JP2006003701A - 熱現像感光材料および画像形成方法 - Google Patents

熱現像感光材料および画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、画像濃度が高く、光照射画像保存性に優れ、銀色調や熱現像時の濃度むらに優れ、常温保存時にもかぶりが小さい熱現像感光材料および画像形成方法を提供することにある。又、必要により、更に高温保存時の画像保存性に優れ、あるいはフィルムの搬送性、環境適性に優れた画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】 支持体上に有機銀塩、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する熱現像感光材料において、該熱現像感光材料を構成する層の少なくとも1層に下記一般式(A−7)、(A−8)、オキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ該ハロゲン化銀粒子が熱現像過程において表面潜像型から内部潜像型に変換することにより、表面感度が熱現像前より低下するハロゲン化銀粒子であることを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし

Description

本発明は、支持体上に有機銀塩、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する熱現像感光材料および画像形成方法に関する。
従来、医療や印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、熱を加えるだけで画像形成ができる熱現像感光材料が実用化され、上記分野で急速に普及してきている。
熱現像感光材料(以後、単に熱現像材料または感光材料ともいう)自体は既に古くから提案されており、例えば、米国特許第3,152,904号明細書、同3,457,075号明細書に記載されている。
この熱現像材料は、通常、熱現像処理機と呼ばれる熱現像材料に安定した熱を加えて画像を形成する熱現像処理装置により処理される。上述したように、近年の急速な普及に伴い、この熱現像処理装置も多量に市場に供給されてきた。ところが熱現像処理時の温湿度条件によっては、感光材料と熱現像処理装置の搬送ローラーや処理部材との間の滑り性が変化し、搬送不良や濃度むらが発生してしまうという問題点があった。また、熱現像感光材料の濃度が経時により変動してしまうという問題点もあった。これらの現象はレーザ光により画像露光した後、熱現像により画像形成する熱現像感光材料で顕著に発生することが分かった。また、近年レーザイメージャーのコンパクト化や処理の迅速化が要望されている。
そのためには熱現像感光材料の特性向上が必須となる。迅速処理を行っても十分な熱現像感光材料の濃度を得るためには、特開平11−295844号、同11−352627号の各公報に示されるようにハロゲン化銀として平均粒子サイズの小さいものを用いて発色点数を増やすことによりカバリングパワーを上げたり、特開2001−209145号公報に示されるような2級、3級アルキル基を有する高活性の還元剤を用いたり、ヒドラジン化合物やビニル化合物、フェノール誘導体やナフトール誘導体等の現像促進剤を用いることが有効である(特許文献1、2)。
また感光性ハロゲン化銀を使用した熱現像感光材料においては、熱現像後もハロゲン化銀が乳剤層中に残存するため、光照射画像保存性が劣化してしまう問題点があり従来から改良が試みられてきた(特許文献3、4)。
特開2002−278017号公報(特許請求の範囲) 特開2003−066558号公報(特許請求の範囲) 特開2003−270755号公報(特許請求の範囲) 特開2004−004522号公報(特許請求の範囲)
特許文献3、4に記載されたハロゲン化銀を用いることで光照射画像保存性はある程度改良できるが、処理の迅速化を行った場合には十分な画像濃度が得られないという問題点があった。十分な画像濃度を得るために高活性の現像剤や特許文献1、2に記載されるような現像促進剤を使用すると画像濃度は得ることができるが、常温における経時でのかぶりが上昇するという課題が発生した。また銀色調、熱現像時の濃度むらについても満足のゆくレベルではなかった。
本発明は上記の課題に鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、画像濃度が高く、光照射画像保存性に優れ、銀色調や熱現像時の濃度むらに優れ、常温保存時にもかぶりが小さい熱現像感光材料および画像形成方法を提供することにある。又、必要により、更に高温保存時の画像保存性に優れ、あるいはフィルムの搬送性、環境適性に優れた画像形成方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
支持体上に有機銀塩、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する熱現像感光材料において、該熱現像感光材料を構成する層の少なくとも1層が下記一般式(A−7)、(A−8)及びオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ該ハロゲン化銀が熱現像過程で表面潜像型から内部潜像型に変換することにより、表面感度が熱現像前より低下するハロゲン化銀粒子であることを特徴とする熱現像感光材料。
一般式(A−7)
7−P7−L7−(C=Q7)−W7
〔式中、P7は酸素原子、硫黄原子またはNH基を表し、Q7は酸素原子または硫黄原子を表し、W7はOH基、OM基、SH基、SM基(Mは対イオン)またはNH2基を表し、L7はアルキレン基を表し、Z7はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。〕
Figure 2006003701
〔式中、Zは含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表し、XはSO2基またはOSO2基を表し、R81は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基またはヘテロ環基を表す。〕
(請求項2)
一定時間、白色光又は特定の分光増感領域の光を光学楔を通して露光した後に、通常の実用的熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる感度に対し、露光前に該実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間、白色光又は特定の分光増感領域の光で露光し、さらに熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
(請求項3)
前記ハロゲン化銀粒子が、その内部に少なくとも熱現像後に電子トラップとして機能するドーパントを含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像感光材料。
(請求項4)
前記ハロゲン化銀粒子が、表面に分光増感色素を吸着せしめ分光増感が施されており、かつ熱現像過程経過後に該分光増感の効果が実質的に消失することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱現像感光材料。
(請求項5)
前記ハロゲン化銀粒子が、表面に化学増感が施されており、かつ熱現像過程経過後に該化学増感の効果が実質的に消失することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の熱現像感光材料。
(請求項6)
画像形成層を有する面側が、ビニル化合物、ヒドラジン誘導体、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、シラン化合物及び4級オニウム塩から選ばれる少なくとも1種の省銀化剤を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項7)
前記バインダーのガラス転移温度(Tg)が70〜150℃であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項8)
下記一般式(SF)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の熱現像感光材料。
一般式(SF)
(Rf−(L)n1−)p−(Y)m1−(A)q
〔式中、Rfは弗素原子を有する置換基を表し、Lは弗素原子を有しない2価の連結基を表し、Yは弗素原子を有しない(p+q)価の連結基を表し、Aはアニオン基又はその塩基を表す。m1、n1は各々0又は1を表し、p及びqは各々1〜5の整数を表す。ただし、qが1の時、n1とm1は同時に0とはならない。〕
(請求項9)
前記ハロゲン化銀が、平均粒子サイズが10〜50nmであるハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項10)
前記ハロゲン化銀が、更に平均粒子サイズ55〜100nmのハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項9に記載の熱現像感光材料。
(請求項11)
前記ハロゲン化銀が、カルコゲン化合物により化学増感されたハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項12)
画像形成層に含有される銀量が、0.3〜1.5g/m2であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項13)
画像形成層を有する面側の最表面の十点平均粗さをRz(E)とし、支持体をはさんで画像形成層と反対面側の最表面の十点平均粗さをRz(B)としたとき、Rz(E)/Rz(B)が0.1以上、0.7以下であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項14)
画像形成層を有する面側の構成層に含まれるマット剤の平均粒子サイズが最大のものの平均粒子サイズをLe(μm)とし、支持体をはさんで画像形成層と反対面側の構成層に含まれるマット剤の平均粒子サイズが最大のものの平均粒子サイズをLb(μm)としたとき、Lb/Leが2.0以上、10以下であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項記載の熱現像感光材料。
(請求項15)
請求項1〜14の何れか1項記載の熱現像感光材料を、熱現像処理装置を使用して熱現像部の搬送速度を10〜200mm/sec、熱現像感光材料供給部から画像露光部の間の搬送速度を10〜200mm/sec、且つ画像露光部での搬送速度を10〜200mm/secで熱現像することを特徴とする画像形成方法。
本発明によれば、迅速処理を行った場合でも高濃度を維持しつつ、光照射画像保存性、銀色調や熱現像時の濃度むらに優れ、常温保存時にもかぶり上昇が小さい熱現像感光材料および画像形成方法を提供することができる。また、必要により、更に高温保存時の画像保存性に優れ、あるいはフォルムの搬送性、環境適性に優れた熱現像感光材料および画像形成方法を提供することができる。
本発明においては、熱現像過程において表面潜像型から内部潜像型に変換するハロゲン化銀粒子を用いて、迅速処理を行った場合に問題となる画像濃度の低下、銀色調、熱現像時の濃度むら、常温保存時のかぶり上昇を改良するために検討を重ねた結果、前記一般式(A−7)、(A−8)及びオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することにより上記目的が達成されることを見いだし、本発明に到達した。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
(一般式(A−7)、一般式(A−8)で表される化合物)
一般式(A−7)で表される化合物について説明する。一般式(A−7)において、−(C=Q7)−W7で表される置換基の好ましい例として、カルボキシル基、カルボン酸塩、チオカルボキシル基、チオカルボン酸塩、ジチオカルボキシル基、ジチオカルボン酸塩、カルバモイル基を挙げることができる。W7がOM基またはSM基であるとき(Mは対イオンを表す)、対イオンの例としては、無機あるいは有機のアンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)、その他の金属イオン(例えば、アルミニウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン)が挙げられる。イオン性ポリマー、あるいは逆電荷を有する他の有機化合物、あるいは金属錯イオン(例えば、ヒドロキソペンタアクアアルミニウム(III)イオン、トリス(2,2′−ビピリジン)鉄(II)イオン)も対イオンになりうる。また、分子内の他の置換基と分子内塩を形成していても良い。好ましいものは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンであるり、さらに好ましいものはナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
7で表されるアルキレン基の長さは、好ましくは1〜4原子分、さらに好ましくは1ないし2原子分である。Lで表されるアルキレン基は、更に置換基を有していてもよい。好ましい例としては−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH(CH2CH3)CH2−などを挙げることができる。より好ましいのは、−CH2−である。
7で表されるアルキル基は、直鎖、分岐、環状またはこれらの組み合わせのアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜25である。例えば、メチル基、エチル基、アリル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、tert−オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、2−ヘキシルデシル基、2−エチルヘキシル基、6−メチル−1−(3−メチルヘキシル)ノニル基、ベンジル基等が挙げられる。
7で表されるアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては既知のいかなる基であっても構わない。例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(N−置換の含窒素ヘテロ環基を含む、例えばモルホリノ基)、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、カルバゾイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシルアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、ニトロ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、スルファモイル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、カルボキシル基またはその塩、スルホ基またはその塩、リン酸基、ヒドロキシ基、4級アンモニウム基等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
7で表される置換基を有するアルキル基の例として、アリールオキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ポリアルキレンオキシアルキル基(ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基など)、アルキルチオアルキル基(エチルチオエチル基など)などを挙げることができる。
7で表されるアリール基は単環または縮合環のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、さらに好ましくは6〜10であり、フェニル基またはナフチル基が好ましい。Z7で表されるアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては写真性能に悪影響を及ぼさない置換基であればどのような基でも構わない。例えば、前述のアルキル基の置換基と同様の基が挙げられる。アリール基上の置換基の好ましい置換位置は2−位であり、置換基がP7、Q7またはW7と共に銀イオンと錯体を形成することができるものであることが好ましい。置換基及び置換位置の好ましい例としては、2−カルボキシ基、2−カルバモイル基、2−チオカルボキシ基、2−ジチオカルボキシル基などを挙げることができる。
7で表されるヘテロ環基は、ヘテロ環が窒素、酸素および硫黄原子からなる群より選ばれるヘテロ原子を1個以上含む、5〜7員の飽和または不飽和の単環または縮合環であるものが好ましい。ヘテロ環の例としては、好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環等が挙げられ、さらに好ましくはピリジン環、キノリン環、ピリミジン環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、特に好ましくは、ピリジン環、キノリン環、ピリミジン環である。Z7で表されるヘテロ環基は置換基を有してもよく、例えば前述のアルキル基の置換基と同様の基が挙げられる。
7は、好ましくは、置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基、キノリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ポリエチレンオキシ基であり、更に好ましくは、フェニル基、置換フェニル基であり、特に好ましくは、2−アルキルフェニル基、2,4−ジアルキルフェニル基、2−カルボキシフェニル基、2−カルバモイルフェニル基、2−チオカルボキシフェニル基である。また、Z7の置換基として、写真用素材で公知のいわゆるバラスト基や、銀塩への吸着基、水溶性を付与する基を有していてもよい。置換基どうしが結合してビス型、トリス型、テトラキス型を形成してもよく、互いに重合してポリマーを形成してもよい。
一般式(A−7)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、一般式(A−7)で表される化合物の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
一般式(A−7)で表される化合物は、支持体に対して画像形成層側のいずれの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。一般式(A−7)で表される化合物の添加量は好ましくは0.01〜10mmol/m2の範囲で、より好ましくは0.1〜5mmol/m2、さらにより好ましくは0.2〜2mmol/m2の範囲である。
一般式(A−7)で表される化合物の具体例としては、例えば特開2001−13627号公報の段落番号「0063」記載の化合物(I−1)〜(I−6)、段落番号「0066」記載の(C−1)〜(C−3)、特開2002−90937号公報の段落番号「0027」記載の化合物(III−1)〜(III−108)があげられる。以下に一般式(A−7)で表される化合物の好ましい例を挙げるが、本発明で使用することができる一般式(A−7)の化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006003701
次に本発明で用いられる一般式(A−8)の化合物について説明する。
前記式中、Zは含窒素複素環を形成するに必要な原子群を表す。前記含窒素複素環には、縮環構造を有する含窒素複素環も含まれる。Zにより形成される含窒素複素環の例としては、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、1H−インダゾール、プリン、ペリミジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、2−ピロリン、2−イミダゾリン、3−ピラゾリン、モルホリン、インドリン、イソインドリン、チアゾール、チアゾリン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、オキサゾリン、セレナゾール、ナフトセレナゾール、セレナゾリン、テルラゾール、ベンゾテルラゾール、ナフトテルラゾール、テルラゾリン、インドレニン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、オキサジアゾール、チアジアゾール等を好ましい例として挙げることができる。
Zにより形成される含窒素複素環の更に好ましい例としてはピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、1H−インダゾール、プリン、ペリミジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、2−ピロリン、2−イミダゾリン、3−ピラゾリン、モルホリン、インドリン、イソインドリン、チアゾリン、オキサゾリン等を挙げることができる。
Zにより形成される含窒素複素環として特に好ましいものは、ベンゾトリアゾール、1H−インダゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、2H−チアゾリン、イミダゾリジンである。
Zにより形成される含窒素複素環は更に置換基を有していてもよく、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。含窒素複素環の置換基の例としては、特開2002−236335号公報の段落番号「0023」〜同「0028」に記載の置換基を用いることができる。
前記式中、R81は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基、飽和または不飽和のヘテロ環基を表すが、アルキル基、アリール基、飽和または不飽和のヘテロ環基であることがより好ましい。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、更に好ましくは炭素数1〜22であり、特に好ましくは炭素数4〜22である。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、ペンチル基、ヘキシル基、n−オクチル基、t−オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イコサ基、ドコサ基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フェネチル基、トリルエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、ナフトキシエチル基、スルホフェネチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、カルバモイルエチル基、ヒドロキシエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、スルホエチル基、2−クロロ−3−スルホプロピル基、3−スルホプロピル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、2−(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ)エチル基、2−〔2−(3−スルホプロピルオキシ)エトキシ〕エチル基、アセチルアミノエチル基、メチルスルホニルアミノエチル基、メチルスルホニルアミノカルボニルエチル基、アセチルアニノカルボニルエチル基等が挙げられる。
81で表されるアリール基としては、炭素数6〜30であることが好ましく、炭素数6〜22であることが更に好ましく、炭素数6〜20であることが特に好ましい。R81で表されるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−トリル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−クロロフェニル基、m−シアノフェニル基、p−カルボキシフェニル基、o−カルボキシフェニル基、o−(メトキシカルボニル)フェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、m−エトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル基、メシチル基等が挙げられる。
81で表される飽和または不飽和の複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、モルホリル基、キノリル基、ピペラジノ基、ピロリジニル基等を挙げることができる。R81で表されるこれらの基は、更に置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前述のZにより形成されるヘテロ環の置換基を挙げることができる。
前記一般式(A−8)で表される化合物は、Zh.Obshch.Khim.,2614(1959),Indian J.Chem.,1273(1986),J.Gen.Chem.U.S.S.R(Engl.Transl.),188(1965)等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。一般式(A−8)で表される化合物の例としては例えばUSP6171767のカラム9〜10に記載の化合物KS−1〜KS−8が挙げられる。以下に本発明の一般式(A−8)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2006003701
(オキサゾリン化合物)
本発明に用いられるオキサゾリン化合物は、分子内にオキサゾリル基を有するものの中から選択することができる。オキサゾリル基は、2−オキサゾリル基、3−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基のいずれであってもよいが、2−オキサゾリル基が好ましい。また、これらのオキサゾリル基の水素原子は置換されていてもよい。本発明に用いられるオキサゾリン化合物に存在するオキサゾリル基の数は特に制限されないが、2つ以上であることが好ましい。このとき、分子内に複数存在するオキサゾリル基はすべて同一であっても異なっていてもよい。なお、オキサゾリル基以外の部分の構造は特に制限されず、本発明の所期の効果を阻害しない範囲内で適宜選択することができる。
本発明に用いられるオキサゾリン化合物は、特に下記一般式(3)で表される2−オキサゾリル基を分子内に2つ以上有する化合物であることが好ましい。
Figure 2006003701
式中、R9、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基及びアリール基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
より具体的には、本発明に用いられる好ましいオキサゾリン化合物は、分子量と繰り返し構造の有無の観点から、(1)2つ以上の2−オキサゾリル基を有する低分子化合物と、(2)2−オキサゾリル基を有するモノマー単位を単独または共重合可能なモノマーと重合して得られる高分子(ポリマー)化合物の2種に大別される。以下にそれぞれの場合につい説明するが、本発明は以下に記載の具体的化合物例に限定されるものではない。
(1)2つ以上の2−オキサゾリル基を有する低分子化合物
