目的、また表面粗さをコントロールする等のためにマット剤として有機または無機の粉末を用いることが好ましい。本発明において用いられる粉末としては、モース硬度が5以上の粉末を用いることが好ましい。粉末としては公知の無機質粉末や有機質粉末を適宜選択して使用することができる。無機質粉末としては、例えば、酸化チタン、窒化ホウ素、SnO2、SiO2、Cr2O3、α−Al2O3、α−Fe2O3、α−FeOOH、SiC、酸化セリウム、コランダム、人造ダイヤモンド、ザクロ石、ガーネット、マイカ、ケイ石、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を挙げることができる。有機質粉末としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、テフロン(R)等の粉末を挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、SiO2、酸化チタン、硫酸バリウム、α−Al2O3、α−Fe2O3、α−FeOOH、Cr2O3、マイカ等の無機粉末等であり、その中でも、SiO2、α−Al2O3が好ましく、特に好ましいのはSiO2である。
本発明において、前記粉末が、Si化合物またはAl化合物により表面処理されていることが好ましい。かかる表面処理のなされた粉末を用いると最上層の表面状態を良好にすることができる。前記SiまたはAlの含有量としては、前記粉末に対して、Siが0.1〜10質量%、Alが0.1〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくはSiが0.1〜5質量%、Alが0.1〜5質量%であり、Siが0.1〜2質量%、Alが0.1〜2質量%であるのが特に好ましい。また、Si、Alの質量比がSi<Alであるのがよい。表面処理に関しては特開平2−83219号に記載された方法により行うことができる。尚、本発明における粉末の平均粒径とは、球状粉末においてはその平均直径を、針状粉末においてはその平均長軸長を、板状粉末においてはその板状面の最大の対角線の長さの平均値をそれぞれ意味し、電子顕微鏡による測定から容易に求めることができる。
上記の有機または無機粉末は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。
感光層側の最外層に含まれる有機または無機粉末の平均粒径は通常0.5〜8.0μm、好ましくは1.0〜6.0μmであり、より好ましくは2.0〜5.0μmである。添加量は最外層に用いられるバインダー量(硬化剤についてはバインダー量に含む)に対して通常1.0〜20質量%であり、好ましくは2.0〜15質量%であり、より好ましくは3.0〜10質量%である。支持体をはさんで感光層側とは反対側の最外層に含まれる有機または無機粉末の平均粒径は、通常2.0〜15.0μm、好ましくは3.0〜12.0μmであり、より好ましくは4.0〜10.0μmである。添加量は最外層に用いられるバインダー量(硬化剤についてはバインダー量に含む)に対して通常0.2〜10質量%であり、好ましくは0.4〜7質量%であり、より好ましくは0.6〜5質量%である。
また、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に、好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となる粉末である。
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
{(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)}×100
有機または無機粉末の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前に有機または無機粉末を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類の粉末を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
本発明に係る熱現像感光材料に用いる支持体の素材としては各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(例えばアルミニウム)等が挙げられるが、情報記録材料としての取り扱い上は可撓性のあるシートまたはロールに加工できるものが好適である。従って本発明の熱現像感光材料における支持体としては、プラスチックフィルム(例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルムまたはポリカーボネートフィルム等)が好ましく、本発明においては2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
本発明においては、帯電性を改良するために金属酸化物及び/または導電性ポリマー等の導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは、バッキング層または感光性層側の表面保護層、下引層等に含まれる。本発明においては、米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された導電性化合物等が好ましく用いられる。
中でも本発明では、バッキング層側の表面保護層に導電性金属酸化物を含有することが好ましい。このことで、更に本発明の効果(特には熱現像処理時の搬送性)を高められることが分かった。ここで、導電性金属酸化物とは、結晶性の金属酸化物粒子であり、酸素欠陥を含むもの及び用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等は一般的に言って導電性が高いので特に好ましく、特に後者はハロゲン化銀乳剤にカブリを与えないので特に好ましい。金属酸化物の例としてZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜30モル%の範囲が好ましいが、0.1〜10モル%であれば特に好ましい。更にまた、微粒子分散性、透明性改良のために、微粒子作製時にケイ素化合物を添加してもよい。本発明に用いられる金属酸化物微粒子は導電性を有しており、その体積抵抗率は107Ωcm以下、特に105Ωcm以下である。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号等に記載されている。更にまた、特公昭59−6235号に記載のごとく、他の結晶性金属酸化物粒子或いは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。
利用できる粒子サイズは1μm以下が好ましいが、0.5μm以下であると分散後の安定性が良く使用しやすい。また光散乱性をできるだけ小さくするために、0.3μm以下の導電性粒子を利用すると透明感光材料を形成することが可能となり大変好ましい。また、導電性金属酸化物が針状或いは繊維状の場合はその長さは30μm以下で直径が1μm以下が好ましく、特に好ましいのは長さが10μm以下で直径0.3μm以下であり長さ/直径比が3以上である。尚、SnO2としては、石原産業社より市販されており、SNS10M、SN−100P、SN−100D、FSS10M等を用いることができる。
本発明の熱現像感光材料は支持体上に少なくとも1層の感光層である画像形成層を有している。支持体の上に画像形成層のみを形成してもよいが、画像形成層の上に少なくとも一層の非感光層を形成するのが好ましい。例えば画像形成層の上には保護層が、画像形成層を保護する目的で設けられることが好ましく、また支持体の反対の面には熱現像材料間の、或いは熱現像材料ロールにおいてくっつきを防止するために、バックコート層が設けられる。これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては画像形成層よりもガラス転位点が高く、擦り傷や、変形の生じにくいポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。
尚、階調調整等のために、画像形成層を支持体の一方の側に2層以上または支持体の両側に1層以上設置してもよい。
〔染料〕
本発明に係る熱現像感光材料においては、画像形成層を透過する光の量または波長分布を制御するために画像形成層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、画像形成層に染料または顔料を含有させることが好ましい。
本発明において用いられる染料としては、熱現像材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。
例えば、本発明に係る熱現像材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本公報ではチオピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料(本公報ではピリリウムスクアリリウム染料と呼ぶ)、またスクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシ基は解離していてもよい。以下本明細書ではこれらの色素を便宜的に一括してスクアリリウム染料と呼ぶ。尚、染料としては特開平8−201959号の化合物も好ましい。
〔構成層の塗布〕
本発明の熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば感光層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはエクストリュージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストリュージョン塗布法はスライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は感光層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。熱現像材料における同時重層塗布方法に関しては、特開2000−15173号に詳細な記載がある。