本発明に用いられる2つ以上の2−オキサゾリル基を有する低分子化合物は、1分子に付き2つ以上の上記一般式(3)で表される2−オキサゾリル基を有するものであれば特に制限はない。好ましくは2つ以上の2−オキサゾリル基の間を有機連結基で連結された化合物である。有機連結基としては、2価以上の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は2価以上の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、及びそれらと−O−や−C(=O)NH−との組み合わせが挙げられる。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。有機連結基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、1,3−ナフチレン基、エチレン基、ブチレン基、へキシレン基、オクチレン基、1,2,3−プロパントリイル基、1,3−プロパンジイル−2−イリデン基、−CH2CH2O(C=O)NH−(CH2)n−NH(C=O)OCH2CH2−(n=2,4,6)などが挙げられる。2つ以上の2−オキサゾリル基を有する低分子化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物例に限定されるものではない。
Figure 2006003701
(2)2−オキサゾリル基を有するモノマー単位を単独または共重合可能なモノマーと重合して得られる高分子(ポリマー)化合物
特開2001−215653号公報の段落番号「0018」〜「0039」に記載の化合物、具体的にはエポクロスK−1010E、K−1020E、K−1030E、K−2010E、K−2020E(以上、日本触媒社製)の名称で市販されているものを用いることができる。
本発明のオキサゾリン化合物の含有量としては、含まれるバインダーに対して0.5〜200質量%であることが好ましく、2〜100質量%であることがより好ましく、さらには3〜50質量%であることがより好ましい。
(有機銀塩)
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号公報の段落番号「0048」〜「0049」、欧州特許出願公開第803,764号明細書の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許出願公開第962,812号明細書、特開平11−349591号公報、特開2000−7683号公報、同2000−72711号公報、同2002−23301号公報、同2002−23303号公報、同2002−49119号公報、196446号公報、欧州特許出願公開第1246001号明細書、欧州特許出願公開第1258775号明細書、特開2003−140290号公報、特開2003−195445号公報、同2003−295378号公報、同2003−295379号公報、同2003−295380号公報、同2003−295381号公報等に記載されている。
本発明においては、上記の有機銀塩と併用して、脂肪族カルボン酸の銀塩、特に炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩を用いることができる。銀塩を生成するための脂肪族カルボン酸の分子量は好ましくは200〜500であり、より好ましくは250〜400である。脂肪酸銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、およびこれらの混合物などを含む。
本発明においては、これら脂肪酸銀の中でも、ベヘン酸銀含有率が好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上99.9モル%以下、更に好ましくは90モル%以上99.9モル%以下の脂肪酸銀を用いることが好ましい。
上記以外の有機銀としては、コアシェル有機銀塩(特開2002−23303号公報)、多価カルボン酸の銀塩(EP1246001号明細書、特開2004−061948号公報)、ポリマー銀塩(特開2000−292881号公報、特開2003−295378〜2003−295381号公報)を用いることもできる。
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては、特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状いずれでもよい。本発明においては、りん片状の有機銀塩が好ましい。また、長軸と単軸の長さの比が5以下の短針状、直方体、立方体またはジャガイモ状の不定形粒子も好ましく用いられる。これらの有機銀塩粒子は、長軸と単軸の長さの比が5以上の長針状粒子に比べて熱現像時のカブリが少ないという特徴を有している。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは20≧x(平均)≧2.0である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm以上、0.23μmが好ましく、0.1μm以上、0.20μm以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上、6以下、より好ましくは1.05以上、4以下、更に好ましくは1.1以上、3以下、特に好ましくは1.1以上、2以下である。
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては、例えば、液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法等を適用することができる。例えば、上記の特開平10−62899号公報、欧州特許出願公開第803,763号明細書、欧州特許出願公開第962,812号明細書、特開2001−167022号公報、同2000−7683号公報、同2000−72711号公報、同2001−163889号公報、同2001−163890号公報、同2001−163827号公報、同2001−33907号公報、同2001−188313号公報、同2001−83652号公報、同2002−6442号公報、同2002−31870号公報、同2003−280135号公報等を参考にすることができる。
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明では、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1モルに対し1モル%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%以下であり、更に好ましいのは積極的な感光性銀塩の添加を行わないものである。
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1〜30モル%の範囲が好ましく、更に2〜20モル%、特に3〜15モル%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、より好ましくは0.3〜3g/m2、更に好ましくは0.5〜2g/m2である。
(ハロゲン化銀)
本発明に係るハロゲン化銀(以下、感光性ハロゲン化銀粒子またはハロゲン化銀粒子ともいう)について説明する。尚、本発明に係るハロゲン化銀とは、ハロゲン化銀結晶の固有の性質として本来的に光吸収し得て、または人為的に物理化学的な方法により可視光ないし赤外光を吸収し得て、且つ紫外光領域から赤外光領域の光波長範囲内の何れかの領域の光を吸収した時に当該ハロゲン化銀結晶内及び/または結晶表面において物理化学的変化が起こり得るように処理製造されたハロゲン化銀結晶粒子をいう。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子自体は、公知の方法を用いてハロゲン化銀粒子乳剤(ハロゲン化銀乳剤ともいう)として調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよいが、上記方法の中でも形成条件をコントロールしつつハロゲン化銀粒子を調製する、いわゆるコントロールドダブルジェット法が好ましい。
粒子形成は、通常ハロゲン化銀種粒子(核)生成と粒子成長の2段階に分けられ、一度にこれらを連続的に行う方法でもよく、また核(種粒子)形成と粒子成長を分離して行う方法でもよい。粒子形成条件であるpAg、pH等をコントロールして粒子形成を行うコントロールドダブルジェット法が粒子形状やサイズのコントロールができるので好ましい。例えば、核生成と粒子成長を分離して行う方法を行う場合には、先ず銀塩水溶液とハライド水溶液をゼラチン水溶液中で均一、急速に混合させ核(種粒子)生成(核生成工程)した後、コントロールされたpAg、pH等のもとで銀塩水溶液とハライド水溶液を供給しつつ粒子成長させる粒子成長工程によりハロゲン化銀粒子を調製する。粒子形成後、脱塩工程により不要な塩類等をヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等公知の脱塩法により除くことで所望のハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
本発明において、ハロゲン化銀粒子の粒子サイズは単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる粒子サイズの変動係数が30%以下をいう。好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
粒子サイズの変動係数%=(粒径の標準偏差/粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、14面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、これらの中、特に、立方体、八面体、14面体、平板状ハロゲン化銀粒子が好ましい。
平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は、好ましくは1.5以上、100以下、より好ましくは2以上、50以下である。これらについては米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号の各明細書に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。
ハロゲン化銀粒子外表面の晶癖については特に制限はないが、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着反応において、晶癖(面)選択性を有する増感色素を使用する場合には、その選択性に適応する晶癖を相対的に高い割合で有するハロゲン化銀粒子を使用することが好ましい。例えば、ミラー指数〔100〕の結晶面に選択的に吸着する増感色素を使用する場合には、ハロゲン化銀粒子外表面において〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。尚、ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985年)により求めることができる。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に平均分子量5万以下の低分子量ゼラチンを用いて調製することが好ましいが、特にハロゲン化銀粒子の核形成時に用いることが好ましい。
本発明において低分子量ゼラチンは、平均分子量5万以下のものが好ましく、より好ましくは2,000〜40,000であり、特に好ましくは5,000〜25,000である。ゼラチンの平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィーで測定することができる。低分子量ゼラチンは、通常用いられる平均分子量10万程度のゼラチン水溶液にゼラチン分解酵素を加えて酵素分解したり、酸またはアルカリを加えて加熱し加水分解したり、大気圧下または加圧下での加熱により熱分解したり、超音波照射して分解したり、それらの方法を併用したりして得ることができる。
核形成時の分散媒の濃度は5質量%以下が好ましく、0.05〜3.0質量%の低濃度で行うのがより好ましい。
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、該粒子形成時に下記の一般式で表される化合物を用いることが好ましい。
YO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)p(CH2CH2O)n
式中、Yは水素原子、−SO3M、または−CO−B−COOMを表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基または炭素原子数5以下のアルキル基にて置換されたアンモニウム基を表し、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状または環状の基を表す。m及びnは各々0〜50を表し、pは1〜100を表す。
上記の一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料を製造するに際し、ゼラチン水溶液を製造する工程、ゼラチン溶液に水溶性ハロゲン化物及び水溶性銀塩を添加する工程、乳剤を支持体上に塗布する工程等、乳剤原料を撹拌したり、移動したりする場合の著しい発泡に対する消泡剤として好ましく用いられてきたものであり、消泡剤として用いる技術は、例えば、特開昭44−9497号公報に記載されている。上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は核形成時の消泡剤としても機能する。上記一般式で表される化合物は銀に対して1質量%以下で用いるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%で用いる。
上記一般式で表されるポリエチレンオキシド化合物は核形成時に存在していればよく、核形成前の分散媒中に予め加えておくのが好ましいが、核形成中に添加してもよいし、核形成時に使用する銀塩水溶液やハライド水溶液に添加して用いてもよい。好ましくはハライド水溶液もしくは両方の水溶液に0.01〜2.0質量%で添加して用いることである。また、上記一般式で表される化合物は核形成工程の少なくとも50%に亘る時間で存在せしめるのが好ましく、更に好ましくは70%以上に亘る時間で存在せしめる。上記一般式で表される化合物は粉末で添加しても、メタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
尚、核形成時の温度は通常5〜60℃、好ましくは15〜50℃であり、一定の温度であっても、昇温パターン(例えば、核形成開始時の温度が25℃で、核形成中徐々に温度を上げ、核形成終了時の温度が40℃の様な場合)やその逆のパターンであっても前記温度範囲内で制御するのが好ましい。
核形成に用いる銀塩水溶液及びハライド水溶液の濃度は3.5モル/L以下が好ましく、更には0.01〜2.5モル/Lの低濃度域で使用されるのが好ましい。核形成時の銀イオンの添加速度は、反応液1L当たり1.5×10-3〜3.0×10-1モル/分が好ましく、更に好ましくは3.0×10-3〜8.0×10-2モル/分である。
核形成時のpHは通常1.7〜10の範囲に設定できるが、アルカリ側のpHでは形成する核の粒径分布を広げてしまうので、好ましくはpH2〜6である。また、核形成時のpBrは通常0.05〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.5〜2.0である。
本発明において、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは通常10〜50nm、好ましくは10〜40nmであり、より好ましくは10〜35nmである。ハロゲン化銀の平均粒子サイズが10nmより小さいと画像濃度が低下したり、光照射画像保存性が劣化したりすることがある。又、50nmを超えると画像濃度が低下してしまうことがある。
ここで言う平均粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体、あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さを言う。又、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には、主表面の投影面積と同面積の円像に換算した時の直径を言う。その他、正常晶でない場合、例えば、球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えた時の直径を粒子サイズとして算出する。測定は電子顕微鏡を用いて行い、300個の粒子サイズの測定値を平均することで平均粒子サイズを求めた。
また本発明においては平均粒子サイズが55〜100nmであるハロゲン化銀粒子と平均粒子サイズが10〜50nmであるハロゲン化銀粒子とを併用することで、画像濃度を向上させたり、経時での画像濃度低下を改善(小さく)することができる。平均粒子サイズが10〜50nmであるハロゲン化銀粒子と平均粒子サイズが55〜100nmであるハロゲン化銀粒子との割合(質量比)は、95:5〜50:50が好ましく、より好ましくは90:10〜60:40である。
ハロゲン組成としては本発明のハロゲン化銀粒子では沃化銀含有量が5モル%以上100モル%以下であるものも使用することができる。沃化銀含有率がこの範囲であれば、粒子内ハロゲン組成分布が、均一であっても、段階的に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、内部および/または表面に沃化銀含有率が高いコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子である。本発明で用いる乳剤の好ましい沃化銀含有量は、ハロゲン化銀量に対して10モル%以上100モル%以下である。より好ましくは40モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは70モル%以上100モル%以下であり、特に好ましくは90モル%以上100モル%以下である。これらのハロゲン化銀は、350nm〜440nmの間の波長に沃化銀結晶構造に由来する直接遷移吸収を示すことが好ましい。これらハロゲン化銀が直接遷移の光吸収を持っているかどうかは、400nm〜430nm付近に直接遷移に起因する励起子吸収が見られることで容易に区別することができる。ハロゲン化銀粒子に沃化銀を導入する方法としては、粒子形成中に沃化アルカリ水溶液を添加する方法、微粒子沃化銀、微粒子沃臭化銀、微粒子沃塩化銀、微粒子沃塩臭化銀のうち少なくとも一つの微粒子を添加する方法、特開平5−323487号公報および特開平6−11780号公報記載の沃化物イオン放出剤を用いる方法などが好ましい。
(熱現像後内潜型ハロゲン化銀粒子)
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子は、熱現像によって表面潜像型から内部潜像型に変換することにより表面感度が低下するハロゲン化銀粒子であることを特徴とする。すなわち、熱現像前の露光では、現像反応(銀イオン還元剤による銀イオンの還元反応)の触媒として機能し得る潜像を該ハロゲン化銀粒子の表面に形成し、熱現像過程経過後の露光では該ハロゲン化銀粒子の表面より内部に多くの潜像を形成するようになるため、表面における潜像形成が抑制されるハロゲン化銀粒子であることを特徴とする。なお、このように熱現像処理前後で潜像形成機能が大幅に変化するハロゲン化銀粒子をドライイメージング材料に用いることは従来知られていなかった。
一般に、感光性ハロゲン化銀粒子が露光されると、ハロゲン化銀粒子自身、又は、感光性ハロゲン化銀粒子表面上に吸着している分光増感色素が光励起されて、自由に移動できる電子を生じるが、この電子はハロゲン化銀粒子表面に存在する電子トラップ(感光中心)又は当該粒子の内部にある電子トラップに競争的にトラップ(捕獲)される。従って、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子内部より表面に多くかつ適当数ある場合には表面に優先的に潜像が形成され、現像可能となる。逆に、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子表面より内部に多くかつ適当数ある場合には内部に優先的に潜像が形成され、表面現像が困難となる。換言すると、前者の場合は、内部より表面の感度が高く、後者の場合は、内部より表面の感度が低いと言える(参考文献:(1)T.H.James編”The Theory of the Photographic Process”第4版、Macmillan Publishing Co.,Ltd.1977、(2)日本写真学会編”改訂 写真工学の基礎(銀塩写真編)”、コロナ社、1998)。
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子においては、少なくとも熱現像後の露光時において、電子トラップ性ドーパントとして機能するドーパントをハロゲン化銀粒子の内部に含有させることが、感度及び画像保存性上好ましい。
なお、熱現像前の画像形成のための露光の際には、正孔(ホール)トラップとして機能し、熱現像過程において変質し、熱現像後においては電子トラップとして機能することができるドーパントが、特に好ましい。
ここで用いられる電子トラップ性ドーパントとは、ハロゲン化銀粒子を構成する銀及びハロゲン以外の元素又は化合物であって、当該ドーパント自身が自由電子をトラップ(捕獲)できる性質を有する又は当該ドーパントがハロゲン化銀粒子内に含有されることで電子トラップ性の格子欠陥等の部位が生じるものをいう。例えば、銀以外の金属イオン又はその塩若しくは錯体、硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲン(酸素族元素)又は窒素原子を含む無機化合物又は有機化合物若しくはそれらの金属錯体、希土類イオン又はその錯体等が挙げられる。
金属イオン又はその塩若しくは錯体としては、鉛イオン、ビスマスイオン、金イオン等又は臭化鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、硫酸鉛、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、三塩化ビスマス、炭酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、塩化金酸、酢酸鉛、ステアリン酸鉛、酢酸ビスマス等を挙げることが出来る。
硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲンを含む化合物としては、写真業界において、一般にカルコゲン増感剤として知られているカルコゲン放出性の種々の化合物を使用することが出来る。また、カルコゲン又は窒素を含有する有機物としては、ヘテロ環式化合物が好ましい。例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンである。
なお、上記のヘテロ環式化合物は置換基を有していても良く、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基である。
なお、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、上記のドーパントのように電子トラップ性ドーパントとして機能するように、或いはホールトラップ性ドーパントとして機能するように元素周期律表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させても良い。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが好ましい。
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種或いは異種の化合物若しくは錯体を2種以上併用してもよい。ただし、少なくとも1種は、熱現後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
なお、本発明においては、Ir、又はCuの錯体ないし塩の何れか1種を単独で用いてドーピングする態様はあまり好ましくはない。
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10-9〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-1モルの範囲がより好ましい。さらに、1×10-6〜1×10-2モルが好ましい。
但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
本発明においては、遷移金属錯体又は錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
一般式
〔ML6m
式中、Mは元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、−、2−、3−又は4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に、核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回にわたって分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等の各公報に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することが出来る。
本発明に係るイメージング材料において、上記のドーパントが電子トラップ性を有するか否かについては、次のように、写真業界において従来一般的に用いられている方法で評価することが出来る。即ち、上記のドーパント又はその分解物がハロゲン化銀粒子内にドープされたハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤を、マイクロ波光伝導測定法等による光伝導測定によりドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を基準として光伝導の減少度を測定することにより評価出来る。又は、当該ハロゲン化銀粒子の内部感度と表面感度の比較実験によっても出来る。
又は、光熱写真ドライイメージング材料とした後に本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、当該イメージング材料を露光前に通常の実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば30秒間)、白色光又は特定の分光増感領域の光(特定の波長域のレーザー光に対して分光増感を施した場合は、当該波長領域の光、例えば、赤外光に対して分光増感を施した場合には、赤外光)を光学楔を通して露光し、さらに同一の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線(センシトメトリーカーブ)に基づき得られる感度を当該電子トラップ性ドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を使用したイメージング材料の感度と比較することにより評価できる。即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の感度に比較して低くなっていることの確認が必要である。
なお、当該材料に、一定時間(例えば30秒間)、白色光又は特定の分光増感領域の光(例えば、赤外光)を光学楔を通して露光をした後に、通常の熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる当該試料の感度に対して露光前に通常の熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に上記と同一の一定時間、及び、一定の露光を施し、さらに通常の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/10以下、好ましくは、1/20以下、更にハロゲン化銀乳剤に化学増感を施した場合は、好ましくは1/50以下の低感度であることが好ましい。
本発明に係るハロゲン化銀粒子は、いかなる方法で感光性層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのが、高感度かつ高カバリングパワー(CP)のイメージング材料を得るためには、好ましい。
本発明に係るハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製するための溶液に添加することが、ハロゲン化銀粒子調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱え、製造コントロール上も最も好ましいが、英国特許第第1,447,454号明細書に記載されている様に、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際に、ハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで、脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させたハロゲン化銀粒子を併用することもできる。又、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製し、当該粒子を併用することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、又は脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例は、米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号の各明細書、及び特開昭53−27027号、同53−25420号等の各公報に開示されている。
上述のように別途調製したハロゲン化銀粒子に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。
これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モルで使用するのが好ましい。
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、脱塩工程により不要な塩類等を、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
(化学増感)
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子には、化学増感を施すことができる。例えば、特開2001−249428号及び特開2001−249426号の各公報に記載されている方法等により、硫黄、セレン、テルル等のカルコゲンを放出する化合物や金イオンなどの貴金属イオンを放出する貴金属化合物の利用により、感光性ハロゲン化銀粒子又は当該粒子上の分光増感色素の光励起によって生じた電子又は正孔(ホール)を捕獲することができる化学増感中心(化学増感核)を形成付与できる。特に、カルコゲン原子を含有する有機増感剤により化学増感されているのが好ましい。
これらカルコゲン原子を含有する有機増感剤は、ハロゲン化銀へ吸着可能な基と不安定カルコゲン原子部位を有する化合物であることが好ましい。
これらの有機増感剤としては、特開昭60−150046号、特開平4−109240号、同11−218874号、同11−218875号、同11−218876号、同11−194447号等の各公報に開示されている種々の構造を有する有機増感剤を用いることができるが、それらのうち、カルコゲン原子が炭素原子又はリン原子と二重結合で結ばれている構造を有する化合物の少なくとも1種であることが好ましい。特に、複素環基を有するチオ尿素誘導体及びトリフェニルホスフィンサルファイド誘導体等が好ましい。
化学増感を施す方法としては、従来の湿式処理用のハロゲン化銀感光材料の製造の際に慣用されている種々の化学増感技術に準じた技術が使用できる(参考文献:(1)T.H.James編”The Theory of the Photographic Process”第4版、Macmillan Publishing Co.,Ltd.1977、(2)日本写真学会編”写真工学の基礎(銀塩写真編),コロナ社,1979)。特に、ハロゲン化銀粒子乳剤に予め化学増感を施し、その後に非感光性有機銀塩粒子と混合する場合には、従来の慣用方法により化学増感を施すことができる。
有機増感剤としてのカルコゲン化合物の使用量は、使用するカルコゲン化合物、ハロゲン化銀粒子、化学増感を施す際の反応環境などにより変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-8〜1×10-2モルが好ましく、より好ましくは1×10-7〜1×10-3モルを用いる。化学増感を施す際の環境条件としては、特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀粒子上のカルコゲン化銀又は銀核を消滅或いはそれらの大きさを減少させ得る化合物の存在下において、又特に銀核を酸化しうる酸化剤の共存下において、カルコゲン原子を含有する有機増感剤を用いてカルコゲン増感を施すことが好ましい場合がある。この場合の増感条件は、pAgとしては6〜11が好ましく、より好ましくは7〜10であり、pHは4〜10が好ましく、より好ましくは5〜8、又温度としては30℃以下で増感を施すことが好ましい。
また、これらの有機増感剤を用いた化学増感は、分光増感色素またはハロゲン化銀粒子に対して、吸着性を有するヘテロ原子含有化合物の存在下で行われることが好ましい。ハロゲン化銀に吸着性を有する化合物の存在下化学増感を行うことで、化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。分光増感色素については後述するが、ハロゲン化銀に吸着性を有するヘテロ原子含有化合物とは、特開平3−24537号公報に記載されている含窒素複素環化合物が好ましい例として挙げられる。含窒素複素環化合物において、複素環としては、例えば、ピラゾール環、ピリミジン環、1,2,4−トリアゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,2,3,4−テトラゾール環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、これらの環が2〜3個結合した環、例えばトリアゾロトリアゾール環、ジアザインデン環、トリアザインデン環、ペンタアザインデン環などを挙げることができる。単環の複素環と芳香族環の縮合した複素環、例えば、フタラジン環、ベンズイミダゾール環、インダゾール環、ベンズチアゾール環なども適用できる。
これらの中で好ましいのはアザインデン環であり、かつ置換基としてヒドロキシル基を有するアザインデン化合物、例えば、ヒドロキシトリアザインデン、テトラヒドロキシアザインデン、ヒドロキシペンタアザインデン化合物等が更に好ましい。
複素環にはヒドロキシル基以外の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルキルチオ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基などを有してもよい。
これらの複素環化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の大きさや組成その他の条件等に応じて広い範囲に亘って変化するが、おおよその量はハロゲン化銀1モル当たりの量で10-6〜1モルの範囲であり、好ましくは10-4〜10-1モルの範囲である。
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、金イオンなどの貴金属イオンを放出する化合物を利用して貴金属増感を施すことができる。例えば、金増感剤として、塩化金酸塩や有機金化合物が利用できる。なお、特開平11−194447号公報に開示されている金増感技術が参考となる。
又、上記の増感法の他、還元増感法等も用いることができ、還元増感の貝体的な化合物として、例えば、アスコルビン酸、2酸化チオ尿素、塩化第1スズ、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
本発明において、化学増感を施されるハロゲン化銀粒子は、脂肪族カルボン酸銀塩の存在下で形成されたのでも、当該有機銀塩の存在しない条件下で形成されたものでも、また、両者が混合されたものでもよい。
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子の表面に化学増感を施した場合においては、熱現像過程経過後に該化学増感の効果が実質的に消失することが必要である。ここで、化学増感の効果が実質的に消失するとは、前記の化学増感技術によって得た当該イメージング材料の感度が熱現像過程経過後に化学増感を施していない場合の感度の1.1以下に減少することを言う。なお、化学増感効果を熱現像過程において消失させるためには、熱現像時に、化学増感中心(化学増感核)を酸化反応によって破壊できる酸化剤、例えば、前記のハロゲンラジカル放出性化合物等の適当量を当該イメージング材料の乳剤層又は/及び非感光性層に含有含有させておくことが必要である。当該酸化剤の含有量については、酸化剤の酸化力、化学増感効果の減少幅等を考慮して調整することが好ましい。
(分光増感)
本発明における感光性ハロゲン化銀には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すことが好ましい。分光増感色素としてシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号の各公報、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号の各明細書に記載された増感色素が使用できる。
本発明に使用される有用な増感色素は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)17643IV−A項(1978年12月p.23)、RD18431X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に、各種レーザイメージャーやスキャナーの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を用いるのが好ましい。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号の各公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核及びイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核及びピラゾロン核などの酸性核も含む。
本発明においては、特に赤外に分光感度を有する増感色素を用いることもできる。好ましく用いられる赤外分光増感色素としては、例えば米国特許第4,536,473号、同第4,515,888号、同第4,959,294号等の各明細書に開示されている赤外分光増感色素が挙げられる。
本発明の熱現像感光材料においては、特願2003−102726号明細書に記載されているような下記一般式(SD−1)で表される増感色素及び下記一般式(SD−2)で表される増感色素のうちから少なくとも1種を選び含有することが好ましい。
Figure 2006003701
式中、Y1及びY2は、各々、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、または−CH=CH−基を表し、L1〜L9は各々、メチン基を表す。R1、R2は各々、脂肪族基を表す。R3、R4、R23及びR24は各々、低級アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。W1、W2、W3、W4は各々、水素原子、置換基、或いはW1とW2、W3とW4の間で結合して縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。或いはR3とW1、R3とW2、R23とW1、R23とW2、R4とW3、R4とW4、R24とW3、R24とW4の間で結合して5員、6員の縮合環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。X1は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンを表し、k1は分子内の電荷を相殺するに必要なイオンの数を表す。m1は0又は1を表す。n1及びn2は各々、0、1又は2を表す。但し、n1とn2は同時に0とはならない。
上記の赤外増感色素は、例えば、エフ・エム・ハーマー著、The Chemistry of Heterocyclic Compounds第18巻、The Cyanine Dyes and Related Compounds(A.Weissberger ed.Interscience社刊、New York 1964年)に記載の方法によって容易に合成することができる。
これらの赤外増感色素の添加時期は、ハロゲン化銀調製後の任意の時期でよく、例えば、溶剤に添加して、或いは微粒子状に分散した、いわゆる固体分散状態でハロゲン化銀粒子或いはハロゲン化銀粒子/脂肪族カルボン酸銀塩粒子を含有する感光性乳剤に添加できる。又、前記のハロゲン化銀粒子に対し吸着性を有するヘテロ原子含有化合物と同様に、化学増感に先立ってハロゲン化銀粒子に添加し吸着させた後、化学増感を施すこともでき、これにより化学増感中心核の分散化を防ぐことができ高感度、低カブリを達成できる。
本発明において、上記の分光増感色素は1種類を単独に用いてもよいが、上述のように、分光増感色素の複数の種類の組合せを用いることが好ましく、そのような増感色素の組合せは、特に強色増感及び感光波長領域の拡大や調整等の目的でしばしば用いられる。
本発明の銀塩光熱写真ドライイメージング材料に用いられる感光性ハロゲン化銀、脂肪族カルボン酸銀塩を含有する乳剤は、増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感効果を発現する物質を乳剤中に含ませ、これによりハロゲン化銀粒子が強色増感されていてもよい。
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質は、RD17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公平9−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号、特開平5−341432号等に記載されているが、強色増感剤としては、下記で表される複素芳香族メルカプト化合物が又はメルカプト誘導体化合物が好ましい。
Ar−SM
式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンズチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンズセレナゾール、ベンズテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリン、またはキナゾリンである。しかしながら、他の複素芳香環も含まれる。
なお、脂肪族カルボン酸銀塩又はハロゲン化銀粒子乳剤の分散物中に含有させたときに実質的に上記のメルカプト化合物を生成するメルカプト誘導体化合物も含まれる。特に下記で表されるメルカプト誘導体化合物が、好ましい例として挙げられる。
Ar−S−S−Ar
式中のArは上記で表されたメルカプト化合物の場合と同義である。
上記の複素芳香環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素)、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)及びアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するもの)からなる群から選ばれる置換基を有しうる。
上記の強色増感剤の他に、特開2001−330918号公報に開示されているヘテロ原子を有する大環状化合物も強色増感剤として使用できる。
本発明に係る強色増感剤は、有機銀塩及びハロゲン化銀粒子を含む感光性層中に銀1モル当たり0.001〜1.0モルで用いるのが好ましい。特に好ましくは、銀1モル当たり0.01〜0.5モルの量が好ましい。
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子の表面に分光増感色素を吸着せしめ分光増感が施されており、かつ熱現像過程経過後に該分光増感効果が実質的に消失することが必要である。ここで、分光増感効果が実質的に消失するとは、増感色素、強色増感剤等によって得た当該イメージング材料の感度が熱現像過程経過後に分光増感を施していない場合の感度の1.1倍以下に減少することを言う。
なお、化学増感効果を熱現像過程において消失させるためには、熱現像時に、熱によってハロゲン化銀粒子より脱離しやすい分光増感色素を使用する又は/および分光増感色素を酸化反応によって破壊できる酸化剤、例えば、前記のハロゲンラジカル放出性化合物等の適当量を当該イメージング材料の乳剤層又は/及び非感光性層に含有含有させておくことが必要である。当該酸化剤の含有量については、酸化剤の酸化力、分光増感効果の減少幅等を考慮して調整することが好ましい。
(還元剤)
本発明においては、還元剤(銀イオン還元剤)として、特に、還元剤の少なくとも1種が下記一般式(1)で表される化合物を単独又は他の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いる。
Figure 2006003701
式中、X1はカルコゲン原子又はCHR1を表し、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。R2はアルキル基を表し、同一でも異なってもよい。R3は水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。R4はベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々0〜2の整数を表す。
一般式(1)で表される化合物のうちでも特にR2の少なくとも一方が2級または3級のアルキル基である高活性な還元剤(以降は一般式(1a)の化合物と呼ぶ)を用いることが、高濃度で、光照射画像保存性に優れた熱現像感光材料を得ることができる点でより好ましい。本発明においては、一般式(1a)の化合物と下記一般式(2)の化合物とを併用することが望ましい色調を得るためには好ましい。
Figure 2006003701
式中、X2はカルコゲン原子又はCHR5を表し、R5は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。R6はアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、2級又は3級のアルキル基であることはない。R7は水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。R8はベンゼン環上に置換可能な基を表し、m及びnは各々0〜2の整数を表す。
その併用比率としては、[一般式(1a)の化合物の質量]:[一般式(2)の化合物の質量]が5:95〜45:55であることが好ましく、より好ましくは10:90〜40:60である。
一般式(1)中、X1はカルコゲン原子又はCHR1を表す。カルコゲン原子としては、硫黄セレン、テルルであり、好ましくは硫黄原子である。CHR1におけるR1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等であり、アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル等、アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等、アリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環等、複素環基としてはチオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール等の各基である。
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基として具体的には、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、i−ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル等)、アルケニル基(エテニル−2−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル等)、シクロアルケニル基(1−シクロアルケニル、2−シクロアルケニル基等)、アルキニル基(エチニル、1−プロピニル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、アルキルカルボニルオキシ基(アセチルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、トリフルオロメチルチオ等)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基)、カルボキシル基、アルキルカルボニルアミノ基(アセチルアミノ等)、ウレイド基(メチルアミノカルボニルアミノ等)、アルキルスルホニルアミノ基(メタンスルホニルアミノ等)、アルキルスルホニル基(メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルボニル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、アルキルスルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド等)、アルキルアミノ基(アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ等)、スルホ基、ホスホノ基、サルファイト基、スルフィノ基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(メタンスルホニルアミノカルボニル、エタンスルホニルアミノカルボニル等)、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(アセトアミドスルホニル、メトキシアセトアミドスルホニル等)、アルキニルアミノカルボニル基(アセトアミドカルボニル、メトキシアセトアミドカルボニル等)、アルキルスルフィニルアミノカルボニル基(メタンスルフィニルアミノカルボニル、エタンスルフィニルアミノカルボニル等)等が挙げられる。又、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。特に好ましい置換基はアルキル基である。
2はアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、少なくとも一方は2級又は3級のアルキル基であることが好ましい。アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、t−オクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−メチルシクロプロピル等の基が挙げられる。
アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。又、(R4n及び(R4mと飽和環を形成してもよい。R2は好ましくは何れも2級又は3級のアルキル基であり、炭素数2〜20が好ましい。より好ましくは3級アルキル基であり、更に好ましくはt−ブチル、t−ペンチル、1−メチルシクロヘキシルであり、最も好ましくはt−ブチルである。
3は水素原子又はベンゼン環に置換可能な基を表す。ベンゼン環に置換可能な基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、スルフィニル基、シアノ基、複素環基等が挙げられる。
3として好ましくは、メチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。更に好ましくはメチル、2−ヒドロキシエチルである。
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては前記R1で挙げた置換基を用いることができる。R3は好ましくはヒドロキシル基又はそのプレカーサー基を有する炭素数1〜20のアルキル基であり、炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。最も好ましくは2−ヒドロキシエチルである。R2及びR3の最も好ましい組合せは、R2が第3級アルキル基(t−ブチル、1−メチルシクロヘキシル等)であり、R3がヒドロキシル基又はそのプレカーサー基を有する第1級アルキル基(2−ヒドロキシエチル等)である。複数のR2、R3は同じでも異なっていてもよい。
4はベンゼン環上に置換可能な基を表すが、具体的には炭素数1〜25のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等)、ハロゲン化アルキル基(トリフルオロメチル、パーフルオロオクチル等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロペンチル等)、アルキニル基(プロパルギル等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリール基(フェニル等)、複素環基(ピリジル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、フリル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、セレナゾリル、スリホラニル、ピペリジニル、ピラゾリル、テトラゾリル等)、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、フッ素)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルコキシカルボニル基(メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド等)、スルファモイル基(アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等)、ウレタン基(メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、フェニルウレイド、2−ピリジルウレイド等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサノイル、ベンゾイル、ピリジノイル等)、カルバモイル基(アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル)、アミド基(アセトアミド、プロピオンアミド、ブタンアミド、ヘキサンアミド、ベンズアミド等)、スルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、フェニルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、アミノ基(アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、アニリノ、2−ピリジルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等を挙げることができる。又、これらの基は更にこれらの基で置換されてもよい。n及びmは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはn、m共に0の場合である。