尚、本発明において、塗布銀量は、熱現像感光材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、医療用画像を目的とする場合には、0.3g/m2以上、1.5g/m2以下が好ましく、0.5g/m2以上、1.5g/m2以下がより好ましい。当該塗布銀量のうち、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましい、更には、5〜15%が好ましい。
また、本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014個/m2以上、1×1018個/m2以下が好ましい。更には、1×1015個/m2以上、1×1017個/m2以下が好ましい。
更に、前記の非感光性長鎖脂肪族カルボン酸銀の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり、1×10-17g以上、1×10-14g以下が好ましく、1×10-16g以上、1×10-15g以下がより好ましい。
上記のような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち、銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
本発明においては、熱現像感光材料が、現像時に溶剤を5〜1,000mg/m2の範囲で含有していることが好ましい。100〜500mg/m2であるように調整することがより好ましい。それにより、高感度、低カブリ、最高濃度の高い熱現像感光材料となる。
溶剤としては、特開2001−264930号の段落番号「0030」に記載のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。また、これらの溶剤は、単独、または数種類組合せて用いることができる。
尚、熱現像感光材料中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。また、当該溶剤の含有量は、含有させた溶剤を検出するために適した条件下におけるガスクロマトグラフィーで測定できる。
〔包装体〕
本発明の熱現像感光材料を保存する場合は、経時での濃度変化やカブリ発生を防止するため、包装体に収納して保存することが好ましい。包装体内の空隙率は0.01〜10%、好ましくは0.02〜5%とするのがよく、窒素封入を行って包装体内の窒素分圧を80%以上、好ましくは90%以上とするのがよい。
〔熱現像感光材料の露光〕
本発明の熱現像感光材料は、画像記録する際にレーザ光を用いるのが普通である。本発明の熱現像感光材料の露光は、当該材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、当該材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならばいかなる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、熱現像感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザ光走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55度以上、88度以下、より好ましくは60度以上、86度以下、更に好ましくは65度以上、84度以下、最も好ましくは70度以上、82度以下であることをいう。
レーザ光が、感光材料に走査される時の感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ光入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。この様なレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
また、第2の方法として、本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。
縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。尚、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザ光を用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
この様な複数本のレーザ光を利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば、特開昭60−166916号等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャー等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、1つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、2つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す。)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。この様な、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成することが好ましい。この際、通常の1本のレーザ光(波長λ[nm])で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEであり、露光に使用するN本のレーザ光が同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)である場合に、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。この様にすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
尚、上述では複数本のレーザ光の波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合には、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
尚、上述した第1、第2及び第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザによるレーザ光を用いるのが好ましい。尚、レーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザ光において、熱現像材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
〔熱現像処理装置〕
本発明でいう熱現像処理装置は、構成としては、フィルムトレイで代表されるフィルム供給部、レーザ画像記録部、熱現像感光材料の全面に均一で安定した熱を供給する熱現像部、フィルム供給部からレーザ記録を経て、熱現像により画像形成された熱現像感光材料を装置外に排出するまでの搬送部から構成される。この態様の熱現像処理装置の具体例は図1に示すものである。
熱現像装置100は、シート状の熱現像感光材料(フォトサーモグラフィックエレメントまたは単にフィルムともいう)を1枚ずつ給送する給送部110、給送されたフィルムFをレーザビームLで露光する露光部120、露光されたフィルムFを現像する現像部130、現像を停止させる冷却部150と集積部160とを有し、給送部のフィルムトレイCからフィルムFを供給するための供給ローラー対140、現像部にフィルムを送るための供給ローラー対144、各部間でフィルムFを円滑に移送するための搬送ローラー対141、142、143、145等複数のローラー対からなっている。熱現像部はフィルムFを現像する加熱手段として、外周にほぼ密着して保持しつつ加熱可能な複数の対向ローラー2を有するヒートドラム1と現像したフィルムFを剥離し冷却部に送るための剥離爪6等からなる。
尚、熱現像感光材料の搬送速度は10〜200mm/secが好ましい範囲である。
本発明の熱現像感光材料の現像条件は、使用する機器、装置、或いは手段に依存して変化するが、典型的には、適した高温において像様に露光した熱現像材料を加熱することにより現像を行うものである。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜200℃、好ましくは約100〜200℃)で、十分な時間(一般には約1秒〜約2分間)、熱現像材料を加熱することにより現像される。
加熱温度が80℃未満では、短時間に十分な画像濃度が得られず、また、200℃を越えると、バインダーが溶融し、ローラーへの転写等画像そのものだけでなく搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する。)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の供給を一切行わないで進行する。
加熱する機器、装置或いは手段としては、例えば、ホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段等で行ってよい。より好ましくは、保護層の設けられた熱現像材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理することが、均一な加熱を行う上で、また、熱効率、作業性等の観点から好ましく、保護層を有する側の面をヒートローラーに接触させながら搬送し、加熱処理して現像することが好ましい。