又、R4はR2、R3と飽和環を形成してもよい。R4は好ましくは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。複数のR4は同じでも異なっていても良い。
一般式(2)中、R5はR1と同様の基であり、R7はR3と同様の基であり、R8はR4と同様の基である。R6はアルキル基を表し、同一でも異なってもよいが、2級又は3級のアルキル基であることはない。アルキル基としては置換又は無置換の炭素数1〜20のものが好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等の基が挙げられる。
アルキル基の置換基は特に限定されないが、例えば、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。又、(R8n及び(R8mと飽和環を形成してもよい。R6は、好ましくはメチルである。一般式(2)で表される化合物のうちでも好ましく用いられる
化合物は欧州特許第1,278,101号明細書に記載の一般式(S)、一般式(T)を満足する化合物であり、具体的にはp21〜p28に記載の(1−24)、(1−28)〜(1−54)、(1−56)〜(1−75)の化合物があげられる。
以下に、一般式(1)、一般式(2)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
Figure 2006003701
これら一般式(1)、一般式(2)で表されるビスフェノール化合物は、従来公知の方法により容易に合成することができる。
熱現像感光材料が含有する還元剤は、有機銀塩を還元して銀画像を形成するものである。本発明の還元剤と併用することができる還元剤としては、例えば、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号の各明細書、RD17029号及び29963号、特開平11−119372号、特開2002−62616号の各公報等に記載されている。
前記一般式(1)で表される化合物を初めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10-2〜10モル、特に好ましくは1×10-2〜1.5モルである。
(画像の色調)
次に、熱現像感光材料を熱現像処理して得られる画像の色調について述べる。
従来のレントゲン写真フィルムのような医療診断用の出力画像の色調に関しては、冷調の画像調子の方が、判読者にとってより的確な診断観察結果が得易いと言われている。ここで冷調な画像調子とは、純黒調もしくは黒画像が青味を帯びた青黒調であることを言う。一方、温調な画像調子とは、黒画像が褐色味を帯びた温黒調であると言われているが、より厳密な定量的な議論ができるように、以下、国際照明委員会(CIE)の推奨する表現法に基づき説明する。
色調に関しての用語「より冷調」及び「より温調」は、最低濃度Dmin及び光学濃度D=1.0における色相角habにより表現できる。即ち、色相角habは、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間であるL***色空間の色座標a*、b*を用いて次の式によって求める。
hab=tan-1(b*/a*
上記色相角に基づく表現法により検討した結果、本発明の熱現像感光材料の現像後の色調は、色相角habの範囲が180度<hab<270度であることが好ましく、更に好ましくは200度<hab<270度、最も好ましくは220度<hab<260度であることが判った。このことは、特開2002−6463号公報に開示されている。
尚、従来、光学濃度1.0付近でのCIE 1976(L***)色空間又は(L***)色空間におけるu*、v*又はa*、b*を特定の数値に調整することにより、見た目の色調が好ましい診断画像が得られることが知られており、例えば、特開2000−29164号公報に記載されている。
しかしながら、本発明の熱現像感光材料について更に鋭意検討の結果、CIE 1976(L***)色空間又は(L***)色空間において横軸をu*又はa*、縦軸をv*又はb*としたグラフ上に、様々な写真濃度でのu*、v*又はa*、b*をプロットし、線形回帰直線を作成した際に、その線形回帰直線を特定の範囲に調整することにより、従来の湿式の銀塩感光材料同等以上の診断性を持つことを見い出した。以下に好ましい条件範囲について述べる。
(a)熱現像感光材料を熱現像処理後に得られた銀画像の光学濃度0.5、1.0、1.5及び最低光学濃度の各濃度を測定し、CIE 1976(L***)色空間の横軸をu*、縦軸をv*とする2次元座標に、上記各光学濃度でのu*、v*を配置し作成した線形回帰直線の決定係数(重決定)R2が0.998〜1.000であることが好ましい。更に、当該線形回帰直線の縦軸との交点のv*値が−5〜5であること、且つ傾き(v*/u*)が0.7〜2.5であることが好ましい。
(b)又、当該熱現像感光材料の光学濃度0.5、1.0、1.5及び最低光学濃度の各濃度を測定し、CIE 1976(L***)色空間の横軸をa*、縦軸をb*とする2次元座標に、上記各光学濃度でのa*、b*を配置し作成した線形回帰直線の決定係数(重決定)R2が0.998〜1.000であることが好ましい。更に、当該線形回帰直線の縦軸との交点のb*値が−5〜5であること、且つ傾き(b*/a*)が0.7〜2.5であることが好ましい。
尚、次に、上述の線形回帰直線の作成法、則ちCIE 1976色空間におけるu*、v*及びa*、b*の測定法の一例を説明する。
熱現像装置を用いて未露光部、及び光学濃度0.5、1.0、1.5を含む4段のウエッジ試料を作製する。このようにして作製した、それぞれのウエッジ濃度部を分光色彩計(コニカミノルタセンシング社製:CM−3600d等)で測定し、u*、v*又はa*、b*を算出する。その際の測定条件は光源としてF7光源、視野角を10度として透過測定モードで測定を行う。横軸をu*又はa*、縦軸をv*又はb*としたグラフ上に測定したu*、v*又はa*、b*をプロットし線形回帰直線を求め、決定係数(重決定)R2、切片及び傾きを求める。
次に、上記のような特徴を持つ線形回帰直線を得るための具体的な方法について説明する。
本発明においては、下記の調色剤、現像剤、ハロゲン化銀粒子及び脂肪族カルボン酸銀等の現像反応過程において、直接的及び間接的に関与する化合物等の添加量の調整により、現像銀形状を最適化し好ましい色調にすることができる。例えば、現像銀形状をデンドライト状にすると青味を帯びる方向になり、フィラメント状にすると黄色味を帯びる方向になる。即ち、このような現像銀形状の性向を考慮して調整できる。
従来、調色剤としてはフタラジノン又はフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類が一般的に使用されている。好適な調色剤の例は、RD17029号、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号、同第4,021,249号の各明細書等に開示されている。
このような調色剤の他に、特開平11−288057号公報、欧州特許第1,134,611号明細書等に開示されているカプラー及び、以下で詳述するロイコ染料を使用して色調を調整することもできる。特に、色調の微調整のためにカプラーまたはロイコ染料を用いることが好ましい。
(ロイコ染料)
ロイコ染料として好ましくは、約80〜200℃の温度で約0.5〜30秒間加熱した時に、酸化されて着色形態になる何れの無色又は僅かに着色した化合物でよく、銀イオンにより酸化して色素を形成する何れのロイコ染料を用いることもできる。pH感受性を有し、且つ着色状態に酸化できる化合物は有用である。
本発明で使用するのに適した代表的なロイコ染料は特に限定されないが、例えば、ビフェノールロイコ染料、フェノールロイコ染料、インドアニリンロイコ染料、アクリル化アジンロイコ染料、フェノキサジンロイコ染料、フェノジアジンロイコ染料及びフェノチアジンロイコ染料等が挙げられる。又、有用なものは、米国特許第3,445,234号、同第3,846,136号、同第3,994,732号、同第4,021,249号、同第4,021,250号、同第4,022,617号、同第4,123,282号、同第4,368,247号、同第4,461,681号の各明細書、及び特開昭50−36110号、同59−206831号、特開平5−204087号、同11−231460号、特開2002−169249号、同2002−236334号の各公報等に開示されているロイコ染料である。
所定の色調に調整するために、種々の色のロイコ染料を単独使用又は複数の種類の併用をすることが好ましい。本発明においては高活性な還元剤を使用することに伴ってその使用量や使用比率によって色調(特に黄色味)が変化したり、微粒子のハロゲン化銀を用いることにより、特に濃度が2.0以上の高濃度部で画像が過度に赤みをおびることを防止するために、黄色及びシアン色に発色するロイコ染料を併用してその使用量を調整するのが好ましい。
発色濃度は現像銀自身による色調との関係で適切に調整することが好ましい。本発明では、0.01〜0.05の反射光学濃度又は0.005〜0.50の透過光学濃度を有するように発色させ上記した好ましい色調範囲の画像になるように色調を調整することが好ましい。本発明ではロイコ染料により形成される色素像の極大吸収波長における最高濃度の総和を
0.01以上0.50以下とするのが好ましく、より好ましくは0.02以上0.30以下、特に好ましくは0.03以上0.10以下を有するように発色させることが好ましい。
(黄色発色性ロイコ染料)
本発明において、特に黄色発色性ロイコ染料として好ましく用いられるのは、酸化されることにより360〜450nmの吸光度が増加する色像形成剤であり、下記一般式(YA)で表される色像形成剤であることが好ましい。
Figure 2006003701
式中、R11は置換又は無置換のアルキル基を表し、R12は水素原子、それぞれ置換もしくは無置換のアルキル基又はアシルアミノ基を表すが、R11、R12は2−ヒドロキシフェニルメチル基であることはない。R13は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、R14はベンゼン環に置換可能な置換基を表す。
以下、一般式(YA)の化合物について詳細に説明する。
一般式(YA)において、R11は置換又は無置換のアルキル基を表すが、R12が水素原子以外の置換基である場合、R11はアルキル基を表す。該アルキル基としては炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、置換基を有してもよい。
具体的にはメチル、エチル、ブチル、オクチル、i−プロピル、t−ブチル、t−オクチル、t−ペンチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロヘキシル等が好ましく、i−プロピルよりも立体的に大きな基(i−プロピル、i−ノニル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロヘキシル、アダマンチル等)であることが好ましく、その中でも2級又は3級のアルキル基が好ましく、3級アルキル基であるt−ブチル、t−オクチル、t−ペンチル等が特に好ましい。R11が有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基等が挙げられる。
12は水素原子、それぞれ置換もしくは無置換のアルキル基又はアシルアミノ基を表す。R12で表されるアルキル基は炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、アシルアミノ基は炭素数1〜30のアシルアミノ基が好ましい。この内、アルキル基の説明は前記R11と同様である。
12で表されるアシルアミノ基は、無置換でも置換基を有してもよく、具体的には、アセチルアミノ基、アルコキシアセチルアミノ基、アリールオキシアセチルアミノ基等が挙げられる。R12として好ましくは、水素原子又は無置換の炭素数1〜24のアルキル基であり、具体的にはメチル、i−プロピル、t−ブチルが挙げられる。又、R11、R12は2−ヒドロキシフェニルメチル基であることはない。
13は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基としては炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、アルキル基の説明は前記R11と同様である。R13として好ましくは、水素原子又は無置換の炭素数1〜24のアルキル基で、具体的にはメチル、i−プロピル、t−ブチル等が挙げられる。又、R12、R13の何れか一方は水素原子であることが好ましい。
14はベンゼン環に置換可能な基を表し、例えば、前記一般式(1)における置換基R4で説明したのと同様な基である。R14として好ましいのは、置換又は無置換の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のオキシカルボニル基であり、炭素数1〜24のアルキル基がより好ましい。アルキル基の置換基としてはアリール基、アミノ基、アルコキシ基、オキシカルボニル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、イミド基、ウレイド基等が挙げられ、アリール基、アミノ基、オキシカルボニル基、アルコキシ基がより好ましい。これらのアルキル基の置換基は、更にこれらの置換基で置換されてもよい。
次に、一般式(YA)で表される化合物のうちでも、特に本発明で好ましく用いられる、下記一般式(YB)で表されるビスフェノール化合物について説明する。
Figure 2006003701
式中、Zは−S−又は−C(R21)(R21′)−を表し、R21、R21′は各々、水素原子又は置換基を表す。R21、R21′の表す置換基としては、前記一般式(1)のR1の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。R21、R21′として好ましくは、水素原子又はアルキル基である。
22、R23、R22′及びR23′は各々置換基を表すが、置換基としては一般式(1)におけるR2、R3で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
22、R23、R22′及びR23′として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基であるが、アルキル基が更に好ましい。アルキル基上の置換基としては、一般式(1)における置換基の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
22、R23、R22′及びR23′として、更に好ましくはt−ブチル、t−ペンチル、t−オクチル、1−メチル−シクロヘキシル等の3級アルキル基である。
24及びR24′は各々、水素原子又は置換基を表すが、置換基としては、一般式(1)におけるR4の説明で挙げた置換基と同様な基が挙げられる。
一般式(YA)及び(YB)で表される化合物としては、例えば、特開2002−169249号公報の段落番号「0032」〜「0038」記載の化合物(II−1)〜(II−40)、欧州特許第1,211,093号明細書の段落番号「0026」記載の化合物(ITS−1)〜(ITS−12)を挙げることができる。
以下に、一般式(YA)及び(YB)で表されるビスフェノール化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
一般式(YA)の化合物(ヒンダードフェノール化合物、一般式(YB)の化合物も含まれる)の添加量は、通常、銀1モル当たり0.00001〜0.01モルであり、好ましくは0.0005〜0.01モル、より好ましくは0.001〜0.008モルである。
また黄色発色性ロイコ染料の一般式(1)、(2)で表される還元剤の総和に対する添加量比は、モル比で0.001〜0.2であることが好ましく、0.005〜0.1であることがより好ましい。
(シアン発色性ロイコ染料)
本発明で好ましく用いられるシアン発色性ロイコ染料について説明する。ロイコ染料として好ましくは、約80〜200℃の温度で約0.5〜30秒間加熱した時に、酸化されて着色形態になる何れの無色又は僅かに着色した化合物でよく、銀イオンにより酸化して色素を形成する何れのロイコ染料を用いることもできる。pH感受性を有し、かつ着色状態に酸化できる化合物は有用である。
本発明において、特にシアン発色性ロイコ染料として好ましく用いられるのは、酸化されることにより600〜700nmの吸光度が増加する色像形成剤であり、特開昭59−206831号公報(特にλmaxが600〜700nmの範囲内にある化合物)、特開平5−204087号公報の一般式(I)〜一般式(IV)の化合物(具体的には段落番号「0032」〜「0037」に記載の(1)〜(18)の化合物)及び特開平11−231460号公報の一般式4〜一般式7の化合物(具体的には段落番号「0105」に記載されるNo.1〜No.79の化合物)である。
本発明において特に好ましく用いられるシアン発色性ロイコ染料は、下記一般式(CL)で表される。
Figure 2006003701
式中、R81、R82は水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、−NHCO−R10基(R10はアルキル基、アリール基、複素環基を表す。)であるか、またはR81、R82は互いに連結して脂肪族炭化水素環、芳香族炭化水素環または複素環を形成する基である。A8は−NHCO−基、−CONH−基または−NHCONH−基を表し、R83は置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。また、−A8−R83は水素原子であってもよい。W8は水素原子または−CONH−R85基、−CO−R85基または−CO−O−R85基(R85は置換または無置換のアルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表し、R84は水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはニトリル基を表す。R86は−CONH−R87基、−CO−R87基または−CO−O−R87基(R87が置換または無置換の、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。)を表す。X8は、置換または無置換の、アリール基、複素環基を表す。
一般式(CL)において、R81、R82で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、臭素原子、塩素原子等が挙げられ、アルキル基としては炭素原子数が20までのアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等)が挙げられ、アルケニル基としては炭素原子数20までのアルケニル基(例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル等)が挙げられ、アルコキシ基としては炭素原子数20までのアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ等)が挙げられる。また、−NHCO−R10基におけるR10で表されるアルキル基としては、炭素原子数が20までのアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等)が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基のような炭素原子数6〜20の基が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。R83で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数20までのアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。W8で表される−CONH−R85基、−CO−R85基または−CO−O−R85基において、R85で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数20までのアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素数6〜20までのアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
84で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられ、アルキル基としては鎖状若しくは環状のアルキル基、例えば、メチル基、ブチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルケニル基としては炭素原子数20までのアルケニル基(例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、エテニル−2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル等)が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、ブトキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられ、カルバモイル基としては、例えば、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。またニトリル基も好ましい。これらの中でも、水素原子、アルキル基がより好ましい。前記R83とR84は、互いに連結して環構造を形成してもよい。
上記の基はさらに単一の置換基または複数の置換基を有することができる。典型的な置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ドデシル基等)、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メチルスルホンアミド基、オクチルスルホンアミド基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、フェニルスルホンアミド基、ナフチルスルホンアミド基等)、アルキルスルファモイル基(例えば、ブチルスルファモイル基等)、アリールスルファモイル(例えば、フェニルスルファモイル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、アミノスルホンアミド基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホキシ基、スルホ基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノカルボニル基等が挙げられる。
10またはR85は好ましくはフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子およびシアノ基を置換基として複数有するフェニル基である。
86で表される−CONH−R87基、−CO−R87基または−CO−O−R87基において、R87で表されるアルキル基は、好ましく炭素原子数20までのアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基等が挙げられ、アリール基は、好ましくは炭素数6〜20のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、チエニル基等が挙げられ、複素環基としては、例えばチオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
87で表される基が有することができる置換基としては一般式(CL)のR81〜R84の説明において挙げた置換基と同様のものが使用できる。
8で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基のような炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられ、複素環基としては、例えば、チオフェン基、フラン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基等が挙げられる。
8で表される基が有することができる置換基としては一般式(CL)のR81〜R84の説明において挙げた置換基と同様のものを挙げることができる。
8で表される基としてはパラ位にアルキルアミノ基(ジエチルアミノ基等)を有するアリール基または複素環基が好ましい。
これらの基は写真的に有用な基を含んでもよい。
以下にシアン発色性ロイコ染料(CL)の具体例を示すが、本発明で用いられるシアン発色性ロイコ染料はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
Figure 2006003701
シアン発色性ロイコ染料の添加量は、通常0.00001〜0.05モル/Ag1モルであり、好ましくは0.0005〜0.02モル/Ag1モル、より好ましくは0.001〜0.01モル/Ag1モルである。シアン発色性ロイコ染料の一般式(1)、一般式(2)で表される還元剤の総和に対する添加量比は、モル比で0.001〜0.2であることが好ましく、0.005〜0.1であることがより好ましい。本発明では、シアンロイコ染料により形成される色素像の極大吸収波長における最高濃度の総和を0.01以上0.50以下とするのが好ましく、より好ましくは0.02以上0.30以下、特に好ましくは0.03以上0.10以下を有するように発色させることが好ましい。
本発明においては上記のシアン発色性ロイコ染料に加えてマゼンタ発色性ロイコ染料または黄色発色性ロイコ染料を併用することでさらに微妙な色調の調整を可能とすることができる。
一般式(YA)および(YB)で表される化合物及びシアン発色性ロイコ染料の添加方法としては、一般式(1)で表される還元剤の添加方法と同様な方法で添加することができ、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態等、任意の方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてよい。
一般式(1)、(2)、一般式(YA)、(YB)の化合物及びシアン発色性ロイコ染料は、有機銀塩を含有する画像形成層に含有させることが好ましいが、一方を画像形成層に、他方を該画像形成層に隣接する非画像形成層に含有させてもよく、両者を非画像形成層に含有させてもよい。又、画像形成層が複数層で構成されている場合には、それぞれ別層に含有させてもよい。
(バインダー)
熱現像感光材料に好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、特開2001−330918号公報の段落番号「0069」に記載のものが挙げられる。これらの内、本発明の熱現像感光材料の感光性層に好ましいバインダーはポリビニルアセタール類であり、特に好ましくはポリビニルブチラールである。これらについては詳しく後述する。
又、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非感光層に対しては、より軟化温度の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。尚、必要に応じて、上記のバインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
バインダーには−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−O−P=O(OM)2、−N(R)2、−N+(R)3(Mは水素原子、又はアルカリ金属塩基、Rは炭化水素基を表す)、エポキシ基、−SH、−CN等から選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましく、特に−SO3M、−OSO3M、が好ましい。この様な極性基の量は、1×10-1〜1×10-8モル/gであり、好ましくは1×10-2〜1×10-6モル/gである。
この様なバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、画像形成層において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2(質量比)が好ましく、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、画像形成層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましく、更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
本発明で用いるバインダーのガラス転移温度(Tg)は、70〜105℃であることが好ましい。Tgは示差走査熱量計で測定して求めることができ、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をTgとする。本発明におけるTgは、ブランドラップ等による「重合体ハンドブック」III−139〜179頁(1966年,ワイリーアンドサン社版)に記載の方法で求めたものである。
バインダーが共重合体樹脂である場合のTgは下記の式で求められる。
Tg(共重合体)(℃)=v1Tg1+v2Tg2+・・・+vnTgn
式中、v1、v2・・・vnは共重合体中の単量体の質量分率を表し、Tg1、Tg2・・・Tgnは共重合体中の各単量体から得られる単一重合体のTg(℃)を表す。上式に従って計算されたTgの精度は±5℃である。
Tgが70〜105℃のバインダーを用いると、画像形成において十分な最高濃度が得ることができ好ましい。
本発明に係るバインダーとしては、Tgが70〜105℃、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。又、エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含む重合体又は共重合体については、特開2001−330918号公報の段落番号「0069」に記載のものが挙げられる。
これらの内、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。この様な高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物でも、アセトアセタール構造を持つポリビニルアセタールであることがより好ましく、例えば米国特許2,358,836号、同第3,003,879号、同第2,828,204号、英国特許771,155号等の各明細書に示されるポリビニルアセタールを挙げることができる。
アセタール基を持つ高分子化合物としては、特開2002−287299号公報の段落番号「0150」に記載の一般式(V)で表される化合物が、特に好ましい。
本発明で用いることのできるポリウレタン樹脂としては、構造がポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン等公知のものが使用できる。又、ポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計2個以上のヒドロキシル基を有することが好ましい。ヒドロキシル基は、硬化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。特に、ヒドロキシル基が分子末端にある方が、硬化剤との反応性が高いので好ましい。ポリウレタンは、分子末端にヒドロキシル基を3個以上有することが好ましく、4個以上有することが特に好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合は、Tgが70〜105℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.5〜100N/mm2が好ましい。
これらの高分子化合物(ポリマー)は単独で用いてもよいし、2種類以上をブレンドして用いてもよい。
本発明に係る画像形成層には上記ポリマーを主バインダーとして用いることが好ましい。ここで言う主バインダーとは、「画像形成層の全バインダーの50質量%以上を上記ポリマーが占めている状態」をいう。従って、全バインダーの50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明のポリマーが可溶となる溶媒であれば特に制限はない。より好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
画像形成層に有機性ゲル化剤を含有せしめてもよい。尚、ここで言う有機性ゲル化剤とは、例えば多価アルコール類のように、有機液体に添加することにより、その系に降伏値を付与し、系の流動性を消失あるいは低下させる機能を有する化合物を言う。
画像形成層用塗布液が水性分散されたポリマーラテックスを含有するのも好ましい態様である。この場合、画像形成層用塗布液中の全バインダーの50質量%以上が水性分散されたポリマーラテックスであることが好ましい。又、画像形成層がポリマーラテックスを含有する場合、画像形成層中の全バインダーの50質量%以上がポリマーラテックスであることが好ましく、更に好ましくは70質量%以上である。
ポリマーラテックスとは、水不溶性の疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち、分子鎖自身が分子状分散したもの等、何れでもよい。分散粒子の平均粒径は1〜50,000nmが好ましく、より好ましくは5〜1,000nm程度の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限はなく、広い粒径分布を持つものでも、単分散の粒径分布を持つものでもよい。
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外、所謂コア/シェル型のラテックスでもよい。この場合、コアとシェルはTgを変えると好ましい場合がある。本発明に係るポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は、−30〜90℃であることが好ましく、更に好ましくは0〜70℃程度である。又、最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。
上記造膜助剤は可塑剤とも呼ばれ、ポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常、有機溶媒)であり、例えば「合成ラテックスの化学(室井宗一著,高分子刊行会発行,1970)」に記載されている。
ポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はこれらの共重合体等がある。ポリマーとしては、直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、又、架橋されたポリマーでもよい。又、ポリマーとしては、単一のモノマーが重合した所謂ホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合は、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。ポリマーの分子量は、数平均分子量で、通常、5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度である。分子量が小さすぎるものは感光層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは製膜性が悪く、共に好ましくない。
ポリマーラテックスは、25℃・60%RH(相対湿度)での平衡含水率が0.01〜2質量%以下のものが好ましく、更に好ましくは、0.01〜1質量%のものである。平衡含水率の定義と測定法については、例えば「高分子工学講座14,高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)」等を参考にすることができる。
ポリマーラテックスの具体例としては、特開2002−287299号公報の「0173」に記載の各ラテックスが挙げられる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよい。ポリマーラテックスのポリマー種としては、アクリレート又はメタクリレート成分の如きカルボン酸成分を0.1〜10質量%程度含有するものが好ましい。
更に、必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は前記感光層の全バインダーの30質量%以下が好ましい。
画像形成層用塗布液の調製において、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスの添加の順序については、何れを先に添加してもよいし、同時に添加してもよいが、好ましくはポリマーラテックスが後である。
更に、ポリマーラテックス添加前に有機銀塩、更には還元剤が混合されていることが好ましい。又、有機銀塩とポリマーラテックスを混合した後、経時させる温度が低すぎると塗布面状が損なわれ、高すぎるとカブリが上昇する問題があるので、混合後の塗布液は30〜65℃で上記時間経時されることが好ましい。更には、35〜60℃で経時されることが好ましく、特に35〜55℃での経時が好ましい。この様に温度を維持するには、塗布液の調液槽等を保温すればよい。
画像形成層用塗布液の塗布は、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスを混合した後、30分〜24時間経過した塗布液を用いるのが好ましく、更に好ましくは、混合した後、60分〜12時間経過させることであり、特に好ましくは、120分〜10時間経過した塗布液を用いることである。
ここで、「混合した後」とは、有機銀塩と水性分散されたポリマーラテックスを添加し、添加素材が均一に分散された後を言う。
架橋剤を上記バインダーに対し用いることにより、膜付きが良くなり、現像ムラが少なくなることは知られているが、保存時のカブリ抑制や、現像後のプリントアウト銀の生成を抑制する効果もある。
用いられる架橋剤としては、従来、写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば特開昭50−96216号公報に記載されるアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤が用いられるが、好ましくは、以下に示すイソシアネート系、シラン化合物系、エポキシ系化合物又は酸無水物である。
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基を少なくとも2個有しているイソシアネート類及びその付加体(アダクト体)であり、更に具体的には、脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼンジイソシアネート類、ナフタレンジイソシアネート類、ビフェニルイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート類、トリフェニルメタンジイソシアネート類、トリイソシアネート類、テトライソシアネート類、これらのイソシアネート類の付加体及びこれらのイソシアネート類と2価又は3価のポリアルコール類との付加体等が挙げられる。具体例として、特開昭56−5535号公報の10〜12頁に記載されるイソシアネート化合物を利用することができる。
尚、イソシアネートとポリアルコールの付加体は、特に層間接着を良くし、層の剥離や画像のズレ及び気泡の発生を防止する能力が高い。かかるイソシアネートは、熱現像感光材料のどの部分に置かれてもよい。例えば支持体中(特に支持体が紙の場合、そのサイズ組成中に含ませることができる)感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。
又、本発明に使用可能なチオイソシアネート系架橋剤としては、上記のイソシアネート類に対応するチオイソシアネート構造を有する化合物も有用である。
上記架橋剤の使用量は、銀1モルに対して、通常、0.001〜2モル、好ましくは0.005〜0.5モルの範囲である。
本発明において含有させることができるイソシアネート化合物及びチオイソシアネート化合物は、上記の架橋剤として機能する化合物であることが好ましいが、当該官能基を1個のみ有する化合物であっても良い結果が得られる。
シラン化合物の例としては、特開2001−264930号公報に開示されている一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
又、架橋剤として使用できるエポキシ化合物としては、エポキシ基を1個以上有するものであればよく、エポキシ基の数、分子量、その他に制限はない。エポキシ基はエーテル結合やイミノ結合を介してグリシジル基として分子内に含有されることが好ましい。又、エポキシ化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマー等の何れであってもよく、分子内に存在するエポキシ基の数は通常1〜10個程度、好ましくは2〜4個である。エポキシ化合物がポリマーである場合は、ホモポリマー、コポリマーの何れであってもよく、その数平均分子量Mnの特に好ましい範囲は2,000〜20,000程度である。
本発明に用いられる酸無水物は、下記の構造式で示される酸無水物基を少なくとも1個有する化合物である。この様な酸無水基を1個以上有するものであればよく、酸無水基の数、分子量、その他に制限はない。
−CO−O−CO−
上記のエポキシ化合物や酸無水物は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量は特に制限はないが、1×10-6〜1×10-2モル/m2の範囲が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-3モル/m2の範囲である。このエポキシ化合物や酸無水物は、感光層、表面保護層、中間層、アンチハレーション層、下引層等の支持体の感光層側の任意の層に添加でき、これらの層の中の1層又は2層以上に添加することができる。
(省銀化剤)
本発明において使用される省銀化剤とは、一定の銀画像濃度を得るために必要な銀量を低減化し得る化合物をいう。この低減化する機能の作用機構は種々考えられるが、現像銀の被覆力を向上させる機能を有する化合物が好ましい。ここで、現像銀の被覆力とは、銀の単位量当たりの光学濃度をいう。この省銀化剤は感光性層又は非感光性層、更にはそのいずれにも存在せしめることができる。
省銀化剤としては、ヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、4級オニウム化合物及びシラン化合物が好ましい例として挙げられる。
ヒドラジン誘導体の具体例としては、米国特許第5,545,505号明細書カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号明細書カラム9〜11に記載の化合物1〜12、特開2001−27790号公報の段落番号「0042」〜「0052」に記載の化合物H−1−1〜H−1−28、H−2−1〜H−2−9、H−3−1〜H−3−12、H−4−1〜H−4−21、H−5−1〜H−5−5が挙げられる。
ビニル化合物の具体例としては、米国特許第5,545,515号明細書のカラム13〜14に記載の化合物CN−01〜CN−13、米国特許第5,635,339号明細書のカラム10に記載の化合物HET−01〜HET−02、米国特許第5,654,130号明細書のカラム9〜10に記載の化合物MA−01〜MA−07の化合物、米国特許第5,705,324号明細書のカラム9〜10に記載の化合物IS−01〜IS−04、特開2001−125224号公報の段落番号「0043」〜「0088」記載の化合物1−1〜218−2が挙げられる。
フェノール誘導体、ナフトール誘導体の具体例としては、特開2000−267222号公報の段落番号「0075」〜「0078」の記載の化合物A−1〜A−89、特開2003−66558号公報の段落番号「0025」〜「0045」に記載の化合物A−1〜A−258が挙げられる。
4級オニウム化合物の具体例としては、トリフェニルテトラゾリウムが挙げられる。
シラン化合物の具体例としては、特開2003−5324号公報の段落番号「0027」〜「0029」記載の化合物A1〜A33に示されるような一級または二級アミノ基を2個以上有するアルコキシシラン化合物或いはその塩が挙げられる。
上記省銀化剤の添加量は有機銀塩1モルに対し1×10-5〜1モル、好ましくは1×10-4〜5×10-1モルの範囲である。
(カブリ防止及び画像安定化剤)
本発明の熱現像感光材料に用いられるカブリ防止及び画像安定化剤について説明する。
還元剤としては、主にビスフェノール類やスルホンアミドフェノール類のようなプロトンを持った還元剤が用いられているので、これらの水素を引き抜くことができる活性種を発生することにより還元剤を不活性化できる化合物が含有されていることが好ましい。好適には、無色の光酸化性物質として、露光時にフリーラジカルを反応活性種として生成可能な化合物が好ましい。
従ってこれらの機能を有する化合物であればいかなる化合物でもよいが、複数の原子からなる有機フリーラジカルが好ましい。かかる機能を有し、且つ熱現像感光材料に格別の弊害を生じることのない化合物であればいかなる構造を持った化合物でもよい。
また、これらのフリーラジカルを発生する化合物としては、発生するフリーラジカルに、これが還元剤と反応し不活性化するに十分な時間接触できる位の安定性を持たせるために炭素環式、または複素環式の芳香族基を有するものが好ましい。これらの化合物の代表的なものとしてビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物を挙げることができる。
上記のビイミダゾリル化合物、ヨードニウム化合物の添加量は0.001〜0.1モル/m2、好ましくは0.005〜0.05モル/m2の範囲である。尚、当該化合物は、本発明の感光材料において、いかなる構成層中にも含有させることができるが、還元剤の近傍に含有させることが好ましい。
また、カブリ防止及び画像安定化剤として、ハロゲン原子を活性種として放出できる化合物も多くのものが知られている。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、特開2002−287299号公報の「0264」〜「0271」に記載の一般式(9)の化合物が挙げられる。
これらの化合物の添加量は、実質的にハロゲン化銀の生成によるプリントアウト銀の増加が問題にならない範囲が好ましく、活性ハロゲンラジカルを生成しない化合物に対する比率で、最大150%以下、更に好ましくは100%以下であることが好ましい。これらの活性ハロゲン原子を生成する化合物の具体例としては、特開2002−169249号公報の段落番号「0086」〜「0087」に記載されている化合物(III−1)〜(III−23)、特開2003−50441号公報の段落番号「0031」〜「0034」記載の化合物1−1a〜1−1o、1−2a〜1−2o、段落番号「0050」〜「0056」記載の化合物2a〜2z、2aa〜2ll、2−1a〜2−1f、特開2003−91054号公報の段落番号「0055」〜「0058」記載の化合物4−1〜4−32、段落番号「0069」〜「0072」記載の化合物5−1〜5−10を挙げることができる。
次に本発明において好ましく使用される上記以外のカブリ防止剤について説明する。本発明で好ましく使用されるカブリ防止剤としては、例えば、特開平8−314059号公報の段落番号「0012」に記載の化合物例a〜j、特開平7−209797号公報の段落番号「0028」に記載のチオスルホネートエステルA〜K、特開昭55−140833号公報のp14から記載の化合物例(1)〜(44)、ビニルスルホン類及び/又はβ−ハロスルホン類の化合物として特開平6−208192号公報の段落番号「0013」に記載の化合物VS−1〜VS−7、化合物HS−1〜HS−5、置換されたプロペンニトリル化合物として特表2000−515995号公報に記載のPR−01〜PR−08、特開2002−207273号公報の段落番号「0042」〜「0051」に記載の化合物(1)−1〜(1)−132、を挙げることができる。
上記カブリ防止剤は一般に銀のモルに対して少なくとも0.001モル用いる。通常、その範囲は銀のモルに対して化合物は0.01〜5モル、好ましくは銀のモルに対して化合物は0.02〜0.6モルである。
尚、上記の化合物の他に、本発明の熱現像感光材料中には、従来カブリ防止剤として知られている化合物が含まれてもよいが、上記の化合物と同様な反応活性種を生成することができる化合物であっても、カブリ防止機構が異なる化合物であってもよい。例えば、米国特許第3,589,903号、同第4,546,075号、同第4,452,885号の各明細書、特開昭59−57234号公報、米国特許第3,874,946号明細書、同4,756,999号明細書、特開平9−288328号公報、同9−90550号公報に記載されている化合物が挙げられる。更に、その他のカブリ防止剤としては、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号の各明細書に開示されている化合物が挙げられる。
本発明に用いる還元剤が芳香族性の水酸基(−OH)を有する場合、特にビスフェノール類の場合には、これらの基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
本発明で、特に好ましい水素結合性の化合物の具体例としては、例えば、特開2002−90937号公報の段落番号「0061」〜「0064」に記載の化合物(II−1)〜(II−40)が挙げられる。
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、必要に応じて銀の色調を調整する色調剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有していることが好ましい。
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD17029号、米国特許第4,123,282号、同第3,994,732号、同第3,846,136号及び同第4,021,249号の各明細書に開示されており、例えば、次のものがある。
イミド類(例えば、スクシンイミド、フタルイミド、ナフタールイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジンとフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸)の組合せ;フタラジンとマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組合せ等が挙げられる。特に好ましい色調剤としてはフタラジノンまたはフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組合せである。
(フッ素系界面活性剤)
本発明では熱現像処理装置でのフィルム搬送性や環境適性(生体内への蓄積性)を改良するために下記一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤が好ましく用いられる。
一般式(SF)
(Rf−(L1n1−)p−(Y)m1−(A)q
式中、Rfはフッ素原子を含有する置換基を表し、L1はフッ素原子を有しない2価の連結基を表し、Yはフッ素原子を有さない(p+q)価の連結基を表し、Aはアニオン基またはその塩を表し、n1、m1は各々0または1の整数を表し、pは1〜3の整数を表し、qは1〜3の整数を表す。但し、qが1の時はn1とm1は同時に0ではない。
前記一般式(SF)において、Rfはフッ素原子を含有する置換基を表すが、該フッ素原子を含有する置換基としては例えば、炭素数1〜25のフッ化アルキル基(例えば、トリフロロメチル基、トリフロロエチル基、パーフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基、パーフロロドデシル基及びパーフロロオクタデシル基等)またはフッ化アルケニル基(例えば、パーフロロプロペニル基、パーフロロブテニル基、パーフロロノネニル基及びパーフロロドデセニル基等)等が挙げられる。中でも炭素数が2以上、フッ素原子数が12以下のフッ化アルキル基であることが好ましい。
L1はフッ素原子を有さない2価の連結基を表すが、該フッ素原子を有さない2価の連結基としては例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、ブチレン基等)、アルキレンオキシ基(メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、ブチレンオキシ基等)、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシブチレン基等)、オキシアルキレンオキシ基(例えば、オキシメチレンオキシ基、オキシエチレンオキシ基、オキシエチレンオキシエチレンオキシ基等)、フェニレン基、オキシフェニレン基、フェニルオキシ基、オキシフェニルオキシ基またはこれらの基を組合せた基等が挙げられる。
Aはアニオン基またはその塩を表すが、例えば、カルボン酸基またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、スルホン酸基またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、硫酸ハーフエステル基またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩)、及び燐酸基またはその塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)等が挙げられる。
Yはフッ素原子を有さない(p+q)価の連結基を表すが、例えば、フッ素原子を有さない3価または4価の連結基としては、窒素原子または炭素原子を中心にして構成される原子群が挙げられる。n1は0または1の整数を表すが、1であるのが好ましい。
一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤は、フッ素原子を導入した炭素数1〜25のアルキル化合物(例えば、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、パーフロロブチル基、パーフロロオクチル基及びパーフロロオクタデシル基等を有する化合物)及びアルケニル化合物(例えば、パーフロロヘキセニル基及びパーフロロノネニル基等)と、それぞれフッ素原子を導入していない3価〜6価のアルカノール化合物、水酸基を3〜4個有する芳香族化合物またはヘテロ化合物との付加反応や縮合反応によって得られた化合物(一部Rf化されたアルカノール化合物)に、更に例えば硫酸エステル化等によりアニオン基(A)を導入することにより得ることができる。
上記3〜6価のアルカノール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンテン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ブタノール)−3、脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール等が挙げられる。
また、上記水酸基を3〜4個有する芳香族化合物及びへテロ化合物としては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン及び2,4,6−トリヒドロキシピリジン等が挙げられる。
以下に、一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤の好ましい具体的化合物を示す。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
本発明の一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤を塗布液に添加する方法としては公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。また、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザ分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤は、最外層の保護層に添加することが好ましい。
本発明の一般式(SF)で表されるフッ素系界面活性剤の添加量は1m2当たり1×10-8〜1×10-1モルが好ましく、1×10-5〜1×10-2モルが特に好ましい。前者の範囲未満では、帯電特性が得られず、前者の範囲を越えると、湿度依存性が大きく高湿下の保存性が劣化する。
(表面層)
本発明の熱現像感光材料は、支持体をはさんで画像形成層側の最表面の十点平均粗さ(Rz(E))と支持体をはさんで画像形成層と反対側の最表面の十点平均粗さ(Rz(B))とするときRz(E)/Rz(B)の値が0.1以上0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.2以上0.6以下であり、特に好ましくは0.3以上0.5以下である。Rz(E)/Rz(B)の値をこの範囲とすることで熱現像時の濃度ムラを改良することができる。また画像形成層を有する側の最表面に含まれるマット剤の最大の平均粒径をもつマット剤の平均粒径をLe(μm)、バックコート層を有する側の最表面に含まれるマット剤の最大の平均粒径をもつマット剤の平均粒径をLb(μm)とする時Lb/Leが2.0以上10以下であることが好ましく、3.0以上4.5以下であることがより好ましい。Lb/Leをこの範囲とすることで熱現像時の濃度ムラを改良することができる。
上記の十点平均粗さ(Rz)は、下記のJIS表面粗さ(B0601)により定義される。十点平均粗さ(Rz)とは断面曲線から基準長さだけぬきとった部分において、平均線に平行、かつ、断面曲線を横切らない直線から縦倍率の方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。中心線平均表面粗さ(Ra)の測定方法としては、25℃、65%RH環境下で測定試料同士が重ね合わされない条件で24時間調湿したのち、該環境下で測定した。ここで示す重ね合わされない条件とはたとえばフィルムエッジ部分を高くした状態で巻き取る方法やフィルムとフィルムの間に紙をはさんで重ねる方法、厚紙等で枠を作製しその四隅を固定する方法の何れかである。用いることのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
感光材料の表面と裏面の十点平均粗さを上記した範囲とするためには、用いるマット剤の種類と平均粒径と添加量、およびマット剤の分散条件、塗布時の乾燥条件をコントロールすることで容易に調整することができる。本発明においては、熱現像感光材料の表面層に(画像形成層側、又、支持体を挟み画像形成層の反対側に非感光層を設けた場合にも)、本発明の目的、又、表面粗さをコントロールする等のために、マット剤として有機又は無機の粉末を用いることが好ましい。用いられる粉末としては、モース硬度が5以上の粉末を用いることが好ましい。
粉末としては、公知の無機質粉末や有機質粉末を適宜選択して使用することができる。無機質粉末としては、例えば酸化チタン、窒化硼素、SnO2、SiO2、Cr23、α−Al23、α−Fe23、α−FeOOH、酸化セリウム、コランダム、人造ダイヤモンド、ガーネット、マイカ、珪石、窒化珪素、炭化珪素等を挙げることができる。有機質粉末としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、テフロン(登録商標)等の粉末を挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、SiO2、酸化チタン、硫酸バリウム、α−Al23、α−Fe23、α−FeOOH、Cr23、マイカ等の無機粉末等であり、その中でも、SiO2、α−Al23が好ましく、特に好ましいのはSiO2である。
本発明においては、前記粉末がSi化合物又はAl化合物により表面処理されていることが好ましい。かかる表面処理の為された粉末を用いると最上層の表面状態を良好にすることができる。前記Si又はAlの含有量としては、前記粉末に対してSiが0.1〜10質量%、Alが0.1〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくはSiが0.1〜5質量%、Alが0.1〜5質量%であり、Siが0.1〜2質量%、Alが0.1〜2質量%であるのが特に好ましい。又、Si、Alの質量比がSi<Alであるのがよい。表面処理に関しては特開平2−83219号公報に記載された方法により行うことができる。尚、本発明における粉末の平均粒径とは、球状粉末においてはその平均直径を、針状粉末においてはその平均長軸長を、板状粉末においてはその板状面の最大の対角線の長さの平均値を、それぞれ意味し、電子顕微鏡による測定から容易に求めることができる。
上記有機又は無機粉末は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。
感光層側の最外層に含まれる有機又は無機粉末の平均粒径は、通常0.5〜8.0μm、好ましくは1.0〜6.0μmであり、より好ましくは2.0〜5.0μmである。添加量は、最外層に用いられるバインダー量(硬化剤についてはバインダー量に含む)に対して、通常1.0〜20質量%であり、好ましくは2.0〜15質量%であり、より好ましくは3.0〜10質量%である。
支持体を挟んで感光層側とは反対側の最外層に含まれる有機又は無機粉末の平均粒径は、通常2.0〜15.0μm、好ましくは3.0〜12.0μmであり、より好ましくは4.0〜10.0μmである。添加量は最外層に用いられるバインダー量(硬化剤についてはバインダー量に含む)に対して、通常0.2〜10質量%であり、好ましくは0.4〜7質量%であり、より好ましくは0.6〜5質量%である。
又、粉末の粒子サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、更に好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下である。ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
{(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)}×100
有機又は無機粉末の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前に有機又は無機粉末を噴霧する方法を用いてもよい。又、複数の種類の粉末を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
本発明においては、熱現像時の感光材料シートのピックアップ不良を改良するために、バックコート層保護層や画像形成層保護層に滑り剤を含有することが好ましい。ピックアップ不良の改良効果を得る上で重要な点は画像形成層側の最表面とバックコート層側の最表面の間の動摩擦係数を0.15〜0.40、好ましくは0.17〜0.38、より好ましくは0.20〜0.35とすることである。
動摩擦係数を上述の範囲とするためには画像形成層側の最表面やバックコート層側の最表面の滑り剤の種類と量、フッ素系界面活性剤の種類と量、マット剤の種類と量、および塗布時の乾燥条件をコントロールすることで行うことが可能である。滑り剤としては脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル、カルナバワックス、スクワラン、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、脂肪酸アミド誘導体、ポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等)、α−オレフィンオキサイドなどを使用することができるが、熱現像時に汚れを発生しない点から特に脂肪酸アミド誘導体やポリオレフィンが好ましい。滑り剤の使用量としては用いる層のバインダーの量に対して通常0.1〜30質量%であり、好ましくは0.5〜20質量%であり、より好ましくは1.0〜15.0質量%である。
(支持体)
熱現像感光材料に用いる支持体の素材としては、各種高分子材料、ガラス、ウール布、コットン布、紙、金属(アルミニウム等)等が挙げられるが、情報記録材料としての取扱い上は、可撓性のあるシート又はロールに加工できるものが好適である。従って、本発明の熱現像感光材料における支持体としては、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セルローストリアセテートフィルム(TAC)又はポリカーボネート(PC)フィルム等のプラスチックフィルムが好ましく、特に2軸延伸したPETフィルムが特に好ましい。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
帯電性を改良するために金属酸化物及び/又は導電性ポリマー等の導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらは何れの層に含有させてもよいが、好ましくはバッキング層又は感光性層側の表面保護層、下引層等に含まれる。米国特許第5,244,773号明細書のカラム14〜20に記載された導電性化合物等が好ましく用いられる。中でも、本発明では、バッキング層側の表面保護層に導電性金属酸化物を含有することが好ましい。このことで、更に本発明の効果(特に熱現像処理時の搬送性)を高められることが判った。
ここで、導電性金属酸化物とは、結晶性の金属酸化物粒子であり、酸素欠陥を含むもの及び用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等は、一般的に言って導電性が高いので特に好ましく、特に後者はハロゲン化銀乳剤にカブリを与えないので特に好ましい。金属酸化物の例としてZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V25等、又はこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、SnO2に対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、又、TiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜30モル%の範囲が好ましいが、0.1〜10モル%であれば特に好ましい。更に又、微粒子分散性、透明性改良のために、微粒子作製時に珪素化合物を添加してもよい。
本発明に用いられる金属酸化物微粒子は導電性を有しており、その体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下である。これらの酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号等の各公報に記載されている。更に又、特公昭59−6235号に記載の如く、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(酸化チタン等)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。
利用できる粒子サイズは1μm以下が好ましいが、0.5μm以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。又、光散乱性をできるだけ小さくするために、0.3μm以下の導電性粒子を利用すると、透明感光材料を形成することが可能となり大変好ましい。又、導電性金属酸化物が針状あるいは繊維状の場合は、その長さは30μm以下で直径が1μm以下が好ましく、特に好ましいのは長さが10μm以下で直径0.3μm以下であり、長さ/直径比が3以上である。尚、SnO2としては、石原産業社より市販されており、SNS10M、SN−100P、SN−100D、FSS10M等を用いることができる。
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも1層の感光層である画像形成層を有している。支持体上に画像形成層のみを形成してもよいが、画像形成層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。例えば、画像形成層の上には保護層が、画像形成層を保護する目的で設けられることが好ましく、又、支持体の反対の面には、感光材料間の、あるいは感光材料ロールにおける「くっつき」を防止するために、バックコート層が設けられる。
これらの保護層やバックコート層に用いるバインダーとしては、画像形成層よりもガラス転位点(Tg)が高く、擦傷や、変形の生じ難いポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のポリマーが、前記のバインダーの中から選ばれる。
尚、階調調整等のために、画像形成層を支持体の一方の側に2層以上又は支持体の両側に1層以上設置してもよい。
(染料)
本発明の熱現像感光材料においては、画像形成層を透過する光の量または波長分布を制御するために画像形成層と同じ側または反対の側にフィルター層を形成するか、画像形成層に染料または顔料を含有させることが好ましい。
本発明において用いられる染料としては、熱現像感光材料の感色性に応じて種々の波長領域の光を吸収する公知の化合物が使用できる。
例えば、本発明の熱現像感光材料を赤外光による画像記録材料とする場合には、特開2001−83655号公報に開示されているようなチオピリリウム核を有するスクアリリウム染料及びピリリウム核を有するスクアリリウム染料、またスクアリリウム染料に類似したチオピリリウムクロコニウム染料、またはピリリウムクロコニウム染料を使用することが好ましい。
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシル基は解離していてもよい。尚、染料としては特開平8−201959号公報の化合物も好ましい。
(構成層の塗布)
本発明の熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を作り、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば、画像形成層、保護層)の塗布液を作製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下(より好ましくは90質量%以下)となる前に、上層を設けることである。
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、リバースロール塗布法、グラビア塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはスライド塗布法、エクストリュージョン塗布法である。これらの塗布方法は画像形成層を有する側について述べたが、バック層を設ける際、下引きと共に塗布する場合についても同様である。熱現像材料における同時重層塗布方法に関しては、特開2000−15173号公報に詳細な記載がある。
尚、本発明において、塗布銀量は熱現像感光材料の目的に応じた適量を選ぶことが好ましいが、医療用画像を目的とする場合には、0.3g/m2以上、1.5g/m2以下が好ましく、0.5g/m2以上、1.5g/m2以下がより好ましい。当該塗布銀量のうち、ハロゲン化銀に由来するものは全銀量に対して2〜18%を占めることが好ましい、更には5〜15%が好ましい。
また、本発明において、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子の塗布密度は1×1014個/m2以上、1×1018個/m2以下が好ましい。更には1×1015個/m2以上、1×1017個/m2以下が好ましい。
更に、前記の非感光性長鎖脂肪族カルボン酸銀の塗布密度は、0.01μm以上(球相当換算粒径)のハロゲン化銀粒子1個当たり、1×10-17g以上、1×10-14g以下が好ましく、1×10-16g以上、1×10-15g以下がより好ましい。
上記のような範囲内の条件において塗布した場合には、一定塗布銀量当たりの銀画像の光学的最高濃度、即ち銀被覆量(カバーリング・パワー)及び銀画像の色調等の観点から好ましい結果が得られる。
本発明においては、熱現像感光材料が現像時に溶剤を5〜1,000mg/m2の範囲で含有していることが好ましい。100〜500mg/m2であるように調整することがより好ましい。それにより、高感度、低カブリ、最高濃度の高い熱現像感光材料となる。溶剤としては、特開2001−264930号公報の段落番号「0030」に記載のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。また、これらの溶剤は単独または数種類組合せて用いることができる。
尚、熱現像感光材料中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。また、当該溶剤の含有量は、含有させた溶剤を検出するために適した条件下におけるガスクロマトグラフィーで測定できる。
(包装体)
本発明の熱現像感光材料を保存する場合は、経時での濃度変化やカブリ発生を防止するため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50ml/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1.0ml/atm・m2・day以下である。水分透過率は10g/atm・m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m2・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m2・day以下である。熱現像感光材料用の包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号、特開2000−206653号、特開2000−235241号、特開2002−062625号、特開2003−015261号、特開2003−057790号、特開2003−084397号、特開2003−098648号、特開2003−098635号、特開2003−107635号、特開2003−131337号、特開2003−146330号、特開2003−226439、特開2003−228152号公報に記載されている包装材料である。また包装体内の空隙率は0.01〜10%、好ましくは0.02〜5%とするのがよく、窒素封入を行って包装体内の窒素分圧を80%以上、好ましくは90%以上とするのがよい。また包装体内の相対湿度は10%以上60%以下、好ましくは40%以上、55%以下とするのが良い。
(熱現像感光材料の露光)
熱現像感光材料は、画像記録する際にレーザ光を用いるのが普通である。本発明においては、当該感光材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば当該感光材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、熱現像感光材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780nm、820nm)がより好ましく用いられる。
また特に本発明の感光材料は、好ましくは光量が1mW/mm2以上の高照度の光で短時間露光されることでその特性を発揮する。ここでの照度は熱現像後の感光材料が3.0の光学濃度がでるときの照度を言う。このような高照度で露光を行うと必要な光学濃度を得るために必要な光量(=照度*露光時間)が少なくてすみ、高感度システムを設計できる。より好ましくはその光量は2mW/mm2以上50W/mm2以下であり、さらに好ましくは10mW/mm2以上50W/mm2以下である。このような光源であればどのようなものでも構わないが、レーザ光であることによって好ましく達成できる。本発明にこのましく用いられるレーザ光としては、ガスレーザ(Ar+、KrHe−Ne)、YAGレーザ、色素レーザ、半導体レーザなどが好ましい。また、半導体レーザと第2高調波発生素子などを用いることもできる。更に好ましくは青〜紫発光の半導体レーザ(波長350nm〜440nmにピーク強度を持つもの等)である。青〜紫発光の高出力半導体レーザとしては日亜化学のNLHV3000E半導体レーザを挙げることができる。
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、感光材料の露光面と走査レーザ光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。
ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ光走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
レーザ光が感光材料に走査される時の、感光材料露光面でのビームスポット直径は好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方が、レーザ光入射角度の垂直からの「ずらし角度」を減らせる点で好ましい。尚、ビームスポット直径の下限は10μmである。この様なレーザ走査露光を行うことにより、干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。
又、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳を掛ける、等の方法がよい。尚、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
更に、第3の態様としては、2本以上のレーザ光を用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。この様な複数本のレーザ光を利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば特開昭60−166916号等の公報により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、これはレーザイメージャー等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは、互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは、1インチ=2.54cm当たりのドット数を表す)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。この様な、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザを入射角を変え露光面に集光させ画像形成することが好ましい。この際、通常の1本のレーザ光(波長λ[nm])で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEであり、露光に使用するN本のレーザ光が同一波長(波長λ[nm])、同一露光エネルギー(En)である場合に、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。この様にすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
尚、上述では複数本のレーザ光の波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合には、λ[nm]に対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
尚、上述した第1、第2及び第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でも、メンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザによるレーザ光を用いるのが好ましい。尚、レーザ・イメージャやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザ光において、熱現像感光材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は熱現像材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、熱現像感光材料毎に最適な値に設定することができる。
(熱現像処理装置)
本発明で言う熱現像処理装置は、構成としては、フィルムトレイで代表されるフィルム供給部、レーザ画像記録部、熱現像感光材料の全面に均一で安定した熱を供給する熱現像部、フィルム供給部からレーザ記録を経て、熱現像により画像形成された熱現像感光材料を装置外に排出するまでの搬送部から構成される。この態様の熱現像処理装置の具体例は図1に示すものである。
熱現像装置100は、シート状の熱現像感光材料(フォトサーモグラフィックエレメント又は単にフィルムとも言う)を1枚ずつ給送する給送部110、給送されたフィルムFを露光する露光部120、露光されたフィルムFを現像する現像部130、現像を停止させる冷却部150と集積部160とを有し、給送部からフィルムFを供給するための供給ローラー対140、現像部にフィルムを送るための供給ローラー対144、各部間でフィルムFを円滑に移送するための搬送ローラー対141、142、143、145等複数のローラー対から成っている。熱現像部はフィルムFを現像する加熱手段として、外周にほぼ密着して保持しつつ加熱可能な複数の対向ローラー2を有するヒートドラム1と現像したフィルムFを剥離し冷却部に送るための剥離爪6等から成る。
尚、熱現像感光材料の熱現像部における搬送速度は10〜200mm/secが好ましい範囲であり、より好ましくは20〜200mm/secである。搬送速度をこの範囲とすることにより、熱現像時の濃度むらを改良でき、また処理時間が短縮できるため、緊急時の診断にも対応できて好ましい。
熱現像感光材料の現像条件は、使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には、適した高温において像様に露光した熱現像材料を加熱することにより現像を行うものである。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜200℃、好ましくは約100〜140℃、より好ましくは110〜130℃)で、十分な時間(一般には約1秒〜2分間、好ましくは3〜30秒、より好ましくは5〜20秒である。)
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、又、200℃を超えるとバインダーが溶融し、ローラーへの転写等画像そのものだけでなく、搬送性や現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は、外部からの水等の処理液の供給を一切行わないで進行する。
加熱する機器、装置あるいは手段としては、例えばホットプレート、アイロン、ホットローラー、炭素又は白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段等で行ってよい。より好ましくは、保護層の設けられた熱現像材料は、保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理することが、均一な加熱を行う上で、又、熱効率、作業性等の観点から好ましく、保護層を有する側の面をヒートローラーに接触させながら搬送し、加熱処理して現像することが好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
実施例1
《感光材料1の作成》
〔下引加工した写真用支持体の作製〕
光学濃度0.150(濃度計としてコニカミノルタフォトイメージング社製デンシトメータPDA−65を用いて測定)に下記青色染料で着色した2軸延伸熱固定した厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に、8W・分/m2のコロナ放電処理を施した写真用支持体に、下引加工を行った。即ち、この写真用支持体の一方の面に下引塗布液a−1を乾燥膜厚が0.2μmになるように22℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥して画像形成層側下引層を形成した(下引下層A−1という)。また、反対側の面にバッキング層下引層として下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚が0.12μmになるように22℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥させてバッキング層側に帯電防止機能を持つ下引導電層(下引下層B−1という)を塗設した。下引下層A−1と下引下層B−1の上表面に、8W・分/m2のコロナ放電を施し、下引下層A−1の上には下記下引塗布液a−2を乾燥膜厚0.03μmになるように33℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥させて下引上層A−2とし、下引下層B−1の上には下記下引塗布液b−2を乾燥膜厚0.2μmになるように33℃、100m/分で塗設し、140℃で乾燥させて下引上層B−2とし、更に123℃で2分間支持体を熱処理し25℃、50%RHの条件下で巻き取り、下引加工した写真用支持体を作製した。
Figure 2006003701
(画像形成層側下引下層用塗布液a−1)
アクリル系ポリマーラテックスC−3(固形分30%) 70.0g
エトキシ化アルコールとエチレンホモポリマーの水分散物(固形分10%)
5.0g
界面活性剤(A) 0.1g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
(画像形成層側下引上層用塗布液a−2)
変性水性ポリエステルB−2(18質量%) 30.0g
界面活性剤(A) 0.1g
真球状シリカマット剤(日本触媒(株)製 シーホスターKE−P50)
0.04g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
(バッキング層側下引下層用塗布液b−1)
アクリル系ポリマーラテックスC−1(固形分30%) 30.0g
アクリル系ポリマーラテックスC−2(固形分30%) 7.6g
SnO2ゾル 180g
(特公昭35−6616号公報の実施例1に記載の方法で合成したSnO2ゾルを固形分濃度が10質量%になるように加熱濃縮した後、アンモニア水でpH=10に調整したもの)
界面活性剤(A) 0.5g
PVA−613(クラレ(株)製 PVA)5質量%水溶液 0.4g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
(バッキング層側下引上層用塗布液b−2)
変性水性ポリエステルB−1(18質量%) 145.0g
真球状シリカマット剤(日本触媒(株)製 シーホスターKE−P50) 0.2g
界面活性剤(A) 0.1g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
なお、前記下引層を施した支持体の下引層A−2上には下記の組成のバックコート層、バックコート層保護層を塗設した。
Figure 2006003701
また、上記各下引層塗布液の調製に用いた各ポリマーは、以下のように調製した。
〈水性ポリエステルA−1溶液の調製〉
テレフタル酸ジメチル35.4質量部、イソフタル酸ジメチル33.63質量部、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92質量部、エチレングリコール62質量部、酢酸カルシウム・一水塩0.065質量部、酢酸マンガン四水塩0.022質量部を、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチル0.04質量部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04質量部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8質量部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を留去しエステル化を行った。
その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、水性ポリエステルA−1を合成した。得られた水性ポリエステルA−1の固有粘度は0.33、平均粒径は40nm、Mw=80000〜100000であった。
次いで、撹拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの3つ口フラスコに、純水850mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、水性ポリエステルA−1を150g徐々に添加した。室温でこのまま30分間撹拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、15質量%の水性ポリエステルA−1溶液を調製した。
〈変性水性ポリエステルB−1〜2溶液の調製〉
撹拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの4つ口フラスコに、前記15質量%の水性ポリエステルA−1溶液1900mlを入れ、撹拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱する。この中に、過酸化アンモニウムの24質量%水溶液を6.52ml加え、モノマー混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続ける。その後、30℃以下まで冷却、濾過して、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−1溶液(ビニル系成分変性比率20質量%)を調製した。
ビニル変性比率を36質量%にし、変性成分をスチレン:グリシジルメタクリレート:アセトアセトキシエチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート=39.5:40:20:0.5にした以外は同様にして、固形分濃度が18質量%の変性水性ポリエステルB−2溶液(ビニル系成分変性比率20質量%)を調製した。
〈アクリル系ポリマーラテックスC−1〜C−3の作製〉
乳化重合により、表2に示すモノマー組成を有するアクリル系ポリマーラテックスC−1〜C−3を合成した。固形分濃度は全て30質量%とした。
Figure 2006003701
〔バックコート層面側の各塗布液の調製〕
(バックコート層塗布液の調製)
メチルエチルケトン(MEK)830gを撹拌しながら、セルロースアセテートプロピオネート(Eastman Chemical社製:CAP482−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社:VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。次に、溶解した液に0.30gの下記赤外染料1を添加し、更にメタノール43.2gに溶解した弗素系界面活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)4.5gと弗素系界面活性剤(大日本インキ社製:メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。次にオレイルオレートの2.5gを添加、撹拌しバックコート層塗布液を調製した。
Figure 2006003701
(バックコート層保護層(表面保護層)塗布液の調製)
バックコート層保護層についても下記の組成比率でバックコート層塗布液と同様にして
調製した。シリカについてはMEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散を行い、最後に添加した。
セルロースアセテートプロピオネート(10%MEK溶液) 15g
(Eastman Chemical社製:CAP482−20)
単分散度15%の単分散シリカ(平均粒径:10μm)
(シリカ全質量の1%のアルミニウムで表面処理) 0.03g
817(CH2CH2O)12817 0.05g
弗素系界面活性剤(SF−17) 0.01g
ポリプロピレン 0.03g
1837CONHCH2CH2NHCOC1837 0.03g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
〔画像形成層面側の各塗布液の調製〕
(感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製)
〈A1〉
フェニルカルバモイル化ゼラチン 88.3g
化合物(AO−1)の10%メタノール水溶液 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
〈B1〉
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
〈C1〉
臭化カリウム 50.69g
沃化カリウム 2.66g
水で660mlに仕上げる
〈D1〉
臭化カリウム 151.6g
沃化カリウム 7.67g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 0.93ml
2(IrCl6
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 0.004g
ヘキサクロロオスミウム(IV)酸カリウム 0.004g
水で1982mlに仕上げる
〈E1〉
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
〈F1〉
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
〈G1〉
56%酢酸水溶液 18.0ml
〈H1〉
無水炭酸ナトリウム 1.72g
水で151mlに仕上げる
AO−1:HO(CH2CH2O)n〔CH(CH3)CH2O〕17(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)。
特公昭58−58288号公報に示される混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を20℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後に溶液(F1)の全量を添加した。この間、pAgの調整を(E1)を用いて適宜行った。6分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の全量を、20℃、pAg8.09に制御しながら、14分15秒かけて同時混合法により添加した。5分間撹拌した後、40℃に降温し、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10L加え、撹拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10L加え、撹拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり1161gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
この乳剤は、平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤A2の調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製において、溶液D1に臭化鉛の0.4%水溶液を5ml追加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤A2を調製した。
なお、この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤A3の調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製において、核生成後に溶液F1の全量を添加した後に、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンの5%水溶液を40ml添加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤A3を調製した。
なお、この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤A4の調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製において、核生成後に溶液F1の全量を添加した後に、下記の化合物(ETTU)の0.1%エタノール溶液を4ml添加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤A4を調製した。
なお、この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
Figure 2006003701
(感光性ハロゲン化銀乳剤A5の調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製において、核生成後に溶液F1の全量を添加した後に、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの0.1%エタノール溶液を4ml添加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤A5を調製した。
なお、この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤B1の調製)
同時混合法による添加時の温度を45℃に変更した以外は感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製と同様に行った。この乳剤は平均粒子サイズ55nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤B2の調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤B1の調製において、核生成後に溶液F1の全量を添加した後に、前記の化合物(ETTU)の0.1%エタノール溶液を4ml添加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤B2を調製した。この乳剤は平均粒子サイズ55nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった(AgIの含有率は3.5モル%)。
〔有機銀塩の調製〕
(粉末有機銀塩Aの調製)
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、感光性ハロゲン化銀乳剤(種類と添加量は表2に記載)と純水450mlを添加し5分間撹拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液468.4mlを2分間かけて添加し、10分間撹拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて撹拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機熱風温度の運転条件(入口65℃、出口40℃)により含水率が0.1%になるまで乾燥して乾燥済みの粉末有機銀塩Aを得た。この有機銀塩を用いて作製した熱現像感光材料試料3(後述)について電子顕微鏡を用いた分析結果から、平均粒径(円相当径)0.08μm、アスペクト比5、単分散度10%の平板状粒子であった。
尚、有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
〔予備分散液Aの調製〕
画像形成層バインダーとして、SO3K基含有ポリビニルブチラール(Tg75℃、−SO3K基を0.2ミリモル/g含む)14.57gをMEK1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて撹拌しながら、上記粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
(各添加液の調製)
〈感光性乳剤分散液Aの調製〉
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行うことにより感光性乳剤分散液Aを調製した。
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
〈赤外増感色素液Aの調製〉
9.6mgの赤外増感色素1、9.6mgの赤外増感色素2、1.488gの2−クロロ安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し赤外増感色素液Aを調製した。
〈添加液aの調製〉
還元剤(表2に記載の化合物と量)と0.159gの一般式(YB)の化合物(YA−1)、0.159gのシアン発色性ロイコ染料CA−12、1.54gの4−メチルフタル酸、0.48gの前記赤外染料1をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
〈添加液bの調製〉
1.56gのカブリ防止剤2、0.5gのカブリ防止剤3、0.5gのカブリ防止剤4、0.5gのカブリ防止剤5、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
〈添加液cの調製〉
省銀化剤(A1)0.01g、をMEK39.99gに溶解し添加液cとした。
〈添加液dの調製〉
0.1gの強色増感剤1をMEK9.9gに溶解し、添加液dとした。
〈添加液eの調製〉
試料1〜30については一般式(A−7)、一般式(A−8)の化合物(種類と量は表2に記載)をMEK9.0gに溶解し、添加液eとした。
試料31〜49については2.1gのオキサゾリン化合物(表2に記載の種類)をMEK17.9gに溶解し、添加液eとした。
〈添加液fの調製〉
1.0gのビニルスルホン〔(CH2=CH−SO2CH22CHOH〕を含有するカブリ防止剤をMEK9.0gに溶解し、添加液fとした。
(画像形成層塗布液の調製)
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液(表2に記載)の50g及びMEK15.11gを撹拌しながら21℃に保温し、化学増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にカブリ防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加えて1時間撹拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に上記の有機化学増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分撹拌した。続いて、安定剤液167μlを添加して10分間撹拌した後、1.32gの前記赤外増感色素液Aを添加して1時間撹拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分撹拌した。13℃に保温したまま、0.5gの添加液d、添加液e(表2に記載の添加量)、0.5gの添加液f、予備分散液Aで使用したバインダー13.31gを添加して30分撹拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間撹拌した。更に撹拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液b、4.0gの添加液cを順次添加し撹拌することにより画像形成層塗布液を得た。
安定剤液を初めとする各塗布液、画像形成層塗布液の調製に用いた添加剤の構造を以下に示す。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
(画像形成層保護層下層(表面保護層下層)の調製)
アセトン 5g
MEK 21g
セルロースアセテートプロピオネート 2.3g
(Eastman Chemical社製:CAP−141−20、
ガラス転移温度Tg=190℃)
メタノール 7g
フタラジン 0.25g
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2 0.035g
1225(CH2CH2O)101225 0.01g
弗素系界面活性剤(SF−17:前出) 0.01g
ステアリン酸 0.1g
ステアリン酸ブチル 0.1g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
(画像形成層保護層上層(表面保護層上層)の調製)
アセトン 5g
メチルエチルケトン 21g
セルロースアセテートプロピオネート 2.3g
(Eastman Chemical社製:CAP−141−20
ガラス転移温度Tg=190℃)
メタノール 7g
フタラジン 0.25g
単分散度15%単分散シリカ(平均粒径:3μm) 0.140g
(シリカ全質量の1質量%のアルミニウムで表面処理)
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2 0.035g
1225(CH2CH2O)101225 0.01g
弗素系界面活性剤(SF−17:前出) 0.01g
ポリプロピレン 0.05g
1837CONHCH2CH2NHCOC1837 0.05g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
なお画像形成層保護層上層、下層については上記の組成比率でバックコート層塗布液の調製と同様な方法によって行った。シリカについてはバックコート層保護層と同様にMEKに1質量%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散を行い、最後に添加、撹拌することにより画像形成層保護層上層、下層の塗布液を得た。
〔熱現像感光材料の作製〕
(バックコート層面側の塗布)
前記のように調製したバックコート層塗布液、バックコート層保護層塗布液を、乾燥膜厚がそれぞれ3.5μmになるように、下引上層B−2上に押出しコーターにて塗布速度50m/minにて塗布を行った。尚、乾燥は乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて行った。
(画像形成層面側の塗布)
前記画像形成層塗布液と画像形成層保護層(表面保護層)塗布液を押出し(エクストルージョン)コーターを用いて塗布速度50m/minにて、下引上層A−2上に同時重層塗布することにより表2に示す感光材料試料1〜49を作製した。塗布は、画像形成層は塗布銀量1.2g/m2、画像形成層保護層(表面保護層)は乾燥膜厚で3.0μm(表面保護層上層1.5μm、表面保護層下層1.5μm)になる様に行った後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行った。
得られた熱現像感光材料(試料15)の画像形成層側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は6000秒であり、バックコート層側の膜面pHは5.5,ベック平滑度は9000秒であった。
尚、試料10、25、44については、それぞれ試料3、18、34における、粉末有機銀塩Aの調製において、ベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gのかわりにベヘン酸259.9gを用いたこと以外は試料3、18、34と同様にして試料を作成した。
試料11、26、45については、それぞれ試料3、18、34における、粉末有機銀塩Aの調製において、1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlのかわりに1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを用いたこと以外は試料3、18、34と同様にして試料を作成した。
試料12、27、46については、それぞれ試料3、18、34におけるバックコート層保護層、画像形成層保護層(上層及び下層)の弗素系活性剤をSF−17からC817SO3Liに変更した以外は試料3、18、34と同様にして試料を作製した。
試料13、28、47については、それぞれ試料3、18、34での予備分散液Aの調整における画像形成層バインダーとして、SO3K基含有ポリビニルブチラール(Tg75℃、SO3Kを0.2ミリモル/g含む)に代えて、SO3K基含有ポリビニルブチラール(Tg65℃、SO3Kを0.2ミリモル/g含む)を用いたこと以外は試料3、18、34と同様にして試料を作製した。
《熱現像感光材料の画像形成》
(包装体の作製)
〈包装材料〉
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3%を含むポリエチレン50μm、酸素透過率:0ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0g/atm・m2・25℃・dayのバリア袋。紙トレーを使用。
(露光及び現像処理)
上記のように作製した熱現像感光材料試料1〜49を半切サイズ(34.5cm×43.0cm)に加工した後、25℃50%の環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
(試料の評価)
評価は図1に示す熱現像処理装置を用いて以下の要領で処理した。
熱現像感光材料試料をフィルムトレイから取り出し、レーザ露光部に搬送した後、画像形成層面側から、高周波重畳にて波長810nmの縦マルチモード化された半導体レーザ(1本の最大出力35mWを2本合波して最大出力70mWにしたもの)を露光源とした露光機によりレーザ走査による露光を与えた。この際、熱現像感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。その後、熱現像感光材料は熱現像部へと搬送され、ヒートドラムが熱現像感光材料の画像形成層側の保護層とドラム表面とが接触するようにして、123℃で13.5秒熱現像処理し、熱現像感光材料を装置外に搬出した。なおヒートドラムはテフロン(登録商標)で表面処理されたものを用いた。この時の感光材料供給部から画像露光部までの搬送速度、画像露光部での搬送速度、熱現像部での搬送速度はそれぞれ25mm/secで行った。尚、露光及び現像は23℃・50%RHに調湿した部屋で行った。露光は最高出力から1段ごとに露光エネルギー量をlogE0.05ずつ減じながら階段状に行った。
〔性能評価〕
熱現像された各画像について下記の各性能を評価した。
(画像濃度)
上記の条件にて得られた画像の最高濃度部の値を濃度計により測定し画像濃度として示した。
(感度)
上記の条件にて得られた画像を濃度計を用いて濃度測定を行い、横軸−露光量、縦軸−濃度からなる特性曲線を作成した。特性曲線において、感度は未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の逆数を感度と定義し、感度を測定した。なお、感度は、試料1、試料21のそれぞれを100とする相対値で表した。
注:相対感度欄の括弧内の数値は、感光材料に白色光露光する前に熱現像温度で感光材料を熱処理し、その後に光学楔を通して白色光露光(4874K、30秒)して熱現像した場合の感度と、露光前に熱処理せずに前記と同じ条件下で白色光露光して熱現像した場合の感度との比較において、後者の感度を100としたときの前者の感度相対値を示した。なお、この相対比較において感光材料に白色光露光する前に熱現像温度で感光材料を熱処理した試料の相対感度の減少の主因は、分光増感効果の消失乃至減少によりハロゲン化銀粒子の表面感度と内部感度の相対的関係が変化したことによるものであることが分光感度スペクトルの変化等の観察/測定により確認された。
(銀色調)
各熱現像感光材料試料に胸部X線画像を焼き付け、処理後の銀色調をシャーカステンを使って目視で評価した。この時の標準サンプルとしてコニカミノルタエムジー社製の湿式処理のレーザイメージャ用フィルムを用い、標準サンプルとの相対的な色調を目視で、以下の基準で0.5刻みの評価をした。
5:標準サンプルと同じ色調
4:標準サンプルとほぼ同じ好ましい色調
3:標準サンプルとやや色調は異なるが実技上問題ないレベル
2:標準サンプルと明らかに異なる色調
1:標準サンプルと異なる不快な色調
(光照射画像保存性)
各熱現像感光材料試料を上記と同様の露光、現像を行った後、輝度1000ルックスのシャーカステン上に貼り付け10日間放置した後の画像の変化を目視で、以下の基準で0.5刻みの評価をした。
5:殆ど変化なし
4:僅かに色調変化が見られる
3:一部に色調変化とカブリの増大が見られる
2:色調変化とカブリの増大がかなりの部分に見られる
1:色調変化とカブリの増大が顕著、全面で強い濃度ムラが発生する
(熱現像時の濃度むら)
現像後の濃度むらを目視で、以下の基準で評価した。
5:濃度むらの発生は見られない
4:わずかに濃度むらが発生
3:一部で弱い濃度むらが発生
2:一部で強い濃度むらが発生
1:全面で強い濃度むらが発生
(常温保存時のかぶり上昇)
作製した熱現像感光材料を内部が25℃で湿度55%に保たれた密閉容器中に入れた後、40日間経時保存した。比較として同じ熱現像感光材料を25℃で湿度55%にて遮光容器中に3日経時保存した。これらの試料をセンシトメトリーの評価に用いたものと同じ処理を行い、カブリ部分の濃度を測定した。下記により、カブリの増加をみた。
ΔDmin(カブリの増加)=(40日経時のカブリ)−(比較用経時のカブリ)
結果を表1に示す。
(表面粗さの評価)
熱現像の処理前の試料について、非接触3次元表面解析装置(WYKO社RST/PLUS)を用いて、下記に示す方法により測定した。
1) 対物レンズ:×10.0 中間レンズ:×1.0
2) 測定範囲:463.4μm×623.9μm
3) ピクセルサイズ:368×238
4) フィルター:円筒補正と傾き補正
5) スムージング:ミディアムスムージング
6) スキャンスピード:Low
なおRzの定義はJIS表面粗さ(B0601)に従った。測定は10cm×10cmの各試料について、1cm間隔で碁盤目状に100分割し、各正方形領域の中心について測定を行ない、100回の測定からその平均値を求めた。
結果を表2、表3に示す。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
表2、表3から、比較の試料と比べて、本発明の試料は、高濃度を維持しつつ、光照射画像保存性、銀色調や熱現像時の濃度むら、常温保存時のかぶり上昇に優れることが明らかである。又、試料12、27、46と試料3、18、34を比較すると、搬送性、環境適性(生体内での蓄積性)については、試料3、18、34の方が優れた特性を有することが判った。
実施例2
《感光材料2の作製》
〔下引加工した写真用支持体の作製〕
実施例1と同様にして作製した。
〔バックコート層面側の各塗布液の調製〕
(バックコート層塗布液の調製)
メチルエチルケトン(MEK)830gを撹拌しながら、セルロースアセテートプロピオネート(Eastman Chemical社製:CAP482−20)84.2g及びポリエステル樹脂(Bostic社:VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。次に、溶解した液にメタノール43.2gに溶解した弗素系界面活性剤(旭硝子社製:サーフロンKH40)4.5gと弗素系界面活性剤(大日本インキ社製:メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。次にオレイルオレートの2.5gを添加した。最後に、MEKに1%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(平均粒径:10μm)を75g添加、撹拌しバックコート層塗布液を調製した。
(バックコート層保護層(表面保護層)塗布液の調製)
下記の組成比率でバックコート層塗布液と同様にして調整した。シリカの分散にはディゾルバ型ホモジナイザを使用した。
セルロースアセテートプロピオネート(10%MEK溶液) 15g
Eastman Chemical社製:CAP482−20
単分散度15%の単分散シリカ(平均粒径:10μm)
(シリカ全質量の1%のアルミニウムで表面処理) 0.03g
817(CH2CH2O)12817 0.05g
弗素系界面活性剤(SF−17) 0.01g
ステアリン酸 0.1g
オレイルオレート 0.1g
α−アルミナ(モース硬度9) 0.1g
〔画像形成層面側の各塗布液の調製〕
(感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製)
実施例1における感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製と同じ。
(感光性ハロゲン化銀乳剤B1の調製)
実施例1における感光性ハロゲン化銀乳剤B1の調製と同じ。
(感光性ハロゲン化銀乳剤Cの調製)
感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製時に用いられる臭化カリウムを沃化カリウムに変更した以外は感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製と同様に行った。この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散純沃化銀粒子であった。
(感光性ハロゲン化銀乳剤Dの調製)
感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製時に用いられる臭化カリウムの一部を沃化銀含有率が90モル%となるように沃化カリウムに変更した以外は感光性ハロゲン化銀乳剤A1の調製と同様に行った。この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散沃臭化銀粒子であった(沃化銀含有率は90モル%であった)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤Eの調製)
同時混合法による添加時の温度を45℃に変更した以外は感光性ハロゲン化銀乳剤Cの調製と同様に行った。この乳剤は平均粒子サイズ55nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散純沃化銀粒子であった。
(感光性ハロゲン化銀乳剤Fの調製)
同時混合法による添加時の温度を45℃に変更した以外は感光性ハロゲン化銀乳剤Dの調製と同様に行った。この乳剤は平均粒子サイズ55nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散沃臭化銀粒子であった(沃化銀含有率は90モル%であった)。
(感光性ハロゲン化銀乳剤Gの調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤Cの調製において、核生成後に溶液F1の全量を添加した後に、前記の化合物(ETTU)の0.1%エタノール溶液を4ml添加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤Gを調製した。
なお、この乳剤は平均粒子サイズ25nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散純沃化銀粒子であった。
(感光性ハロゲン化銀乳剤Hの調製)
上記感光性ハロゲン化銀乳剤Eの調製において、核生成後に溶液F1の全量を添加した後に、前記の化合物(ETTU)の0.1%エタノール溶液を4ml添加した以外は同様にして感光性ハロゲン化銀乳剤Hを調製した。
この乳剤は平均粒子サイズ55nm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散純沃化銀粒子であった。
〔有機銀塩の調製〕
(粉末有機銀塩Aの調製)
4720mlの純水にベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gを80℃で溶解した。次に1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して脂肪酸ナトリウム溶液を得た。上記の脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、感光性ハロゲン化銀乳剤(種類と添加量は表3に記載)と純水450mlを添加し5分間撹拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液468.4mlを2分間かけて添加し、10分間撹拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて撹拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、得られたケーキ状の有機銀塩を、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機熱風温度の運転条件(入口65℃、出口40℃)により含水率が0.1%になるまで乾燥して乾燥済みの粉末有機銀塩Aを得た。
〔予備分散液Aの調製〕
実施例1における予備分散液Aと同じ。
(各添加液の調製)
〈感光性乳剤分散液Aの調製〉
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/sにて分散を行うことにより感光性乳剤分散液Aを調製した。
〈安定剤液の調製〉
1.0gの安定剤1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール4.97gに溶解し安定剤液を調製した。
〈2−クロロ安息香酸液の調製〉
1.488gの2−クロロ安息香酸、2.779gの安定剤2及び365mgの5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾールを31.3mlのMEKに暗所にて溶解し2−クロロ安息香酸液を調製した。
〈添加液aの調製〉
還元剤(表3に記載の化合物(還元剤)と量)と0.159gの黄色発色性ロイコ染料(YA−1)、0.159gのシアン発色性ロイコ染料(CA−10)、1.54gの4−メチルフタル酸をMEK110gに溶解し、添加液aとした。
〈添加液bの調製〉
1.56gのかぶり防止剤2、0.5gのかぶり防止剤3、0.5gのかぶり防止剤4、0.5gのかぶり防止剤5、3.43gのフタラジンをMEK40.9gに溶解し添加液bとした。
〈添加液cの調製〉
0.01gの省銀化剤A(1)をMEK39.99gに溶解し添加液cとした。
〈添加液dの調製〉
試料50〜77については一般式(A−7)、一般式(A−8)の化合物(種類と量は表3に記載)をMEK9.0gに溶解し、添加液eとした。
試料78〜94については2.1gのオキサゾリン化合物(表3に記載の種類)をMEK17.9gに溶解し、添加液eとした。
〈添加液eの調製〉
1.0gのビニルスルホン〔(CH2=CH−SO2CH22CHOH〕をMEK9.0gに溶解し、添加液eとした。
(画像形成層塗布液の調製)
不活性気体雰囲気下(窒素97%)において、前記感光性乳剤分散液Aの50g及びMEK15.11gを撹拌しながら21℃に保温し、化学増感剤S−5(0.5%メタノール溶液)1000μlを加え、2分後にかぶり防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加えて1時間撹拌した。更に臭化カルシウム(10%メタノール溶液)494μlを添加して10分撹拌した後に上記の有機化学増感剤の1/20モル相当の金増感剤Au−5を添加し、更に20分撹拌した。続いて、安定剤液167μlを添加して10分間撹拌した後、1.32gの前記2−クロロ安息香酸液を添加して1時間撹拌した。その後、温度を13℃まで降温して更に30分撹拌した。13℃に保温したまま、0.5gの添加液d、0.5gの添加液e、予備分散液で使用したバインダー13.31gを添加して30分撹拌した後、テトラクロロフタル酸(9.4%MEK溶液)1.084gを添加して15分間撹拌した。更に撹拌を続けながら、12.43gの添加液a、1.6mlのDesmodurN3300/モーベイ社製の脂肪族イソシアネート(10%MEK溶液)、4.27gの添加液b、1.0gの添加液cを順次添加し撹拌することにより画像形成層塗布液を得た。
(画像形成層保護層下層(表面保護層下層)の調製)
アセトン500g、MEK2100g、メタノール700gに230gのセルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB−171−15S)を添加し、ディゾルバーで撹拌、溶解した。次に25gのフタラジン、3.5gのCH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2、1gのC1225(CH2CH2O)101225、1gの一般式(SF)で表される化合物SF−17、10gのステアリン酸、10gのステアリン酸ブチルを撹拌しながら添加、溶解し、画像形成層保護層下層塗布液を調整した。
(画像形成層保護層上層(表面保護層上層)の調製)
アセトン500g、MEK2100g、メタノール700gに230gのセルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB−171−15S)を添加し、ディゾルバーで撹拌、溶解した。次に25gのフタラジン、3.5gの
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2 、1gのC1225(CH2CH2O)101225、1gの一般式(SF)で表される化合物SF−17、10gのステアリン酸、10gのステアリン酸ブチルを撹拌しながら添加し、溶解した。最後に、MEKに5%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散した単分散度15%の単分散シリカ(平均粒子サイズ:9μm、シリカ全質量の1%のアルミニウムで表面処理)280gを添加、撹拌し画像形成層保護層上層塗布液を調整した。
〔熱現像感光材料の作製〕
(バックコート層面側の塗布)
前記のように調製したバックコート層塗布液、バックコート層保護層塗布液を、乾燥膜厚がそれぞれ3.5μmになるように、下引上層B−2上に押出しコーターにて塗布速度50m/minにて塗布を行った。尚、乾燥は乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて行った。
(画像形成層面側の塗布)
前記画像形成層塗布液と画像形成層保護層(表面保護層)塗布液を押出し(エクストルージョン)コーターを用いて塗布速度50m/minにて、下引上層A−2上に同時重層塗布することにより表3に示す感光材料試料50〜94を作製した。塗布は、画像形成層は塗布銀量1.2g/m2、画像形成層保護層(表面保護層)は乾燥膜厚で3.0μm(表面保護層上層1.5μm、表面保護層下層1.5μm)になる様に行った後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて10分間乾燥を行った。
得られた熱現像感光材料(試料52)の画像形成層側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は6000秒であり、バックコート層側の膜面pHは5.5,ベック平滑度は9000秒であった。
尚、試料58、72、89については、それぞれ試料52、66、80における、粉末有機銀塩Aの調製において、ベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gのかわりにベヘン酸259.9gを用いたこと以外は試料52、66、80と同様にして試料を作成した。
試料59、73、90については、それぞれ試料52、66、80における、粉末有機銀塩Aの調製において、1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlのかわりに1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを用いたこと以外は試料52、66、80と同様にして試料を作成した。
試料60、74、91については、試料52、66、80におけるバックコート層保護層、画像形成層保護層(上層及び下層)の弗素系活性剤をSF−17からC817SO3Liに変更した以外は試料52、66、80と同様にして試料を作製した。
試料61、75、92については、試料52、66、80での予備分散液Aの調整における画像形成層バインダーとして、SO3K基含有ポリビニルブチラール(Tg75℃、SO3Kを0.2ミリモル/g含む)に代えて、SO3K基含有ポリビニルブチラール(Tg65℃、SO3Kを0.2ミリモル/g含む)を用いたこと以外は試料52、66、80と同様にして試料を作製した。
《熱現像感光材料の画像形成》
(包装体の作製)
〈包装材料〉
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3%を含むポリエチレン50μm、酸素透過率:0ml/atm・m2・25℃・day、水分透過率:0g/atm・m2・25℃・day。紙トレーを使用。
(露光及び現像処理)
上記のように作製した熱現像感光材料試料50〜94を半切サイズ(34.5cm×43.0cm)に加工した後、図1に示す熱現像処理装置を用いて以下の要領で処理した。
熱現像感光材料試料をフィルムトレイから取り出し、レーザ露光部に搬送した後、画像形成層面側から、発光波長405nmの半導体レーザ(日亜化学工業のNLHV3000E)を露光源とした露光機により、レーザ光の光量を0および1mW/mm2〜1000mW/mm2の間で変化させて感材の露光を行った。その後、熱現像感光材料は熱現像部へと搬送され、ヒートドラムが熱現像感光材料の画像形成層側の保護層とドラム表面とが接触するようにして、123℃で13.5秒熱現像処理した後、熱現像感光材料を装置外に搬出した。この時の感光材料供給部から画像露光部までの搬送速度、画像露光部での搬送速度、熱現像部での搬送速度はそれぞれ25mm/secで行った。尚、露光及び現像は23℃・50%RHに調湿した部屋で行った。露光は最高出力から1段ごとに露光エネルギー量をlogE0.05ずつ減じながら階段状に行った。
〔性能評価〕
実施例1と同じ項目について、同様の方法を用いて各性能の評価を行った。
結果を表4、表5に示す。
Figure 2006003701
Figure 2006003701
表4、表5から、比較の試料と比べて、本発明の試料は、高濃度を維持しつつ、光照射画像保存性、銀色調や熱現像時の濃度むら、常温保存時のかぶり上昇に優れることが明らかである。又、試料60、74、91と試料52、66、80を比較すると、搬送性、環境適性(生体内での蓄積性)については、試料52、66、80の方が優れた特性を有することが判った。
本発明の熱現像感光材料を処理する熱現像処理装置の一例を示す図である。
符号の説明
1 ヒートドラム
2 対向ローラー
6 剥離爪
100 熱現像装置
110 給送部
120 露光部
130 現像部
140 供給ローラー対
141,142,143,145 搬送ローラー対
144 供給ローラー対
150 冷却部
160 集積部
F フィルム
C フィルムトレイ
L レーザビーム

Claims (15)

  1. 支持体上に有機銀塩、ハロゲン化銀、バインダー及び還元剤を含有する熱現像感光材料において、該熱現像感光材料を構成する層の少なくとも1層が下記一般式(A−7)、(A−8)及びオキサゾリン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ該ハロゲン化銀が熱現像過程で表面潜像型から内部潜像型に変換することにより、表面感度が熱現像前より低下するハロゲン化銀粒子であることを特徴とする熱現像感光材料。
    一般式(A−7)
    7−P7−L7−(C=Q7)−W7
    〔式中、P7は酸素原子、硫黄原子またはNH基を表し、Q7は酸素原子または硫黄原子を表し、W7はOH基、OM基、SH基、SM基(Mは対イオン)またはNH2基を表し、L7はアルキレン基を表し、Z7はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。〕
    Figure 2006003701
    〔式中、Zは含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表し、XはSO2基またはOSO2基を表し、R81は置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基またはヘテロ環基を表す。〕
  2. 一定時間、白色光又は特定の分光増感領域の光を光学楔を通して露光した後に、通常の実用的熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる感度に対し、露光前に該実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間、白色光又は特定の分光増感領域の光で露光し、さらに熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
  3. 前記ハロゲン化銀粒子が、その内部に少なくとも熱現像後に電子トラップとして機能するドーパントを含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像感光材料。
  4. 前記ハロゲン化銀粒子が、表面に分光増感色素を吸着せしめ分光増感が施されており、かつ熱現像過程経過後に該分光増感の効果が実質的に消失することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱現像感光材料。
  5. 前記ハロゲン化銀粒子が、表面に化学増感が施されており、かつ熱現像過程経過後に該化学増感の効果が実質的に消失することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の熱現像感光材料。
  6. 画像形成層を有する面側が、ビニル化合物、ヒドラジン誘導体、フェノール誘導体、ナフトール誘導体、シラン化合物及び4級オニウム塩から選ばれる少なくとも1種の省銀化剤を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  7. 前記バインダーのガラス転移温度(Tg)が70〜150℃であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  8. 下記一般式(SF)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の熱現像感光材料。
    一般式(SF)
    (Rf−(L)n1−)p−(Y)m1−(A)q
    〔式中、Rfは弗素原子を有する置換基を表し、Lは弗素原子を有しない2価の連結基を表し、Yは弗素原子を有しない(p+q)価の連結基を表し、Aはアニオン基又はその塩基を表す。m1、n1は各々0又は1を表し、p及びqは各々1〜5の整数を表す。ただし、qが1の時、n1とm1は同時に0とはならない。〕
  9. 前記ハロゲン化銀が、平均粒子サイズが10〜50nmであるハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  10. 前記ハロゲン化銀が、更に平均粒子サイズ55〜100nmのハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項9に記載の熱現像感光材料。
  11. 前記ハロゲン化銀が、カルコゲン化合物により化学増感されたハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  12. 画像形成層に含有される銀量が、0.3〜1.5g/m2であることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  13. 画像形成層を有する面側の最表面の十点平均粗さをRz(E)とし、支持体をはさんで画像形成層と反対面側の最表面の十点平均粗さをRz(B)としたとき、Rz(E)/Rz(B)が0.1以上、0.7以下であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  14. 画像形成層を有する面側の構成層に含まれるマット剤の平均粒子サイズが最大のものの平均粒子サイズをLe(μm)とし、支持体をはさんで画像形成層と反対面側の構成層に含まれるマット剤の平均粒子サイズが最大のものの平均粒子サイズをLb(μm)としたとき、Lb/Leが2.0以上、10以下であることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項記載の熱現像感光材料。
  15. 請求項1〜14の何れか1項記載の熱現像感光材料を、熱現像処理装置を使用して熱現像部の搬送速度を10〜200mm/sec、熱現像感光材料供給部から画像露光部の間の搬送速度を10〜200mm/sec、且つ画像露光部での搬送速度を10〜200mm/secで熱現像することを特徴とする画像形成方法。
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